リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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インターネット新世代 (岩波新書)
日本のインターネットの父とも言われた村井氏は、創業まもないIIJに関与されていた頃から、その名前はよく知っていましたが、私よりもずっと年上の人と思っていたところ、2歳だけ年上だと知って驚きです。
現在の肩書きは、慶應義塾大学環境情報学部長を勤めながらも、ビジネス界で何社かの社外取締役や顧問などを務められているようで、決して象牙の塔でふんぞり返っているだけの人ではありません。
この2年前に発刊された新書では、新しく生まれた様々なネット用語や新技術の解説などもあり、また近い未来のネットの姿などもあって、歳に関係なくビジネスマンにとって興味をもって読めるのではないでしょうか。
こういう技術系の新書は発刊後旬なのは1年以内で、せいぜい2年ぐらいまでが読むに耐えられると思って間違いないでしょう。私が読んだタイミングは内容がまだ陳腐化する前で、ためになる本として読むことができました。
こういう本は読むタイミングが難しく、早く読み過ぎると理解できずに終わってしまい、遅すぎると「そんなの知ってるよ」か「想定が全然違っていたじゃん」かのどちらかになってしまいます。
この本は単なる技術者や専門家、評論家が書く文章と違い、実際にビジネスの現場でいまも活躍している人が書いているので、実感として社会とビジネスの中におけるインターネットのことがよくわかっていい感じです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
八月のマルクス (講談社文庫)
この本は以前から書店で気になっていたタイトルの小説として記憶に残っていましたが、「あぽやん
この小説は同氏のデビュー作品で、1999年の江戸川乱歩賞の受賞作品でもあります。
マルクスといえばドイツの共産主義思想家のカール・マルクスを第一に思い浮かべると思いますが、もちろん私もそうでした。
しかし初っぱなから事件で引退したお笑い芸人が主人公と知って「???」となりました。そういやアメリカの偉大なコメディアンにマルクス兄弟ってのがいたなと思い出したのは小説の中でその話題が出てきてからです。
マルクス兄弟はまだ私が生まれる以前の1930~40年代に活躍していましたが、私も子供の頃にテレビの映画で「マルクスの二挺拳銃]
それはさておき、内容は元一世を風靡したお笑いコンビの片方が、ある事件がきっかけで引退をし、今では自分のマンションの大家をしながら地味な生活をおくっていたところへ、今でも現役の昔の相方が突然訪ねてきます。
そしてその数日後にその相棒が謎の失踪を遂げたことで、真相を探るために探偵のようなことをはじめます。
ストーリーも、芸能関連の世界もうまく描けていて、なかなかのハードボイルド小説に仕上がっています。固ゆで小説と言っても主人公は元お笑い芸人というだけで、滅法喧嘩に強かったり、警察やヤクザや天才ハッカーに親しくて手助けしてくれる友人がいたりというのではなく、単なる自由時間がとれる1小市民ってところがいいです。
◇著者別読書感想(新野剛志)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夏を拾いに (双葉文庫)
この小説の著者の森浩美氏は男性ですが、同じ浩美でも小林浩美氏(プロゴルファー)は女性、谷口浩美氏(マラソンランナー)は男性、さらに「図書館戦争シリーズ」などで大ブレーク中の有川浩氏は女性で、4回も直木賞候補になっている荻原浩氏は男性で、「鷺と雪」で直木賞を受賞した北村薫氏も男性ですが、「『マークスの山」で直木賞を取った高村薫氏や、既に故人となられたが「グイン・サーガシリーズ」の栗本薫氏は女性と、性別不明の名前でこんがらがりやすいのですが、読んでみるとその内容は明らかに男性作家の本です。
年齢は私より3歳ほど若いのですが、ほぼ同世代。したがって小説の中に出てくる子供時代の記憶に残る遊びやテレビ番組などもかなり近しく、とても懐かしい香りがします。
内容から言うとあとがきにも書かれていましたが、スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー
主人公は妻に頭が上がらず、自分の息子からもまともに相手にされなくなった、さえない中年男性。しかしある言葉がきっかけで、息子が父親の話しに興味を持ち、自分が子供だった頃の冒険話を始めます。
その話しの中ではファミコンも携帯電話もなく、「ザリガニ釣り」「B2弾」「忍者部隊月光」「ハレンチ学園」「フラッシャー付き自転車」など当時の子供の世界が再現されていておそらく50~60歳あたりの人にとっては十分はまりこむでしょう。
この本は2009年に単行本、2010年には文庫版が出ましたが、最近になって書店勤務の方が推薦されていたのをなにかで読んで買ってきました。
著者は作家という寄り作詞家としてのほうが有名でSMAPや酒井法子など多くの歌手に詞を提供されています。著者の本では他に最近「家族の言い訳
◇著者別読書感想(森浩美)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ひかりの剣 (文春文庫)
東城大学病院田口シリーズに登場する「ジェネラル・ルージュの凱旋
時はまだ速水も清川も大学の医学生だった1988年(「ジェネラル・ルージュの凱旋
