リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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切羽へ(新潮文庫) 井上荒野
著者は小説家井上光晴の長女として1961年に生まれ、出版社勤務の後、1989年に小説家デビュー、2008年には本書で直木賞を受賞した女性作家さんです。名前は「こうや」ではなく「あれの」で本名とのことです。
本書の内容は、昔炭坑として栄えた離島に住む夫婦を中心に、島の人間関係、東京からやってきた非常勤の小学校教師など、感情に訴えかける日常が淡々と綴られています。
文庫の裏表紙に書かれている紹介には「官能的な大人のための恋愛長編」とありますが、私の読後感としては恋愛小説とは思えず、どちらかと言うと、島の紀行と生活スタイル小説という感じです。
おそらくこの微妙な恋愛感情をわからないヤツと言われるのでしょうけど、どっちつかずであまり意味もなく揺れ動く感情というのが苦手で、読んでいてどうにもイライラさせられます。
都会に住む人には、理解できない島の狭くて濃密な人間関係など、そういう異世界な話しとして読む分には、そういう世界、生き方もあるのねと納得できそうです。
タイトルの「切羽」は、「切羽詰まる」の「せっぱ」と読むことが多いのですが、この著書では「きりは」とふりがながふってあります。
意味は、「トンネル工事、鉱石の採掘現場などで、掘り進めている坑道の先端」(コトバンク)で、本書ではそれから連想した意味として使われています。
余談ですが、「せっぱ」と読むと、意味は変わり、「刀のつばを固定するため柄と鞘に接する部分に使う金具。または、差し迫っていること。どたん場」となります。
著者の作品を読むのはこれが初めてですが、数多くの作品があるので、そのうちまた手に取ってみたいと思います。
★★☆
◇著者別読書感想(井上荒野)
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虚無回廊 I(徳間文庫) 小松左京
虚無回廊 II(徳間文庫) 小松左京
虚無回廊 III(ハルキ文庫) 小松左京
著者の作品には「果しなき流れの果に」「さよならジュピター」など宇宙を舞台にしたSF長編作品も数多くありますが、晩年になってから書かれた本作品が未完のまま残されました。
1985年の雑誌で連載が始まり、途中中断のあと1991年から1992年まで連載されされて雑誌の都合で終了します。続編の執筆の意欲はありながら2011年に亡くなり最後の長編小説となります。
内容は、琴座と白鳥座の間の方向の地球から5.8光年離れた場所に、巨大な人工物と思われる物体が現れたり消えたりすることが観測されます。
しかしその時の宇宙船で現場へ行くには片道だけで何十年もかかり人間が乗船して行くのは無理で、AIロボットのその先を研究していたAE(人工実存)ロボットを送り込むことになります。
AE(Artificial Existence)ロボットは、指示を与えられなくとも自らの判断だけで行動することができるロボットで、自己修復、自己改良、自己再生が可能で、開発研究者の経験や知識、さらには魂までが移植されています。
AEを乗せた宇宙船が巨大人工物に到着する前に、地球にいるAEの開発者が寿命を終え、それを知ったAEは、これで義務や義理がなくなったと、地球との定期交信を終了する判断をし、その後は単独で人工物の探査を始めます。
まるで宇宙の中の集蛾灯のような存在の巨大人工物に何万年も前から様々な生命体や人工生命が集まってきていて、その中で地球から送られたAEはコミュニケーションが可能な異星人や異星人が送ってきたロボットと情報を交換し共に探査活動を始めます。
と、言った内容ですが、まだ宇宙、時に太陽系以外のことがよくわかっていなかった1980年代に、よくこれだけ宇宙開発について想像しながら書けるものだと驚きです。
この小説にも出てきますが、天の川銀河の中心近くにあり電波を発している天体「いて座Aスター」のことが、先日大きなニュースで出てきました。
天の川銀河のブラックホール撮影 最も近くに存在、2例目―国立天文台など国際研究チーム
地球から約2万7000光年離れた銀河系の中心部には、「いて座Aスター」と呼ばれる電波を発する天体が存在する。周囲の恒星の動きから、この天体は太陽系よりも狭い範囲に太陽の400万倍の質量を持つことが判明。巨大なブラックホールと考えられてきたが、今回の撮影で裏付けられた形だ。 |
宇宙にはまだわからないことがいっぱいあるので、ロマンがあふれます。
そしてこの未完の長編を誰かが引き継いで書かないか?ということですが、ハルキ文庫の3巻で解説を書いている瀬名秀明氏などが有力な候補になるでしょう。
でも、実際のところ、偉大な著者がこの遺作とも言える長編のラストをどのようにしたかったのかわからないので、なかなか難しいでしょう。
この3巻まででも十分に楽しめるので、これでいいんじゃない?と私は思います。
★★☆
◇著者別読書感想(小松左京)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ナニカアル(新潮文庫) 桐野夏生
なにも知らずに読み始めましたが、「タイトルからするとこれはホラーものか?」と思ってましたが、全然違いました。
2010年に単行本、2012年に文庫化された長編小説で、主人公は戦前戦後に活躍した女性作家林芙美子です。
以前、林芙美子著の「放浪記」を読みましたが、不幸な貧しい生い立ちから、母親と共に生きるために様々な仕事をし、やがて文才を認められて日記を元にしたエッセイや小説を書くようになります。
