リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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サラバ(上)(中)(下)(小学館文庫) 西加奈子
2014年に単行本、2017年に文庫化された長編小説で、2015年に直木賞を受賞した作品です。
主人公の男性が一人称で子供の頃から大人になるまでの複雑な家庭の事情と、自身の交友関係を中心に語っていきます。
父親の仕事の関係でイランで生まれ、一度は母親の実家がある大阪へ帰国するものの、小学生の頃にはやはり父親について家族でエジプトへ引っ越します。
これは著者自身の実体験が元となっているようで、現地の風俗や日本人学校の様子など、リアリティがあり読んでいても引き込まれます。
この子供時代に外国で生活している時代が、80年代後半頃でちょうど日本がバブルの真っ只中、日本人全体が自信にあふれていて生き生きとしているのがよくわかります。
そんな中でも主人公の家族にはちょっと変わった母親と、かなり変わった姉がいて、幼いながら主人公はそれらにできるだけそれには関わらないように苦心しています。
エジプトでは同年齢の現地エジプト人の友人ができ、アラビア語で「さようなら」のことを「マッサラーマ」と発音することから、それと日本語の「サラバ」を重ねて二人の合い言葉にして、いつも「サラバ!」と声を掛け合うことになります。それがこの小説のタイトルとなっています。
この小説の主人公は、身長が高く綺麗な顔立ちをしたモテモテの男性ですが、どこまで女性の著者の願望と体験がリンクしているのか気になるところです。
主人公の母親の母親(主人公の祖母)や姉(叔母)、以前住んでいたアパートの大家さんで背中に菩薩の刺青があり、やがては周囲から教祖様に持ち上げられていく女性など、魅力ある人達が次々と登場してきますが、これもまた著者の親族からなにかしらのモチーフを得ているのでしょうか。
そして大学生活や、アルバイトを続けながら、ライターの仕事も請け負い、そしてやがては家族と友情を描いた小説を書くという主人公と著者が重なっていくところが面白かったです。
★★★
◇著者別読書感想(西加奈子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ペスト(新潮文庫) カミュ
原題は「La Peste」で、1947年に発刊された長編小説です。新型コロナウイルスが流行したことで、この作品が一躍見直されて有名にもなっています。
映画「ベニスに死す」は1911年に南欧でコレラが大流行した時の模様が描かれていましたが、こちらはタイトル通りペストの流行で、1940年代はフランス領だった北アフリカのアルジェリアの港町オランが長期にわたり封鎖され、治療薬もなく絶望的な中、医者達の奮闘の模様がまるで見てきたようにリアルに描かれています。
もちろんこれはフィクションの小説ですから、実在する町オランでそのようなことが起きたという事実はありません。
不条理文学と言われるカミュが、ペストがひとつの町を襲い、大人も子供も、献身的な人も、敬虔な信者も誰もかもペストに罹ると不条理な死を迎えるという、ある意味では、新型コロナウイルスなど、常に脅威の細菌やウイルスが流行してバタバタと亡くなっていく自然節理をシュミレートしているものです。
登場人物が何人も出てきますが、それがなかなか覚えられず、読み進めていくと時々混乱してしまいます。
そこで登場人物一覧を作ってみました。海外小説では巻頭に登場人物一覧があるのが通例ですが、これにはありません。この登場人物一覧を印刷し、しおりの代わりに使うと便利です。
登場人物一覧
ベルナール・リウー | 主人公、医者 |
リウー夫人 | リウーの妻と母、母とリウーは同居、妻は病気で離れた療養所にいる |
ミシェル | リウーの住むマンションの門番、ペストに罹って死亡 |
ジャン・タルー | ホテルに住む謎の人物、ペスト患者対応でリウーに協力、日記を記す |
リシャール | 医師会会長、医師 |
カステル | 老医師、免疫血清を研究 |
オトン | 法廷判事、子供をペストで亡くす |
レイモン・ランベール | 新聞記者、仕事でこの町に来ていたところ封鎖されて出られなくなる |
ジョセフ・グラン | 市の臨時の下級役人 |
ジャーヌ・グラン | ジョセフの妻 |
バヌルー | 神父、ペストに感染するも主義から医者の治療を拒む |
コタール | 犯罪者、自殺未遂をリウーに助けられる小男 |
ゴンザレス | 町から脱出したいランベールに頼まれラウルを紹介する密輸商 |
