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1102
子供の頃から日曜日とか土曜日という七曜について不思議に思っていました。

 「カレンダーで日曜日が最初にくるのと月曜日が最初にくる2種類があるのはなぜ?」
 「日、月、火、水のように曜日に天体(星)を使うのはなぜか?」
 「火・水・木・金が、なぜ惑星の並び順ではなくバラバラなのか?」
 「恒星の太陽=日曜、惑星の火星や水星=火曜・水曜、地球の衛星に過ぎない月=月曜が混ざっている不思議」
 「週末はいつのことか?」

などいくつもの疑問を持っていました。ちゃんと答えられる人って多くはないような気がします。

古代から天文学というのは占いに使われたり、気象や異変の前触れとして様々な研究がおこなわれてきました。それだけに暦と天体の関係が馴染み深いのだろうなということは薄々気がついていました。

この週や曜日という概念は紀元前1世紀頃のギリシア・エジプトで完成したと言われています(Wikipedia)。紀元前1世紀のエジプトと言えばクレオパトラやユリウス・カエサルなどが活躍し、1年を365.25日としたユリウス暦(太陽暦)が作られた頃です。

古代の天文学では天動説が主流で、地球から近い順に、月・水星・金星・太陽・火星・木星・土星が並んでいると考えられていました。そして本来は恒星である太陽も、惑星の金星や水星も、また地球の衛星の月も同列とみなし、それぞれの星には古代の神々の名前がつけられていました。

そしてこの7つの星を一番遠い土星から1時間ごとに24時間分、順番に振り分けますが、そのことをプラネタリーアワーと言います。

土星(1)→木星(2)→火星(3)→太陽(4)→金星(5)→水星(6)→月(7)→土星(8)→木星(9)→火星(10)→太陽(11)→金星(12)→水星(13)→月(14)→土星(15)→木星(16)→火星(17)→太陽(18)→金星(19)→水星(20)→月(21)→土星(22)→木星(23)→火星(24)→太陽(1)・・・

このプラネタリーアワーが1日24時間分過ぎると、次は新たな日の1時間目となり、それがこの7つの順番の4つ後(3つ前)の星にあたります。

上記では土星(1)で始まった1日は3周目の火星(24)で終わり、次の1日の最初は太陽(1)になります。

この2日目の最初の1番目にあたる星がその日1日の曜日と決めたわけです。だから土星の次の日は太陽(日)となり、太陽の次の日は月になります。なにかややこしい。

土星(1)の翌日は、太陽(1)で、その次の日は月(1)、さらにその次は火星(1)となり、1週間は土星→太陽→月→火星→水星→木星→金星→土星という順番になりました。

そういう週の起源からすると本来1週間のうちで最初の曜日は土曜日ということになります。

次にSaturday=Saturnus(土星、ローマ神話のサートゥルヌス)、Sunday=SUN(太陽)、Monday=Moon(月)とここまではわかりやすいのですが、Tuesday≠Mars(火星)や、Wednesday≠Mercury(水星)、Thursday≠Jupiter(木星)、Friday≠Venus(金星)は曜日と星の名前とが違いすぎます。

英語のTuesday(火曜日)は北欧神話の軍神テュール、Wednesday(水曜日)は北欧神話の魔術神オーディン、Thursday(木曜日)は北欧神話の戦神・雷神トール(ソー)、英語のFriday(金曜日) は北欧神話のオーディンの妻フリッグに由来または北欧神話の愛と美の女神フレイヤからきているとも言われています。それにしてもなぜ北欧の神なのか、わかりづらいですね。

このような古代ローマやキリスト教神話を元にした暦が中国(当時は唐)を経て、多少アレンジされて平安時代に日本にも渡り、月火水木金土日の七曜が形作られてきたわけですが、カレンダーを見るとその多くは日曜日が週の最初に描かれています。

これには特に決まりはないそうですが、上記にも書いたように曜日の起源からすると地球から一番遠い土星が1番目に来るのが正しいと言えます。

ただそこは仕事や生活の便宜上のことで、日付と時刻の表記に関する国際規格ISO8601や国際航空業界の時刻表などは月曜日が週の1番目と規定されています。

私が仕事でずっと使っている能率手帳の1週間も月曜日が最初に来ています。ビジネス的には平日の月曜日が最初とするのが妥当のようですが、一般的な生活の場では1週間は日曜日で始まり土曜日で終わるという慣習ができているようです。国内にも法的な規制や決まりはないそうです。