◇2016年4月後半の読書と感想、書評(放浪記)
しかし当時の文壇は高学歴で高尚な思想、芸術家が権力と支配力を持っており、貧しい家の出身で、高等教育も受けていない芙美子はその性の奔放さもあって、様々なところで差別や軋轢を生むことになります。しかし芙美子の書く大衆文学は広く庶民に愛され、人気に火が付いて売れっ子作家となっていきます。
その林芙美子の伝記風小説というわけでもなく、芙美子とその夫で画家の緑敏も亡くなり、その夫の後妻となった遺族が自宅にあった遺品を整理していたとき未発表の原稿を発見し、それをどうしようかと相談するところからこの小説は始まります。
その原稿には戦争中に南方へ渡って視察し、軍の宣伝用のレポートを新聞に寄稿するという役目ですが、その旅の途中では、徴用された民間船の船員や、スパイの疑いがかかっている馴染みの新聞記者との密会、さらには、不倫でできた子供を夫に内緒で出産し、しれっと孤児の赤ちゃんとをもらい受けたと画策するなど、「これは事実を書いた自伝なのか、それとも小説なのか?」という謎が、誰にもわかりません。
この遺稿の部分は著者の創作ですが、それ以外の部分は林芙美子のわかっている人生をなぞっていて、小説でありながらも伝記的な側面があり興味深く読めました。
ただ南方インドネシアに滞在していた時の話し、しかも色恋沙汰のベタベタした話しがやたらと長く、ダラダラと続き、ちょっと中だるみを感じました。
それにしても、瀬戸内晴美とかこの林芙美子とか、十分に保守的だった昭和の時代に、性に対してあっけらかんとした女性だからこそ、大衆向けの小説やエッセイを書く作家という職業に向いていたのでしょうかね。
★★☆
◇著者別読書感想(桐野夏生)
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5月前半 アンダスタンド・メイビー(上)(下)、戦国時代の大誤解、隻眼の少女、生きる
4月後半 世界の中心で愛を叫んだけもの、溺レる、生きている理由、ミーナの行進
4月前半 蜜蜂と遠雷(上)(下) 、となり町戦争、連続殺人犯、追想五断章
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アンダスタンド・メイビー(上)(下)(中公文庫) 島本理生
2010年に単行本、2014年に文庫化された書き下ろし長編小説です。2011年上期の直木賞候補作になりましたが、その時は池井戸潤氏の「下町ロケット」が受賞し、惜しくも逃しました。
その7年後2018年上期の直木賞では「ファーストラヴ」(2018年)で著者が直木賞を受賞されています。
著者の作品は、高校生の時に書いたというデビュー作「シルエット」(2001年)だけ過去に読んでいます。
主人公は茨城で母親と暮らす10代の少女で、中学生の頃から始まり、様々な波乱があった後、やがて東京のカメラマンの師匠の元へ転がり込み、独り立ちするところまでの青春&成長物語といったところです。
どうも個人的には現代の中学生が主人公という設定にはついていけないことがよくありますが、これもそうです。
とにかく、中学生でありながら、同級生の男女と仲良くしつつ、一方ではヤバそうな男性に近づき、次々と男性遍歴を重ねつつ、かと言って頭は悪くはなさそうという、読者層を強く意識した内容で、現代の奔放な女性像を描いている感じがします。
雰囲気からは、そのまま水商売か風俗へ流れていきそうなところ、女性からすると神のような独身男性に助けられ、仕事も教わり、中学生の時から願っていた職業で独り立ちしていけるというハッピーエンドに終わります。
その点は救われますが、どん底からの立ち直りに多大にお世話になった師匠の家の鍵を最後に捨てていくのは、巣立ちというか、過去をすべて清算した旅立ちを象徴しているのかわかりませんが、なにか割り切れない思いが残りました。
★★☆
◇著者別読書感想(島本理生)
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戦国時代の大誤解(PHP新書) 鈴木眞哉
著者は、和歌山の雑賀衆鈴木(孫一)一族の末裔という方で歴史研究家の方です。この著書は2007年に出版されましたが、他にも似たようなテーマでの著書が多数あります。
この新書では、歴史ドラマや映画、小説などで、現代で定着している人物像や戦(いくさ)について、より信頼が置ける資料ではこうなっているという解説がなされています。
例えば、桶狭間の戦いでは、今川義元は大軍を率いて上洛途中ということはなかったし、織田信長が隙を突いて急襲したという設定にも根拠は薄いということです。
また戦国時代に馬に乗っているのはかなりの高級幹部だけで、武田騎馬軍団というものは実際にはなく、それを打ち破ったとされる長篠の戦いでの織田信長方の鉄砲三段撃ちなども鉄砲の数や場所の広さから考えられないということになっています。
その日本の戦国時代の軍馬と言えば、背の高さがせいぜい120~130cmぐらいの今で言うポニーの大きさで、さすがにそれを現代のドラマや映画で使用するのは不可能で、豪快に敵陣に突っ込んでいく騎馬隊というのは想像よりもかなり変わったものになるようです。
馬に乗ったまま長槍を振り回して戦う姿というのもなく、敵と戦うときには馬を下り、馬に乗るのは逃げる敵を追いかけるときと、自分が負けそうで逃げるときに使うものだったらしいです。
歴史は時の権力者や縁者によって書き換えられるのはよくあることで、また、江戸時代にはエンタテインメントとして、都合良く誰かをヒーローに祭り上げるため、話しを大きく盛ったり、新たに付け加えたり、偽装することもよくあったそうです。
