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1016
三十光年の星たち(上)(下) (新潮文庫) 宮本輝

多くの作品を残す著者の2011年に単行本発刊、2013年に文庫化された長編小説です。

1年に数冊は著者の作品を手に取りますが、まだまだ数多くの作品が未読なので、それらは老後の楽しみにしています。

この長編小説は、2010年に毎日新聞に連載されていた小説で、無難な仕上がりという感じです。

著者はこうした新聞連載が割とお好きなようで、「ドナウの旅人」(1985年)、「花の降る午後<新装版>花の降る午後」(1988年)、「朝の歓び」(1994年)、「草原の椅子」(1999年)、「約束の冬」(2003年)、「にぎやかな天地」(2005年)、「田園発 港行き自転車」(2015年)、「草花たちの静かな誓い」(現在連載中)など、多くの新聞連載小説があります。

今まで読んだ著者の21作品の中では、自伝的なライフワーク作品「流転の海」シリーズは別格として、初期の「道頓堀川」「青が散る 」、中期の「ドナウの旅人」「月光の東」「睡蓮の長いまどろみ」、割と最近の「にぎやかな天地」などがお勧めです。

「流転の海シリーズ」については、
4月前半の読書と感想、書評 2014/4/16(水)
に少し書いています。

さて、こちらの小説の主人公は親からは勘当され、一緒に商売をしていた恋人には逃げられ、商売の借金だけが残り、半ば自暴自棄に陥っている30歳の男性です。主人公が住んでいるのは京都の中心街にほど近い長屋になっている古いアパートです。

商売でお金を借りていた同じ長屋に住む老人に、借金が予定通りに返せなくなったことを正直に伝えにいきますが、借金を棒引きする代わりに運転手役を頼まれ、一緒に借金の取り立てに行くことになります。

その後は急展開して、老人の過去を知り、自分の今までの生き方、考え方が誤りだったことを教えられ、その老人がやってきたこと、これからやろうとしていることを手伝い、そして跡を継ぐ決意をします。

30歳まで散々な人生をおくってきた主人公が、貧困の中からの一発逆転人生というのはまずありませんが、そこは創造と楽観な小説の世界。主人公は資産家の老人に気に入られ成長していきます。

ちょっと話しが巧くいきすぎるかなとも思いますが、人生なんてそんなものかも知れません。チャンスをうまくつかめるか、見逃さないかという、分水嶺に立つことはよくあることです。

この著者の小説の中には、本題とはあまり関係のない、様々な雑学的な珍しい雑学的な話しが盛り込まれています。

この作品でも、料理の話し、陶芸や染色の話し、人工林の話しなど、別にすぐに役立つわけではないけれど、知っているとそれだけで人生にちょっとだけ深みが増すような知識が得られます。そうしたことも宮本文学を読む楽しみのひとつでしょう。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

だから日本はズレている (新潮新書 566) 古市憲寿

著者は1985年生まれの作家、評論家ということで、報道ステーション始め、多くのテレビ番組にコメンテーターやゲストとして出演している若手論客という感じでしょう。

本書は2014年に発刊後、10万部を超える大ヒットとなり、若者の代弁者という立場?で、社会への不満、不条理、若者には理解しがたいオジサン文化や既得権益をわかりやすく論理的に説明をしています。

この本を出したときはまだ「20代の社会学者」ということで話題性がありましたが、現在はもう三十路で、これからが一番脂がのったの働き盛りでもあり、この人の真価が問われていくところでしょう。若くして著名になると、社会から注目される期間が長いだけに結構つらいものがありそうです。

学者としてまっとうな研究職に進んでいくのか、薄っぺらな評論家という名の電波芸者に成り下がっていくのか、それとも名誉欲と金儲けが巧い社会運動家として生きていくのか、後がないオジサンからすればどうでもいいですが、温かく見守っていきたいと思います。

目次をあげておくと、「リーダー」なんていらない、「クール・ジャパン」を誰も知らない、「ポエム」じゃ国は変えられない、「テクノロジー」だけで未来は来ない、「ソーシャル」に期待しすぎるな、「就活カースト」からは逃れられない、「新社会人」の悪口を言うな、「ノマド」はただの脱サラである、やっぱり「学歴」は大切だ、「若者」に社会は変えられない、闘わなくても「革命」は起こせる、このままでは「2040年の日本」はこうなる、と、ありふれてはいるものの、気になるワードを散りばめた、こんな感じ。

中でもしつこく書いてある、いかにもスマホも使いこなせていないオジサン達が無理やり考えたようなパナソニックのスマート家電とそのマーケティング戦略のバカバカしさ、昔から大企業・有名企業ばかりに群がたがる就活生の習性とそれを評価し認める社会など、面白おかしく世の中の不思議と不条理を取り上げています。

