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2年前に「Amazonにガチ対抗できるのはイオンかセブン&アイか」というブログを書きました。

3年前には「小売ビジネスはどこへいくのか」と、2年半前に「アマゾンジャパンは国内の小売り業を破壊するか?」のブログも書いています。

いずれも国内の小売り形態が変化しつつあり、このままでは効率とスピード、そして価格にも勝るAmazonの独壇場で、日本の店舗を構えた小売業は壊滅的な状態になりかねないと警鐘を鳴らしたものです。

そういう私自身も気がつけば、家電、PC関連、書籍、自動車・バイク関連部品、日用品、飲料水、医薬品など年間数十万円の買い物をAmazonでしていて、その他の小売店で買うよりも多くの支払いをしています(妻が支払っている食料品や日用品代を含めるとさすがに超えたことにはなりませんが)。

最近、ようやくと言っていいのかわかりませんが、総合スーパーのイオンとイトーヨーカドーあたりが小売りの抜本的な改革に乗り出してきています。

共通しているのは、総合スーパーとコンビニ、通販、流通の連携と活用です。ま、今のところそれしか優位性はないと思われます。

セブン&アイ、店舗とネットを融合する新サービス「オムニ7」開始…系列8社が参加

イオン系スーパー3社連合発足、「オムニチャネル」拠点に、グループ連携模索。


ここで登場してくるキーワード「オムニ」または「オムニチャンネル」ですが、直訳すると「全販路」「とか「総流通」と言うのでしょうか、つまり小売りの中の在庫~販売(消費者)~流通までを統合して、システマチックにおこなうこととされ、その中には通販などのEC事業や、リアル店舗販売、物流、会員ポイントカード、系列クレジットカードなどが含まれます。

イトーヨーカドーを運営するセブン&アイグループの各小売店や提携店では、ナナコという電子マネーで買い物が出来、通販はセブンネット、決済はセブンカード(アイワイカード)で、受け取りは宅配か近くのセブンイレブンで。在庫と配送はスーパーとコンビニと共通化し、さらには時間勝負の生鮮品の通販の配送にも生かしていくと改革にはすごいものがあります。

対消費者においては、カード利用者がいつなにを買ったかという情報が小売店側に蓄積されることで、今後そのカードの持ち主がいつなにを必要とするのか、どういう商材に興味を持っているのかなど分析し、タイムリーに有効な情報提供をおこなうことで、消費を刺激したり他店に流れるのを防ぐことができます。

消費者にとってはそのカードを使うことでポイントがたまり、それが割引同等として利用できれば、双方にとってWinWinの関係が築けます。

そうなってくると、地元商店街の個人経営の小売店や、そうしたグループに入らない中小スーパーなどは消費者側からすれば敬遠されがちになり、結局は大手小売りグループには逆らえないという構図になってしまいそうです。

生活圏が限定されている場合は、それでもいいのでしょうけど、毎週買い物に行く先が違うような人の場合は、結構面倒くさく、さらにドラッグストアのポイントカードやら、通院先の診察カードやら、レンタルDVD屋のカードやら、何枚もカードを作らされて財布の中がパンパンになってしまいそうです。

個人的には、ポイントカードは一切持たない主義なので、そうした制度はありがたくなく、現金値引きをしてくれるところを優先にしたいのですが、今では行く先々で、「ポイントカードはありますか?」と聞かれ、「ない」と答えても「すぐできますのでいかがですか?」と尋ねられ、鬱陶しくてかないません。

ブックオフの店内では「ポイントカードを作らない理由が見あたらない!」とBGMで繰り返し放送されて「ほっとけ!作らないのは家の家訓じゃ!」とばかりに癪に障ります。

またポイントだけならいいのですが、最近ではポイントカードを持っていないと駐車場が無料にならなかったりして、敵も然る者引っ掻くもので、どうにかして利用者にポイントカードを持たせ囲い込み、個人情報を集めたがっています。嫌ですねぇ、、、

それはそうと、小売りに関してはセブンとイオンの2強対決なのか?ってところですが、まだ大手家電販売店(ヨドバシやヤマダ電機、ビックカメラなど)や、ネット通販専門店(Amazon、楽天、yahoo!など)、老舗デパート(三越伊勢丹、高島屋、大丸松坂屋など)、大手コンビニグループ(ローソン、ファミリーマートなど)、携帯電話キャリア(NTTDoCoMo、auなど)、大手ガソリンスタンド系列、それにまもなく民営化される日本郵便など、まだまだ小売りの主導権争いは続き、事業統合や提携、激しいつぶし合いなどが起きそうで、遠目で眺めている分には(火の粉が身に降りかかってこなければ)まったくもって楽しみです。


【関連リンク】
955 道の駅の転換期
856 コンビニの活用はどこまで進むのか
813 地域活性化は道の駅で
719 道の駅は次の段階へ進めるか
709 Amazonにガチ対抗できるのはイオンかセブン&アイか
702 アマゾンジャパンは国内の小売り業を破壊するか?