歴史作家の書く小説も、基本は古い資料などを元としていますが、そこは小説ですから、面白くするために、例えば宮本武蔵を語るときには必ず出てくる「お通」という女性など、明らかなフィクションも加えられます。
さらには現代の学者さんも、特定の資料、特定の記述だけを都合良く信用し、「こうだったはず」と決めつけることもあり、そうしたことが混じっているので、なかなかコトの真相はわからないというのが実際ということです。
そりゃそうですよね。武田信玄側からみた川中島の戦いと上杉謙信側からみたそれとは、戦いの意義や内容や戦果が大きく違っていて当たり前です。
戦国時代のドラマや映画をそうした目で見ると、良いか悪いかはともかく、また違った印象を受けることになりそうです。
★★☆
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隻眼の少女(文春文庫) 麻耶雄崇
2010年に単行本、2013年に文庫化された長編ミステリー小説です。著者の作品はこれが初めてですが、1991年にデビューし、その後は数多くのミステリーを発表しています。
著者の作品は、カルト的なミステリーが多いそうで、この作品はそれに近いものがあり、日本推理作家協会賞・第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞しています。
タイトルにあるように隻眼(片目)の少女が探偵として活躍する内容ですが、主人公はそのワトソン役で自殺志願者の男性です。
日本のある山奥の中に古代より脈々と続く家の女性を神と崇める村落があり、そこの分家の温泉宿に宿泊していた主人公と探偵の少女親子が、本家で起きた次期女神となるべく修行中の少女が次々に殺されたことで地元警察と協力して事件解決を目指します。
と、いうのは第1部の大まかな内容で、第2部がその事件から18年後として始まります。こちらがまた衝撃的です。ま、内容はネタバレになるので、あえて書きませんが。
確かにカルト的と言えばカルトですかね。しかし、最後は明るい日が差してきたような感じで、読後感はわるくありません。
ちなみに隻眼(せきがん)とは、片目のことと、もうひとつ「ものを見抜く眼識。すぐれた識見」という意味合いもあります。複雑な事件を解決する探偵として、その二つをうまく融合して使っています。
★★☆
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生きる(文春文庫) 乙川優三郎
2002年に単行本、2006年に文庫化された時代中篇小説集で、2002年の直木賞を受賞した作品です。
著者の小説は過去に「脊梁山脈」(2013年)と「トワイライトシャッフル」(2014年)を読んでいます。時代小説を読むのはこれが最初です。
収録されている中篇は「生きる」「安穏河原」「早梅記」の3篇で、いずれも江戸時代の地方の藩で働く下級武士がそれなりに出世をしてきたものの、様々な葛藤を抱える侍が主人公です。
まぁよくできたストーリーになっていて、いずれの作品もたいへん面白いのですが、江戸時代ということを差し引いても、世の中はこの小説で出てくる主人公のように生と死をスパッと割り切れたり、奇跡的な偶然の出会いとか、男にとって都合の良い下女とか(これは時代が時代なのでよくあったのかも知れません)、なかなかあり得なさそうというのが実感で(だから小説なのですが)、ベタベタの創作がちょっと気に入りません。
しかしこういう時代小説を読んでいつも思うのは、江戸時代の言葉遣いや日常生活、道具、藩主と家老の関係、武士の作法、しきたりなど、よく調べて書かれているのに驚きます。
それらは普段馴染みがないものなので、様々な文献などを読むしか知識は得られませんし、それを自分の小説で使うには莫大な量の知識を集めないと自由に操れないでしょう。
そういうところには時代小説を書く作家さんには深く尊敬の念を感じます。
★★☆
◇著者別読書感想(乙川優三郎)
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4月後半 世界の中心で愛を叫んだけもの、溺レる、生きている理由、ミーナの行進
4月前半 蜜蜂と遠雷(上)(下) 、となり町戦争、連続殺人犯、追想五断章
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世界の中心で愛を叫んだけもの(ハヤカワ文庫 SF) ハーラン・エリスン
奇才のSF作家と言われている著者の短篇集で原題は「(The Beast that shouted Love at The Heart of The World」とほぼ直訳のタイトルです。
最初このタイトルを見たときは、セカチュー人気にあやかって変な意訳にしたなぁーって勝手に思っていたら違いました、すみません。
著者はこうしたSF小説から、テレビドラマの脚本家として、「宇宙大作戦」や「アンタッチャブル」「ルート66」など多くの作品も手がけている多彩な方です。
この短篇集に収録されているのは下記の15篇です。
・世界の中心で愛を叫んだけもの(The Beast that shouted Love at The Heart of The World)
・101号線の決闘(Along The Scenic Route)
・不死鳥(Phoenix)
・眠れ、安らかに(Asleep: With Still Hands)
・サンタ・クロース対スパイダー(Santa Claus VS. S.P.I.D.E.R.)
