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高齢化社会となっていく中で、様々な問題、例えば年金不足や医療費増大、労働人口や国内消費の減少、認知症患者の増加、介護士や介護施設の不足などいろいろとありますが、その中でも高齢者だけの世帯や高齢者がひとりで住む高齢単身者世帯の増加が気になっています。
孤独死の問題は数年前からNHKが盛んに取り上げたおかげで、人間関係が希薄な都市部においても住民同士や地域コミュニティ、行政の福祉サービスが巡回サービスをおこなったり、隣近所同士で声掛けするなど、少しずつでしょうけど改善が進んでいるように見えます。十分といえるかどうかは意見が分かれるでしょうけど。
認知症患者の自宅介護のたいへんさについては、まだ根本的な解決には至っていませんが、様々な問題があることは知られ始めています。
また認知症ではない元気な高齢者を遠方にいる家族が見守るための様々なシステムや製品、サービスが次々と登場しています。これからもこの分野は急速に進んでいくことでしょう。
現在は裕福な家族に限られますが、いずれは公的な補助が受けられるようになるかもしれません。
しかし、私が高齢者世帯、特に単身高齢者世帯が増えることで、心配していることがあります。それは火事です。
最近の火事のニュースを見ていると、出火元の住人とその火事による死亡者(同じ場合が多い)は高齢者が大多数を占めているような気がします。
そこで公開されている昨年のデータを調べてみました。下記はすべて総務省消防庁の「平成25年(1月~12月)における火災の状況」から抜粋したデータを使っています。
まず公表されている火災データから、建物火災の発生件数推移と、住宅火災の出火原因の割合です。
車両火災や林野火災などすべての火災発生件数を入れると昨年よりも増加(+4千件)していましたが、建物火災はここ6年間減少傾向にあります。それでも一昨年2013年の建物火災発生件数は全国で約2万5千件、1日平均68件起きていることになります。
建物火災に含まれる住宅火災(13,574件、54%)の出火原因で多いのは、こんろ(2,528件、19%)、たばこ(1,706、13%)、放火・放火の疑い(1,735、13%)、電気/配線(1,431、10%)、ストーブ(1,137、8%)と続きます。
ストーブの火災は冬の間だけのことでしょうから、もし冬期(12~3月)だけのデータをとってみたら、こんろを抜いてトップに躍り出ると思われます。なので冬に限って言えば「ストーブ・こんろ・たばこ・放火」が4大原因と言えそうです。
それにしても住宅火災においても放火、または放火の疑いというのがかなりの高率を占めています。住宅に限らず、全出火原因でみると放火、放火の疑いが断然トップになります。家の周囲に燃えやすいゴミなどを置かない以外、なかなか自分では注意しようがないだけに、対策や対応が難しいですね。
意外だったのはこれだけ禁煙がブームになって喫煙率が下がってきているというのに、たばこが原因での火災が住宅火災で3位(13%)、住宅に限らずすべての火災の出火原因では2位(9%)というから驚きです。
そのうち嫌煙権は内容を変えて嫌火権になるかも知れません。JTも街のあちこちに喫煙所を設けるよりも、喫煙者に消火器を配るなどのキャンペーンをおこなったほうが世の中のためになりそうです。
あと原因が不明というのが3割近くもあるというのも不思議です。出火元の住人が死亡してわからないということもあるでしょうけど、これだけ科学が進歩していても燃え尽きてしまって崩れ落ちた火災現場では、その原因を特定するのが難しいのでしょうか。
次に「住宅火災における経過別死者の割合」、わかりやすく言えば「死亡理由の割合」と、「住宅火災における年齢層別死者割合推移」です。
上のグラフは、死亡に至った理由というか原因で、半数以上が「逃げ遅れ」です。これを避けるために、今は新築住宅においては火災警報機の装着が義務づけられているのでしょう。
着衣着火による死亡も目立ちますが、これだけ寝具や衣料にポリエステルやアクリルといった燃えやすい素材の製品が増えてくるとさもありなんです。私はパジャマはできるだけ化繊ではないものを選ぶようにしています。
下のグラフは火事による死亡者を6歳~64歳までと65歳以上に分けて11年間の推移をみたものです。
ここ2~3年のあいだに団塊世代がすべて65歳以上になり、高齢者の割合がいっそう増えたという理由がありますが、それにしても、11年前はそれぞれ50%近くで大差なかったのが、一昨年2013年は29%と71%と2倍以上に大きく拡がっています。
現在では住宅火災が起きて犠牲者が出ると、その中の70%以上が65歳以上の高齢者ということですが、全人口に占める65歳以上の割合は昨年2014年で26%ですから火事での高齢者死亡の割合が突出して高いことがわかります。高齢者が犠牲になることが多い交通事故の死亡者の割合でも65歳以上の高齢者は53%です。
このことから先述した「出火元の住人とその火事による死亡者(同じ場合が多い)は高齢者が大多数を占めているような気がする」という感想に合致しそうです。
これはいったいなにを意味するのでしょうか?
