リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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ひなた(光文社文庫) 吉田修一
久しく著者の作品を読んでないなぁと思って見つけたこの2006年単行本、2008年文庫化とちょっと古い小説を読んでみました。著者の小説は好きなのでよく読んだと思っていましたが、前に読んだのは2017年1月ですから6年間も間が空きました。
ただし、今回の作品はイマイチ著者の作品としてはキレも深みもなく、男女4人のそれぞれが秘密を持ちつつ日常生活を淡々と送っていき、特に大きな波乱も破綻も起きず、それぞれが秘密の日記を書いているかのような体裁です。
今まで読んだ著者の作品は、主人公が犯罪など重い苦悩や葛藤を抱えた重厚な話しが多かった気がしますが、今回は恋愛にしても不倫にしてもいたって軽々しくこれが現代風か?とも思えますが、あとになって知りましたが、初出が女性ファッション雑誌のJJに連載小説として書かれたものということでなんとなく納得です。
若い大学生の女性、その恋人の大学生の男性、その男性の年の離れた兄とその妻の4人が、それぞれ主人公になって語っていくというストーリーです。
大学生の男性は幼児の頃に余所からもらわれていたという過去があり、そのことが最後には明らかになりますが、特に驚天動地ということもなく、収まるところにスッと収まるような話しです。
★☆☆
◇著者別読書感想(吉田修一)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
宝島(上)(下)(講談社文庫) 真藤順丈
タイトルからすると、スティーヴンソン著の「宝島」と同様、海洋冒険小説か?と勝手に思っていましたが、中身は全然違い、日本人(大和人)にとってはとても宝島とは思えない壮絶な過去をもった辺境の島「沖縄」の戦後まもない時期から日本へ返還される頃までを描いた2018年に単行本、2021年に文庫化された長編小説で、2019年の直木賞に輝いています。
終戦後にアメリカ軍基地から様々な物資を盗み出す「戦果アギヤー(戦果を挙げるもの)」のリーダー的存在で英雄と言われてきた男が、基地への襲撃後になぜか行方不明となり、その幼友達の親友、その英雄の弟、英雄の恋人の3人が、それぞれの生き方をしながらその英雄の男性を捜し求めます。
戦後アメリカの統治領となった沖縄と住民達は、戦争の傷は癒えてなく、また占領側のアメリカ人の傍若無人ぶりに業を煮やし続けてきた歴史が何度も繰り返して書き綴られています。
沖縄の人同士の会話が多く、いわゆる琉球語が多く使われていますが、小説では漢字に置き換えられていて意味は通じます。
沖縄民からすると、アメリカー(アメリカ人)はもとよりヤマトンチュ(日本人)も余所の国という意識があるのは、歴史からわかるように様々な国に支配されてきた苦い過去があるからなのでしょう。特に日本は本土を守るために沖縄を犠牲にし、女性や老人、子どもまで巻き込む悲惨極まりない戦いをおこないました。
そうした今も昔も虐げられている沖縄の人達が、アメリカ軍に一矢報いる戦果アギヤーに喝采を送り、やがてアメリカの一方的な不当な扱いに反旗を翻していくことになります。また沖縄の中にも地域ごとに米兵相手の風俗店や密輸貿易、麻薬、基地から流れてきた武器の転売などを仕切るヤクザ組織ができ、それらの抗争が起きます。
そうした激動の沖縄にあって、幼馴染みの英雄の行方を様々な方法で探っていき、何十年も経ってからその謎が判明することになります。
沖縄のことについては、新聞やテレビでニュースなどを見る程度の簡単な知識しかありませんが、戦後まもなくこのような厳しい社会を生き抜いてきた琉球の市井の人のたくましさと我慢強さには敬服します。
1972年の沖縄返還の時に沖縄の活動家達が要望した返還条件のひとつ「日本の首都を沖縄に移す」というのは、この閉塞感で息詰まった日本にとっては今からでも大きな変化と刺激のために面白い!と思いました。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
パレートの誤算(祥伝社文庫) 柚月裕子
2014年に単行本、2017年に文庫化された社会派ミステリー小説です。
タイトルの「パレート」とは、ビジネスパーソンなら聞いたことがあると思いますが、「パレートの法則」のことを指していて、別名「80:20の法則」とも言いますが、「特定の要素 20% が、全体の 80% の成果を生み出している」ということで、具体的には「20%の社員が利益の80%を稼いでいる」とか、「売上の8割は、2割の特定顧客からのもの」とか、「納税の8割は、2割の富裕層からなる」など経済活動の場でよく使われる法則で、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱したものです。
この小説の舞台は日本の地方都市(呉市がモデル)にある市役所の福祉保健部社会福祉課で、主人公はそこに所属する臨時職員の女性で、主に生活保護関連の仕事をしています。
生活保護とパレートの法則?ってなかなか結びつきませんが、事件が起きて刑事が市役所に尋ねてきた来た時に「生活保護を働き蟻の法則か」と漏らしたことがきっかけになっているようです。
