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1412
華竜の宮 (ハヤカワ文庫JA)(上)(下) 上田早夕里

2010年に単行本、2012年に文庫化された、長編SF小説です。著者は女性としては珍しい、本格的なSF小説やホラー小説などを書かれています。私がこの著者の作品を読むのは初めてです。

最初購入したときは、宮部みゆきの「ブレイブ・ストーリーや上橋菜穂子の「精霊の守り人」のような、女性作家さんに多そうな甘ったるいファンタジー小説かな?と思っていましたが、違いました。ついタイトルにそのような甘ったるさを感じてしまったもので。

プロローグでは、現代の社会で地球上のプレートなどに異変を感じ取った科学者が、将来起きるかも知れない最悪の事態について憂慮を表明してます。

そこで物語は一変し、遠い未来の地球は、海面が260m上がり、今まで内陸部だったところはすべて水没してしまい、標高の高い山の部分だけが残ります。

環境が大きく変わり、人類の数も大きく減り、残された陸上で生活する陸上民と、水の中でも生きられるように遺伝子操作で作られた海上民が棲み分けています。

この小説の場面設定で、すぐに思い出したのは、ケビン・コスナー主演の1995年の映画「ウォーターワールド」です。

この映画はまさに、地球上のほとんどが海水に覆われてしまった未来、海の中でも生きられるように進化した主人公が、海上に人工的に作られた構造物で悪党と死闘を繰り広げる物語でした。ある程度はそこからインスピレーションを得ているのだろうと思われます。

主人公は、日本の外交官で交渉のスペシャリストということになっていますが、このSF小説とは別に、ネゴシエーターの役割とテクニックなどを取り上げて、現代でも通用しそうなハウツー書とも言えるかも知れません。

最初のうちは想像を絶する世界に変わってしまった中に入り込むことができず、なかなかページが進みませんでしたが、上巻が終わる頃には、早く次が読みたくなるほどワクワクしてきます。

二酸化炭素排出の環境問題や、エネルギー問題、その他地震や火山噴火、台風など、地球上には諸問題がありますが、それらよりもっと大きく、人類にはとうてい対応ができない地球内部の異常現象という問題がテーマだけに話しは壮大なものとなっています。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

その時までサヨナラ (文芸社文庫) 山田悠介

最初は自費出版だった「リアル鬼ごっこ」(2001年)で大ブレークを果たしたユニークな作家さんの、2008年単行本、2012年に文庫化された長編小説です。

主人公は出版社の新刊書籍の編集員で、まだ売れない時代の作家と二人三脚で作品を磨き、今では売れっ子作家とその才能を見いだした編集者という輝かしいキャリアを誇っています。

一方では、仕事に没頭しすぎ、家庭を顧みず、妻とは喧嘩ばかり、まだ幼い子供とも疎遠状態が続き、妻は子供を連れて実家へ帰り、別居状態となってしまいます。

そこに試練が待ち受けていて、その人気作家から預かった新作短編小説を同行していた部下で愛人の女性がなくしてしまい、今まで仲が良かった作家から絶縁状を突きつけられます。

同時に、実家に帰っている妻が、福島へ出掛けている時に東日本大震災に遭い、列車事故で亡くなってしまいます。

ここまでがやっと前半部分で、これから思いもよらない展開が主人公に待ち受けているという、なかなか読ませる切ないような心温まるような小説です。

ま、小説ではよくある、しかし現実ではありえねぇー!っていう話しですが、現実だけをドラマにしてもたいして面白い展開にはなりませんからね。

タイトルは、それを説明すると、オチまでわかってしまいそうなので、あえて書きません。

私は別に出版業界には縁はありませんが、同じく家庭を顧みずに働いてきた社会人として、久々に、主人公に思いっきり感情移入してしまいました。たまにはそうした小説も、たまったモヤモヤを吐き出せて良いものです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

定年前後の「やってはいけない」 (青春新書インテリジェンス) 郡山史郎

2018年発刊の新書です。著者は、ソニーや米国シンガー社などに勤めた後、自ら人材紹介業を起業された方で、現在80代半ばという元気な高齢者です。

とにかく、よほど、ソニーで役員経験をしたことがご自慢と見えて、書籍の中でも何度も繰り返してその話しが出てきます。そうした過去の経歴を自慢する人って、「雀百まで踊りを忘れず」なのでしょうか?ちょっと意味が違うかな。

ま、著者は一橋大卒で、違いますが、例えば東大卒の人は、例えホームレスになっても「東大卒」を主張しますから、輝かしい時代の自分は忘れ得ず仕方ないことでしょう。

そういう年代の方ですから、著者は「仕事第一」「死ぬまで働け」「健康の秘訣は仕事」「45歳が折り返し」的な考えの持ち主さんで、残念ながら団塊世代より10年若い私には、それらの主張にはまったく共感も同意もできないものばかりでした。

したがって、反面教師にはなるものの、今の普通の中高年に参考になる話しはほとんどありません。

確かに昨今では、老後は年金以外に2000万円不足だの、年金はやがて破綻するとか、様々危機感をあおられていますが、人の幸せや価値って、なにも身体が動かなくなるまで仕事をすることや、老後資金をたっぷり貯めるだけではないということをこの年代の人には理解できないのでしょう。

個人的には、「老兵は死なず、去りゆくのみ」で、高齢者は第一線からとっとと引退し、健康で元気であれば、仕事以外に自分がやりたかったことをしたり、今までできなかった家族サービスをしたり、国民誰から尊敬される尾畠春夫氏じゃないけど、人知れずボランティアでもしているのが良いかと。