詳しくはこの総務省のレポートでは触れられていませんが、考えられるのは、「寝たきりの高齢者が増えて逃げ遅れる」「高齢者だけの世帯や高齢者単身の世帯が増え、身近に救助する人がいない」「高齢者世帯の家から出火する」のみっつが大きいのではないでしょうか。
そしてこの「高齢者だけ世帯の増加」や「単身高齢者の増加」は今後も続きますので、この傾向は今後も続く可能性が高そうです。これは消火器を備えたとか、火災報知器を付けたから安心というものではありません。
そしてこれからは介護施設の不足から、認知症患者の自宅介護の割合が高くなりますが、そこで起きる火事が増えてくる可能性があります。つまり、認知症患者がコンロやストーブを点けたまま、忘れて外出したり寝てしまったりすることで起きる火災です。
こればかりは家族も24時間ずっと行動を見張っているわけにもいきませんし、また火事が出ると延焼の被害を受ける近所の住人もどうすることもできません。寝たきりでなく行動する元気な認知症患者で特に怖いのが、行方不明になったり交通事故の原因となる徘徊と、そしてこの出火です。
いずれにしても、高齢者が加害者にも被害者になりうる火災事故は、今後高齢化社会の中では大きな問題として考えるべきです。先日も団塊世代が75歳以上になる10年後には認知症患者は700万人を超えるという試算が発表されました。
例えば高齢者だけの家には石油やガスのストーブではなくエアコンを設置、コンロも電気式の自動停止付きのもの、簡易型の消火用スプリンクラーや火災警報機の設置などを義務づけ同時に設置費用を全額補助をするとか、認知症患者のいる家からマッチやライターなどの排除など、例え故意でない無意識な状態であっても火災を起こさない、起きない、万一起きても近所にすぐ警告や通報が行く生活空間を提供していくしかないでしょう。
最後に、2013年の「出火率」と「(火災による)死亡率」の都道府県別順位一覧です。
火事の発生件数(出火件数)は人口が多い東京都、愛知県、千葉県などが多いですが、「出火数÷人口」の出火率で見ると(1)山梨県、(2)島根県、(3)高知県、(4)長野県、(5)宮崎県の順位となっています。逆に出火率が低いのは(43)石川県、(44)神奈川県、(45)新潟県、(46)京都府、(47)富山県です。
これらから出火率と高齢化率になにか因果関係があるかどうかは不明ですが、なんとなく高齢化が進んでいる地域の出火率が高い傾向にあるような気もします。
火事による死亡者数が多いのは人口が多い神奈川県、千葉県、東京都などで、人口で割った死者率で見ると、高いのは(1)青森県、(2)高知県、(3)和歌山県、(4)山形県、(5)香川県の順になります。逆に死者率が低いところは(43)広島県、(44)大阪府、(45)埼玉県、(46)沖縄県、(47)東京都です。
こちらは死者率の上位5県と下位5県を見ると、明らかに「高齢化率が高い=火事による死者率高い」「高齢化率低い=火事による死者率低い」に合致しているようです。高齢化と火災事故による高齢者の死亡(率)者増加とは因果関係がありそうです。
先日NHKスペシャルで高齢化に伴う「空き家問題」が取り上げられ、高齢者は「住み慣れた場所に住み続けるのがなぜいけないんだ」、若い人は「わずかな住人のために巨額のインフラ整備をしなくてはならず、それに税金をつぎ込むのは嫌」と意見が分かれていました。
「高齢者の命を守る」ためと「行政の都合上」で言えば、消防車や救急車が駆けつけるのに何十分もかかる離れたところに住むのではなく、高齢者にはコンパクトシティのようなある程度まとまった地域に移り住んでもらうのが、防災、介護、医療など様々問題に対処するのにいいのでしょうね。
【関連リンク】
876 介護にまつわるあれこれ
872 高齢者支援だけが本当に手厚いのか
825 行方不明者と顔認識システム
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
800 高齢化社会で変化している交通事故の統計を見る