・鈍いナイフで(Try A Dull Knife)
・ピトル・ポーウェブ課(The Pitill Pawob Division)
・名前のない土地(The Place with No Name)
・雪よりも白く(White on White)
・星ぼしへの脱出(Run for The Stars)
・聞いていますか?(Are Your listening?)
・満員御礼(S.R.O.)
・殺戮すべき多くの世界(Worlds to Kill)
・ガラスの小鬼が砕けるように(Shattered like A Glass Goblin)
・少年と犬(A Boy and His Dog)
SFですから、ふざけたものから、割とシリアスなものまで様々ですが、あまり真面目なリアリストが読むと混乱するというか嫌になって放り投げたくなるかも知れません。
というのも、1950年代から1960年代にかけて書かれた作品なので、最近書かれた現代のSFというイメージとはかけ離れています。それだけに「50年代にそこまで考えたか?」と読み込むとなかなか深いですが。
それだけに感想を書くのも難しく(よくわからなかったということもある)、おそらく数回読み込まないとちゃんとした感想や書評は難しそうです。
個人的には一番まっとう?な、ラストの「少年と犬」が一番面白かったです。最後はちょっとブラックでしたけど。
60年以上も経っても、異国(日本)で読み継がれている作品だけに、中身は確かそうです。よくわかりませんが。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
溺レる (文春文庫) 川上弘美
1999年に単行本、2002年に文庫化された短篇小説集で、伊藤整文学賞を受賞しています。
短篇は、「さやさや」「溺レる」「亀が鳴く」「可哀相」「七面鳥が」「百年」「神虫」「無明」の8編で、いずれも明快ではない純文学風です。
個人的には、こうした少し風変わりと思える女性から見た恋愛観や性愛などについては理解できない点も多く難解ですが、一般教養?として読み続けています。
著者は私と同年代ですが、書かれたのが23年前ということもあり、40代になり中年域にかかってきた様々な葛藤と複雑な心境(例え著者にはなくとも私にはあった)を言葉にしたものかなぁというのが感想。
この年代というのは、経験もあるし諦めもあって微妙な心理状態な時期です。そうした中での男女の機微を読むと、「そうなんだ」とか「それはないかな」とか様々な思いがよぎります。
★★☆
◇著者別読書感想(川上弘美)
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生きている理由 (講談社文庫) 松岡圭祐
著者の作品の中では義和団事件の「黄砂の籠城」や、キスカ島撤退作戦の「八月十五日に吹く風」など、実際にあった歴史上の事件や作戦を元に小説仕立てにした作品がとても面白く、次いでこの清朝崩壊後の歴史を下敷きにしたこの小説を読みました。
2017年に文庫で刊行された長編小説で、崩壊した清朝の王家の娘が子供の頃に日本の家庭に養女としてだされ、その後日中両国で様々な話題を提供することになる日本名川島芳子の少女時代の物語です。
川島芳子は、清朝の第10代粛親王善耆の第十四王女で、本名は愛新覺羅顯し(あいしんかくら けんし、最後の「し」は王偏に子)です。後に「男装の麗人」とか、「東洋のマタ・ハリ」とか、呼ばれることになり、最後は当時中国を支配していた中華民国に捕らわれ、売国奴として死刑に処されます。
この小説では、満蒙独立運動の先駆者で粛親王と親しかった日本人の川島浪速に8歳の時に引き取られ、表向きは川島家の養女となりますが、なぜか籍は入れずに清朝の皇族のままで育てられます。
理由は、いずれモンゴル人で満州国の軍人に清朝皇族として嫁がせ、そこで清朝王国を復興させようという目論見からでした。
そうした政略結婚(のち離婚)後の華々しい活躍と悲惨な最期はこの小説では出てこず、少女の頃に日本で様々なことが起きたことをフィクションとして書かれています。
先に挙げた歴史小説と比べると、ちょっと奇想天外、松本聯隊のの下級将校が東京においても付きっきりでガードしたり、日本の街中で相続した黄金の駒を中国人と奪い合いで派手な銃撃戦が展開されるなど、無理なところが目立ってしまい、ちょっと残念に思います。
その後の川島芳子を描いた続編が予定されているそうですが、まだ出てなさそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(松岡圭祐)