医学生だけの剣道大会「医鷲旗大会」というのがあり、東城大速水と帝華大清川との主将同士の闘いがメーンとなりますが、シリーズでお馴染みの速水と同期生の田口公平や島津吾郎も同じ学生としてチラッと登場してくるところが笑わせます。
「ジェネラル・ルージュの凱旋」では速水が勤務する東城大学医学部付属病院病院長として登場する、つかみ所がない高階権太もこの小説では帝華大から東城大学医学部へちょうど赴任し、剣道部の顧問に就任するという設定で、重要な役どころとなっています。
ストーリーとしては先に書かれた小説での主人公の原点がよく描かれていて、もしかすると最初からこのような設定があってから書いたのでは?と思わせるほど論理矛盾もなくよくできたものでした。
最後の決着の仕方には私的にはちょっと?でしたが、まぁ無難な収め方だったのでしょう。「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速見ファンならぜひ読むべき小説かも知れませんね。
◇著者別読書感想(海堂尊)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
傷痕 (講談社文庫)
今年NHKのドラマで2001年の作品「償い
「償い」もそうでしたが、家族の中に犯罪者がいたり、その家族と深い関係ができた時のことなどをリアル感たっぷりに描くのがうまい作家さんです。この作品も映画かドラマにするのには向いた作品ですので、そのうち実現するのではないでしょうか。
主人公と言えるのは二人いて、ひとりはある一家4人惨殺事件の主犯として死刑になった男が残した息子です。
ただ犯罪が起きた時にはまだ生まれていなかったこともあり、生まれてからすぐに養子に出されたので、過去のことはなにも知らされないまま大学生になっています。
もうひとりは刑務所で長く刑務官として勤務し、死刑囚の妻が生んだ子供(もうひとりの主人公)を、自分の親戚へ養子として斡旋した男性です。
そういう家族と親戚、養子などが複雑に絡み合い、ちょっと最初のうちは人間関係図がうまく描けずに、登場人物の誰と誰が親子、兄弟でというのが複雑でわかりにくいです。
つまり殺人を犯す二人の男性それぞれの家族、惨殺される弁護士一家、刑務官の親戚家族、死刑囚と内縁関係にあり子供を産んだ女性(1人住まい)、さらに惨殺された一家に嫁いだ妻の兄など。どこかに相関関係図を書いて欲しいぐらいです。
この小説に登場する死刑囚は、実は激しやすい義理の兄を抑えるために行動を共にしていた男性で、殺人事件の後には言い訳を一切せず、罪を全部自分でかぶって死刑が宣告されたという設定です。
それが主題ではないためか、結局最後まで誰が本当に一家4人を殺害したのかは謎のまま終わります。
そしてドラマが動き出すのは、無期懲役で服役をしていた、本当の主犯じゃないかと疑われる義理の兄(主人公からすると義理の叔父)が、20年間の服役後出所してきたことで、主人公の大学生が自分の本当の親とその過去を知ることになります。
また並行して、一家を惨殺された遺族も密かに復讐の機会を待ちわびています。このあたりから少々無謀とも思える展開が見られますが、ミステリー的な内容にするためには必要だったのでしょう。
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パーク・ライフ (文春文庫)
「パークライフ」は第127回芥川賞を受賞した著者の割と初期の作品で、2002年に初出、文庫は2004年に刊行されています。この本には表題の作品と、もうひとつまったく違う内容の「flowers」が収められています。
ここで言うパークとは日比谷公園を指していて、私も以前その近くで働いていたことがあり、周囲の風景描写などたいへん懐かしい思いで読むことができました。
内容は主人公の男性がよく待ち合わせやランチでよく使う日比谷公園のベンチで、時々見かける女性と地下鉄内でバッタリ出会い、近からず遠からずの会話が淡々と進んでいくちょっと風変わりな小説です。
中編小説としては気楽に読めていいのですが、「悪人
一方のもうひとつの作品「flowers」は仕事を辞め、夫婦で地方から東京へ出てきて、住むアパートが決まるまで高級ホテルで過ごしているという変わったカップルが主役です。
男は飲料水販売会社に就職が決まり、トラックで毎日配送の仕事に就き、女は劇団に入り役者の勉強中。そこに男の同僚に変わった先輩がいて、、、という流れですが、「パークライフ」と同様なにか尻切れトンボ的なモヤモヤが残ってしまう終わり方で、あまり好きにはなれません。
あ、いや、別に勧善懲悪、ハッピーエンドを所望しているわけではありませんが、こうした展開はこの著者の作品の特徴でもあるのでしょうね。それはそれで善とするしかありません。
◇著者別読書感想(吉田修一)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
スウェーデン館の謎 (講談社文庫)
1995年に発刊され1998年に文庫化されたミステリー小説です。作家有栖川有栖が一人称で作中に登場し、同級生の犯罪学者火村英生が事件の解決をしていくという「作家アリスシリーズ」または「国名シリーズ」と呼ばれている作品のひとつです。
事件は有栖川有栖氏が取材のために訪れた冬の福島磐梯山近くのペンション周辺で起きます。ペンションのすぐ近くにある童話作家の家(スウェーデン館)で殺人事件が起きます。
必死で犯人捜しの推理をするも、結局は京都大学の火村助教授に連絡を取ります。
詳しくは書きませんが、過去に起きた事件(事故)をずっと引きずり、その復讐や家族を守ろうとする家族愛など、複雑に絡み合いながら物語は展開していきます。
