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悟浄出立 (新潮文庫) 万城目学
2014年単行本、2016年に文庫化された長編小説で、西遊記に関連し、脇役の沙悟浄を語り手として、同じく脇役の八戒について考察する今で言うところのスピンアウト的な話しの「悟浄出立」を含む、「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤憤」「父司馬遷」の中国の古典を題材とした5編の短編小説です。
「悟浄出立」は元々は中島敦が西遊記に関連して書いた「光と風と夢・わが西遊記」に収録された「悟浄出世」「悟浄歎異」の短編を最初は高校生の頃の試験問題で読んで、それの続編的な小説を書きたかったと最初に触れられています。
「趙雲西航」は三国志でお馴染みの若武者趙雲が主人公で、諸葛亮孔明や張飛などが出てきて三国志ファンなら十分に楽しめます。三国志では脇役に追いやられてしまった趙雲ですが、上記の沙悟浄と同様、その心理描写が上手く作られています。
「虞姫寂静」は「項羽と劉邦の戦い」で、最後は四面楚歌で滅ぼされてしまう秦末期時代の楚の武将項羽の愛人虞美人が主役です。日本でも虞美人草で有名ですね。
「法家孤憤」は秦の始皇帝暗殺未遂事件を起こした荊軻と名前が同じ発音の官吏が主人公、「父司馬遷」は壮大な史記を書いた司馬遷の娘を主人公としています。
あの有名な司馬遷が、味方の名将をかばったために、汚名を着せられて男性器を切除する刑に処せられていたとは知りませんでした。
そうした、歴史書や歴史物語では不遇の扱いの脇役達を生き生きと描いたのがこの作品で、歴史についてあまり知らなくても十分に楽しめますが、ある程度は予備知識として持っているともっと楽しめそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(万城目学)
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言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書) 橘玲
宝島30の元編集長だった著者は、名前を見ると女性ジャーナリストだと思っていましたが男性です。小説もいくつか書いておられますが、著書を読むのはこれが初めてです。
タイトルだけ見ると「大げさな~」と思っていましたが、中身はもっと過激、こんなこと書いて良いの?というようなことがズバズバ出てきます。炎上商法も真っ青な感じで、恥ずかしながら衝撃を受けてしまいました。
2016年に発刊された新書ですが、世の中のこと、仕組み、裏の裏をもっと知りたい!って言う人にお勧めです。よく知られていることや都市伝説的な話しもありますが、一応出てきたネタはすべて出典が書かれています。
その書かれていることの論拠として書いてある各種の論文や研究データなどの出典ですが、時代によってそうしたものも変化していくことはよくあることなので、どこまで信じるか、確率をどのように判断するかなど、当然のことですが読後は個人の判断に委ねられています。
それにしても、世の中の人権団体など各種団体から激しい抗議活動を展開されてもおかしくない内容です。
しかし実際には人は表面的に言わないだけで、なんとなくそう思っている、感じていることも多くあるのではないでしょうか。
いくつかピックアップしておくと、
・親が犯罪者の場合、子も犯罪者となる確率は高い
・黒人やヒスパニック系の知能は白人やアジア系人種に劣る
・レイプは男性からすると生存本能に合理的理由がある
・美人とブスでは3000万円以上の収入格差がある
・細面で長い顔よりも丸顔または四角い顔のほうが収入が高い
・父親の10%が知らずに他人の子を扶養している
・子孫を残すのに合理的な方法は一夫一妻ではなく一夫多妻
・女子校より共学校のほうが女学生の望まない妊娠が多い
英国での調査ですが「父親の10%が実は知らずに他人の子を扶養している」なんてのは、喜多嶋舞とできちゃった婚をしたのち離婚し、子供の養育を引き受けたところ、実は実子ではなかったことが判明した大沢樹生氏の悲しい顔が思い浮かびます。
細面よりも丸顔または角張った四角い顔の方が野心が大きく収入も多いというのは、カルロス・ゴーン氏の顔写真が出てくるたびに納得してしまいます。
アメリカを初めとする白人が支配している多民族国家の中で、黒人とヒスパニック系は一緒ぐたにして語られることが多いのに対し、アジア系はまた違った語られ方をするのもなんとなく違和感が解けた感じです。
芸能ネタはともかく、こうした「言ってはいけない」不都合な事実や解釈、統計データは、エビデンスの信用がどこまであるかどうかでなく、誰しも身近に感じてはいるのでしょう。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
死者の奢り・飼育 (新潮文庫) 大江健三郎
1994年にノーベル文学賞を受賞された著者の作品を読むのはこれが初めてです。なぜだか不明ですが、同じノーベル文学賞を受賞した川端康成氏や日系人のカズオ・イシグロ氏、ずっと毎年候補に挙がりながら受賞を果たせずにいる村上春樹氏と比べると、著者の作品があまりメディアには取り上げられず、話題にされないのは、何者かに抑圧されているせいか?って気もします。