「働き蟻の法則」とは、パレートの法則と少し違いますが、ひとつの働き蟻の巣には働く蟻と働かない蟻がいて、その中の働く蟻だけを集めてひとつの巣にすると、今まで働いていた蟻でも働かなくなる蟻が出現することで、その働く蟻と働かない蟻の割合は常に同じという法則です。
つまりどれほど熱心に生活保護受給者の支援をして自立させても、その分だけまた新たな生活保護受給者が増え、自立している人の数と、生活保護に頼らないとならない人の割合は常に一定だということをつぶやいたわけです。
また終盤に出てきますが、パレートの法則を挙げて、全体の事象のうち2割の人だけが影響を及ぼし、残りの8割の人は影響を及ぼさない、いなくても同じと言われているけど、それは間違いで、8割の人が無価値という意味ではなく存在意義を有しているのは明らかだということが書かれています。
主人公の上司で生活保護受給者の自宅へ定期的に訪問するケースワーカーのひとりが何者かによって殺害され、やがて地域の暴力団との関わりなどが明らかになってきます。
生活保護と暴力団と言えば、生活保護費を搾り取る貧困ビジネスが有名ですが、そうした社会の仕組みなどがわかりやすく小説化されていて、ためになります。
ミステリーとしては、あまり上質とは思いませんが、「お仕事小説」として、また普段あまり馴染みがない生活保護の実体などについて知りたいならば、大いに役立ちそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(柚月裕子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
権現の踊り子(講談社文庫) 町田康
「鶴の壺」「矢細君のストーン」「工夫の減さん」「権現の踊り子」「ふくみ笑い」「逆水戸」の各短編からなる、2003年に単行本発刊、2006年に文庫化された不条理小説集です。
その中の「権現の踊り子」は川端康成文学賞を受賞していますが、いずれもまともな感覚で読むと意識が混濁してしまいそうです。
著者の作品では過去に「きれぎれ」(2000年、芥川賞受賞)と「パンク侍、斬られて候」(2004年)を読んでいますが、いずれも感想を書くのは難しかったものの、長編のためにまだなんとかなります。
ところが、こうした短篇の場合、どのように感想を書けば良いものかいつも悩んでしまいますが、要は「読んでみなきゃわからん!」ということで、読んでなにを思うかは個々人それぞれ違ってくる気がします。
で、「面白かったか?」と聞かれると、「微妙・・・」としか答えようがありません。
★☆☆
【関連リンク】
4月前半の読書 ロスト・シンボル(上)(中)(下)、糸、年金だけでも暮らせます
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ロスト・シンボル(上)(中)(下)(角川文庫) ダン・ブラウン
原題の「The Lost Symbol」は2009年に出版され、2010年に日本語版、2012年に文庫版が出ています。このハーヴァード大学宗教象徴学教授、ロバート・ラングドンを主人公とするシリーズでは「天使と悪魔」(2000年)、「ダ・ヴィンチ・コード」(2003年)に続く3作品目となります。
映画では、「ダ・ヴィンチ・コード」(2006年)、「天使と悪魔」(2009年)、「インフェルノ」(2016年)という順番でこの「ロスト・シンボル」は飛ばされています。テーマが謎の秘密結社フリーメイソンを描いただけに映画化は難しいのかな?と思いましたが、テレビドラマは制作されています。
「謎の秘密結社」と書きましたが、実はフリーメイソンは誤解が多いようですが、決して謎とか秘密だらけというわけではなく、会員同士の親睦を目的とする友愛団体で、多くの会員は加入を隠しているわけではなく、結社の指輪をしていたり、集会に普通に参加したりしています。
ただイメージを大事にする人気商売のタレントや経営者、政治家などの一部には、誤解を恐れて隠している人も少なくないということです。他にもロータリークラブやライオンズクラブという友愛団体はフリーメイソンから派生したもので、ボーイスカウトの設立にも関与していると言われています。
フリーメイソンの会員数は600万人を超え、故人ではジョージ・ワシントン(アメリカ初代大統領)、ベンジャミン・フランクリン(政治家)、ハリー・S・トルーマン(政治家)、レフ・トルストイ(作家)、ヘルマン・ヘッセ(作家)、フランツ・シューベルト(作曲家)、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(作曲家)、J.S.バッハ(作曲家)、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(作曲家)、グレン・ミラー(ミュージシャン)、チャールズ・"チャーリー"・チャップリン(俳優)、クラーク・ゲーブル(俳優)、ジョン・ウェイン(俳優)、アイザック・ニュートン(科学者)、マルク・シャガール(画家)、ヘンリー・フォード(企業家)など、最近の有名人ではシルヴィオ・ベルルスコーニ(イタリア政治家)、デニス・ロッドマン(元NBA選手)、エディ・マーフィ(俳優)など、日本人では後藤新平(政治家)、鳩山一郎(政治家)、高須克弥(医師)などが会員であることをオープンにしています。
そうしたフリーメイソンが、新興国アメリカの首都ワシントンの中心地に密かに様々な痕跡や暗号を残しているという噂があり、それらを解いていくというのが本作品の醍醐味です。
