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内なる宇宙 (創元SF文庫)(上)(下) ジェイムズ・P・ホーガン
「星を継ぐもの」(1978年)、「ガニメデの優しい巨人」(1978年)、「巨人たちの星」(1981年)に続く「巨人たちの星」シリーズ第4弾で、1991年に発刊されました。原題は「Entoverse」です。
その中でも特に最初の「星を継ぐもの」は私の外国人SF小説としてはトップクラスの評価をしています。
リス天管理人が選ぶ2015年に読んだベスト書籍 外国小説部門「星を継ぐもの」
感想は、
7月後半の読書と感想、書評 2015/7/29(水)
このシリーズでは多くの聞き慣れない惑星や人物などがたくさん出てきて、混乱必至です。関係図で図解しておくと後で読む人の参考になっていいかなぁって思ったけど、なかなかはかどらずに、またあらためての機会と言うことにします。
元々は前の作品でシリーズ終了予定だったそうですが、編集者の強い勧めがあってこの4作目が書かれています。
内容は、レギュラー陣は代わらず科学者ヴィクター・ハントと生物学者のクリスチャン・ダンチェッカーを中心として、前に出てきた異星人など。
今回の舞台は、前回、地球人と根っこは同じながら敵対し、主戦場になった地球から遙か離れた場所にある惑星ジェヴレンとなります。
前回、異星人と地球人の合同作戦で、好戦的で地球を攻撃しようとしていたジェヴレンの勢力をそぎ落とすことができたものの、その後のジェヴレンは荒廃してしまい、怪しげな宗教などが蔓延する状態になっています。
そうした状況に危機感を感じ、同じ根っこの地球人なら問題解決の役に立つのではないかと、呼び寄せられた訳です。
今まであまりロマンスめいた話しがなかったこのシリーズですが、今回は一緒にジェヴレンへ行ったジャーナリストのアメリカ人女性と、主人公の英国人ハントのロマンスが描かれています。
でもやっぱり最初の「星を継ぐもの」からすれば、その面白みやワクワク感はありません。
★★☆
◇著者別読書感想(ジェイムズ・P・ホーガン)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
日本人の誇り (文春新書) 藤原正彦
東日本大震災直後の2011年4月発刊の新書です。この著者の作品は、以前「国家の品格」を読んでいるのと、週刊新潮のコラム「管見妄語」を時々立ち読みしています。
著者は、「八甲田山死の彷徨」「剣岳 ―点の記」などで有名な作家の新田次郎と、2016年に亡くなった同じく作家の藤原てい夫妻の次男という恵まれた?文才を受け継いで、長く数学者として大学で教鞭をとる傍ら、エッセイなどいくつも書いてこられた方です。
主として戦前から戦後にかけて日本が国際社会の中でどのように評価され、また非難を浴びることとなってきたのか、それは誰のせいで、どうしてそのようなことになったのかなど、筆者の視点と様々な資料を元に述べていきますが、結構読んでいると気が重くなります。
例えば戦後から続く日本の子供達に対する教育について、当時は世界中から賞賛されていた戦前の教育勅語はイコール軍国主義というレッテルが貼られてしまい、占領国だった米国の意志が強く反映された長期的な愚民化政策が始まったというような話しばかりです。
特に外交という面では、一度大きな失策をすると、それが世界では常識となってしまい、間違いを正そうとしても、簡単ではないことがよくわかります。
世界上で見ても、外交上で謝罪をするのは日本だけで、謝罪を求める国も中国、韓国、北朝鮮の3カ国だけという変な関係になっていると書かれています。
かと言って、著者はすごく右寄りの人という印象は受けず、右も左もなく、正しい近代史をキチンと学んで、日本人の良き思考やプライドを再び取り戻そうよと言っているのだと思われます。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
恋歌 (講談社文庫) 朝井まかて
2013年単行本、2015年に文庫化された長編小説で、2013年に本屋が選ぶ時代小説大賞、2014年に直木三十五賞を受賞した作品です。お見事!