それが著者が国家主義や天皇制に対して一貫して反対する立場をとっているということや、文化勲章を辞退したりと思想的に長いものには巻かれろが基本のメディアにはちょっと扱いづらく、敬遠されているせいなのかも知れません。もったいない限りです。
それはともかく、この作品をきっかけとしてこの著者の作品に興味が起きたので、今後ちょっと意識して過去の作品を探して読んでみようかなと思います。
この作品は60年前の1958年刊のそれまでに発表した短編を集めた文庫本で、「死者の奢り」「他人の足」「飼育」「人間の羊」「不意の唖」「戦いの今日」の6編が収められています。現在84歳になる著者がまだ23歳の時の作品です。
そしてこの中の短編小説「飼育」で、石原慎太郎と同じく当時最年少の23歳で、芥川賞を受賞しています。
医学部の死体処理室でアルバイトをする学生と、なにも言わぬ大きな容器の中に浮き沈みする死体達との会話が不気味な「死者の奢り」、脊椎カリエスで手足が自由に動かせない少年達の療養と、そこから回復して出て行く少年を描く「他人の足」、戦時中に地方の田舎の寒村に墜落した飛行機から脱出し生き残ったアメリカの黒人兵と村の子供達との交流と悲惨な結末をむかえる「飼育」など。
その中では、まず「飼育」は賞を取ったというだけでなくとても印象に残る作品ですが、その他の「死者の奢り」や「不意の唖」もなかなか20代でここまで書けるとは思えない、文学的才能を感じる良い作品だと思います。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
貘の檻(ばくのおり) (新潮文庫) 道尾秀介
2014年に単行本、2016年に文庫化された長編ミステリー小説です。文庫で570ページ、謎多きミステリーだけに、些細なことも見逃さないよう熟読したので、とても長く感じました。
しかしそのおかげもあり、小説の半ば頃に「きっとこいつが諸悪の根源だろう?」と気がつき、結果的にそれが正しいことがわかりました。
だいたい最後になって悪意の本性を現すミステリー小説の悪人は、その最後の時まで主人公にとっては優しく頼りがいや思いやりがあり、しかも社会的に信用がおける立派な人というのが通例です。
もっとも最初から怪しそうな人や悪そうな人が「やっぱり犯人でした」では面白みに欠け、善良な人が「実は」と転換するのが小説やドラマの定番とならざるを得ません。
さて、主人公は長野の山奥の村で子供時代を過ごし、山で猟師をしていた父親が殺人事件の容疑者とされたまま死亡してしまい、逃げるように母親の実家へと移り住みます。
さらに悪夢を断ち切るように上京し、大学へ入り、就職、結婚をし、子供もできたところで、毎日不安な夢に悩まされ続け、それが家庭崩壊、離婚へとつながっていきます。
別れた妻に引き取られていた小学生の息子と月1度の面会した後、悪夢から逃げるために電車に飛び込み死のうとホームに立った時、父親が容疑者とされた殺人事件に関係し、32年間生死が不明だった女性が反対側のホームで電車に轢かれて亡くなります。
ここから最後まで、話しは子供時代を過ごし、父親が亡くなった山奥の集落が舞台となります。
当時の父親に起きたことや、集落の歴史などがわかってきて、主人公が子供の頃に目撃し、それを封印してきた事柄が目覚めていきます。
最初はホラー小説なのかな?と思ってましたが、ジャンルとしては完全なミステリ-で、名探偵こそ出てきませんが、やたらとその村に歴史に詳しいカメラマンと、封印されてきた過去の出来事などを解いていきます。
様々な設定には、やや無理さや強引なところも感じますが、おしなべて小説らしいと言うか、映像化してもそれなりの面白いミステリーができそうな作品と言っておきましょう。
★★☆
◇著者別読書感想(道尾秀介)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
君の膵臓をたべたい (双葉文庫) 住野よる
2015年に単行本、2017年に文庫化された青春お涙ちょうだいロマンス小説です。
2017年に映画化され、監督に月川翔、浜辺美波、北村匠海、小栗旬などが出演し、タイトルの奇抜さもあり、そこそこのヒットを飛ばした作品です。
また日本アカデミー賞の作品賞や新人俳優賞なども受賞していました。私もこの映画は、小説を読む前にテレビ放映の録画版ですが見ています。
◇1282 2018年9~10月に見た映画「君の膵臓をたべたい(2017年)」
著者はずっと女性だとばかり思っていましたが、男性なんですね。知りませんでした。この作品が実質的なデビュー作ということです。
主人公は読書だけが趣味という友人が誰もいない暗い内向的な男子高校生で、あるとき病院の待合室で共病文庫と書かれた本を拾い、中を見ると、膵臓(すいぞう)の病気で余命が少ないので日記代わりにこれを書いていることがわかります。
そしてその文庫を書いていたのが、なんと同じ学校のクラスメートの(可愛い?)女子高生という、非現実的であり得そうもない出会いから二人の恋愛感情が持ち上がってきます。
タイトルは、昔の非科学的な病気治療法に「悪いところの部位を食べると治る」ということから、ホルモン料理で膵臓を食べて自分の膵臓を治したいという冗談から来ているもので、決して人食小説ではありません。