ラウル | 町から脱出を請け負う男 |
マルセル | 町から脱出の手伝いをしている高校生 |
ルイ | 同上、マルセルの兄弟 |
なお、朱戸アオ作のコミック「リウーを待ちながら」(2018年)は、日本でパンデミックが発生するパニックを描いた医療サスペンスですが、タイトルのリウーはこの作品の主人公をインスパイアしたものということです。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
団塊の秋(祥伝社文庫) 堺屋太一
単行本が2013年に発刊され、2019年に亡くなられた著者の小説としてはおそらく最後の作品です。文庫は2019年に発刊されています。
「団塊の世代」が発刊されたのが1976年、団塊世代が30歳前後になった頃で、社会的に大きな影響を及ぼしてきました。そしてこの本が発刊された2013年頃は団塊世代が完全に定年を迎える65歳ぐらいに差し掛かる頃です。
65歳なら人生で言えばもう「冬」ではないの?ということですが、巻頭に「人生は、玄(くろ)い冬にはじまり、青い春と朱(あか)い夏を経て、白い秋に至る。暗い冬で終わるのではない。」とあります。
しかしこの小説に登場するのは、学生時代の1971年に、学割の海外ツアーで出会った人達が、その後も仕事や思想は様々ですが、度々集まって老年に入っても会食を共にしていきます。
その人達とは、東大出の厚生省官僚、大手都市銀行勤務、弁護士で野党の国会議員、朝日新聞社がモデルと思われる大手新聞社勤務、三洋電機がモデルと思われる大手家電メーカー勤務、高校教師で夫婦とも公務員で定年まで勤務、大手商社勤務を辞めて実家の建設業を継いだ男性と、それぞれ誰もがうらやむ?キャリアを歩んでいきます。
読んでいても、年金が夫婦で50万円とか、退職金が6千万円とか、思いっきりひがんでしまいます。
例えば厚労省官僚として、あるいは大手都市銀行や大手新聞社で定年を迎えた男は、定年後の天下り先には事欠かず、最後まで仕事や収入に恵まれています。
高校教師だった女性は定年まで働き、結婚した相手も公務員で、バブル時に家を買い、高金利のローン返済に汲々としますが、二人して満額の年金をもらうことで余裕の老後生活です。
この登場人物で、一番たいへんだったのは、三洋電機がモデルの大手家電メーカーへ就職した男性が、やがて松下電器?に吸収されて閑職へ出され、その後は配送センターやタクシー運転手へと仕事が変わっていく人と、大手商社を辞めて実家の建設業の跡継ぎとして社長になりますが、バブルが弾けた途端に破産してしまい、財産も家も失ってしまい嫁の実家に転がり込むことになる男性。
しかしいずれの登場人物もそれなりに幸せをつかみ、最後は2028年に集まろうとレターを出して、現状がそれぞれ報告されるところで終わります。
未来予測小説でもありますが、実際のその後の世界は新型コロナで世界中がパンデミックに襲われるとか、ロシアがウクライナに侵略し、制裁措置で世界が真っ二つに分かれてしまい、石油や天然ガス、食料品などが不足するなど思いもよらないことが起きています。
小説に何度か出てくる、日本の戦争犯罪を何度も持ち出されて糾弾されるのも困りますが、これ以上、キナ臭いことが起きないことを願うばかりです。
団塊の世代で華々しくデビューした著者の最後の作品としては、こちらもやや楽観的過ぎ、独善的とは思いますが、同じ時代をおくってきた団塊世代には共感するところが多いでしょう。
★★☆
◇著者別読書感想(堺屋太一)
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9月後半 燃える部屋、朝日新聞がなくなる日、傀儡に非ず、残り全部バケーション
9月前半 メタボラ(上)(下)、そこへ行くな、砂の街路図、ヒトラーの試写室
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バイクやクルマを運転していて、時々「どうしよう?」と判断に迷うときがあります。
それは、「自転車にまたがったまま、横断歩道を渡りたそうにしている場合、停まるべきかどうか」
何度かそういう場面に出くわしますが、歩行者や、自転車を降りている人が横断歩道で渡ろうとしている人がいれば、間違いなく停まって譲ります。またそうしなければ道交法違反です。
例外はないと言いたいですが、横断歩道を渡りたいのか、単にその場所で人待ちで突っ立っているだけなのか?その場で電話をしているだけなのか?など、判断に迷うこともありますが、そういう場合は、横断歩道前で停まれる速度まで落とし、ギリギリまで様子をみることはあります。
