リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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レイトショー (講談社文庫)(上)(下) マイクル・コナリー
原題は「The Late Show」のこの作品は、アメリカで2017年に刊行され、翻訳版は今年2020年に文庫として発刊されました。
その「The Late Show」」は通常テレビの深夜番組を指すことが多いのですが、ここでは、夜の11時から勤務が始まる深夜専門の刑事のことを指しています。
コナリーの作品は1992年の「ナイトホークス」から始まる有名な「ハリー・ボッシュシリーズ」や、「リンカーン弁護士」の「ミッキー・ハラーシリーズ」など複数の主人公がいますが、今回の「レイトショー」では新たにレネイ・バラードという女性刑事が主人公となっています。
著者は、私と1歳違いの64歳になってからも、新たなシリーズをスタートさせるというモチベーションの高さで尊敬します。私なんか、別に財産はないけれど、もう完全リタイアを画策しているというのに、、、
さて、ストーリーは、元のセクハラ上司とぶつかったことで、誰もがやりたがらない深夜番専門の勤務へ飛ばされて、クレジットカード詐欺やら、暴行事件など細々した仕事を淡々とこなしています。
偶然、暴行被害者の聴取で病院を訪れていたとき、ナイトクラブで発砲事件が起きて、その被害者のひとりがその病院へ運ばれてきたことから、その事件に関わっていくことになります。
というのは、通常深夜勤務の刑事は、夜に起きた重大事件でも、刑事として立ち会いますが、そこで調べたことは、朝になれば通常の昼間勤務の刑事にすべて渡し、それ以降は関わらないのが普通となっています。
それゆえに、自分が最初に関わった事件がその後どうなったかもわからず、ひとつの事件を解決していくという仕事の醍醐味がありません。
そうした慣習をうまくくぐり抜け、夜の勤務をしながらも昼間の間に寝ないでナイトクラブで起きた事件について調べて行き、真相に近づいていくことに。
ま、著者が同じというバイアスがかかっていることもあり、ボッシュ刑事の女性版という感じです。ボッシュと同様に若い頃に両親についてのトラウマなどを抱えていることも似ています。
舞台がロサンジェルスということもあり、今回の主人公は白人ではなくハワイ出身で、ダイバシティに配慮しているのか、マイノリティを主人公に持ってきています。
また独身ということで、保護観察官、海のライフガードと浮名を流し、最後の方では助けてもらった刑事弁護士に迫られたりと、あまり著者が得意ではないお色気?なシーンもあったりします。
まだ翻訳版は未刊ですが、ボッシュとこのバラードが絡む「Dark Sacred Night」(2018年)がアメリカでは発刊されているので、今後が楽しみです。
★★★
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クラウド・ナイン (講談社文庫) 服部真澄
2015年単行本、2018年に文庫化された長編インテリジェンス小説です。著者の小説は好きで、「龍の契り」(1995年刊)、「鷲の驕り」(1996年刊)、「ディール・メイカー」(1998年刊)、「バカラ」、「KATANA」(2010年刊)、「天の方舟」(2011年刊)と読んできました。
お得意の国際謀略とインテリジェンス(諜報)と経済などをうまく組み合わせた規模が大きい小説が多いようです。
この作品のタイトル「クラウド・ナイン」は通常は「意気揚々」という意味ですが、この小説ではバックミンスター・フラーが名付けた浮遊都市をイメージしているような感じです。
某巨大検索エンジン会社を思わせる米国大手IT企業の社長が私費を投じて巨大データセンターの電力を自力でまかなえるよう人工衛星を利用した宇宙発電を研究していたことがわかります。そのためのロケットが何の予告もなく公海上から打ち上げられ、世界が驚愕します。
しかしその社長は脳腫瘍のため手術をし、意識が戻っていない状態で、いったいどういうことが起きている?ということを同社に勤務している日本人エンジニアが副社長に命じられて調べて行くという物語です。
また同時進行として輸血用血液の不足をバイオテクノロジーで解決する新たな血清が発明され、それが様々な思惑と巨大ビジネスとして成長していきます。
その二つがどう結びつくのか、ハラハラドキドキの展開でたいへん面白く読めました。
ただ、どうしても日本人が書く国際謀略ミステリーや経済小説というのは、どうもリアリティに欠け、ありえねぇと思うほど都合良く展開していくのは、日本人にはそうしたことに似合っていないのかなぁと思うばかりです。
★★☆
