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インターネット新世代 (岩波新書) 村井純
日本のインターネットの父とも言われた村井氏は、創業まもないIIJに関与されていた頃から、その名前はよく知っていましたが、私よりもずっと年上の人と思っていたところ、2歳だけ年上だと知って驚きです。
現在の肩書きは、慶應義塾大学環境情報学部長を勤めながらも、ビジネス界で何社かの社外取締役や顧問などを務められているようで、決して象牙の塔でふんぞり返っているだけの人ではありません。
この2年前に発刊された新書では、新しく生まれた様々なネット用語や新技術の解説などもあり、また近い未来のネットの姿などもあって、歳に関係なくビジネスマンにとって興味をもって読めるのではないでしょうか。
こういう技術系の新書は発刊後旬なのは1年以内で、せいぜい2年ぐらいまでが読むに耐えられると思って間違いないでしょう。私が読んだタイミングは内容がまだ陳腐化する前で、ためになる本として読むことができました。
こういう本は読むタイミングが難しく、早く読み過ぎると理解できずに終わってしまい、遅すぎると「そんなの知ってるよ」か「想定が全然違っていたじゃん」かのどちらかになってしまいます。
この本は単なる技術者や専門家、評論家が書く文章と違い、実際にビジネスの現場でいまも活躍している人が書いているので、実感として社会とビジネスの中におけるインターネットのことがよくわかっていい感じです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
八月のマルクス (講談社文庫) 新野剛志
この本は以前から書店で気になっていたタイトルの小説として記憶に残っていましたが、「あぽやん」を読んで新野剛志氏のファンとなったので読んでみることにしました。
この小説は同氏のデビュー作品で、1999年の江戸川乱歩賞の受賞作品でもあります。
マルクスといえばドイツの共産主義思想家のカール・マルクスを第一に思い浮かべると思いますが、もちろん私もそうでした。
しかし初っぱなから事件で引退したお笑い芸人が主人公と知って「???」となりました。そういやアメリカの偉大なコメディアンにマルクス兄弟ってのがいたなと思い出したのは小説の中でその話題が出てきてからです。
マルクス兄弟はまだ私が生まれる以前の1930~40年代に活躍していましたが、私も子供の頃にテレビの映画で「マルクスの二挺拳銃]」(1940年の作品)を見た記憶があります。
それはさておき、内容は元一世を風靡したお笑いコンビの片方が、ある事件がきっかけで引退をし、今では自分のマンションの大家をしながら地味な生活をおくっていたところへ、今でも現役の昔の相方が突然訪ねてきます。
そしてその数日後にその相棒が謎の失踪を遂げたことで、真相を探るために探偵のようなことをはじめます。
ストーリーも、芸能関連の世界もうまく描けていて、なかなかのハードボイルド小説に仕上がっています。固ゆで小説と言っても主人公は元お笑い芸人というだけで、滅法喧嘩に強かったり、警察やヤクザや天才ハッカーに親しくて手助けしてくれる友人がいたりというのではなく、単なる自由時間がとれる1小市民ってところがいいです。
◇著者別読書感想(新野剛志)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夏を拾いに (双葉文庫) 森浩美
この小説の著者の森浩美氏は男性ですが、同じ浩美でも小林浩美氏(プロゴルファー)は女性、谷口浩美氏(マラソンランナー)は男性、さらに「図書館戦争シリーズ」などで大ブレーク中の有川浩氏は女性で、4回も直木賞候補になっている荻原浩氏は男性で、「鷺と雪」で直木賞を受賞した北村薫氏も男性ですが、「『マークスの山」で直木賞を取った高村薫氏や、既に故人となられたが「グイン・サーガシリーズ」の栗本薫氏は女性と、性別不明の名前でこんがらがりやすいのですが、読んでみるとその内容は明らかに男性作家の本です。
年齢は私より3歳ほど若いのですが、ほぼ同世代。したがって小説の中に出てくる子供時代の記憶に残る遊びやテレビ番組などもかなり近しく、とても懐かしい香りがします。
