忍者ブログ
リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~ HomePage https://restrer.sakura.ne.jp/
Calendar
<< 2025/10 >>
SMTWTFS
1 23
5678 910
12131415 1617
19202122 2324
26272829 3031
Recent Entry
Recent Comment
Category
11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21  


1692
読書をして個人的な趣味趣向でそれぞれランクづけをしていますが、その中から毎年年間ベスト(大賞)を選んでいます。

内容によって「新書/ビジネス/ノンフィクション」「海外翻訳小説」「日本国内小説」の3部門に分けて独善的に評価をしています。

そしてその書籍というのは、数多くの賞と違って、私が前年に読んだ本から選びますので、新刊本はほとんどなく、小説に至ってはほぼ文庫しか読まないので、中には古典に分類されるような本もあります。

  ◇   ◇   ◇

2022年の1年間で読んだ本の合計は作品数が99作品、上下巻を2冊とカウントする冊数では107冊となりました。一昨年の2021年と比較すると作品数で+6作品と増加しましたが、冊数では▲5冊と減少しました。

2013年から10年間の冊数と作品数の推移は下記の表の通りです。年間の読書した冊数は98~117冊で、平均すると年間108冊、1ヶ月当たり9冊平均で読んだことになります。

新書
ノンフィク
冊数 海外小説 冊数 日本小説 冊数 作品数計 冊数計 月間平均
冊数
2022年 11 11 15 16 73 80 99 107 8.9
2021年 22 22 13 21 58 69 93 112 9.3
2020年 29 30 14 19 51 56 94 105 8.8
2019年 29 29 8 9 71 77 108 115 9.6
2018年 26 26 9 13 64 71 99 110 9.2
2017年 26 26 16 21 62 70 104 117 9.8
2016年 14 14 12 16 65 79 91 109 9.1
2015年 17 - 12 - 65 - 94 107 8.9
2014年 26 26 17 13 70 62 113 101 8.4
2013年 - - - - - - 86 98 8.2

2020年に仕事から引退しましたが、その前と後で読書した冊数に大きな差はありません。おかしいな?暇な時間が増えたはずなのに、、、

  ◇   ◇   ◇

それでは、まず「新書/ビジネス/ノンフィクション部門」です。

2022年は11作品(冊数)と例年の半分以下という少なさでした。やはりビジネス界から身を引くと、新書やビジネス書への興味は失われていきます。

そして今回のこの部門では残念ながら「たいへん面白かった(役に立った)」という★3つをとった作品がなく、「宇宙を読む」「無人島に生きる十六人」「生きて帰ってきた男」など優秀な作品が多かった当たり年の昨年とは大きく変わってしまいました。

しかし受賞なしというのも寂しいので、今回は「新・日本の階級社会」(橋本健二)、「戦国時代の大誤解」(鈴木眞哉)、「老いた家 衰えぬ街」(野澤千絵)、「異常快楽殺人」(平山夢明)の4候補の中から、、、

戦国時代の大誤解」(鈴木眞哉著)が大賞を受賞しました!

パチパチパチ

パチパチパチ


著者はかつて戦国時代に活躍した和歌山の傭兵集団雑賀衆の子孫の方で、2007年に発刊された新書です。

感想は、「5月前半の読書と感想、書評(戦国時代の大誤解)」に書いています。


  ◇   ◇   ◇

「海外小説」は、15作品で16冊を読みました。ー昨年2021年と比較すると作品数は2作品増えましたが、冊数としては5冊減りました。

その15作品の中から候補は「解錠師」(スティーヴ・ハミルトン)、「ペスト」(カミュ)、「追撃の森」(ジェフリー・ディーヴァー)、「IQ」(ジョー・イデ)の4作品の候補から、、、

今回は甲乙つけがたく2作品、「ペスト」カミュ著と、「追撃の森」ジェフリー・ディーヴァー著に決定しました!

パチパチパチ

パチパチパチ


「ペスト」の感想は、「10月前半の読書と感想、書評(ペスト)

「追撃の森」の感想は、「8月後半の読書と感想、書評(追撃の森

「ペスト」は、古い小説ですが、コロナ禍に読むと、目には見えない未知のウイルスとの壮絶でむなしい戦いが身近に感じられます。

また「追撃の森」は、広大な自然公園の中で、殺し屋と女性保安官とが知力を絞った一昼夜の息詰まる攻防戦を描いていますが、物語にグイグイと引き込まれていき、最後のどんでん返しなど、なかなか楽しめる小説でした。

  ◇   ◇   ◇

「国内小説」は、最も多い73作品、80冊を2022年の1年間に読みました。前年から15作品、11冊増加しています。

その73作品の中から、印象深い「サラバ(上)(中)(下)」(西加奈子)、「ヒトラーの試写室」(松岡圭祐)、「蜜蜂と遠雷(上)(下)」(恩田陸)、「カズサビーチ」(山本一力)、「追想五断章」(米澤穂信)、「ツリーハウス」(角田光代)の6作品が大賞候補となります。

その中から、、、迷いつつ、、、

カズサビーチ」山本一力著に決定しました!