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967
内閣府が発表する「平成27年度版高齢社会白書」はこれからの日本の社会状況が推察できるたいへん興味がわく統計資料です。自分が知識として理解しておきたいこともあり、わかりやすく紐解いてみたいと思います。さてこれからなにが見えてくるでしょうか。

以前、2年近く前に「平成25年度版高齢社会白書を概観してみる」でも書いていますので、その続編という形です。


【高齢社会 現在の姿】
65歳以上の高齢者人口は過去最高の3,300万人(前年3,190万人、前年比110万人増)
65歳以上の男性1,423万人、女性1,877万人。女性は男性の1.32倍
総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は26.0%(前年25.1%)。国民3.85人に1人が65歳以上。
※数値は平成26年(2014年10月1日)時点のデータ


1947~1949年生まれの団塊世代と、その前後の比較的人口が多い層が65歳以上に達し、高齢化率はここ数年のあいだに急速に進みました。

次の大きな山は団塊ジュニア(1971~1974年生まれ現在41歳~44歳)で、この世代が65歳以上に達した後にようやく高齢化率の上昇が停まると言われています。

今年(2015年度)に65歳(高齢者という定義)を超えるのは1950年(昭和25年生まれ)が主で、この年生まれは団塊世代には及ばないものの約233万人にも達します(2014年の新生児数は100万人)。

233万人が新たに高齢者の仲間入りするのに高齢者の増加は110万人というのは、差し引き123万人の高齢者がこの1年で亡くなるということで、それでも倍近い高齢者の歳入超過?になっています。これが高齢化率を高めているわけですね。

もっとも恐ろしく思うのは、75歳以上の人口増加です。

20年前1995年には718万人だった75歳以上高齢者は、2014年で1,592万名と2倍以上に膨れあがっています。団塊世代がすべて75歳になる10年後の2025年には75歳以上人口はなんと2,179万名に達すると言われています。

2,179万人と言うと、現在の東京都の全人口が1300万人、大阪府が880万人ですから、その東京都と大阪府の全人口分が75歳以上という勘定で、オーストラリアやルーマニアの全人口とほぼ同数が後期高齢者という想像を超えた超高齢者国家となります。

75歳以上になると、すべてに健康である人は少なく、したがって仕事をして税金を収めて自活できる人は極めて少なく、年金など公的支援に頼らざるを得ません。医療や介護、生活扶助など社会福祉関連に膨大なコストが必要になるのが明かです。

医療や薬品、介護ビジネスは成長する一方で、国民が支払う税金や年金掛け金、介護保険料が上がり、その分はレジャーや子育て、教育、不動産、贅沢品の出費が抑えられてしまい、国内の景気は負のスパイラルで悪化の一途をたどりそうです。

そうならないようにするには、一部の裕福な高齢者が抱え込んでいる巨額の資産(遺産)を、その子孫だけではなく、広く配分できるような施策(譲与税・相続税の改革)を早めに取ること、出産から子育ての費用や学費すべてを所得税から控除するなど優遇をはかり、少子化をはやく食い止めること、高齢で多少健康に問題があっても、無理なく働ける労働環境や就業支援体制を整備し、希望するならば何歳になっても働ける仕組みを設けることではないでしょうか。

スーパーやコンビニのレジ係、ファストフード店・携帯電話販売店などの店員、郵便局や宅配便(軽量品限定)の配送アルバイトは、強制的にすべて60歳以上限定の職種にするしかありません。

NHKや民放各局も国からの要請を受けて、表面に出るアナウンサーや司会者はすべて60歳以上で構成するとか。NHKのみんなの体操のインストラクターもみな60歳以上限定です。