明治時代の歌人というか、樋口一葉、三宅花圃の師匠として有名な、中島歌子の生涯を描いた小説で、主人公はその弟子の三宅花圃ということになっています。
師匠が病に倒れ、自宅の書斎を整理しているときに、手記を見つけ師匠の知らざる半生が顕わになっていきます。
中島歌子は江戸の大きな商家の娘に産まれましたが、店に出入りしていた若い水戸藩士に惚れ込み、押しかけのような形で結婚します。その夫となった水戸藩士は、尊王攘夷派の天狗党で重責を担っています。
しかし時は幕末、江戸では水戸藩士が関わった桜田門外の変が起き、水戸では天狗党と保守的な諸生党が激しく対立し、結果的に天狗党が負け、天狗党は全国に散らばってしまい、水戸の家は潰され、家を守っていた家人達は狭い蔵に長期間押し込められ、女子供も次々と斬首されていきます。
時代は明治に変わり、命からがら助かったものの、なにもかも失った中で、女がひとりで生きていくため、江戸に出て歌人として猛勉強し、やがてその才能が認められるようになっていきます。
少し前に有吉佐和子著「紀ノ川」を読みましたが、それぞれ時代は少し違いますが、女性の波乱の一生をテーマにしている点では似ています。
ただ戦争中も比較的穏やかだった紀州和歌山とは違い、幕末の水戸という激動の真っ只中に生きて、しかも家を潰され、夫は亡くなり、命からがら逃げ出してきたという点では大きく違います。
今までほとんど知らなかった幕末に活躍していた天狗党や水戸藩のことについて、多少は勉強になりました。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
怪談 (講談社文庫) 柳 広司
2011年単行本、2014年に文庫化された、6編の短編集小説です。
短編には「雪おんな」「ろくろ首」「むじな」「食人鬼」「鏡と鐘」「耳なし芳一」と、どこかで聞いたタイトルが付けられていますが、内容は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が書いた怪談とは違ってそれぞれが独立した現代ホラーとなっています。
独立したと書きましたが、それぞれオリジナルの怪談に通じるところがあり、現代風に置き換えたと言ったほうが良さそうです。
ただ、元の原作の怪談は何十年も昔に読んだだけで、あまり覚えていないので、もう一度読み比べをしたいなと思いました。
ただ、無理矢理に原作にこじつけてあったりして、どうもこういうやり方は好きになれません。才能豊かで意外性のある小説を書かれる筆者さんですので、もっとオリジナリティを前面に出して、柳流怪談でも良かったのではないかなと思った次第。
★☆☆
◇著者別読書感想(柳広司)
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3月前半の読書 その癖、嫌われます、失われたミカドの秘紋、盲目の預言者、追伸
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その癖、嫌われます (幻冬舎新書) 竹内一郎
2005年に「人は見た目が9割」でミリオンセラーをぶっ飛ばし、それだけで印税収入が1億円近く(実際は所得税等税金があるのでそのまま収入ではないが)という大ヒットを持つ著者の2012年の新書です。
当時、新書では「タイトルに数字を入れると大ヒット」と言われていて、上記のミリオンセラーもその通りとなりました。他には「99・9%は仮説」「若者はなぜ3年で辞めるのか? 」「7つの習慣」「新版 年収300万円時代を生き抜く経済学」などもベストセラーとなっています。
誰でも七癖と言ってなにかしら癖を持っていそうですが、他人に迷惑をかけていても、それに気がつかないというのが本人のみという残念な性格のものです。
私自身、この本を読んで、「あぁ~なにげなく仕事中にため息をついているなぁ~」とか、話しをしても「嫌いな人とは目を合わせないようにしているなぁ」とか、「夏場の外勤の時には、(中年の)汗臭さ満載だったなぁ~」と、反省するところがいくつも出てきます。
過去に他人がやって嫌だったことは「食事でペチャペチャと音をたてる人との食事」「鼻水をすすり続ける人との会議」「しゃべる合間合間に必ず『あの~』と入れるプレゼン発表」「夏場にせわしなくハンカチでパタパタと顔をあおぐ女性」「満員電車で、身動きがとれない中で、鼻くそをずっとほじっている男性と、枝毛?の手入れに余念のない女性」「不必要にPCのキーボードをパンパン強く叩く人」などなど。
人の癖で困るのは、それを注意すると、相手が注意した人に敵愾心を持つことです。
癖を指摘されて「感謝をされる」ということは皆無でしょう。だって、その人にとって癖は、自覚がなくやっていない(と思い込んでいる)ことだからです。指摘されると猛烈に恥ずかしく、その相手に攻撃されたと敵意を感じます。
また同時に人に癖を指摘されることは、自分はなにも悪いことをしていないのに、いきなり難癖を付けられ、恥をかかされたということでしょう。そりゃ腹を立てます。
