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直木賞作家の佐々木譲氏の書く小説は好きで、過去に文庫化されたものはほとんど読んでいますが、最初に出会った本は、1994年に「エトロフ発緊急電」(1989年)と「ベルリン飛行指令」(1988年)という太平洋戦争に絡んだ小説でした。
佐々木氏が書くジャンルは、ミステリー小説もあれば、警察小説、ハードボイルド、太平洋戦争小説、歴史小説など多彩で、これと決められませんが、その卓越した創作力とともに、欠かせないのが、小説の舞台に実在する場所が実名のままで登場し、また架空名称であっても、なんとなくわかるモデルがあったりし、フィクションと言いつつも、作品にリアリティというか、近親感を覚えます。
2009年に読んだ歴史小説「天下城」(2004年)は滋賀県にあった魔王織田信長の最後の居城「安土城」と、石積み職人の穴太衆(あのうしゅう)がモデルです。
安土城を取り上げた小説はいくつかありますが、佐々木譲氏以外に、映画にもなった山本兼一著の「火天の城」(2004年刊)が有名です。
安土城は、信長が本能寺で討たれた後まもなく炎上し、現在は天主など構造物はありませんが、見事な石垣や礎石だけが残っています。そこへは約10年前に訪問してきました。
穴太衆の本拠地(大津市穴太)があった、そのすぐ近くの坂本(大津市坂本)周辺にも寄ってきましたが、町中あちこちに見事な穴太積みの石垣が見られました。
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今では若い人の中にも城好きが多いようですから、滋賀県や大津市も、この穴太積みをもっとPRして、坂本あたりに穴太積み観光コースを設定したり(周辺の古いお寺等の石垣に、穴太積みが至るところで見られます)、体験型「穴太積み講座」、佐々木譲氏やなど穴太積みLOVEな方を集めて講演会などを開けば、観光客誘致になって良いかと思うのですけどね。
ちょうど来年の大河ドラマ「麒麟がくる」は明智光秀が主人公ですから、その本拠地は坂本で、西教寺(大津市坂本)には墓地がありますので、穴太積みと合わせてPRできそうです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2013年に読んだ「北帰行」(2010年)は東京と新潟、小樽が舞台となり、妹を暴力団に殺された復讐のためにロシアからやって来た女殺し屋のアテンドを引き受けた主人公が、目的を果たした後ロシアに帰国させようとしますが、成田は見張りが厳しく、考えたのが新潟からロシア航路での逃避行です。
厳しい暴力団の追跡をかわしながら戦うハードボイルド小説で、その中にこの朱鷺メッセ周辺が登場しました。
なんてことはない、ランドマーク的な超高層ビル(メインテナントはホテル)と、広くて細長い展示場ですね。
朱鷺メッセと言うと、絶滅寸前の朱鷺の名前を冠した新しいコンベンションセンターとの組み合わせが妙に印象に残っていて、調べると日本海側では最も高い超高層ビルが中核となっていて、海側の沖合には佐渡島が、陸側には日本一の長さを誇る信濃川が流れています。
そこに興味が湧いて、5年ほど前に行ってきました。
最上階?には無料の展望室があり、天気が良いと佐渡島が見えるらしいのですが、あいにくかすんでいて見えませんでした。
小説の舞台を歩く(佐々木譲著編その2)へ続く
【関連リンク 佐々木譲著小説】
793 2月前半の読書(北帰行)
576 1月後半の読書(廃墟に乞う)
472 2月前半の読書(巡査の休日)
347 2月後半の読書(夜を急ぐ者よ)
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俘虜記 (新潮文庫) 大岡昇平
著者は外国語に堪能だったことから太平洋戦争中、フィリピンで暗号手として配属されていたものの、米軍の捕虜となり、その後終戦で帰国します。
そしてその実体験を元にして1948年にこの「俘虜記」の前半(捉まるまで)を発表します。最終的に第4章までが完成したのは1949年で、基本は著者自身の体験談と、その時に思った心理的な描写や考察が書かれていて、私を主人公としたほぼノンフィクションに近い小説というスタイルとなっています。
著者の作品では同じくフィリピンの悲惨な激戦と飢餓による人食を描いた「野火」(1952年)を24年前の1995年に読み、その後映画も見ましたが、その時は衝撃を受けたことを思い出します。
ところで、俘虜と捕虜の違いって何だっけ?って調べてみると、第二次大戦までは公式文書には「俘虜」、それ以降は「捕虜」となっていて、意味はまったく同じと言うことです。
太平洋戦争末期にフィリピンでは、35万人の日本兵が戦い、そのうち33万人が亡くなるという激戦地でしたが、生き残った人も無傷というわけではなく、多くは高熱が出るマラリアに罹り、また銃創で動けず捕虜となったおかげで、皮肉にも生還できた人もいます。戦場での生死は無慈悲なもので、偶然が大きく左右するものなのでしょう。