いつまでもビジネス界で金儲けをするのは辞めて、これから結婚や子育てで、いっぱいお金がかかる後進にお金が回るよう任せて譲るのが、私が理想とする高齢者の本道です。

政治でも、プロスポーツでも、芸術の世界でも、もちろんビジネスでも、高齢者が妙に幅を利かせ、「まだまだ若い者には負けん」とか大言壮語し、若者の成長の邪魔をしているシーンをよく見かけます。だからいつからか、若者から尊敬されるご老人ではなく、老害と非難されるのです。

本書の感想ではなく、私の思いを書いてみましたが、読んでみてそのようなことを感じました。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

悪童日記 (ハヤカワepi文庫) アゴタ・クリストフ

著者はハンガリー出身ですが、21歳の時にハンガリー動乱が起こり、スイスへ移住した方です。この小説は、1986年に発刊され、著者の実質的なデビュー作です。日本語の翻訳版は、1991年に単行本、2001年に文庫版が出ています。

また2013年にはドイツとハンガリー合作で映画が作られていて、日本では2014年に公開されています。

物語の主人公は小学生ぐらいの年齢の双子の兄弟で、著者の子供の頃の実体験をベースにしているのだろうと思っていたら、この著者は女性で、まったくの創作のようです。

小説の舞台は、第二次世界大戦中のハンガリーで、ブダペストと思われる「大きな町」から、他国と国境を接する「小さな町」へ双子の子供達が疎開してきたところから始まります。

知りませんでしたが、ハンガリーは、大戦中、隣国のドイツに特に抵抗もせず、実質的に国を乗っ取られるという状態で、ドイツ軍が駐留していたのですね。

そうした不安定な国内事情と厳しい環境の中で、頼りにできない大人達をあてにせず、自分たちでなんとか生きていくために才能を発揮していきます。

こうした賢い子供達を主人公にした小説やドラマは、平和な日本製のものは、もういい加減飽き飽きしてますが、戦時中の外国という全然違った環境で読むと思わず「頑張れ!」と応援したくなります。

但し、子供が主人公だからと言っても、文科省推薦にはなりそうもないので、お子さんに読ませるのはやめておいた方が良さそうです。

最後に、双子の子供達は、迎えにやって来た母親や、死線を乗り越えてやってきた父親とも再開しますが、「えぇ~!」という意外な展開が待っています。いや~面白かった~

★★★


【関連リンク】
 2月前半の読書 家霊、転生、人口と日本経済、カエルの楽園、ベストセラー小説の書き方
 1月後半の読書 新編 銀河鉄道の夜、この世でいちばん大事な「カネ」の話、蒼猫のいる家、教養としてのテクノロジー
 1月前半の読書 光圀伝、たんぽぽ団地のひみつ、涙香迷宮、高熱隧道



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1408
家霊 (角川文庫) 岡本かの子

著者は、かの日本を代表するアーティスト岡本太郎氏(1996年逝去)の母親で、そのやんちゃな頃の太郎を柱に縛り付けておいて小説を書いていたという逸話が残っています。

またその生き方もぶっ飛んでいて、放蕩家だった漫画家の夫とは別に、愛人として自分の作品のファンという若い学生を自宅に住まわせるという、実質三人婚という奇妙な関係だったそうな。

時代は太平洋戦争前の昭和初期のことですから、そうした女性の生き方は様々言われたことでしょうけど、そうした突き抜けた精神は、ちゃんと息子の太郎に引き継がれていました。

普段よく通る川崎市内の多摩川沿いには、岡本太郎氏作の「岡本かの子文学碑」が建っていて、著者の名前は知っていたのですが、本を読むのは今回が初めてです。

本作品は短編集で、「老妓抄」「鮨」「家霊」「娘」の4編が収録されています。すでに著作権が切れて青空文庫でも読めますが、今回は2011年に発刊された文庫本で読みました。作品の初出はいずれも1930年代のものです。

軽い話しが多いのですが、当時(昭和初期)の社会がよくわかる興味深いものでした。

別に凄い人が出てくるわけでもなければ、ハッピーエンドでもないですが、庶民が日々の暮らしを淡々と過ごしていく中で、少しの波風が立って、、、という感じでしょうか。

なにか背筋に1本心棒が入っているかのような格調高い文章から、人の考えを類推するなど、学校の教材として使用されたりするのもなんとなく理解できます。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

転生 (角川文庫) 鏑木蓮

2014年に「殺意の産声」というタイトルで単行本が発刊された長編警察小説で、2015年に「転生」と改題されて文庫化されています。

京都(著者の出身地)府警に異動となってやってきた元警視庁の女性準キャリア警部(刑事)が、20年前にレイプ被害者としての過去を持つ40代の女性が、何者かに絞殺された事件に関わります。

なかなか、話しはこみ入っていて(でも登場人物が少なく、ややこしくはありません)、20年前の事件のことや、パラレルで語られる、もうひとり(二人?)の別のストーリーがあり、その平行線が最後で交差していくという、ミステリー小説に多く使われているパターンです。

謎解きというミステリーではなく、人が背負った運命というか宿命というか、そうしたことをひとりの刑事が、ひとつひとつはがしていき、露わにしていくという、読み進めると段々胸が重苦しくなっていく内容です。

ところで、調べても不明なのですが、著者(ペンネーム鏑木蓮)は男性?女性?よくわかりません。

過去には「白砂」「エンドロール」の2作品を読んでいますが、女性を主人公とする小説が多そうで、今回も男性はすべて脇役か悪人というイメージ。しかも女性の心理描写が細かくて丁寧です。

そうしたことから推測すると、女性作家さんという特徴を示しているのですが、ペンネームからすればどちらでも取れそうな名前ですね。

★★☆

著者別読書感想(鏑木蓮)