ワシントンには行ったことがありませんが、地図や建物の写真を見ながら読んでいくと、妙に納得感が得られて(単純すぎますが)面白いです。
登場する無茶苦茶賢く強い悪人が、最後に!!!だったというオチには驚きましたが、あれほど強かったのに天井から割れて降り注ぐガラスで簡単にやられてしまうのにはちょっとガッカリ。
「ダ・ヴィンチ・コード」ではフランス・パリを、「天使と悪魔」ではバチカン市国を、「インフェルノ」ではイタリア・フィレンテェを、「オリジン」ではスペインを、そしてこれではワシントンを舞台にした大活劇で、その規模は全然違うものの、日本各地を旅して謎解きをする内田康夫著の「浅見光彦シリーズ」の世界版のような感じです。
そのうちいつかは主人公が日本へやって来て、卑弥呼の謎も解決してくれるのかも知れません。
また、小説は映像化が常に視野に入っている感じで、単なる観光案内ではなく、007シリーズのような派手なアクションや暗躍する悪者との壮絶な対決などもセットになっていてエンタメとして楽しめます。
★★★
◇著者別読書感想(ダン・ブラウン)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
糸(幻冬舎文庫) 林民夫
著者は1966年生まれの脚本家で、数多くのテレビや映画の脚本を手がけられています。その中には、元々は小説や漫画が原作の「うさぎドロップ」(2011年)や「永遠の0」(2013年)、「ラーゲリより愛を込めて」(2022年)などがあります。
2020年に公開された菅田将暉、小松菜奈などが出演した映画「糸」の脚本も手がけましたが、同時に著者の書き下ろしでこの小説ができました。
タイトルからわかるように、中島みゆきの名曲「糸」がモチーフとなっていて、男女二人のせつなく近くて遠い生活を送りながらも、最後には出会うべくして出会うというラブストーリーです。
当初はもっとベタベタした甘ったるい作品かと期待していませんでしたが、意外と言っては失礼ながら幼い頃に知り合って、その後は中年になるまですれ違いが続き、決して青春時代の恋愛とは遠う内容が濃いものでした。
ただこうした恋愛ものにはつきものの、若くして癌や白血病などで死んでいく人がいて涙を誘うやり方は、それが主人公達ではないというだけで、他の恋愛小説と代わりません。
最初の場面、主人公が12歳の頃に、アメリカでアメリカ同時多発テロ事件(911事件)が発生したので、主人公は1989年生まれで、Z世代の直前、通称ミレニアル世代(Y世代とも)と言われた世代です。
その後は、バブル崩壊や、東日本大震災、リーマンショックなど様々な社会情勢が出てきてこの20年間を振り返るような時間の流れがストーリーとともに描かれて懐かしくそれらの時代を思い出すことができました。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方(PHP新書) 荻原博子
2019年に出版された新書で、先日読んだ「保険ぎらい 「人生最大の資産リスク」対策」(2020年)の前編だったような感じです。というのはこちらにも「保険ぎらい」に書かれていた内容がかなり含まれています。
すでに年金生活者となった私としては参考にしようと読み進めましたが、どちらかというと、まだ若くて年金生活に入る前の方に向けて書かれているようです。
というのも、老後に不足する資金に備えて、国や銀行が国民に強く勧めてくる投資信託などにうかつに投資なんかしちゃダメよとか、金融や保険のアドバイザーや専門家というのはもちろん投資家や加入者のためよりも、所属していたりスポンサーの証券会社や保険会社の利益のために働いていることをあらためて警告してくれます。
このあたり日本人は本当にお人好しで、フィナンシャルプランナーや証券アナリスト、トータル・ライフプラン・コンサルタント、ケアマネージャーなどの資格をもっていたり、大手銀行員や大手証券会社員、大手生保レディだとそれだけで全面的に信頼を置いてしまい、勧められるままに商品やサービスを買ってしまいます。
同様に、コンタクトレンズの販売店やドラッグストアで白衣を着た単なるアルバイトや、メーカーから送られて来た家電量販店の店員を専門家と勝手に勘違いし、きっと自分にとって最適な提案なんだと錯覚し、言いなりで商品やサービスを買ってしまいます。
客のためを思っての提案なんておそらく1%ぐらいで、あとの99%は会社や自分の利益(歩合制やノルマなど)のために働いています。
本書では、「定年時には3000万円が必要!」という常識を覆し、通常の年金以外に付加年金を上乗せする方法や、不要な生命保険の解約、半分以上の人が失敗する投資信託のリアル、定年後の損をしない働き方、国が勧めるiDeCoやつみたてNISAの問題、死に体の地方銀行、老後に必要な医療費と介護費の現実など、わかりやすい説明で書かれています。
ただそれでもやはり老後のための貯金は多いほど安心できるので、少なくともすべての仕事からリタイアするときにはの医療や介護のため最低でも1500万円ぐらいは用意しておくべきという結論でした。つまりタイトルに偽りありで年金だけでは暮らせません。
★★★
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長流の畔 流転の海 第八部(新潮文庫) 宮本輝
野の春 流転の海 第九部(新潮文庫) 宮本輝