一度は死にかけた著者も、収容所の生活では、英会話ができると言うことから優遇されます。その時は生き延びるために誰もが必死で、捕虜同士の妬みやひがみ、収容所内の仕事による役得権利、軍隊の階級と収容所内での序列など、中にいた者でないとわからない詳細が綴られています。
「我々は社会において、常に自分より下に誰かを見出すものである。(292ページ)」と書かれているとおり、捕虜となり、または敗戦により敵軍へ投降し、恥辱は感じつつも、死から1歩後退して、安堵しているはずの俘虜の生活においても、やはりこうした人間の本能というか嫌な行為が蔓延しいます。
そういうことを考えれば、安寧なところに身を置き、匿名で他人を非難し、バカにし、中傷する人がネット社会において後を絶たないのも、そうした人間の基本的な本能なのかも知れません。
本文中は概ね客観性をもって書かれていますが、そこは1捕虜が直接見聞きできる範囲は限られ、人からの伝聞や想像なども多く、また著者の自身の考え方や、人の好き嫌い、評価なども加わり、また帰国してから数年経過後の執筆で、記録としては必ずしも公平で正確であるとは言い切れません。
但し、捕虜となるのは最大の恥と教育されてきた日本軍兵士の、実体験者としての貴重な記録であることは間違いなさそうです。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
地層捜査 (文春文庫) 佐々木譲
多くの警察小説を書いてきた著者ですが、2012年に単行本、2014年に文庫化されたこの作品は、警視庁の特命捜査対策室シリーズの第1作目と位置づけられています。第二作目は「代官山コールドケース」(2013年)が既刊です。
このシリーズ2作は、松重豊と山本未來を主演とし、「警視庁特命刑事☆二人」というテレビドラマが2015年と2017年に作られています。
著者の作品は、「エトロフ発緊急電」や「警官の血」、「制服警官」「道警シリーズ」など、映画ではなく、テレビドラマ化されるケースが多いようです。これは原作者の著者の志向が映画よりもテレビということがあるのでしょうかね?よくわかりません。
テレビドラマの場合、小説の原作とは違い、演じる役者に合わせてぱっと見の派手さ、面白さや、ながらで見てもそれなりに理解できるストーリーの単純化が優先され、そして限られた時間内に収めるため、設定が大きく変わっていたりすることが多く、それは仕方がないことでしょう。
どちらかというと、映画の方が原作に割と忠実に作られているような気がします。
さて、この小説は、警視庁の中で、捜査を指揮する若手のエリート管理官にたてつき、謹慎処分を受けていた主人公が、15年前に起きて迷宮入りしたままの殺人事件の再捜査を命ぜられ、それの真実を暴き出していくという警察もの小説ではよくあるパターンです。
マイクル・コナリー著の「刑事ハリー・ボッシュシリーズ」でも「未解決事件捜査課(コールド・ケース)」に所属して解決していく「エコー・パーク」や「終決者たち」などの作品が多くあります。
アメリカでは元々重犯罪に時効という概念がなく、こうした未解決事件を取り上げることはしばしばありましたが、日本では2010年になり、それまで15年で時効が成立していた殺人など重犯罪に対し法改正がおこなわれ公訴時効が無効化されました。
以前ならできなかったDNA検査など、捜査技法の進歩により、古い事件においても新しい技術を使うことで、犯人の特定などが容易になってきたことからです。
この小説の舞台は新宿区の四谷三丁目の戦前までは花街として賑わっていたエリアで、バブルが弾けた頃に、元置屋の女将が土地売買に絡んで地上げ屋の暴力団員に殺されたのではと思われた未解決事件に、主人公と、四谷署で定年を迎えた元刑事の二人がパートナーを組んで挑むというストーリーです。
小説の事件現場となった四谷三丁目界隈については、新宿と四谷に挟まれたエリアで、私も知らなかったのですが、深い谷のような地形があり、なかなか興味深い地域です。
実在の地域を舞台とした小説で、しかも職場からはそう遠くないので、近々周辺を少し歩いてみて、その模様を書きたいと思っています。
★★★
◇著者別読書感想(佐々木譲)
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文庫 定年後7年目のリアル (草思社文庫) 勢古浩爾
大ベストセラーになった「定年後のリアル」(2010年)に続き、2014年に発刊された二匹目のドジョウで、さらに三匹目として「さらなる定年後のリアル」(2015年)もすでに発刊されています。
その1作目は、リス天管理人が2018年に読んだベスト書籍(新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門)で堂々大賞に輝いています。
つまり面白かったし、ちょうど自分が定年を迎える年代になって、身につまされたり、勉強になったり、身近に感じたということが大きく影響しました。
その続編も、期待しつつ買ってきました。
ところが、前回読んだ1作目と同じ内容がダラダラ繰り返されているのと、あとは定年や人生感に関して書かれた本からの引用と紹介ばかりで、ちょっと残念でした。
さらに、また個人的な素人レベルの趣味とか感想にまったく興味はわきません。