「週末とはいつのことを言うのか?」ですが、本来1週間の起源からすれば前述の通り土曜日が1番目なので金曜日が週末というのが正しいのでしょうけど、日本語の週末は、「仕事が休みの前の日」という意味になるので、週休1日が多かった昭和の時代は土曜日が週末、最近は週休2日制が主流となり土・日曜日が休みとなるケースが多いので金曜日が週末ということになっているようです。

ただこれも決まっているわけではなく、月曜日がお休みの理容業者が日曜日を週末と言っているのかは不明です。

私も新入社員の頃は、土曜日はフルタイムの勤務日で、休日は祝日と日曜日だけでした。今の社会人はそれと比べるととっても恵まれていると思います。

月月火水木金金は、1週間の中に土曜や日曜日はないという、電通の若手社員のスケジュール表ということではなく、今で言うところのブラック企業みたいな勤務体系を当たり前とした帝国海軍でよく歌われた軍歌です。

昭和時代のオジサンと若い人で週末の意味が違っていたりしますので、そうした世代間同士で話しをするときには知っておきたい雑学でした。


【関連リンク】
1085 クリスマスの思い出
895 「ドキュメント72時間」を見て日本経済を考えた
813 地域活性化は道の駅で
677 2013年の休日と国民の祝日について

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1101
早いもので今年の誕生日がやってくると、いよいよ60歳の還暦を迎えます。個人的な感想を述べると、20歳までの20年間と、21歳から60歳の40年間がほぼ同じぐらいの長さだったなという感覚です。それぐらい社会人になってからの38年間は過ぎ去るのが速く感じます。

還暦は本卦還り(ほんけがえり)とも言われますが、由来は室町時代頃に中国から長寿の祝いという意味で伝来したと伝えられ、干支(十干十二支)が一巡して誕生年の干支に還ることからそう呼ばれています。

室町時代と言えば平均寿命は30代半ばだったと言われていますので、本来の還暦、60歳と言えばまるでバケモノか仙人のような長寿だったかも知れません。いずれにしても江戸時代頃までは珍しい長寿であったことには違いありません。

あと還暦と言えば、赤いちゃんちゃんこを着てというイメージがありますが、これは魔除けの意味で産着に赤色が使われていたことから生誕時に帰るという意味と言われています。

還暦になるとよく言われるのは「厄払い(厄祓い)に行かなきゃ」ということです。

厄払いをする厄年は、男性が数え年で25歳、42歳、61歳、女性が数え年で19歳、33歳、37歳です。

その中でも一番大きな災いが降ってくる大厄とされるのは男性が42歳、女性が33歳です。さらに還暦の61歳は男性だけでなく女性も厄年とする風習もあります。

寺社的に言えば、厄年はもちろん、その前後の前厄、後厄含めできるだけ数多く足を運んでもらい、祈祷料を受け取りたいので、テレビでも毎年年末年始には多くコマーシャルが流れます。

男性にしても女性にしても大厄の頃が一番事故に遭ったり大きな病気などにかかる時期ということで、健康や行いに注意を喚起するために昔から言い伝えられてきたのでしょうけど、これだけ寿命が伸びると要注意年齢も上がってきていると思って間違いないでしょう。

厄除けに行くのは神社かお寺か?ってのもよくわからなかったりします。

一般的にお寺では厄除け、神社では厄祓いと言うそうですが、これもそう決まっているわけではなさそうです。

神社では宮司や神職が神道にのっとった厄祓いをおこない、お寺さんでは護摩祈祷という火を使った祈祷が主流です。このあたり寺も神社もお客さんの取り合いってところでしょうか。

そう言えば、初詣も一般的には神社へ行くと思われがちですが、初詣客全国1位は明治神宮、2位は成田山新勝寺、3位は川崎大師(平間寺)、4位は浅草寺と初詣客数の2~4位はなんとお寺さんなのですね。寺社間で激烈な競争が起きているわけです。出典:Jorudan Co.,Ltd.初詣人出ランキング