パチパチパチ・・・

パチパチパチ・・・


読書感想はこちらです。
2022年10月後半の読書と感想、書評(カズサビーチ)

タイトルからイメージしていた内容とまったく違う展開で、鎖国が続く幕末時代を背景に、アメリカの捕鯨船を中心に、遭難した日本人漁民を救助し、日本へ送り届けようとするアメリカ船と、前例がない江戸近くへの外国船入港を許すかどうかというストーリーです。

こうした実際に起きた出来事を下敷きにした歴史小説はとてもリアリティがあり、個人的にはとても好きです。

そう言えば、著者の山本一力氏は、ちょうど10年前、「2012年に読んだ本のベスト」で、時代小説の「あかね空」が大賞を受賞しています。


そして僅差の次点には「蜜蜂と遠雷(上)(下)」恩田陸著を選びました。

パチパチパチ・・・

パチパチパチ・・・


読書感想はこちら
2022年4月前半の読書と感想、書評(蜜蜂と遠雷(上)(下))

こちらは直木賞を受賞した作品ですが、私的にはまったく馴染みのなかった国際ピアノコンクールの舞台裏や、人生をかけた参加者達のピリピリした様子など、読んでいて迫力があり、感情移入もしやすく良い小説だと思いました。

その他の「サラバ」や「ツリーハウス」「追想五断章」「ヒトラーの試写室」も、決してなにかが劣っているわけではなく、十分に楽しめる面白い作品でした。あくまで個人的な趣味趣向で選んでいるだけです。

【関連リンク】
1601 リス天管理人が2021年に読んだベスト書籍
1500 リス天管理人が2020年に読んだベスト書籍
1401 2019年に読んだベスト書籍

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック


ハヤカワ・ミステリ  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫


文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用


リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
PR


1690
志賀越みち(光文社文庫) 伊集院静

2010年に単行本が発刊されてずっと文庫化されるのを首を長くして待っていたら、ようやく昨年末(2022年12月)に文庫版が発刊されました。単行本から文庫になるまで12年もかかるのって珍しくないですか?なにか事情でもあったのでしょうかね。

それはともかく、ベタベタな恋愛小説のこの著作は、私も何度もクルマで走ったことがある志賀越みち(=山中越え)が最初と最後に出てくる小説で、志賀と言っても信州の志賀高原ではなく、滋賀県にかつてあって現在は大津市に吸収されている志賀町から、比叡山の中腹を通って京都の白川へ通じている険しい山道のことを指しています。

時代は昭和30年代、主人公は東京の大学生で、大学で知り合った京都祇園の芸者置屋の息子に誘われ京都へやってきます。

そして朝の散歩中に建仁寺で熱心にお参りする女性に一目惚れし、その女性が祇園でも有名な舞子さん(芸者さんの卵)で、、、という禁断の恋が始まって、、、。わかりやすいドラマです。

祇園の掟というか、当時は現在と比べてもより保守的で男尊女卑な世界がまだ残っている中での恋愛物語は読んでいても新鮮な感じがします。

様々な祇園の行事や、見習いからスタートし、舞子、芸者へと上に登っていく色町の世界、踊りや所作の厳しさ、上客との関係など、様々なしきたりや風俗が垣間見られてなにか行った気になれて楽しめます。

今でこそ、舞子や芸者の世界に飛び込むのは、第一に本人の希望があってのことですが、昭和30年代と言うとまだ、悪い言葉で言えば口入れ屋を通して10代初めの娘をお金で売ってしまうというようなことがおこなわれていた時代です。

そうした不幸を背負いながらも一所懸命に日本有数の花街・祇園で生きていこうとする女性と、裕福な家庭の大学生で、長期間学校を休んで親の金で京都や金沢でブラブラ遊んでいる男との恋愛ですから、これはもう女性を泣かす悲恋に終わるだろうと思うのは火を見るまでもなく明らかです。

京都にはあまり縁がないと思っていた著者ですが、よく調べて書いてあり、本当にしばらくそこに住んでいたのだろうか?と思うような祇園の風景描写が素晴らしいです。

★★★

著者別読書感想(伊集院静)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ファーストラヴ(文春文庫) 島本理生

2018年に単行本、2020年に文庫化され、2018年の直木賞を受賞したミステリー小説です。

また2020年にはテレビドラマ、2021年には、堤幸彦監督、北川景子、中村倫也などの出演で映画が製作されています。

内容はまったく知らずに読み始めましたが、タイトルから「中高生の甘ったるい青春恋愛もの?」と思ってましたが大きく外れてしまいました。

女子大生でアナウンサー志望の女性が、入社試験を途中で離脱して画家で美術学校の講師を勤める父親の職場へ行き、そこで父親を刺殺して逃げるという事件が起きます。女性はまもなく逮捕され、犯行を自白します。

主人公は有名になりたいという野心をもった臨床心理士の既婚女性で、その主人公の夫の弟が上記加害者の弁護人となり、二人でどうしてこの事件が起きたのかを調べて行きます。

殺された父親の言いなりだった母親、加害者の幼馴染みの親友、父親の同僚、父親が自宅でおこなっていた絵画教室の参加者、加害者の元恋人など多くの人物から話しを聞きますが、謎はなかなか解けません。