最初にこの自伝的小説シリーズを買って読んだのは、「流転の海(シリーズ第1巻)」の文庫が発刊された直後の1994年7月でした。その時にはこれほどの長編になるとは知りませんでした。
それ以降、4~5年間隔(後半は2~3年間隔)で、続編が登場してきましたが、さすがに4年ほど経つと前のストーリーや登場人物を忘れてしまっていることが多く、何度かさらっとおさらいをしながら読み続けてきました。
著者の父親と母親を主人公とした一代記で、終戦直後に大阪にやってきた愛媛出身の男が、まだ焼け跡と闇市が広がる中で大望をいだき、商売を一から始めます。そしてその男が50歳になったときに子供が生まれ、それが著者の分身としてその後ずっと登場します。
自伝的な小説は、長いものも短いものも様々ありますが、ほとんどが1冊で終わるものが多いようです。
長編の大河ドラマ的な小説では、五木寛之著の「青春の門」(1970年~)や、伊集院静著「海峡」(1991年~)、白川道著「病葉流れて」(1998年~)「新・病葉流れて」、花村萬月著「百万遍」(2003年~)の各シリーズも面白く読みました。
そうした自伝小説の場合は、たいていは自分が語り手や主人公となりますが、この「流転の海」では上記に書いたように、両親が主役で、著者自身は脇役に甘んじています。
自分が主人公でないだけに、より客観的に両親の人生を描くことができ、深みを感じます。
さて、この八部と九部では、主人公(両親)の晩年が描かれていて、特に最終巻の残りページが少なくなっていくにつれ、想像はつきますが、最後はどういう結末になるのだろうか、無事では終わらないだろうな、、、と、涙腺が緩んできます。
著者もこの長編小説で、最後まで書けるのか?という葛藤があったそうですが、この小説の主人公(著者の父親がモデル)の最期と同じ年齢の70歳を過ぎても意気軒昂で、さらに凄みを増した筆力で、一読者としては感動の内にこの30年近くかかった小説を懐かしく振り返りつつ無事読み終えることができました。
★★★
流転の海シリーズ一覧 ( )は単行本発刊年
1「流転の海」(1984年)
2「地の星 (流転の海 第二部)」(1992年)
3「血脈の火(流転の海 第三部)」(1996年)
4「天の夜曲(流転の海 第四部)」(2002年)
5「花の回廊(流転の海 第五部)」(2007年)
6「慈雨の音(流転の海 第六部)」(2011年)
7「満月の道(流転の海 第七部)」(2014年)
8「長流の畔(流転の海 第八部)」(2016年)
9「野の春(流転の海 第九部)」(2018年)
◇著者別読書感想(宮本輝)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
新老人の思想(幻冬舎新書) 五木寛之
日刊ゲンダイに連載していたエッセイの中から高齢化と死生観についてのテーマでまとめた新書で、2013年に発刊されました。執筆当時、著者は81歳で、ちょうど日本人男性の平均寿命と同じでした。出版時から10年が経ち2023年現在90歳の著者はご健在です。
タイトルの「新老人」とは、20歳ぐらいまでの若者を第1階級、生産年齢を第2階級、そしてそれ以降の高齢者は第3階級と分けて、その第3階級の人達の多く、一般市井の老人を新老人としています。
その新老人が国民の3~4割を占めるようになっていくこれからの日本の数十年は、世界でも大いに注目される実験場となっています。
というのは、マスメディアでよく出てくる高齢者は、「百歳過ぎてもこんなに元気!」「90歳で現役で仕事」など、特殊な極めて珍しいケースばかりを登場させることに著者自身違和感を感じています。
実態は100歳を超える高齢者のうちおよそ8割は認知症に罹っていたり、寝たきりの状態だったりするので、そうした標準的な高齢者の実態は滅多に報道されることはありません。
なので、新老人は自然に委ねて年齢に応じた生き方、死に方をしたほうが良いという提案です。
また、年金や医療費補助など社会保障の制度が、若者が高齢者を支えるという昭和の考え方から早く脱し、各階級ごとに支え合う仕組みを作らなければ持ちこたえられないのは自明の理で、そのためにも新老人達は子供や孫世代に頼るのではなく、自分で自分の健康、生活、生死を選択しなければならないと主張します。
著者自身当時81歳で、すでに裕福な上に、まだ小説を書き、エッセイを書き、各地の講演会に出掛けるなど、かなり活発な活動をされていて、一般的な年金だけで暮らしている81歳とは異なるような気がしますが、それはともかく、もう年金に頼った老後というのは期待できないという話しはかなり真実味があります。
お金のある老人は、なにをしてもいいけれど、そうでなければ、若い人に迷惑や負担をかけないよう、健康に気をつけて質素につつましく老人らしく暮らしていくことを勧められているようです。
お金もないのに、暴走老人と呼ばれる横柄で暴力的な高齢者が増えてきている事への反感かも知れません。
★★★
◇著者別読書感想(五木寛之)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
三日間の幸福(メディアワークス文庫) 三秋縋
著者の作品はこれが最初です。難しい読み方ですが「みあき すがる」と読みます。当初は2ちゃんねるに書いていた作品を元にした小説で作家デビューをして、今回の作品も同様だとあとで知りました。
携帯小説とかライトノベルだなぁって思って読み始めましたが、中身はその通りの漫画やアニメファンに向きそうなファンタジー小説となっています。