私はあまり信心深い人間ではないのですが、人からの薦めもあり、数え年42歳の時には話しの種とばかりに東京のお不動さん(お寺)へ厄払いに行きました。お不動さんの護摩祈祷で使われる火は人の背の高さ以上までに立ち上り迫力があったのをよく覚えています。

 ◇  ◇  ◇

そして年が明けて数えで61歳(満年齢ではまだ誕生日が来ていないので59歳)です。

さてどうするかなって思っていましたが、テレビコマーシャルでも時々見かける厄除け祈願で有名な西新井大師へ、観光がてらに厄払いの護摩祈願に行ってきました。

すでに2月に入り、初詣や節分の行事も終えた頃、ようやく人出も減って、楽々参拝できるかなと思って出掛けましたが、そこは有名な大師様、日曜日の賑わいは続いています。

受付で氏名、住所、生年月日を書いて、厄払いの祈祷にチェックを入れて、祈祷料5千円を添えて申し込み、本堂へ向かいます。

本堂の中は広いのですが、祈祷が始まるときには200名は軽く超えている感じの人の多さで立錐の余地もない状態に。有名な寺社では護摩祈祷はやっぱり人気があるのですね。

護摩が焚かれメラメラと燃える炎に申し込まれた護摩札をかざしていきます。神聖な感じのイベントです。

半時間で終わり、その後自分の名前が書かれた護摩札をもらいます。

こんな計算をしちゃいけないのでしょうけど、30分の祈祷で、5000円×250人=125万円。これを毎日平日は6回、土日曜日は7~8回おこないます。

125万×6回×20日+125万×8回×8日=2億3000万円(1ヶ月の祈祷料収入)

なんか凄い、、、しかも非課税ときている、、、

あと、この西新井大師を始め、ほとんどの寺社でおこなわれる厄除け、厄払いは数え年で計算しますが、川崎大師だけは満年齢で計算するそうです。

なので川崎大師で還暦の厄除け祈祷をするならば、誕生日が来て満60歳になってからということになります。


【関連リンク】
955 道の駅の転換期
814 日本に外国人観光客を呼ぶ
640 クルマで行く京都観光お勧めコース その1
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1100
私にふさわしいホテル (新潮文庫) 柚木麻子

2012年発刊(文庫は2015年)の野心あふれる女性新人作家が成長していくコメディ小説です。

まるで漫画ですので、これから作家を目指そうという人がまともに出版業界や作家同士の関係をこれでわかったつもりになってはいけません。コメディですから。

小説はタイトルの「私にふさわしいホテル」であるところのお茶の水に実在している山の上ホテルから物語はスタートします。

この山の上ホテルがある神田駿河台は周囲に出版社や古書店、印刷所が多く、古くから川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、伊集院静らが定宿としていたことがよく知られています。また最近では浅田次郎氏が締め切りに追われ、このホテルに缶詰になることもエッセイなどによく書かれています。

ストーリーは、作家デビュー前の若い女性(主人公)が、山の上ホテルに宿泊の予約を入れ、大物作家の雰囲気を味わいながら「さぁ部屋で小説の執筆をしよう」と思ったときに、大学の先輩で現在は大手出版社で編集の仕事をしている男が冷やかしにやってきます。

そして「上の階のスイートルームで現在執筆している大作家の短編原稿がもし間に合わずに落ちれば、預かっていたお前の小説がその穴埋めで掲載できる」という話しを聞き、大作家の執筆が遅れるように一世一代の芝居を打つことになります。

その後も、能力はあるけれど平凡な容姿で話題性がない主人公は、様々なライバルを蹴落とし、難関や障害を乗り越え、売れっ子作家への道へと歩んでいきます。

パロディと言えばパロディ、夢見がちな若い文学少女や書店員にウケる作品と言えばそうなのでしょうが、ハッキリ言って業界あるあるの自虐ネタ?とジョークで盛り上がっているだけで、業界外のオジサンが読んでもさっぱり面白くないというのが正直な感想です。

このふざけた小説のターゲットはこのような落ちぶれた中高年ではなく、夢見るハイティーンや、若い女性、出版業界の関係者なのだろうなーというのが読後の反省点です。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ボッコちゃん (新潮文庫) 星新一

今年2017年は著者星新一氏が亡くなってからちょうど20年になります。この作品は1971年(昭和46年)に発刊された著者自選短編集(ショートショート)で、発刊後すでに46年が経っていることになります。

