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黄金の島 (講談社文庫) 真保裕一

真保裕一氏は、1961年生まれということですから、今年51歳と小説家としては脂がのっている世代でしょう。氏のデビュー作「連鎖」は文庫になってから読みましたが、なかなかの傑作で、それ以降映画でも大ヒットした「ホワイトアウト」や「アマルフィ」、テレビドラマになった「奇跡の人」など次々とヒット作を出しています。この黄金の島は、2001年に初出で、文庫版は2004年からです。

内容は、ヤクザになりきれない半端者の男が、しばらく姿を消すためにタイへ逃げ、そこでも謎の追っ手が現れたことによって、隣国ベトナムへ不法入国することになります。

最近のベトナムの話題と言えば、解放政策が取り入れられ経済絶好調で、日本からも必死に新幹線の売り込みがされていますが、20年前のベトナムはまだアジアの中でも特に貧しい閉鎖的な共産国でした。

特権階級にいるわずかな高官やその家族、親戚以外は、虐げられ抑圧され、虐め倒されています。そのあたりの暗い話しは、以前読んだ梁石日(ヤン・ソギル)氏の「闇の子供たち」を彷彿させます。

若者が生きていくために、また黄金の国といわれる先進国日本に行けば明るい未来があると信じて、命をかけて密航しようとする気持ちをこれでもかというぐらいに書き込まれています。

そのような日本へ出稼ぎにいき、大金持ちになって帰ってくることを夢見ているベトナムの若者と、命を狙われたり、ベトナムの警官に刃向かったために酷い仕打ちを受ける主人公が、様々な難関をくぐり抜けて、台風の大時化に乗じて漁船で日本を目指すといったストーリーです。

しかし主人公は決してヒーローでも格好良くもなく、そしてハッピーエンドでもなく、読んでいて気持ちがズンズンと重たく沈んでいくことうけおいの小説です。

著者別読書感想(真保裕一)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

靖国への帰還 (講談社文庫) 内田康夫

太平洋戦争当時と現代とがタイムスリップで結ばれるというのは、荻原浩著「僕たちの戦争」や、今井雅之著「THE WINDS OF GOD」、北村薫著「リセット」、アメリカ映画で「ファイナル・カウントダウン」などがあり、コミックやアニメでは私も全巻読破した「ジパング」などが有名です。

この「靖国への帰還」も、昭和19年の太平洋戦争末期に、海軍の戦闘機乗りだった主人公が、B-29の迎撃中に負傷して厚木飛行場へ戻ってくるとき、雲の中でタイムスリップが起き、米軍と自衛隊が共同使用している現代の厚木基地へ着陸してしまいます。

内田康夫氏は浅見光彦シリーズなど現代のミステリーものが多い作家さんですが、このようなエンタテーメント系のファンタジーロマン小説は珍しいのではないでしょうか。

夜間戦闘機月光のパイロットだった主人公が突然現代に現れたことで、政治やマスコミの報道合戦などに巻き込まれることになります。そして「死ねば靖国で会おう」と誓い、多くの仲間達が奉られている靖国神社の立場が戦中と戦後で大きく変わってしまったことに主人公は大いに失望してしまいます。

靖国問題とはA級戦犯合祀による近隣諸国の反発と、政治と宗教の政教分離の二つの問題です。

靖国神社への思い入れが強い著者の思想も多少は入っているのか、かなりのページがそれに費やされますが、本来ならそのような世界的に見るとローカルで小さな問題よりも、世界初で唯一現存するタイムスリップ経験者の存在という、物理科学、歴史、医学、哲学、宗教、軍事、宇宙工学、精神世界などでの問題や話題のほうが大きく、物理学や宗教観を一変させてしまいかねない世界的な大きな出来事でしょう。

この作品でも触れられていますが、昔の伝説などには「浦島太郎」のようなタイムスリップを匂わせるようなものが世界各地にありますが、科学的に証明ができない人の存在というのがどうなるのか、おそらく宇宙からやってきたエイリアンよりも大問題になりそうです。

最後のクライマックスでは、現代に有効な飛行操縦免許を持っているはずのない主人公が、なぜか公式な行事で、自分の愛機だったとはいえ、現代の空を自分で操縦桿を握って飛べるかなど、絶対にあり得そうもなく不可解なことが多く、ちょっとそれらの展開が突飛すぎて残念でした。ま、このような小説に、そのようなリアリティを求めるのもなんなのですが。

著者別読書感想(内田康夫)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ブラックペアン1988 (講談社文庫) 海堂尊

昭和から平成と変わる直前の1988年(昭和63年)の東城大学医学部付属病院を舞台とする小説で、初出は2007年9月です。つまり同氏の「チーム・バチスタの栄光(2006年)」「ジェネラル・ルージュの凱旋(2007年4月)」よりも後に書かれていますが、物語の舞台はそれらの事件が起きる約20年前の設定です。

ブラックペアンのペアンとはなにか?といえば、本の表紙を飾る手術のときに、器官や組織などを挟み、牽引したり圧迫したり、止血したりするのに用いるハサミに似た形状のもので、これが今回の小説ではキーとなります。普通はステンレスで作られるペアンが、なぜ黒いのか?最後にその謎が判明します。