へぇ~って思ったのは知らなかったのですが、「日本の若者は格差を感じていない」の項に書かれています。

それは「欧米の国の若者と違って日本の若者は日本社会で生きることにそれほど不満を持っていない」ということ。

これは「国民生活に関する世論調査」のデータで、20代の若者は「今の生活に満足している」が78.4%に達しているとのこと。マスメディアは刺激的なタイトルをつけていつも逆の発信をしていますので多くの人はそれに惑わされているかも知れません。

私も気がついたらもう高齢者の仲間入り寸前のところまできています。こうした若者の実態を若者側から聞くことも少なくなっているので、たいへん勉強になります。

この著者、若いのに老成したところもあり、個人的にはまだまだ不満なところは多くありますが、案外いいセンいっていると思います。

このままメディアの軽いノリのオジサン方にいいように持ち上げられ、大金と名声をつかまされ、寝る間も惜しむ生活に翻弄されるようなことがなく、純粋に社会学や哲学の深淵を静かに学び、時には本を書き、時にはテレビに出てきてチクリと刺すという生活をおくり、やがては社会に影響を与えるような大物、鶴見俊輔氏のような評論家になってもらいたいものです。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

珈琲屋の人々 (双葉文庫) 池永 陽

殺人の前科を持ち8年間の服役を終え出所した後、亡くなった父親の喫茶店の跡を継いでマスターをやっている36歳の宗田行介が主人公です。

その喫茶店の名前は「珈琲屋」で、そこに集まってくる人々が1話ごとに変わっていく連作短編集です。

初出は「小説推理」に掲載されたもので、単行本としては2009年、文庫は2012年に刊行されています。

この作品には「初恋」「シャツのぬくもり」「心を忘れた少女」「すきま風」「九年前のけじめ」「手切金」「再恋」の7編が納められており、その後、続編として「珈琲屋の人々 ちっぽけな恋」(2013年)と「珈琲屋の人々 宝物を探しに」(2015年)の同じく連作短編集がすでに発刊されています。

主人公の幼なじみで、元恋人だった女性がいったんは結婚したものの、離婚して実家に戻っていて、毎日のようにこの店へやってきます。この脛に疵を持つ二人の大人の恋がどのように収斂していくのかというのも、楽しみとなっています。

舞台は8割以上ちっぽけな珈琲屋の中で終始しますので、きっと安上がりなテレビドラマに向くだろうなと思っていたら、すでに2014年4月にNHK BSプレミアムでドラマが放送されていました。

主人公のマスター役に高橋克典、その他木村多江、八嶋智人、壇蜜などが出演していますが、原作とはだいぶんと内容が変わっているようです。

著者は今年66歳、団塊世代に属する人で、作家デビューは18年前の1998年ということですが、作品を読むのは今回が最初です。作品には今回の現代小説や、時代小説もあり、今後いくつかは読んでみたいと思っています。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

新・日本の七不思議 (創元推理文庫) 鯨統一郎

著者の実質のデビュー作でもある「邪馬台国はどこですか?」(1998年)の早乙女静香シリーズ第三作目で、2011年に文庫で刊行されました。

2011年8月前半の読書「邪馬台国はどこですか?」

2013年10月後半の読書「新・世界の七不思議」


上記の「早乙女静香シリーズ」は、いずれも面白く、登場人物の話しに引き込まれるように読めました。ただいずれも短編集でライトな雑学の範囲を超えるには至りませんでしたが。

今回の謎解きをおこなうのは、下記の7つです。( )は私の一言あらすじです。

「原日本人の不思議」(日本人はどこからやって来た?日本語のルーツは?)
「邪馬台国の不思議」(皆既日食が起きたため、卑弥呼が亡くなった?)
「万葉集の不思議」(飛鳥時代の歌人、柿本人麻呂は実在しなかった?)
「空海の不思議」(空海は日本人ではなかった?)
「本能寺の変の不思議」(能の敦盛を好んだ織田信長は予定通り50年で幕を閉じた?)
「写楽の不思議」(写楽は誰か?わずか10ヶ月で消えた理由)
「真珠湾攻撃の不思議」(

残念ながら前2作からすれば、全体に新鮮味とパワー不足がゆがめませんが、「原日本人」や「空海」についての謎は、ミステリーとしても十分読み応えがあります。前にも書いたけど、そうしたテーマでもう少し深掘りした歴史ミステリー小説も読みたいものです。