740 高齢者の犯罪が増加
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羊の目 (文春文庫) 伊集院静
最近著者の作品で目に付くのは女性が主人公で甘ったるい恋愛ものが多く、食傷し少し敬遠気味でしたが、「これぞ待っていました!」といえる、人間味あふれるハードボイルド的な小説で、2008年単行本、2010年に文庫化されました。
侠客と言うと「ヤクザとどう違う?」とか「昔のギャンブラーでしょ?」とか言われそうですが、正式には「強きを挫き、弱きを助ける事を旨とした任侠を建前とした渡世人の総称」(wikipedia)ということで、江戸時代から昭和初期頃までに流行った伊達で粋な男の生き方を具現化した言葉です。
世知辛い自己中の今の世の中ではすでに死語となっていますが、実在した人物としては会津小鉄、国定忠治、清水次郎長など、フィクションでは木枯らし紋次郎などが侠客と言えます。
昨年亡くなった高倉健さんがデビュー初期の頃に演じていた役もそれに近いものがありそうです。
その侠客、任侠の世界とハードボイルドを描いたのがこの作品で、まだ日本が貧しかった戦前に生まれ、夜鷹だった母親に捨てられた子が成長し、育ててくれた親を命を賭けて守り抜くことを唯一の生き甲斐とし、汚れ仕事を引き受け、殺人罪で刑務所にもつながれ、戦後のヤクザの縄張り争いに巻き込まれます。
そしてその親にも裏切られ、果てはアメリカへ逃げたあとも地元のマフィアと血を血で洗う戦いに発展するという壮大な男の生き様を描いています。
ちょっと話しが時代を一気に飛び過ぎるきらいがありますが、それだけスピード感があって、430ページはあっという間に読む終わるなかなかワクワクする面白い小説でした。
◇著者別読書感想(伊集院静)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫) マイクル・コナリー
ボッシュシリーズの8作目で2002年の作品で日本語版は2005年に発刊されています。530ページを超える長編で、起承転結が丁寧に書き込まれていて、私にとってはこれぐらいがちょうどいい長さです。
ストーリーはロス郊外の住宅地の森の中から、近くの住人の犬が人間の骨を加えて戻ってきたことから20年前に起きた殺人事件が明らかになってきます。
20年前の骨の特定について、その行方不明者が簡単に判明するところは都合良く端折りすぎって気もしますが、その発見された骨によって、近隣に住む前科がある住人が自殺に追い込まれ、また別で捜査に当たっていた警察官が犠牲となります。
概ねこのシリーズはそうですが、主人公(ボッシュ刑事)の過去のいきさつを知らなくても、単独でも十分に読み応えがあり、楽しめます。それで面白いと思えば、過去にさかのぼってみるもよし、さかのぼらずに新しい巻を読むもよしです。
この8作目ではボッシュは離婚後の1人住まいで、事件現場で知り合った、既婚の新人女性パトロール警官に一目惚れをしてしまいます。
そして会ってすぐに自宅へ連れ込み、やがては警察署中に知れ渡るという軽率で妙な行動を起こします。
強いヒーローを描くのに疲れたのか、ちょっと色気を出したかったのか、不明ですが、その女性警察官が変な死に方をすることで、事件はボッシュの活躍で無事に解決しても精神的に重い荷物を背負うことになり、最後はロス市警を自主的に退職することになります。
◇著者別読書感想(マイクル・コナリー)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書) 浅川 芳裕
著者の浅川氏は1974年生まれの雑誌「農業経営者」の副編集長で、株式会社農業技術通信社の専務取締役です。
いわゆる農業ジャーナリストといったところでしょうか。この本は2010年に発刊されていますが、その後もこの手の本を出しておられ、2012年には続編とも言える「TPPで日本は世界一の農業大国になる」が発刊されています。