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人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書) 吉川洋

著者は東大名誉教授の経済学者さんで、この新書は2016年に発刊されたものです。

実はこうしたタイトルから、もう言い古されてきた「少子高齢化により人口減少が続き、日本経済は確実に縮小していく」という話しだと思っていました。

それがまるで違っていて、「過去の歴史からみても人口減少と経済縮小とは関係がない」「先進国の経済成長は、人の数で決まるものではなく、イノベーションによって引き起こされる」という話しがメインで、目からうろこ状態でした。

ここで言うイノベーションというのは、要約すれば、労働生産性を格段に向上さえすれば、GDPは上がるということです。

もっとわかりやすく言えば、人力でツルハシとスコップで道路を作っていたのを、ブルドーザーやショベルカーを使えば労働生産性は間違いなく大きく向上します。そのブルドーザーやショベルカーが(過去に起きた)イノベーションです。

そうしたイノベーションをこれからの日本で起こすことができれば、人口や労働人口が大きく減ってもGDPを上げることは十分に可能だということ。ただそれが一番難しく、世界中のビジネスがそれを狙っているのですけどね。

また、人口減少について、ある引用文が書かれています。

「現在では子供のない者が多く、また総じて人口減少がみられる。そのため都市は荒廃し、土地の生産も減退した。しかも我々の間で長期の戦争や疫病があったということでもないのである。・・人口減少のわけは人間が見栄を張り、貪欲と怠慢に陥った結果、結婚を欲せず、結婚しても生まれた子供を育てようとせず、子供を裕福にして残し、また放縦に育てるために、一般にせいぜいひとりか二人きり育てぬことにあり、この弊害は知らぬ間に増大したのである」

さて、これっていつのどこの国のことと思いますか?

この文章は、紀元前2世紀半ば頃、古代ギリシアの歴史家ポリビオスがギリシアのことを書いた文章なのです。

その古代ギリシアは、紀元前2世紀頃にローマに征服されるまでは、世界の一等国で、軍事、経済、文化、芸能、スポーツなど世界の中心地でした。オリンピックもその時から始まりました。

残念ながら、ギリシアはその後イノベーションを起こすことができず、またローマ帝国に支配され、衰退していきますが、日本は、こうした歴史を繰り返すことになるのか、それとも救世主や優れたリーダーが現れ、産業革命やインターネット以上のイノベーションを起こすことができるのか、考えさせられる本でした。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

カエルの楽園 (新潮文庫) 百田尚樹

2016年に単行本、2017年に文庫本が発刊された小説です。著者は、ジョージ・オーウェル著「一九八四年」をモチーフとした作品のような感じですが、著者の政治的スタンスを強く取り入れた、日本と憲法9条、日米同盟、自衛隊、朝日新聞などを寓話で揶揄した物語となっていて、従来の名著「永遠の0」のような感動小説を期待していては大きく裏切られます。

アマガエルはカエルの中でも小さく弱いので、周囲には様々な敵が多く、ある日、二匹のアマガエルが地域を跳びだし楽園の地を探しに旅に出ます。

そして、様々な辛苦を乗り越え、楽園と思われる地域にたどり着いたのですが、そこは昔激しく戦ったことがある鷲と協定を結び、他の外敵から守ってもらっている住民全部が平和ボケした地域でした。

しかし、鷲は年老いてしまい、「今までのように1羽だけで外敵から守ってやることはできない、もし守って欲しいのなら一緒に外的と戦え」と求めてきます。

その地域では、不戦の誓いがあり、戦うことが禁じられているので、鷲の提案を断り、やがては、近くの池から大きなウシガエルが、天敵の鷲がいなくなった地域へと迫ってきます。

ま、読者がどういう感想を持つかは、それぞれの立ち位置や考え方、思想によって違うでしょうが、少し極端とも思いますが、こうしたところから議論が始まるのも悪くはないかなと思います。

ここで特に強調されていることは、ポピュリズムというか、「不幸なことなど決して起きない」という、根拠のない自信を民衆に植え付けると、それがやがては民衆の中で熱狂となり、冷静な正しい判断など置き忘れ、もう引き返すことが容易でなくなるということ。

過去の歴史を見てもそういうことは何度も起きているだけに、今後そうはならないと言い切れません。

読んでいて、この小説は感動もなければ、決して気持ちよくはなれませんが、平和社会の中においても、心の片隅にこうした悲劇を持っておくことは無意味ではないでしょう。

★★☆

著者別読書感想(百田尚樹)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫) ディーン・R.・クーンツ

1983年に単行本として、1996年に文庫本がそれぞれ邦訳版が出版されています。

いえ、別に私が小説を書いて、「夢の印税生活!」とか無謀なプランを立てているわけではなく、最近読んだ新書で、この書籍が「文章を書くのに役立つ」と評価されており、このブログを含め、文章を書くことが多いので、参考書代わりと思って買ってきました。

まずこの著者が書いた小説は、古くからの付き合いで、最初に出会ったのが、29年前、1991年に「ライトニング」を読んだのが最初です。SFミステリー小説でしたが衝撃的でした。

それ以来、すっかりはまってしまい、1990年代から2000年代にかけて22作品(32冊)を読んできましたが、ここ10年ぐらいは、飽きてきたのと、読む本の著者があまり片寄ってはいけないと思い、ご無沙汰していました。

そうした中で、上記のように突然新書で懐かしい名前が出てきたので、これは読まなくっちゃと古い本ですが探してきたわけです。

なるほど、小説を書いているけど、いまいち売れない、あるいは作品コンテストに応募しても入選できない、出版社へ持ち込んでも相手にされないという作家の卵たちに向けて書かれた指南書という体です。