内容から言うとあとがきにも書かれていましたが、スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」を彷彿とさせる内容です。
主人公は妻に頭が上がらず、自分の息子からもまともに相手にされなくなった、さえない中年男性。しかしある言葉がきっかけで、息子が父親の話しに興味を持ち、自分が子供だった頃の冒険話を始めます。
その話しの中ではファミコンも携帯電話もなく、「ザリガニ釣り」「B2弾」「忍者部隊月光」「ハレンチ学園」「フラッシャー付き自転車」など当時の子供の世界が再現されていておそらく50~60歳あたりの人にとっては十分はまりこむでしょう。
この本は2009年に単行本、2010年には文庫版が出ましたが、最近になって書店勤務の方が推薦されていたのをなにかで読んで買ってきました。
著者は作家という寄り作詞家としてのほうが有名でSMAPや酒井法子など多くの歌手に詞を提供されています。著者の本では他に最近「家族の言い訳」を読んでいます。
◇著者別読書感想(森浩美)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ひかりの剣 (文春文庫) 海堂尊
東城大学病院田口シリーズに登場する「ジェネラル・ルージュの凱旋」の天才外科医速水晃一(映画では堺雅人が好演しましたね)と、シリーズ外で代理母問題に一石を投じた小説「ジーン・ワルツ」に出てくる清川吾郎の二人を主役にした2008年に発刊された小説(文庫は2010年)です。この本を読む前には先に両者が描かれていた2つの本を読んでおくとイメージが湧きやすいのでお勧めします。
時はまだ速水も清川も大学の医学生だった1988年(「ジェネラル・ルージュの凱旋」の20年前)、勉強よりも部活に力を入れていた頃の話しです。
医学生だけの剣道大会「医鷲旗大会」というのがあり、東城大速水と帝華大清川との主将同士の闘いがメーンとなりますが、シリーズでお馴染みの速水と同期生の田口公平や島津吾郎も同じ学生としてチラッと登場してくるところが笑わせます。
「ジェネラル・ルージュの凱旋」では速水が勤務する東城大学医学部付属病院病院長として登場する、つかみ所がない高階権太もこの小説では帝華大から東城大学医学部へちょうど赴任し、剣道部の顧問に就任するという設定で、重要な役どころとなっています。
ストーリーとしては先に書かれた小説での主人公の原点がよく描かれていて、もしかすると最初からこのような設定があってから書いたのでは?と思わせるほど論理矛盾もなくよくできたものでした。
最後の決着の仕方には私的にはちょっと?でしたが、まぁ無難な収め方だったのでしょう。「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速見ファンならぜひ読むべき小説かも知れませんね。
◇著者別読書感想(海堂尊)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
傷痕 (講談社文庫) 矢口敦子
今年NHKのドラマで2001年の作品「償い」が放送され一気にブレークしそうな予感がする矢口敦子氏の2009年(文庫は2011年)の小説です。
「償い」もそうでしたが、家族の中に犯罪者がいたり、その家族と深い関係ができた時のことなどをリアル感たっぷりに描くのがうまい作家さんです。この作品も映画かドラマにするのには向いた作品ですので、そのうち実現するのではないでしょうか。
主人公と言えるのは二人いて、ひとりはある一家4人惨殺事件の主犯として死刑になった男が残した息子です。
ただ犯罪が起きた時にはまだ生まれていなかったこともあり、生まれてからすぐに養子に出されたので、過去のことはなにも知らされないまま大学生になっています。
もうひとりは刑務所で長く刑務官として勤務し、死刑囚の妻が生んだ子供(もうひとりの主人公)を、自分の親戚へ養子として斡旋した男性です。
そういう家族と親戚、養子などが複雑に絡み合い、ちょっと最初のうちは人間関係図がうまく描けずに、登場人物の誰と誰が親子、兄弟でというのが複雑でわかりにくいです。