様々なところに伏線は引かれていますが、結局はその根っこは思わぬところにあって意外性に驚かされるというか、これでは謎解きは無理という話です。

こうした小説では、熱血弁護士や弁護士から調査を依頼された探偵が主役で活躍するというストーリーが多いですが、臨床心理士を主役にしたのはうまいやり方でしょう。

ただ現実的には、警察や弁護士、医師ならともかく、臨床心理士に心開いて正直にプライベートな話しをしてくれる人はそうはいないだろうと思いますが。

これが直木賞?と、ちょっと意外な感じもしましたが、主人公の女性や担当弁護士もそれぞれ子供の頃に家庭的な問題を引きずっていて、そうした中で、加害者女性の家庭問題に深く関わっていくという多重的な内容が評価されたのかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(島本理生)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

一八八八切り裂きジャック(角川文庫) 服部まゆみ

1996年に単行本、2002年に文庫化された長編ミステリー小説で、タイトル通り19世紀末1888年に英国ロンドンで起きた6件(5件という説もある)の連続殺人事件「切り裂きジャック(Jack the Ripper)」事件をモチーフにしています。

著者の小説は過去に読んだことがあると思っていましたが、調べると今回が初めてだというのに気がつきました。著者は1948年東京都生まれで2007年に52歳の若さで亡くなられています。

切り裂きジャックがロンドンの貧民が多く住む地域で娼婦ばかりを狙って次々と殺害し、同時に短時間で全身を解剖するかのように内臓を取り出し切り刻むという手口は、そこの住民だけでなく英国中を震撼させました。

結果的に犯人は捕まることはなく、同様の殺害はなぜか収束しましたが、当時から現在まで130年以上様々な憶測や推理がされ続けています。

本著では、その事件に偶然立ち会うことになった二人の日本人留学生(ひとりはロンドン警察、ひとりはロンドン病院勤務)が、この小説では主人公として活躍します。

こうした実際の歴史をベースにしたシチュエーションは、小説では時々ありますが、個人的には背景などがわかりやすく好きです。ただリアルとフィクションが混ざりますが、結果としての歴史は変わらないので結末に大きな衝撃はありません。

最近読んで面白かったのは、松岡圭祐著の「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」「ヒトラーの試写室」などです。

切り裂きジャックが跋扈した当時、日本は明治維新(1868年)後に西洋文明に早く追いつこうと、法律、政治、医療、軍事など様々な分野で欧米に留学生を送っていたことから、小説では国を背負って医学や警察の研修を受ける公費留学生達に主人公を仕立て上げています。

同じく同時期にドイツへ留学していた?若い頃の森鴎外(森林太郎)や北里柴三郎も登場します。

また切り裂きジャック事件とは別に、その事件が起きた地区にはロンドン病院があり、当時その病院の地下には「エレファントマン」という名前で有名になった病気で極度の奇形となったジョゼフ・ケアリー・メリックが見世物小屋から保護され暮らしていたことから、それとの関係性に気がついて事件と関わりがあることを突き止めていくことになります。

その他にも、18世紀後半に蝋で精密に作られた人体解剖モデル、「解体されたヴィーナス」で有名なクレメンテ・スシーニの作品が出てきて一気に怪奇ムードが増幅されます。

殺害された人物や王室、警察関係者、病院関係者などは実名で登場しますので、関連記事や歴史書と比較して読むとその時の緊迫した模様がヒシヒシと伝わってきます。

ただ、この手の小説としては、文庫本で769ページと長く、いろいろ詰め込みすぎって気もします。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

帰郷(集英社文庫) 浅田次郎

2016年単行本、2019年に文庫化された短篇集です。長編小説も素晴らしいけど、短編小説の名手でもあります。現在活躍中の日本人の作家さんでは、著者と奥田英朗の二人が突出している気がします。

収録されているのは「歸鄕」「鉄の沈黙」「夜の遊園地」「不寝番」「金鵄のもとに」「無言歌」の6篇です。

いずれも太平洋戦争時の下級兵士または元兵士を取り上げていて、南方の総員玉砕の激戦地から奇跡的に帰還してきたものの帰る場所がない男や、本来は後方で兵器の修理をする技術者が最前線に送り込まれ、逃れようがない立場に陥る話しなど、「泣かせの浅田」の本領発揮、すべての物語に悲哀がつきまといます。

その中でも唯一ホラーとファンタジーの中間的な「不寝番」は、著者自身が陸上自衛隊で経験したことがあると思われる当番制で夜間の見張りに立つ不寝番で、なぜか旧陸軍の兵士へ不寝番を変わることになってしまう話し。

陸上自衛隊の富士の隊舎は旧陸軍時代からそのまま使われていますが、そこで不寝番をしていた隊員(士長)が時間が来たので次の当番を起こしにいきます。そして起きてきた当番の上等兵(旧陸軍の階級)に不寝番の申し送りをしますが、お互いちょっと違和感を感じてしばらく話しをすることになります。

最後の「無言歌」に至っては、仲の良い二人の兵士が夢で見たことを互いに話し合うストーリーですが、それは実は特殊潜航艇の中で、しかも故障して海底に着底してしまい、まもなく酸素も尽きようかという涙なしでは読めません。

★★★

著者別読書感想(浅田次郎)

【関連リンク】
 12月後半 鬼棲む国、出雲 古事記異聞、A、厭な物語、君たちはどう生きるか
 12月前半 レンブラントをとり返せ、カササギたちの四季、仔羊の巣、異常快楽殺人
 11月後半 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬


Amazon売れ筋ランキング

ドライブレコーダー売れ筋ランキング

レーダー探知機本体売れ筋ランキング 

カーナビゲーション売れ筋ランキング


車用タイヤチェーンの売れ筋ランキング

車体カバーの売れ筋ランキング

バイク工具/メンテナンス売れ筋ランキング

車/バイク用オイル売れ筋ランキング




[PR] Amazon売れ筋ランキング   
ドライブレコーダー 
レーダー探知機
ETC
レーダー探知機本体
カーナビゲーション
車体カバー
車用タイヤチェーン
車・バイク用オイル/フルード
電動工具・エア工具
ミラーレス一眼
空気清浄機
スマートフォン
スマートウォッチ
イヤホン・ヘッドホン 
ノートパソコン
プリンタ
microSDカード
Nintendo Switch
ホーム&キッチン
キッズ&ベビーファッション
メンズスニーカー

レディーススニーカー
ペット用品
健康家電
レトルト・料理
ラーメン
家庭用非常用品・備品
メンズシェーバー
シャンプー・コンディショナー
スポーツウェア
ランニングシューズ
ゴルフクラブ
枕・抱き枕

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX


明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします

今年も年初の一発目は読書感想からです。

1687
鬼棲む国、出雲 古事記異聞(講談社文庫) 高田崇史

著者の作品を読むのは今回が初めてです。著者は私と1年違いの1958年生まれの歴史作家さんですが、元々は大学の薬学部卒の薬剤師さんで、ちょっと変わった経歴です。

薬学部出身と言うことから、薬殺メインのミステリーか?というと、特にそういうものではなく、歴史シリーズものが多く、今回の作品も「古事記異聞シリーズ」の最初の作品で、2018年に単行本、2020年に文庫化された歴史発掘?小説です。

なぜこの本を読んだかというと、近いうちに出雲大社など島根県へ旅行に行きたいと考えていて、その時の観光の参考になるかな?と思ってのことで、内容は知らないままタイトル買いです。

出雲とその歴史に興味を持ったのは、以前読んだ加治将一著「舞い降りた天皇」からで、その時も古事記や日本書紀などに書かれた神話の世界が面白く読めました。

その後に読んだ今邑彩著「よもつひらさか」や桐野夏生著「女神記」にも出雲町にある現世と黄泉との境目「黄泉比良坂」の話が出てきます。

今回の小説では主人公の女子大生が就活に失敗し、仕方なく?大学院へ進むことになり、入れてくれることになった民俗学研究室で「なにを研究するの?」って聞かれてパッと思いついた「出雲」と答えてしまい、様々な謎を調べるために出雲へ向かうという話しです。

専門家の人が読めば穴だらけなのかも知れませんが、歴史素人の観光客(私)にとってはこれぐらいの知識でも十分過ぎます。小説ではすっ飛ばされましたが、「荒神谷遺跡」や「加茂岩倉遺跡」の見どころや、奥出雲のたたら製鉄についてもう少し詳しく知りたかったです。

あ、それは続編の「古事記異聞 オロチの郷、奥出雲」の中で出てくるのかな?まだ読んでないのでわかりませんが。

櫛にまつわる神話の話と、それに紐付いた殺人事件というのが無理矢理ストーリーの中に詰め込まれますが、それはあまりにも突拍子もなく、そういうところがちょっと残念でした。

しかし、ますます出雲への旅が楽しみになって来ました。

★★☆

著者別読書感想(高田崇史)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

A(河出文庫) 中村文則

2014年に発刊、2017年に文庫化された13篇からなる短篇集で、それぞれ「糸杉」「嘔吐」「三つの車両」「セールス・マン」「体操座り」「妖怪の村」「三つのボール」「信者たち」「晩餐は続く」「A」「B」「二年前のこと」のタイトルがつけられています。

内容はと言うと、なかなか難しく、簡単には表せません。私にとっては意味不明という意味も込めてです。

特に人物がまったく登場しない「三つのボール」などは読むのが面倒で、ほとんど読み飛ばしました。

この作家さんの小説は過去に4作品を読んでいますが、いずれも長編でそれなりに楽しめましたが、今回のような短篇集はもう結構という思いです。

著者別読書感想(中村文則)

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

厭な物語(文春文庫) アガサ・クリスティ他

アガサ・クリスティー、パトリシア・ハイスミス、モーリス・ルヴェル、ジョー・R.ランズデール、シャーリ・ジャクスン、ウラジミール・ソローキン、フランク・カフカ、リチャード・クリスチャン・マシスン、ローレンス・ブロック、フラナリー・オコナー、フレドリック・ブラウンの世界の11人の名手たちが書いたイヤミス系、ホラー&ミステリー短篇を集めたアンソロジーです。

知っている作家さんもあれば、今回初めて知る(読む)作家さんもあり、こうした寄せ集め的な作品はあらたな作家さんを知ることにも役だっていいものです。

その中には買える作品は全部買って読んでいるローレンス・ブロック作品が収められているのは嬉しい驚きでした。「おかしなことを聞くね」や「殺し屋ケラー」シリーズなど短篇作品では光るものがありますから。