山梨県で、歩行者に手で合図されて譲られたので先に通ったドライバーが警察官に止められ違反キップを切られたという話題が少し前に炎上していました。
歩行者妨害「お先にどうぞ」で行ったら違反に!撤回に至るまでの全記録(藤吉修崇弁護士)
私もウォーキング中など歩行者の立場の時、横断歩道の手前で、やってくるクルマが1台だけで、それが通り過ぎれば後続車はないから、先に行っていいよーとクルマのドライバーに手で行けと合図をすることがありますが、それでドライバー側が違反に問われるのは無茶な話です。自分がドライバー側なら違反と言われても納得できません。
少し離れた場所で警戒(いわゆる隠れて取締り)している警官にとっては、その歩行者の行動(譲る仕草など)が見えないから、歩行者妨害だ!という判断をする場合があるのでしょうけど、違反ではないとドライバーが証明するには、その歩行者の証言を得るか、装着してかつちゃんと映っていればドライブレコーダーの映像を見せるしかなく、面倒な事態となります。
歩行者の時でさえ、そういうことが起きるのに加えて、自転車に乗った人が横断歩道に停まっている場合、普通に考えるなら、
・「自転車は軽車両だから歩行者とは違う」
・「車両と車両なら優先道路のこちらに優先権があり停止する必要はない」
しかし、、、
その手の話で迷う人は多そうで、こういう記事がありました。
横断歩道での自転車=歩行者扱い!?結局、いったいドライバーはどうすりゃいいのか!(ベストカーweb)
「横断歩道の自転車にはどう対処したらいいのか?」ということをよく聞かれる。なかには「歩行者と同じで自転車に優先権がある」などと、拡大解釈したがる警察のお先棒を担ごうとする報道もあります。 |
要約すれば、
優先道を走るクルマが、信号のない横断歩道にさしかかったとき、
・自転車に乗った人が横断しようとしていても優先道を走っているクルマに停止する義務はない
・ただし、自転車横断帯※を渡ろうとする自転車があれば自転車が優先でクルマは停止義務がある
・自転車を降りて横断歩道を渡ろうとしている人がいれば、クルマは停止義務がある
※自転車横断帯:歩行者用の横断歩道に付随してある自転車マークの横断帯
例えば、「横断歩行者等の 『等』には自転車も含まれる」や「横断歩道で待っている限りは自転車も(乗っている場合でも)歩行者と同様の扱いである」と書かれている場合もあります。
これは、「自転車」に、「自転車横断帯を走る自転車」という条件がつきますが、誤解や思い違いから誤った解釈がよく見られます。
当然、警察官でもよく理解していない人もいるでしょうから、思い込みや拡大解釈で取締りをおこなう場合もありそうです。
さらに例外的にややこしいのは、
「13歳未満の子供、及び70歳以上の高齢者」が乗る自転車は、例外的にすべての歩道を乗ったまま走ることが許されていて(改正道交法第63条の4第1項第2号)、つまり「歩行者と同等」とみなされるので、自転車に乗ったままでも横断歩道では歩行者と同じく優先されるということです。
横断しようとしている自転車に乗った高齢者っぽい人がいた場合、「あの人は70歳未満か?以上か?」なんてとっさに判断できっこないのですが、ルールはそういうことです。わからない時には停まるしかないでしょう。
未だに、横断歩道で歩行者の横断のために停まってくれるクルマは、私の実感では5割に達していませんが、今後は取締りも厳しくなって、シートベルトの着用義務化などと同じく、取締りを厳しくすればやがてはそれに馴染んでくるのでしょう。
文化先進国になるためにも、厳しい取締りがおこなわれなくても自然とそうしたマナーやルールが当たり前になるといいのですけどね。
【関連リンク】
1605 年齢層別交通事故数と運転免許取得者数
1081 高齢ドライバに対する偏見と規制
658 自転車のマナー違反が特にひどい
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燃える部屋(上)(下)(講談社文庫) マイクル・コナリー
「刑事 "ハリー・ボッシュ" シリーズ」の17作目となる作品で、前作に続き、定年延長で古い未解決事件を再調査する部門で刑事を続けています。
このハリー・ボッシュを主人公とするシリーズは、今から30年前の1992年のデビュー作「ナイトホークス」から2017年の「汚名」まで20作品が出版(翻訳)されています。
ベトナム帰りで若々しかった主人公ハリー・ボッシュも老練の域に達していて、相棒には若手の刑事を教育する係として、刑事になって間もない女性新人刑事がつけられます。
日本でも20年前に起きて迷宮入りしていた殺人事件を、別の犯罪でDNA検査をした結果、その殺人事件の加害者だと判明して逮捕したということが昨年ありました。