また本作に含まれる「邪馬台国」や「本能寺の変」については前作の延長戦みたいなところがありますので、前作を読んでからこの短編を読むことをお勧めします。

★★☆


【関連リンク】
 3月後半の読書 快挙、晴天の迷いクジラ、悪の教典、なぜ人を殺してはいけないのか―新しい倫理学のために
 3月前半の読書 存在の耐えられない軽さ、風のささやき 介護する人への13の話、定年病!、K・Nの悲劇
 2月後半の読書 退職金貧乏 定年後の「お金」の話、埋み火、残虐記、違法弁護



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1012
快挙 (新潮文庫) 白石一文

2013年に単行本が刊行され、2015年に文庫化された小説です。著者は私とほとんど同世代ということもあるせいか、その話には共感できることが多く、文庫化された小説は、2003年に文庫化された実質的なデビュー作「一瞬の光」以来ほとんど読んでいます。そして2009年の「ほかならぬ人へ」で直木賞を受賞されたのは嬉しいことでした。

2012年4月上旬の読書「ほかならぬ人へ」


「快挙」とは、また変わった小説のタイトルだな?と思いつつ、なんの予備的知識もなく購入して読みました。この著者の作品は安心して読めるので、文庫本で見つけると中身は見ずすぐに買います。

今回の小説の主人公は、若いときにカメラマンを目指していたものの芽が出ず、いまは浅草のホテルでフロントのアルバイトをしながら、出版社の編集やライターの仕事を手伝ったりしている定職を持たない男性。

いつものように散歩をしながら趣味で写真を撮っていると、月島の古い飲食店の2階で若い女性が洗濯を干している姿に魅了されシャッターを切ります。

その店で切り盛りしている女性に撮影した写真をプレゼントしたことで、二人は急接近することになります。

その後二人は正式に結婚し、主人公の男はカメラマンをあきらめ小説家を目指すようになりますが、須磨にある妻の実家の酒屋が阪神淡路大地震で被害を受けてしまい、両親を励まそうと夫婦で須磨に引越し、店の再開を手伝うようになります。

著者の作品では、男女の目に見えない細やかな感情の糸が入り交じるのが特徴とも言えますが、この小説でも「彼女に会えたことが自分にとって快挙」と言えるまでに時間をかけて醸造されていくストーリーが見事です。

★★☆

著者別読書感想(白石一文)


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

晴天の迷いクジラ (新潮文庫) 窪 美澄

2010年のデビュー作「ふがいない僕は空を見た」に次ぐ2012年発刊(文庫は2014年)の2作目の長編小説です。「ふがいない…」は山本周五郎賞を受賞し、この作品は山田風太郎賞を受賞と順調に売れっ子作家の道を歩んでいるって感じです。

2015年6月前半の読書「ふがいない僕は空を見た」


文庫本の最後にある解説を直木賞作家の白石一文氏が書いているところなんかを見ても、新人らしくない著者の作品の筋の良さがかいま見えてきます。

この小説の主人公は3人いて、それぞれに重くてつらい過去を引きずっています。と言ってもひとりは会社を経営する中年の女性、ひとりは社会へ出たばかりの若い男性、もうひとりは女子高生という年齢も立場も抱え込む問題もそれぞれみな違うわけですが。

物語の最初から2/3ぐらいまでは、3人のそれぞれの背景が別々に淡々と語られているだけなので退屈な感じです。ところが、その3人が連れ立って湾の中に迷い込んだクジラを見に行くところから一気に話しは盛り上がっていきます。

この作品は映像化に向きそうだなぁって思って読んでいたら、すでに水面下では映画化の動きはあるようですね(詳細不明)。くれぐれもこの作品は演技力がある役者の配役が重要なので、力のあるプロデューサーに役者の人選を仕切ってもらえれば良い作品になるのではないかと期待しています。


★★☆

著者別読書感想(窪美澄)


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

悪の教典(上)(下) 貴志祐介

2008年から別冊文藝春秋に連載され、2010年に単行本、2012年に文庫版が発刊されました。

2012年には三池崇史監督、伊藤英明、二階堂ふみ主演で映画化もされています。見てないけど。

「教典」というからには、もう少し哲学的、宗教的で高尚な内容かと期待していた面もありましたが、あまりにも俗世感たっぷりな内容でやや混乱気味です。

タイトルは小説の中で高校生バンドが練習しているイギリスのプログレッシブ・ロックバンド「エマーソン・レイク&パーマー」の「悪の教典(原題Karn Evil)から都合良く取られているようです。

主人公は子供の頃から自分の気にくわない相手を次々と殺してきた人との共感を持たない高校教師という設定で、殺人鬼と知った両親も小学生の頃に手にかけています。

そうした殺人鬼のあり得そうもない設定かというと、さすがに小学生ではちょっと知りませんが、中学生ぐらいになると、親を殺害した事件は世の中には結構ありますから、まんざら嘘くさい話しとも思えません。