クリスティは別格として、その他にも有名なカフカや、「太陽がいっぱい」「見知らぬ乗客」など原作が映画化されたミステリーを多く残したハイスミスなど読んでいて飽きません。

アメリカの作家が多いので、善人や小悪人が理由もなく銃でバンバン殺されるシーンや、陵辱、人食いまでまったく狩猟系民族のイヤミスは日本の陰湿なものとは違って桁外れに嫌な気分全開です。

しかし解説にも書かれていましたが、こうしたイヤミスはなにも現代にだけ特別流行したわけではなく、古くから神話や宗教書、童話(グリム童話など)などにも多く出ていてそれが「人間の怖いもの見たさ」の性と言えるのでしょう。

ただ欧米のこうした明るいイヤミスは、国内ではあまりにもリアリティがないので、どこか遠くの世界か宇宙の果てで起きていそうなことぐらいにしか感じられません。その点、日本人作家のイヤミスは、暗く湿っぽくていかにも日本独自なんだなぁというのを実感します。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

君たちはどう生きるか(岩波文庫) 吉野源三郎

2017年(平成29年)に大ヒットした羽賀翔一氏のマンガ「漫画 君たちはどう生きるか」は書店でよく見かけたので知っていましたが、その原作となった本書や著者吉野源三郎氏のことは恥ずかしながらよく知りませんでした。

著者は明治32年(1899年)生まれ、1981年に82歳で亡くなっています。戦前に社会主義系団体に入り治安維持法違反で逮捕されるなど左翼系の編集者でジャーナリスト、評論家、思想家、反戦活動家ですが、戦後民主主義の立役者とも言える人です。

本書以外にも、多くの著作を遺していますが、共通するのは戦前戦中に痛い目に遭った軍部や軍人を嫌う反戦思想が貫かれていることでしょう。

この小説が最初に出たのは1948年のことで、新潮社が少年向きの作品を集めた日本少国民文庫として発刊されました。その後何度か改訂されたり、読みやすいように現代語に変更したりしていくつかの出版社から刊行されています。

太平洋戦争に敗れて人心が荒れていた戦後すぐに、子供の教養教育のひとつとして書かれたもので、わかりやすい内容で、学習、教養の大切さや友情、貧富格差、職業などについて主人公の中学生コペル君と、指導役の叔父さんとのやりとりを中心に書かれています。

時代背景は戦後まもなくということから、現代の風習とは異なっていますが、内容的に古くさくはなく、いつの時代でも重要な事柄ばかりで、現代人が読んでも腑に落ちることばかりです。

そして、戦後小説などに良くあるどん底の貧しさからの成功物語と言ったものではなく、父親は早くに亡くしていますが比較的裕福な家庭のお坊ちゃんを主人公として、学校で同じクラスの貧しい家庭の子供や、さらにもっと裕福な子供、軍政時代から変わらない旧態依然の上級生でいじめっ子達との対峙など、身近な事柄を通じた成長物語です。

大人が読んでどう思うかはそれぞれだと思いますが、自分の子供の頃を思い起こして、比べてみるのも面白いかも知れません。

★★☆

【関連リンク】
 12月前半 レンブラントをとり返せ、カササギたちの四季、仔羊の巣、異常快楽殺人
 11月後半 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男


Amazon売れ筋ランキング

ドライブレコーダー売れ筋ランキング

レーダー探知機本体売れ筋ランキング 

カーナビゲーション売れ筋ランキング


車用タイヤチェーンの売れ筋ランキング

車体カバーの売れ筋ランキング

バイク工具/メンテナンス売れ筋ランキング

車/バイク用オイル売れ筋ランキング




[PR] Amazon売れ筋ランキング   
ドライブレコーダー 
レーダー探知機
ETC
レーダー探知機本体
カーナビゲーション
車体カバー
車用タイヤチェーン
車・バイク用オイル/フルード
電動工具・エア工具
ミラーレス一眼
空気清浄機
スマートフォン
スマートウォッチ
イヤホン・ヘッドホン 
ノートパソコン
プリンタ
microSDカード
Nintendo Switch
ホーム&キッチン
キッズ&ベビーファッション
メンズスニーカー

レディーススニーカー
ペット用品
健康家電
レトルト・料理
ラーメン
家庭用非常用品・備品
メンズシェーバー
シャンプー・コンディショナー
スポーツウェア
ランニングシューズ
ゴルフクラブ
枕・抱き枕

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX



1684
レンブラントをとり返せ(新潮文庫) ジェフリー・アーチャー

原題は「Nothing Ventured」で2019年に出されたこの作品の翻訳版は2020年に発刊されました。この作品は、「クリフトン年代記」の中に登場する架空の主人公のひとりが人気作家で、その作家が書いたベストセラーが本著と言うことになっています。

「Nothing ventured, nothing gained」は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざで有名ですが、その前段だけですから直訳すれば「危険を冒さなければ」とでもなるのでしょうか。もうちょっと意訳すれば「当たってくだけろ!」的な感じかな。

翻訳版では小説の内容を説明するかのようなつまらない説明をグダグダつけた副題を含む正式名は「レンブラントをとり返せ-ロンドン警視庁美術骨董捜査班-」と長ったらしいタイトルがつけられています。早川書房の編集部だと、こういう大御所の作品にこんなベタなタイトルはつけないでしょう。