そりゃ、仕事を完全にリタイアし、目立たなく、地味にお金も使わず、毎日公園と図書館と喫茶店(あるいはカフェ)だけをうろついていて、交友関係もできるだけ絞り、そういう生活を日々淡々と繰り返していれば、なにか新しい斬新な発想がひらめくわけもなく、創造的な話しが書けるわけもありません。またそういうことを期待してもいけなかったのです。
結局は「定年後7年目の劣化」ということになってしまった感があります。
小説やエッセイ、映画などでよくある「二匹目のドジョウ」って難しいものです。1作目が思わずよくできた場合、読者や鑑賞者の期待値は当然に上がり、評価も厳しくなります。
1作目がなかなか刺激的で面白かっただけに、今回の2作目にも期待をしすぎたようです。3作目は私的には「ない」です。
★☆☆
◇著者別読書感想(勢古浩爾)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
私の家では何も起こらない (角川文庫) 恩田陸
2017年に「蜜蜂と遠雷」で直木賞を受賞した押しも押されぬ超人気作家さんの2010年発表(文庫化は2013年)の連作短編のホラー小説です。ホラーと言っても少しファンタジーも混ざっている感じですが、根はやっぱりホラーです。
そういうものがあったとは知らなかったのですが、怪談専門誌『幽』(角川書店)に連載されたのが初出とのことです。
ホラーは小説も映画も苦手なので、あまり積極的には読んだり見たりはしないのですが、こういうのに目がない人も多いようで、日本も平和です。
もっと言えば、現実の社会では、ホラーよりももっと不可解で怖そうな事件や事故が起きていたりして、作家や監督の創造力、演出力が試されている気もします。
さて、この小説ですが、ある丘の上に建つ古い一軒家にまつわる話しがメインで、そこで起きた悲惨な事故や不思議な現象などが次々と露わになっていきます。
設定はどこか外国のようで、その幽霊屋敷が建つ丘が、古代になにか宗教儀式に使われていた人工の場所らしいということで、そこに住む人達や、いたずらをする子供に災いが降りかかってきます。
場面があっちこっちと飛びまくるので、通勤中に少しずつ読む方法では、なかなか前後がつながらずちょっと苦心しました。物覚えも悪くなってきているせいでもあります。
これぐらいの分量なら、まとめて一気に読んじゃわなければダメですね。深夜、どうも胸騒ぎがして寝付きが悪いとき、一気に読むと、きっと朝まで目が冴えたままということになりそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(恩田陸)
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社会を変えるには (講談社現代新書) 小熊英二
2012年に発刊された新書で、著者はよくわからない(Wikipediaでは著者自身かそれに近い人が一生懸命に書いたとしか思えない評価がいっぱい書かれていますが意味不明)社会学者さんです。
2013年新書大賞を受賞したと言うことで読んでみましたが、ダラダラと長いだけで、何が言いたいのか書きたいのか、やっぱり意味不明でした。
変に頭が良いのは認めますが、頭が良いのと、人に理解してもらえるのとはまったく別物だということに理解をされていないことは残念です。どうせなら、そのご自慢の才能を使って、もっとわかりやすい説明もできたでしょうけど。
結論的なまとめでは「自分はないがしろにされている」という意識が社会を変える原動力になるということだけど、どうもそうは思えません。
今の若者で強く感じるのは、仲間の中の自分の位置ではなく、人は人、自分は自分という割り切りがよくできていて、ないがしろにされていても気にしないというタイプが多いように感じます。
そうした若者が仲間を求めるのは、単に孤独だということを人には知られたくないという自身の見栄からで、その見栄さえなくなれば、ひとりで仮想空間で遊んだり、恋愛にも興味を抱かず、自己中心的な世界にいるのが安楽という感じです。
結局、社会を動かすには、代議員制である限り、自分の主張に近い人を応援し、議員になってもらうしかありません。そして風を起こすしかないのです。
そういう時の流れを作らない限り、デモやストを起こしても、この日本においてはなにも変わらないというのは歴史をみるまでもないでしょう。
★☆☆
【関連リンク】
6月後半の読書 湿地、偶然のチカラ、よるのふくらみ、転々、遠くの声に耳を澄ませて
6月前半の読書 不死身の特攻兵、友情、あなたにもできる悪いこと、山女日記、アルトリ岬
5月後半の読書 逆流 越境捜査、友がみな我よりえらく見える日は、友情、ピストルズ(上)(下)
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湿地 (創元推理文庫) アーナルデュル・インドリダソン
2000年に著者の地元アイスランドで発刊され、日本語の翻訳版は2012年に発刊された長編ミステリー「エーレンデュル警部シリーズ」の第3作目です。
但し、シリーズ第1作と第2作は日本語の翻訳版は出ていないようですから、国内ではこれがシリーズ第1作目となります。