また主人公が勤務する私立高校では、男子生徒と淫行している中年女性教諭、男子生徒とゲイの関係をもつ美術教師、校長の弱みを握り、学校を支配しようと目論む根暗数学教諭、女子高生を弄ぶチンピラ体育教師など、青少年の教育の場にあるまじき異常な倒錯世界がてんこ盛りです。

エンタメとわかっていても、真面目な高校教師からすると反吐が出そうな展開でしょう。

ま、それはいいとして(よくないが)、やがては表向きは明るく弁説も爽やかな人気英語教師の主人公の裏の顔に気がつく生徒が現れ、また仮面が剥がれそうになって追い詰められていく主人公教師と対決していくという流れです。

途中からバイオレンス色が強くなり、校内でブラックジャックやスタンガンはもちろん、散弾銃までが登場し、壮絶すぎる殺戮が始まります。まるで「処刑教室」とか「バトル・ロワイアル」のノリになってきて不快さを感じる人も多いような気がします。

ま、理性ある教師なら、さすがにそこまではしないだろ?って思うのですが、事実は小説よりも奇なりってこともあるので、小説の世界ではこれぐらいはどうってことないのでしょうね。でもやり過ぎ。

★☆☆

著者別読書感想(貴志祐介)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

なぜ人を殺してはいけないのか (PHP文庫)  小浜逸郎

聞かれると返答に困り、ドキッとしてしまう倫理を問う10の難問について考える本です。

人を殺すことになんのためらいも抵抗もない大量殺人を描いた「悪の教典」と並行して読み進めていたので、なんだか不思議な感じがしました。

2000年に新書として刊行されベストセラーに輝き、その後2014年には文庫化もされています。

著者は評論家で国士舘大学局員教授のちょうど団塊世代ど真ん中の方です。そのご尊顔を拝見すると、いかにも団塊世代に多く存在する、一癖も二癖もありそうな思想家っぽい感じの方です。

さて、その10の難問とは、

第一問 人は何のために生きるのか
第二問 自殺は許されない行為か
第三問 「私」とは何か、「自分」とは何か
第四問 人を愛するとはどういうことか
第五問 不倫は許されない行為か
第六問 売春(買春)は悪か
第七問 他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか
第八問 なぜ人を殺してはいけないのか
第九問 死刑は廃止すべきか
第十問 国民は主権を持つのか

それぞれの難問について、考え方や、なぜこのような疑問、質問が発生するのかという時代背景など、論理的に説明されているのですが、正直言って学の乏しい私には半分ぐらいしか理解はできませんでした。

結局なにが言いたいんだ?ってな感じ。頭が悪くてスマンこってす。

第8問の本書のタイトルにもなっている「なぜ人を殺してはいけないのか」については、著者の見本回答?含め、比較的わかりやすく説明が加えられていましたが、その他多くの難問にっついては、その背景や考え方がわかったところで、それが正解のない理由とは思えず、なにかモヤモヤした気持ちが残ってしまいます。

もうすぐ耳順を迎える身ですが、まだまだこうした思想めいた、哲学的というか、禅問答に近い話しにはどうもついていけません。

★☆☆


【関連リンク】
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1008
存在の耐えられない軽さ (集英社文庫) ミラン・クンデラ

チェコ出身でフランスに亡命した作家ミラン・クンデラが1984年に発表した小説で、1988年にフィリップ・カウフマン監督のもとで映画化され有名になりました。

第2次大戦後東側陣営に組み込まれていたチェコスロヴァキアですが、共産党政権の中でも国民のあいだからは民主化や自由経済化の運動が叫ばれていました。それがいわゆる「プラハの春」運動につながります。

いかしその民主化の動きを封じ込めるため、1968年にソ連が政治的、軍事的介入を強め、チェコを弾圧する目的で軍隊を送り込んできます(チェコ事件)。

この小説ではそうした激動の中にあるチェコスロバキアに暮らすプレイボーイな外科医トマーシュと、その恋人との愛の物語ですが、なかなか哲学的な表現や思想を強調する場面もあり、また激動する国からとっとと他国へ亡命できるというような恵まれた特権階級という側面もあり、なかなか一言ではよかったとか感想が言い出せない困った小説です。

そして主人公トマーシュは、結婚した後も、絶えず外に愛人を持つという自由奔放な生活を送り続け、妻の「私にとって人生は重いのに、あなたにとってはとても軽い。私はその軽さに耐えられない。」という想いがタイトルになっています。

平和な日本においては、こうした国を捨てて亡命をするという経験もなければ、その最中にも妻と愛人を同時に愛するといういかにも肉食系男子的な恋愛小説は、あまりにも実感がわかずに、理解されがたいかもしれません。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