ともかく、美術館から盗まれたレンブラントの最後の作品と言われている「アムステルダムの織物商組合の見本調査官たち」をロンドン警視庁美術骨董捜査班に入った主人公の若きヒーロー刑事が取り戻すというタイトルそのもののたわいもない話です。

同時に、美術館で知り合った婚約者の父親が、理不尽な取り調べと裁判によって殺人罪で刑が確定し収監されていることを知り、著名な弁護士である主人公の父親が一肌脱ぐというその二本立てストーリーが並行して進みます。

もちろんハッピーエンドで終わりますが、このシリーズはしばらく続くそうで、そのためか、主人公が追いつめた大物悪役は生き延びて次回作へ引き続き主人公を悩ますことになりそうです。

★★☆

著者別読書感想(ジェフリー・アーチャー)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

カササギたちの四季(光文社文庫) 道尾秀介

2011年に単行本、2014年に文庫化された連作短篇小説集です。2010年に「月と蟹」で直木賞を受賞した直後の作品です。

四季を意識した「鵲の橋」「蜩の川」「南の絆」「橘の寺」の4篇のミステリー短篇からなっています。

主人公は郊外にあるリサイクルショップを友人と二人で始めたのは良いけれど、客の押しに弱くて高く買い取り安く売ってしまうと言う儲からない商売をやっています。

タイトルのカササギは鳥のことではなく、その事業を一緒に始めた友人の名前です。その友人はいつも「マーフィーの法則」を愛読していて、ミステリー好き、事件や謎が起きると推理を始めますが、いつもちょっとピント外れで、主人公が裏でリカバリーしていくという流れです。

なにか連続ドラマなど映像化を視野に入れたというか、すぐに安上がりに制作できそうな舞台装置と内容ですからきっとそのうち実現するでしょう。

この短篇での設定には無理がいっぱいありそうですが、リサイクルショップで起きるミステリーというのはうまい設定です。

というのは、昔から東洋西洋問わずミステリーが起きる場所として、古書店や骨董品店などが舞台となることがよくあり、現代で言うならそれはリサイクルショップと言うことになりそうです。

★★☆

著者別読書感想(道尾秀介)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

仔羊の巣(創元推理文庫) 坂木司

たまたま同時期に読んだ道尾秀介著「カササギたちの四季」(2011年)と似たような展開(書かれた時期はこちらのほうがかなり前です)の連作短篇小説で、2003年に単行本、2006年に文庫化されています。

いわゆる「ひきこもり探偵シリーズ」の2作目で、シリーズ1作目の「青空の卵」(2002年)は2011年に読んでいます。

ストーリーはワンパターンで、引きこもりの友人を持つ20代も後半の主人公が、日常起きる謎などを引きこもっている友人に話聞かせ、時には目の前で問題を解決してくれるという流れです。

その謎が無理に作られたようなものではなく、十分にあり得そうな設定なのでストーリーに引き込まれていきます。よくできています。

今回は、主人公が働いている外資系保険会社の同僚や、木工細工の講師をしている老人、いつも利用している地下鉄の駅員など脇役が良い味を出していて、物語に膨らみを持たせています。

ほんわかと優しい気持ちにさせる内容もあり、落ち込んでいるときに読むと良いかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(坂木司)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

異常快楽殺人(角川ホラー文庫) 平山夢明

著者の作品は今回が初めてですが、1961年生まれのホラーや怪談話を得意とする作家さんです。

数多くの小説を書いておられますが、今回読んだのは著者のデビュー作品となる1994年に単行本、1999年に文庫化されたノンフィクションの犯罪録です。

大量殺人犯、エドワード・ゲイン、アルバート・フィッシュ、ヘンリー・リー・ルーカス、アーサー・シャウクロス、アンドレイ・チカチロ、ジョン・ウェイン・ゲーシー、ジェフリー・ダーマーなどの生い立ちや異常な犯行などをこれでもか!と、グロテスクに露わにしています。

簡単に登場人物(メインでなく同類の犯罪者として出てくる加害者も含む)のプロフィールを書いておくと、

エドワード・ゲイン(1906年~1984年)
アメリカ人。2人の殺人及び墓から9体の遺体を盗掘。死体の皮膚や骨を使って日常品を製作。小説(映画)「サイコ」や「悪魔のいけにえ」に影響を与えた。

クノー・ホフマン(1931年~?)
ドイツ人。殺人の他、墓地や遺体安置所から遺体盗難、屍姦、人肉食。

アルバート・フィッシュ(1870年~1936年)
アメリカ人。数多くの子供や成人を殺害。屍姦、死体損壊、人肉食。

フィリップ・ハーマン(1879年~1925年)
ドイツ人。50人以上の殺人、人肉食。自分が経営する精肉店で人肉を食用肉に混ぜて販売。

ヘンリー・リー・ルーカス(1936年~2001年)
アメリカ人。母親含め100件を超える殺人を自供。死体損壊、人肉食。「羊たちの沈黙」のレクター博士のモデル。

アーサー・シャウクロス(1945年~2008年)
アメリカ人。陸軍でベトナム従軍。ベトナムでの残虐行為を公言。帰国後11人の殺人で有罪。死体損壊、人肉食。

アンドレイ・チカチロ(1936年~1994年)
ロシア(旧ソ連)人。52人を殺害。小説「チャイルド44」(2008年)、映画「チャイルド44 森に消えた子供たち」(2015年)のモデル。