映画の時にも書きましたが、基本的に余命少ない女子高生とその同級生の淡い恋というパターンは、片山恭一著の大ヒット小説とそれを原作とした映画「世界の中心で、愛をさけぶ」(小説2001年、映画2004年)の二番煎じです。
そうした青春悲恋ものには一定の少なくないファンがいるでしょうから、今後も世代が一巡する10数年周期で同様のパターンがヒット作として出てくるのでしょう。
小説よりも先に見た映画では、大人となって教師になった主人公が、12年前の懐かしい過去を振り返るようなスタイルでしたが、原作では主人公が高校生のまま終わり、その後のエピローグは出てきません。
★★☆
【関連リンク】
2月後半の読書 手のひらの音符、あの女、いつまでも若いと思うなよ、残穢、悲しみのイレーヌ
2月前半の読書 まほろ駅前番外地、謎解き 関ヶ原合戦、ダブル・フォールト、嗤う名医、はなとゆめ
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世界にひとつのプレイブック(原題:Silver Linings Playbook) 2012年米(日本公開は2013年)
監督 デヴィッド・O・ラッセル 出演者 ブラッドレイ・クーパー、ジェニファー・ローレンス
躁鬱病で妻が職場の同僚と浮気している現場を目撃した男性主人公と、離婚後に性依存症になって誰とでもすぐに寝るヒロインとが出会い、その後喧嘩したり、復活したりと忙しく、ほとんど笑えるところがないコメディ映画です。
ストーリーも書いちゃったので、もうあとはなにも書くことがないのですが、こうしたドタバタコメディがアメリカ人(白人)はお好きですね~としか言いようがありません。
日本人というか東洋人が見ても、こうしたドタバタのアメリカ映画は、なかなか感情移入も難しく、国民性というか人種の違いは大きいな~と感じるだけでしょう。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
学校 1993年 松竹・日本テレビ放送網・住友商事
監督 山田洋次 出演者 西田敏行、竹下景子、田中邦衛、坂上二郎、渥美清(特別出演)
続編として、「学校Ⅱ」(1996年)、「学校Ⅲ」(1998年)、「十五才 学校IV」(2000年)と3本が作られている人気シリーズです。ただ、シリーズと言っても、同じなのは監督だけで、主役やテーマは毎回変わります。
この最初の作品は、教育に熱心な教師と、落ちこぼれや中学校を卒業してなかった大人達がやってくる夜間中学校を舞台にして温かな交流と現実が描かれています。
生徒達がこの夜間中学校へたどり着くまでの背景や、年齢も家庭状況も違う生徒が集まるクラスの絆など、日本で暮らしている多くの人には知られていないことばかりです。
私も夜間高校はよく知っていましたが、夜間中学校というのがあることすら知りませんでした。
もちろん現実は映画のようなわかりやすいことばかりでないのでしょうけど、様々な年代の悩みや事情を抱えた人達が、それでも勉強をして、さらに上を目指していくという姿には感動を覚えずにはいられません。
世知辛く、いつもイライラしながら、仕事に追われ汲々と生きていかざるを得ない社会において、こうした時間の流れがまったく違う世界を感じてみると、もっと肩の力を抜いておおらかな気持ちで良いんだと自分を励ましてくれそうです。
この映画に出演した3年後に亡くなる渥美清が、笑いを誘うちょい役で登場したのにはビックリです。寅さんシリーズの関係で監督に頼まれたのでしょうね。出演当時、60歳をとうに過ぎていたのに、なにか若々しい姿が印象的でした。
続編の「学校II」では障害を持つ生徒が通う高等養護学校を、「学校III」では職業訓練校を舞台としています。今後機会があれば見てみたいです。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
デジャヴ 2006年 米
監督 トニー・スコット 出演者 デンゼル・ワシントン、ポーラ・パットン
一種のSF映画になるのでしょうか、アメリカで多数の死者を出したフェリーの爆発沈没事故が起き、その犯人を調べていくうちに、開発中の過去の映像を見ることができる新しいシステムを使うことになります。
つまりタイムトラベルってことですね。
そりゃそういうことが実際にできれば、迷宮入り事件なんてものはなくなるわけですが、いくらなんでもそれはズルいって気もします。
その事故が起きる前に犯人を追い詰め、凶悪犯罪を防ぎ、本来亡くなるはずだったヒロインとともにめでたしめでたしという脳天気な結末でした。
実はこの映画がロードショー公開されたときに、1988年に映画館で見た映画「デ ジャ ヴュ」のリメーク?と思って内容を確かめたら、全然違っていてガックリきた想い出があります。
と言うのも、監督ダニエル・シュミット、スイス・フランス合作映画だった「デ ジャ ヴュ」(1987)は、興行的にはあまりパッとしなかったものの、この映画を2本立ての名画座で見たときには、なかなか映像やストーリーが繊細で、中世スイスへのタイムスリップというか主人公が見る幻想に感動してしまい、これは過去に観た映画の中でベスト3に入るかもー!と思い、それ以来、もう一度見たくてテレビ放映がないかなとずっとチェックしました。