なぜスウェーデン館かと言うと、童話作家の嫁がスウェーデン人で、連れ合いを亡くした高齢の父親も呼び一緒に暮らしている家が、スェーデンから直輸入して建築されたもので、近所からはそのように呼ばれているという設定です。
著者は大阪出身で現在も大阪在住だそうで、その著作には関西が舞台のものが多いのですが、今回は遠く東北のしかも雪深い冬と言うことで、ちょっと不思議に思っていましたが、雪に残る足跡というのがひとつのキーとなり、なるほどと思いました。
関西で一日中雪が積もったままで残るということはまずないので、そのトリック?は使えませんからね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
本当は恐ろしいグリム童話 (WANIBUNKO)
「白雪姫」「シンデレラ」「カエルの王子さま」「青髭」「眠り姫」「ネズの木」の6編が収録されています。タイトルからわかるとおり、今では進んで子供に勧める童話ですが、最初に出した原作は童話とはいえ親が子供に読み聞かせるにはちょっとどうかという内容でした。その原作を元に書かれたのがこの作品です。
グリム童話の作者グリム兄弟は1800年代初期~中期にドイツで活躍しましたが、最初の「グリム童話」が発刊されたのが1812年のクリスマスということですから、今年のクリスマスでちょうど200年です。
おそらくはドイツではこのクリスマスには盛大な記念祭などが開かれるのでしょうね。
で、その内容ですが、例えば「白雪姫」では王様と王妃とのあいだにできた白雪姫が美しくなり(と言ってもまだローティーン)、王様が手を出し(小児愛好、近親相姦)、それに乗じた白雪姫は気に入らない家臣を殺したりわがまま勝手し放題。頭に来た王妃が森に連れ出して捨ててしまったところ、森に住む7人の年老いた小人達に救われ、料理や家事はもちろん、毎晩その夜のお相手も勤めて生き延びた。鏡の精に生きていることを知らされた王妃が物売りに化けて、毒リンゴを渡しそのリンゴを食べて死んでしまいます(親子殺人)。
死んだ白雪姫をガラスの柩に寝かせておいたら、ある日別の国の王子に発見され、死体を城に持って帰り毎晩愛でます(死体愛好者)。
気味悪がった家臣が寝台をひっくり返した際に喉に詰まっていたリンゴが取れて生き返るというストーリー。そして生き返った白雪姫は自分を殺そうとした王妃(実母)を拷問にかけて殺して(親子殺人)しまいます。
どうです。ちょっと子供には読んで聞かせられないでしょう?200年前とは言えなんと過激なことでしょう。
「シンデレラ」の場合は、エロチックと言うよりは暴力的で、ガラスの靴に合わせるために義理の姉たちは足の指やかかとを切り落とすというシーンや、めでたく王子に見初められて結婚式にやってきた義理の母や姉たちはシンデレラの味方の小鳥に目を突かれて失明してしまうとか。
おそらくこういう童話は元々子供のためと言うよりは、大人にも十分に面白く読めるように作られたのではないかなと勝手に想像しています。
そして子供には親がうまく端折って「親の話しに逆らうと捨てられるよ」とか「他人をいじめるとその他人に仕返しをされて傷つくよ」と言うような教訓を与えたのでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
本当は恐ろしいグリム童話〈2〉 (WANIBUNKO)
本当は恐ろしいグリム童話(2)では「ラプンツェル」「ヘンゼルとグレーテル」「三枚の蛇の葉」「ブレーメンの音楽隊」「人魚姫(アンデルセン童話)」「裸の王さま(アンデルセン童話)」「幸福な王子(オスカー・ワイルド童話)」の7編が収められています。
タイトルは「グリム童話」となっていますが、ネタが尽きたのかアンデルセン童話やオスカー・ワイルド童話も使われています。
いずれも誰もが知っている有名な童話ということですが、小学生の頃から三島由紀夫や芥川龍之介、川端康成等の小説が好きだった私はグリム童話はほとんど知らなかったりします。
特にこの(2)に収められている中では「ヘンゼルとグレーテル」以外は読んだり聞かされた記憶がありません。
で、いきなりこの書かれた頃の物語を読むと、いったい現代の作品とどのように違っているのかよくわかりません。
おそらくはエロチックなシーンや暴力シーンが綺麗に消えてなくなっていて、その他にも主役以外が実母が継母に変わっていたりするのでしょう。
そのあたり物語の最後に、少しだけ解説が書かれていて親切なのですが、やはり現代訳を読んだ人向けの解説なので、ちょっと物足りなさを感じました。
時代を感じる読み物ですが、逆に現代では出版物にも「公序良俗」を求められ、さらには「差別用語」が拡大解釈され、言葉狩りを恐れてか、もってまわった表現や言い回しが使われ、変な文章になってしまっていることもよくあります。
「ヘンゼルとグレーテル」は原作で実の母が口減らしのため子捨てをするのはあんまりだと言うことで、現代版では「継母」のいじめということになっているようですが、現実社会に於いても親が自分の子供をいじめて殺したり、逆に子供が実の両親に手をかけたりというのは決して珍しいことではありません。
少し前の作品ですが、私は今年の4月に「大人もぞっとする初版『グリム童話』―ずっと隠されてきた残酷、性愛、狂気、戦慄の世界
それよりかは解説もわかりやすいです。また2月に読んだ「九つの殺人メルヘン
今年は私にとってグリム童話発刊200年を記念してかグリム童話の大当たり年です。さすがにもう読まないでしょうけど。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