内容は、新しく研修でやってきた外科医師の卵達の視点で、大学病院の中で起きる様々な人間模様や確執に翻弄されていくところが描かれていきます。そして講師として中央の権威ある大学から派遣されてきた有能な外科医師が新しく開発した器具を使った手術を広めていきますがそこで事故が起きます。

ちなみにこの派遣されてきた講師が、20年後の「チーム・バチスタの栄光」などでは病院長に、医学部に在籍中で実地研修にやって来たメンバーが「チーム・バチスタの栄光」や「ジェネラル・ルージュの凱旋」では主人公になっていたりします。

小説としても、また医学界が抱える様々な問題や製薬会社の利権などについても、わかりやすく書かれていますので、雑学を仕入れるのにも有効です。しかし大学病院の職場というエリートばかりが集う世界というのも大変ですね。霞ヶ関の官庁の中も似たようなものかも知れません。

最初はなんの小説かもまったく予備知識なしで読みましたが、ストーリーもよく練られ、たいへん面白い小説に仕上がっています。こちらもぜひ映画化をしてもらいたいものです。

著者別読書感想(海堂尊)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

臨場 (光文社文庫) 横山秀夫

臨場とは「警察組織において事件現場に臨み、初動捜査に当たること」を意味するそうですが、ここでの主役は検視官です。2009年と2010年にはこれを原作として内野聖陽主演でテレビドラマ化がされていました。

「検視」と一般的に馴染みのある「鑑識」との違いですが、変死事件が起きると、必ずそれに立ち会って鑑識を含む検視という作業をおこなうことになっているそうです。その検視ができるのは、刑事部の理事官又は管理官クラスということで、現場に出向く警察官としては上級のベテランがその任にあたることになります。そのような場合、検視官がいないと現場検証はおこなえないと言うことです。一方「鑑識」は空き巣事件でも出動しますし、比較的格下の役割です。

作者の横山秀夫氏は私と同年齢の推理作家ですが、警察ものが割とお得意かなという感じです。私も同氏の作品は短編は別にして「影踏み」「震度0」「第三の時効」「動機」「半落ち」「深追い」「ルパンの消息」「出口のない海」を読んでいて、同世代の感覚が割と共感できるのか贔屓にしています。

この「臨場」では8つの事件がそれぞれ短編に分かれていて、大酒飲みで上司の言いなりにはならないヤクザっぽいけれど、仕事は非常に優秀な検視官がそれぞれに登場し、誰もが見落としがちな些細なことから独特の見立てをおこない、事件の真実を解明していきます。

著者別読書感想(横山秀夫)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

累犯障害者 山本譲司

著者の山本譲司氏は、演歌歌手山本譲二氏とは違い、民主党の衆議院議員でありながら、2001年に秘書給与流用の詐欺容疑で実刑判決を受けた方です。

秘書給与として支給されたお金を事務所の運営費などに充てていたわけで、もちろん犯罪行為にあたりますが、自分か親が金持ちでない若手議員は、そうしてやりくりでもしないと、まともな議員活動ができないという実態もあるのでしょう。

当時は辻元清美衆議院議員など何人かの議員に同様な公費流用が指摘されていたに関わらず、現職の議員で実刑を受けたのはこの山本氏だけで(辻元氏は執行猶予付き)、一種みせしめ的な逮捕・起訴・実刑判決だったようにも思えます。

その山本氏、刑務所の中で思い知らされる現実に驚きます。それは政治活動において表層しか知らなかった障がい者と社会福祉の関係です。

障がい者と言っても知的障がい者もいれば身体障がい者も、視聴覚障がい者もいます。そしてさらにその障害度も軽度から重度と様々です。しかし一般的にマスコミに取り上げられるのは重度の身体障がい者です。それは明らかに映像として絵になりやすいからでしょう。

そして誰がみてもすぐにわかる障がい者の場合は、比較的福祉の手が差し伸べられやすいのに対し、軽度の知的障がい者や聴覚障害などの場合、大人になると福祉とつながっていないケースが非常に多いことに気がつきます。

そのような障がい者が、ホンの軽微な犯罪(空きっ腹に耐えかねて500円のお弁当を盗んだとか)で、刑務所に服役しているようなことが起きていました。中には警察や検察の取り調べで、関係ない別の殺人事件の容疑者として裁判にかけられているケースもあります。

それは、身体は立派な大人でも、知能レベルが小学生レベルで、警官や検察官の言うことにすべて同意をしてしまうことをいいことに、犯罪者に仕立て上げられてしまうようなことが起きていたり、耳が聞こえず筆談や手話での取り調べや裁判がおこなわれ、結果的に意と違う内容になってしまうといったりするケースです。

そしてそうした障がい者が出所した後も、まともに福祉の手は届かず、安住の地は刑務所の中だけと、結局はまた犯罪を犯し刑務所へ戻らざるを得ないという負の連鎖がありました。

山本氏は出所後はそうした障がい者を含め、福祉活動に力を入れ、まだ道半ばですが、国の委員会などにも出席してその改革を進めているところです。この文庫版では、その改善の進捗が後書きで書かれています。

文庫解説ではジャーナリストの江川紹子氏が「秘書給与事件によって私たちは前途有為の政治家を失ったが、代わりに優れたジャーナリストと果敢な福祉活動家を得たのだ」と書いています。

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