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ミーナの行進(中公文庫) 小川洋子
2006年に単行本、2009年に文庫化された長編小説で、2006年に谷崎潤一郎賞を受賞しています。
著者の作品では「博士の愛した数式」だけを読んでいます。その小説を読んだ後、寺尾聰や深津絵里らの出演する同名の映画も見ましたが、とても良い心が穏やかな気分になる作品でした。
この作品は最初は母子家庭の主人公の女子中学生が、母親の仕事の関係で、2年間芦屋住まいでお金持ちの叔母夫婦の元に預けられるという設定で、なにか陰湿なイジメにでも遭うような話しなのかな?と身構えましたが、まったく見当外れで、心が洗われるような話しで良かったです。
その主人公が居候させてもらう芦屋の豪邸には、叔母夫婦と、その娘、叔父の母親でドイツ人の老婆の4人の他、住み込み家政婦で実質的に家事全般を仕切っている老婆、通いの庭師でもあり飼育しているコビトカバの世話係の男性が主要な登場人物です。
時代は、著者の年齢にほぼ合わせている感じで、1972年~1973年頃に中学生時代を送っているその時代の頃の話です。
タイトルのミーナとは、主人公の叔母夫婦の娘で小学生の美奈子のことで、喘息もちで身体が弱く、学校以外は滅多に外出しない少女。
そして通学など外出するときには、クルマの排気ガスが苦手なので、コビトカバの背中に乗って移動することが多いという変わった子供です。
どちらかと言えば貧しい家庭の子だった主人公が、いきなり上流社会、しかも家族に外国人がいる家庭で暮らす毎日は刺激的で、しかもその家族の中で大事にされ育てられます。
淡い恋や、ミュンヘンオリンピック(1972年9月)での男子バレーボール日本代表チームの活躍など、様々な出来事が散りばめられていて、退屈しない面白い作品でした。
★★☆
◇著者別読書感想(小川洋子)
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蜜蜂と遠雷(上)(下) (幻冬舎文庫) 恩田陸
2016年に単行本として、2019年に文庫版になった長編小説ですが、2017年の直木賞を受賞した作品です。また同年の本屋大賞も受賞しています。
まだ直木賞受賞者じゃなかったの?というぐらいにベテランで売れっ子作家さんです。私も好きで2006年頃から18作品を読んでいます。好きなのは古い小説ですが「黒と茶の幻想」(2001年)や「夜のピクニック」(2004年)などです。
久しぶりにガッツリ分量のある重量級作品で読む前はちょっと身構えていましたが、読み始めると物語に引き込まれスイスイと読み進めることができました。
内容はまったく知らなかったのですが、国際ピアノコンクールを舞台に繰り広げられるコンテスタント達の熾烈な競争と、過去の経緯などが散りばめられています。
浜松市で開かれている国際ピアノコンクールのことは新人登竜門として有名ですが、3年に1回おこなわれているとか、アジアでは少ない国際コンクールと言うことで中韓のコンテスタントの参加が多いことなど知らないこともいっぱいありました。
最終的な着地は想像ができましたが、個人的にはコンテストの最終順位は小説では披露せず、読者の想像に任せるという手でも良かったかなと。
つまり順位は明記せず、主人公達の決勝演奏が終わり、しばらくしてからその主要メンバーが海辺かどこかに集まって思い出を語ることで、なんとなく読者にはその順位が想像できるという終わり方を想像していました。
しかし、直木賞に相応しい力作でした。著者にしてみれば、これで賞が取れないのならもう縁がないものと諦められそうです。
しかし各コンテスタントが弾くピアノ演奏の表現力、演目のクラシック音楽の解釈などにいくつものパターンがあり、これには苦心しただろうなぁと想像できます。
読者側からすると、そこはあまり物語りの中で重要でないので、軽く読み飛ばすところではあるのですが、作家としては手を抜けません。
私としてはあまり縁のない世界ですが、いろいろと知識が広がり面白かったです。
★★★
◇著者別読書感想(恩田陸)
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となり町戦争(集英社文庫) 三崎亜記
久留米市役所に勤務する公務員のかたわら、この長編小説を2005年に発表して実質的なメジャーデビューをされた著者で、2007年からは専業作家として活躍されています。
そう言えば売れっ子作家の篠田節子氏も八王子市役所の勤務からデビューされていました。医者と作家と同様、市役所と作家業って相性良いのかしら?