風のささやき 介護する人への13の話 (角川文庫) 姫野カオルコ

「もう私のことはわからないのだけれど」というタイトルで2009年に発刊された小説ですが、2011年には介護の話しだということがよくわかるタイトルに変えて文庫本で刊行されました。

著者自身が肉親、親戚など延べ20年近くも親族の介護を経験してきただけあって、高齢者の介護に対してえらく達観して見えるところがありますが、様々な事情を抱えた介護の形を13のケースの短編にうまくまとめています。うまくっていうのとはちょっと違うかな。

さてこの本の感想を書こうと思いきや、どうとらえていいのやら、介護に長く関わっている人しかわからないような心理描写や、人生観など、小説と言うよりも、なにか朗読詩を聞いているような錯覚に陥りました。

詩のように思えるのは、文章が生きていいる証拠でしょうけど、一般的な小説のように起承転結などあるわけでもなく、介護に関わったこともない人が読むと退屈きわまりない誰かわからない人の日記的な文章となってしまうかも知れません。

介護で悩み多き人がこの本を読むと、共感が持てるのかも知れませんが、一般的に読書好きな人にこの本を勧めたいか?って聞かれると、ちょっと躊躇うところです。

★☆☆

著者別読書感想(姫野カオルコ)


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定年病! (講談社+α新書) 野末陳平

野末陳平と言えば私は1980年代にあった「税金党」を思い浮かべますが、もう彼の名前を聞かなくなってから久しく、最近はどうしているのかなぁって思っていたら今もお元気でご活躍のようです。

戦前生まれで今年で84歳になられます。著者と早稲田で同窓だった野坂昭如氏は昨年(2015年)暮れに亡くなっていますから、団塊世代にとっての兄貴分と言えるこの世代の人もだんだんと少なくなってきます。

野末陳平通信(ブログ)


同新書は2007年に刊行されたもので、著者の周囲にいる人達の実例をもとに、定年後の生活が「思っていたと違った!」とならないようにするための軽めの教書というべきものです。

定年病とは著者が名付けた定年になったとたんに陥る心理状況、ひいては病状のことです。

最近よく聞く「定年後の田舎暮らしはうまくいかないよ」とか、「海外移住は業者に騙されているだけ」「奥さんは地域で独自のコミュニティを持っているが、会社人間の旦那は引退すると孤立する」といった、どこかでよく聞く内容ですが、2007年発刊なのでそれもやむなしでしょうか。

主に300万人近くいる団塊世代向けに書かれていますが、50代の人でも十分に面白おかしく、そしてためになります。「定年とは合法的な解雇(=失業)である」という言い回しは、確かにその通りだと思いました。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

K・Nの悲劇 (講談社文庫) 高野和明

2001年に「13階段」でデビューを果たした著者ですが、それ以前から多くの映画やドラマの脚本を手がけていて素養は十分にあった方で、この作品は単行本としては3作目、2003年に発刊されたミステリー小説です。この著者の作品では他に「13階段」と「ジェノサイド」(2011年)を読んでいます。

 「ジェノサイド」2月前半の読書と感想、書評 2014/2/19(水)

13階段」も「ジェノサイド」も、私がお勧めするミステリー小説のひとつですが、この作家さんは長編小説が1年に1作あるかどうかという比較的寡作の方ですので、なかなか次の作品を読む機会がありませんでした。

映画やテレビドラマの脚本なども多く手がける多才な人気作家さんなので、引っ張りだこなのでしょう。

最初は普通のミステリー感覚で読み始めましたが、よく現役医者作家が書くような医療サスペンス色が濃くなり驚きました。

しかも亡くなった友人が憑依する霊的現象などホラー色も加わり、下手をすればとんでも小説になりかねないところ、元産婦人科で、現在は精神科医というたいへん好都合な主人公のおかげで、論理的に破綻せずにうまくまとめられています。

タイトルは、妊娠中に胎盤早期剥離のため亡くなった3年前の親友の事故を、イニシャルの匿名として書かれていた週刊誌の記事タイトルからきています。

本書に繰り返し書かれていますが、1990年頃には国内で40万件以上もの人工妊娠中絶がおこなわれており、もしこの中絶を胎児の殺人として考えてみると、その数は日本人のガンによる年間死亡者数(2014年度37万人)をも上回り、日本人の死因の堂々1位となってしまうという事実には驚きました。

ただし近年はその中絶数は減少傾向にあり、2000年で34万人、2013年は18万人となっていて、年間18万名の死因2位の心臓病(高血圧や動脈硬化など)とほぼ同数まで下がっていますが、それでも人口減少のなかにおいて、まだまだ中絶をする人(せざるを得ない人)が多いのだなということを初めて知りました。

