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海の見える理髪店 (集英社文庫) 荻原浩

2016年に単行本、2019年に文庫化された短篇集で、2016年の直木三十五賞を受賞した作品です。1997年に「オロロ畑でつかまえて」でデビューしてから22年目での受賞となりました。

私はそのデビュー作含め過去に23作品を読んでいますが、もっと早く受賞していても全然おかしくはない活躍ぶりです。

この短篇集は、それぞれ独自の「海の見える理髪店」、「いつか来た道」、「遠くから来た手紙」、「空は今日もスカイ」、「時のない時計」、「成人式」の6篇が収録されています。

共通するテーマはハッキリとは書かれてはいませんが「家族」とか「血縁」というところでしょうか。

中でも本のタイトルにもなっている「海の見える理髪店」は短篇ながら2世代の濃い人生が語られ、読者もあれこれと想像を膨らませる展開で、最後に感動と涙を誘う展開へ向かいます。これは素晴らしい。

著者の長編小説にも素晴らしいものがたくさんありますが、それと比べると短篇にはコミカルな妖怪モノなどちょっと息抜き?って感じで印象深いものはあまりなかったのですが、これは大人の深い小説で確かに一級品です。

「海の見える理髪店」が男同士の関係なら、「いつか来た道」は同じテーマでの女同士の関係を描いています。この二つはペアと言っても良いかも知れません。

★★★

著者別読書感想(荻原浩)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ダナエ (文春文庫) 藤原伊織

ちょっと古い2007年単行本、2009年文庫化された短・中篇小説集で、「ダナエ」、「まぼろしの虹」、「水母(くらげ)」の3篇の構成です。

本のタイトルになっている「ダナエ」とは私は知らなかったのですが、オランダの画家レンブラントがギリシャ神話をテーマにして1636年に描いた大きな裸婦(ダナエ)の絵画のことです。(レンブラント以外にも多くの著名画家がダナエをテーマに絵画を描いています)

そしてこの絵画は1985年にリトアニア人の青年に硫酸を浴びせかけられ、さらに刃物で切りつけられたという過去があります。

それになぞった形で、そこそこ著名になった主人公の画家が描いた妻の父親で大企業のオーナーの肖像画を展示中、硫酸をかけてナイフで傷つけられるという事件が起きます。

神話では美しいダナエは権力者の父親に軟禁されていましたが、全知全能の神ゼウスの子を産むことになり、その子がダナエの父親を殺すというストーリーに沿った形で、絵のモデルとなった主人公の義理の父親の元へ殺人予告メールが届きます。

絵画の世界に詳しくないとさっぱり理解できないところですが、小説の中でそうした説明がちゃんとされますので安心して読めます。ギリシャ神話って深いですからね。

惜しむらくは中篇なので、事件やギリシャ神話の解説などでバタバタとしているうちにアッという間にクライマックスに入ってしまい、「起ーーーー承ーー転/結」って感じ。尻切れトンボじゃないですが、終わり方が慌ただしくてちょっと残念な感じです。

あとの2篇は印象の薄い短篇で、ちょっと迫力に欠けてしまっています。

★★☆

著者別読書感想(藤原伊織)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

それまでの明日 (早川書房) 原りょう

そして夜は甦る」(1988年)、「私が殺した少女」(1989年)、「さらば長き眠り」(1995年)、「愚か者死すべし」(2004年)に続く5作目の長編小説です。過去の作品はいずれも文庫化されてまもなく買って読んでいます。

もちろんこれも前作に続きレイモンド・チャンドラーに影響を受けて創造した「私立探偵沢崎シリーズ」で、2018年に単行本、2020年に文庫化されました。

東野圭吾氏や貫井徳郎氏のように1年に何冊もの長編小説を書く作家さんも多い中、30年で5作品だけです。

しかもこの「それまでの明日」が出たのはその前の「愚か者死すべし」が出てから14年が経っていました。


これでちゃんとプロの作家として生活ができているのかは大きなお世話ですが心配になります。

それはそうと、この作品も過去の作品同様たいへん面白く読めました。ちょっと冗長な感じはしましたが。

シリアスな場面とコミカルな思いがうまくマッチしていて、読むのに疲れません。ただ登場人物の半分が過去のシリーズに出てきた人なので、それらを読んでいないとどういう関係なのかわかりにくいかも知れません。