だから敵を作りたくないと思う多くの人は、他人の癖に対して注意ができません。見て見ぬふりするのが一番だと悟っています。
この新書でも、そうした癖を注意する方法などが書かれていますが、それはどうかな?って思ってしまうほど、対処が難しいものです。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
失われたミカドの秘紋 エルサレムからヤマトへ「漢字」がすべてを語りだす!(祥伝社文庫) 加治 将一
2008年に「舞い降りた天皇―初代天皇「X」は、どこから来たのか」を書いた著者の、天皇関連第二弾の2010年単行本刊、2014年に文庫版刊の長編歴史小説です。
感想は主人公が天皇の祖先の推理や中国の歴代皇帝の人種などに触れて、警察からも中国警察からも付け狙われるという微妙な問題を多く含んでいるのと、特に何度も出てきますが秘密主義で自分たちの利益を守るだけと宮内庁を攻撃しているところが、小説と言うより私怨を強く感じられる文章になっています。
端的に言うと、古代に進んだ文明をもったエジプトやユダヤから、陸続きのユーラシアを旅して中国へ、そして朝鮮半島や日本へもその係累が住み着き、強力な武器で土着民を支配し、やがて王朝を作っていったという流れです。
特に、古くからある漢字の意味や発音がユダヤ語と親和性が高いことなどから、漢字が生まれた中国を含み元々土着していた漢民族や大和民族はではなく、西方からやってきた異民族がその根っこにはあるのだとする言説を主人公に推理させています。
小説の出来としては少々読みづらく、変なエンタメ精神などどうでもいいので、もっと端的に整理して書いてくれたら読者も増えるのだろうになと思います。
多くの古代の名前や都市名等が次々と出てきて、その関連性や時代背景が専門家の論文ではなく、ほとんど予備知識がない人が読む小説としては、ただ混乱を与えるだけでしょう。
しかし個人的にはこういう古代歴史推理小説は嫌いでなく、高木彬光氏の小説「邪馬台国の秘密」や「成吉思汗の秘密」「古代天皇の秘密」などはコンパクトにまとめられ、ロマンもあって楽しめました。
また著者が主人公に言わせているように、日本の全国に散らばっている古墳など、宮内庁が許可をしない場所を徹底的に発掘調査すれば、歴史の謎や天皇をはじめとする有力者のこと、そのDNAを調べてどこから来た人種とか判明し、古代ロマンが拡がっていくのにって思いますが、知らぬが仏、空想していられるときが幸せなのかもしれません。あるいは知られて困るようななにかを隠しておきたいのかも知れません。
★★☆
◇著者別読書感想(加治将一)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
盲目の予言者 ローレンス・ブロック
1988年刊で原題は「Random Walk」(直訳すると「不規則な歩行」)の小説で、著者の有名なシリーズ「マット・スカダー・シリーズ」「泥棒バーニイ・シリーズ」「殺し屋ケラー・シリーズ」「快盗タナー・シリーズ」のどれにも属さない単独の長編です。
この小説は文庫化がされてなく、単行本でもすでに絶版となっていて、ブックオフあたりにもまず出てこないので、今回はAmazonのマーケットプレイスで入手しました。
高倉健主演の映画「あなたへ」(2012年)のように、主人公がひたすら旅をするロードムービーと言われる映画がありますが、こちらはそういう言葉があるのかどうか知りませんがロード小説と言えます。
バーテンダーの主人公は、ある時、意識の中で「歩け」という天の言葉を聞き、それに従うべく、仕事を辞めて、マイカーも売り、銀行からお金を下ろし、アメリカ西海岸からひたすら陸地を目的もなく東に向かって歩き続けます。
いくつもの州を超えて歩くうちに、ひとり、またひとりと同行する人が増えていきますが、その中に、目が見えなくなったシングルマザーで精神カウンセラーがまだ幼い息子と一緒に加わります。タイトルにある「盲目の予言者」とはこの人のことを指しています。
一緒に単に歩くようになると、不思議な現象が次々と起きていきます。例えば高齢で歩くことができなかった老婆が杖もなしで歩けるようになったり、癌に罹って余命わずかだった女性が劇的に回復したり、大人で抜けた歯が新たに生えてきたり。
ま、そのあたりはなにかファンタジー小説か、宗教教本のようですが、なにか閉塞感に追いやられて苦しんでいるアメリカ都会人にとってはそうした神秘的な癒やしに憧れている気もわかります。
特に最後までこれと言った転結があるわけではありませんが、同時進行で100人もの女性を殺めた凶悪な殺人者がその行進に加わったことで、自らの犯罪を告白し自戒していくなど、できすぎというかやりすぎって感じもします。
★★☆
◇著者別読書感想(ローレンス・ブロック)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
追伸 (文春文庫) 真保裕一
2007年に単行本、2010年に文庫版が発刊された、往復書簡中心の長編小説です。
こうした男女間で往復書簡のやりとりがそのまま小説となる手法は何度か見かけますが、個人的にはあまり好きではないです。