デ・ジャ・ヴュ(1987年製作の映画) filmarks.com
そんなわけで、同じようなタイトルでも、アメリカに渡ると、どうしても国民に合わせ?、荒っぽく軽薄になるのは仕方がないとしても、ちょっとタイトル倒れかなぁーって思った一品でした。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
柘榴坂の仇討 2014年 「柘榴坂の仇討」製作委員会、松竹
監督 若松節朗 出演者 中井貴一、阿部寛、広末涼子、藤竜也
浅田次郎の短編小説集「五郎治殿御始末」に収録されている短編小説「柘榴坂の仇討」を映画化したものです。この短編小説集は2006年に文庫化されてすぐに買って読みましたが、どの作品もたいへん面白かった記憶があります。
主人公は、明治維新前夜に桜田門外の変で暗殺される彦根藩主で江戸幕府の大老井伊直弼の近習、つまり警護隊長の志村金吾。
その主人公役には同じく浅田次郎の小説「壬生義士伝」の映画版で凄腕の剣士で主役を張った中井貴一。
命を賭けて守るべき主人が暗殺された不始末で、主人公の両親が自害するも志村金吾は切腹は許されず、暗殺に加わって逃げている元水戸藩の5人を探し出し、その首を主人の墓前に並べろと下命されます。
しかし誰からも協力が得られずに、見つけることができないまま数年が経ち、5人中4人がすでに死亡、残る1人を探しているとき、元同僚だった男の協力により、江戸で人力車を引いている最後のひとりを見つけます。
しかし、その時すでに江戸幕府から新しく変わった明治政府から「仇討ち禁止令」が出され、周囲からも、藩も幕府もなくなり、無駄なことをするなと諫められます。
そして桜田門の変の時と同じ、雪の降る中、その人力車に乗り込んだ志村金吾、、、
わずか38ページの短編を2時間の映画によく仕上げたものだと思いますが、主人公以外、妻役の広末涼子、井伊直弼役の中村吉右衛門、元評定所御留役の藤竜也など脇役がしっかりと固めていて、ストーリー自体はイマイチながら、なかなか深みがあってよくできた映画です。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ボヘミアン・ラプソディ(原題:(Bohemian Rhapsody))2018年 英・米
監督 ブライアン・シンガー 出演者 ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン
※アイコンとリンクは音楽版
70年代から80年代に大ヒットを飛ばした英国のロックバンド「Queen」の結成から、途中の挫折、そして復活の1985年に開かれた世界的な大イベントライブエイドで熱狂を得るところまでをメインボーカルのフレディ・マーキュリーを中心に描いた映画です。
監督のブライアン・シンガーは過去に「X-MEN」や「ワルキューレ」などを作った名物監督ですが、この映画制作中にセクハラや児童虐待などの噂が出て映画完成2ヶ月前に降板させられるというハプニングが起きています。
実在した人物(メンバー4人中3名は存命)の役を演じる役者さんの苦労もわかりますが、それよりも映画で使われる楽曲(歌唱)に、当時の本物を使っているとのことで、そうした作り物と実際の音源とのマッチングに苦労が忍ばれます。
出来上がりは、まったく違和感もなく、演じた役者さん達が歌って演奏しているのではと錯覚をします。素晴らしいです。
映画館で見なくてもすぐにテレビでやるからと思っていましたが、知人にあのライブ感あふれる音楽や雰囲気は映画館でないと味わえないと教えられたので、映画館まで足を運んでみました。
確かに、少なくとも小さなテレビ画面や貧弱な音響では味わうことができない大きなスケールで、ビンビンと全身で感じることができたのは良かったと思います。
Queenが活躍していた当時は高校、大学生時代でしたが、特に好きだったわけではないのですが、たまたま高校の文化祭で、クラスでレコード屋さんを回わり、歌手やバンドのポスターを集め回って、それを綺麗にパネルに加工し来場者に販売して、チャリテー募金とする活動をおこないました。
その時にもらったポスターの中で、Queenのフレディ・マーキュリーがど派手な格好(ジュディ・オングが魅せられてを歌うときに着ていたような服)で歌うポスターが格好よくて気に入り、それは販売せず、自分で持ち帰り、部屋にずっと飾っていたことを思い出します。
私が行った映画館では、観客の年齢層は高く、やはりQueenを知っている50代以上の人がほとんどでした。何度も見に行ったという知人からは、Queenを知らなそうな若い人が多いと聞いていたのですが、タイミングが遅いせいか、私が行ったときには、20代以下はほとんどいないという感じでした。
★★☆
【関連リンク】
1301 2019年お正月に見た映画
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第二次世界大戦で同盟国となり、その後は敗戦国となったドイツと日本は、天然資源に乏しく、国民は勤勉で、失業率は低く、国の基幹産業が工業製品の輸出という似た国同士で、様々な面で比べられることがよくあります。
調べていくとわかるのですが、まず国土の面積は両国ともほぼ同じですが、内陸国のドイツ、海洋国の日本に分かれているのが大きな特徴です。