主人公は20歳の大学生ですが、生きる気力もなくなり、よく行く古書店のオヤジやCDショップの店員に勧められて、残りの寿命を買い取ってくれるところがあるということを知り、話しを聞くつもりでフラフラと立ち寄り、結果的に残り30年の寿命を1年1万円、計30万円で買い取ってもらうことになり、3ヶ月後に死ぬ選択をします。
そうした設定自体が漫画の世界ですが、例えば身体はまだ動くけど突然末期の癌などで余命があと数ヶ月と宣告されたと考えると、その時、人はどういう考えをして行動をするかという想像が楽しめます。
しかも、この主人公の元には、逃げ出したり、捨て鉢になって他人に迷惑をかけないよう、他人からは見えない幽霊のような存在の監視員(若い女性)がついて回ります。このあたりも、男性が描く理想の恋愛対象が都合良く目の前に現れて絡んでくる漫画の世界です。
漫画の世界と言っても、最近はメジャーの大谷選手がよく「漫画のような活躍ぶり」と言われるように、リアリティと、ハチャメチャなフィクションの境が曖昧になってきていることからもわかるように、幼稚とか意味不明とか不満があるわけではなく、それなりに楽しく読めました。しかし酸いも甘いもたっぷりと経験してきた還暦過ぎのオッサン(私)が読むのはキツイかも。
タイトルの「三日間の幸福」とは、最後になってその意味がわかる仕組みで、ちょっと意外な結末で、これはよく考えられていました。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
あたらしい家族(集英社文庫) 佐川光晴
2005年に「家族芝居」として単行本が出版された後、2015年に改題し文庫化された小説です。一見すると最初にプロローグがあり、長編小説のような構成に見えますが、実質的には連作短篇集です。
それぞれの短編は「プロローグ」「子どものしあわせ」「弔いのあと」「婆さんたちの閑話」「お嫁さんがやってくる」「エピローグ」となっています。
主人公は、医師を目指して浪人中の身で、実家の北海道を離れ、東京にいる叔父が運営している高齢者グループホーム?のアパートに下宿してきます。
この叔父が変わっていて、北大在学中に劇団に入り、そこの先輩女子とともに役者に専念するため大学をやめますが、芽が出ず、また結婚して子どもが生まれますが、離婚し、叔父は東京へ出てきてプロダクションに属して役者を続けます。
その叔父が下宿していたアパートには以前は学生が住んでいましたが、今は身寄りがなかったりワケありの高齢女性ばかりが住んでいて、元の家主が亡くなる前に、その叔父に後を託されNPO法人を作って高齢女性たちに住まいを提供しています。
さらに、父親が逃げた暴力団関係者の日本人、母親は麻薬中毒で刑務所に収監中という幼い子ども二人もそのアパートで受け入れることになります。
高齢者が多いので、やがては順に亡くなっていくことになるのは自明の理ですが、現代の高齢化社会の問題点を突きながらもコミカルな軽めの構成となっています。
タイトルから、きっとこうなるんだろうなぁという思いは裏切られることなく、若者と高齢者がそれぞれできることをやり、明るくまるで家族のような共同生活をしていくという、少し救われる気がする、もうすぐそこまで来ている近未来です。
★★☆
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1704
大いなる遺産(上)(下)(新潮文庫) ディケンズ
チャールズ・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens)は19世紀中盤(1812年~1870年)に多くの小説を書いた英国の作家です。代表作には本作とともに、『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』などがあり、本作を含め、その多くが映画化されています。
本作「大いなる遺産」(原題:Great Expectations)は、1860年から1861年にかけて初版が出版された著者の後期にあたる作品です。原題を直訳すると「大きな期待」です。
日本語版は複数の出版社から出ていますが、私が買ったのは1951年(昭和26年)に初版が発刊された新潮文庫版の再版です。
大まかなあらすじは、時代は18世紀の中盤頃、まだ赤ちゃんの頃に両親を亡くし、下層労働者の鍛冶職人と結婚した年が離れた姉の元で育てられていた主人公に、匿名の大富豪から、巨額の遺産を相続できる可能性があることを突然家にやってきた弁護士から通知を受けます。「相続できる可能性」がつまりタイトルの「大きな期待」となるわけです。
まだ富豪は存命していて相続するには至ってないものの、下層労働者階級から紳士になるために必要なお金や教育を受けるため、家を出てロンドンに住むようになります。
ロンドンでは、様々なことを学ぶために寄宿する紳士の家で、その家の息子と仲良くなりやがて親友となり家を出て一緒にシェアハウスを借りて住むようになります。
下層労働者の居候だった子供時代に謎だらけの富豪の家に連れていかれますが、そこで知り合った富豪の養女への憧れ、子供の時に沼地で出くわした脱獄囚との関係など、複雑に絡み合いながら、年齢を重ねていくにつれ物語は佳境へと進んでいく一種のミステリー小説です。
ただ、数多くのミステリーを読んできた身としては、その遺産の持ち主が誰かは容易に想像がつき、結果は正解でした。