具体的なテクニックや、テーマの選び方、プロットの作り方など、かなり細かく分けて書かれているのと、参考にすべき小説も紹介されていますので、その筋の真面目で素直な人には役立ちそうです(作家を目指す人に真面目で素直な人がいるかどうかはともかく)。

著者が特に力説しているのは、プロットの大切さと緻密さ、背景描写、登場人物の性格描写などに注意すべきという点や、書き出し部分で一気にワクワクさせる方法とか。

また作家になりたい人は、特定のジャンル小説ではなく一般大衆小説を書くべきと言っていますが、SF小説に特に偏って紹介がされているのが、なにか著者らしいところです。著者は1読者としてはSF小説が好きなんでしょう。

で、小説など書く才能もないし、もちろん書く気もない私にとってこの本は、役に立つか?と聞かれたら、それはほとんど役立ちません。

しかし一読者として様々な小説を読む上で、この著者はおそらくこういう考えでこのシーンを描いているのだろうな~とか、小悦の中で会話と説明のバランスがうまく配分されているな~とか、作家が苦労しながら創造していくバックヤードの一面が見られてそれはそれで良かったかな。

ただ、1983年刊の書籍だけに、ここで紹介されている「参考にすべき小説」は、当然にそれ以前のものばかりで、普遍的な良い作品が多いとは言え、すでに廃刊になっているものも多く、また40年近く前と今では読者の好みも変わっているでしょうから、実質的にどこまで役に立つものかはわかりません。

★★☆

著者別読書感想(ディーン・R・クーンツ)

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1404
新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫) 宮沢賢治

著者の死後、1935年に発刊された童話です。小学生の頃に、一度読んだ記憶はあるのですが、もう50年前ということもあり、もう一度読んでみたくなり買ってきました。著作権は切れているので青空文庫にもありましたけどね。今回購入した文庫の新編は1989年(平成元年)発刊ですが、現在は改版が2012年に出ています。

この童話作品にインスピレーションを受けて数多くの音楽やアニメ、ドラマなどが作られています。代表的なものとして松本零士作の「銀河鉄道999」や、内田康夫著「イーハトーブの幽霊(浅見光彦シリーズ)」、高橋源一郎著「銀河鉄道の彼方に」、映画「ジョバンニの島」、中島みゆきの「夜会(VOL.13 24時着 0時発)」、冨田勲作曲「イーハトーヴ交響曲」など。

これほど様々なアーティストや文化人、音楽家など多くの人に影響を与えた童話は他にはほとんどありません。

14編のそれぞれのタイトルは、「双子の星」、「よだかの星」、「カイロ団長」、「黄いろのトマト」、「ひのきとひなげし」、「シグナルとシグナレス」、「マリヴロンと少女」、「オツベルと象」、「猫の事務所」、「北守将軍と三人兄弟の医者」、「銀河鉄道の夜」、「セロ弾きのゴーシュ」、「饑餓陣営」、「ビジテリアン大祭」です。

これら短編童話(小説)の中でも、「銀河鉄道の夜」と「セロ弾きのゴーシュ」は特に有名で、私も子供の頃に読みましたが、すっかり中身についてはすっかり抜け落ちていて、今読むと新鮮な気持ちで読めました。

ただ、本当に、これが童話?って思うほどに難解なところも多く、昔の子供達の感性というか理解力は凄かったんだなぁと変に感心したり。

今回読んで、1番面白いなと思ったのが、最後の「ビジテリアン大祭」で、カナダに今で言うところの世界中のベジタリアンが集まって様々な議論をするのですが、その中には反ベジタリアンや、食肉協会の人達、混食を勧める生物学者なども発言が許されます。

そして肉食するのは当然とか、宗教上や生物学上からなど様々な意見でベジタリアンを非難するのですが、その都度、科学的に、または感情に訴えるなど反論し、ベジタリアンの擁護をしていきます。

そうしていくうちに、肉食容認派だった人達が、なぜかベジタリアンに宗旨替えしていくという不思議な話しです。

この文庫は1989年発刊の文庫でしたが、文字が小さく老眼の目にはつらく、旧仮名遣いなどもあって、読みづらく、結構大変でした。読み始めるとすぐに睡魔が襲ってくると言うのはビジネスホテルの部屋に備わっている聖書と似たような感じです。

苦労はしましたが、ま、どうにか全部読み終わることができて、良かったです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫) 西原理恵子

2008年に初出の自伝的エッセイ集で、2011年に文庫化されました。著者の書籍では昨年「生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント」を読んでいます。こちらもなかなかのユニークさで面白かったです。

2019年10月後半の読書の感想、書評(生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント)

今回のエッセイはお金にまつわる話しがメインですが、お金そのものというより、著者が子供の頃から味わってきたお金に関わる様々な思いをぶちまけたという感じでしょうか。

子供の頃はかなり悲惨な家庭で過ごし、野心がある地方に住む多くの女性と同様、東京に出てきて、もがきながらも苦労して今の地位を得るまでの話しです。

著者は漫画家として成功しましたが、こうした手に職がある人は強いですね。それが最初は一流でなくても、長く続けていくことで、人に認められていきます。エロマンガでも需要のあるところにはあるものです。

いろいろ役立つ言葉がありますが、中でも世の中の女性達へ「男に頼らず、自分で働いて自由になれ」ということが、この時代にはもっとも刺さっているかなと思います。

正直、この方の漫画はほとんど見たことはありませんが、背負ったものが多い方が書くこうしたエッセイもなかなか優れたものだと感心しました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