★★☆

著者別読書感想(高野和明)


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1004
退職金貧乏 定年後の「お金」の話(祥伝社新書) 塚崎公義

著者は私と同学年(1957年生まれ)ですが、東大卒、みずほ銀行入行、2005年に久留米大学へ転職した方で、私とは年齢だけ同じで、大学以降大きく違う点が悔しい限りです。でも大学を卒業したのは私のほうが1年早く、つまりは1浪か1留されているってことでしょうね。

専門は商学部教授ということですが、著書は年金や資産運用系のものが多く、この本も退職金の運用と年金の話しが主軸です。想定している読者は50代で、もうすぐ定年がきて、それなりの退職金がもらえる人というのが対象となっています。

なので、親の遺産で楽々老後とか、会社がIPOして持ち株で大儲けしたとか、副業のマンション投資がズバリ当たって毎月数百万円の純利益!というハッピーな人や、逆に退職金は出ないんですという人や、今まで年金を払っていないので老後は生活保護申請する予定という人、さらには会社が倒産して退職金はおろか月々の収入がアルバイト代しかという人には推奨できません。

って言うと、私の場合も、40代で転職、リストラを経験し、その後入った会社には退職金制度はなく、それまで蓄えた貯金や退職金は住宅ローンや子供の教育費、無職時代の生活費で全部使っちまった!っていう人も同様にこの本の読者にふさわしくありません。

しつこいぐらいに出てくる「70歳ぐらいまでは働け」「ここに書いたとおりの運用をすれば老後は安心」ということで、いつまでも働ける心身ともに健康体であることと、数千万円の退職金がもらえる人だけに、インフレに対応できる分散投資を指南する本で、その元手と健康がないと下流老人にしかなれないという、残念な下流老人予備軍にはなにも救済にはならないものでした。

ただ「生命保険は不要」「火災保険は不要」の話しは、それなりにフムフムと考えさせられる話しで、確かに働き盛りの時ではなく、50代、60代になってからの生命保険や医療保険は、お金持ちで他に使い道がないならいざ知らず、ギリギリで生活している普通の高齢者に必要か?って言われるとその通り。

また火災保険も、築20数年経つ資産価値のない家が燃えてなくなったからと言って、再びその場所に新しい家を再建するか?って言われると、それよりも土地を売って小さなマンションを買ったり借りたほうがマシという妙に割り切った考え方に納得感があったっりします。

退職金については、この本を参考にしながら、また別の機会にちょっと書いてみたいと思っています。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

埋み火 (双葉文庫) 日明恩

著者日明恩(たちもり めぐみ)氏のFire's Outシリーズの第2作目で、「鎮火報」(2003年)に次ぐ2005年発刊の小説です。タイトルの「埋み火(うずみび)」とは、「炉や火鉢などの灰に埋めた炭火」のことを言います。

主人公は赤羽台消防出張所の消防士大山雄大。元々は安定志向で「楽して一生安泰」の公務員として受けた消防士で、早く昇進して事務方へ回り、9時5時で安全な仕事に回りたいと願っています。

しかしそこは、殉職した消防士だった父親から血筋をひいていて、救え出せなかった被害者や、火事の不自然な原因などに勘がよく働きます。

連続して老人が住む一軒家が漏電などの事故で火事に見舞われ、住人が亡くなっています。しかし不思議に近所への延焼や隣の住人が海外旅行中とか、被害は限定的に収まっています。

警察とは違い、事件性があっても消防士がそれを調査することはありませんが、ある少年と老人との接触を目撃するところから、恐ろしい計画が実行されていることに気がつきます。

ちょっとミステリー的な面もありますが、それよりもコミカルな展開も多く、また雑学としての火災事故や消防署の仕事についても語られていて、気楽に読める作品としては上出来です。

さらには父と子、母と子、親と子など複雑な人間関係も無理矢理描こうと努力されていますが、そちらはちょっと詰め過ぎ感があり、いまいちピンときません。

昨年2015年にはシリーズ3作目「啓火心 Fire's Out」も出ています。それが文庫化されるのを楽しみに待っています。

★★☆

著者別読書感想(日明恩)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

残虐記 (新潮文庫) 桐野夏生

当初は雑誌に「アガルタ」という題名で2002年に連載されていて、その後タイトルを変えて2004年に単行本、2007年に文庫化された小説です。2000年に発覚した新潟少女誘拐監禁事件をヒントとにして書かれたものとされています。

新潟の現実の事件では9年の長きに渡って監禁されていましたが、この小説ではモデルになった事件の被害者と同じ9歳で誘拐拉致され、1年後に男の部屋で発見され無事に救出されます。その少女はその後作家となり、20数年が経過した時、加害者が無期刑を終えて出所し、手紙を送ってきたことで、突然失踪することになります。