ストーリーは、赤坂にある老舗の料亭への融資に関連してそこの女将を調べて欲しいと、ある消費者金融会社の支店長に頼まれたものの、調べるとその女将はすでに亡くなっていてそれ以上調査するのかどうかを依頼人に聞くため勤務場所へ行くと、そこで二人組の武装強盗に遭ってしまいます。

そこから話しはややこしくなってくるのですが、暴力団の抗争と裏金の隠し資金、強盗事件で一緒に人質になった謎の若いベンチャー企業経営者の関わり、依頼人の支店長の失踪、腐れ縁の新宿警察署警部補との丁々発止、探偵事務所のビル取り壊しによる移転交渉と連絡先不明の隣部屋の写真家などなど。

マーローと同様、一人称で語られていくストーリーなので、登場人物が多くても会って話しを聞いているのは常に誰か一人だけですので、混乱することがなく次々とやっかいごとが降りかかってきても順序よくこなれていきます。

そして最後には、次作へつながりそうな終わり方をしていますので、また十数年後になるのかも知れませんが、楽しみに待つことにします。

いや~マーローは消え、スペンサーもいなくなり、スカダーは時の流れと共にすっかり老人になってしまい、頼みはこの探偵沢崎だけです。

そう言えば、文庫あとがきに、著者はギャビン・ライアル著の「ハリイ・マクシム少佐シリーズ」が気に入っているということが書かれていたので、今後はそちらも読んでみようと思っています。その文庫帯の推薦文を著者が書いていたりしています。ライアルの作品では有名な「深夜プラス1」だけは25年前に読んでいますから懐かしいです。

★★★

著者別読書感想(原尞)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1) アイラ・レヴィン

著者はアメリカの作家で、今回の「死の接吻(原題:A Kiss Before Dying、1953年)の他にも有名な「ローズマリーの赤ちゃん(1967年)」や「ブラジルから来た少年(1976年)」など大ヒット作を残した方で、いずれも原作を元に映画化されています。

著者の作品を読むのは今回が初めてですが、昨年、映画の「ブラジルから来た少年」を見ました。そちらもとても面白かったです。

この作品は今から68年も前に書かれたサスペンススリラー小説ですが、まったく古くささは感じられません。

貧しい出ながら容姿に恵まれた男性が、大企業オーナーで富豪の三女に狙いを付けてうまく関係を持ちますが、予想外の妊娠が発覚します。

まだお互い大学生同士ということもあり、このままデキちゃった結婚をすると、風紀に厳しい父親から絶縁されかねないと判断し、殺人に手を染め、さらにその上の姉の次女に乗り換え、さらにはその上の長女へと、、、

うーこれ以上は書けません。

とにかく、発刊の時期や時代背景はなにも知らずに読んでいたので、現代の小説か?ぐらいに思っていました。それほど新鮮で素晴らしい内容です。

その中で、その主人公とも言える犯人の男性が、大学に入る前に陸軍に所属していた時、太平洋戦争で日本軍兵士を目の前で殺した回想シーンが出てきますので、「あ、これは70年も前の物語なんだ」と感じた次第です。

著者にとってはこの作品がデビューの長編小説で、いきなり著名なエドガー賞処女長編賞を受賞します。

その後の活躍は上記に書いたとおりで作品数は少ないものの、出せば世界的なベストセラーという才能のある方で、今後他の作品も読みたいと思います。

★★★


【関連リンク】
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 10月前半の読書 後巷説百物語、すべては死にゆく、シルエット、ニュータウンは黄昏れて、60歳からの生き方再設計

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