歩く影 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スペンサー・シリーズ21作目のこの作品は1994年に発刊(ハヤカワ文庫は2001年発刊)されました。今度のスペンサーの相手はアメリカ社会に根付く中国マフィア達との闘いです。
恋人スーザンが所属する劇団員が公演中に射殺され、地元警察は頼りにならないので、その犯人を追い詰めるため方々へ出掛けて蜂の巣を突きに回ります。
そうするとそれが気に入らない中国人マフィアのボスが出てきて最初は脅し、次には実際に若い殺し屋のベトナム人を使って襲撃を仕掛けてきます。
いずれも難なくしのいで、自分のケツを守るため、いつものように相棒ホークと、射撃の名手ヴィニイ・モリスを雇っていよいよ中国マフィアとの対決を仕掛けていきます。
銃を抜くのが速いはずのスペンサーとホークが半分ぐらい抜いたところでヴィニイがすでに3発撃って敵を倒すシーンなんかはゾッとします。
タイトルの「歩く影」(原題:Walking Shadow)とは、殺された劇団のメンバーが「何者かにいつもあとをつけられている」ということと、チャイナタウンに巣くう中国人マフィアのことを、とあるチャイナタウンに詳しい白人系の刑事が自分の親に言わせるとその存在が「歩く影」だと言っていたことによります。
スペンサーシリーズとしては比較的長めの小説ですが、その分読み応えがたっぷりで、最後まで事件の真相が謎でわかりにくく、20年近く前に書かれたものですが、意外と内容の古さは感じられず(ウォークマンやカーフォンなどが出てくるのはその時代の流行だったので仕方なし)、なかなかお勧めの一冊です。
それはそうと、このスペンサーシリーズ全39作中、現在文庫版が発刊されている38冊のうち、この本が36冊目の読了となりました(たぶん)。
新刊の「盗まれた貴婦人
あと残すはまだ文庫化されていない「春嵐」(没後発刊2011年)だけとなりますが、一度シリーズ全体を振り返ったまとめを書いてみたいと思っています。
◇著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)
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償いの報酬 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
アル中の無資格私立探偵「マット・スカダー・シリーズ」の長編は、この作品で17編に達しています。
アル中と書きましたが、警官だった頃に抵抗する犯人に向けて拳銃を撃った際、外れた弾が跳ねて近くにいた少女にあたり亡くなってしまい、それ以来の酒浸りが原因です。そして警察を辞め、私立探偵の資格を持たずに人から頼まれると受けるという都合のよい探偵業を始めてから、あることがきっかけで禁酒を誓い、AA(アルコール依存症の共同体)集会に毎日出掛けるようになったという変わり種ハードボイルド小説です。
ロバート・B・パーカーがボストンを中心に描いてきたように、古きニューヨークをこよなく愛し、NYが舞台の小説が多いローレンス・ブロックとの出会いは結構古く1993年に「おかしなことを聞くね
著者の作品は上記の「マット・スカダー・シリーズ」以外に「殺し屋ケラー・シリーズ」「泥棒バーニイ・シリーズ」等がありますが、「殺し屋ケラー」は必ず読み、「泥棒バーニイ」は過去に1冊しか読んでいないと好みが分かれてしまってます。特に理由はないのですが、殺し屋ケリーはユーモアのセンスがあり、また話しのテンポがよくってとても気に入っています。
もしまだブロック作品を読んだことがなければ、まず短編集の「おかしなこと聞くね」か、連作短編集「殺し屋
さて今回の作品は、年老いたマシュー(マットの愛称)と、友人でNYの酒場のオーナーミック・バルーと深夜にコーヒーを飲みながら、ずっと昔にマシューが出会った事件について話をするところからスタートです。
パーカーの「スペンサーシリーズ」はシリーズが書かれてきた約40年という長い期間は、小説の中ではせいぜい10年ぐらいしか経っていないようないつまでも若々しい設定でしたが、こちらはシリーズ1作目から35年が経ち、主人公もそれなりに歳をとったという設定のようです。
マシューが子供の頃、近所に住んでいて知り合いだった男が、刑事だった頃に強盗の容疑者として再会します。そして酒浸りになり警察を辞めてからまもなく、通っていた禁酒の会(AA集会)でバッタリとその男と出会うことになりますが、まもなくその男は何者かに殺されてしまいます。
ちょっとこのAA(Alcoholics Anonymous)集会に関する話し(どこの集会所へ行ったとか、どんな話を聞いたか、誰と話しをしたとか)が、長くしつこくて途中読み飛ばしたくなりますが、結論から言ってしまうとそれらはサクッと読み飛ばしても大丈夫です(笑)。そしてこうした過去に事件を回想して語るのは「聖なる酒場の挽歌
◇著者別読書感想(ローレンス・ブロック)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
熱帯魚 (文春文庫)
2007年に出した「悪人
この本には「熱帯魚」「グリンピース」「突風」のそれぞれ独立した3編が収められていますが、いずれもちょっと変わった若い男女の恋愛模様といったところでしょうか。そういえば「悪人」も同じように若い男女が織りなす恋愛が最終的には昇華していくところが描かれていました。
おおよそ一世代若い著者の作品には、やはり50代の私にはついて行けないようなところがあちこちに見受けられますが、それでも人間の卑しい感性や心理状態などを描く手腕は「うまいなぁ」と感心させられるところも多くあります。