著者の出身地でもあり、小説の舞台となるアイスランドって?日本人にはあまり馴染みがない国ですが、2018年のサッカーW杯ロシア大会に初出場し、人口わずか35万人という小国でありながら、強豪国のアルゼンチンと引き分けるなど大健闘したことで記憶にある方も多いのではないでしょうか。
また首都のレイキャビクという名前は意外とよく知られていて、日本と同様に水産業が盛んな地域で、観光では北極にも近くオーロラを見に行く人達が多く集まるところです。
そのアイスランドで老人が殺されるという殺人事件が起きますが、単純な物取りのような雑な犯行のようにも見えますが、犯人が書いて置いていったものと思われる謎の書き置きがあったことで、主人公の警部が殺された老人の過去を調べていきます。
その地道な捜査が結構退屈で、ダラダラとした文章が続きますが、特に驚愕の展開というのではなく、次第に過去の出来事が次第に判明し、犯人と犯行に至った理由が明らかになっていきます。
タイトルは、殺害された老人が住んでいたアパートが以前は湿地帯で、行方不明となっている老人の古い仲間がその地下に埋められているに違いないというところから、老人の過去が明らかになっていくきっかけとなり、その象徴として名付けられたのかなと思います。
警察小説と言えばアメリカかイギリス、せいぜいフランスぐらいしか思いつきませんが、アイスランドという地域の特性や、捜査方法などの違いなども楽しめ、広い世界を堪能できて楽しめます。
でもハッキリ言って、原書の原文が元々長ったらしいのか、翻訳がまずいのかわかりませんが、もっと簡潔に書いてくれ!って思いました。この内容の話しなら390ページある文庫本の1/3のページは容易に削れそうな気がします。
★★☆
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偶然のチカラ (集英社新書 412C) 植島啓司
2007年発刊の新書です。内容がとても宗教的というか「こう理解するべきだ」みたいな教えが多いなと思っていたら、著者が宗教人類学者さんなのですね。
学者先生に多い、上から目線で、教義を教えてやるというスタイルにはやや反感を覚えてしまいますが、内容もあまり役には立ちそうもなく、どうでも良さそうな話しが多いので、軽い気持ちで読み流していけるので苦にはなりません。
数学論で確率は計算ができますが、生活の中で起きる偶然とは、必ずしも確率と同じではありません。
そこが、この本を書いたのが数学者ではなく宗教学者さんなのかな?と思ってしまいました。
ストレスがかかる日々の仕事や生活において、こうした偶然のチカラを理解しておくのと、イライラしたり悩むのとでは、その先の健康状態が大きく変わってきそうというのが私の感想と結論です。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
よるのふくらみ (新潮文庫) 窪 美澄
女性らしい視点で書かれた男女3人の人間ドラマで、2014年単行本、2016年文庫化された連作短編小説です。
著者の本では、過去に「ふがいない僕は空を見た」(2010年)と「晴天の迷いクジラ」(2012年)を読んでいます。
1012 3月後半の読書と感想、書評「晴天の迷いクジラ」
931 6月前半の読書と感想、書評「ふがいない僕は空を見た」
主人公は幼なじみと同棲中の若い女性ですが、その同棲相手の弟が仲の良かった同級生でもあり、男女の関係でややこしくなっています。
女性視点で小説を書くと、一般的に登場人物の男性に対しては辛辣で、どうしようもない男達が書かれることが多いのですが、この小説に出てくる男性は思いやりもあり、イジメに立ち向かい、ちゃんと正社員で働き、コミ障害でもなく、両親とも仲が良く、と女性からすれば憧れの良い男性に描かれています。
逆に女性の主人公が、表向きとは違い、内面的な苦悩で心理的に破綻が見られていて、そういったところが女性読者にはウケそうな気がします。
本作品と同様に、結婚前の女性心理を描く小説というのが多いのも、読者に同年代の同じような悩みを持つ人が多いのでしょうか、その内面まではオジサンには理解できないしよくわかりません。
★★☆
◇著者別読書感想(窪美澄)
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転々 (新潮文庫) 藤田宣永
1999年に単行本、2002年と2005年に文庫化された長編小説です。著者の本は2001年に「理由はいらない」の1作だけを過去に読んでいます。
そしてこの作品は2007年にはオダギリジョーと三浦友和主演で映画が制作されています。
小説の中の二人の主人公のイメージと、役者さんのイメージがどうも合わない気もしますが、見ていないのでなんともです。
タイトルから想像できるように、目的地まで右往左往しながら、東京の街を転々と歩き回るというストーリーです。
映画では「イージー・ライダー」(1968年)や「ペーパー・ムーン」(1973年)、「あなたへ」(2012年)などロードムービーというのがよくありますが、当然小説でもそういう流れのものはたくさんあります。最近読んだ中で記憶に残っているのはローレンス・ブロック著「盲目の預言者」が面白かったかな。
3月前半の読書と感想、書評 2018/3/14(水)「盲目の預言者」
