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先月の同じ日に掲載された日経新聞のふたつの記事を複雑な思いで読みました。

ひとつ目は、
団塊まだまだ働く、人口減の影響緩和、65~69歳就業率アップ

ふたつ目は、
高齢者の労働意欲、先進7ヵ国で首位

なぜ複雑な思いをしたかと言えば「高齢者がいつまでも元気に働く」というのは表面上素晴らしくいいことのように思えてきます。

健康を害して医療費補助、寝たきりになって介護費用などの増大が見込まれている中で、働くと言うことは国にとってはありがたいことのようにも思えます。

しかし団塊世代(現在64~66歳)は、別名「逃げ切り世代」とも言われていますが、団塊世代以上の人達は、高度成長期からバブル時代を経験し、その現役時代の多くは右肩上がりのいい時代を送り、退職金もそこそこ、年金も60歳から満額支給され、今や65歳以上世帯の平均で現金性預金額は約2300万円(総務省統計局2011年調査)に達し、それとは別に動産や不動産なども所有しているという世界の中でも稀なリッチ世代です。

そういうリッチな高齢者が、いつまでも現役で頑張るというのは、上記の医療負担などの削減や今後何十年と労働人口が減少していく中での労働力確保という観点ではよいことかもしれませんが、恋愛や結婚、子育て、巣作りなどで多額の消費をする若い層ではなく、もうすべてが上がりの高齢者がこれ以上いくら稼いだとしても、それが市場に環流されることはほとんどなく、消費は伸びず、したがって景気は上向かない現状となにも変わりません。

藻谷浩介氏著の「デフレの正体」に詳しく書かれていましたが、日本は国内市場において人口構成上間違いなく縮小していくわけですが、国の政策として年金支給時期を遅らせたいがためとはいえ、雇用延長を引き延ばして労働力(頭数)を当面維持していこうというのがまるでわかりません。

そんなことしたら縮小経済の中で一人当たりの平均収入が減るのは当たり前で、しかも一番お金を使ってくれる、必要とする若い人に回らず、加速度的にますます経済は冷え込んでいくことになります。

「国内はダメでも海外の需要があるじゃないか」という人がいるかもしれませんが、国際競争する商品は日本で製造していては勝てないことは明らかで、国内に多くの労働者はもう必要ありません。

いまこそ数千万円もの預金と年金がある人には、早く仕事を引退してもらい、使う側にまわってもらうほうへ移ってもらうべきではないでしょうか。

仕事よりも自分のライフスタイルを優先したいと考える今の若い人達から見ると「ものすごく裕福でありながら、なぜその歳になってまで仕事に執着するの?」と思うでしょう。

そして調査によるとおよそ1/3の企業が、定年退職者の雇用延長の法制化を受けて、若年層の採用を控えると答えているように、高齢者がいつまでも職にしがみつくことで、そのとばっちりは必然と若い人へと向きます。

前述の記事の中には、人材コンサルタントが団塊世代の人達がいまなお仕事を求める理由として「生活のためという切迫感はあまりなく、『経験を生かしたい』『時間を持てあましている』というのが多い」とありました。

正社員の道が閉ざされ、非正規社員やフリーターとして働くしかない多くの若い人達がそれを聞くと、心情穏やかでは済まないでしょう。

ま、非正規社員やフリーターとして毎日安い給料で働く若い人が、日本経済新聞をジックリ読むことなどあまりイメージできないので、その心配は無用なのでしょうけど(もしいらっしゃれば、その方はやがてデキると認められてまもなく正社員へ登用されるでしょう)。

合わせて、もうひとつの記事、世界の高齢者の労働意欲調査についてです。

それなりの資産や年金があれば、55歳~60歳のうちに仕事から引退して、夫婦で老後をエンジョイしようと考える人が先進国には多いのですが、日本人は真面目なのか、仕事人間だったので他になにもすることがないのか、家にいる生活が耐えられないのか、仕事を辞めると社会から締め出されたような気がするのか、なんでもいいから肩書きが欲しいのか、様々な理由が考えられますが、働き口さえあれば、まだまだ働き続けたいと考える人が多いようです。

年金がもらえなかったり、少なかったり、かつ子供からの支援が受けられない場合は、日々の生活費を稼ぐために高齢になっても働かなければならないのは理解できますが、前述の通り不動産以外に数千万円の現金性預金を持つ高齢者は生活のためではなさそうです。

もし生活のためであったとしても、それは「年金が減らされたら」「大きな病気をしたら」というような漠然とした将来の不安が大きいのではないでしょうか。

私などは、引退してもいいのなら(住宅ローンの支払がなく、それなりの最低限の資産や年金があれば)、喜んでいつでもさっさと仕事から引退して、自分の好きなことをして毎日過ごせる自信があります。言ってみれば子供と同じでお金はほとんど使わずに毎日でも遊んでいられます。

働いているときはタクシーに乗ったり、新幹線で移動したり、高額なハイシーズンの時期に旅行したり、加工された部品を買ったりと「金で時間を買う」ことをよくしましたが、引退後はそのような時間の心配をする必要がなく、何をするにしても自分の知恵と労働とそれにかける時間がたっぷりあります。

新しくなった政府も、そのような高齢者が持つ預貯金をどうにか引き出させて、市中に流通させられないかと学者を集めて知恵を絞っているようですが、将来の年金制度や医療制度に不安がある限り、そう簡単にはいかないでしょう。

最終的には使い切れず、子供や孫に遺産として引き継がれていくので、あと20~30年もすれば吐き出されてきますので、それを待つしかないでしょう。

そしてそれら親からの遺産を相続できる人達と、できない人達のあいだで今以上の大きな格差ができるでしょう。

その格差をなくすには相続税を90%以上にすればいいのですが、その法律を作る政治家が、親の遺産をあてにしている二世や三世ばかりですから、ずっと苦学してきた橋下氏のような政治家以外は自分の首を絞める政策をおこなうはずがありません。

提案というわけではないですが、まず

(A)貯蓄や親の遺産などたっぷり資産を持っている人は55歳で早々に仕事から引退してもらう。(B)年金は規定の期間以上納め、老後はその年金だけで生活しようとする人は60歳まで懸命に働き年金をしっかり納めてもらう。
(C)過去に規定年数の年金を納めてこなかった人は規定に達するまで懸命に働いてもらう。

というように資産や年金支払い状況に応じ引退時期を分け、それぞれ年金支給時期や年金支給額にも差をつける。

(A)は早く引退したが資産があるので10年間はそれを使ってもらい年金支給は65歳からで年金支給額は他より多い。(B)は60歳から支給されるが支給額は普通。(C)は70歳から年金は支給されるが年金の納付期間や額により年金額に差異がつく。とか。

(A)なのに56歳で働くことは原則禁止。国や自治体から特定に認められた不足している専門職ならば認められる。

ちなみに(A)~(C)とも短期間アルバイト・パートなら、引退後も働くことは可能。でも経営者やフルタイムの正社員、公務員、議員、職員などにはなれない。など。

ま、なにをそうしても不公平さが残る年金と中高年以降の雇用問題について、半分ふざけて考えてみました。

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