というのも、本来手紙というのは私的な文章で、それを小説に仕立て上げるには、読者にもわかりやすくするためそこに無理が生じます。
「よく知った男女間で、手紙においてそんなまどろっこしい言い回しや説明は普通ないだろう?」っていう記述が、これでもかって感じで続きますから、しらけてくる場合が多いのです。
なので、これは手紙ではなく、単にストーリーの説明文なんだと思い込んで読み進めていくことになり、それだったら、なにも手紙の風体をとらなくてもいいんじゃないか?って思ってしまいます。
著者の作品は好きで、これまで17作品を読んできましたが、割と多作な作家さんですので、いろいろと趣向を変えた作品をということなのでしょうけど、こればかりはあまり成功したとは思えません。
ストーリーは、ギリシャに単身赴任中の夫と日本にいる妻との往復書簡で、妻から一方的に離婚届が送られた夫が、なぜ妻がそういう思いに至ったかを考え、その妻の母親がなにかを隠してきたことや、やがて判明してくる妻の祖父母について不思議だった過去が、祖父母が交わしていた書簡で明らかになっていくという内容です。
なので夫婦の往復書簡の中に、祖父母が取り交わしていた往復書簡があるというややこしさです。
最後もこの主人公たる夫婦がこの先どうなっていくのか、消化不良のままなんとなく終わってしまい、結局なにが言いたかったのか、よくわからないままで終わってしまいました。私の読解力不足かな。
★☆☆
◇著者別読書感想(真保裕一)
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紀ノ川 (新潮文庫) 有吉佐和子
1959年刊ですのでおよそ60年前に書かれた作品です。和歌山出身の著者がその故郷を舞台にして、激動の明治、大正、昭和とつながっていく、およそ60年にわたる「花」「文緒」「華子」3代の女系女子を主人公にした小説です。
1964年にNHKでテレビドラマ化され、1966年には中村登監督、司葉子、岩下志麻などの出演で映画も製作されました。いずれも見ていませんが、映画は機会があればそのうち見たいなと思っています。
第1部はまず明治時代から始まり、和歌山の九度山村に住む素封家で大地主の娘が主人公で、祖母が決めた縁談に従い、紀ノ川下流の新興の家へ嫁いでいきます。
その主人公が、昭和の時代になって亡くなるまでがこの小説ですので、女3代と書きましたが、実質はこの第一部の明治生まれの女性「花」が最後まで通して主人公といっていいでしょう。
第2部は、元号が大正に変わってから生まれた主人公の長女「文緒」の話しが多く、伝統や家制度などに反発し、昔ながらの女性らしさを求める母親には反抗的で、大学へはその母親から離れたい一心で東京へ出て行き、そのまま東京で恋愛結婚をします。
第3部は、その長女の長女(主人公からは孫)が昭和になってから生まれ、早産のため病弱ながらも、母親と違って、古き伝統などを大切にする考え方が主人公(祖母「花」)と似ている女性です。
文庫の解説にも書かれていましたが、この小説に登場してくる男性が、どいつもこいつも軟弱だったり呆け者だったりして、以前読んだ「女系家族」(山崎豊子著1963年刊)を思い出しました。
2015年9月後半の読書と感想、書評(女系家族)
物語の都度都度に、紀ノ川や和歌山城の美しい風景、方言、地元に様々な言い伝えなどが出てきて、著者の地元愛がよく伝わってきます。
★★★
◇著者別読書感想(有吉佐和子)
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はじめまして京都 トノイケミキ・宮下亜紀
書籍というか史跡やお店紹介のガイドブックに近いもので、2010年に発刊されています。
著者の二人の女性は京都生まれ、京都育ちとのことで、お寺や神社、カフェに雑貨、京都土産に和菓子やスイーツなど、ちょっとレアなところが紹介されています。いかにも女性向きの趣味かも知れません。
なにかの特集でこの本が紹介されていたので、内容は知らないまま購入しましたが、もう少しうんちくや解説が多い本かと思っていました。写真が中心で読書と言うにはおこがましい部類です。
別に京都だけではないでしょうけど、それぞれの土地を深掘りしていけば、様々な発見があり、美味しいものにも出会えます。
テレビで安上がりな街歩き番組が隆盛を極めるのも、そうした新鮮な発見や出演者との出会いがほのぼのとして視聴者に喜ばれるからでしょう。
以前は、そうした街歩きとは言え、すべて事前に仕込みがされていて、中には番組スポンサーを忖度したお店や内容が含められていたりして、裏側が知れると興ざめもしましたが、最近の街歩きは、そうした反省からか割とぶっつけ本番になってきています。
でもその場合でも、生放送というケースはないので、後の編集作業でいくらでもうまく印象を変えてしまえます。都合が悪い部分、本音がポロッと出た部分はもちろん放映しませんし。
