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沖で待つ (文春文庫) 絲山秋子

著者は1966年生まれで、大学卒業後、総合職として大手住宅設備機器メーカーの営業職を経験したのち、2003年に作家デビューされた方です。

その後いくつか文学賞を受賞されましたが、2005年にこの作品で芥川賞を受賞されています。

そのタイトルから、漁師さんの恋愛もの?ぐらいの想像しかなかったのですが、まったく違い、著者の住宅設備機器会社での仕事をメインに、恋愛とは違う新卒同期の友情?がテーマになっている話しです。

この文庫は、その受賞作と、やはり著者が仕事を辞めた後の経験を下敷きにしたと思われる「勤労感謝の日」と、すべてひらがなとカタカナで書かれた児童文学的な「みなみのしまのぶんたろう」の短篇とセットになっています。

どの作品も、なにかとても新鮮な感じで、面白く読めました。さすが芥川賞!です。正直、過去に読んだ中ではあまり面白いと思った芥川賞作品ってないのですけどね、、、

私も卒業後に入社した会社で、転勤が何度かあり、まったく知らない街にひとり住み、営業の仕事で地元の人と交渉する仕事をしてきたという共通点があり、主人公の心の中がよくわかります。

ただ、私の場合は、著者とは違い、楽観的で住めば都、どこへ行っても、その街が好きになり、このままずっと住んでも良いなと思いながら、数年後には後ろ髪を引かれつつ次の職場へ転勤していくという青春時代を送り、仕事も生活も人生でもっとも充実していた時期かも知れません。

タイトルは、主人公の同期の男性が書いた下手な詩の中に出てくる愛の言葉で、涙を誘う展開となっていきます。

★★★

著者別読書感想(絲山秋子)

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瑕疵借り (講談社文庫) 松岡圭祐

2018年に単行本と文庫が同時に発売されたという珍しいパターンの作品です。著者としては先に単行本で回収したいでしょうけど、読者側としては大いに助かります。

著者の作品は「千里眼シリーズ」や催眠、マジックなどというものが多く、それらもいくつかは読みましたが、個人的には最近増えている歴史時代小説が気に入っています。

今回は、そのどちらでもなく、不動産の賃貸を借りている人が、孤独死で亡くなったあとしばらく発見されなかったり、部屋で自殺や事件が起きて亡くなった場合、その部屋や建物が事故物件扱いされることで起きる様々な「心理的瑕疵」がテーマです。

不動産業で不文律とされている「瑕疵借り」とは、そうした事故が起きた部屋に、誰かを一時的に住まわせることで、周囲の住人の「心理的瑕疵」を和らげたり、新たな入居者への重要事項説明で「瑕疵」の存在を早々に省いてしまおうとするものです。

私も読んで初めて知りましたが、お笑い芸人さんが笑いを取るためでもなければ、そうした瑕疵があるアパートやマンションに喜んで入居する人は少ないでしょうし、その部屋だけでなく、建物全体に影響することから、家主側からすればできるだけ早くそのような瑕疵の説明を終わらせたいということもわかります。

ただこの小説において事故物件に入居する主人公は、単にそういう家主の損得の意向を受けたものだけではなく、借主が死に至った謎や真の理由を解明し、瑕疵物件の「心理的瑕疵」にかかわる大きな不安を一掃することが目的です。そういう意味では、謎解きの探偵に近いものがあるとも言えます。

瑕疵物件と直接関係はないですが、偶然今月「高齢者の賃貸入居拒否問題と空き家 2021/10/9(土)」という記事を書いています。

不動産の話しは、身近でありながら、知らないことが数多くあり、調べてみると興味がわいてきます。

それに加えて、こうした小説を読むと、さらに深掘りして考えてみたいなと思えてきます。

小説では賃貸の事故物件が主ですが、分譲住宅においても当然事故物件は多くあり、これからも持ち家の高齢単身者の孤独死や自殺が全国各地で発生していきそうです。

というのも、自殺者の報道ではいじめなどを苦にした10代ばかりが取り上げられますが、実は年代層でみると60歳以上の自殺者が突出して多く、最近まで年間1万人を超えていました。

そうしたことも踏まえてこの小説の続編も期待したいところです。

★★☆

著者別読書感想(松岡圭祐)


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熊野古道殺人事件 (中公文庫) 内田康夫

文庫あとがきで知りましたが、この浅見光彦シリーズの長編ミステリーは、主人公が違う短篇2篇を組み合わせ、さらに新たに取材をした時に考えついたことを加えた特殊なものということです。

実はこの文庫は、テレビで浅見光彦シリーズのドラマを見て興味を持ち、2012年に一度読んでいましたが、なぜか感想を書いてなく、あらためて読んでみました。

1991年にノベルスとして初出ということですから、30年前のことで、文庫化されたのは1995年です。浅見光彦シリーズの長編としては75番目ということになります。

シリーズの特徴でもある「ご当地紀行小説」のひとつですが、今回はタイトルでもわかるように、巡礼者が今も多い熊野古道や、古い時代におこなわれていた宗教行事、補陀落渡海(ふだらくとかい)、人形供養の淡嶋神社、女の怖い情念を描いた安珍・清姫伝説など、紀州和歌山の見所が詰め込まれています。