20年前はまだ科学捜査が十分できなかったことでも、最新の技術で犯人を割り出すことが可能になってきました。
今回は10年前に銃撃され命は助かったものの体内に銃弾が残ったままで取り出せず、その銃弾がどの銃から発射されたものか調べられなかったのが、被害者が死亡したことで、その銃弾を初めて分析にかけることができ、未解決事件担当へ回ってきます。
また新たに相棒となった女性新人刑事が、子供の頃に預けられていた未認可保育所での放火事故で、多くの仲間を亡くしています。その女性が刑事になったのも、その事件を密かに調べて犯人を突き止めたいと思っていることが判明します。
やっかいな過去の事件を二つを抱えて、ボッシュ刑事は定年前とは思えない活発な行動力で、活躍するという出来過ぎストーリーです。
読む方も、二つの事件(実は3つの事件)の関係者が次々と出てきますので、なにがなにやら、誰が誰だか、複雑な関係で混乱してきますが、巻頭の登場人物一覧を首っ引きでなんとか理解ができました。
日本の小説では、こうした登場人物一覧がないのが多いので苦労するときもありますが、外国人の名前は日本人にはとっつきにくいのと、同一人物でも本名とニックネーム、呼称(少佐とか)が混り、よりわかりにくいから一覧が必要なのでしょう。
★★☆
◇著者別読書感想(マイクル・コナリー)
◇ハリー・ボッシュシリーズはまだ未完 2020/10/3(土)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
朝日新聞がなくなる日 “反権力ごっこ"とフェイクニュース(ワニブックス) 新田哲史、宇佐美典也
2017年発刊の単行本で、こうした時事的な内容は、さすがに5年前の話となるとちょっと古くさく感じます。
読売新聞社出身で現在は池田信夫氏を信奉している新田氏と、元経産相官僚だった宇佐美氏の二人だけの対談という型式で話は進んでいきます。
内容的には、慰安婦問題の誤報記事と、蓮舫議員の二重国籍問題について、これでもかってぐらいに何十ページも使ってしつこく、ねちっこくほじくり返すばかりで、本のタイトルほど深掘りしたものではありません。
逆に言えば、他に問題は見つからないのかも知れません。
特に、二人の朝日新聞に対する見方が違っていて、新田氏は徹底的に朝日新聞をこきおろしますが、宇佐美氏はずっと冷静沈着で、鋭い分析をして朝日新聞にもっと頑張ってもらいたいという愛情が感じられます。
それに新田氏の「そもそも・・・」が3行で2回とか煩雑に出てきて、この本で「そもそも」が100回ぐらい出てくるのではないでしょうか(ちょっと大げさ)。きっと口癖なのでしょうけど、妙に鼻につきます。
小学生の頃から50年近く(途中数年は他紙に浮気したことがあり)朝日新聞を読んできた私としては、そりゃこれだけ巨大な組織なら、変わった考え方をした記者や、中立的な思想ではない編集者もいっぱいいるだろう?ぐらいに思っています。
それは新聞社以外のマスメディア、NHKでも、報道のTBSでも同じで、巨大メディアはそういうものと思うしかありません。
逆に小さなメディアこそ、それらに輪をかけて誤報や偏向が日常茶飯事で、特にネットメディアにいたっては、ニュースと言えば他のネットから拾ってきたものばかりで、プロとは思えない勘違いや誤字だらけというていたらくな低質なものがほとんどです。
朝日新聞が、時の権力になびいてしまうことこそもっとも危険なことですから、今のまま、反自民、反内閣、反官邸で良いと私を含めたリベラルな高齢者の多くは思っていて、それが存在価値でもあるのでしょう。
★☆☆
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傀儡に非ず(徳間時代小説文庫) 上田秀人
本業は歯科医という、私と同年代で、江戸や戦国時代の小説をメインにされてる著者の作品を読むのは今回が初めてです。
本著は2016年に単行本、2019年に文庫化された戦国時代の荒木村重を主人公とした時代小説です。
通常この時代ならば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、稀に千利休や黒田官兵衛、石田三成、毛利元就、前田利家、真田幸村あたりがメインとなりますが、荒木村重が主役というのは珍しく、偶然手に取ってみてすぐに読みたくなりました。