だからと言って話の中身が古臭いかと言うとまったくそれは感じません。なんでも著者は古い作品には違和感がないよう、常に手を入れていたとか。例えば「ダイヤルを回す」という表現を「ダイヤルする」って感じでしょうかね。

概ね文庫の5~7ページで1編がまとめられ、それが全50編の構成となっています。それぞれの短編は互いに関連性はなく、どこから読んでも問題なく、しかもすべて1話完結です。ま、それがショートショートの定義なんでしょうね。

どの作品も趣向がそれぞれ違っていて、SFもあれば、ファンタジー、ビジネス、家族、ブラックユーモアなど多岐に渡っています。しかもどれもちょっとひねったユーモアがあり面白くて飽きません。

なかなかここまで絞りに絞った短文で、誰もが理解できる物語を大量に創作することなど凡人には到底無理な話しで、著者の特殊な才能が凝縮された作品だろうと思います。

短い物語ながらもその背景や未来のことが頭の中でパッとイメージがわいてきます。

週刊誌や月刊誌などで連載をする関係で、文庫本で10ページ程度の短編小説は今も多く書かれていますが、さすがにこれほどまでに絞られたショートショートに関しては、著者を上回れる質と量を書ける作家さんは未だ現れていないでしょう。

★★★

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

満月の道: 流転の海 第七部 (新潮文庫) 宮本輝

著者の自伝的小説、「流転の海」の第7部で、2014年に単行本、2016年に文庫版が発刊されました。前の第6部「慈雨の音」(文庫)を2014年に読んでから2年が経っていますので、ストーリーや登場人物など、物語の状況を思い出すのに少し時間がかかりました。

このシリーズは下記のようなタイトルと発刊年となっています。

1「流転の海」(1984年)
2「地の星 (流転の海 第二部)」(1992年)
3「血脈の火(流転の海 第三部)」(1996年)
4「天の夜曲(流転の海 第四部)」(2002年)
5「花の回廊(流転の海 第五部)」(2007年)
6「慈雨の音(流転の海 第六部)」(2011年)
7「満月の道(流転の海 第七部)」(2014年)
8「長流の畔(流転の海 第八部)」(2016年)・・未読
9「田舎の春(流転の海 第九部)」・・2017年2月現在未刊、シリーズ完結予定

この作品は前作に続き戦後の高度成長期がいままさに始まろうとしている大阪が舞台で、主人公の松坂熊吾のひとり息子(著者自身がモデル)が中学を卒業して高校生になる頃の話しです。

この大河小説には多くの登場人物が出てきますが、数回前(と言うと5~10年前)にちょっとだけ登場してきた人が、久々に登場してきたりして、はて、この人はどういう人でどういう関係だっけ?と混乱をします。

五木寛之氏の「青春の門」もそうですが、長期にわたって連載されるシリーズものを読むには、抜群の記憶力が必要だと思います。あるいはシリーズがすべて出揃った後に、まとめて読むのがいいかも知れません。

そういう人が多いせいか、この文庫の解説には過去の経緯が巻ごとに簡単にまとめられ、登場人物の説明も加えられていますので、これはたいへんありがたいことです。その解説を書いた堀井憲一郎さんに感謝です。

この第7巻で名前が出てくる人物や飼い犬の名前が全部で70近くあります。それらをすべて記憶していくのは並みの人ではちょっと厳しいでしょう。

主人公も60代となり、細々と始めた駐車場の管理と中古車販売事業が軌道に乗りはじめ、仕事も生活も安定している時代の話しで、昔の馴染みの女性がヤクザと縁を切るためお金をだしてやったり信頼して任せていた男に会社の金を盗まれるというのはあるものの、過去の波瀾万丈の激しい浮き沈みは少なく、一カ所に落ち着いていて安心して読めるのでホッとします。

そしてこの7部のあと、すでに単行本は刊行されている第8部、そしていよいよ完結編となる第9部へとクライマックスが近づきつつあり、その嵐の前の静けさを予感させるものがあります。

★★☆

著者別読書感想(宮本輝)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

死ねばいいのに (講談社文庫) 京極夏彦

2010年に単行本、2012年に文庫版が刊行された6作品の連作短編スタイルの小説です。それにしてもタイトルがえげつなく、それに誘われ思わず購入しました。

直木賞作家である著者はあえて書くほどのこともないですが、水木しげる氏が故人となった今ではもっとも著明な妖怪研究家のひとりでもあり、多くのミステリアスな作品を書いています。