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メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス (角川文庫) 加藤実秋
2018年に文庫で発刊された小説です。コミカルな1話完結型の連作短編で、有川浩著「三匹のおっさん」と似たようなパターンです。
著者の作品は2015年に「モップガール」を読んでいます。
2015年2月前半の読書と感想、書評(モップガール)
タイトルからも想像出来るように、警察官が住むメゾン、つまりシェアハウスが舞台となっています。昨年2019年には、高畑充希、西島秀俊、野口五郎などの出演でTBS系のドラマが制作・放送されました。見ていないけど。
警察官と言っても、すでに退職した中高年ばかりの男やもめ達が集団で住んでいる一軒家です。
そこに新人の女性刑事が事件について相談に行くと、待ってました!とばかりに引退した元刑事達が事件の解決に一役買ってくれるという流れです。
もうひとつ大きな流れとして、女性刑事の父親がある日失踪してしまい、それが巨大建設会社の不正を知ったことで、家族に被害が及ばないよう、なにも言わずに消えたと言うことが徐々に明らかになっていきます。
おそらく続編では、その先が書かれるのではないかと思います。
★★☆
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まほろ駅前狂騒曲 (文春文庫) 三浦しをん
「まほろ駅前多田便利軒」(2006年単行本/2009年文庫)、「まほろ駅前番外地」(2009年単行本/2012年文庫)のシリーズ第3弾がこの「まほろ駅前狂騒曲」(2013年単行本/2017年文庫)です。
2019年2月前半の読書と感想、書評(まほろ駅前番外地)
瑛太と松田龍平コンビのテレビドラマや映画でもおなじみです。前に映画を見たので、小説を読んでいても、主人公が瑛太と松田龍平のイメージが強烈すぎて、なかなか小説の主人公に集中ができなくなりました。
こうしたイケメン男優二人を主人公とした物語には映画やドラマがよく似合い、古くは「俺たちの勲章」や、最近では「あぶない刑事」など数多くのドラマや映画が作られています。
主人公は子供を亡くし離婚したあと実家のある東京都の町田市をモデルにした街で、ひとりで便利屋を始めますが、そこに高校の同級生だった男が転がりこんできて、男二人の生活となります。
その同級生(松田龍平)は、子供の頃に親から受けた精神的な虐待でトラウマをもっていて、かなり変人というところがミソです。だんだんと父親の松田優作の演技と似てきています。
今回の作品で一応シリーズは終了とのことですが、おそらく何年か後にはまた出てくるか、あるいはスピンオフものが作られそうな気がします。
ストーリーは、まほろ市で無農薬野菜をうたった健康食品を販売する謎の団体が勢力を拡大してきて、それに危機感を感じる街の裏の顔役や、助けを求められた便利屋が、活躍するというもので、内容的にはつまらない話しです。
貧乏で、幼子を亡くしたトラウマを抱えていた主人公に、ようやく春が訪れたというのがこの回で一番救われます。
★☆☆
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孤独のチカラ (新潮文庫) 齋藤 孝
2005年に単行本として発刊後、2010年に文庫が発刊されました。内容的には経験から来る持論をとうとうと述べるエッセイ的なもので、新書にすべきでは?って気もします。
最近流行りのコミュニケーション力全盛に反し、実は孤独によってこそ成長していくのだという自身の経験を元にしています。
確かに勉強するのは個人の努力が最大で、その勉強は仲間同士でワイワイするものではなく、本を熟読したり、考えたりと孤独の中で培われていくものだという論理には一理ありそうです。
ただそれは著者や私のような旧世代が一番勉強をしてきた昭和時代と違い、現在の令和時代にはまた別の論理も加わってくるのかも知れません。
それは過去の人よりも現在の人達が作っていくものなので、旧世代が「こうするべきだ!」というのは大きなお世話でしょう。世俗には疎く、プライドの高い教育者ならそれは認めたくない現実でしょうけど。
初出が2005年(平成17年)で、まだ昭和以前の価値観や慣習が色濃く残っている時代だったでしょうから、仕方はありませんが、今の十代が読むと、「これは幕末か明治時代に書かれたもの?」っていう感じかも知れません。
それは著者が好きな古典から大きな影響を受けているせいかも知れません。今の時代感覚に合っているかな~というのが率直な感想です。
★☆☆
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