主人公は、大学を休学中で、アルバイト先のストリップ劇場の踊り子と恋に落ち、一緒に逃げようとしますが失敗し、闇金の借金に追われている中で、その借金取りの男からある提案を持ちかけられます。
「目的地まで一緒に歩くのに同行してくれたら100万円支払う」というもので、その理由などが歩きながら話しをしていく中で徐々に明らかになっていくというロードドラマです。
現実には絶対にありそうもないリアリティのカケラもないストーリーですが、それだけに自由な発想で奇想天外なことが次々と待ち受けていて、それなりに楽しめます。
こうした突拍子もない発想力の源泉はどこからやってくるのでしょうかね。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
遠くの声に耳を澄ませて (新潮文庫) 宮下奈都
読んですぐに感想を書けば良かったものの、少し間が空いてしまい、内容があまりにも薄味でサラッと流れて言ってしまったたため、ほとんど記憶に残っていないというのが本音のところです。
初出は単行本で2009年、文庫版は2012年に発刊されています。主に若い女性向けと思える、ほんわかする(らしい)12編の短編集です。著者の作品を読むのはこれが初めてです。
起承転結とか、刺激的なドラマ性とかはなく、ただ淡々と女性の深層心理を表現しているのかなぁという感じで、デビューから実質2作品目の本著は、その後の著者の活躍を見ると、この作品で多くの働く女性に共感を持たれたのではないかなと思います。
著者に対してなんの偏見も恨みもありませんが、60過ぎの昭和なオッサンが読むのにはあまりに不適でした。とにかく覚えちゃいないので、感想もへったくれもありません。申し訳ない。
★☆☆
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6月前半の読書 不死身の特攻兵、友情、あなたにもできる悪いこと、山女日記、アルトリ岬
5月後半の読書 逆流 越境捜査、友がみな我よりえらく見える日は、友情、ピストルズ(上)(下)
5月前半の読書 光のない海、地方消滅 東京一極集中が招く人口急減、家守綺譚、芥川症、バカ売れ法則大全
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不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書) 鴻上尚史
著者は私と1年違いの生まれで同世代の劇作家、演出家として有名な方で、バラエティ番組などでも時々見かけますが、こうした硬派な本を書いているとは知りませんでした。
この新書は2017年に発刊され、その後2018年には「不死身の特攻兵 生キトシ生ケル者タチヘ」と改題したマンガも出版されています。
私の世代が子供の頃はというと、まだ太平洋戦争の事柄についてまだ色濃く様々な形で残っていました。自分の祖父母や両親、親戚で、戦争と関わっていない人はいなかった時代です。
例えばテレビでは「ゼロ戦黒雲隊」、その映画版「零戦黒雲一家」や「東宝8.15シリーズ」、漫画では「紫電改のタカ」など、小学生の子供が美化された戦争ドラマやコミックをよく見ていたものです。
プラモデルも、B29やコルセア、ムスタングなど当時の大人からすれば憎々しい敵機ですが、そのスマートさや合理性の塊のユニークさで作りがいがありました。
なので、著者を含む我々の世代以上は、内容がやや不正確で偏向しているのはさておき、太平洋戦争における事象にはかなり敏感で、この著者が深く興味を覚える気持ちもわかります。
前置きが長くなりましたが、タイトルの「不死身の特攻兵 軍神」とは、陸軍のパイロット佐々木友次氏のことで、陸軍として初の特攻攻撃を含む9回の自爆特攻を命ぜられながら、生きて帰還してきたという強者の話です。
しかしよく読むと9回特攻攻撃で敵と交戦したわけではなく、あるときは味方の支援戦闘機が反転したので敵前で一緒に反転して帰ってきたり、雲が多く敵が見つからずに帰ってきたり、機体の調子が悪く飛べなかったりを含み、9回の命令を受けたということです。
ま、それでも強運の持ち主で、実際に米艦に爆弾を落としたこともある強者には違いありません。
結局このパイロットは戦争を生き抜き、2016年92歳の天寿を全うされます。
この元特攻パイロットへのインタビューを中心に書かれていますが、その部分は全体の2割程度、その他は、他の文献からの引用と著者の意見や感想、推測が重ねられています。
インタビューの迫力と比べると、引用、意見の部分は著者の憶測や感想でしかなく、ちょっと退屈なのが残念でした。
★★☆
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友情 (新潮文庫) 武者小路実篤
この小説は著者が34歳の時、1919年(大正8年)に大阪毎日新聞に連載され、1920年に単行本となったものです。
1919年頃と言うと、日本では同年に終結した第一次世界大戦で戦勝国となり、戦争景気が盛り上がった時期でもあり、また国際的な立場も高まってきた頃ですが、同時に軍部が国内で力を増していく途上です。