この作品は著者にとって実験的な要素が含まれています。それはタブレットのiPadが発売されると同時に、電子書籍として(格安で)配信されました。

iPadを最初に使うのは若者が多いだろうと予想してのことかはわかりませんが、礼儀や言葉遣いがなっていない現代の草食系な若者が主人公となっています。

ひとり住まいの若い女性が自室で首を絞められて亡くなりました。その女性は複雑な家庭環境で育ち、亡くなる前には同時に複数の男性と関係していたことが徐々に判明していきます。

その亡くなった女性と偶然知り合い、何度か話し相手になっていたという、若い男性が主人公で、その男性が亡くなった女性と親しくしていた男性や家族を次々と訪ね「彼女のことを知りたいので教えてくれ」と頼みます。

この若い男性、高卒で定職には就かず、野心も学習能力もなく、自らを小学生以下だと認めているわけですが、聞きに行った相手から気味悪がられながらも、相手の懐にうまく飛び込む術を心得ています。

相手はそれぞれ亡くなった女性との間になにかしら脛に疵を持っていて、そうした心の闇をこの男に吐き出すことになり、やがては本音が引き出されていきます。

そんな相手にこの若者が言うのがタイトルの「死ねばいいのに」です。

著者は50代ですから使われている若者言葉はいろいろと調査されたのでしょうけど、なかなか現代の口語を文字にするのって難しい作業でしょう。

語尾の感じやアクセントなどが文字だとうまく書けないので、読み手によってそのイメージは多少異なるかも知れません。

著者の作品としては得意な妖怪や怪談ものではありませんが、現代ミステリーとして上質のものだと思います。前述の通り会話が中心ということと、テンポがゆっくりしていて、読んでいるとちょっとじれったい感じもしますが。

★★☆

著者別読書感想(京極夏彦)


【関連リンク】
 1月後半の読書 ガダラの豚(1)(2)(3)、人間の幸福、塩分が日本人を滅ぼす、メランコリー・ベイビー
 1月前半の読書 怒り(上)(下)、月は怒らない、人間にとって成熟とは何か、ガソリン生活
 12月後半の読書 帰ってきたヒトラー(上)(下)、ストーリー・セラー、7割は課長にさえなれません、家族八景



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1099
昨年から発行されているマイナンバーカードを1年遅れでようやく申請してみました。っていうか、実は1年前に申請書を書いて一緒に申請する予定だった家族に申請用の封筒を渡していたのですが、結局誰も申請せず、そのまま放置されて行方不明になっていたわけですが。

今回は自分だけでも申請してみようと、新たに申請書類を入手して郵送しました。もう混雑時期は過ぎているので申請してから2週間ぐらいで受取り場所等を記した通知ハガキが送られてきました。

この顔写真とICチップ入りのカード、役所の仕事を効率化、合理化するにはいいのでしょうけど、本人にはほとんどメリットはなく、無料とはいえ、わざわざ写真を撮り、細かな申請書を自分で書いて作ろうとするモチベーションや必然性がありません。

それでも作ったのは、自分のためというより、仕事の生産性が極めて低いと言われている役所の仕事の合理化に協力するつもりというのが理由です。

一応所管の総務省がマイナンバーカードを作るメリットとして言っているのは、

(1)本人確認の際の公的な身分証明書として利用できる。
(2)市区町村や国等が提供する様々なサービス毎に必要だった複数のカードがマイナンバーカードと一体化できるようになる。
(3)平成29年1月から開始されるマイナポータルへのログインをはじめ、各種の行政手続のオンライン申請に利用できるようになる。
(4)オンラインバンキングをはじめ、各種の民間のオンライン取引に利用できるようになる。
(5)コンビニなどで住民票、印鑑登録証明書などの公的な証明書を取得できるようになる。

ですが、実際に国民にとって役立つのは(5)の住民票をコンビニで取れるようになるぐらいでしょうか。でもこれはできる地域が限られているようですね。

またコンビニよりも役所や役所の出張所などが近くにあればそれもあまりメリットとは言えませんし、そうそう住民票をとる機会はないので、メリットと言えるかどうか微妙です。