そう言えば新潟の誘拐監禁事件が発覚したのが2000年で、裁判は最高裁までいって最終的に14年の刑だったということは、最大期間入所していたとしてもすでに2年前に加害者は出所しているってことですね。殺人事件ではないけれど、被害者のことを思うと、えらく心に重く残る残虐な事件でした。

こうした子供が犯罪に巻き込まれるという小説は読んでいてもたいへん気が重いです。ただこの小説の場合は、被害者の小学生は精神的なPTSD以外、大きな加害は受けずにすみ、1年後には家族はともかく本人は普通の生活に戻れたという内容ですので救われます。

本書では直接的には語られていませんでしたが、誘拐と長期の監禁の場合、ストックホルム症候群という加害者に対して同情や好意を持ってしまうことがあり、本書でもそうしたところが最後には明らかになっていきます。

★☆☆

著者別読書感想(桐野夏生)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

違法弁護 (講談社文庫) 中嶋博行

著者は現役弁護士であり、訴訟社会のアメリカでは多くの有名な作品があるリーガルサスペンスと称するジャンルを得意とするミステリー作家さんです。デビューは1994年に「検察捜査」で、この「違法弁護」は1995年に2作目として単行本(文庫版は1998年)が発刊されています。

舞台は横浜、主人公は、県警の刑事と横浜に本社を置く日本最大級の法律事務所で上(パートナー)を目指している女弁護士です。時は司法改革が叫ばれ、それまで200人前後で推移してきた弁護士の数が、一気に増えようとしている時の話しです。ちなみに本書が出た1995年から14年後の2009年にはそれまでの10倍以上2000人を超えています。

著者が弁護士だけに天敵でもある検察官は徹底的に悪者風に書いているのがちょっと笑えますが、一般の人は普段知らない民事や刑事事件の司法の流れなど、雑学的に面白く読み進められます。

横浜の倉庫で撃ち合いが発生し、警察官と税関職員が死亡。その倉庫には密輸された銃器らしき痕跡があり、県警が捜査に乗り出しますが、倉庫を使っていた会社の顧問弁護士が立ちはだかり、また別で動いている公安警察などが複雑に絡み合っていきミステリー要素もふんだんに盛り込まれています。

この小説に出てくる旧ソ連が開発したPSSというサイレント銃というのは初めて知りました。普通は銃のサイレンサーと言えば、銃口に消音器を取り付けるパターンが有名ですが、このPSSは弾丸というか薬莢に仕組みが施されていて、外部に音が漏れないようにできています。KGB主導で作られたということで、暗殺に持ってこいの拳銃なのですね。50年ぐらい前からの雑誌「丸」愛読者(と言ってもここ40年!ほどは未読ですが)でも知らないことはいっぱいありますね。

★★☆


【関連リンク】
 2月前半の読書 人類資金 1・2・3・4・5・6巻、下流老人 一億総老後崩壊の衝撃
 1月後半の読書 海賊と呼ばれた男(上)(下)、ツナグ、逃げろ光彦―内田康夫と5人の女たち、日本名城伝
 1月前半の読書 月と蟹、不実な美女か貞淑な醜女か、左京区恋月橋渡ル、交換殺人には向かない夜



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1000
まず、「リストラ天国日記」が2002年のスタートから1000回に達したことをお伝えします。パチパチパチ。

独断と偏見に満ち、さして教養もないつまらない日記ながら、時々でも読んでいただいている方には、たいへん感謝しています。

自己満足と言いつつも、わずかながらでも読者がいることが、なにより書き続けるひとつのモチベーションとなっていることは確かです。

抱負なんてものはありませんが、曲がりなりに14年間継続してこられたことは、ちょっと誇らしく思っています。

もし突然予告なく日記が数ヶ月更新が途絶えた時は、きっとどこかで野垂れ死にしたと思ってください。一応は今のところ同居する家族がいますので、孤独死は免れると思いますけど、、、

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

人類資金 (講談社文庫) 1・2・3・4・5・6巻 福井晴敏

2013年以降順次刊行されてきた作品で、2015年7月に発刊された第7巻が最終となっています。

その6巻まで一気読みしました。と言っても各巻は短編と中編のあいだぐらい、文庫で1巻あたり200ページ程度の短い展開ですので、読むのにそれほど時間を要するものではありません。

ただし、まだ未読ですが、最終の第7巻だけは700ページあるそうです。

内容はM資金にまつわる陰謀や情報戦で、M資金詐欺を働いていたフリーの詐欺師が、謎の組織に勧誘され、そのM資金を管理している財団から盗み出そうとする物語です。

M資金とは連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が占領下の日本で接収した財産などを基に極秘に運用されていると噂される秘密資金のことで、このあるのかないのかよくわからない、徳川埋蔵金のように、時々出てきては消える、詐欺によく使われる巨額の財宝です。