そうした世情の中でも新聞連載小説では今も昔も恋愛ものが主流のようで、その例に漏れずこの小説も恋愛をベースにした男性の熱き友情と、女性が絡んで破綻するという物語です。
ストーリーはシンプルで、すぐに映画化もできそうですが、未だにそれができた様子はなさそうです。大正ロマンを重ね合わせると、良い映像になると思うのですけどね、、、
テレビドラマとしては42年前の1977年に寺尾聰主演のテレビ銀河小説(NHK)として制作、放送されたようです。私がまだバイトで忙しかった学生時代のことで、当然見ていません。
主人公は23歳の大卒の脚本家で、著者自身の若い時のことをベースにして書いたものとされています。
主人公は自堕落な生活をおくっていながら、友人の妹に一目惚れしてしまい、気持ちの中ではもう自分の妻になるのはこの人しかいないと決め、何度も友人の家へ遊びに行き、きっかけを作ろうとしますが、なかなかうまくいきません。
そのことを別の親友に話しをするものの、その親友はその女性と会っても冷ややかな対応をします。ところが逆に女性は、主人公よりもその親友に惹かれていきます。
そうこうしていると、その親友が突然ヨーロッパへ長期間行くと言い出し、それによって女性の想いが断ち切られ、自分に好意が向くのではないかと身勝手にも期待します。
そして女性に付き合って欲しいと手紙を書いたものの、体よく断られてしまい、しかもその女性が知人の新婚旅行に同伴し、ヨーロッパへ行くと決めます。もちろんヨーロッパで生活している親友と会うためにです。
たいへん仲が良く、お互いに信頼し合っていた男同士の友情が、ひとりの女性が入ることで、見事に壊れてしまうと言うはかない悲恋物語ですが、身勝手でさしたる優れた才能もない主人公に対し、哀れみや同情は起きません。
短い小説ですので、中高生が読書感想文に選んで書くのには適している感じですが、主人公男性の心の葛藤をどう表現するかが、感想文の評価のキモとなりそうで、難しいところです。
★★☆
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あなたにもできる悪いこと (講談社文庫) 平 安寿子
1999年に「素晴らしい一日」でデビュー(単行本は2001年刊)した御年66歳の立派な高齢者に域に達している女性作家さんの作品です。今回初めて読ませていただきました。この小説は2006年単行本、2009年に文庫化されています。
著者は変わった名前と思ったらアメリカの小説家「アン・タイラー」の名前をもじって付けたペンネームで「たいら あすこ」と読むそうです。姓と名に間がないと「へいあん としこ」とかで覚えてしまいそうです。
内容は連作の短編という形式で、口八丁な主人公の中年男性が詐欺や脅迫すれすれの様々な仕事をしていくというなんてことはない物語。
口八丁手八丁の悪人が主人公でコメディタッチというと伊坂幸太郎著の「陽気なギャングシリーズ」やローレンス・ブロックの「泥棒探偵バーニイシリーズ」などを思い浮かびますが、それらまでには遠く及ばない感じです。
ただ女性作家らしく、男性の主人公より、脇役で出てくる女性の心理や行動がとてもリアルで、またぶっ飛んでもいたりして、男性が読むと女性恐怖症に一歩近づくことができそうです。
どうせなら、男性を手玉に取るそうしたぶっ飛んだ女性や悪女を主人公にした短編でも書けばもっと面白くなったかもしれません。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
山女日記 (幻冬舎文庫) 湊かなえ
著者の趣味でもあった山岳登山の連作短編小説で、2012年から2013年にかけて文芸誌に連載された「妙高山」「火打山」「槍ヶ岳」「利尻山」「白馬岳」金時山」「トンガリロ」「カラフェスに行こう」を1冊に収録し、2014年単行本、2016年文庫が発刊されています。
主人公は短編ごとに変わってきますが、前に出てきた人物が、あとの作品でもちょい役として出てきたりします。
2016年~2017年には工藤夕貴などが主演して、この原作を元にしたNHK BSプレミアムの「プレミアムドラマ」が制作、放送されています。ただし登場人物などを見る限り、内容は小説とずいぶん違っているような感じです。
最近読んだ同じような山ガールをテーマにした小説では、書いたのは男性ですが、北村薫著「八月の六日間」が、非日常感があふれる例えば登山に慣れた人が歩きながら栄養を補給するため、長い羊羹をかじりながら歩くシーンなど、たいへん興味深くて面白かったです。
こちらの小説では、主人公は毎回変わりますが、だいたいは30歳前後の女性で、若い頃には山岳部や同好会で少しは経験があり、しばらくブランクがあったものの、再び戻ってきたというような方が多いです。これは著者自らをモデルにしているのでしょう。
私も山登りではなく単なるウォーキングですが、ほぼ毎日1時間ぐらいは歩いています。歩くとこの小説の中でも出てきますが、いろいろと自分や人のことをあれこれと想像したり、考えることができて面白いのです。
これが騒がしい電車の中だったり、クルマを運転していたりでは、とても考えたり思いついたりしませんが、単純に足を右左と進めていくだけの単純な運動中だと、脳がその単純作業以外のことをやりたがるのか、悩んでいたことで名案が思い浮かんだり、様々なアイデアが次々と浮かんできます。
