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葬式組曲(文春文庫) 天祢涼

1978年生まれの推理小説を得意とされる作家さんの作品で今回初めて読みました。この作品は2012年に単行本、2015年に文庫化されましたが廃刊後、2022年に別の出版社から再び文庫が出版されています。

内容は連作短篇小説で、「父の葬式」「祖母の葬式」「息子の葬式」「妻の葬式」「葬儀屋の葬式」の5篇からなっています。

従業員は4人だけの小さな葬儀屋が舞台で、タイトル通り様々な人の死に関わりながら、一般人にはあまり馴染みがないお葬式の実態や、そこで働くこと、そしてそれぞれの死にまつわる謎や葬儀の遺言などをドラマ化しています。

葬式というと厳かで静謐とした雰囲気がありますが、当然ながらビジネスとして成り立っていて、葬儀屋や僧侶はこのときばかりと失意に打ちひしがれている遺族に対してアレもコレもとお金を使わせることに専念していきます。

葬儀屋の仕事は如何にして他社よりも早く、死亡者とその遺族の元へ駆けつけるかというのが一般的な手法ですから、死亡者の情報が一番早い病院や警察と利権で深くつながっている葬儀屋も少なくありません。

そういうところは病院や警察への謝礼の分だけ割高になるので、できれば亡くなる前に本人があらかじめ葬儀の内容(想定参列者数や家族葬にするとか)を考慮し、ネットの評判も調べて(サクラも多いが)決めておき、もし亡くなったらここに電話をして依頼をすると決めておくのが良さそうです。

私も学生時代に、葬儀屋ではなかったものの、葬儀でよく使われる竹材を扱う店でアルバイトしていたことがあり、発注先や納品先(葬儀場)へ竹飾りをよく配達、設置していたことを思い出しました。タダみたいな汚い竹を私がもみ殻で必死に磨いたものが、葬儀場では何万円にも化けていました。

主人公はその葬儀社を父親から継いだ若い女性社長、葬儀のことに詳しい胡散臭い雰囲気の中年男性、ただひとりの身寄りの祖母を亡くしたばかりの若い男性などです。

1話完結のミステリー小説ですが、驚いたことに最後の「葬儀屋の葬式」でちゃぶ台のひっくり返しがおこなわれますので、それまでの短篇にいくつもの伏線が敷かれているのがユニークで楽しめました。

★★☆

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ちえもん(小学館文庫) 松尾清貴

今回も初めて読む作家さんの作品で、2020年に単行本、2022年に文庫化された長編小説です。著者は1976年生まれで、2004年にデビュー、現代物もありますが、歴史物がお得意のようです。

本著は江戸時代に実際に生きた貧しい漁村に次男として生まれ、その後才能を生かして商人になっていく名もなき男をモデルにした歴史小説です。

前半から中盤は、かつて山口県の瀬戸内にあった小さな漁村櫛ケ浜(現周南市櫛浜町)で廻船問屋に生まれ、病弱で次男ゆえ本家の厄介者と言われていた少年が、仲間内では体力では負けるが知恵で勝負とばかりに頭角を現していきます。

そして商才を発揮し、生まれ故郷を離れて長崎の香焼島(こうやぎしま、現長崎市香焼町)に新たな漁場を開き、役人達の命令で本意でないものの唐や南蛮との抜け荷の脱法行為をしながらも事業を拡大していきます。

鎖国中の当時は、幕府が認めた輸出入以外、外国船との抜け荷は重罪で、見つかれば関係者全員が市中引き回しの上で斬首と厳しくなっている頃です。

そしてクライマックスは、長崎で座礁し沈没したオランダの商船引き揚げ法を考え提案します。そのオランダ商船とは抜け荷をおこなう予定になっていて、他人事ではなかったこともあります。

表向きは、余所者の身でありながら漁場を開くことを許してくれた長崎にお礼をしたいということと、なにかと因縁をつけてくる地元の有力者の排除です。

ちえもんと村人から呼ばれて信頼を集めていきながらも、子供の頃から仲が良く未来を語り合った親友を海で亡くしていて、その想いを引きずりながら、再び生まれ故郷の海へと戻ってくるラストは泣かせます。

★★☆

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夜市(角川ホラー文庫) 恒川光太郎

1973年東京生まれの作家さんで、32歳の時にこの作品でデビューされました。この作品は日本ホラー小説大賞を受賞し、さらに直木賞の候補作にも入る新人離れした作品と言われています。ジャンルとしてはホラー小説がお得意のようです。

個人的には怖がりなのでホラー作品はあまり好きではありませんが、本作品はホラーというより、ファンタジー小説または幻想小説と言えるもので、特に背筋が凍るような思いはしません。

本作品は2005年に単行本、2008年に文庫化されていて、表題の「夜市」と「風の古道」の中篇2篇が収録されています。

この2作品はまったく別物ですが、内容的には非常に近く、人間がすぐ近くにある異世界へ入り込むことによって様々なことが起きていくという話です。欧米風のファンタジーというよりは、水木しげるの妖怪の世界に近いかも知れません。

「夜市」では昔、弟と一緒に入り込んだ異世界で、何かを買わないと元の世界に戻れないことから、人さらいに弟を売って戻ってきた青年の苦悩と贖罪、「風の古道」では、友人とともに冒険のつもりで入り込んだ異世界の古道で、その古道で産まれたために戻れず放浪を続ける青年と一緒に旅をする話しです。

どちらもハッピーエンドとは言えませんが、それでも嫌な感情が湧いてくるものではなく、やっぱりホラーとは思えない異世界幻想小説というものでしょう。

★★☆

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歴史探偵 忘れ残りの記(文春新書) 半藤一利

著者は一昨年2021年に90歳で亡くなっていますが、ジャーナリストとして、また作家として少年時代に自身戦争を体験したことや、戦争に関わった人を仕事で取材した経験などを生かした作品を多く残しています。

本著も、様々な雑誌や広報誌などに書いたエッセイをまとめたもので、かなり繰り返しで重なっている部分がありますが、戦争中の貴重な話がいろいろと参考になります。

過去に読んだ「日本のいちばん長い日」と「ノモンハンの夏」の感想は、著者別読書感想(半藤一利)にまとめてあります。

また著者の配偶者が夏目漱石の孫ということもあり、夏目漱石に関連した作品も数多くあります。

この2021年に出版されたエッセイ集では、著者が戦前の下町の向島生まれで、戦争中の浅草や銀座、そして東京大空襲で逃げ惑った話など、貴重な体験談が読めます。

またこのエッセイ集シリーズには「歴史探偵 昭和の教え」と「歴史探偵 開戦から終戦まで」(いずれも2021年刊)の続編があります。機会があればまた読んでみたいです。

★★☆

著者別読書感想(半藤一利)

【関連リンク】
 11月後半の読書 こちらあみ子、戦国武将、虚像と実像、極東動乱、二人のクラウゼヴィッツ
 11月前半の読書 忍ぶ川、定年バカ、二千七百夏と冬(上)(下)、長く高い壁 The Great Wall
 10月後半の読書 にぎやかな未来、凪の光景、コブラ(上)(下)、百万のマルコ

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