つまり殺人を犯す二人の男性それぞれの家族、惨殺される弁護士一家、刑務官の親戚家族、死刑囚と内縁関係にあり子供を産んだ女性(1人住まい)、さらに惨殺された一家に嫁いだ妻の兄など。どこかに相関関係図を書いて欲しいぐらいです。
この小説に登場する死刑囚は、実は激しやすい義理の兄を抑えるために行動を共にしていた男性で、殺人事件の後には言い訳を一切せず、罪を全部自分でかぶって死刑が宣告されたという設定です。
それが主題ではないためか、結局最後まで誰が本当に一家4人を殺害したのかは謎のまま終わります。
そしてドラマが動き出すのは、無期懲役で服役をしていた、本当の主犯じゃないかと疑われる義理の兄(主人公からすると義理の叔父)が、20年間の服役後出所してきたことで、主人公の大学生が自分の本当の親とその過去を知ることになります。
また並行して、一家を惨殺された遺族も密かに復讐の機会を待ちわびています。このあたりから少々無謀とも思える展開が見られますが、ミステリー的な内容にするためには必要だったのでしょう。
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あらゆる地域からガソリンスタンドが次々と姿を消しています。私が今住んでいる家に引っ越してきた20年前なら、主要県道がすぐ近くを通っているためか、自宅から半径1km以内に5~6軒はあったガソリンスタンドが今では2軒になってしまっています。
スタンドの跡地は、市街地ならばコンビニやドラックストア、中古車販売店、マンションなど様々に形態を変えてしまい、もうその名残すらありません。しかし少し地方へ行くと、廃業したスタンドがそのまま手つかず状態で残っているのをよく見かけます。
旅の途中、ガソリンの残量が厳しくなって、国道を走ればすぐに見つかるだろうと思っていたところ、廃墟となったつぶれたスタンド跡がいくつかあるものの、営業しているスタンドが全然見つからず、いつ燃料切れになるか冷や汗たらりで苦心したことがあります。
以前だったら残量警告灯が点いてから探せば問題なかったのですが、深夜や地方の知らない土地では早めに給油をしなければ安心してドライブができません。困ったものです。
ガソリンスタンド軒数推移(データ出典:石油情報センター)
ガソリンスタンドの経営側にとってみれば、マージン率が年々減少し、スタンドの維持コストを考えると、地価や人件費が高い都市部だけでなく、地方の老人ばかりの数十~数百世帯程度の集落では販売量も低調で、とても経営的には立ちゆきません。
また安いと知ればわざわざ隣町や遠方にあるスタンドへ買いにいく人が増えていて、大量仕入大量販売で廉価に仕入できない零細な給油所では資本力のある大手チェーン店にかないません。
さらにスタンド経営を圧迫することになったのが2011年から施行された消防法で、40年以上前に埋設した燃料用地下タンクの改修を2年以内に行わなければならず、その期限が来年(2013年)2月にやってきます。
費用の面でその改修ができずに廃業せざるを得ない老舗スタンドも増加しているのでしょう。
都道府県別にスタンド数の推移を見ると、1997年と2012年の15年間のあいだに、もっともガソリンスタンドが減少した率の高かったのが東京都でその率はなんと50%減。
つまり半分に減りました。2番目が47%減の大阪府、3番目が44%減の福岡県、4番目は42%減の京都府、5番目は42%減の愛知県と概ね大都市圏が占めています。
都道府県別ガソリンスタンド軒数推移(同上)
逆に減少率が少なかったのは沖縄県22%減、以下秋田県26%減、新潟県27%減、山梨県28%減、青森県28%減と大都市圏から離れた地方の地域が多いです。そして減少率の全国の平均は37%減でした。
同様にこの15年間でガソリンスタンドの店舗数がもっとも減少したのは減少率で大きかった東京都で-1,380店、2番目が愛知県で-1,256店、以下大阪府-1,075店、千葉県-941店、北海道-929店となります。全国合計では21,872店舗が閉鎖されています。
それではなぜ大都市圏に集中してガソリンスタンドの数が大きく減少したのでしょうか?