(4)なんかはマイナンバーカードを作らなくても元の通知カードでなんら不自由していません。

ただ、私はここ数年間確定申告はおこなっていないので関係ありませんが、確定申告をe-TAXで行う人にはこのマイナンバーカードが必要らしいです。

たまーに確定申告をするぐらいの人なら、混まない日時に税務署へ行ってサクッと出すか、ネットのサービスを利用して作成し、書類を郵送すればいいだけですけど、個人事業主や副業でそこそこ稼いでいる人など、毎年確定申告する人には便利なのでしょう。

と、言うわけで、お役所の仕事の効率化に少しでも協力しようという奇特な習性の持ち主か、ブログに書いてネタにするのでもなければ、普通の人はマイナンバーカードは取得不要、持っててもなにもいいことないという結論です。

高速道路などで使うETC装置とカードは、料金所での支払いの手間をなくせるのと、なんといってもETC割引が広範囲におこなわれたので、取り付けるためには自己負担で数万円~数千円も費用がかかるのに関わらず一気に普及しました。

そのおかげで旧道路公団、現在は民間企業になっていますが、料金徴収軽費の90%ぐらいが自動化され、巨大な徴収員の人件費や、現金の輸送コストなどを大幅にカットすることができました。おそらく毎年数千億という単位のコスト削減になっていたでしょう。

そのコストダウンした分をドライバーに還元してくれるのか?と言うと新しい高速道路を造るためや、赤字路線の補填のため、逆に高速道路料金の値上げや、ETC割引の廃止や縮小、役人の天下り費用とかで、すっかり乗せられた利用者は踏んだり蹴ったりというところはありますが、、、

もし本気でマイナンバーカードを普及させて役所の仕事の効率を上げたいのなら、例えば、住民税が5年間1割安くなるとか、老齢年金の2年間1割増額とか、選挙のネット投票ができるようになるとか、公営保育園の優先入園枠の設定とか、公営駐車場がマイナンバー提示で無料になるとか、これはカードを作らないと損!と思うようなメリットを作る必要があります。

民間なら誰しも考えるであろう、そうしたビジネス感覚はお役人は考えないのでしょう。前例がないとか一時的に損するとかあれこれ言い訳をして。

もっともマイナンバーカードが普及して役所の業務が効率化されたからと言っても、公務員の数が大幅に削減できるか?っていうとそれもまた疑問ですけど、9割の国民がマイナンバーカードを持つようになれば、脱税、生活保護費や各種補助金などの不正受給が防ぎやすくなり、また新たにできる住民サービスも増えてくるはずです。

さて、話しは戻って、そのマイナンバーカードを役所にもらいに行った際、受取者が本人かどうか確認するため、窓口で運転免許証の提示を求められました。

それは必要なので提示しましたが、当たり前のように「免許証をコピーさせてもらいます」と言うので、その態度にちょっとムカッときて「提示する」は「コピーを渡す」とは違うんじゃないの?」と聞いたところ、「みんなそうしてますので」と冷たく言い放つ窓口担当。

その言い方がいかにも強圧的で気にくわなかったので、「提示と書かれているので提示はするが、コピーは拒否する」と返答。窓口の男性は眉毛を八の字に下げて困ってましたが、奥へ行って上司?と相談し、戻ってきて「免許証の番号だけ控えさせてください」と丁重に言ってくるので、それは拒否しませんでした。

これだけ個人情報保護がうるさくなってきているのに、本人確認のために必要とも思えない免許証のコピーなど、いったいなにを考えて旧態依然のことをやっているのかとちょっと意地悪をしてしまいました。面倒な市民です、はい。

その後Windowsパソコンに向かってパスワードを数種類入れて受け取り手続き完了です。これまたまったく面倒臭い。とりあえず生年月日かなにかで仮パスワードに設定してあるので、あとは自分でPCかスマホで勝手に変えてねとかすればいいのに。それができないって人はたぶん国民の3割もいないと思うのだけど。

役所へ行ったついでに、その近くにある大きな郵便局にも寄ってきました。

前にキャッシュバックキャンペーンで郵便局の振替払出証書が送られてきていたのでそれを現金化するため(ゆうちょ銀行)と、年賀状で当選した記念切手をもらうため(郵便局)です。