今はウォーキングのモチベーションは、それに尽きると言っても良いぐらいに、こんがらがった頭脳がリセットされ、気持ちよくなりますから、きっと登山やトレッキングにはまる人も、違った環境に身を置いてそうした気分をもっと味わいたいという本能からきているのでは?と思っています。
登山そのものは、そこでなにか大きな事故や事件でも起きない限り、淡々と静かに登っていくだけで、あまり小説の題材にはなりにくいものです。
それを小説に仕上げるには、無理矢理に我が身を振り返ったり、他人や家族のことを考えたりして、膨らませていくしかなく、その苦労がうかがえます。
でもやっぱり登山は自分で味わって初めて楽しめたり達成感を味わえるのであって、人の感想や体験を聞いたり、読んでも、退屈以外のなにものでもありません。
それだけに、自分も登山をしてその感覚を味わいに行ってみようか?という気持ちには少しなります。
★★☆
◇著者別読書感想(湊かなえ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
アルトリ岬 (PHP文芸文庫) 加治将一
2008年に単行本、2011年に文庫化された長編小説で、著者自身が自己啓発セラピストとして活動されていることもあり、いわゆるカウンセリング小説というジャンルになるものです。
かといって、なにか押しつけがましいところや、「こうあるべき」みたいな指導書やHOW TO本ではないので、気楽に読めて楽しめます。
この著者の作品では昨年「失われたミカドの秘紋―エルサレムからヤマトへ「漢字」がすべてを語りだす!」とやたらと長い題名、副題の小説を読んでいます。これはなかなか面白かった小説でした。
3月前半の読書と感想、書評 2018/3/14(水)「失われたミカドの秘紋」
主人公は、気弱であまりやる気がない中年男性で、仕事がリストラに遭い、派手好きで浪費家の妻との関係も悪くなり、二人の子供も不登校だったり非行に走ったりして、どん底に落ちています。
当たると評判の占い師にお告げをうけて、家族を捨てひとりで北海道に渡りやり直そうと就職します。
そこへ借金取りから逃げるように家族がやってきて、また元の険悪なムードに満たされてきますが、不登校の子供が、偶然海岸で知り合った年配の男性と犬に癒やされていき、その後、家族全員がその男性のアドバイス(カウンセリング)を受けるようになっていき、変わっていくというのがあらすじです。
カウンセリングが本業でもある著者からすれば、家庭の不和も、ちょっとしたきっかけや他人のアドバイスで良くなっていくということを知っていて、そうした例を小説にまとめたという感じなのでしょう。
政治家や芸能人、評論家の過激な発言や、ネット上で吹き荒れる非難、炎上など、これだけストレスがたまる世の中ですから、こうした素朴で最強の「愛情」を気づかせてくれるカウンセリング本は、小説としての出来不出来はともかく、できるだけ多くの人に読まれるといいですね。
★★☆
◇著者別読書感想(加治将一)
【関連リンク】
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逆流 越境捜査 (双葉文庫) 笹本稜平
2014年単行本、2017年に文庫化された、「越境捜査シリーズ」の第4弾となる作品です。このシリーズは、2019年までに7作品まであります。
また2008年から2011年にかけて単発で柴田恭兵主演のテレビドラマが制作されています。
このシリーズは、「越境捜査」(2007年)、「挑発 越境捜査2」(2010年)、「破断 越境捜査3」(2011年)、「逆流 越境捜査」(2014年)、「偽装 越境捜査」(2015年)、「孤軍 越境捜査」(2017年)、「転生 越境捜査」(2019年)が既刊です。
著者の作品は過去にシリーズ物ではない「時の渚」(2001年)、「太平洋の薔薇」(2003年)、「グリズリー」(2004年)を読んでいます。いずれもまずタイトルにグッと惹かれたのと、実際に読んでみてもたいへん面白く一気にファンとなりました。
主人公は警視庁捜査一課捜査協力係の警部補で、いろいろと庁内で波風を立てたために、出世はできず、遊軍として捜査の応援をしたり、古い未解決の事件を追いかけたりしています。
ファンと言っても読むのは久しぶりで、調べると2007年から今回12年ぶりと言うことになります(すみません、ファンとは言えません)。
なにか本格的警察ミステリーと言うよりは、「相棒」や「あぶない刑事」などのように、テレビドラマ化を視野に入れた感のあるエンタメ性重視の作品です。
となると、お定まりの主人公の相棒にはハチャメチャでお調子者の金髪の刑事や、主人公の身辺警護には柔道の達人でやたらとジグザウエルを振り回す若い女性刑事とか、テレビ映えするようになっています。
ストーリーとしてはよく練られている感じで面白かったけど、あまりにも非現実すぎてちょっとなぁ、、、って感じでした。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
友がみな我よりえらく見える日は (幻冬舎アウトロー文庫) 上原隆
1996年に単行本、1999年に文庫化された20年以上前の作品ですが、古くささは微塵も感じません。