蒼猫のいる家 (新潮文庫) 篠田節子

2015年に「となりのセレブたち」というタイトルで単行本、2018年に改題して文庫化された短編小説集です。収録作品は、「トマトマジック」「蒼猫のいる家」「ヒーラー」「人格再編」「クラウディア」の5編です。

セレブな奥様を皮肉的に書かれたものや、恋愛もの、そして驚いたことにSFまでが含まれています。

正直、女性が書くSF小説というのはほとんど知りません。あれは男性特有の創造と空想のたまもので、あまりにも現実的な女性が書くのは無理と思っていましたが、それが単なる偏見だったことをこの短編SFで教えられました。

もっとも数あるSF短編小説からすると、ちょっとひねりがまだ少ないかなぁって気もしますけど。
著者の作品は過去に7作読んでいますが、いずれも長編または中編小説です。

一番最近読んだのが2017年に読んだ中編「長女たち」(2014年刊)で、女性視点の話しだけに男性にはなかなか理解しがたい面がありましたが、面白く読めました。

2017年8月前半の読書と感想、書評「長女たち」

何人か、内容はともかく、「この著者なら安心」ということで、目に付いたら買ってしまう本がありますが、私的にはその中のひとりがこの著者さんです。

★★☆

著者別読書感想(篠田節子)

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教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン (NHK出版新書 545) 伊藤穣一

2018年に発刊された新書で、著者はデジタルガレージの創業メンバーで現在取締役等で活躍する方です。

この方のwikipediaを見ると、いかにも自分自身で微に入り細に入り、よく見えるように編集したなというのがみえみえで、かなり顕示欲が旺盛で、自慢たらしく、極度のナルシストなんだなぁというのがうかがえます。意識高い系のトップランナーということなのでしょう。

本書でも「自分はWikipediaで600数十回の編集実績があり・・・」と書いていますが、その半分はきっとご自身のところの編集ではないかと思えるぐらいにしっかりと(良いことばかり)書き込まれています。

冒頭から、その意識高い系な人が好んで使う「そもそも・・」が満載で、もうそれだけで、私が最も嫌う「下層民にオレ様が教えてやる」的な横柄な人柄が偲ばれます。中程には各種「そもそも論」まで出てきて呆れるばかりです。

さらには、子供の頃からトップの優秀な成績で誰もがうらやむ学校に入ったと、自慢たらしく自ら書いてもいますし、自分はお金のためではなく社会に貢献しているのだという思い込みがあふれています。周囲にいる取り巻き以外、誰もそんなこと思っちゃいないでしょうけど。

とは言え、せっかく買ったので、全部読みましたよ。つらかったです。痛かったです。

中身はタイトルとはほど遠い、ただただ、自慢話と、どうでもよい著者がはまったというゲームの話しとかが多く、内容は理解しがたい独自の偏った見解が多く、メチャクチャ、意味不明です(個人的な感想です)。

新書って、その多くは自分や自分の会社のPR本というのはわかっているつもりで、話半分なのですが、ここまで恥ずかしげもなく徹底的にやる?逆効果じゃないの?ってところが、自分中心で世界が回っている意識高い系を昇華させて見事具現化している方だからできるのでしょう。

残念ながら、この著者が謙虚で誠実な気持ちで読者の役に立つことを発信することは、恐らくないのでしょう。いやまったく今回ばかりは恐れ入りました。

☆☆☆(初の無星)

【関連リンク】
 1月前半の読書 光圀伝、たんぽぽ団地のひみつ、涙香迷宮、高熱隧道
 12月後半の読書 定年ですよ、ユートピア、舞い降りた天皇 初代天皇「X」は、どこから来たのか、堕落論
 12月前半の読書 いつか夜の終わりに、しない生活 煩悩を静める108のお稽古、乳と卵、晩夏光、ラスト・ワルツ

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1401
2013年から続けてきたこの年間ベスト書籍は、今回で8回目となります。

いや~飽きっぽい性格に関わらず、また誰からも評価されることもないのに、よく続いているものです。とりあえず10回までは続けてみたいです。

1295 リス天管理人が2018年に読んだベスト書籍
1191 リス天管理人が2017年に読んだベスト書籍
1093 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
993 リス天管理人が選ぶ2015年に読んだベスト書籍
886 リス天管理人が選ぶ2014年に読んだベスト書籍
784 リス天管理人が選ぶ2013年に読んだベスト書籍
676 2012年に読んだ本のベストを発表

まず2019年の1年間に読んだ書籍は全部で108作品で、冊数としては115冊(上下巻などあるため)。冊数で見ると、月あたり平均9.6冊読んだことになります。

前年の2018年は99作品110冊でしたので、作品数で9作品、冊数で5冊増えています。2018年は4巻からなる「村上海賊の娘」など複数巻の作品が多かったため作品数が大きく減っています。

さて、今年の大賞発表も、
■新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門
■海外小説部門
■国内小説部門
の3つの部門でそれぞれおこないます。

先に断っておきますが、諸般の事情から旧作や文庫本ばかり読みますので、出たばかりの新刊本はまず読みません。したがって新刊本は大賞候補には入ってきません。その点が多くの書籍の賞とは違います。

■新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門

2018年は26作品だった新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門の対象作品は、2019年は29作品を読み、前年より少し増加しました。

しかし、大賞候補作品はというと、これといった突出した作品がなく、中庸な作品が並び立つことになりました。言い換えると昨年は不作の年(昨年発刊された本ということではなく、昨年読んだ本という意味)と言わざるを得ません。