こうしたガイドブックも、以前は取材する店(大きく取り上げる店)から広告宣伝費をとって掲載するというバーター的なものがほとんどでしたが、ネット社会になってからそうしたあからさまな紹介本はすぐにバレてしまうので、この本のように広告などとは関係なしに、著者の感性だけで気に入った名所やお店、人物を紹介しているという体が増えてきています。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
訣別の海 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ) ロバート・B・パーカー
ジェッシイ・ストーンシリーズ第5作目の作品で、2006年に米国で発刊、日本語翻訳版は2007年に出版されています。原題は「Sea Change」、直訳すれば「海の変化」です。
ジェッシイ・ストーンシリーズは「暗夜を渉る」「忍び寄る牙※」「湖水に消える※」「影に潜む※」「訣別の海※」「秘められた貌※」「容赦なき牙」「夜も昼も」「暁に立つ」と全部で9作品があり、そのうち※マークの5作品を読んだことになります。
またこの小説を原作としたアメリカの映画「警察署長ジェッシイ・ストーン 訣別の海」が、2007年にトム・セレック主演で製作されています。
舞台はボストンの近くにある架空の地方都市パラダイスで、その関係もありボストンが舞台のスペンサーシリーズでお馴染みの登場人物達が時々出てきたりします。
この小説でも、ヒーリー警部、リタ・フィオーレ(弁護士)が登場し、名前こそでてきませんが、スペンサーと思われるボストンの私立探偵から聞いたという話しも出てきて思わずニヤリとします。
逆にスペンサーシリーズの中で、ジェッシイ・ストーンが登場するのは、シリーズ30作目の「真相」(2003年)です。
内容は、海で溺死したと思われる女性に、なにが起きたのかを問い詰めていくという、いつものパターンですが、当初から疑わしいと思われた二人の金持ちで遊び人のヨット乗りから、突然、方向転換する終盤に緊迫感があってなかなかよろしい。
ただいつものことながら、主人公の警察署長は、浮気して離婚した元妻とまた暮らし始めていて、その点でグズグズと思い悩み、精神科医にもかかっている姿はどうにも釈然としないです。
アル中だった過去と決別したのはローレンス・ブロックの「マット・スカダー」と似てはいますが、マットはここまで女性に対し、意志薄弱、軟弱ではないですね。
いわゆるスペンサーシリーズのようにハード・ボイルド一辺倒ではない主人公を描きたいのだと思いますが、犯人を追い詰める姿と、元妻とデートするシーンとであまりの落差に読者は戸惑ってしまいます。
★★☆
◇著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)
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ファミレス (角川文庫)(上)(下) 重松清
2013年刊、2016年に文庫版が発刊された長編小説で、元は2012年から日経新聞夕刊に連載されていた作品です。2017年には遊川和彦監督、阿部寛、天海祐希主演で映画「恋妻家宮本」というタイトルで公開されていました。
映画も見てないし、日経夕刊も読んでいないので、どういう内容かはまったく知らずに読み始めました。
主人公は40代後半の中学校の国語教師で、子供達が就職や進学で家から出て行き、突然夫婦二人だけの生活になり、長く連れ添った夫婦関係がギグシャクしてくる頃です。
二人目は、その主人公の同世代の友人で、大手出版社で雑誌の編集長をやっている男性の妻は介護を理由にして京都の実家へ帰ってしまって別居状態。
三人目のもう一人は、嫁と姑の関係がこじれて離婚し×1となった男性で、再婚するにあたり、実家のお弁当屋をそのまま継ぐと、再び妻に嫁姑の関係で気苦労をかけると判断し、キッチンカーを購入し、お弁当やおかずの移動販売を手掛けている男性が話しの中心となります。
そこへ主人公と編集長が趣味で通っている「男の料理スクール」の講師で×2の女性が関わってくることになります。
その講師には妊娠している娘がいて、相手は元・売れないロックバンドメンバーで、妊娠を知ってバンドを辞めたものの、講師親子からは絶縁されています。
その他、主人公が勤める中学校の生徒で母親が不倫していたときに事故に遭い入院してしまったり、主人公の妻が書いた離婚届が本の間からみつかったりと、とにかく夫婦の関係がこれでもかというぐらいに揺さぶられていきます。
こういう小説を読むと、「結婚ってなんなの?」とか「夫婦ってなに?」って考えさせられます。
タイトルの「ファミレス」も、「ファミリーレストラン」の略ではなく、家族ではなく、独身者が多く集まる「ファミリーレス」の縮小型ではないのか?と、父親は海外へ単身赴任し、母親は不倫という夫婦の子供に言わせています。
でも現実に、専業主婦がメインだった時代を過ごしてきた妻が、夫が定年を迎えた機会に「熟年離婚」を言い出して騒がれた時代から、今では子育てを卒業して「卒婚」と称し、共働き夫婦で、まだお互いが元気なうちに新しい生活を手に入れようと別れる時代へと変わってきているのかも知れません。