【将来推計】
27年後の2042年に65歳以上人口は3,878万人でピークを迎え、その後減少に転じるが高齢化率は上昇。
45年後の2060年の総人口は8,674万人、65歳以上人口は3,464人。
2060年の高齢化率は39.9%に達し、国民の2.5人に1人が65歳以上。4人に1人が75歳以上。
2060年には、高齢者1人に対して現役世代(15~64歳)は1.3人(2014年時点では2.4人)。

生産年齢人口の減少と年金受給人口増加で、ここ数年のうちに確実に年金問題がまた火を吹くのは確実です。さすがに1.3人でひとりの高齢者を(年金や医療費)支えるのは無理でしょう。

従来のように現役世代が高齢者を支える年金の賦課方式は維持できなくなり、自分が支払った年金掛け金が将来もらえるような積み立て方式に変更する必要に迫られるでしょう。

そうすれば旧社会保険庁が無責任にやりたい放題やった無茶苦茶な運用や天下り先への放漫な支出ができなくなります。

そして普通に考えられるのは「年金受給は70歳からとし、企業は70歳までの雇用義務化」、「一定の資産を持つ高齢者の年金は大幅減額」、女性や高齢者から税金と年金掛け金を取るために「女性と高齢者雇用推進運動」の展開などでしょうか。

年金の制度改革ではいずれにしても損する人と得する人が出てきます。そうした大衆の反対運動と既得権者の策略に惑わされず、それでも改革を推し進められるかどうかは政治家のリーダーシップでしょう。

しかし小泉さんじゃないですけど国民にとって相当な痛みを伴う改革なので、その政治家は多くの国民から恨みを買うことになりそうです。


【地域別高齢化率】
都道府県別高齢化率(人口に占める65歳以上)の2014年と2040年(推定)


現在もそして25年後も高齢化率が一番低い(若者が多い)都道府県は沖縄県です。逆にもっとも高齢化率の高いのは今も25年後も秋田県となっています。

そのもっとも高齢化率の高い秋田県の高齢化率が現在32.6%ですので、すでに県内の3人に1人は65歳以上ということになりますが、25年後の2040年にはもっとも高齢化率の低い沖縄県を除き、第2位の愛知県ですら32.4%の高齢化率となります。

つまり、沖縄県を除き、日本中が今の秋田県以上の高齢化率となってしまうわけです。

秋田県では、そうした高齢化率の上昇で、住宅着工件数、乗用車販売台数などが明らかに下降してきました。それが今後、沖縄を除き日本全国で同じような傾向になると予想されます。

就学や就職などで若い人が毎年大量に流入してくる東京都ですら25年後には33.5%の高齢化率です。

お婆ちゃんの原宿と言われてきた巣鴨地蔵通り商店街ですが、今後は池袋、新宿、六本木、渋谷、銀座あたりはすべてお爺ちゃんお婆ちゃんの原宿化していくのかも知れません。

だって今の高齢者はお金も暇もあるので、店側はお金を使わない若者をターゲットとするよりずっと商売相手として魅力的です。


【高齢者の経済状況】
世帯主が65歳以上の世帯の平均貯蓄額2,377万円で、全世帯平均1,739万円の約1.4倍
世帯主が65歳以上の世帯で貯蓄額が2000万円以上が40.2%
世帯主が65歳以上の世帯で貯蓄額が500万円未満は20.5%
2013年における65歳以上の生活保護受給者は88万人。
65歳以上人口に占める65歳以上の生活保護受給者の割合は2.76%(全人口に占める生活保護受給者の割合は1.67%)

いつもこのデータには驚かされます。老後の貯金で比較的安心とされる2000万円以上の貯金を持っている高齢者世帯は全体の4割を超えています。

ここでは貯蓄で2000万円以上ですから、例え時価1億円の家や土地を持っていても、貯金がなければそれには入ってきません。

つまり不動産や株式、貴金属、絵画などを含め、総資産で2千万円以上持ってる人って聞けばもっと増えるってことです。

不謹慎ですが、振り込め詐欺が高齢者世帯ばかりを狙うのは至極自然なことです。しかも今の高齢者世帯の持ち家率は8割を超えていますので、フルにもらえる年金があれば、預貯金は家のリフォームやレジャー、保険外の医療費ぐらいにしか使い道がありません。

もっとも「下流老人」という嫌な言い方をされていますが、貯金がなく、年金だけでは生活が厳しい高齢者も現在推定で600~700万人がいるとされており、今後も増えていくことは間違いなく、生活保護と、最低年金額のせめぎ合い、高齢者の医療費負担問題が今後も続きそうです。


