リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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メタボラ(上)(下)(朝日文庫) 桐野夏生
2005年から2006年にかけて朝日新聞に連載され、2007年に単行本、2010年に文庫化された沖縄が舞台の長編小説です。
主人公は、記憶喪失で何が起きたのかわからないものの、「ココニイテハイケナイ」という謎の声が浮かび、警察には頼らず、道で偶然出会った家出中の少年とともに自分探しの放浪の生活を始めます。
しかし現実的には、なにか大きなショックで記憶喪失になり、自分の名前もわからず、お金や持ち物がなにもなければ、怖くなって警察へ駆け込むというのが最低限の知恵ですが、なぜかそうしないことがリアリティのない小説です。
様々な職を転々としながら、ある日記憶がよみがえってきますが、主人公がここ沖縄へやってきた理由が衝撃的で、そうせざるを得なかった理由が明らかとなってきます。
上品に言えば、格差社会で下流に落ち、資本家に虐げられ絶望する若者と言えなくもありませんが、この小説の中に出てくる、さらに下流にいた外国人労働者達の国では、すでに日本よりも給与水準が高くなり、労働者の立場はやがて逆転することになりそうです。
つまり格差社会で下流なのは若者だけではなく、これからは経済縮小を続ける国内においては日本人全体ということが明らかです。
そしてもうひとつ、本書では舞台となる沖縄と、本土との様々な格差や差別、移住の問題なども露わにしています。そうしたなかなか表には現れない(知られていない)ことに触れられたことは良かったと思えます。しかし長かった、、、
★★☆
◇著者別読書感想(桐野夏生)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
そこへ行くな(集英社文庫) 井上荒野
2011年に単行本、2014年に文庫化された短篇集で、2011年の中央公論文芸賞を受賞しています。収録されているのは「遊園地」「ガラスの学校」「ベルモンドハイツ401」「サークル」「団地」「野球場」「病院」の7篇です。
著者の作品は過去に直木賞受賞作の「切羽へ」を読んでいます。
◇2022年5月後半の読書と感想、書評(切羽へ)
「切羽へ」でも感じましたが、著者は非常に感受性が高いのか、人の心理描写が細やかに描かれています。それが高齢にかかってきたオッサン読者にとっては面倒臭いというか、いらつくというか、どうにも納得感が得られません。
それが純文学だとか文芸だとか言われればその通りかもしれませんが、個人的には長い間接してきたビジネスの現場で培った、テキパキとそしてハッキリした物言いや白と黒が明瞭な世界に慣れてきたので、こうした玉虫色の世界観は読みにくいです。
その中でも「遊園地」は、長く連れ添い子供も授かっている内縁の夫婦の話で、実はその夫には別に正式に結婚した妻も子もあり、双方の妻には隠したままで両方の家を行き来していたというトンデモなお話しで、強く印象にのこりました。
いくらなんでも月の半分以上を出張で家を空けているのはおかしいと気づくでしょ。事実は小説より奇なりで、世の中にはそうした無関心で猜疑心がない人もいるのでしょうかね。
騙して二つの家庭、妻子を長年に渡ってトラブルなく養い続けている男性を、ただただ凄い!と思うしかありませんでした。
★☆☆
◇著者別読書感想(井上荒野)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
砂の街路図(小学館文庫) 佐々木譲
2015年に単行本、2018年に文庫版が発刊された北海道を舞台にした長編小説です。
小樽などいくつかの都市をモチーフとした架空の郡府という市内にある運河が四方に流れる明治時代に栄えた運河町という場所だけで話は進みます
主人公は東京に住む独身の高校国語教師の男性で、両親がこの郡府にある大学を卒業していて、父親が20年前に誰にも告げずこの郡府の運河町で事故で溺死となって発見されています。
父親がなぜ誰にも告げずに郡府へ来たのか、そこであまり強くない酒を大量に飲んで運河に転落する事故が起きたのか、など死に至る謎を調べるために運河町へやってきて、まるで探偵のように父親が死んだ理由を確かめていきます。
ま、小説ですから当たり前ですが、行く先々でそのヒントになることを知っている関係者に都合良く出会い、死の真相は20年前に突然起きたわけではなく、父親が学生だった40年以上前に起きた事件が元だったことがわかってきます。
そうした探偵もどきの事件と事故の謎解きで終始しますが、私も20年以上前に訪問したことがある小樽の町を思い浮かべる運河やガラス工房、古い歴史あるビルなどが次々と登場し、懐かしさが募りました。
そう言えば、以前読んでとても面白かった「地層捜査」(2012年)も、東京都新宿区の荒木町の一角だけで事件捜査が進む内容と似ている感じがします。
◇2019年7月前半の読書と感想、書評(地層捜査)
◇小説の舞台を歩く(佐々木譲著編その2)
本著にも地層捜査にも最初に舞台の地図が描かれていますが、著者と地図は切っても切れない関係になっているようです。
★★☆
◇著者別読書感想(佐々木譲)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ヒトラーの試写室(角川文庫) 松岡圭祐
本著は以前読んだ義和団事件を描いた「黄砂の籠城」から続く歴史時代小説の第5弾で、2017年に文庫書き下ろし小説です。
主人公は、まだミニチュアなどを使った特殊撮影がキワモノだった戦前に、後に特殊撮影のレジェンドとなる円谷英二に師事し特殊撮影技術を学ぶ青年です。
そして第二次世界大戦中に、日独合作映画「新しき土」(1936年)や「ハワイ・マレー沖海戦」(1942年)で使われた特殊撮影を見たドイツの宣伝省大臣ゲッベルスからの要請で、敵国の英国の不幸を描く「タイタニック」の沈没シーンを円谷の代理として指導監修するためドイツへ渡ることになります。
事実と想像を交えたこうした歴史小説は、実名で当時の有名人がいっぱい出てきますのでまるで実際に起きたことのように面白く読めます。例えば、主人公と年齢が近く、デビューまもなく一気に大人気俳優となった原節子との関係など、ワクワクします。
戦争中で日本とドイツの往復もままならない時代、ドイツに渡って映画先進国で果たして日本の特殊撮影技術が通用するのか?またドイツも連合国から激しい空襲を受け、やがてはソ連が首都ベルリンに肉薄している状態で、映画製作はできるのか?
また特殊撮影の技術を使って図らずも連合国が戦争犯罪を犯している証拠映像をねつ造する仕事に加担してしまったこと、それをバラそうとしてゲシュタポに捕まったり、東京に残してきた主人公の妻子や両親はドイツ領事館の計らいで空襲が激しい東京から長崎にある宿舎へ疎開していたことと原爆が投下されたという事実、、、
リアルな出来事とフィクションが織り混ざった見事な小説でした。
★★★
◇著者別読書感想(松岡圭祐)
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