ジョン・ウェイン・ゲーシー(1942年~1994年)
アメリカ人。少年を含む33名を殺害。パーティなどでピエロに扮することが多かったことからキラー・クラウン(殺人ピエロ)の異名を持つ。スティーヴン・キング著の小説「IT」(1986年)にモデルの要素が加わっている。

ジェフリー・ダーマー(1960年~1994年)
アメリカ人。17人の青少年を絞殺。屍姦、死体損壊、人肉食

人肉食(カニバリズム)や殺害方法、死体損壊の方法、子供への性的虐待などがリアルに出てきますので、気の弱い人や、怖くて夜寝られなくなる人は無理かも。

映画などで描かれるショッキングなシーンもアレですけど、事実は小説より奇なりというのがよくわかります。

しかし一部は時代がかなり古いとは言え、またアメリカのような広大な土地の中に家があるとか特殊性ゆえかも知れませんが、ひとりで何十人も誘拐し、殺し、捨ててもなかなか捕まらなかったというのも驚きです。

どうしてこういう種類の本を読んだかと言えば、凶悪犯罪を犯す人物にはなにか共通すること(幼児体験とかトラウマなど)があるのだろうかということに興味を覚えたのと、元々犯罪記録や裁判記録に関心があったのと、ビジネス界から引退してからまったく脳への刺激がなくなってしまい、これでは早くボケそうと思い、少し揺さぶってみようという魂胆からです。

んで、刺激されたかって?気持ち悪いだけでした。

★★☆

【関連リンク】
 11月前半の読書 民王、震災列島、神と罌粟、ブラフマンの埋葬
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男
 10月後半 友罪、カズサビーチ、コロナ倒産の真相、解錠師

[PR] Amazn ほしいものランキング

携帯電話・スマートフォン 

スマートウォッチ

空気清浄機

洗濯機・乾燥機

衣類・ふとん乾燥機

テレビ・レコーダー


車&バイク


ヘルメット

洗車用品

自動車整備工具

釣りフィッシング   

ゴルフボール


ランニングシューズ

メンズスニーカー

レディーススニーカー

ベビー&マタニティ

ハンドケア・フットケア

シャンプー・コンディショナー


リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX


1681
民王(文春文庫) 池井戸潤

2010年単行本、2013年に文庫化された日本を舞台にし、政治を扱ったコメディSF小説です。

漢字が読めない総理大臣とか、理想を追い求めて政治家になったものの、政治力学と利権誘導などにまみれていく中で変わっていく政治家などが面白おかしく書かれています。

さらにSF要素として、アメリカの製薬会社で密かに開発された意識を別人と変換できる技術がテロ組織に漏洩して、総理大臣とそのバカ息子の意識が入れ替わるというとんでもない内容です。

著者の小説では、リコール隠しの「空飛ぶタイヤ」や、ゼネコンの談合問題を描いた「鉄の骨」、不良債権まみれの都市銀行が舞台の「果つる底なき」など硬派なものが好きですが、こうしたおちゃらけた小説も書いていたとはちょっと意外な感じがしました。

感想としては、ちょっとふざけ過ぎということで、評価は厳しいものとなります。それは上記にも書いたように「硬派なビジネス系小説」を書く(書いて欲しい)作家というイメージが私の中にはあり、それとの落差が許容できなかったためと思われます。

銀行員出身の著者にしてみれば、政治を扱うことと、それをコメディに仕立てるのはおそらくチャレンジだったと思いますが、空回りしてしまったようです。

★☆☆

著者別読書感想(池井戸潤)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

震災列島(講談社文庫) 石黒耀

以前、デビュー作の霧島火山噴火を描いた「死都日本」(2002年)を読んだことがあるパニック系?小説を得意とする著者の第2作目がこの「震災列島」です。

本職は内科医ということで、北杜夫氏、渡辺淳一氏、北村薫氏、帚木蓬生氏、久坂部羊氏、海堂尊氏、知念実希人氏、夏川草介氏など、才能ある人はなにをやってもできちゃうものです。

本著は2004年に単行本として、2010年に文庫化されています。つまりここが重要なんですが東日本大震災が起きるずっと前に、発生場所こそ違いますが、大地震と大きな津波、そして原発事故を予言していた小説です。

内容は、地面に穴を掘る掘削業者の主人公は、東海地震が起きれば、名古屋市内でも名港に近い自宅周辺では津波が到達するだろうと思っています。

そしてその住宅地には暴力団組織のフロント企業が進出してきて、東海地震にかこつけて地上げをしようと狙っています。

そして住民に対する嫌がらせが始まり、住民組合の会長をやっている主人公の父親と一緒にフロント企業へ苦情を申し立てにいき一悶着を起こします。すると主人公の娘を誘拐し重傷を負わせ、自殺へと追い込む暴挙に出てきます。

それに対して主人公は、暴力ではかなわないので、地震や地盤の知識を生かし、さらに調べて東海地震と東南海地震が必ず連動して起きるだろうことを予測して、暴力団を一網打尽にすることを計画します。