こういう手間(郵便局へ出向く)は、2つ以上の用事ができて初めて動くという習性です。

振替払出は証書を持っていけばすぐに現金がもらえるのかと思っていたら、ここでも身分証明を出せと言うので、つい先ほど受け取ったばかりのマイナンバーカードを出そうかと思いましたが、まだ自分でもジックリ見ていないカードを出すのはどうかなと思って、こういう時ぐらいしか利用価値がない1級小型船舶操縦免許証を提示しました。

ちなみに自動車運転免許証は地方(私の場合は神奈川県)の公安委員会が承認し、小型船舶免許は国の国交大臣が承認する免許です。住所、氏名、生年月日、写真、有効期限など記載事項はどちらも似たようなものです。

船舶免許証には運転免許証から除外された本籍まで入ってます。そしてたかが地方の公安委員会と国の国土交通省大臣、どちらの承認がより信用度があるかというのは小学生でもわかりそうです。

しかし、郵便局員にはわからないようで、そのゆうちょ銀行の窓口では、小型船舶免許証を見つつ「運転免許証はありませんかね?」と聞いてくるので、「これで問題ないでしょ?」と船舶免許を強く指さしました。

なにか面倒臭そうにしていましたが、あきらめたようで、渋々数千円の支払い手続きをしてくれました。

単に本人確認のために使うのだから、顔写真と名前、住所が確認できればいいはずですが、実際はもっとなにか闇深い手続きがあるようですね。バカバカしい。

そういえばマイナンバーを受け取る役所の中にも「偽造免許証が増えているので免許証識別装置を導入しています」というポスターが掲示されていました。ゆうちょ銀行でも見かけが怪しいと思ったのでそれをぜひとも使いたかった?

パスポートや免許証などの偽造団と闘いはいたちごっこなのでしょうけど、わずか数千円の振替払出のために、いちいち偽造を疑っていたら仕事にならないでしょう。

ゆうちょ銀行も民間企業になったのですから、もう少し効率的な仕事をしてもらいたいものです。

まったく面倒くさい国民(私のこと)もいるわけですから。


【関連リンク】
1055 働き方と社会構造
665 目には見えないが確実に残る身分制度について
557 運転免許証の取得推移と乗用車保有台数推移を並べてみる
549 まだ有料のセキュリティソフトを使っているのですか?
482 身分証明書もとい本人確認書類とは?


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1098
2015年の日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳(出典は厚労省)で、前年からそれぞれ0.29歳、0.22歳伸びています。

日本は世界で一番の長寿国と思われていますが、世界銀行(World Bank)が2016年に発表した2015年のデータでは男性は10位、女性も2位となっていて、男女総合では香港に続き第2位となっています。

またWHO世界保健統計2016年版では男女平均が83.7歳で世界1位、男性は6位、女性は1位という結果です。

長寿命の国であることは違いありません。

こうした寿命が伸びていくことは、国の隅々にまで予防医学が広まり、先端技術が浸透し、生活環境が清潔に保たれ、伝染病や風土病が拡がらず、大きな事故や天災が起きず、戦争や紛争も起きず、平和で安全な社会であることの証明ですので一般的に悪いことではないでしょう。

しかし困った問題が出てきていることも確かです。

少子化+高齢化+長寿化では高齢者が受け取る年金が最大の問題ですが、それ以外に医療費と介護費の急増も大きな問題となってきています。


国民医療費・対国内総生産・対国民所得比率推移

グラフ出典:厚生労働省

グラフを見ると明らかなように、高齢化と医療の高度化により医療費の増加が年々激しくなっています。

また医療費の他にも介護費用も2014年で9兆5783億円と前年から4.4%増加しています。2000年度は介護費は3兆6273億円でしたので14年は2.55倍に増加しています。

介護費用って基本自己負担で賄っているのでは?って思っているそこのあなた。

40歳以上になるとなけなしの給料から無慈悲に天引きされる介護保険料が使われています。

定年で仕事を辞めたからと言っても生活保護を受けていようが関係なく(所得によって差はありますが)死ぬまで介護保険料は支払い続けます。介護を一切受けない人もです。健康保険と同じようなものですね。

したがってというか介護費が増加したり、介護保険料を支払う人の数が減ってくれば自ずと1人当たりの保険料がどんどん高くなっていくと当たり前の論理です。これも健康保険料と同じです。

最近では40歳以上の支払い義務を30歳以上にしようとか少子化対策に向けた論議もされていますが、それ以上にここ20年間はさらなる高齢化と、それにともなく介護受益者の数が一気に増加しますのでその原資作りに奔走しているというのが現実です。

このまま手をこまねいていていいのでしょうか?