私は別に結婚にこだわる古い考え方でもなく、また大きなお世話ですが、そうした流行で今後ますます結婚したいと思う若い人が減っていくことがないように願うばかりです。
★☆☆
◇著者別読書感想(重松清)
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2月前半の読書 夜明けの光の中に、山猫の夏(上)(下)、人間の分際
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ローレンス・ブロック傑作集〈3〉夜明けの光の中に (ハヤカワ・ミステリ文庫) ローレンス・ブロック
1993年に発刊された3作目となる短編小説集で、著者が創り出したキャラクターの探偵マット・スカダーや泥棒バーニイ、殺し屋ケラーなど20編が収録されています。
前の短編集2作品も同様ですが、出来の良い作品とそうでない作品の差が大きくて、ワクワクする短編もあれば、あくびが止まらない駄作も混じり、無理して20作も入れなくてもよかったのでは?と思ってしまいます。
しかし私はその良作のひとつ、1993年に読んだ「おかしなことを聞くね ローレンス・ブロック傑作集1 (ハヤカワ・ミステリ文庫)」(1983年)を読んで、マット・スカダーのファンとなりました。
元アル中探偵マット・スカダーに惚れる 2017/5/20(土)
短編それぞれのタイトルを書いておくと、
(1)夜明けの光の中に(2)夢のクリーヴランド(3)男がなさねばならぬこと(4)名前はソルジャー(5)魂の治療法(6)エイレングラフの選択(7)胡桃の木(8)泥棒はプレスリーを訪問する(9)交歓の報酬(10)死にたがった男(11)慈悲深い死の天使(12)タルサ体験(13)いつかテディ・ベアを(14)思い出のかけら(15)ヒリアードの儀式(16)エイレングラフの秘薬(17)フロント・ガラスの虫のように(18)自由への一撃(19)どんな気分?(20)バットマンを救え
(1)と(11)と(20)がスカダー、(8)がバーニー、(4)がケリーの短編作品です。
また、前の短編集(傑作集)でお馴染みとなった、手段を選ばず必ず無罪を勝ち取る弁護士エイレングラフはこの短編集でも(6)と(16)に登場します。(6)では、女中が見ている前で、資産持ちの夫を自分の拳銃で撃ち殺した妻を無罪にしてしまう敏腕ぶりには大笑いできます。
(11)の「慈悲深い死の天使」(The Merciful Angel of Death)は、著者の長編作品の中に「慈悲深い死」(Out on the Cutting Edge 1989年)というのがあって、それとの関連を想像していましたが、原題を見れば明らかで、まったく関係のない作品です。なぜ長編の「Out on the Cutting Edge」が「慈悲深い死」という超訳タイトルになったのかは不明です。
それぞれの短編小説を読んで思わずニタリとできるのは、やはりスカダーにしろ、バーニーにしろ、ケラーにしろ、エイレングラフにしろ、主人公の特徴をある程度知っておく必要があるでしょう。
お手軽な短編から入って、気に入った主人公の長編を買って読むというのもアリですが、マット・スカダーシリーズは、主人公にそれなりの歴史があるので、やはり初期の作品「八百万の死にざま」(1982年)あたりを先にたしなんでおいてから読むとグッと楽しさが増します。
★★☆
◇著者別読書感想(ローレンス・ブロック)
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山猫の夏 (講談社文庫)(上)(下) 船戸与一
著者は多くの小説を書き、2000年には「虹の谷の五月」(2000年刊)で、直木賞を受賞されていますが、惜しくも2015年に71歳で亡くなられた作家さんです。
調べてみるとまだご健在だった2005年に「金門島流離譚」(2004年刊、文庫は2007年刊)という小説を読んでいます。次は今さら感がありますが直木賞受賞作品を読んでみたいです。
この著書は、1984年に単行本、1987年に文庫化され、吉川英治文学新人賞などを受賞した著者の初期の作品で「虹の谷の五月」や「砂のクロニクル」とともに、著者の代表作と言われている作品です。
主人公は日本人ですが、舞台はブラジルです。叔父を頼ってブラジルへ渡った日本人が、亡くなった叔父の妻がやっているバーを手伝っているところに、山猫と名乗る日本人が現れます。
そこはブラジルでもサンパウロのような大都会ではなく、長くいがみ合う二つの名門家が対立している地方の小さな町で、両家をゆるがす大騒動が起きたために、ならず者の助っ人を呼び寄せ、戦闘態勢に入ろうとしています。
山猫はその二つの名門家同士で徹底的につぶし合わせ、さらに武器の横流しなどで儲けていた警察や軍部も関わらせて、漁夫の利を得ようとするわけですが、なにか黒澤明監督、三船敏郎主演の映画「用心棒」をちょっと彷彿させますね。