それはともかく、小説の中にも役所の手続きの複雑さや、行政の四角四面のやり方が面白おかしく書かれていますが、それはその中にいるからこそわかることでしょう。
内容は、タイトルでわかる?とおり、となり町同士が行政上の手続きに従って戦争を始めることで、たまたまその町で暮らしていた主人公の独身男がそれに巻き込まれていくというストーリーです。
そういう意味ではリアリティはまったくありませんが、戦争という愚かな行いは、今もまだロシアがウクライナへ進行し破壊の限りを尽くし、ミャンマーでは軍部政権が反政府勢力を軍隊で弾圧していて、きっと人類は基本的に戦争(内戦含む)が好きで、世界からなくなることは永久にないのでしょう。
幸い、日本国内では太平洋戦争以降、戦争とは縁がなく、紛争中の地域は除いて攻められたり攻めたりすることもなく、比較的平和を享受しています。
この小説では、「もし・・・」という仮定の話として、国内の地方公共団体同士で内戦が起きると、お役所の手続きとしてこうなりそうという話しをコミカルに描いたもので、平和ボケした日本人にとって身近に戦争が体験できる一種ホラーの要素もあるかも知れません。
しかしなぜ戦争が起きるとかの根拠や必然性に乏しく、いくらフィクションでも設定にかなり無理があるなぁという気がします。
タイトルを見たときに思ったのは、高齢者ばかりになった過疎の町が、その社会保障費に耐えきれず、となり町と共同して高齢者同士を社会保障の予算をぶんどるために戦わせるような「現代の口減らし策」かな?と勝手に想像していました。
なお、この作品は2007年に江口洋介主演で映画化されています。見ていませんが。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
連続殺人犯(文春文庫) 小野一光
2015年に「殺人犯との対話」というタイトルで単行本が、2019年に「連続殺人犯」というタイトルに改題されて文庫版が発刊されたノンフィクションです。
タイトルにあるように、複数の人が犠牲となった実際に起きた殺人事件とその加害者を取り上げ、どうしてこのような事件を起こしたのか、起こさなければならなかったのか、裁判ではどのように証言したか、判決後に加害者はどう思っているのか?など、元雑誌記者らしく事件と加害者を深掘りした内容となっています。
著者は雑誌編集や記者のあとフリージャーナリストとして様々な事件や災害、戦争などを取材している方です。最近では「冷酷 座間9人殺人事件」(2021年)などのノンフィクションもあります。
この著作で取り上げられているのは、( )は事件発覚年
・大牟田連続4人殺人事件(2004年)
・北九州監禁連続殺人事件(2002年)
・秋田児童連続殺人事件(2006年)
・福岡3女性連続強盗殺人事件(2005年)
・大阪2児虐待死事件(2010年)
・大阪姉妹殺人事件(2005年)
・福岡一家4人殺人事件(2003年)
・中州スナックママ連続保険金殺人事件(2004年)
・尼崎連続変死事件(2011年)
・近畿連続青酸死事件(2014年)
の10件のケースです。
なかでも「尼崎連続変死事件(2011年)」は、別のノンフィクション「家族喰い 尼崎連続変死事件の真相」という単独の著作があるほど、特に詳しく書かれています。
しかしこの「尼崎連続変死事件」は、登場人物が多い上に、事件の構造が複雑で、当時新聞やテレビで知ってはいましたが、よく理解できませんでした。
全体的に、週刊誌で何週にわたって事件の詳細が報道されるものと同じで、関係者への取材や公判記録、加害者の生い立ちなどを調べ上げ幅広く書かれています。
しかしフリージャーナリストの限界もあり、収監中の加害者(犯人)や、事件後には姿を消してしまうことが多い加害者の親族から直接話しを聞けることはほとんどなく、内容のほとんどが、他の記者や弁護士、警察、司法関係者、加害者や被害者の知人、同級生などから聞いたという話しです。
そうした話しには当然ながらバイアスがかかり、裏をとることも難しく、誤解やニセ情報が一人歩きすることもありそうです。
それはともかく、いつも小説でフィクションばかりを読んでいると、それが現実と混在してしまいそうになります。時には現実に起きたことを知ることも必要だと思います。
★★☆
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追想五断章(集英社文庫) 米澤穂信
2009年に単行本、2012年に文庫化されたちょっと変わったミステリー小説です。
最初内容はまったく知らないまま、タイトルだけで判断すると、この著者としては小難しそうな内容なのかな?と勝手に判断していましたが、そうではなく(やや解釈自体に難しさはありますが)、長編小説の中に短編小説が5つも出てくるというなかなか凝った作りの小説でした。
主人公は静岡から東京の大学へ進学したものの、1年前に実家の父親が不慮の事故で亡くなったことで、仕送りが滞りやむなく学校を休学中で、居候させてもらっている叔父の古書店を手伝っている若い男性です。