「熱帯魚」では主人公の大工見習い中の若者と、子連れの元水商売をやっていた美人女性との恋愛と、そこに居候する引きこもりの義理の弟、近所で一人で住むゲイの大学教授などユニークな登場人物の設定で、淡々とした進行で退屈してきたところで主人公が大問題を引き起こし、同時に居候の弟が突然夫婦のお金を持って出奔するという流れでグッと引き締まります。
「グリンピース」では、唯一の親族の祖父が完全介護の病院で余命幾ばくもない状態の中、会社勤めを辞めて仕事もせずに彼女のマンションに入り浸っているというこれまただらしのない若い男性が主役です。「悪人」でもそうでしたが、主人公の男性はだらしなく、問題を起こし、一方その男性に惹かれている女性はしっかり者で美人とくるのはこの著者の既定路線なのでしょう。
「突風」は上記2つとの設定とはやや違い、金融関連のエリートサラリーマンがなにを思ったか夏休みを房総半島の海水浴場へ行き、突然泊まった民宿でアルバイトを始めるというありえねぇというストーリー。今どき都会の外車に乗るエリートサラリーマンが、外国にリゾートツアーをキャンセルして千葉の民宿はねぇだろと思いますが、ま、なんとなくそれなりに意外性でぶっ飛んでいて面白かったですけど。
◇著者別読書感想(吉田修一)
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英語ができない私をせめないで!―I want to speak English! (だいわ文庫)
2002年に出版された「ダーリンは外国人
傑作なのは旦那さんはアメリカ人ですが、日本語を含み数カ国語がペラペラなので、その妻である作者は普段英語を使うことがなく、またその必要にも迫られないので特に今まで英語が必要でなかったということです。そういうことってあるんですね。でも旦那さんの家族や友人などで日本語ができない人が周囲には多そうで、そういうときは困ったでしょうね。
しかしある日旦那さんから日本から出てそろそろ外国で暮らさないか?と言われ、それも悪くないかもと思いつつ、ハッと気がつくと英語すらできないことに気がつき、様々な英語の勉強法を調べ、取材も兼ねて?体当たりで英語習得法をいろいろと経験するという実話です。
ときたま雑誌やネット記事でもありますよね、「英会話学校へ行ってきた」とか「TOEICに挑戦」とか。なんとなくそのノリでちゃちゃと漫画風にしてみましたって感じです。
漫画風と書いたのは、本の中の3割ぐらいはイラストや漫画ですが、残りは読みやすい大きな文字で一応説明の文章となっています。1時間もあれば軽く読めてしまいますので、対象は文字がいっぱい書いてあるのを嫌う若者や、日々忙しい人向けかなという印象です。
自伝を漫画にして売るというのは以前読んだ細川貂々氏の「ツレがうつになりまして。
英語を学びたいから参考にしようという考えではダメですが、これを読んで思ったのは、中高年やビジネスパーソンだけでなく若い人の中にも英語の習得に散々苦心しているのだなぁという感想を持ちました。
■関連日記「英語の憂鬱」2012/8/25(土)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
水の手帳 (集英社文庫)
この「水の手帳」は1995年に初出(文庫は1998年)の作品です。1992年に「受け月
実は読了後にわかったのですが、この本は1998年に一度購入して読んでいました。読み出して最後まで気がつかなかったというのはいよいよ老人ボケが入ってしまったか、よほど印象に残らない駄作だったのか、その両方なのか。
同氏の作品ではよくある、若くて美人の女性が主人公で、様々な出会いや別れ、それになぜかその合間にヨーロッパの観光地が登場し、そこのうんちくを披露するという流れです。そう考えると宮本輝氏の小説となんとなく似ていて、過去に読んだ中にもこの二人の作品の区別がつかなくなることがあります。
ま、それはさておき、今回は出だしが軽井沢、そのあと実家の長崎へ飛び精霊流し、と思ったらパリへ飛んで古城を見学し、そこから南下して兄が暮らすアフリカはケニアへ。ケニアからいったんパリに戻って帰国してから成田へ戻ると、空港からそのまま北海道へ、さらには実父らしき人を訪ねて韓国へとめまぐるしく舞台が変わっていきます。これほど舞台が次々と変わるのは007シリーズぐらいしかありません。
著者自身が韓国系日本人2世ということもあり、その血脈については深い思い入れがあるのでしょう。この小説では主人公の女性が母親が亡くなるまで知らなかった自分の本当の父親が韓国にいるらしいという手掛かりをつかみ、訪れて最終的には再会するというストーリーです。
感想はと言うと軽快で都合よくできた小説で、過去に読んだ著者の14冊(12話)の作品と比べると、残念ながらあまり誉められたものではありません。やっぱりなんとなく著者とタイトルに惹かれて買ってしまった本は当たり外れがあるものです。
◇著者別読書感想(伊集院静)
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鉄の骨 (講談社文庫)
2010年に放送があったNHKの3夜連続ドラマの原作で、主演には小池徹平が出ていました。そのドラマは全部を見られなかったことと、小説とドラマでは受ける印象が違うことを知っているので、原作本をじっくり読んでみることに。おおよそのエンディングを知っていただけに読むのにちょっと躊躇はありましたが。
この著者池井戸潤氏の小説は「果つる底なき
2010年には「下町ロケット