じゃ、なにができる?

老人や要介護者は早く死ね!?

確かに若い人の中にはそう思っている人は少なからずいるでしょう。

敗戦のなにもないところから、高度成長を遂げ、世界と戦って日本を世界の中で一流国家に引き上げてきたという自負のある老人からは「まともに税金や社会保険を支払わないニートや引きこもりや障害者の若者は死ね!」と返されるかも知れません。

いずれも人間的に、人道的にそのような罵り合いは現実的な解決にはなりません。

ここで考えるべきは、医療費も介護費もできるだけ使わないでいい方法を探っていくべきでしょう。

そんな方法があれば誰も苦労はしない!?

そうでしょうか?

寿命には何歳まで生きるかという平均寿命と、何歳まで介護に頼らずに生きられるかという健康寿命というのがあります。



2001年の平均寿命は男性が78.07歳、女性が84.93歳で、健康寿命は男性が69.40歳、女性が72.65歳でした。平均寿命と健康寿命の間には、男性で8.67歳、女性で12.28歳の差があります。

2013年は同様に平均寿命男性が80.21歳、女性が86.61歳、健康寿命が男性71.19歳、女性が74.21歳となっていて、それぞれ9.02歳、12.4歳とわずかですが12年間のあいだに健康ではない期間が拡がってきています。

暴論とのそしりを恐れず極論すれば、この介護が必要な平均寿命と健康寿命の差をどんどん縮めるようにすれば、医療費も介護費も両方抑えられるということになります。

介護が必要になった高齢者はすぐに死ねと言うのか?

ま、そう慌てずに、、、

現代の医療は高度化し、いわゆる本人の意志とは関係なく、生かされ続けている人がいます。植物状態と言う場合もあり、全国的な調査は行われていません。

ある推計データでは、高齢者だけではありませんが日本には5万人を超えると言われています。

日本では安楽死は法で禁止されていますので、医者は患者を生かすことだけを考えて延命処置をおこないます。それは高齢者の終末医療においても同じです。

もっと言えば本人が生前に延命処置を断っていたとしても、本人の意識が失われた後、患者の家族や親戚が医者に対して、できる限りの延命処置をして欲しいと願えば、意識のない本人の意志は無視され、生かし続けられることになります。医者もあとで家族から訴えられるのは嫌ですからね。

身内の人には1日でも長く生きてもらいたいという気持ちはわかりますが、まずは高齢者における終末期医療の抜本改善をおこない、目の飛び出るほど高価な生命維持、延命処置を制限する制度を作るところから始めるべきでしょう。延命処置は基本的にまだ年齢的に若くて、体力もある人に限るとか。

そうしないと患者の家族は「積極的に延命処置を頼まないとは冷たい家族だ」という周囲からのそしりを受けることになり、そうした状況から本人の意志とは関係のないところで延命処置を続けると言うことが当たり前に行われます。

そうして、生命維持装置の力で生かされ続ける高齢者を減らしていき、やがては高度医療に頼る高齢者の延命措置は恥ずかしいこと、みっともない、「死ぬときは自然に死にたい」と思える風潮を作っていくことが、現役世代だけでは負担しきれなくなってきた医療費や介護費を減らしていく最後の方法ではないかと思うわけです。

医療費や介護費の多くは高齢者ではなくこれから社会で活躍してくれる若い人や若い障害者にもっと向けられるようにして、人生の大半を使い終わった高齢者は自然の摂理に逆らわず、騒がず慌てず医療や介護に頼らず、静かに去っていく方法を受け入れるような社会にしていくのです。

日本を含めまだ安楽死や尊厳死を認めていない国は世界でも主流ですが、やがて日本と同様に超高齢者社会になっていく国々の見本となるようにこうした制度も日本が取り入れて、次世代にツケを残さない人生の終わり方の見本を作っていくべきではないかなと思います。


【関連リンク】
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896 多死社会と葬儀ビジネス
738 日本人の年齢別死因は
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