なにぶん時代背景も執筆されたのも古い小説ですが、テーマのひとつになっている人間性は今も昔も共通した複雑で重要なもので、読んでいても違和感は感じません。
そしてなんと言ってもこの本が長く名作として語り継がれる理由のひとつには、人が生きていくための教訓、友情、親子愛、恋愛、格差、お金の使い道、怨恨などがいくつも散りばめられていて、それぞれの読者の頭の片隅に残るものがあるからだと気がつきました。
あと、まったく本書と直接的に関係はありませんが、最近読んだ「一八八八切り裂きジャック」(服部まゆみ著)と、「ボートの三人男」(ジェローム・K・ジェローム)の小説が、ほぼ同時代で、後に産業革命と名付けられた中のロンドンを舞台とした小説だったので、その頃の世界で最も豊かで洗練され、良くも悪くも話題性に事欠かない都市に住む人達のイメージがダブって見えました。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
人生にはやらなくていいことがある(ベスト新書) 柳美里
著者の作品は20年以上前に2作品を読んでいますが、どのような背景のある方かは一切知りませんでした。
今回この2016年に出版された新著では、韓国から渡ってきた両親のことや、何度も家出や自殺未遂を繰り返し、名門高校から退学を迫られ中退したこと、10代で劇団に加わりそこで知り合って一緒に住んでいた恋人との死別、シングルマザーとなり、新しい離れた年下のパートナー、購入した鎌倉の家から震災後に福島南相馬市へ引っ越しをした事情など、本人の半生記が何度も同じ事が繰り返して書かれていました。
もちろん、著者にはそういう気はさらさらないでしょうけど、読んでいてこれほどの不幸自慢、貧乏自慢、社会貢献自慢を読まされても気の毒とも思えないし、きっと自己主張が強烈で我の強い人なんだろうなぁというのが感想です。随筆というより自分が波瀾万丈な小説の主人公のようです。
ま、それはともかく、過去に読んだ「家族シネマ」と「フルハウス」は、あまり記憶には残っていないですが、悪い印象はなく(よい印象がなければ2作品目は読まなかった)、作家という特殊な創造性をもった方には、なにか突き抜けた経験と、自信、才能があるものなのでしょう。
この新書を読んだことで、作家のバックボーンが良くも悪くも頭の中に残り、今度著者の小説を読むときには、それらが頭の中を横切り、普通とは違った感想になってしまいそうです。
もちろん著者の大ファンであれば、必読書であることは間違いありません。
★☆☆
◇著者別読書感想(柳美里)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
闇の底(講談社文庫) 薬丸岳
著者の作家デビューは2005年の江戸川乱歩賞を受賞した「天使のナイフ」でしたが、それに次ぎ2006年に出版されたのが本書で、2009年には文庫化されました。
著者の警察小説には「刑事・夏目信人シリーズ」が有名ですが、今回の作品はそれらよりもずっと前に書かれた独立した作品です。
少し前に読んだ柚月裕子著「慈雨」と同じく、幼女誘拐殺人事件が主たるテーマになっていて、この同じようなテーマがたまたま続いたことで心苦しくなってしまいました。
主人公は、少年時代に幼い妹が誘拐され殺害された過去を持つ刑事で、同様の事件が起きて捜査をおこないます。
また並行して、過去に幼女を暴行し殺害し、10数年の刑を終えて社会復帰している前科者を、同様の事件が起きる度にその事件と関係があるなしにかかわらず、制裁として凄惨に惨殺していく謎の男性が準主人公となっています。
したがって、警察は、幼女殺害事件とともに、幼女殺害の過去を持つ出所者に対する私的リンチ事件の二つを追うことになります。
果たして幼い妹を殺され、それが自分の責任でもあると思っている刑事に、幼女を殺しておきながら社会復帰してのうのうと暮らしている出所者をリンチから守ることはできるのか?というジレンマがあり、、、というような流れです。
未来と無限の可能性がある子供をターゲットとした犯罪は特に凶悪で許されるべきことではありませんが、日本では死刑制度があるものの、原則として複数名の殺害でないとまず死刑には該当せず、さらになんらかの精神疾患等が認められると意外と軽い刑で社会復帰してくるという問題があります。
さらにこの小説でも問題となっていますが、ペドフィリアは罰せられても再犯の可能性が高く、海外では出所後も居場所を公開されていたり、GPS装置を身につけさせられるという強硬な手段も使われています。
個人的には、刑として敷居が高く、世界の主流(G7の中では日本とアメリカだけが死刑あり)となっている死刑制度は廃止(休止)し、その代わりに、完全に社会とは切り離された住人のいない島に長期受刑者用の刑務所を作り、そこで受刑者自らが農業や畜産をおこない自給自足を原則としながら、長期刑(30年とか50年とか)や終身刑という制度を作ってはどうかと思っています。
★★☆
◇著者別読書感想(薬丸岳)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
空中庭園(文春文庫) 角田光代
2002年に単行本、2005年に文庫化された連作短編小説で、2002年下期の直木賞の候補になりましたが落選しました(直木賞該当作品なし)。増刷されていないのか、Amazonではなぜか販売されていません(2023/3/12時点)。読みたい人はBOOK-OFFへGo!