今までの著者の作品を見ていると、その多くは「沈まぬ太陽
「鉄の骨」の主人公は中堅の総合建設会社に入社した20代の男性。技術系として建築現場で働いていたところ、本社業務部への異動が発令されます。この業務部というのは公共事業の発注において業界各社と談合をとりまとめるセクションで、正義感あふれる主人公がサラリーマンとしての立場とのあいだで葛藤があり、その中でもがく姿を描いています。
この談合については一般的な知識では業界がより高い利益を得るためにおこなわれる絶対悪という側面だけが知られていますが、一方の業界事情として、果てしない値引き合戦で企業が疲弊してしまう無茶な競争をおこなわず、業界の健全な発展のために適正な価格で落札してこそ生きていけるという必要悪だという論も紹介されています。つまり無理して競争すればするほどその下請けや孫請けににしわ寄せがいき、やがては工事の完成を見ずに破綻してしまうことになると。ま、業界の外から見ると、その論にはちょっと無理があるのはやむを得ないところです。
そして談合の行き着く先は役人や政治家が自らの利益のためにそれに関わってくる、いわゆる官製談合となり、そこに根が深い問題があると語っています。
◇著者別読書感想(池井戸潤)
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日本大転換―あなたから変わるこれからの10年 (幻冬舎新書)
自身が書いた新書なので、文中には「俺はこんなに偉いんだ」「こんな有名人とも友達なんだ」ともとれる記述が全体に散りばめられていますが、「2004年1月12日発売の米ビジネスウィーク誌が選ぶ「世界最悪の経営者」に選定、また日本の『日経ビジネス』2005年12月12日号においても三洋電機の井植敏、ライブドアの堀江貴文らを抑え、「国内最悪の経営者」ランキング第1位に選ばれている。」(wikipedia 2012/10/1時点)とか、「2003年のソニーショックを受け、出井らが示した経営再建計画の達成が困難を増す中、ソニーの現職社員・OB、国内外の経済メディア、ソニー製品の愛好者など各方面から激しい退陣要求が噴出していた。」(同)など、今のソニー凋落の主因を作ったと考えられる経営者でした。
いずれにしても落ち目になってしまった日本経済界を代表する経営者であることは間違いありません。
バブル崩壊後の1995年に社長就任し、その後株価が大暴落した2003年のソニーショックを引き起こし、ITバブルもはじけてしまった2005年までの10年間のあいだ社長やCEOとして君臨し続けていたタイミングが悪かったんだとも言えますが、ソニーを情けない会社にしてしまった責任は大きいです。
やり方さえ間違えなければ、今のアップルのようになっていたかもしれないわけで、そのチャンスはいくらでもありました。
さてこの新書では著者の経営者時代からの持論でもある物作りからコンテンツビジネスへの転換とアジア戦略がキーワードとなっています。この新書が発刊された2009年時では当然とも言える話しです。しかしソニー元社長としてはやはり物作りを通じてどう日本を変えていくかという話しをみんな聞きたいのではないでしょうか。
IT系の話しとなるとさらに?で、ビルゲイツとはお友達だと言いつつ、自分が社外取締役として関係する会社の手のひらサーバ「サーバーマン」をやたらと持ち上げてみたり、先を読む力や技術的な話しはあまり期待しない方がよさそうです。
ちなみにサーバーマンはいまでもサービスはマニア向けに細々続いているようですが、これが注目されることは永遠になさそうで、いつまで持つかというところでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
沈黙 (ハヤカワ・ミステリ文庫 スペンサー・シリーズ)
1999年初出、日本語文庫版2005年発刊のスペンサーシリーズ26冊目の本で、原題は「Hush Money」口止め料という意味です。口止め料を払うから沈黙なのか、口止め料を払ったことを沈黙するのかよくわかりませんが、ま、そのような内容です。
10月前半に読んだ「ダブル・デュースの対決
つまり相棒ホークから、知り合いの黒人の教授が、生徒と不適切な関係を結んでいたと告発がありピンチに立たされていると相談をされ、お金になりそうもないそのその事件を調べることになります。
と、同時に恋人スーザンからも「友人がストーカーに悩まされている」と相談され、それにも並行して応えることになります。
この全然関係のないふたつの事件を調べていくわけですが、ミステリー小説ファンならば、別々で起きたそのふたつが、最終的はつながっていくと推測するでしょう。私もそう思いましたが、それはありませんでした(笑)。それぞれを別々にスペンサー風に解決していきますが、なぜ同時進行にしたのかは不明です。
アメリカ国内の黒人とゲイ、それぞれがまだ社会問題として存在しているという問題提起でもありますが、単なる表面上の描写だけでなく人の心の奥深くまでを探っていくところにこの小説の素晴らしいところがあります。
あと謎の多いホークの少年~青年時代の話しが少し出てきます。これはホークファンにとっては見逃せない作品でしょう。
◇著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)
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さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー
ハードボイルド的男臭さ満点小説