その違いは第二次世界大戦では、ドイツが陸軍に力を入れ、戦車が世界最強の性能を誇っていたのと同様、日本は比較的海軍が力を持ち、世界最強最大の戦艦や潜水艦を持っていた違いが如実に表しています。
人口は日本が15%ほど多いですが、GDPや自動車生産台数、世界輸出金額、防衛費など、国力を示す統計は比較的両国とも似通っています。
一方では、、平均寿命や、住宅面積、労働生産性などには大きな違いがあったりします。
もしいまドイツから日本が学ぶなら、労働生産性をあげる働き方や雇用体系、使用電力削減の方法、肉牛の飼育、住宅環境などでしょうか。
逆に日本がドイツに教えられるのは、長寿健康、交通事故死の削減法、水産業などでしょうか。
今年1月に発表されたトヨタの新車スープラはドイツのBMWの工場で製造されますが、今後もお互いに工業国として効率を高めるため、日本やアジアで販売する高級ドイツ車を日本の工場で生産し、逆に欧州で販売する日本車をドイツの工場で製造というバーターも考えられそうです。
ドイツは終戦後から40年以上に渡り東西に分割され、国防や経済に大きな影響があり、日本のように70年代の高度経済成長を謳歌するということはありませんでしたが、持ち前の勤勉さと陸つながりで周囲にあった広大な市場のおかげで発展を遂げ、今ではEUヨーロッパ連合の中心的な国になっています。
周辺国と戦争をしたのは日本もドイツと同じですが、ドイツの場合、その後は政治的、文化的にうまく収めて周辺国との関係も良くなっているのが日本としてはなんとも羨ましいところです。
様々な比較を表にしてみました。
◆全般 | 日本 | ドイツ |
---|---|---|
人口 | 127,749千人(10位) | 81,915千人(16位) |
高齢化率(65歳以上人口率) | 26.60% | 21.10% |
国土面積 | 377,972km2(62位) | 357,972(63位) |
森林面積 | 24,868千ha(23位) | 11,076千ha(47位) |
EEZ排他的経済水域 | 4,479,388km2(8位) | 57,485km2(114位) |
◆経済 | ||
GDP(国内総生産) | 4兆9386億ドル(3位) | 3兆4666億ドル(4位) |
国民1人あたりGDP | 39,195ドル(25位) | 42,276ドル(19位) |
自動車生産台数 | 9,693,746台(3位) | 5,645,581台(4位) |
世界輸出金額 | 6981億ドル(4位) | 14481億ドル(3位) |
電力消費量 | 1,019TWh(4位) | 531TWh(8位) |
水産物漁獲量・生産量 | 4,343,257トン(7位) | 312,906トン(50位) |
肉牛飼育数 | 3,822千頭(64位) | 12,281千頭(28位) |
◆生活・文化 | ||
平均寿命(総合) | 83.98(3位) | 80.64(34位) |
失業率 | 2.80(157位) | 3.80(142位) |
労働生産性 | 47.5(20位) | 69.8(7位) |
大学進学率 | 63.58%(44位) | 68.33%(33位) |
国際観光客到着数 | 2869万人(12位) | 3745万人(9位) |
交通事故死者数(10万人あたり) | 3.60(36位) | 4.20(33位) |
自殺者数(10万人あたり) | 18.5(170位) | 13.6(146位) |
殺人発生件数(10万人あたり) | 0.28(194位) | 1.18(153位) |
一人当り住宅床面積 | 39.4m2 | 46.1m2 |
一人あたり保険医療支出 | 4519ドル(15位) | 5551ドル(5位) |
◆その他 | ||
防衛費(軍事費) | 454億ドル(8位) | 443億ドル(9位) |
本来なら、日本と国力などを比べようとすると、同じような島国の英国がふさわしいのかも知れませんが、上記の統計データ見る限り、日本とドイツは本当によく似ています。
第二次世界大戦では、日本とドイツ間で様々な技術交換(主にドイツから日本へでしたが)がおこなわれていました。
その往復には、世界最大級の潜水艦のイ号潜水艦が使われていて、吉村昭著「深海の使者」に詳しいです。
そんな中で、佐々木譲氏の小説「ベルリン飛行指令」は、ドイツ空軍に欠けていた長距離航続が可能な零戦の技術を渡すため、実機を敵国の英国などが支配する地域を通ってドイツまで飛ばすという奇想天外な物語でたいへんユニークで楽しめます。
【関連リンク】
1105 遠くて遠い国ブラジル
914 殺人事件の国際比較
777 成人の力 国際比較
570 資産家も貧困者?統計で見る貧困率
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政治的な話題にはこのブログであまり触れないように心掛けていますが、気になって書かずにはいられないのでちょっとだけ。
いま日本は人口が減少しつつある中で、高齢者人口だけが増えていくという難題を抱えていることは中学生で知っていることです。