理由はいくつか考えられます。例えば都市部では利益の減少により、人件費代や地代のコストと引き合わなくなったこと、廃業後の跡地の有効利用がしやすいこと、高燃費車の増加で需要が減り、またエコ意識の高まりから特に都市部では公共交通へ移ったこと、大手フランチャイズ店との熾烈な価格競争で負けて疲弊したことなどが考えられますが、実はもっとも影響が大きかったのはセルフスタンドの登場です。
さかのぼること14年前の1998年の消防法改正では、規制が大きく緩和され、外国では当たり前だったセルフ給油式のガソリンスタンド設置が可能となり、現在では約2割ほどのスタンドがこのセルフ式を取り入れています。
ガソリンスタンド種別推移(出典:全国石油協会[資源エネルギー庁調べ])
このセルフ店は従来のフルサービス式のスタンドとは違い、人件費コストを大きく減らすことができ、スペースを有効に利用し給油する場所を拡大できるようになりました。
結果的に経費が抑えられ1店舗あたりの売上が上がることは、ガソリン価格の競争で周囲のライバル店より優位にたてます。
そして今までは家や会社から近いというだけで分散していたユーザーが、遠くても安いセルフスタンドへ集中したことで、その周囲のフルサービス型スタンドは経営が立ちゆかなくなったというわけです。
そしてセルフ式に変更すると同時に、コンビニやコーヒーショップを併設するスタンドが徐々に増えてきました。しかし今のところ需要が多い都市部の幹線道路沿いや街中に限られているようです。
それは規制によりスタンドと併設する店舗は同じ時間帯で営業しなければならず、交通量が多く需要の高い24時間営業の店などに限られているということでしょう。
例えば24時間営業のセルフスタンドに10時から20時までのカーショップやスーパーを併設するようなことが現状ではできません(双方が同じ時間帯だけで営業するなら併設することは可能)。
以前ブログで「ガソリンスタンドは今後地方都市の集落において、コンビニや郵便局などを併設したラストワンマイルの拠点になるかもしれない」と書きました。
しかし現状ではスタンド併設式店舗は主に都市部に限られて、人口の減少が続く地方においてはまだこれからといったところでしょう。
そうした地方集落でガソリンスタンドとコンビニなどのコラボが普及するには、以下の条件が必要です。
1)市区町村の自治体からの支援(併設コンビニ内に役場の出張所開設や指定購買先として優遇)
2)ネット通販が普及し、配送拠点が必要となる(郵便や通販物資の拠点化)
3)宅配会社と日本郵便の取り扱い併設が可能となる(1店舗で複数社の取り扱いと共同配達)
4)JAの協力(金融機関としての協力)
5)地方自治の推進と規制緩和(公有地の利用、医療・介護・薬事などの分野で地域限定の施策)
地方で過疎化が進む集落がすでに限界集落(人口の50%以上が65歳以上の集落)へ向かいつつあります。
2006年の国土交通省の調査では住人の半数以上が65歳以上と回答した市町村が7,878集落あり、さらに高齢化が進むと予想される2030年代には、地方の過疎地に限らず、都市部の中でも増えていく傾向にあります。
限界集落の後にくるのは、なにか手を打たない限り、うち捨てられた消滅集落の道しかありませんので、そのような集落にまでスタンドやコンビニが必要かという議論は当然あります。
そしてそこへ行く手前の準限界集落(55歳以上人口が50%を占める)は、限界集落の何倍もの規模があると想定されますので、そのようなところは今後ネット通販の拡大の可能性が大いにあり、こうしたビジネスモデルを創り上げていくことは十分可能でしょう。
【関連リンク】
小売ビジネスはどこへいくのか 2012/10/27
ガソリンスタンドの経営が厳しいと言うことはわかるが 2012/6/20
原油価格とガソリン代 2010/11/1
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おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