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)
2010年に二宮和也主演の連続ドラマとしてテレビ放送されていましたが、放送時間帯が悪くて真ん中あたりの1話しか見ることができず、ぜひ原作小説を読んでみたいと前から思っていました。それから2年、2012年8月にようやく文庫化されていることに気がつき買ってきました。
タイトルから想像すると「フリーターが努力して、お金をいっぱい貯めてついには夢のマイホームを手に入れる」「フリーターでも頑張れば夢はかなうんだ!」的な物語に見えますが、小説ではフリーターに主題があるわけでありません。
仕事とつき合いばかりで家庭を見向きもしない父親と、大学卒業後就職した会社を3ヶ月で辞めてしまい、その後は定職に就かず短期間のアルバイトを繰り返す主人公の息子。頼りになる姉は結婚して名古屋へ行ってしまい、家庭はバラバラになっていきます。
引っ越してきてから続く隣近所から嫌がらせや、姉が嫁いでから家庭が崩壊気味になってしまったことにより、主人公の母親が、重度のうつ病を患ってしまい、それまでいい加減な生活をおくってきた主人公が目覚めていきます。
そしてやがては家庭を顧みなかった父親までが、看病に奔走し、そして最終的に母親の病気の原因でもある、今の生活環境を変えようと、収入のいい土木作業員をしながらお金を貯めようと決意します。
この本の中では、2流大学を出た後の就職先をなんとなく3ヶ月で辞めたあと、簡単に見つかると甘く考えていた再就職先が決まらず、様々なアルバイトでフリーターをズルズルと続けてしまい、それがまた再就職の障害となっていることに追い込まれて初めて気がつくという、どこにでもいそうな今の若者の姿を描いています。
ただそこから違うのは、父親の機嫌を取るためだったのですが、再就職活動において、厳しい会社人間の父親からアドバイスをもらうという行動に出てから、一気に前に進むことになります。同時にアルバイト先の土建会社にも正社員としてスカウトされることになります。そのあたりはちょっとうまくいき過ぎな感じも。
「阪急電車
あと知識として「第二新卒の再就職」「フリーターから正社員への厳しい現実」「重度のうつ病患者との接し方」など役に立つ話しも満載で、ぜひ「就職したてで辞めたくなった若い人」や「うつ病かも?という家族を持つ人」「これから就職をする人」などが読んでも参考になるかもしれません。ま、現実はドラマのようにはうまくいきませんけど。
◇著者別読書感想(有川浩)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
看守眼 (新潮文庫)
「第三の時効
今回の各作品でもそうですが、決して警察関係だけではなく、人間魚雷回天搭乗員を描いた「出口のない海
この短編集でも、各編の主人公は看守、フリーライター、家裁の家事調停委員、警察官(管理部門)、新聞社整理部員、知事秘書とバラエティに富んでいます。
横山氏の小説の多くはすでにドラマ化や映画化されていますが、そういったエンタテインメントに向いた作品なのでしょう。
この「看守眼」の短編作品に登場する「気持ち悪い人」=元刑務所看守もドラマにすれば意外性があって面白いかもしれません。
よく短編小説といえばそれぞれにつながりがあったり、登場人物が同じだったり、中には前の短編の主役がカメオ出演したりと、読む人を楽しませる趣向がありますが、この短編集では各編ともまったく独立しています。
それだけに、立て続けに読んでいると、時々あれ?と登場人物が混乱したりすることもありますが、それぞれによく練られ、どんでん返しがあり、人間心理をよく突いた作品です。
◇著者別読書感想(横山秀夫)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二度はゆけぬ町の地図 (角川文庫)
2010年に「苦役列車
初期の作品の多くは私小説で、この作品でも「貧窶(ひんる)の沼」では17歳、「春は青いバスに乗って」では25歳、「潰走」では16歳、「腋臭風呂」は18歳の頃の話しが描かれています。
いずれも貧しくアルバイトや日雇いの仕事をしながら、様々な人との出会い、別れ、憎しみ、後悔、怒り、喜び、諦めなどを、大正時代か昭和初期の頃の作家のような文体で書かれています。フィクションの形をとりながらも、惨めで恥ずかしこともあけすけに書けるところは、並の純粋培養された若手作家ではありません。
特に面白かったのは「春は青いバスに乗って」で、青いバスというのは容疑者や犯罪人を検察庁や裁判所に送る際に使われている窓に網のついた警察のバスのことです。
そのバスに乗ることになったのはつらく当たるバイト先の先輩社員と喧嘩となり、とめに入った警察官を誤って殴って怪我をさせてしまい、普通の喧嘩ならば一晩泊められて厳重注意ぐらいで済むところ、拘置所に長く留め置かれ公務執行妨害の容疑で何度も取り調べを受けることになる自伝的短編小説です。
拘置所の中では麻薬常習者や強盗容疑で拘置されている容疑者達と同室となり、もっと互いに無関心なのかと思っていたら、案外そうでもなく単なる「傷害」と「公執」では天地の差があることや、当番弁護士に相談するだけなら費用はかからないこと、拘置所と刑務所では居心地が全然違うことなど様々なことを知ることになります。
結果的には最後まで「公執」ではないことを主張し、当番弁護士と会ったこと、取り調べ時に言われた暴言を表沙汰にするという脅しなどが効を奏してか、罰金刑だけで済むことになります。