このM資金をテーマにそれまで温めていた映画監督の阪本順治氏と作家の著者がタッグを組んで、映画と小説でコラボした作品となっています。

主人公はM資金をネタにして企業から金を巻き上げる詐欺師の男。この詐欺師が、M資金を奪い取ろうと考える謎の男から勧誘をうけ、同時にM資金の保全をしている市ヶ谷(防衛省)からも追いかけ回されることになります。

映画は2013年に佐藤浩市主演で公開されましたが、興行成績はあまり芳しくなかったようです。私もテレビで映画のCMが流れているのは知っていましたが、見ていません。

とにかく、なぜこのような1冊あたり200ページ程度の薄い本にしたのかよくわかりません。1~3巻まとめて上下巻の2冊+最終話1冊の合計3冊にまとめて欲しかったなというのが読者としての率直な感想です。

それにしても中途半端な6巻で終わってしまい、早く最終巻の7巻を手に入れなきゃ、今までのあらすじを忘れてしまいそうで焦ります。なんでも6巻まではたいした活躍をしてこなかった主人公の詐欺師が大活躍するそうで楽しみです。

★☆☆

著者別読書感想(福井晴敏)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 (朝日新書) 藤田孝典

著者は生活困窮者支援のNPO法人「ほっとプラス」代表理事で、学者さんが統計や取材で書くレポートではなく、いま現場でなにが起きているかを一番よく知っている人が書いているところにこの本の特徴があります。

発刊は2015年6月で、2014年にNHKスペシャルで「老人漂流社会 “老後破産”の現実」などの放送もあり、旬のテーマでタイムリーに出せた話題書ということで、2015年のベストセラーとなっています。

「下流老人」とは著者が造った造語ですが、その定義として「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」としています。つまり生活保護を受けて暮らす高齢者と、生活保護の受給額相当しかない年金で暮らす高齢者ということで、その数はおよそ600~700万人と推定されています。

65歳以上高齢者数は2015年で約3300万人ですので、およそ全体の20%の高齢者が下流老人に該当することになります。

「え?高齢者は統計では平均2000万円以上の預貯金をもつ裕福な人が多いのじゃなかったっけ?」って言われそうですが、平均ではその通りですが、若い人の中に非正規と正規社員格差問題があるように、いやそれ以上に長年の格差が積み重なっていて、億の資産を持つ高齢者と預貯金がまったくない高齢者に分かれています。

「若いうちに貯金をしていない報い?」と切り返えられそうですが、本書でも紹介されますが、自身が病気になり長期治療を受けて1千万円以上あった退職金もすぐになくなったとか、働き盛りの時に親の介護のために勤めを辞めざるを得なかったり、子供が中学生の頃に自閉症に罹り、その後ずっと働けなく何十年と病院通いをして貯金したくてもできなかったという高齢者も多くいます。

一方では、裕福な高齢者も多くいると、本書の「1億総老後崩壊」という副題というか煽りに違和感や反論があるというのも、本書が広く多くの方に衝撃を与えたゆえのことでしょう。

そのひとつが、
「1億総下流」は嘘っぱち「富裕層」101万世帯(PRESIDENT)
など。

上記の記事に出てくるスーパーリッチ(事業収入、不動産収入、配当収入、給与収入が並行してあるような人)や鳩山さんみたく巨額な遺産があるような人は除き、30代で年収3千万円があっても、あるいは40代で資産1億円があったとしても、その人が75歳、90歳になった時点で、果たして現役時代と同じように裕福なままでいられるかという保障はどこにもないというのが現実で、一歩道を誤ると下流老人になりかねないという点では本書の通りだと思います。

老後資金としてため込んでいた数千万円をオレオレ詐欺で騙され奪われる高齢者、認知症を患った高齢者に高額な不要な物品やリフォームを売りつけて数千万円を搾取する業者、子や孫の心臓移植手術など難病のためにアメリカで手術を受けるために数億円の費用を借金して負担する家族、投資をして預けていた先が破綻して紙くず同然になってしまった債権など珍しい話しではなく日常的によく起きていることです。

現役時代ならやり直しができて、また稼ぐことができても、70歳、80歳の高齢者にその意欲や体力、健康があるかっていうとかなり難しく、一度下流に落ちてしまうともう復帰ができないというのが下流老人なのです。

★★☆


【関連リンク】
 1月後半の読書 海賊と呼ばれた男(上)(下)、ツナグ、逃げろ光彦―内田康夫と5人の女たち、日本名城伝
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