若い労働力として期待される人口が大きく減少していくことで、身近なことで言えば、国内消費が減り続け、企業収益も国内需要に限ってみると業界全体として減少していくのは当然のことです。
また、住宅では世帯数が頭打ちとなり空き家が増え、過疎化が進み、限界集落や消滅集落が増えていき、人口減少が都会よりも早く進む地方の自治体では税収不足から道路や橋、上下水道などライフラインのインフラを維持していくのが大変になってきています。
2033年の空き家率は27.3%「有効活用進まなければ上昇」野村総研調べ(新建ハウジング)
2018~2033年の空き家数・空き家率は、既存住宅の除却や、住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2013年の820万戸13.5%から、2033年に1955万戸27.3%へと、いずれも上昇する見込み。 |
限界集落マップ2010-2040(BLOGOS)
2015年時点で限界集落は17存在し、2040年にはその10倍の169に増加すると予想される。限界集落予備群も合わせれば2040年にはおよそ400の自治体において社会的共同生活の維持が難しくなる |
そのような中でも一方では、まったく別の問題とは言え、北方領土問題や尖閣諸島、竹島などの領土帰属、領有問題について、国内外で激しい議論や交渉がおこなわれています。
もちろん領土を他国からの侵略から守り、他国に占有されている島は返還交渉をおこない、後世に引き継いでいくのは、現代人の勤めです。それはわかっています。
例え現在ほとんど使われていない島であっても、領土とすることで、将来は付近にあるかもしれない海底油田やレアアースなどの海底資源が採取できたり、漁業など海洋資源を独占的に利用できたりと、少なくないメリットがあります。
ただ、気にかかるのは、いま安倍総理が任期中にと急いで取り込んでいる「北方領土のロシアからの二島先行返還交渉」です。
現在占有している場所や島を他国に渡すということは非常にまれなことで、渡す側にとって大きなメリット(=莫大な経済効果など)がなければ、普通は考えられません。
香港とマカオの返還は元々が99年の租借地でしたから期限が来て返却しただけで、自国の領土を譲ったわけではありません。
つまり今回の北方領土返還についても、莫大な補償金?や経済援助を支払うこと、今後何十年何百年と継続する保障や一部の支配権など条件が付くことことは明らかでしょう。
本当にそれで良いのでしょうか?
北方の小さな2島、せいぜい数十名が様々な国の援助が受けられてえやっと住めるであろう環境に厳しい島に対して、様々な日本にとって不利な条件付きで、しかも大金(税金)を支払ってでも得ることが、日本国民にとって本当に望ましいことか?役立つのか?って考えるわけです。
もちろん領土は返還してもらいたいのは誰しも同じです。
但し、それは「様々な不合理な条件とか、社会保障費を削ったりこれから日本で生きる人が背負う借金となる巨額の税金を投入しなくて済むのなら」というのが多くの日本人の本音ではないでしょうか?
国の支援なしでは人がまともには住めないような北限の小さな島よりも、国内には温暖で、肥沃でもっと広い土地がいくらでも耕作放棄地として捨てられている現在、返還交渉中の2島返還のメリットは島周辺の水産業だけに限定されます。
防衛上必要だ!というと、おそらくロシアが返還に応じるわけがありませんから、そこに軍事拠点や設備を設けるのは不可能です。
もしそうであれば、その2島返還のために、それでなくとも国民ひとりにつき850万円もの借金まみれのくせして、多額の税金を投入するのはどうでしょう。
北方領土返還と言えば「旧島民が先祖代々のお墓にお参りをし、再びそこに住みたい・・」という感情や情緒に訴えるような話しが通例で、限界集落や消滅集落でやむを得ず先祖代々のお墓を墓じまいをし、都市部の医療や介護の設備が整った場所へ引っ越しをする人達が多くいる中で「旧島民のみなさん、先祖代々の故郷に戻れて良かったですね」ということで、本当にめでたしめでたしで良いのでしょうか。
お金(税金)も、政治のエネルギーも、外交手腕も、少なくとも多くの国民にとって恩恵があるとは思えない北方領土以外に向けるべきではないのかと思っています。
もちろん交渉自体をしないというのではなく、粘り強く、少数で交渉を継続するのはやぶさかではありません。
ただ権力を手にした政治家の功名のために、損得を考えず返還交渉を急いで進めるようなことがあってはならないのです。
それに百戦錬磨のプーチン大統領に、甘ちゃんな日本の政治家や官僚が、こうした外交交渉でまともにかなうとも思えず、急げばそれだけ足下を見られ、ロシアのいいように扱われるのは見えています。
少なくとも、今が北方領土返還交渉の絶好の機会とはまったく思えないのですが、政治家は歴史を動かして自分の名を永久に残したいが為に、そのために巨額の税金を使うことをいとわないので、強権者に追随し、また旧島民の弱い者の味方風を装い正義感ぶるマスメディアを含め、世の中がそういう方向へ流れていってしまいそうな昨今を憂うばかりです。
【関連リンク】
1211 過疎と限界集落の行方とコンパクトシティ
1069 世帯数や住宅総数は増えていき、空き家も増える
1053 空き家問題を考える
790 空き家が増えている