このあたりも、著者というか小説の主人公が、当時は決して大物にはなれそうもない、中途半端でいい加減な生き方をしていたというのがよくわかります。いや、決してけなしているのではなく、終戦直後でもなく、日本全体がイケイケムードのバブル期まっただ中において、このような無頼で貧しい若者の姿を描いたものを今まで読んだことがなく、いたく感心したのです。次は「苦役列車」を買ってこなければ、、、
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BRAIN VALLEY(新潮文庫)
ちょっと古い1997年発刊(文庫は2000年角川、2005年新潮)のSF小説です。瀬名秀明氏と言えば大学院在学中に書いたというデビュー作「パラサイト・イヴ
テーマは「脳科学」ですが、「パラサイト・イヴ」でも見せたエンタテインメント性が豊かなSF小説です。ただ出てくる用語が馴染みの少ない専門用語が多く、著者も苦労して小学生の子供まで登場させて難解な仕組みをわかりやすく説明したりと工夫の跡が見られます。
その難解さゆえか、それとも終盤の奇想天外な展開が受け入れられなかったのか、あまりヒットはしませんでした。しかし脳科学に興味のある人は様々な実際の研究論文などがいくつも登場し、興味深く読めるでしょう。その点はさすがに大学院で薬学を究めた方です。
内容を書いてみようとジッと考えてみたのですが、それが思うようにいきません。ま、SFの場合は前提条件などからしてどう説明すればいいのか分からないことが多く、短文で説明するのは非常にたいへんです。
そういう時は、それだけはやるまいと決めていたAmazonの内容から抜粋です。
「山奥の最新脳科学総合研究所「ブレインテック」。脳科学者の孝岡は、同研究所所長の北川の指名を受け、この地に赴任する。到着早々に目撃した若い女性の身体から放たれた白い光。が、不思議な体験はそれだけではなかった。孝岡は、エイリアンらしきものに拉致され、生体実験を施されてしまう。しかし、それらの超常現象も、この地で行われている数々の研究も、すべては人類を更なる進化へと導く壮大な計画の一環でしかなかった。人類の根元を司る「脳」に最先端の科学理論で迫り、オカルト現象をはじめ様々な謎を解き明かす究極のサイエンス・フィクション」
はぁ、なるほど、こういうあらすじになるわけですね。確かに「脳科学」という論理的なサイエンスでありながら、超常現象などオカルト的な雰囲気も併せ持ったSFで、医学とオカルトの融合という点で、先駆者として「ジュラシック・パーク
◇著者別読書感想(瀬名秀明)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
風紋 (双葉文庫)
この「風紋」は1994年に初出の長編小説です。乃南アサ氏の小説では過去に「暗鬼
女性、しかも今や絶滅種に近くなってきた専業主婦が主役の作品は最近は少なくなってきましたが、まだ1994年当時にはそう珍しくはなかったのでしょう。その主役かと思っていた専業主婦が序盤であっけなく殺されてしまい、主役の座は高校生の娘へと変わっていきます。
殺された家族と、殺した側の家族それぞれが苦悩する人間ドラマで、被害者と加害者の家族が、事件が起きてから裁判で決着がつくまでの長いあいだ置かれる立場や心境を描いています。そして家族以外の第三者的な立場として事件に最初から関わる新聞記者が客観的に見つめていきます。
ま、いってみればそれだけなのですが、先日読んだ湊かなえ氏の「夜行観覧車
途中から主人公となる女子高校生の姉は、母親が生きている時には、親に反抗し怒鳴り散らす手の付けられない異常性格だったのが、母親が亡くなってからはうってかわってしおらしく家事なども手伝うようになったのはどうも変な感じで納得ができません。
本当ならば、執拗なマスコミの取材攻勢を受け、母親が殺された遠因に自分が二浪生活をして多大な迷惑をかけていたということもあり、本来ならば責任を感じて家を飛び出すか、逆にもっと荒れた生活をおくるのが普通のような気がします。さすがにそこまで拡げてしまうと焦点がぼけると考えたのか、ちょっと物足らなさを感じてしまいました。
◇著者別読書感想(乃南アサ)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ダブル・デュースの対決―スペンサー・シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スペンサーシリーズ第19作目で、1992年の作品です。いつもなら主人公の私立探偵スペンサーが依頼者から捜査や人捜しを頼まれ、当初は単独で動き始め、途中からホークに助っ人を頼むという流れですが、この作品では珍しくホークがテレビ局に勤める友人の女性のためにスラム街団地「ダブル・デュース」で暴力犯罪組織をつぶすため、逆にスペンサーを助っ人に雇うというストーリーです。
スペンサーはホークからこの仕事の手助けを頼まれたとき、報酬は半分と主張しますが、ホークからはそれだけの価値はないと一蹴され三分の一で受けることに。この絶妙感がたまりません。結局は報酬は元々ゼロだったので、半分でも三分の一でも変わりはなかったんですけどね。
この小説に出てくる不良グループのリーダーは、その後「スクール・デイズ
恋人スーザンとの関係では、この回でトライアル的にスーザンのアパートで同棲生活を始めますが、結局はうまくいかず元のアパートへ帰ることになります。それは最初から見えていましたけどね。
■スペンサーシリーズ関連過去記事
スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
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