この古書店の主の叔父というのが良い味を出してますが、主人公にとってはなにか助けてもらえる存在というわけではありません。
主人公はなんとかアルバイトをして学費をため復学したいと思っていますが、そんなときに、来店した女性客から「亡くなった父親が書いた5篇の短編小説を探して欲しい」と頼まれ、謝礼を出してもらえることから、叔父には内緒で引き受けます。
ここからがミステリーに入っていくのですが、その短篇を書いた女性の父親には、外国を妻と旅行中に妻がホテルの部屋で首を吊って自殺をしたということで、実は夫が殺したのではないか?という噂がありました。
その自殺と、この短篇5篇が関わっていることが徐々に明らかとなっていき、、、というストーリーで、さらにこの5篇の短篇はいずれもリドルストーリーという最後まで残った謎が解けないまま終わる体裁で、最後の1行だけが別に保管されているというややこしい設定です。
リドルストーリーで有名な日本の小説には芥川龍之介の「藪の中」があります。その他にも既読の小説では貫井徳郎氏の「微笑む人」などもそれにあたりそうです。
実は先に読んだ恩田陸氏の直木賞受賞作品「蜂蜜と遠雷」を読んだときの感想で、「個人的にはコンテストの最終順位は小説では披露せず、読者の想像に任せるという手でも良かった」と書きましたが、まさに読者に長い小説の余韻を残して終わるやり方もありだろうなぁと思った次第です。
いずれにしても、たいへん読み応えのある良い作品でした。
★★★
◇著者別読書感想(米澤穂信)
【関連リンク】
3月後半 虹色天気雨、老いた家 衰えぬ街、冷たい校舎の時は止まる、ドリーム・ハウス
3月前半 思いつきで世界は進む、つまをめとらば、ガッツン!、真昼なのに昏い部屋
2月後半 退廃姉妹、冬の旅、彼が通る不思議なコースを私も、IQ、かなたの子
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虹色天気雨 (小学館文庫) 大島真須美
著者は今年還暦を迎える私とも近い世代で、1992年にメジャーデビューし、2019年には初めて書いた時代小説「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」で直木賞を受賞された方です。作品を読むのは今回が初めてです。
この作品は2006年単行本、2009年に文庫化された作品で、ビターシュガーシリーズとして続編の「ビターシュガー(虹色天気雨2)」が2010年に出版されています。
また2011年にはこの作品を原作とする全10回のドラマがNHKで製作され放送されました。
アラフォーの仲良し女性3人組が主な登場人物で、3人中ひとりだけ既婚者で小学生の子供がいます。
その子供を突然預かってくれと早朝に叩き起こされ、理由を聞くと旦那さんが仕事を放り出して突然家出したので探すのだと。そういうシーンから始まります。
登場人物の説明がなく、いったいどういう人達?どういう関係?とかわからず(後々なんとなくわかってくる)その流れをつかむまで謎ばかりで疲れます。ミステリー小説ではないのですけど。
とにかく女性が三人寄れば恋愛と男の話しばかりというのが普通過ぎて夢がなく、主人公の独身の女性は最近別れた男性に未練たっぷり、もうひとりの女性は愛情よりカメラマンで海外の仕事を優先する年下の恋人と関係がギグシャクしていてと、男にはなかなか理解しがたいねっとりした感情が繰り返されます。
昭和な男性は読むときっと辟易させられますが、同じような年齢、立場の女性には勇気と清涼感を与えるのでしょう。知らんけど。
続編は読みたい?ん~、しばらくはお腹いっぱいで読みたくはないかな。
★★☆
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老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する (講談社現代新書) 野澤千絵
著者の2016年刊新書「老いる家 崩れる街」を2018年に読んでいますが、その続編というか、ヒットした作品の柳の下のドジョウと思われるのが2018年に発刊されたのが本著です。
2018年7月前半の読書と感想、書評(老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路)
タイトルを見て、前のとなにが違う?と一瞬わかりませんでしたが、よく見ると現在進行形から過去形に、そして悲観論から楽観論(期待論)へと変わっています。
本書では、高齢者世帯が住んでいる持ち家の一軒家やマンションが今後急速に空き家となり、その不動産を相続する遺族や関係者にとってたいへんな問題となるという話しがメインです。
確かに高齢者だけが住む世帯が増えつつあります。そしてその高齢者が亡くなったり、自活できずに施設に入ったりすると、その空き家は一気に荒れてきます。
老朽化した一戸建ての場合は、雨漏りや倒壊の危険性があり、マンションの場合は、管理費や修繕積立金、修繕一時金の未払い金が積み上がっていきます。
