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ローレンス・ブロック傑作集〈3〉夜明けの光の中に (ハヤカワ・ミステリ文庫) ローレンス・ブロック

1993年に発刊された3作目となる短編小説集で、著者が創り出したキャラクターの探偵マット・スカダーや泥棒バーニイ、殺し屋ケラーなど20編が収録されています。

前の短編集2作品も同様ですが、出来の良い作品とそうでない作品の差が大きくて、ワクワクする短編もあれば、あくびが止まらない駄作も混じり、無理して20作も入れなくてもよかったのでは?と思ってしまいます。

しかし私はその良作のひとつ、1993年に読んだ「おかしなことを聞くね ローレンス・ブロック傑作集1 (ハヤカワ・ミステリ文庫)」(1983年)を読んで、マット・スカダーのファンとなりました。

元アル中探偵マット・スカダーに惚れる 2017/5/20(土)

短編それぞれのタイトルを書いておくと、

(1)夜明けの光の中に(2)夢のクリーヴランド(3)男がなさねばならぬこと(4)名前はソルジャー(5)魂の治療法(6)エイレングラフの選択(7)胡桃の木(8)泥棒はプレスリーを訪問する(9)交歓の報酬(10)死にたがった男(11)慈悲深い死の天使(12)タルサ体験(13)いつかテディ・ベアを(14)思い出のかけら(15)ヒリアードの儀式(16)エイレングラフの秘薬(17)フロント・ガラスの虫のように(18)自由への一撃(19)どんな気分?(20)バットマンを救え

(1)と(11)と(20)がスカダー、(8)がバーニー、(4)がケリーの短編作品です。

また、前の短編集(傑作集)でお馴染みとなった、手段を選ばず必ず無罪を勝ち取る弁護士エイレングラフはこの短編集でも(6)と(16)に登場します。(6)では、女中が見ている前で、資産持ちの夫を自分の拳銃で撃ち殺した妻を無罪にしてしまう敏腕ぶりには大笑いできます。

(11)の「慈悲深い死の天使」(The Merciful Angel of Death)は、著者の長編作品の中に「慈悲深い死」(Out on the Cutting Edge 1989年)というのがあって、それとの関連を想像していましたが、原題を見れば明らかで、まったく関係のない作品です。なぜ長編の「Out on the Cutting Edge」が「慈悲深い死」という超訳タイトルになったのかは不明です。

それぞれの短編小説を読んで思わずニタリとできるのは、やはりスカダーにしろ、バーニーにしろ、ケラーにしろ、エイレングラフにしろ、主人公の特徴をある程度知っておく必要があるでしょう。

お手軽な短編から入って、気に入った主人公の長編を買って読むというのもアリですが、マット・スカダーシリーズは、主人公にそれなりの歴史があるので、やはり初期の作品「八百万の死にざま」(1982年)あたりを先にたしなんでおいてから読むとグッと楽しさが増します。

★★☆

著者別読書感想(ローレンス・ブロック)

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山猫の夏 (講談社文庫)(上)(下) 船戸与一

著者は多くの小説を書き、2000年には「虹の谷の五月」(2000年刊)で、直木賞を受賞されていますが、惜しくも2015年に71歳で亡くなられた作家さんです。

調べてみるとまだご健在だった2005年に「金門島流離譚」(2004年刊、文庫は2007年刊)という小説を読んでいます。次は今さら感がありますが直木賞受賞作品を読んでみたいです。

この著書は、1984年に単行本、1987年に文庫化され、吉川英治文学新人賞などを受賞した著者の初期の作品で「虹の谷の五月」や「砂のクロニクル」とともに、著者の代表作と言われている作品です。

主人公は日本人ですが、舞台はブラジルです。叔父を頼ってブラジルへ渡った日本人が、亡くなった叔父の妻がやっているバーを手伝っているところに、山猫と名乗る日本人が現れます。

そこはブラジルでもサンパウロのような大都会ではなく、長くいがみ合う二つの名門家が対立している地方の小さな町で、両家をゆるがす大騒動が起きたために、ならず者の助っ人を呼び寄せ、戦闘態勢に入ろうとしています。

山猫はその二つの名門家同士で徹底的につぶし合わせ、さらに武器の横流しなどで儲けていた警察や軍部も関わらせて、漁夫の利を得ようとするわけですが、なにか黒澤明監督、三船敏郎主演の映画「用心棒」をちょっと彷彿させますね。

なぜその山猫という日本人がブラジルに移住したのかなど、日本とブラジルの関係、ブラジルに移住した日本人達の苦難の歴史などもわかる興味深い小説です。

★★☆

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人間の分際 (幻冬舎新書) 曾野綾子

2015年刊の新書で、過去に著者が書いてきた短文をカテゴリー別に寄せ集めしたようなものです。

通常「分際」の使い方としては「学生の分際で~」と言うように、あまり肯定的、良心的なことばではなく、否定的に使われることが多そうです。

言葉の意味は、 (1)身分の程。身の程。ぶん。 「子供の-で生意気なことを言う」(2)それぞれの人や物に応じた程度。また,物事の程度や状況。 (Weblio辞書)ということで、タイトルの「人間の分際」とは、「それぞれ人は自分の身の程を知るべし」と言ったところでしょうか。

自分の身の程以上に無理をして、背伸びをしてつまずいたり、病んでしまったり、家族や他人に迷惑をかけたりすることって割とありそうです。

さすがに亀の甲より年の功ということで、御年86歳ますます意気軒昂な著者の過去の発言の集大成とも言える、暴走しがちな若い人(著者からすれば60歳でも若い人になる)に対する戒め本ってところでしょうか。

★☆☆

著者別読書感想(曽野綾子)


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