収録されている作品は、「ラブリー・ホーム」「チョロQ」「空中庭園」「キルト」「鍵つきドア」「光の、闇の」の6篇です。
東京郊外の団地(本文中はダンチ)に住む夫婦と子供二人の一家と、その近くに住む祖母、夫の若い愛人が、それぞれ語り手となって1話ずつ展開していきます。
こうした東京郊外の巨大団地を舞台にした小説は重松清氏や垣谷美雨氏の小説でもよく出てきますが、世代も施設も画一化された人工都市にすむ似たもの同士で、休日には家族でバスやマイカーに乗って近くの巨大ショッピングセンターへ行くのが家族のレジャーという姿は容易に想像ができます。
一家の夫婦は、若いときにできちゃった婚をし、妻は早く母親から離れたかった理由や、ダンチを購入したことで自分の両親とは違った家族を作ろうと奮闘、夫は職を転々としながらも複数の愛人がいるというダメ夫、子供達もそれぞれのストレスや問題を抱えながら、表向きは一切の秘密がない家族を演じています。
そういう意味では、意外性はない普通の家族ドラマとも言えるかも知れませんが、夫の若い愛人が、子供の家庭教師として家に乗り込んでくると言うのは、ちょっとやり過ぎな感じも。
★★☆
◇著者別読書感想(角田光代)
【関連リンク】
2月後半の読書 未来を見る力、カタストロフ・マニア、慈雨、ブルーアウト
2月前半の読書 幽界森娘異聞、保険ぎらい、ホテル・ニューハンプシャー、A2Z
1月後半の読書 ボートの三人男、叫びと祈り、帰れないヨッパライたちへ、親鸞 完結篇
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未来を見る力 人口減少に負けない思考法(PHP新書) 河合雅司
著者は「未来の年表」がベストセラーになり、その後「未来」を銘打ったシリーズ新書が柳の下のドジョウというか雨後の竹の子というか、次々と矢継ぎ早に出版しているジャーナリストです。
本著はその未来シリーズ5作目となる作品で2020年に出版されています。
こうした出生率や生産人口などのデータを元にした新書は、藻谷浩介著「デフレの正体 経済は「人口の波」で動く」など、数多くありますが、こうした話しはほとんどの日本人にとって「不都合な真実」であり、記憶に残したくない、議論のテーマにもしたくない一過性の話題にしかなりません。
というのも、政治家でも重鎮と言われる人達は概ね60歳以上で、さらにそうした政治家を選ぶ最大勢力の団塊世代が75歳以上ということもあり、せいぜいあと20年が無事に過ごせれば良いので、その先の未来がどうなろうと関係なく、考えたくもないというのが実態だからでしょう。
ちなみに現在の衆議院議員の平均年齢は55.5歳、昨年の参議院選挙の当選者の平均年齢は56.6歳ということです。いずれにしても30年後にはほとんどいなくなる人ばかりです。そう言う人達に50年後、100年後を考えた政治ができるとも思えません。
それはさておき、本著はコロナ禍が始まったあとに書かれたもので、そうした未曾有の厄災をきっかけに日本の社会構造や働き方などを変化させるアイデアなども書かれています。
ただ日本人というのは外圧によって変化する(させられる)のは得意ですが、厄災ごときで変化できるか?ってことは懸念するところです。
仕事や市場、老後、地域などの未来について、おおまかな想像図を示してくれていて、それに対してどうすれば良いかというヒントを与えてくれます。
しかし先に書いたように、こうした悩ましい不都合な真実の問題が、グルグルと頭の中に留まっているのがせいぜい1ヶ月ぐらいというのが残念なところです。
★★☆
◇著者別読書感想(河合雅司)
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カタストロフ・マニア(新潮文庫) 島田雅彦
2017年に単行本、2020年に文庫化された予言的なSF小説です。
予言的と書いたのは、その中に出てきた世界中を襲った殺人新型ウイルスの出現と非常事態宣言などは、まだコロナ禍の2年前に書かれた本著で見事に予言をしていたからです。
さらにこの小説では、太陽フレアの爆発により電磁波が発生し地球上の電気通信がすべて異常をきたし使えなくなり、電気が使えなくなると、水道のポンプも動かなくなりインフラが壊滅、原発も冷却できずにメルトダウンし、東京も放射能に侵されていきます。
その太陽フレアの爆発で太陽コロナのプラズマ噴出などの話も出てきますが、太陽コロナと、2019年12月に発生し始めたコロナウイルスとも直接は関係ないですが、コロナという名称が妙に合致していて予言的と言えます。
小説で描かれる時代と舞台は2036年、今から13年後の関東です。
主人公はある医療薬の治験モニターになり、治験中に人工冬眠で眠らされていましたが、目が覚めたら周囲には誰もいなくなっているという異常事態に遭遇します。人工冬眠技術は現在もすでに実用化まで来ていて火星有人探査時に飛行士に施されるという話があります。
その眠らされているあいだに、太陽フレアの爆発で都市機能が完全に失われ、さらに新型ウイルスの流行で、都市部はガラリと変わってしまい、主人公はそうした絶望状態の中でどう生き抜くのか!?という感じ。