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手のひらの音符 (新潮文庫) 藤岡陽子
2009年に「いつまでも白い羽根」でデビューをした著者の、2014年発刊(文庫は2016年刊)の5作目の小説です。
著者の経歴を見るとたいへんユニークで、大学卒業後に新聞社へ入って記者など3年半、その後、タンザニアの大学へ入ったかと思うと、卒業せず帰国して大阪文学学校へ入学。そこで小説を書くが芽が出ず、結婚、出産。
その後看護専門学校へ入学し、看護師資格を取得し、病院に勤務。同時に再び大阪文学学校で学び、書いた小説が認められてデビューと、3人分ぐらいの人生を1人で経験している感じの人です。
この小説の45歳独身女性の主人公は、貧しい家庭環境で育ちながら、同じ団地に住む父親を早くに亡くし、貧しい上に複雑な家庭の兄弟達との深い絆で結ばれた青春時代を過ごします。
その後主人公は、子供の頃から憧れていた服飾デザインの仕事をしていますが、勤務している会社から突然そのファッション部門からの撤退を告げられます。
また同時に、高校生の時にファッションデザインをキチンと勉強するのが将来必ず仕事に生かせるからと進学を強く勧めてくれた元美術講師の恩師が、余命がわずかと同級生から知らされ、生まれ育った京都へと向かいます。
さて、主人公が勤務する会社で居場所はどうなるのか?難病の恩師の病状はどうか?消息不明になっている同じ団地の幼なじみの行方は?など、いくつもの試練と問題を抱えながら、その運命に翻弄されつつも強く生きていく姿に勇気を与えられます。
最近は、イヤミスが多い中、この小説でも半ばぐらいまでは、リストラ、父親の出奔、幼なじみの事故死、学校でのいじめなど暗い話しが多く、読んでいてもずっしりと重く暗い感じを受けますが、終盤になってようやく明るい火が灯ってきて読後感としては悪くないです。
ヒロインが独身の45歳の女性と言うことが珍しいですが、なかなかどうして、会社の中でも重要な仕事を任されている大人で、しかも多少は色気もあってと、このストーリーの主人公として良い年代の設定だと思いました。
タイトルは、最後にちょこっとだけ出てきますが、中学生時代に兄を事故で失った同級生の幼なじみを励ますため、自分で作ったシューズケースに付けた音符の飾りと、その同級生の弟がいつも口ずさんでいたドレミの歌の替え歌にちなんでいるものと思われます。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
あの女 (幻冬舎文庫) 真梨幸子
2012年に「四〇一二号室」として単行本が刊行されましたが、その後2015年に改題されて文庫化されたミステリー小説です。
著者の代表作「殺人鬼フジコの衝動』(2008年)は、50万部を超える大ベストセラーとなりましたが、同時に、湊かなえや沼田まほかるらとともにイヤミス(読んだ後にイヤな後味が残るミステリー)の旗手として烙印を押された感があります。
◇2015年2月前半の読書「殺人鬼フジコの衝動」
この長編小説も、そのイヤミスのエキスはいっぱい詰まっていて、読後感はあまりよくありません。
主人公は二人いて、その二人とも小説を書いている女性作家。二人はライバル関係とも言えますが、一人は住んでいた所沢の高級タワーマンションで謎の事故に遭います。
もうひとりの作家が、その事故に遭った作家の後を継いで、編集者の後押しもあって古い所沢を舞台とした小説を書き始めます。
とにかく、小説では時代がころころと変わるので、通勤電車の中かとか、短時間で区切りながら読んでいると、今読んでいるのはいつの話しだっけ?と混乱してしまいます。
内容も複雑で、古書店に勤める老婆が阿部定が使っていた偽名と同じ名前で、同一人物?と思わせたり、作家が転落したマンションを購入しようとしている謎の人物に対し、不動産会社の担当者がバカ丁寧に心理的瑕疵ありの説明をしたりと、どこでどうつながっていくのかが最後までわかりにくいです。
ま、それが最近のミステリー小説の潮流なのでしょうけどね。
そんなこんなで、実はよくわからなかったというのが実のところで、わかるまで読み込む!というモチベーションは残念ながらないので評価も分かれそうなところです。
★☆☆
◇著者別読書感想(真梨幸子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
いつまでも若いと思うなよ (新潮新書) 橋本治
2015年刊のエッセイ集で、元々は昨年ある記事のせいで事実上の廃刊となってしまった新潮45に2014年頃に連載していたエッセイに書き下ろしを加えたものとなっています。
読んでいるときに、著者橋本治氏の訃報が流れてきてビックリしました。
「桃尻娘」「桃尻語訳 枕草子」作家の橋本治さんが死去70歳(産経新聞2019.1.29)
著者の作品は過去に「巡礼」(2012年文庫刊)と「リア家の人々」(2013年文庫刊)の二つの小説を読んでいます。
◇939 2015年7月前半の読書「巡礼」
著者の作品一覧を眺めていると、デビュー作のエロティックなコメディ「桃尻娘」から、源氏物語や平家物語を題材としたものまで、かなり幅の広い分野で活躍されています。
この本に出てきますが、40代のバブルが弾ける直前に、事務所として借りていたマンションを今に思えばバカ高い金額で購入し、毎月150万円を返済していかねばならないという貧乏への道を選択して歩んでこられました。