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ちゃんと調べてみると容易にわかることなのですが、子供の教育費というのは、その人の人生の中で住宅購入に匹敵するぐらいの大きな投資になります。
最近、職場の中堅社員と飲む機会に子育て費用に関して聞かれることが何度かあり、そこで思ったのは、子供がまだ小さかった頃の私を含め、意外とみんな知らないままで、ある日突然意外な出費に直面して慌てることになります。
親が子供の教育にお金を使うのは当たり前という考え方がありますが、収入がなかなか増えていかないばかりか前年より下がっていく今の環境では、早めに十分な備えをしておく必要があります。そのあたりのことを自分の経験から検証してみます。
私の場合、子供が3人いますが、上の二人は中学校まで公立(幼稚園は私立)、高校・大学は私立へ通わせました。
私自身が高校は私立大学の付属校で、激しい競争や受験勉強もなく、比較的のんびりと学生生活をおくれましたので、子供達にもそれを勧めたわけです。
しかし自分の想像を超えていた教育費の負担と準備不足もあり、さらに40代後半以降は所得が増えず、逆に減ってしまったことにより、3番目の子供には可哀想でしたが高校も公立へ行かせることにしました。
ではいったい上の二人の子供の教育にどれぐらいの費用がかかったのか試算してみましょう。
幼稚園(私立)2年間 80万円(40万円×2年) 小学校(公立)6年間 180万円(30万円×6年) 中学校(公立)6年間 138万円(46万円×3年) 小計A 398万円(補助教材、修学旅行代含む) 高校(私立)3年間 260万円(入学金20万円+80万円×3) 大学(文系私立)4年間 530万円(入学金50万円+120万円×4) 小計B 790万円(教科書、教材、修学旅行、制服代等含む) 学習塾、予備校夏期講習費用 60万円 中・高校での部活関連費用 50万円 小計C 110万円 総計 1298万円 ×2名 2596万円 |
どうです?ちょっとした額でしょう?我ながらこれだけの教育費を今まで支払ってきたことを考えると、よくやったなと(まだ終わっていませんが)思わずにはいられません。
これらのお金は一度に出ていくものではありませんが、積み重なっていくと大きな額となります。2人分の教育費だけで郊外なら中古マンションなら軽く買えてしまいそうです。
一人目の子供がまだ小学生の頃には、生まれたばかりの二人目の子供の分も合わせて(3人目はまだ生まれていなかった頃)、学資保険も含めて約1000万円を子供の教育費として準備していました。その時はそれで十分だろうと甘く考えていました。今思えばとんでもない話しです。
一般的な夫婦で、夫が30歳で第1子が生まれ、5年後に第2子が生まれると仮定します。それらの子が15年後の高校入学時の夫の年齢は45歳と50歳です。
つまりこの年齢になったときに、もし二人とも高校から私立へ行かせようと思うと上記BC合計900万円ずつ2回分の教育費(計1800万円)が、生活費や住宅ローンとは別に必要になるわけです。
もし子供が海外留学したいとか、希望する大学に受からなかったから浪人したい、あるいは遠方の大学へ行くのでアパート代と仕送りが必要などと考えると気が遠くなってしまいます。
高校は公立、大学は私立へ行くとすると、上記の小計B(高校・大学計)から-200万円となり、BC計(高校・大学・塾・部活計)は700万円、二人なら1400万円です。高校も大学も国公立へ行ってくれる孝行息子や孝行娘であれば、さらに-250万円でBC計は450万円、二人なら900万円とやっと1千万円を切ります。
しかし一般的に公立の高校から浪人せずに国公立の大学へ進学するためには、学校の勉強だけでは不十分で、塾や家庭教師、夏や冬には予備校の講習会など、私立高校へ行かせるのとたいして代わらない教育投資が必要と言われています。
先の「身分制度」の時に書きましたが、東大の入学生の親の平均年収は、他の私立大学へ進学する親の平均年収よりも高額だと言われていますが、より上の大学へいくためには如実に親が子供へ十分な教育投資ができる環境でなければならないということを物語っています。