著者は団塊世代の70歳、週刊誌や雑誌などに寄稿しているエッセイストとして有名です。
タイトルは、石川啄木の「一握の砂」の「友がみな われよりえらく 見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ」から取られています。なかなか含蓄のある言葉です。
著者がインタビューしたり、旧友との再会など、人とのコミュニケーションの中で、格好付けではなく、そのまま感じたことを素直に文章として書いているって感じのエッセイです。
最近はエッセイと言いながらもまるでフィクションの小説のようなものも増えていますが、まだ13年前は純たるエッセイが生きていたのでしょう。著者にもよりますけど。
なにか問題を解決してくれるという内容ではなく、様々な交友関係や気になった人との面談を通じて、人が生きていくという気持ちを気づかせてくれるような内容です。
他人との関係に悩んだり、気持ちが塞いだときなど、ちょっと気分転換のつもりで読んでみるのも良いかもしれません。なにか吹っ切れるきっかけとなるかも知れません。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y) 三浦 展
その新書は今から15年前の2004年に発刊されたもので、やや内容やデータが旧聞になってしまってはいますが、大枠として地方の郊外化と犯罪の拡がりなど様々な問題を知るのには役に立ちます。
タイトルの「ファスト風土化」は、チェーン展開する画一的なファストフードにモロひっかけたオヤジギャク的な著者の造語ですが、「下流社会」ほどには一般的に使われることはありませんでした。しかし言わんとする意味はよく理解できます。
この本が書かれた2009年頃は、リーマンショック直後ということもあり、不況の影が忍び寄り、犯罪認知件数が特に伸びだした時期で、こうした危険を啓発するのに適していましたが、その後は重大犯罪は大きく下降し、犯罪数そのものは横ばいに推移しているのは以前「暗黒の1950年代 2019/4/20(土)」で書いた通りです。
特に犯罪認知件数が増加している理由のひとつには、人の人権意識や弱者救済の理解が進み、例えば今まで泣き寝入りしていて犯罪とならなかった、いじめや校内暴力、ストーカー行為などが犯罪と認識され、それを訴える人が増えてきているという事情もあるでしょう。
都市部のしかも繁華街で起きていたような犯罪が、地方でも起き出したというのは、それが確かなのかもう少し期間を追った検証が必要でしょう。
大ベストセラーになり流行語にもなった「下流社会」は、著者の中でも最大のヒット作品ですが、同著も読みましたが、やや炎上商法とまでは言いませんが、著者の作品にはやや大げさに不安を煽るようなところがあるのかも知れません。それが著者の本業でもあるマーケティングの鉄則ってことなのでしょう。
確かに地方の主要国道を走ると、大手スーパー、ディスカウントチェーン店、ファミリーレストラン等、全国どこにでも都心の郊外と同じような風景が見られます。
だからと言ってそれが今まで都市部で多く起きていた犯罪が地方で起きてきたというぶっ飛んだ仮説はまだちょっと行きすぎかなと思えます。
現実的に少年犯罪も、重大犯罪も10年単位で見れば、ずっと減少傾向にあり、ホンのわずかな1~2年だけの比較を出して「この地域でこーんなに増えている」とか言うのはどうなのでしょう。
全体としては、参考になる話しもあり、勉強になりました。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ピストルズ (講談社文庫)(上)(下) 阿部和重
2007年から2009年にかけて雑誌群像に連載され、2010年に単行本として、2013年に文庫化された長編小説で、2010年には時代を象徴する優れた小説が選ばれる谷崎潤一郎賞を受賞しています。
著者の作品は初めてだったかな?と思って調べると2015年に「グランド・フィナーレ」(2005年刊)を読んでいました。
2015年5月後半の読書(グランド・フィナーレ)
小説の内容ですが、実在する著者の出身地山形県東根市神町を舞台に、古くから土着している魔術を操る一家についての話しで、その華やかな一家には一子相伝で魔術を操れる子孫が生まれるという筋書きです。
その一家にまつわるいろいろな噂を耳にした町の書店主が、小説を書いてデビューした一家の次女に頼み、一家にまつわる噂の真相や家の歴史について聞き出していきます。
とにかく祖父の代から父親、そして妹へと一子相伝の秘術が伝わっていく長い長い物語で、途中から退屈しながらも我慢して読み進めていくと、最後まで特に盛り上がることもなく、ズルズルと終わってしまう割と単調なストーリーでした。
そう言えば、タイトルのピストル(拳銃)って一度も出てこなかったなぁって不思議に思っていたら、文庫の解説で「雌しべ(Pistil)」のことだってことがわかりました。
これはいまいち理解出来ませんが、すべての母親が違っているという一家の4姉妹のことを表しているのでしょう。
★☆☆
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