ドラマや映画に登場する荒木村重と言えば、平身低頭で織田家臣団に加わり(信長から刀に突き刺した餅を差し出され、そのまま手を使わず口を大きく開けて食べたという逸話は有名)、その後何度も主君だった織田信長を裏切り、果ては織田勢に包囲されると家族や家臣を置き去りにして信長と対立していた中国地方の毛利家の元へ逃げ去り、侍らしくないばかりか茶人となり、さらには僧侶となり、秀吉が天下統一した後になってから、中央(当時は大坂)に許しを得て流れてくるという描かれ方をするのがほとんどです。
この小説ではタイトルにもあるように、傀儡(くぐつ)、つまり時代の寵児信長の「操り人形」ではないぞという、ひとつ芯の通った知的な武者として描かれています。なので、下克上を成し遂げたやり手の武将ながら、最後は卑怯者というイメージとは異なります。
単なる一家臣だった主人公が、信長に抵抗しようとする主人を裏切り城を乗っ取り、信長の元で活躍して信頼を得て、元々の領土を安堵され、メキメキと下克上を実現していき、信長も何度か裏切るそぶりを見せられても許すというほどの役立つ武将となります。
そしてその役立つ男ということで、信長の目の上のたんこぶだった最後の将軍で、仮にも武将の総元締めで権威のある将軍足利義昭をおびき出し、自分の責任で殺せという命令には逡巡し、タイトルにある操り人形ではないという主人公なりの信念で、籠城していた城から逃げ出すという選択を選ぶことになります。
なかなか面白い設定で、たいへん気に入りました。
この著者の作品は、他にも戦国時代を扱った作品が多数あるので、また読んでみたいと思います。
★★☆
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残り全部バケーション(集英社文庫) 伊坂幸太郎
2012年に単行本、2015年に文庫化された連作短篇集です。収録されている作品タイトルは「残り全部バケーション」「タキオン作戦」、「検問」、「小さな兵隊」、「飛べても8分」と5章からなっています。
当たり屋や強請りなど、あくどい仕事をコンビでやっている二人が最初登場しますが、そのうちの若いほうのひとりが突然仕事を辞めたいと言いだします。
コンビは解消に向かいますが、その足を洗う条件としてもうひとりから命じられた、「知らない人と友達になる」という条件をクリアするために別の物語へ進んでいきます。
タイトルは、そうした悪徳業からきっぱり足を洗って仕事を辞めたことで、偶然に知り合った離婚間近の家族との会話の中で「仕事を昨日辞めたので、あと残りは全部バケーションだ」と言ったことから来ています。
その足を洗って辞めていった相棒をもうひとりが結果的にハメてしまうことになり、そのせいで組織の上部に処分?されてしまうことになり、そのことを最後まで後悔し、組織幹部に対して相棒を処分した仕返しを計画していきます。
さすがにミステリーやトリックの名手の著者だけあって凝った最後になっています。暇つぶしに読むのには最適で軽快な小説です。
★★☆
◇著者別読書感想(伊坂幸太郎)
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メタボラ(上)(下)(朝日文庫) 桐野夏生
2005年から2006年にかけて朝日新聞に連載され、2007年に単行本、2010年に文庫化された沖縄が舞台の長編小説です。
主人公は、記憶喪失で何が起きたのかわからないものの、「ココニイテハイケナイ」という謎の声が浮かび、警察には頼らず、道で偶然出会った家出中の少年とともに自分探しの放浪の生活を始めます。
しかし現実的には、なにか大きなショックで記憶喪失になり、自分の名前もわからず、お金や持ち物がなにもなければ、怖くなって警察へ駆け込むというのが最低限の知恵ですが、なぜかそうしないことがリアリティのない小説です。
様々な職を転々としながら、ある日記憶がよみがえってきますが、主人公がここ沖縄へやってきた理由が衝撃的で、そうせざるを得なかった理由が明らかとなってきます。
上品に言えば、格差社会で下流に落ち、資本家に虐げられ絶望する若者と言えなくもありませんが、この小説の中に出てくる、さらに下流にいた外国人労働者達の国では、すでに日本よりも給与水準が高くなり、労働者の立場はやがて逆転することになりそうです。
つまり格差社会で下流なのは若者だけではなく、これからは経済縮小を続ける国内においては日本人全体ということが明らかです。
そしてもうひとつ、本書では舞台となる沖縄と、本土との様々な格差や差別、移住の問題なども露わにしています。そうしたなかなか表には現れない(知られていない)ことに触れられたことは良かったと思えます。しかし長かった、、、
★★☆
◇著者別読書感想(桐野夏生)
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そこへ行くな(集英社文庫) 井上荒野