29作品の中から、大賞候補作は18作品あります。

謎解き 関ヶ原合戦 戦国最大の戦い、20の謎 桐野作人
「やりがいのある仕事」という幻想 森博嗣
「日本の四季」がなくなる日 連鎖する異常気象 中村尚
アンガーマネジメント入門 小林浩志
ひとり暮らし 谷川俊太郎
ファスト風土化する日本 郊外化とその病理 三浦展
言ってはいけない 残酷すぎる真実 橘玲
新個人主義のすすめ 林 望
生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント 西原理恵子
地方消滅 東京一極集中が招く人口急減 増田寛也
日本農業への正しい絶望法 神門善久
非属の才能 山田玲司
美学への招待 佐々木健一
不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか 鴻上尚史
本能寺の変 四二七年目の真実 明智憲三郎
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 河合雅司
友がみな我よりえらく見える日は 上原隆
堕落論 坂口安吾

この中から、大賞は、、、、、、、、

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書) 橘玲 著

ということにしておきます。

感想は、
1313 3月前半の読書と感想、書評

私自身、皮肉が好きな嫌みなヤツですので、こうした世間の空気読まず「事実とは違って本当はね、、」っていう暴露本的なものが肌に合っているというか、好感を感じてしまいます。やや偏向してますね。

皮肉にしても暴露にしても「だったらそれがどうした?」って言われかねませんが、こうした裏に隠されたり、誤魔化されている世界を垣間見て、「ヤレヤレ」と深くため息をつくのもワルかないかな~という歳になりました。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

■海外小説部門

海外小説は、2018年は9作品(13冊)だったところ、2019年は8作品(9冊)と少し減りました。これだけAI活用の機械翻訳ブームが来ていても、翻訳小説にはまだ応用できていないらしく、したがって、時間あたりの賃金が高い有能な人の手作業での翻訳のため、原価が高くなり、なかなか手を出せないのと、次々新たな作家さんが出てきてどの作品が自分にあっていそうかよくかわからず、つい安全策をとって、新書や国内小説へと向かってしまいます。今年はもうちょっと意識して海外作品を読みたいと思います。

大賞候補作品は下記の7作品からです。

Yの悲劇 エラリー・クイーン
悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル
その女アレックス ピエール・ルメートル
暗夜を渉る ロバート・B・パーカー
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ジョナサン・サフラン・フォア
湿地 アーナルデュル・インドリダソン
彼女のいない飛行機 ミシェル・ビュッシ

結構迷います。シンプルで上質なミステリーと言えば名作「Yの悲劇」ですが、読み物として楽しいのは「湿地」や「彼女のいない飛行機」など。国内でも大流行しているイヤミスな「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」などは私の中ではイマイチです。

ここは心を鬼にしてえいやっ!と決めると、大賞作品は、

湿地 (創元推理文庫) アーナルデュル・インドリダソン著 に決定!

感想は、
1344 6月後半の読書と感想、書評

著者は日本と馴染みが少ない、アイスランドの作家さんで、北欧ミステリーという言葉もあとで知りました。作品は地元で2000年に発刊され、日本語翻訳版はだいぶんと遅れて2012年に出ています。

有能なベテラン刑事が主人公で、通りすがりの強盗殺人ではないかと思われた事件に違和感を感じ取り、殺された孤独な老人の過去を調べていき、犯人を追い詰めていくミステリーです。

刑事物の小説は星の数ほどありますが、タイトル通り、湿気でジットリと粘つくような場面が目に浮かびそうになる文章はとても印象に残ります。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

■国内小説部門

最多の国内小説は2018年に64作品(71冊)でしたが、2019年は71作品(77冊)とやや増加しています。

できるだけ意識をして偏らないように、古いものから新しいもの、男性作家も女性作家も、ベテランから若手まで幅を持たせて読むようにしています。

そうすると、古い小説は廃刊の危機などを乗り越えて、本当に良いものだけが残っていきますので、評価はどうしても古い作品に有利となってしまうのはやむを得ないかも知れません。

過去の国内小説部門の1位を書いておくと、

2012年 「あかね空」 山本一力
2013年 「東京セブンローズ(上)(下)」 井上ひさし著
2014年 「東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン」 リリー・フランキー
2015年 「屍者の帝国」 伊藤計劃×円城塔
2016年 「八甲田山死の彷徨」 新田次郎
2017年 「漂流者たち 私立探偵・神山健介」 柴田哲孝
2018年 「紀ノ川」 有吉佐和子

と、古いものから、割と新しい作品まで、無難なところに落ち着いているような感じです。

さて、今年は、どういう結果となるでしょうか。

全71作品の中から大賞の候補は下記の12作品です。

アキラとあきら 池井戸潤
ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石 上・下巻 伊集院静
ハサミ男 殊能将之
国境(上)(下)  黒川博行
手のひらの音符 藤岡陽子
赤ひげ診療譚 山本周五郎
占星術殺人事件 島田荘司
地層捜査 佐々木譲
田園発港行き自転車(上)(下) 宮本輝
夜と霧の隅で 北杜夫
約束の海 山崎豊子
俘虜記 大岡昇平

ベテラン作家さんや、売れっ子作家が並びますが、この中から大賞の1作を選ぶとすれば、、、

赤ひげ診療譚 (新潮文庫) 山本周五郎著 に決定!