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いま日本では表向きには憲法第14条が「法の下の平等」により「身分制度」は、なくなったということですが、何百年と続いてきた様々な身分制度が完全にそう簡単に消え去るということはありません。
日本で最初に貴族制度ができたのは8世紀の奈良時代とされていますが、その後は大河ドラマでもおなじみの公家や武家などが新しくその勢力を増してきて、制度を自分たちの都合に合わせて自在に変えていきます。
江戸時代には士農工商をはじめとするいくつもの身分制度が決められ、農民や商人の子供が侍を目指そうとしても、実力以上のよほどのことがない限りそれはかないませんでした。
明治時代になり、その士農工商の身分制度は改められましたが、それでも華族、士族と平民とのあいだには歴然とした身分制度が保たれてきました。
橋下大阪市長がしばしば指摘されている「被差別部落」問題は、やはり中世期頃(9~14世紀)から主として「職業差別」から自然発生的に生じたものですが、21世紀の今でも結婚相手を選ぶ際や、他人を誹謗中傷する際に使われるぐらい生き続けているひとつの身分制度です。
現代の日本では、それらの歴史的な身分制度の名残はまだ確かにあり、特に農村部では町会議員や市会議員になっている裕福な世襲議員をトップとして、大地主、役場や学校に勤務する公務員、郵便局長、医者などは世襲で、おのずとその役割と身分が生まれながらに決まっています。
都市部においても、名門大学出身の両親の子供達は、おおよそ同じ名門大学に入り、親が官僚や政治家であればその後を追い、事業家ならばその後をそっくりと譲り受けるなど身分の世襲化は脈々と続いています。
なぜ名門大学出身の親に名門大学へ入ることができる子供ができるかといえば、ひとつには遺伝的な面もあるでしょうけど、それよりも、学習に集中できる家庭生活環境や、塾や家庭教師など親が子供への教育投資を積極的におこなえる環境にあることが考えられます。
例えば東大入学者の親の収入とそれ以外の大学に入学する学生の親の平均収入を比較すると、あきらかに東大入学者の親のほうが高いという結果が出ています。
その傾向はハーバードなど米国の名門大学でも、また私立の名門慶応大学や早稲田大学でも同様です。東大や慶大を卒業すると、親の力を借りなくとも就職やその後の人生でかなり有利になることは誰でも知っていることです。それに親の援助や資産が加われば怖いものなしです。
そして親の収入が高いということは、親が事業家であったり、政治家であったり高級官僚であったりします。その祖父もまた同様だった可能性が高いです。その息子達も超氷河期など関係なく、親や一族の強力なコネで一流企業へ入社したり、親の後を継いだりして将来は約束されています。
つまり今現在でもこうした親の職業や収入、先祖代々からの遺産や人脈という歴然とした身分制度があることになります。
なぜこのような身分制度が現在も続いていくのかといえば、その多くは「遺産を代々引き継いでいるから」ということです。先祖から引き継ぐのは持って生まれた能力というのもあるでしょうが、それ以外にも人脈、縁戚、友人、生活環境、学習環境、そして現金や不動産ということになります。
お金で言うと現在の相続税は比較的緩やかで、生前贈与と組み合わせればかなりの遺産を子供に残すことが可能です。また政治家や会社の後継ぎなど、相続税の網には引っかからない選挙地盤や事業相続というやり方も多くなっています。
とにかくいまの制度ではお金持ちの家に生まれると、それだけで将来の安泰は保証されていますし、逆に親が貧しかったり、早くから親を失った子供は、どうあがいても簡単には抜け出すことができない仕組みなのです。
もちろん橋下市長のように貧しい実質的な母子家庭という環境の中から、有名大学を出て司法試験に合格し弁護士になり、政治家まで成り上がってくる人がいないわけではありませんが、全体の割合からすると極めて異例で少ないでしょう。それが当たり前に普通にできる世の中でないことだけは確かです。
日本人はいまだに昔からの身分制度にすっかり慣れてしまっていて「長いものには巻かれろ」「お上には逆らえない」という一種あきらめというか、高貴な家柄だったり名門出身者に対し従順です。