【健康】
日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、2013年時点で男性が71.19年、女性が74.21年
65歳以上の要介護者等認定者数は2012年度末で545.7万人(65歳以上人口の約17%)、前年度末から258.0万人増加
75歳以上で要介護の認定を受けた人は75歳以上の被保険者のうち23.0%

健康寿命をみると、75歳以上の後期高齢者になると健康な人はかなり少なくなってくるという証明でもあります。

介護人不足や社会福祉費用の相対的削減により、欧州の社会福祉先進国に見習い、日常生活は高齢者自らが自力でおこなうという介護、医療体制をさらに進めていく必要があるでしょう。それには規制緩和や、外国人、IT、ロボット、自動運転パーソナルカーなどの活用が不可欠になってきます。

生活保護を受給すると医療費が無料となり、生活保護とほぼ同額しかもらっていない年金生活者が医療費を支払うと生活保護受給者よりも生活が苦しくなると言う社会保障の矛盾を解決していかないと、安心できる老後なんかおくれません。

法改正して生活保護費の中から医療費(の一部)を支払ってもらって公平にする仕組みを作るしか解決方法はないかも知れません。


【雇用】
2014年時点で60~64歳の雇用者は447万人(前年459万人)、65歳以上の雇用者は414万人(前年375万人)
2014年6月1日時点において、過去1年間の定年到達者のうち、継続雇用された人の割合は81.4%、継続雇用を希望しなかった人は18.3%

法律で高齢者の雇用継続が義務化され、定年を迎えた8割以上の人が継続雇用されるようになっています。ただ問題なのは一部の大手企業を除き、その継続雇用の形態は嘱託や契約社員の非正規雇用ばかりで、統計上の非正規社員数の増大に拍車をかける結果となっています。

定年を過ぎてからも、正社員として安定してフルタイムで働きたい人と、そこまでは働きたくないという人とがいると思うので、様々な選択肢を選べるような体制が早くできるといいでしょう。


さて、いかがだったでしょう?

堺屋太一氏は2005年の著書「団塊の世代『黄金の十年』が始まる」の中で、これからは「年金+兼業型労働が可能であり、自分の好きなことのために働くことのできる、黄金の世代」と書いていましたが、団塊世代の多くにとっては「退職金にしても年金にしても満額もらえ無事逃げ切ることができラッキー」で済むかも知れませんが、後に続く世代は、年金はすべて食い尽くされ、医療などの社会福祉制度も破綻をしてしまい、それらの後始末を含めて残された莫大な負の遺産を背負い込むことになりそうです。

もっとも、一番大変なのは、自分が高齢者になったとき、国内の高齢化率がピークに達する団塊ジュニア世代ですが、団塊ジュニア世代の多くは現在の比較的裕福な団塊世代から遺産や持ち家を相続するケースが多く、資産など多少なり恩恵が得られます。

そういう意味では、団塊ジュニアに続くポスト団塊ジュニア世代(1975年~1985年生まれ)こそ、もっとも過去の負債ばかりを背負わされ、得るものがなにもない世代と言うことになるのかも知れません。


【関連リンク】
957 歩行アシスト、パーソナルモビリティについて
946 介護人材を増やす
924 高齢化社会で変形性股関節症が増加する
896 多死社会と葬儀ビジネス
816 2050年に向けてのグランドデザイン

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966
録画しておいた「無法松の一生」の映画を見ました。

無法松の一生は、そのタイトルこそよく知っていましたが、中身についてはまったく無知で、「無法の松」って言うからにはきっとヤクザ者か博徒みたいな渡世者の松吉てぇーのが主人公なのだろうぐらいに思っていましたが少し違いました。

原作となった小説は、太平洋戦争前、軍部が幅を利かしている世相の中、八幡製鉄所に勤務をしていた岩下俊作氏のもので、1939年の直木賞候補にも挙がりましたが、元々は「富島松五郎伝」というタイトルで懸賞小説に応募し入選した作品です。

映画化されたときにこの印象に残りやすい「無法松の一生」という題名に変わりました。「富島松五郎伝」というタイトルのままだったらここまで有名にはならなかったかも知れません。タイトルって重要なんだとあらためて思います。

映画化は、太平洋戦争中の1943年に稲垣浩監督、阪東妻三郎、園井恵子主演で製作されたのが最初で、リメイクされたのは戦後の1958年、同じ稲垣浩監督、出演者は変わり、三船敏郎、高峰秀子が主演です。