普通、記者やライターとして農業行政について書く場合、農林水産省やJA(農協)の発表することをそのまま書くことで楽もできるし、お金も得られるというものです。
この著者はタイトルを見てわかるように、真っ向そうした機関や組織を糾弾し、過去から延々と続けられている既得権益などに舌鋒鋭く批判をしていて、「おいおい、そこまで言っていいのか?」ってちょっと心配になったりします。
例えば、日本の農業は中国、アメリカ、インド、ブラジルに次いで世界第5位の生産額があり、先進国の中ではトップランクであるに関わらず、世界でも日本しか使わないカロリーベースの自給率を無理矢理官僚が算出して、自給率が30数パーセントしかないというのはナンセンスとしています。
自給率をカロリーベースに変更したのはそのほうが自給率が低く見えるからだそうです。
国が使うカロリーベースでの算出でおかしいのは、カロリーが低い野菜や果物は低くなりいくら作っても数字には反映されないことや、期限切れや食べ残しで破棄されている大量の食品も自給率が低くなるよう分母に含まれ実態とはかけ離れていることです。
カロリーベースではなく、国際標準である生産額ベースで自給率を見るべきだと至極まっとうな意見です。
なぜそういうことになっているかと言えば、食料自給率が低いと日本国民に植え付けることで危機感を煽り、農水省はその対策予算として多くの税金を得て、それが天下り先の機関に回り、傘下のJAや農家に補助金という形で回る仕組みが維持できるからと書かれています。
国際標準の生産額ベースで見ると日本の農業の自給率は決して低くなく、プロ農家の健全な育成にとって邪魔になっているだけの農水省や、票が欲しいがために主たる収入は農業以外という兼業農家にまで補助金を回そうとする政治家を厳しく糾弾しています
常識に考えてもいま米が余って減反政策などをおこなわれていますが、減反した農地でなにも作らず放置しておけば国から補助金がもらえ、その土地を市場のニーズに合わせて有効活用しようとすると補助金がもらえないという変な仕組みになっています。
つまり片一方では自給率を上げないように補助金(税金)がばらまかれているわけです。
そして農水省が「自給率を上げよう」と訴える広報宣伝費(もちろん税金)は何億円にも及び、それが広告代理店の電通を通じてマスコミにばらまかれ、新聞やテレビはそれで黙らされてしまい、大本営発表のカロリーベースの自給率を根拠に危機感を煽る手伝いをしています。そしてそれは小学生が使う検定済みの教科書にまで及んでいます。
とにかくこの本を読むと、農水省や政治家(この本では当時民主党政権だったため民主党への批判が強いですが自民党も同じです)への怒りが沸々とわいてくるのは間違いありません。
ブラックボックス化された農林水産業について、知らなかったことも多く、騙されていたってことがわかります。
この本一冊では巨大な利権構造を崩すまでには及ばないでしょうけど、やる気をなくす国の補助金などに頼らず、品質と生産性を上げ、世界と渡り合える農業を志す組織的な農業法人や農業だけで生活を支えるプロ農家も増えてきているそうで、少しホッとさせられます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ボトルネック (新潮文庫) 米澤 穂信
著者は2001年にデビューした若手の推理小説作家で、この本が8冊目の長編小説となり2006年に単行本、2009年に文庫が発刊されています。
私はこの著者の作品を読むのは今回が初めてですが、9作目の作品「インシテミル」(2007年刊)が原作となり、数年前に「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」というタイトルで映画化されているのは知っていました。
どちらかと言えば、若者向けのライトな小説がお得意ジャンルらしく、本書も主人公は高校生、舞台は北陸の金沢で、事故で亡くなった恋人を偲び、その事故が起きた場所へ行ったときに、突然恋人が生きたままいる別の次元へ移ってしまうパラレルワールドもので、突飛押しもないはちゃめちゃなお気楽設定です。