感想は、
1370 9月後半の読書と感想、書評

今回は昨年に続き60年以上も前の古い小説(1959年発刊)が大賞となりました。2018年の国内小説大賞も偶然ですが、同じ1959年刊の小説「紀ノ川」(有吉佐和子著)でした。

やはりよいものは時代を問わず読み継がれ、そしてそれは決して色あせていかないということでしょう。

30年ほど前にレンタルビデオでこの小説を原作とした映画を借りて見ましたが、その時は登場人物達の背景がよくわからず、単に黒澤明監督の名作映画ということと、三船敏郎演じる主人公だけをうっとりして見ている感じでした。今回、年末にBSで放送されていたので録画し、お正月にゆっくり見ることができました。

そうしたことから、私的には、まず小説で、時代や登場人物の背景を知ってから映画を見るというのが好きです。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

国内小説の次点として2作品あげておきます。

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石 (講談社文庫) 上・下巻 伊集院静著

感想は、
1374 10月前半の読書と感想、書評

約束の海 (新潮文庫) 山崎豊子著

感想は、
1296 1月前半の読書と感想、書評

この選考は新鮮味がなく、ベテラン作家さんの作品となってしまいましたが、ここは奇をてらうことなく、いたって真面目に検討した結果です。

「ノボさん」は、明治初期に活躍した文人であり詩人、正岡子規を主人公にした伝記的な作品ですが、同級生でもあった夏目漱石との友情をメインにもってきて、面白い作品に仕上がっています。

夏目漱石は長生きして数多くの作品を残しましたが、短命に終わった子規(34歳没)の生涯と、そのユニークな発想や行動を、あの老けた感じで頭でっかちの横顔の写真からは想像できない行動的な人物像を描いています。

正岡子規は日本で野球普及に大きく貢献した人物で、そのつながりから、野球好きな著者が子規をテーマにした小説を書こうとしたのは自然な成り行きでしょう。


「約束の海」は、著者の遺作となった作品ですが、著者独特の実際に起きた事件や事故をモデルにした小説の集大成という気がします。

ただ残念なことに、この小説は第1部と第2部で終わり、本来はクライマックスとなる予定だった第3部に至れず亡くなったのは残念です。

さて、今年はまたどんな名作に出会えるかワクワクドキドキ楽しみです。



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1400
光圀伝 (角川文庫)(上)(下) 冲方 丁

2012年に単行本、2015年に文庫化された、水戸黄門様として有名な徳川光圀(1628年~1700年)の伝記風歴史小説です。

著者の作品は、過去に「天地明察」(2009年)、「マルドゥック・スクランブル」(2003年)を読んでいます。本書のような歴史物から、SFまで幅が広い作家さんです。

なんでも地元水戸市では、観光振興や話題作りのため、この作品を原作とした大河ドラマの制作をNHKに提案しているのだとか。

但し、民放で制作される勧善懲悪の好好爺の水戸黄門様と違い、夜な夜な屋敷を抜け出し、頻繁に吉原通いをし、酔った勢いで将軍からもらった刀で無宿人相手に試し斬りをする、侍女に手を出してはらませたりと、それが通用した時代と若気の至りとは言え、そのイメージの落差に眉をひそめる人も多そうで、そういうことを考えると大河ドラマでは実現しそうもありません。

そうしたやんちゃな若いときに、老成した宮本武蔵や沢庵和尚と出会って、武蔵に漢詩を褒めてもらうシーンなどは著者の創造力を堪能できる小説の醍醐味です。

上記に書いたように、光圀は若いときには無鉄砲な若者でしたが、やがて妻をめとり、本来は水戸徳川家の光圀の後を継ぐべきだった兄の長子を後継に据えることで、義を果たしたいと新妻に頼みます。

また明暦の大火で、多くの重要な歴史史料が焼けてしまったことを憂い、才ある妻とともに修史事業に邁進していくことで、後世に名を残すことになります。

知らなかったのですが、水戸、尾張、紀州の徳川御三家の当主とその世子(跡継ぎ)は、それぞれの領地(水戸、名古屋、和歌山)に住まうのではなく、常に江戸に住まうというのが当時のしきたりだったということ。

数年ごとの参勤交代でかかる多額の経費は不要だった代わりに、将軍の許可がないと滅多なことでは地元に帰れず、不自由なことも多かったでしょう。

したがって、三男として生まれた光圀ですが、兄は幼児の時に病死したり、病弱だったことから、当主(父親の徳川頼房)から世子を命ぜられ、それ以降の人生のほとんどは江戸住まいとなります。

若いときから、常に死に別れが身近につきまとい、正妻にいたっては5年しか連れ添っていなかったり、兄から預かった世継ぎの養子もすぐに病死、若いときに意気投合して親友となった儒教家も若くして亡くなったりと、ツキがない人です。

この小説では、引退前の光圀がどういう人生を送ってきたのか、なぜその時代の大名として今でも語り継がれるようになったのかなど、フィクションの小説とは言え、知らないことが多く面白かったです。

★★★

著者別読書感想(冲方丁)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

たんぽぽ団地のひみつ (新潮文庫) 重松清

2015年に単行本「たんぽぽ団地」、2018年に改題されて文庫化された、著者のお得意の高度成長期に建てられた団地を舞台とする長編小説です。

著者の作品は、社会問題を鋭く捉えた作品から、ほのぼのとする小説まで様々で、2000年頃からボチボチ買って読んできました。

調べると過去16作品(冊数では19冊)を読みましたが、年間5冊以上も上梓される売れっ子多作作家さんゆえ、全然追いついていません。一番最近読んだのが2018年に読んだ「ファミレス(上)(下)」(文庫版2016年刊)で、こうして振り返ると著者の作品を読むのは1年に1話ペースです。今年はもう少し増やそうと思います。

ストーリーは、小説やドラマによくある時空もので、1960年代に次々建てられたニュータウン団地、そこで生まれ育ち生活してきた子供達が、やがて大きくなった時に、忘れ去られ、取り壊されていくそれらの団地の想い出を回想するというもの。

1960年代を象徴するツールとして出てくる「ガリ版」は、私の年代では小学生時代に実際よく使っていたもので、つい最近、松本市にある国宝「旧開智学校」の中にそれが展示されていたのを見て、懐かしさひとしおでした。