この15年後のリメイク版は最初の映画製作が戦争中だったため、大人の恋愛感情など検閲のために表現できなかった部分をちゃんと盛り込みたかったからと言われています。

その後も1963年には村山新治監督、三國連太郎、淡島千景主演で、その2年後の1965年には三隅研次監督、勝新太郎、有馬稲子主演でも作られていますので、22年の間に合計4本の同じストーリーの映画が作られたことになります。

ちなみに同一原作を何度もリメイクされた小説原作の映画としては「潮騒」がありますが、1954年から1985年の間の31年のあいだに映画が5本、テレビドラマが2本が製作されています。

もっとも、史実で時代劇の範疇に入りますが、おそらくリメーク作品としてもっとも多いと思われる「忠臣蔵」などは映画、ドラマ合わせると過去に100本近くが作られていたりします。

潮騒の場合、主演女優は、青山京子(1954年)→加賀まりこ(TV1962年)→加藤澄江(TV1963年)→吉永小百合(1964年)→小野里みどり(1971年)→山口百恵(1975年)→堀ちえみ(1985年)と変遷していきますので、年配の人のおおよその年齢を知るには、「潮騒の女優名」をしれっと聞いてみるのが手っ取り早いかも知れませんね。

話しは元へ戻して「無法松の一生」は、映画もドラマも1950年代から60年代に制作されたものばかりで、私の場合、子供の頃にそのタイトルを何度か目にしたことぐらいしか記憶がないというのもうなずけます。1970年代以降生まれの人だと、このタイトルを聞いてもまったく聞き覚えがなく、「嫌われ松子の一生 」のこと?って聞き返されるかも知れません。

で、今回見たのは1958年製作の映画で、三船敏郎演じる荒くれの人力車夫富島松五郎と、高峰秀子演じる若くして夫を亡くして後家となった良家の奥方吉岡良子との、結ばれるはずのない大人の淡い恋愛物語。最後に泣かせの場面が待っています。

この映画は芸術性が強く求められるヴェネツィア国際映画祭にも出展され、同時に出展され下馬評の高かった木下惠介監督の「楢山節考 」を押さえ、見事に金獅子賞(最高賞)を受賞した作品でもあります。

三船敏郎も数多くの映画に出演していますが、代表作のひとつと言ってよい作品ではないでしょうか。人妻を演じた当時34歳の高峰秀子も爽やかな色気を醸し出していて、見応えもありました。

先日三船敏郎を特集したBSのテレビ番組を見ていたら、三船敏郎の弟分でもあった夏木陽介氏も三船作品の中では「『無法松の一生』が一番好きだ」とインタビューに応えていました。


【関連リンク】
915 「風と共に去りぬ」を観てわかるアメリカ史
885 年末年始にみた映画(DVD)
880 高倉健さんを偲び映画の思い出など
877 映画「浮草」(1959年)
811 ゴールデンウィークにお勧めの古い映画10本
690 映画「グランド・ホテル」と「第十七捕虜収容所」

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杖というと腰が曲がった老人かハリーポッターかって感じで、「変形性股関節症」と診断した医者からは「これから歩くときに股関節に負担がかからぬよう杖を使いなさい」と言われていても、今まで見向きもしませんでした。

しかし最近は、足(股関節)症状がかなり深刻になってきて、時に右足に力が入らなくなり、少しの距離を歩くのにも難儀することがしばしば発生するようになってきました。階段などでは片足に体重がかかってしまうので恐怖です。

ついに変形性股関節症の診断下る

ただし調子のいいときと悪いときがあり、いつもではないのですが、まったく困ったものです。

やはりこの病気は徐々に悪くなっていくことはあっても良くなる(改善する)ことはありません。まだすぐに人工股関節への置き換えはしたくないので、しばらくこの痛みとつきあわなければなりません。

気にしてないと、全然目には入ってこなかったのですが、いざ自分に杖が必要と思っていると、都心のビジネス街においても意外と多くの人が杖を使って歩いていることに気がつきます。

多くというと言い過ぎですが、それでも1日1回は目にします。使っているのが老人とは言えないまだ現役バリバリ世代の人がです。

また冬のスキーシーズンなどには、いかにもスキーやスノボで足を怪我をしたと思われる、杖をついて歩く若者の姿もチラホラ見かけます。

前から少し気になって、ドラッグストアなどで売っている杖を何度か見ましたが、どれも高齢者用のものが多く、いかにも老人用の杖だけは嫌だなぁって思ってましたが、Amazonで調べると年齢に関係なく使えそうで、しかも思っていたよりずっと安いので衝動的に買ってみました。

