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風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) 森絵都

2006年上半期の直木賞を受賞した短篇小説集です。短篇のタイトルは「器を探して」「 犬の散歩」「守護神」「鐘の音」「ジェネレーションX」「風に舞いあがるビニールシート」の6篇です。

著者の作品は過去に「カラフル」(1998年)と「永遠の出口」(2003年)の2作を読んでいます。

さすが賞を得るだけあってどれもおもしろく良い短篇小説でした。

その中でも個人的に一番気に入ったのは4つめの「鐘の音」で、これは仏像を彫る仏師になろうと美大までいき、そこでの評価も高かったのにかかわらず、自己葛藤で満足ができず、悩んだ結果、古い仏像を修復する仏像修復師に弟子入りした男が主人公です。

こうした仏師や仏像修復師の仕事って一般的には馴染みがない世界で、こうした小説の世界で初めて知ることができ、興味をそそられます。

師匠の元で仏像修復を続けていると、あるとき、珍しい不空羂索(ふくうけんじゃく)観音像の修復をすることになります。

こうした仏像にも様々な宗派や形態があることすらあまり知りませんでした。

主人公が修復することになった古い仏像にはなにか違和感がつきまといますが、なぜか強く引き寄せられるものがあり、それが結果的には全国の寺社を渡り歩く修復師を辞め、つきあっていた女性の元へ帰る結果となります。

人を寄せ付けず世渡りが下手な芸術家として苦悩する主人公と、「あらゆる衆生をもれなく救済する観音」の不空羂索観音との関係はとてもわかりやすくて良かったです。

★★★

著者別読書感想(森絵都)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

探偵刑事 (実業之日本社文庫) 南英男

作品中に、ネット検索なども出てきて、若い作家さんかと思っていたら、今年77歳のベテラン作家さんでした。今回初めて著作を手に取ったもので、失礼しました。

この作品は、2018年文庫書き下ろし作品で、タイトル通り、主人公は警視庁捜査1課の刑事でありながらも、昔お世話になった先輩刑事がリタイア後にやっていた探偵事務所の仕事を手伝っています。

厳密に言えば公務員法違反になりますが、探偵の方は一切報酬を受け取らず、休日や業務時間後におこなっています。

よく私立探偵の小説では、警察官のフリをして、相手に喋らせる手法や場面が出てきますが、こちらは現職の刑事だけあって、探偵としての聞き込みでも、ヤクザや反社組織に対して容赦なく、そりゃーずるい!て思わなくもなく。

警察庁の監察官は、警察官の不正がないかを調べますが、意外なことに、主任監察官が部下の監察官に対し疑いを持ち、その証拠を主人公に密かにつかんで欲しいと頼まれます。

しかし、その疑惑の対象となった監察官は、主人公の目の前で鮮やかに拉致されてしまい、その後他殺体として発見されます。

同時に、元々パートナーと共に担当している4年前の未解決事件、ジャーナリストが殺害された捜査をしつつ、探偵の仕事として売春組織に軟禁されている女子大生を事件化せずに救出と、読んでいても、話題があちこちに飛んでいき追うのがたいへんです。

でも、あまり危機というか、こうした小説ではつきものの主人公が奈落に落とされるようなことはなく、理解ある上司やコンビを組むパートナーにも恵まれ、八面六臂の活躍は読んでいてスカッとします。

一箇所、明らかなミスを発見。プロの校正者に出していないの丸わかりです。

86ページ「溝口が数人のホステスに見送られて」と「溝口が気に入ったホステスを」はいずれも「手島が・・」の誤り。溝口はの前のページでその1時間前にひとりで店を後にしています。

こうした安易なミスは、通常の雑誌掲載→単行本→文庫では、多くのプロの目がチェックしているのでまず起きませんが、書き下ろしの場合は経費削減?のためか、校正が不十分で起きるのでしょう。編集者の力量がなかったとも言えます。

それはさておき、ちょっとうまくいき過ぎてスリルはないものの、おもしろく読めましたので、著者の他の小説も読んでみようと思いました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

桶川ストーカー殺人事件―遺言―(新潮文庫) 清水潔

前に読んだ「足利事件」を追ったノンフィクション「殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―」を読んで、事件記者としての厳しさと醍醐味を味わえたので、こちらのノンフィクションも読んでみました。

202年12月前半の読書と感想(殺人犯はそこにいる)

多くの人が衝撃を受けた「桶川ストーカー事件」ですが、私も当時の新聞やテレビで、「オミズ商売していた綺麗な女子大生がストーカーに襲われた」ぐらいにしか記憶は残っていませんでした。