なぜその山猫という日本人がブラジルに移住したのかなど、日本とブラジルの関係、ブラジルに移住した日本人達の苦難の歴史などもわかる興味深い小説です。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
人間の分際 (幻冬舎新書) 曾野綾子
2015年刊の新書で、過去に著者が書いてきた短文をカテゴリー別に寄せ集めしたようなものです。
通常「分際」の使い方としては「学生の分際で~」と言うように、あまり肯定的、良心的なことばではなく、否定的に使われることが多そうです。
言葉の意味は、 (1)身分の程。身の程。ぶん。 「子供の-で生意気なことを言う」(2)それぞれの人や物に応じた程度。また,物事の程度や状況。 (Weblio辞書)ということで、タイトルの「人間の分際」とは、「それぞれ人は自分の身の程を知るべし」と言ったところでしょうか。
自分の身の程以上に無理をして、背伸びをしてつまずいたり、病んでしまったり、家族や他人に迷惑をかけたりすることって割とありそうです。
さすがに亀の甲より年の功ということで、御年86歳ますます意気軒昂な著者の過去の発言の集大成とも言える、暴走しがちな若い人(著者からすれば60歳でも若い人になる)に対する戒め本ってところでしょうか。
★☆☆
◇著者別読書感想(曽野綾子)
【関連リンク】
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ビター・ブラッド (幻冬舎文庫) 雫井脩介
映画にもなって大ヒットした「犯人に告ぐ」などの著者で、2007年単行本、2010年に文庫化された警察長編小説です。2014年には佐藤健の主演で「ビター・ブラッド 最悪で最強の、親子刑事(デカ)。」というタイトルでテレビドラマ化されています。
ま、よくある刑事ドラマものと言えばその通りで、設定は、子供時代に両親が離婚し、父親は出て行き、母親は失踪してしまい、父方の祖父母に育てられ、その後警視庁に入庁し刑事になった新人が主人公で、離婚して家を出ていった父親が同じ警視庁勤めというややこしい関係です。
そう言えば映画「犯人に告ぐ」も、豊川悦司扮する風変わりな刑事が主役のドラマでしたね。「犯人に告ぐ」は劇場型犯罪で、誘拐犯と刑事の息詰まるシリアスなドラマでしたが、こちらは刑事のあだ名が捜査一課長管理官には「タコ坊主」とか、吐く息が臭いので「スカンク」とか、コミカルな部分もあります。
タイトルは、主人公の祖父、離婚して別居した父親と3世代続けて警官となった血筋と、その父親は子供だった時に子育てをせずに離婚して出て行ったことで、険悪なムードが漂っていることから、直訳すれば「苦い血筋」となったのでしょう。
ま、すぐにテレビドラマ化されるぐらいにエンタメ性を重視した作品で、ちょっと現実味が乏しく感じるのは仕方ありません。
離婚後に行方不明となったままの主人公の母親については結局未解決のままなので、またそのうち続編が書かれるのかもしれませんね。
「犯人に告ぐ」(2004年)が11年ぶりに続編の「犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼」(2015年)が出ていますので、やはり11年ぶりの今年あたりに「ビター・ブラッド2」が出てきそうな予感がします。外れたらゴメン。
★★☆
◇著者別読書感想(雫井脩介)
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ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫) 北川恵海
メディアワークス社主催の第21回電撃小説大賞で「メディアワークス文庫賞」を受賞した作品で2015年に発刊されました。また2017年には成島出監督、福士蒼汰、工藤阿須加などの出演で映画も製作されています。
こうした出版社主催の懸賞金付き小説募集は、先般読んだ百田尚樹氏の「夢を売る男」のように、応募者に対してうまく言いくるめ、自主出版で稼ごうとするものか?ってうがった見方をしてしまいますが、そうでなくても、この作品は、万に一つの大当たり!っていうヒット作となって、出版社も半信半疑ってことではないでしょうか。しかし読んでみると確かによくできた作品だと思います。
ライトノベルで、普通の人なら2時間もあれば軽く読めてしまうでしょう。それぐらいが1回に集中できる時間なので、ちょっと気分転換に丁度いいって感じで、内容も合わせて若い人の心をつかんだのかも知れません。
ストーリーは、ブラック企業に勤める主人公が心身とも疲れ果て、駅のホームでフラフラと今にも線路に飛び込みそうだったところ、小学校の同級生だったという男性に腕をつかまれ、そのまま居酒屋へ連れて行かれて親友となっていきます。
その後、親友のアドバイスなどもあり、仕事が順調に進み始めたところ、大きな失敗をしてしまい、再び追い詰められて自殺を考えるようになっていきます。
と、同時に、その同級生だったという友人のことを調べると、3年前に自殺して亡くなっていることがわかり、いったい友人は誰なのか?なぜ自分の前に現れたのか調べ始めます。