そうした一戸建てやマンションを相続する人達は、そこに住むか、あるいはすぐに売却することができれば問題はありませんが、そうでない限り、相続放棄するか、放置せざるを得なく、そうした物件が今後20年ほど一気に増加することが予想されています。
私も知りませんでしたが、相続放棄すれば管理責任もなくなると思ったらそうではなく、倒壊の危険性のある建築物や、マンションの共同管理上の責任などからは逃れられません。
そうした相続人(主に子や孫)に負担をかけないように、今の高齢者は準備しておく必要があるということを伝えています。
ひとつだけ、嫌な表現だと思ったのは、不動産のことを負動産、相続のことを争続と表現して書かれていることです。
流行に乗るのもわからなくはありませんが、外国人を害人などと書くのと同様に、なにか不快で悪意を感じる言葉に思えます。一般個人ならともかく、少なくとも最高学府の教授先生が使う言葉ではないでしょう。
★★☆
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冷たい校舎の時は止まる(上)(下) (講談社文庫) 辻村深月
大学卒業後、団体職員として働きながら書いた実質的なデビュー作で、2004年に単行本、2007年に文庫化されました。
デビュー作というと荒削りなものが多い中、とても新人とは思えない書きっぷりで驚きました。
文庫で上・下巻計約1000ページ(単行本は3巻で計約800ページ)とかなり多い分量で、読み始める前まではやや身構えましたが、一度入っていくとグイグイと物語の中に吸い寄せられました。
内容は、8人の高校生クラスメイト達が、大雪の中、校舎に閉じ込められます。その2ヶ月前におこなわれた文化祭の最終日にはクラスメイトのひとりが校舎の屋上から飛び降り自殺をして亡くなるという事件が起きています。
ところがその閉じ込められた8人には誰が飛び降りたのか記憶が消されていて、そのクラスメイト8人の中のひとりではなかったか?その自殺した人間が作りだした精神世界に連れてこられたのか?という疑心暗鬼が生まれてきます。
とにかく8人の過去の闇、友人関係、親子関係、イジメ、親子心中、援助交際などが露わになってきますが、それにしても8人分あるので長いです。
ミステリー小説と言うことで、いろいろとルールに則した内容になっていますが、結果はちょっと意外でズルイという感じもしました。
面白かったけど、やっぱり長過ぎ。この内容だったら文庫1冊でなんとかして欲しいところですって言うか、8人もいるか?と思いましたが、8人が絶海の孤島に閉じ込められひとりずつ謎の死を遂げる「そして誰もいなくなった」をインスパイアしたものとなっているのでしょうかね。
★★☆
◇著者別読書感想(辻村深月)
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ドリーム・ハウス (新潮文庫) 小林信彦
数多くの小説やエッセイなどを出している著者の1992年に単行本、1996年に文庫化された中編小説です。
過去には著者の作品は、「ぼくたちの好きな戦争」「ムーン・リヴァーの向こう側」の2作だけ読んでいます。
主人公は売れっ子とは言えないまでも、様々なエッセイや講演会などを依頼されそれで食っていける専業の作家です。
住まいにはあまりこだわりはなくひとりでマンションに暮らしていますが、静かな書斎と広い書庫が欲しいと思っています。
戦後の祖父の時代に手に入れた実家にはあまり仲が良くない母親がひとりで住んでいますが、友人から交換殺人を持ちかけられたあとに、偶然なのか自然死で亡くなり、ひとりっ子の主人公は土地と古い建物を相続します。これがちょっとホラー1。
その相続した土地は公道との接続が悪く建築法で新築できない場所ですが、残った古家の改築ということであればほぼ新築同様に建設が可能だということがわかり、パチンコ屋で知り合った恋人とともに夢のマイホームを計画していくことになります。
ところが同じ敷地には亡くなった母親が契約書も作らずに破格の家賃で貸し出した隣家があり、どうすれば立ち退いてもらえるか弁護士とやりとりしている中、これまた偶然なのか、隣家が不在の時に失火が出てその家には住めなくなり出て行ってくれます。これもホラー2です。
さらに、家の改築が完成し、恋人と引っ越ししてきますが、、、これがまたホラー3ということになります。
確かに日本人は家を買うことを一生の目的としている面があります。特にこの小説が書かれた1992年というと、まだバブルの余韻が根深い頃で、土地神話などという言い方もされていました。
私も結婚後にはそれに翻弄されていくことになりますが、国民がみな同じ方向を向いて同じ事をしている姿というのはちょっと不気味な気もします。
そうしたマイホーム協奏曲と微妙なホラーとの合体で楽しめました。
★★☆
◇著者別読書感想(小林信彦)
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