登場人物はちょっとややこしく、主人公の浅見光彦、ワトソン役の作家内田康夫、その内田の旧友で大学教授とその妻、その教授の下で助手を務める男とその妻、研究室の学生達、あとはいつもの地元警察官などです。

そう言えば、シリーズにはつきものの、浅見光彦に好意を寄せる美しいヒロインがこの小説に限っては出てきません。

その代わり、いつもは裏方の作家内田康夫氏が光彦よりも先に事件の不可解な謎を知ったり、光彦の愛車ソアラを運転して大事故に遭うなど大活躍します。

熊野詣と言えば常道の熊野三山(新宮市の熊野速玉大社、田辺市の熊野本宮大社、那智勝浦町の熊野那智大社)が小説の舞台としては全然出てきませんが、これらは当たり前過ぎてわざと外したのかな?と思います。

近いうちに、熊野詣をしたい気持ちになりました。

★★☆

著者別読書感想(内田康夫)


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東京消滅 - 介護破綻と地方移住 (中公新書) 増田寛也

以前「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」(2014年刊)を読んでなかなか面白かったので、その続編とも言える本書(2015年刊)を読んでみました。

5月前半の読書と感想、書評(地方消滅 東京一極集中が招く人口急減)

2014年と2015年の2年間に3冊の書籍を一気に出されていますが、これはあとになってわかりましたが、2016年の東京都知事選に出るために「東京のことをこれだけ考えている」というものだった?とも思えます。

しかしその都知事選挙では自公などの推薦を受け、当時の安倍首相からもビデオメッセージをもらいながら小池氏に大差で惨敗しました。

ま、それはさておき、「地方消滅」と同様、様々な公表データを元にした細かな分析が延々と続きますので、老眼の入った眼にはつらく厳しい新書です。

そして著者の主張は、「日本版CCRC」と「東京圏から地方への移住政策」の二つです。

CCRCは、70年代のアメリカで始まった「高齢者が元気なうちに終末まで過ごす地域コミッティに参加する生活共同体」のことで、「Continuing Care Retirement Community」(直訳:継続ケア退職コミュニティ)の略です。

その日本版CCRCは、地方移住でも現在住んでいる地域でもどちらも良いのですが、大きな団地などによくある住民会理事がその団地の修繕計画や保安など様々なことを決めていくようなことを介護まで進め、地域で元気な住人(高齢者含む)が主体となって介護や援助が必要な高齢者の面倒を見ていき、自分が介護や援助が必要になったときには元気な人に世話を受けることになります。

アメリカでは、そうした高齢者ばかりが住む地域があり、リタイアした人達が楽しく余生を過ごす環境が整っています。

「都市から地方への移住」は、本書が書かれた以降にコロナ禍が起き、リモートワークが可能となった若い人の地方移住が流行ってきましたが、以前から言われてきたことです。

本書では、データを分析し、この先2040年頃にどこの地方なら医療や介護に余裕があるか?という具体的な地域まで記載されています。移住をしたいが場所は決まっていないと言う人には参考になりそうです。

国や自治体が進める移住政策に関して、明治時代から戦後にかけて南米やハワイ、満州、北朝鮮など様々な形で多くの国民を海外移住させたり地上の楽園と偽って帰還させ、また明治時代には北海道の奥地に国内移住を進めてきました。

これらは一種の棄民政策で、悲惨な結果になったことが多く、国や役人が言う移住政策など「まったく信用ができない!」というのが個人的な見解です。

国や自治体に頼らず、自分が住みたい場所をいくつも見て回り、お試しで少し住んでみて、それで決めるのならば問題はありませんが、少しでも国や役所が顔をのぞかせた瞬間、嫌悪する人はまだ多いのではないでしょうか。

それはともかく、そうした移住をいう人は限って「自分は生涯東京に在住が基本」です。それは、巨大企業出身の評論家などが「学生は大手ばかりに目を向けず、中小、ベンチャー企業に就職すべし!」というがごとしです。

★☆☆


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最後の命 (講談社文庫) 中村文則

2007年に単行本、2010年に文庫化された小説で、2014年には松本准平監督、柳楽優弥主演で映画も公開されています、見ていませんが。

どんなあらすじなのか知らずに読み始めましたが、一人称で語られる仕事を辞めたばかりの男性主人公が事件に巻き込まれていくのをドキドキしながら読みました。

最初にこの本のタイトルを見たとき、筒井康隆著「最後の伝令」をふと思い出しましたが、内容は全然違っていて、シリアスでミステリアスな自己精神分析チック小説でした。

子供の時に友人と一緒に見てしまったことがトラウマとなっていてその友人とは長く疎遠にしていたところ、突然連絡が来て会うところから物語は進んでいきます。

そのトラウマというのが思わせぶりでなかなか出てこないのでイラッとしますが、それでも同じ男性として主人公に共感したり感情移入したりしながら読めてなかなかおもしろかったです。

ただ、小説やドラマでは当たり前になっている、偶然で事故や事件が起きて・・・というのはどうもリアリティがなさ過ぎて、そういう箇所だけは遠い場所から冷ややかに眺めているという感情が出てきます。

自分にも小説の主人公のように人の生き死にではないものの、子供の頃に受けた強烈なトラウマがいくつかあり、50年以上経った今でも頭をよぎることがありますが、それがその後の人生に影響を受けたということはたぶんなく良かったと思います。

★★☆

著者別読書感想(中村文則)

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