決して幽霊とか異次元の話しとかではなく、読んでいると、よく気が付く人なら先にわかってきますが、最後のエンディングでは、ありきたりとは言え、グッとくる場面が残されていますので、お楽しみに。
★★☆
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リバース (講談社文庫) 湊かなえ
2015年に単行本、2017年に文庫本が出ています。「リバース」というタイトルの小説は意外と多く、五十嵐貴久氏、相場英雄氏、石田衣良氏(既読)、北國浩二氏も出していてちょっと混乱します。
また似たタイトルでたいへん印象深かった「北村薫氏の「リセット」」を以前読んだことがあるので、シリーズ続編か?と最初タイトルを見たとき思いました。
なんと言っても映画にもなったあの「告白」の著者の作品だけに、このまま終わるわけはないなぁって思いつつ、終盤を迎え、あぁ、なるほどーと最後の最後で深い謎が解けてしまうという展開です。でも本当にそれが原因だっかどうかはわからず、ちょっと設定に無理があるような気も。
ストーリーは、コーヒーを豆から自分で煎れて飲むのが唯一の趣味という、地味な若い独身男性が主人公で、馴染みにしているコーヒー専門店で若い女性と知り合います。
付き合いだしてまもなく、女性の職場に「(主人公の男性は)殺人者だ」という手紙が届き、主人公にとっては唯一身に覚えがある、3年前に一緒に旅行中だった友人が、クルマの事故で亡くなった話しを女性にします。
同様にその時一緒に旅行へ行っていた大学の元ゼミ仲間のところへも、嫌がらせが入り、誰がそのようなことをしているのか、主人公の男性が調べていくという流れです。
死亡事故が起きたのは偶然か必然か、また原因を作ったのは誰かなど、3年前に起きた事故のあらましが徐々に明らかになってきますが、悪意のない行動や親切が裏目に出ることを上質なミステリーに仕上げています。
そうした交通事故が大きな謎になっていますが、私から言わせると、例え、他の誰かから求められたとしても、ハンドルを握って運転していた者が、自損事故を起こせば100%その運転手の責任、以上!で終わってしまいますが、それだけではミステリー小説にならないのでしょうね。
★★☆
◇著者別読書感想(湊かなえ)
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23区格差 (中公新書ラクレ 542) 池田利道
2015年に発刊された新書で、著者は一般社団法人東京23区研究所所長という肩書きの方です。この本を知ったのはいまは終了しましたがBSテレビ番組の「久米書店」に著者が出演されていて、その時の話しが妙に印象深かったことを覚えています。
さらにこの続編とも言える「23区大逆転」が2017年に発刊されていて、これだけで食っている?って訳ではないでしょうけど、東京23区の専門家であり、また地方再生コンサルなど人口減少社会においては貴重なお仕事なのかも知れません。
さて内容ですが、あまり知られていない23区の特徴や住人のことが書かれていて、私自身は23区内には住んでいませんが、なかなか興味深いです。
例えば、港区に住む人の所得は平均で904万円に対し、足立区に住む人の平均所得は323万円とおよそ3倍もの差があるとか、人口密度が一番高い豊島区(2010年)、中野区(1990年~2005年)は、ぶっちぎりで全国一人口密度が高い市区町村だとか。さらに豊島区は性差(男性/女性)が最も高く、男余りの区だとか。
大卒者の割合は千代田区が53.4%と最高で、足立区は19.9%と最低とか、交通事故発生密度が高いのは渋谷区で93.8件/km2、低いのは大田区の33.5件/km2、刑法犯発生密度で高いのはご想像通り新宿区の495.7件/km2、低いのは大田区の130.0件/km2。
大地震被害想定で建物の全壊率が最も高いのは荒川区の18.7%、低いのは練馬区の1.3%
、同死者発生密度の高いのは墨田区の48.4%、低いのは板橋区の2.5%。
2000~2010年で0歳から6歳までの幼児は全国平均で10.6%減っているが、東京23区では6.9%増加している。
ひとり暮らし世帯の比率が低いのは葛飾区で、高齢者のひとり暮らし比率が低いのは江戸川区、つまり下町のほうが家族で住んでいる割合が高い。もっとも他区には多くの大学があって、その学生がひとりで住んでいるという事情もある。
20年以上定住している人の割合が高いのは1位北区、2位台東区、3位葛飾区、低いのは中央区、港区、世田谷区となっています。これは一度住みつくと、気に入って永住しやすい環境にあると好意的にとらえるか、逆に住民の新陳代謝がなく、高齢化が進み、寂れてしまうと悲観的にとるか微妙なところ。
そういった様々な統計データを元に、日本の縮図が学べ、これから23区内に不動産を買おうと思っている人や、23区を走る沿線の状況が今後どのように変わっていくかなどを知ることができ、役に立ちます。
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