思い出すのは小学校の上級生になった頃には、それまでのガリ版印刷から、画期的なコピー機が導入され、ちょうどその両方を経験したことを思い出します。最初に使ったコピー機は感光紙を使った湿式タイプで、1枚単価がやたらと高価なもの(と先生に言われた)でした。

小学生を主人公として、やんわりとした中に、懐かしさと人の温かさなどが伝わってくる良い作品でした。

★★☆

著者別読書感想(重松清)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

涙香迷宮 (講談社文庫) 竹本健治

2016年に単行本、2018年に文庫化された長編小説です。この著者の作品を読むのは今回が初めてです。

小説のタイトルにもなっている「涙香」とは、実際に明治から大正時代にかけて新聞業界等で活躍した「黒岩涙香(本名:黒岩周六)」のことで、この人物が書き残したとされる詩文をめぐるミステリーがテーマです。

正直、この「黒岩涙香」という人物のことは初めて知りました。Wikipediaによると「日本の小説家、思想家、作家、翻訳家、ジャーナリスト。翻訳家、作家、記者として活動し、『萬朝報(よろずちょうほう)』を創刊した。」とありますが、その多くは古い文体で書かれた翻訳本であまり馴染みがないと言うことでしょう(現代訳のものもあるでしょうけど)。

Amazonで検索すると「幽霊塔」や「鉄仮面」「巌窟王」など、多くの名著の翻訳本が普通に並んでいます。その訳本自体を読んだことはありませんが、子供の頃に漫画や絵本になったものは見たり読んだことはあります。

残されたミステリーを解くのは、主人公であり、囲碁のタイトルを総なめにしているプロ棋士の牧場智久という設定です。この牧場智久を主人公とした作品は他にも何冊かあるようです。

主人公が関わるきっかけは、囲碁の途中に殺されたと思われる事件が起きた時、たまたま刑事と一緒にいたことからですが、それと並行して、囲碁や連珠にも造詣が深かった涙香が残した茨城にある別荘というか荒れた隠れ家の中を調査しようと同好の士達が集まることになり、それに参加します。

隠れ家の各部屋に書かれていた「いろは文」(いろはの48字を使い、かなを重複させず、意味が通るように作られた誦文で七五調(色は匂へど 散りぬるを/我が世誰ぞ 常ならむ/・・など)の中に秘められた謎を解こうとします。

そしてその隠れ家の中で毒殺事件が起きます。しかも台風の影響で、すぐには警察や救急車も近づけず、世間と隔離された山の中の隠れ家です。

その殺人事件の犯人捜しと、涙香が作ったとされる「いろは文」に隠された謎とを解いていくという流れですが、そのために著者は48種以上の「いろは文」を作成せざるを得なく、そのたいへんな苦労が忍ばれます。

事件としてのミステリーはやや平凡な気もしますが、上記のように涙香が考えた(とする)誦文など、なかなか手間のかかった力作であると同時に、半ば埋もれてしまた黒岩涙香という超絶多才な人物を掘り起こしたということで、よい作品だと思います。


★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

高熱隧道 (新潮文庫) 吉村昭

1967年に単行本として発刊されたノンフィクション小説です。完全なノンフィクションではないのは、登場する人物や企業が、それぞれモデルはあるものの、実際の名称からは変えていたりするからです。

戦前の1936年に着工した黒部川第三発電所(仙人谷ダム)を建設するため、その工事資材を運び込むためのトロッコを走らせるトンネル軌道工事が小説のメインとなっています。

時は、第二次世界大戦前の世界中がきな臭くなっていた頃、関西の軍需工場へ電力を供給する必要があり、国家的事業として、建設会社が地元の漁師でも立ち入らないという難攻不落な道を切り開いていく実話を元にしています。

また一般的に黒部ダムというと馴染みが深いのは、映画「黒部の太陽」で有名な黒部第4ダムで、こちらは戦後に建設されたもので、この小説の話しとは違います。

小説のタイトルになっている通り、このトンネルを掘削していく途中で、異常なほど高温の熱水帯にぶつかり、勢いよく熱湯があふれ出てきて工事は難航を極めます。その温度は100度を軽く超えるという凄まじいものです。

現代のようにシールドマシンがあるわけでなく、人力で岩盤に穴をあけ、その中にダイナマイトを詰めて爆破していくという工法でトンネルを掘削していきます。そしてダイナマイトがトンネル内の熱で自然発火してしまい暴発するなどして多くの犠牲が伴います。

そうした難工事の上、厳しい冬には大きな雪崩(泡雪崩)で鉄筋の宿舎が吹き飛ぶなどして、このトンネル工事だけでも300名を越える犠牲者を出します。

請け負った建設会社の工事監督や現場土木技師は、計画を立て、工事の方法を考え、命令する立場ですが、当然ながら灼熱のトンネル内で身を削りながら作業をするのも、ダイナマイトの誤爆で吹き飛ばされるのも、突貫工事のため現場宿舎に泊まり雪崩に巻き込まれるのも、岩を満載したトロッコが暴走して押しつぶされるのも人夫達です。

そうしたことから、命令を下す側と、お金のためとはいえ、次々と仲間が死んでいく人夫側とで、次第に不穏な空気が流れ出します。

トンネルが完成した時、普通は「黒部の太陽」でもそうだったように、関わったみんなが肩を抱き合い、うれしさで感動するところ、この小説のラストでは、人夫のリーダー役の人夫頭の助言で、監督や現場土木技師達は、誰にも告げず、そっと静かにその現場から逃げ去るように去って行くところが、この工事が只者ではなかったことを象徴しています。

★★★

著者別読書感想(吉村昭)

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