買ったのは、「RQシリーズ 伸縮ステッキ/スポーティータイプ ブルーRQS-SP101-BL」で、値段は驚きの2,262円。ドラッグストアなどに置いてある杖はどれも4~5千円、高級そうなのは1万円以上します。

一応は「棒状つえ製品安全協会SG認定商品」とかで、すぐにポッキリいきそうないい加減な製品ではなさそうです。

販売している会社も文具などで有名なナカバヤシです(生産は中国)。

さて、正しい杖の使い方も知っておかなければなりません。

仕込みを抜いて電車の中で平気で足を踏んづけるマナーの悪い中年や、混雑した中でも床に座り込んで携帯ゲームしているやんちゃな中高生を問答無用でバッタバッタと斬りまくるわけではありませんので。やってみたい気はしますけどね。

まず杖を持つ手は悪い足とは反対側になります。

つまり歩くときは左右交互に重心がかかりますが、悪いほうの足に重心が移ったときに、同時または先に杖でその体重を分散させるため反対側で杖をつくわけですね。たまに間違った使い方をしている人がいます。

私の場合、右足(右股関節)が悪いので、右利きで右手のほうがなにかと扱いやすいですけど、実用上は左手で杖をつくことになります。

杖の長さは、最近は長さ調整ができるものがほとんどですから購入時にはあまり気にしなくてもよさそうです。

身長が高いとその分だけ長い杖が必要か?って言うと、実はそうはならず、身長が高くても腰が曲がっていたり腕が長いと短くて済んだりします。要は地面と腕を軽く曲げて下へおろしたときの寸法ということです。

杖を使った正しい歩き方としては2通りあります。ひとつは3点歩行で、もうひとつが2点歩行。

3点歩行は(1)杖→(2)悪い足(杖と反対の足)→(3)良い足(杖と同じ側の足) の順で歩く方法で、悪い足をかばうにはもっとも適した歩き方です。

ただデメリットとしては歩く速度が遅くなります。通常なら2歩で歩くところを杖を入れると3歩で歩くようなものですから当然ですね。

2点歩行は(1)杖と悪い足を同時に出す→(2)良い足の順で歩く方法で、これなら慣れると歩く速度はそんなに遅くはなりません。

ただし杖と同時に出す悪い足にも多少は負担がかかるのと、杖が滑ったりしてうまく力の分散できないと、悪い足に体重がかかってしまいます。より安全性を求めたり、痛みがひどい時は、3点歩行が向いています。

そうしたことを知っているのと実際におこなうのとでは全然違います。自転車の運転と同じで、話しを聞くだけでうまく乗れてしまうのではないのと同様、杖を使った歩行もしばらくは慣熟練習をしないと、なかなかテンポ良くうまく歩けないものです。

それに実際に使う場所では、障害物もあれば対向してくる歩行者や自転車もあり、かなり臨機応変にジグザグで歩くことを求められます。

近くの公園へ持ち出して、歩く練習をしてみました。杖の長さを使いやすく調整し、一度歩く際のテンポさえつかむとあとは一度乗れた自転車がその後も乗れるのと同様杖を使ってスタスタと歩けそうです。

同様に階段の上がり下り、左右前後に傾斜のある道など応用編も忘れずに。

もし手術をして人工股関節を入れたとしても、今後はこうした杖が一生手放せなくなると思うと、ちょっと複雑な思いがします。

余談ですが、Amazon杖を見ていたら出てきたのですが、仕込み杖などいろんなタイプが売られているのですねw。

刃は本物ではないでしょうけど、これを買う人ってどういう人なのでしょうかね、、、

【関連リンク】
902 イボを取る
628 優先席に思うこと
602 ついに変形性股関節症の診断下る
597 足(股関節)を痛めてできなくなったこと
433 股関節唇損傷についての続編



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964
羆嵐 (新潮文庫) 吉村昭

1977年に発表された作品です。舞台は今からちょうど100年前、1915年、大正時代の北海道の中西部、三毛別の山中に移住してきた開拓農民が暮らす寒村で起きた三毛別羆(さんけべつひぐま)事件を題材としたドキュメンタリー的な小説となっています。