というような流れですが、個人の復讐劇だけではなく、危険な場所に立地している静岡の浜岡原発で地震による冷却水に問題が発生して建屋が水素爆発したり、管理棟の免震構造が不十分なことなど、東日本大地震を完全に予言していたと言っても良い内容です。

さらに本書の中では、政府が東海地震が起きると世界中から日本売りが殺到することを予測して、日銀とあらかじめ計画を立て非常事態が起きた際には国民の資産をすべて一時凍結する施策を練っていきます。

それだけに内容豊富で、文庫としては約2冊分になる617ページの長編です。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

神と罌粟(ハヤカワ文庫) ティム・ベイカー

本著はオーストラリア人(今はフランスに在住)の著者の2作目の長編小説で、2018年に発刊され、日本語翻訳版は2020年に出版されました。

タイトルにある罌粟は「ケシ」と読みますが、医療用のモルヒネの原料として使われる一方、ヘロインなど麻薬を作る原料を指すことが多いです。原題は「CITY WITHOUT STARS」で直訳すると「星のない街」です。

舞台は2000年頃、アメリカとの国境沿いにあるメキシコの架空の街です。全編メキシコが舞台の日本語翻訳小説というのは珍しいです。今まで読んだことはなかったような気がします。

そこでは経済特区の工場が建ち並び、多くの貧しい女性労働者が、中国との激しい価格競争のために低賃金で雇われています。

そしてその街では過去から800名を超える女性が誘拐され殺されるという事件が連続して発生していますが、なぜか警察の捜査はおざなりで犯人逮捕には至っていません。

主人公と言えるのは、労働組合の女性活動家(オルグ)、女性フォトジャーナリスト、他の地区から移動してこの連続女性誘拐殺人事件の捜査にあたる刑事、犯罪組織カルテルの首領、幼い頃に虐待を受けていたカトリック教会の神父の5人です。

それぞれが語り手としてランダムに出てきて、さらに登場人物がざっと30人ぐらいいますので、ついていくのが結構しんどかったです。

さらにメキシコ人の名前や地名が日本人にあまり馴染みがないこともあってなかなか覚えられず、誰が誰だった?と、半分ぐらいまでは「登場人物一覧」と首っ引き状態でした。

警察組織や上司も腐敗しているようで、そのためあまり乗り気ではない相棒と二人だけで謎の解明と犯人逮捕へ突き進む刑事はわかりやすい構図なので、つい感情移入していきます。

その周囲では聖職者の不正と犯罪組織カルテルの結びつき、さらにはアメリカの麻薬捜査機関が出てきて邪魔をしたり、低賃金にあえぐ女性労働者を組織化し、無謀にも工場の中でストライキを画策しようとする活動家など、様々な話題がとっちらかってしまい、これほどいっぱい詰め込む必要があるの?という感じもします。

文庫としては多い510ページの長編で、登場人物や地名の難しさもあり、読むのに結構時間を要しましたが、日本とはあまり縁のないメキシコの国内事情などが少しわかって(20年以上前の架空の話ですが)それなりに楽しめました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ブラフマンの埋葬(講談社文庫) 小川洋子

少し前に読んだ「ミーナの行進」(2006年)の2年前に発刊された作品で2004年に単行本、2007年に文庫化されています。

「ミーナの行進」が自分の子供時代を彷彿させるというかヒントにしたような内容だったのに対し、この著作は見事なまでの想像だけで創作したような作品感があります。

2022年4月後半の読書と感想、書評(ミーナの行進)

しかも女性作家の小説に多い(というかほとんどがそう)自分を投影した女性を主人公にするのではなく、若い男性が主人公の話で、男性独特の感情の機微がうまく表現されています。

国内の辺鄙な場所にある資産家の大きな別荘を改築して、芸術家達が自由に使える「芸術家の家」の管理人の青年と、あるとき青年の元に怪我をして助けを求めてきた子犬のような謎の生物「ブラフマン」との出会いと別れまでの短い物語です。

その生き物は全身毛に覆われていて肉球もあり子犬のようですが、手足の爪のあいだに水かきがあり、池に連れて行くと喜々として飛び込んで泳ぐという、河童の子供か?と思ってしまいました。河童は全身が毛に覆われているとは思えませんが、私は見たことがないので。

青年のひとり語りで、町にある雑貨屋の娘への淡い想いや、古くから芸術家の家を作業場としている墓碑銘を専門的に彫る石工師との友情、生きた動物の毛アレルギーの手編み作家の高齢女性との諍いなどとともに、その町ができた経緯などがうまく物語に散りばめられてとても面白かったです。

この著作を入れてまだ3作目ですので、これからもっと読んでみたいと思ってます。

★★★

著者別読書感想(小川洋子)

【関連リンク】
 11月前半 夜明けまで眠らない、危険なビーナス、掏摸、高い城の男
 10月後半 友罪、カズサビーチ、コロナ倒産の真相、解錠師
 10月前半 サラバ(上)(中)(下)、ペスト、団塊の秋

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック


ハヤカワ・ミステリ  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫


文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用


リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
ブログ内検索
プロフィール
HN:
area@リストラ天国
HP:
性別:
男性
趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
============
プライバシーポリシー及び利用規約
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine

Powered by [PR]


忍者ブログ