2011年に単行本、2014年に文庫化された短篇集で、2011年の中央公論文芸賞を受賞しています。収録されているのは「遊園地」「ガラスの学校」「ベルモンドハイツ401」「サークル」「団地」「野球場」「病院」の7篇です。
著者の作品は過去に直木賞受賞作の「切羽へ」を読んでいます。
◇2022年5月後半の読書と感想、書評(切羽へ)
「切羽へ」でも感じましたが、著者は非常に感受性が高いのか、人の心理描写が細やかに描かれています。それが高齢にかかってきたオッサン読者にとっては面倒臭いというか、いらつくというか、どうにも納得感が得られません。
それが純文学だとか文芸だとか言われればその通りかもしれませんが、個人的には長い間接してきたビジネスの現場で培った、テキパキとそしてハッキリした物言いや白と黒が明瞭な世界に慣れてきたので、こうした玉虫色の世界観は読みにくいです。
その中でも「遊園地」は、長く連れ添い子供も授かっている内縁の夫婦の話で、実はその夫には別に正式に結婚した妻も子もあり、双方の妻には隠したままで両方の家を行き来していたというトンデモなお話しで、強く印象にのこりました。
いくらなんでも月の半分以上を出張で家を空けているのはおかしいと気づくでしょ。事実は小説より奇なりで、世の中にはそうした無関心で猜疑心がない人もいるのでしょうかね。
騙して二つの家庭、妻子を長年に渡ってトラブルなく養い続けている男性を、ただただ凄い!と思うしかありませんでした。
★☆☆
◇著者別読書感想(井上荒野)
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砂の街路図(小学館文庫) 佐々木譲
2015年に単行本、2018年に文庫版が発刊された北海道を舞台にした長編小説です。
小樽などいくつかの都市をモチーフとした架空の郡府という市内にある運河が四方に流れる明治時代に栄えた運河町という場所だけで話は進みます
主人公は東京に住む独身の高校国語教師の男性で、両親がこの郡府にある大学を卒業していて、父親が20年前に誰にも告げずこの郡府の運河町で事故で溺死となって発見されています。
父親がなぜ誰にも告げずに郡府へ来たのか、そこであまり強くない酒を大量に飲んで運河に転落する事故が起きたのか、など死に至る謎を調べるために運河町へやってきて、まるで探偵のように父親が死んだ理由を確かめていきます。
ま、小説ですから当たり前ですが、行く先々でそのヒントになることを知っている関係者に都合良く出会い、死の真相は20年前に突然起きたわけではなく、父親が学生だった40年以上前に起きた事件が元だったことがわかってきます。
そうした探偵もどきの事件と事故の謎解きで終始しますが、私も20年以上前に訪問したことがある小樽の町を思い浮かべる運河やガラス工房、古い歴史あるビルなどが次々と登場し、懐かしさが募りました。
そう言えば、以前読んでとても面白かった「地層捜査」(2012年)も、東京都新宿区の荒木町の一角だけで事件捜査が進む内容と似ている感じがします。
◇2019年7月前半の読書と感想、書評(地層捜査)
◇小説の舞台を歩く(佐々木譲著編その2)
本著にも地層捜査にも最初に舞台の地図が描かれていますが、著者と地図は切っても切れない関係になっているようです。
★★☆
◇著者別読書感想(佐々木譲)
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ヒトラーの試写室(角川文庫) 松岡圭祐
本著は以前読んだ義和団事件を描いた「黄砂の籠城」から続く歴史時代小説の第5弾で、2017年に文庫書き下ろし小説です。
主人公は、まだミニチュアなどを使った特殊撮影がキワモノだった戦前に、後に特殊撮影のレジェンドとなる円谷英二に師事し特殊撮影技術を学ぶ青年です。
そして第二次世界大戦中に、日独合作映画「新しき土」(1936年)や「ハワイ・マレー沖海戦」(1942年)で使われた特殊撮影を見たドイツの宣伝省大臣ゲッベルスからの要請で、敵国の英国の不幸を描く「タイタニック」の沈没シーンを円谷の代理として指導監修するためドイツへ渡ることになります。
事実と想像を交えたこうした歴史小説は、実名で当時の有名人がいっぱい出てきますのでまるで実際に起きたことのように面白く読めます。例えば、主人公と年齢が近く、デビューまもなく一気に大人気俳優となった原節子との関係など、ワクワクします。
戦争中で日本とドイツの往復もままならない時代、ドイツに渡って映画先進国で果たして日本の特殊撮影技術が通用するのか?またドイツも連合国から激しい空襲を受け、やがてはソ連が首都ベルリンに肉薄している状態で、映画製作はできるのか?