三毛別羆(ひぐま)事件とは、すでに冬眠しているはずの巨大なヒグマが、北海道の山中の部落(三毛別)に現れ、そこの開拓民達を数日間にわたり襲い、幼児や妊婦を含む6人(胎児を含めて7人とする場合もあり)を食い殺し、3人に重症を負わせたという事件です。

小説とはいえ、生き残った部落の関係者からも取材をしたようで、巨大な牛ほどの大きさの熊が襲ってくる迫力や、熊が人間を骨ごとバリバリと食べる音、生きながら食われていく人の叫びなど、その内容は迫真に満ちていて、まるでホラー小説のようです。

人間の味を覚え、機敏に動き回りながら人家を荒らし回る羆と、為す術もない田舎の警察。息詰まる対決は、長年熊撃ちをしてきた嫌われ者だった老マタギが登場することで一転します。そのマタギと羆の対決シーンは見ものです。

Googleマップでその現地の風景が再現された写真がありました。
羆事件現地

当時の住居と羆の模型が作られていますが、想像以上にでかいですね、体重340kg、背丈は2.7mと言いますから、銃を持たない人間が襲われたらひとたまりもありません。また銃を持っていても、恐怖に足がすくみ、激しく動きまわる羆の急所に狙いをつけて冷静に撃てるとも思えません。

考えてみると、100年後の今でも毎年のように羆やツキノワグマの被害が報告されていて、負傷者は年間50人から多いときで150人、死亡者も平均すると毎年1名程度が亡くなっています(ちなみに蜂の被害による死亡者は年間20人ぐらい)。

元々熊の生活圏内に人間が開拓という名の下に入り込んでいったことで起きたとも言えますが、動物との共存の難しさをあらためて知りました。そして動物園やサファリランドで見かける羆のイメージが完全に変わります。

★★★

著者別読書感想(吉村昭)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

幸せになる百通りの方法 (文春文庫) 荻原浩

2012年に単行本、2014年に文庫化された短編集です。収録されているのは、「原発がともす灯の下で」「俺だよ、俺。」「今日もみんなつながっている。」「出逢いのジャングル」「ベンチマン」「歴史がいっぱい」「幸せになる百通りの方法」の7編です。

著者は過去4度直木賞候補に挙がりながら受賞を逃しています。時間の問題で、近いうちに受賞されるでしょうけど、ユーモアもあり、いい作品が多く文庫化されたものはほとんど読んでいます。

1作目の「原発がともす灯の下で」はタイトルが示すとおり、2011年に大震災と原発事故が起きた後に書かれたもので、あの災害と事故から日本人の生に対する考え方、生き方に変化が現れ、小説もそれに沿った新しい流れができてきたかなと感じています。

好きなのはオレオレ詐欺の電話をかけている役者志望の男が主人公の「俺だよ、俺」、プータローの息子を叱ったあと会社をリストラされてしまって、家族に言い出せないでいる「ベンチマン」。

離れて暮らしていても通じる親子の関係や、ちょっとした日常の変化で気がつく夫婦の絆とか、つらくて厳しい世の中で必死にもがきながら生きている中にも、ホッと心温まる話しもあります。

本のタイトルにもなっている「幸せになる百通りの方法」は、ビジネス書がすべてみたいな「意識高い系男子」が自由奔放ながらも暗く後ろ向きの歌ばかりを路上で歌っているホームレスな女の子にひかれていくという変わり種ストーリーでなかなか面白かったです。

ただ、こうした短編作品も悪くはないのですが、個人的には「明日の記憶」や「愛しの座敷わらし」のような長編が私は好きです。実入りの割に校了するまでに時間と手間がかかってたいへんだろうとは思いますが。

★★☆

著者別読書感想(荻原浩)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

努力しないで作家になる方法 (光文社文庫) 鯨統一郎

著者は数多くのミステリー系シリーズ小説を出しておられますが、ミステリーでもなく、またシリーズでもない独立した単発の作品で、2011年に単行本、2014年に文庫化されています。

小説の主人公は大学を中退した後、様々な仕事を渡り歩きながら小説を書き、雑誌に投稿しながら作家デビューを夢見ていますが、一方では子供が生まれて、このまま作家デビューもできず、サラリーマンとしても中途半端という困窮した状況に追い詰められていきます。

著者の作家デビューに至るまでの奮闘を小説にしたって感じですが、そこはベテランの書き手さん、半分ぐらいが実話でもう半分は創作だろうと思っていましたが、なんとこの小説の内容の9割は実話だと「作家・柴田よしきのブログ」に著者へのインタビューに書かれていました。著者のファンならこれを読まずしてって感じですね。