また何万人にひとりが罹るという難病「顕微鏡的多発血管炎」や「カリニ肺炎」「心臓病」「脊柱管狭窄症」「慢性腎不全」と次々と病気に罹り、何ヶ月も入院したりと、波瀾万丈な人生を歩んでこられました。
そうした病気を抱えたずっとフリーとしてがむしゃらに働いてきた団塊世代の著者が老いというものについてしみじみ考えたエッセイで、正直、普通のサラリーマンには参考にはなりませんw
小説はともかく、こうしたエッセイは手抜きなのか、同じ事が繰り返されたり、どうでもよい話しを長々とあったりと、著者の息抜き?出版社に頼まれたから手慰みにちょっと書いていた?と読んでいてそう感じます。
今度はちゃんとした長編小説を読んでみます。
★☆☆
◇著者別読書感想(橋本治)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
残穢(ざんえ) (新潮文庫) 小野不由美
私と年齢が近い(著者が2歳若い)ホラー系小説が得意な作家さんですが、同じくホラー系ミステリー小説を得意とする売れっ子作家綾辻行人氏と学生結婚をした方です。
この作品は2012年に単行本、2015年に文庫化されていて、2013年に山本周五郎賞を受賞しています。
また2016年にはこの小説を原作とした映画「残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―」が監督中村義洋、竹内結子、橋本愛などの出演で製作・公開されています。見てませんけど。
私は結構怖がりなので、あまりホラー映画やホラー小説は好んで見たり読まないのですが、過去には鈴木光司氏やディーン・R・クーンツ氏の作品は好んでよく読んでいました。
この作品の主人公は著者自身と思わせる女性作家で、過去に一般公募した怪奇現象の中から、気になる怪情報をそれで困っているフリーライターの女性とともに、原因を探しだそうと調べていくというストーリーです。
ただ最初の目次のページに「高度成長期」「戦後」「戦前」「明治大正期」など過去へ遡っていくことが明示されていて、そこでこの小説のだいたいの成り行きがわかってしまい、怖さは半減します。
つまり、「戦後にこういう悲惨な出来事があった」と出てきても、たぶんそれは本質ではなく、もっと過去に根深いなにかがあったはず?とすぐに読者はわかってしまいます。
ただ日本の社会の風習として残る「喪中」や「穢れ」などの話しは、納得のいく説明があり、よく理解ができます。
人の移動が少なく土着して生活していた古い時代にはそうした「なにかが起きた場所」というのは、忌み嫌われ、しばらく落ち着くまでは喪中期間として他人と接触を避けたり、お祓いを受けたりというしきたりが今でも残っています。
そんなわけで、心配するほどは怖くないので、ひとり住まいで夜が怖くて心配!って人でもたぶん大丈夫なホラーです。私がひとり住まいなら読みはしませんけれど、、、
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3) ピエール・ルメートル
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第2弾の「その女アレックス」(2011年刊、日本での刊行は2014年)で、「このミステリーがすごい!」や「本屋大賞翻訳小説部門」で、ともに1位に輝き、大ブレークしたフランスの推理作家さんの作品です。
この作品は日本での刊行は2015年と第2弾の後になってしまいましたが、シリーズの第1弾(2006年刊)で、著者のデビュー作と言うことです。
私はこの著者の作品を読むのは初めてで、もちろんカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズというのがあるのもまったく知りませんでした。
このカミーユという主人公の警部は身長が子供の頃から伸びず145センチしかないというコンプレックスをもっています。
その原因が画家だった母親の喫煙習慣だったというのにはちょっと?ですけれど、そうしたハンデをものともせず、有能な警察官となっていきます。
そう言えば鬼警部アイアンサイドは刑事部長ながら下半身不随で車椅子が手放せませんし、刑事コロンボのコロンボ警部も、イタリア系ながら、ちょいワルオヤジや、ハンサムなラテン系男子というのにほど遠く、風采の上がらない斜視の小男でした。
そうしたハンデがある刑事が、そうした苦難を乗り越えて予想外?の活躍をするというのが外国の刑事ドラマのトレンドなのかも知れません。
詳細は書きませんが、タイトルにあるイレーヌとはその主人公刑事の最愛の妻の名前ですが、タイトルにあるように、ハッピーエンドには終わらないというのがこうした小説では異例であり衝撃的でした。
第2作目の「その女アレックス」を先に読んでいると、その結末もわかってしまっているかも知れません。
その大ヒットした第2弾「その女アレックス」と、第3弾「傷だらけのカミーユ」も是非読まなくっちゃいけませんね。
★★★
◇著者別読書感想(ピエール・ルメートル)
【関連リンク】
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