また特殊撮影の技術を使って図らずも連合国が戦争犯罪を犯している証拠映像をねつ造する仕事に加担してしまったこと、それをバラそうとしてゲシュタポに捕まったり、東京に残してきた主人公の妻子や両親はドイツ領事館の計らいで空襲が激しい東京から長崎にある宿舎へ疎開していたことと原爆が投下されたという事実、、、
リアルな出来事とフィクションが織り混ざった見事な小説でした。
★★★
◇著者別読書感想(松岡圭祐)
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8月前半の読書 ラプラスの魔女、幸福な王子(ワイルド童話全集)、忘れられた巨人、献灯使
7月後半の読書 よもつひらさか、中庭の出来事、わらの女、P・O・Sキャメルマート京洛病院店の四季
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R帝国(中公文庫) 中村文則
讀賣新聞に連載され2017年に単行本、2020年に文庫化された長編小説です。
近未来の日本のような架空の島国「R帝国」が隣国から突然侵略攻撃を受けますが、それは実はR帝国の政府が密かに仕組んだ謀略だった?といったノリのSF的政治小説です。
主人公は、野党議員の秘書ですが、どうして秘書ごときが、与党政府の重鎮に呼ばれて頼み事をされるのかやや無理な設定もいっぱいありますが、要は国家権力を一部の人間が握るとなんでもできちゃうと言う警告をやんわりとしているのでしょう。
地下に潜って綿々と続く反政府活動組織や、一握りの上級国民と、その他大勢の貧しい国民を支配するため、他国に蹂躙される地域を見せることで戦争を肯定的にとらえさせようとする政府との駆け引きなど、よく考えられています。
そういう意味では2月に読んだ山田宗樹著の「百年法」(2012年)も、独裁者が国家権力を握った闇が主に描かれるポリティカルSFミステリーで、なんとなく似た感じを受けました。
現在の日本はと言えば、隣国の共産党一党支配体制を厳しく批判しておきながら、ほぼ同様に圧倒的な一党支配体制が続く自国のことはすっかり忘れ、それをなんの疑問も持たずに受け入れているマスメディアや国民へ恐ろしさを感じます。
強い一党独裁体制になれば、本来は国民の僕たる役人は党の支配下に置かれ、政府や大臣に忖度するのが当たり前となり、マスメディアは太平洋戦争時の報道規制や検閲を忘れ、政府発表をそのまま垂れ流し、政府や党の有力者に近い人物や、選挙の時に支援してくれるならば反社会勢力であろうとなかろうと関係なく、様々な点で特別に優遇されます。
そういった思想や信条などはこの小説では露わにしていませんので、誰が読んでも政治スペクタルを楽しめます。ただ最後はあまりハッピーな終わり方ではないので、消化不良のままで終わってしまいますが。
◇著者別読書感想(中村文則)
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レインツリーの国(角川文庫) 有川浩
映画にもなって大ブレークした「阪急電車」(2008年)からもう14年が経つのですね。そろそろ直木賞の受賞なども近づいていそうな作家さんです。
本著は、著者の人気シリーズ「図書館戦争」のエピソードとして使われた内容を元に書き下ろした作品で,
Boy Meets Girlの恋愛小説です。
2015年には、三宅喜重監督、玉森裕太、西内まりや主演で映画が公開されています。
中学生の頃に読んで気になっていた小説を大人になってから偶然見つけ、それについてネットで調べていると感想が書かれている個人サイト「レインツリーの国」があり、そこで嬉しくなって自分の感想を書き込んだことから個人サイトの運営者とメールでのやりとりが始まります。
何度かメールでやりとりした後、一度実際に会って話しがしたいと持ちかけ了解してもらいます。
実際に会ってみて最初はちょっと変わった女性?ぐらいにしか思わなかったら、実は耳がほとんど聞こえない障害を持っている女性ということが判明しますが、ますますその彼女にのめり込んでいくことになります。