事件が起きたのは今から22年前の1999年で、埼玉の桶川市で起きました。

ややこしかったのは、ストーカーとして疑われていた男性と、駅前で女性を刺した犯人の特徴がまったく一致せず、警察内部でも混乱していた様子がうかがえました。

しかし、この本でわかったのは、事前にストーカー相談をし、告訴状まで出していたに関わらず、警察はまったく相手にせず、告訴状も面倒なので、警察内部で勝手に被害届に偽造していたことが判明します。

そうすると警察としては、必死にそうした怠慢を隠蔽するため、被害者の女性を風俗で働く派手好き女性というイメージを拡げていきます。

実際は友人に頼まれ2週間だけスナックでアルバイトをしたことがあるだけで、事件当日身につけていたものに大事に使い古された腕時計やバッグがブランド物だったというだけでした。

また告訴状に書かれていたストーカー男性を検挙すると、それまでの警察の対応が間違っていたことになるので、そのストーカーを探すことはせず、また殺人犯に対する捜査にも消極的な姿勢が見られました。

そうした中で、当時写真週刊誌「FOCUS」の記者だった著者が、被害者の友人や家族などに接触し、信頼を得て犯人捜しを始めますが、警察権力なしで事件を追いかける難しさ、根気と熱意、編集部との関係など、今さらながらドキドキしてしまいます。

しかしこの本を読んで何度もしつこいほど繰り返して書かれていたことが、「ここまで警察組織は腐っている!?」ということです。

今でも殺人事件の記者会見の場で、亡くなった被害者の方への哀悼や尊厳もなく、捜査本部の警察官がニヤニヤしながら集まった記者に対して「厳しい質問のないようによろしく」とわけのわからないことを最初に言い、被害者が刺された場所を記者に聞かれて、「脇腹かな」と満面の笑みで答える捜査1課長代理や上尾署長(いずれも当時)の動画がyoutubeに残っていますが、元々精神的におかしい人達なのか、別世界の人としか思えません。あるいは警察組織に長くいるとこういう性格になってしまうのでしょうか。

ともかく、こうした警察権力の闇、もしかすると加害者側となんらかの関係があって隠し通したかった反社会勢力と警察との関係をあぶり出そうとする命知らず?のジャーナリストがいて、それを警察発表しか載せられない御用記者クラブのしがらみがない雑誌社がまだあった(FOCUSは休刊しましたが)ということは少し救われた思いです。

そしてこうした警察の怠慢や不祥事を国会で野党議員が取り上げ、この事件の反省から、ストーカー規制法ができたのは有名です。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

白い声〈上〉〈下〉 (新潮文庫) 伊集院静

2002年に単行本、2005年に文庫化された恋愛長編小説です。

ただ先に言っておくと恋愛と言うにはあまりにも身勝手で節操のない色情ダメ男と、幼いときから規律正しいクリスチャンとして育てられた若い女性との一方的な恋愛ですので、あまり気分が良い恋愛物ではありません。

小説の舞台となるのは、金沢の街と、スペイン北部のバルセロナからサンティアゴ巡礼の道などで、スペイン大好きな人には恋愛部分はすっ飛ばし、紀行小説としても楽しめるかもしれません。

主人公は、父親の仕事の関係で中学生の頃までスペインで過ごした後、訳あって叔母が住む金沢で高校生活を送っている女性。

もうひとりの主人公は、能登半島で極貧生活を送ったあと、20歳でベストセラー小説を書いて一躍作家になったものの、様々な鬱積にまみれ、その後20年間次作が書けず、ジゴロというか女のヒモの生活を続けている男性。

暴力と血にまみれ、女にだらしなく、口だけは巧いこういうワル男はモテるのだ!と言ってしまえばそうなのかもしれませんが、その男のことを知る人は皆「あの男には近づかない方が良い」と言っても、「あの人はそんな人ではありません」と繰り返し、なすがままにされ、それで満足を得る聖女のような主人公もちょっとあり得そうもない感じです。

著者らしい小説と言えばそうなのかも知れませんが、個人的には花村萬月氏の小説と、白川道氏の小説と、宮本輝氏の小説を足して3で割ったような、なにか中途半端な感じがしました。

軟弱でモテない男性にとっては夢のような物語でしょうが、恋愛部分はただただ男の願望だけが詰め込まれていてつまらないものでした。

なお、この小説は2011年にも一度読んで感想も書いていました。10年前とは言え、後になって気がつくとは、歳のせいにしたくないけど、毎度のことながらことながらトホホです。

★☆☆

著者別読書感想(伊集院静)

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