なので、この本は決して「努力しないで作家になれる」ノウハウ本でもなければ、「努力したから報われる」という美談の話しではありません。ただ文章を書くことが好きで好きで、それを生活の一部にしたい、できればそれでメシを食いたいという執念めいた男の姿を描いたものです。

投書とか投稿、懸賞への応募というのは習慣化されやすく、結果が出たりするともう病みつきになったりします。新聞の読者投書、俳句や短歌の投稿、クイズ懸賞の応募など、身近なところでもよく起きる現象です。私も小学生の頃は新聞のクロスワードクイズのファンで、毎週応募していて、何度か図書券が当たり大喜びしていました。

さすがに雑誌へ小説を投稿するような能力も経験ありませんが、作家志望の多くの人は、それが習慣化している人達ということなのでしょう。

著者が投稿していた雑誌へは他に常連だった人として、貫井徳郎氏など、映画雑誌への投稿では佐々木譲氏の名前が挙がっていたのには、なるほどと思いました。

そうした他人が小説家へと次々デビューしていくのに、なかなか自分にはお鉢が回ってこないと焦り、一度は貯めてきたアイデアノートも破り捨てて作家をあきらめようともしますが、30歳を過ぎてから再び思い立ってチャレンジをするところは泣かせどころでしょう(泣きませんでしたが)。

著者は当初は大きな出版社の懸賞小説などへ投稿を続けていましたが、最終的にデビュー作となる「邪馬台国はどこですか?」の短編に目にとめてもらえたのが創元社という老舗ながら出版社としては小さく、メインは海外SF翻訳本が多いところ。

そう言えば百田尚樹もその後500万部を超える記録的な大ヒット作「永遠のゼロ」を大手出版社に持っていった時は、まったく取り合ってもらえず、それまで聞いたことがなかった小さな出版社の太田出版からデビューすることになったと言っていました。まだデビューもしていない作家への大手出版社の扱いってそういうものなのでしょうね。

著者自身は覆面作家で、年齢等も不明ですが、本小説の中の主人公の年齢が著者と同じであれば、私とほぼ同年齢ということになります。それだけに、行動力旺盛でやんちゃな団塊世代が散々荒らし回った後の、ややしらけた社会の中で、傲慢な彼らに頭を押さえられ、ぺんぺん草も生えない中をひたすら実直に歩んできたと共感がわきました。

でもその難しい時代に無事に作家デビューでき、しかも実力通りに売れっ子?になれて結果オーライ、よかったじゃないですかね。

★★☆

著者別読書感想(鯨統一郎)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

幻影の星 (文春文庫) 白石一文

2012年に単行本、2014年に文庫版が発刊されています。ちょうど2011年の大震災直後に書かれた作品ということもあってか、生きる意味、生かされている意味など哲学的な内容の話しになっていて、今まで読んだ著者の作品とはちょっと感じが違っています。でも悪くないですよ。

主人公は、地方の高校を卒業後、地元の酒造メーカーに就職しますが、その会社が大手ビールメーカーに吸収され、元上司の引きで、勤務地も東京に移っています。

地方に住んでいる主人公の母親から、電話がかかってきて「どうして帰って来たのに家に寄らなかったのか?」と言われますが、なんのことかわかりません。

聞くと、実家近くの最寄りのバス停に、主人公のネームが入ったコートが置き忘れてあって、親切な人が届けてくれたという。ポケットの中には主人公が子供の頃好きだったチョコレートまで入っています。

ところが主人公はその場所へ行ったことはなく、しかも置き忘れられていたコートは、東京の自宅の部屋のクローゼットにあるものとまったく同じもの。誰かのいたずらにしてはあまりにも手が込み入りすぎています。

と、ちょっとホラーな感じで話が進んでいきます。そういうところもこの著者の作品としてはちょっと異質な感じです。

その理由は、ひとつには3.11の大震災で多くの生命が一瞬にして消えてしまった、日本全体が重苦しく、やるせなく、厭世ムードが漂う社会的背景を引きずっているって感じです。

そうした命の煌めきや、過去から引きずってきた思いなどをひっくるめた閉塞感の中で生きる人達を軽めの哲学とともに小説化したらこうなりましたって感じなのか。何を言っているのか自分でもよくわからないけれど。

★★☆

著者別読書感想(白石一文)

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