昔から無人島への漂流物語とか、ひとり取り残されて生き抜くというスタイルの小説が好きですから、この小説もたいへん面白く読めました。
そう言えば小松左京著の「復活の日」(1964年)とも似ています。あれは核戦争と殺人ウイルスの二重苦でした。主人公はたまたま南極の昭和基地にいて低温に弱いウイルスには罹りませんが、アメリカの核ミサイルが地震に反応して自動発射されると、ソ連の自動反撃核ミサイルが南極にも飛んでくる?ということで、アメリカの核ミサイルの発射を無効化するため生き延びていたアメリカの原子力潜水艦に乗り込みアメリカへ渡るという話でした。
そうした悲劇的な話ですが、主人公が軽く明るく前向きなので、読んでいても暗さはあまり感じません。
著者の小説は12年前に現代の若者を描いた「自由死刑」を、昨年には戦後のドサクサ時代を描いた「退廃姉妹」を読んでいて、そちらもとっても面白かったですが、今回のこの作品とは全く趣の違う内容で、同じ作家さんが書いたと思えないほどでした。有能というか万能な方です。
★★★
◇著者別読書感想(島田雅彦)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
慈雨(集英社文庫) 柚月裕子
著者の小説は3作目となりますが、今回は前回読んだ「朽ちないサクラ」と同様に警察ものというか、正確には定年退職した元捜査一課の刑事が主人公のシリーズものではない独立した長編小説です。2016年に単行本、2019年に文庫化されています。
主人公は群馬県警に入りますが希望とは違い僻地の村民との関係が難しい駐在所に移動となりますが、そこで起きた事件を苦労して解決したことが認められ、県警本部に異動となって刑事になります。
そこで、幼女殺害事件が起き、容疑者を見つけますが、当時のあまり正確ではないDNA検査でクロとなり、本人はずっと否認したまま逮捕され裁判でも有罪が決まります。
しかし事件直後から長く留守にしていた容疑者の隣人が、その事件のあった日時に容疑者が自宅にいたことを目撃したことが判明し、えん罪の可能性があると上司に報告しますが、DNA検査の信憑性に疑義が出ると他の事件にも影響が出るので再捜査は握りつぶされることになります。
組織を守るため、また自分を守るために上司に抵抗できず、えん罪を見逃した16年前のことをずっと後悔していますが、退職後にその16年前の幼女殺害事件と非常によく似た事件が起きたことで、もしかすると当時見逃した真犯人が起こしたのではないかと苦悩します。
退職後は、仕事で向き合った死者の霊を収めるために妻とともに四国八十八か所霊場めぐりに出掛けますが、現職当時の部下からこの新しい事件捜査に協力して欲しいと頼まれ、お遍路を続けながら電話で連絡をとり続けます。
この小説では、犯人を除いて嫌な人は出てこず、また家庭も順調で、すごく恵まれた主人公です。世の中の半分ぐらいは嫌なヤツと思っているので、これほどいい人ばかりが登場すると、ちょっと真実味が薄れて感じます。
あと、四国お遍路のことも詳しく書かれていて、おそらく実際に現地に赴いて距離感や風景などを身を以て感じられたのでしょう。
★★★
◇著者別読書感想(柚月裕子)
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ブルーアウト(小学館文庫) 鈴木光司
著者の小説は、1990年代に「リング」や「らせん」などホラー小説が大ヒットした頃にたくさん読みましたが、2008年に「アイズ」を読んでから15年間ご無沙汰していました。この小説は、2015年に単行本、2019年に文庫化されています。
昨年、和歌山の潮岬へ行きましたが、そのすぐ近くの紀伊大島にあるトルコ記念館や、トルコ軍艦(エルトゥールル号)遭難慰霊碑があることは知っていました。時間の関係で通り過ぎましたが、もし先にこの小説を読んでいたら、きっと寄っていたでしょう。
著者とホラー小説は望むと望まないとに関わらず、ほぼそうしたイメージが定着していますが、この小説にはホラー要素はなく、現代と台風でエルトゥールル号が串本沖で沈んだ1890年と二つの時代が並行して進行していきます。
主人公は、現代は串本のダイビングショップでインストラクターとして働く若い女性、1890年はエルトゥールル号に乗り込むトルコ海軍のアッメフット大尉です。
エルトゥールル号が串本沖で沈んだという歴史は動かないので、旧式の蒸気と帆船の両方を動力とする大型船が、なぜ台風がやってくることを知りながら、難所である潮岬付近を航行し、遭難することになったのかを忠実に書いてありよく理解できました。
その一方、現代のほうで、トルコから来たダイビング客が実は祖父がエルトゥールル号の生き残りで、その祖父が預かった仲間の遺品(ガラスの小瓶)を探すために潜っているという話は、ちょっと無理矢理のこじつけな感じがしますが、ロマンは感じられます。
もう少し、違ったカタチ、例えばホラーでもファンタジーでも、時代を超えた壮大なロマンスなどを期待しただけに、あまりにもささやかなファンタジーで終わってしまい、そこのところだけはちょっと残念でした。
★★☆
◇著者別読書感想(鈴木光司)
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