しかし一方では橋下氏のように下からはい上がってきた人に対しては、ひがみややっかみがあるのか極めて辛辣で差別的です。
その橋下氏が考えている政策の中に「相続税の100%課税」というのがありました。つまり金持ちの子供がなにも努力せずとも与えられる金をすべて税金で徴収してしまおうという荒っぽい政策です。
こういう考え方は鳩山元総理や安倍総裁などプリンスと呼ばれ、親から何億円もの相続が得られる二世三世議員には絶対できないことでしょう。
子供時代からお金持ちの子供達に、散々親の金の力を見せつけられてきたと思われる橋下氏ならではの考え方です。
この考え方にはおそらく国民の99%以上を占めるであろう基礎控除額以上の遺産を子供に残せない人にとっては歓迎されるはずでしたが、意外なことにこれは国民には支持されていないようです。
なぜか考えてみたところ、この考え方が日本人の多くに嫌悪感を持たれている共産主義的に見えてしまうからなのでしょう。「私有財産を没収しようとする共産思想」というような、批判も見受けられます。
もしその相続税100%課税が実施されれば、日本の社会は大きく変わることになります。
よくなるのか悪くなるのかは判断できませんが、金持ちにも貧しい人からも公平に課税する消費税増税よりも、およそ1%の大金持ち、しかもその持ち主が亡くなってから拠出してもらう相続税課税のほうが、社会や経済にとっては悪い影響が少ないからです。
そして橋下氏が狙っているのは、そのような大金持ちの財産の他に、もうひとつには65歳以上世帯の巨額の預貯金にあると思われます。
世界的にみても異常に多いとされている現金性預金の平均額が2000万円を超えている65歳以上世帯(不動産なども含めると総遺産5千万円以上の人も多い)が、今後続々と亡くなっていくことにより、遺産相続が行われることになります。
一般的に今の高齢者は、新たに住宅を買ったり子供の教育費用に大きな支出することがないので、満額もらえる年金だけでも高級な完全介護施設にでも入らない限り、そこそこの生活ができます。
あと10年20年生きたからといって今ある数千万円の預金や不動産がすっかりなくなってしまうわけではありません。今の相続税制度であれば単にそれを受け継ぐ資産家の子供達だけが恩恵を受けることになります。
少子化&人口減少社会でこれから減っていくであろう消費にかける税金よりも、今後20~30年間は増え続けていくであろう相続税に網をかけようとするのは合理的な考え方です。
ただそのためにはまず先に国民全員の資産を捕捉する必要があり、それを嫌がる国民が多いのも確かで(特に世襲の政治家や官僚、名門家系など資産家、事業成金)、これがなかなか一筋縄ではいかないでしょう。
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例えばスマートフォーンの普及。中高年にどっぷりつかっている私には、たかがネットが見られる携帯電話ごときに毎月8千円も9千円もほぼ永遠に支払い続けるなんてアホらしいことはできません。
しかしいま若者の多くは携帯電話といえばスマホがディフォルトになっていて、家でもスマホ、会社でもスマホ、電車の中でもスマホ、歩いていてもスマホと、自転車に乗りながらもスマホ(危ないからやめなってば)、1日の中でスマホの画面を見ている時間の合計を出すと、おそらくテレビや新聞、読書、人との会話などを押しのけて、堂々トップになると推測ができます。
つまり若者の多くは月々8~9千円するスマホ料金は、それから得られる恩恵からすると、さして気にならないということでしょう。
一方、家族のためにも必死で働く中高年者はというと、
・この先いつまで働けるのか?
・今の給料はあと何年維持ができるのか?
・退職金はちゃんと出るのか?
・年金はどうなるのか?
・元気に働けるだけの健康は保てるのか?
・子供は私立ではなく公立へ行ってくれるのか?
・子供は正社員として就職ができるのか?
・親の介護はいつから必要となるのか?
・介護費用は毎月どのぐらいかかるのか?
・自宅の修理やリフォームにいくらかかるのか?
・住宅ローンの返済額が金利上昇で増えはしないか?