ま、理想的な恋愛ということなのでしょうけど、普通の男女ではなく、障害者と健常者の考え方の違いや、障害の程度で同じ障害者同士でも様々あることなど、よく取材などをして盛り込まれています。
レインツリーとはアメリカ産のネムノキのことで、日立のCMで出てくるあの大きな樹のことです。日本では障害者支援や福祉事業の名称でよく使われています。
◇著者別読書感想(有川浩)
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冷蔵庫を抱きしめて(新潮文庫) 荻原浩
2015年に単行本、2017年に文庫化された短篇小説集で、「ヒット・アンド・アウェイ」「冷蔵庫を抱きしめて」「アナザーフェイス」「顔も見たくないのに」「マスク」「カメレオンの地色」「それは言わない約束でしょう」「エンドロールは最後まで」の8篇が収録されています。
著者の作品は、文庫になってから見つけると進んで買って読んでいますが、好きなのは「明日の記憶」や「僕たちの戦争」などの長編小説で、今回の著作のようなテーマがバラバラの短編小説はイマイチ好きではありません。
とは言っても、先日読んだ直木賞受賞作「海の見える理髪店」は上手い!というのと、イマイチ~というのが混ざっていて、当たりに会えばラッキー、それ以外は軽く流せばいいかぁーと読んでみました。
こうした短編小説で、特に女性が主人公のものは、同様に見つけたらすぐに買う作家さんの一人奥田英朗さんには残念ながら及びません。比べられたくはないでしょうけど、どうしても同世代の人気現代エンタメ作家さんとして比べてしまいます。
中身ですが、あまり印象に深く残ったものはなく、DVや摂食障害、顔の醜形恐怖症、失語症など様々な社会問題化しているそれぞれの事象をテーマにしたもので、したがってあまり爽やかでもなければ、コミカル風に書かれていても腹を抱えて笑えるモノでもありません。そういうのばかり集められても、、、という気持ちがあります。
★☆☆
◇著者別読書感想(荻原浩)
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追撃の森(文春文庫) ジェフリー・ディーヴァー
読むのは3作目の著者の作品ですが、外れがない上手い書き手さんという印象です。この作品は、2008年に初出、翻訳版は2012年に発刊されています。
文庫で560ページを超える長編サスペンス小説で、原題は「The Bodies Left Behind」、直訳すれば「残された死体」という意味です。
アメリカの広大な森林公園近くの湖畔にある福祉職員と弁護士の夫婦の別荘に二人組の殺し屋が現れます。福祉職員の夫が携帯電話で警察に電話しようとしますがすぐに叩き落とされ、すぐに切れた通報を不審に思った警察は近くに住む女性の保安官補をその別荘に向かわせます。
その保安官補が主人公になりますが、殺された夫婦の友人で別荘に招待されていたという女性とともに、目撃者を殺そうと追いかけてくる二人の殺し屋から森林の中へ逃げ込みます。
武器や無線、携帯電話などはなく、ショットガンや拳銃、森の中で迷わないようにGPSや地図を持った殺し屋の執拗な追跡をかわしていくジェットコースターサスペンスというのが、単純に頭の中でわかりやすくイメージ化しやすくなっています。
この手の小説は、ドラマや映画など映像化がしやすいような作風になることが多く、わずか1日に起きることが延々と数百ページにわたって繰り広げられます。
水戸黄門じゃないけど、女性主人公が無事に生き延びるだろうということは簡単に想像できますが、別荘で起きた殺人事件はそう単純でなく、様々なトリックが仕掛けられていてそちらのほうへと話題は移っていきます。
森林での殺し屋との対決と、別荘での夫婦殺人事件、この二つの別々の小説を読んだようなお得な気持ちになりました。
★★★
◇著者別読書感想(ジェフリー・ディーヴァー)
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