などと、切実にまもなく確実にやってくる(すでにやってきている)お金の心配をしなければなりません。
もしスマホに毎月プラス7000円(ガラ携の最低料金との差)の費用を負担することを考えると、躊躇わずにいられません。7千円×12=8万4千円 8万4千円×5年間=42万円(5年間の差)です。
働いてきた時期のほとんどが右肩上がりで、その集団と団結力故に政治を自分たちに有利に動かす原動力となってきた団塊世代(現在65歳付近)以上は、退職金や年金は満額を受給することができ、それなりの蓄えがありますが、その世代以降は、そうした恩恵はもうなくなりはじめています。
したがって、この中高年世代(40~60歳)は、決して若者に負けず劣らず貧しい思いをして、さらに近づく将来への危機を募らせています。
今の20代の若者には自分が60歳70歳になったときのことなど、まだ遠すぎて想像もできませんが、今の中高年者には年老いた親の介護のこともあり身近なことです。
一人っ子同士の結婚ならば夫婦二人で4人の介護をしなければならないかも知れません。
可処分所得というものがあります。例えば20代の若者が実家に住み勤めに出て給料を25万円もらっているとします。
実家には5万円を入れても残り20万円+ボーナスが可処分所得となります。つまり自分が自由にできるお金です。もし1人住まいで家賃8万円(共益費込み)のアパートに住んでいたとすると、17万円+ボーナスが可処分所得です。
同様に50代の男性の場合、50万円の給料で若者の倍額をもらっているとします。しかし住宅ローン返済に12万円、4人家族の生活費(食糧品、生活用品、水道光熱費など)に25万円、子供の教育費6万円(1名私立高校)、自宅の税金や修繕積み立て金に月平均2万円とすると可処分所得は5万円しか残りません。
その中から家族の携帯電話代や衣料、交際費、医療代などを工面することになります。
さらに上記の条件の中、子供が二人とも同時に私立高校や私立大学へ通ったり、親の介護のために夫婦どちらかが仕事を辞めざるを得なかったり、家族の誰かが大病を患ったりすると、もう家計は破綻寸前でしょう。
それらを比べると若者と中高年、どちらが貧しいか一目瞭然です。
そのような危機に直面している中高年に対し、少し前のNHKの視聴者参加討論番組で「今すぐ年功序列を廃止し、もらいすぎの中高年の給料を下げて若者に回すべき」という若者の発言がありました。すぐさま50代の人が「自分達の若いときには『若いうちは給料は安いけどだんだんと上がっていくから』と言われ、それで今まで我慢してやってきたのに」という反論がありました。それが本音です。
若者の場合、昔であれば、衣食住を除くとレジャー用のマイカーに毎月数万円を散財していたり、国内や世界を見て歩くため、あるいは将来マイホームを買うため、さらに先の結婚資金のため、住宅財形や定期預金をして貯蓄をする人が多かったのですが、現在ではそれらの目的は大幅に減少し、スマホの支払いが最大(2年縛りの契約で計22万円)です。
さらにスキルアップのために自分への投資、その他はスポーツ(観戦含む)など比較的軽いレジャーへの出費へと変わってきています。
そう考えると若者が他の欲しいものを我慢してでもスマホへ投資するという行動が少しは理解ができます。
ただもう少し深く考えてみると、それでなくても昔から独創や変化より社会的に単一志向、保守傾向が強い日本人に、スマホという便利なツールが若者の必須アイテムとなりつつあるのは、なにか危険な香りがしないでもありません。ちょっと大げさかも知れませんが。
太平洋戦争は、当時国民の唯一の情報源だった巨大新聞社が、購読数を伸ばすために国民を煽って政治や軍部に圧力をかけ開戦へ向かわせたことはよく知られています。
その当時の巨大新聞社が果たした役割を、今後はスマホでビジネスをする企業や、販売する携帯キャリア(DoCoMo、au、SoftBank)が握っていくことになります。
さらに国や巨大資本企業が、スマホをうまく利用して、国民に対し一斉に「右向け右!」と号令をかけるようなことが起きないと誰が言えるでしょう。
ま、それはともかく、自動車や若者向け住宅が売れなくなったのも、少子化が進み、結婚しない男女が増えてきたのも、時代の流れというよりも、若者の行動パターン、消費パターン、将来設計が大きく変わってしまったことによるのでしょう。
つまりもっと若者に買って欲しいというトヨタ86のライバルは、ホンダCR-Zでもなければ、マツダロードスターでもなく、DoCoMoやiPhoneなのです。
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