ま、なんというのでしょうか、自分の高校生の頃と比べるとあまりにもその落差があり(もちろん小説の主人公のほうがずっと知性があり物知りで大人)、テレビドラマなんかでもよく出てくる「大人がかなわない都合よくたいへんよくできた子供」って感じがして、当然のごとく感情移入も懐かしさもなく、ふ~んって感じ。
本離れと言われる中・高校生にちょっとでも興味を持ってもらうために、こうした小説があるのは否定しませんが、中高生の感性を引きずったままの大人以外の大人が読むには少し無理がありそうです。
◇著者別読書感想(米澤穂信)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
銀の匙 (岩波文庫) 中勘助
著者は1885年(明治18年)生まれの詩人で、お金を得るために仕方なく書いたというのが本作品とのことです。本作品は元々夏目漱石の推薦で朝日新聞に連載小説として掲載され、1921年(大正10年)に出版されたものです。
内容は著者の自伝的回想録に近いもので、身体が弱く病弱だった幼年~少年時代の思い出を、元々は詩人である著者が、美しい日本語を使って書いています。
主人公が生まれたときは難産で母親の具合が悪く、幼児の頃ずと伯母に育てられていました。
主人公も病弱だったため友達が出来ずに、いつも近所の子供らにいじめられてばかりです。それ故に育ての親の伯母とは深い絆で結ばれていてその様子が叙情的に描かれます。
タイトルの銀の匙(さじ)は、幼児の頃、箪笥の引き出しをあけて、中をひっくり返してみたら、中から銀の匙が出てきて、それをなにか不思議に懐かしさを覚え、母親に頼んで自分のものにします。
そして大人になった今でも大切にその銀の匙を持っています。その銀の匙は、まだ物心が付かない赤ちゃんだった頃に、当時少しでも健康になるようにと漢方薬を飲むときに使われたものでした。
私はなにも事前知識がなくこの本を買って来て読みましたが、最後の解説などを読むと、この古典に近い小説は現代では失われつつある美しい日本語文章の最高のサンプルと言えるものだそうで、ところどころに古い言葉など意味がわからないところもありますが、読後はなにかまっとうな日本語に久しぶりに触れたような清々しい気分になれます。
【関連リンク】
リス天管理人が選ぶ2014年に読んだベスト書籍
12月後半の読書 ファイヤーボール・ブルース2、夜中にラーメンを食べても太らない技術、Another
12月前半の読書 1秒もムダに生きない 時間の上手な使い方 岩田健太郎、骸の爪 道尾秀介、親鸞 激動編 五木寛之、旅をする木 星野道夫
11月後半の読書 介護退職、沈黙の画布、東京タワー オカンとボクと、時々、オトン、わたしを離さないで
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今年もやります、管理人が独断と偏見で選ぶ、昨年読んだ中から超お勧めベスト本です。
昨年2014年に読んだ本は113冊(月平均9.4冊)で、上・下巻など複数巻ある本を1話と勘定すると101話となります。
一昨年2013年は98冊86話でしたから、15冊15話増えましたが、2012年は130冊読みましたので、それと比べると減少しています。
今年増えた理由はよくわかりませんが、たぶん一昨年より昨年のほうが仕事が暇だったのでしょう(笑)。
読む本のジャンルはできるだけ偏らないように意識して気をつけてますが、やはり気楽に読めて好きなミステリー小説が多くなるのは仕方がありません。
それと昨年は「Amazonオールタイムベストブック」からピックアップしてきた本が結構入っています。
昨年読んだ113冊の本の内訳は、「ビジネス書やエッセイ、ノンフィクション」が26冊26話、「外国の小説」が17冊13話、「日本の小説」が70冊62話となっています。
まずはビジネス書やエッセイ、ノンフィクション部門です。
いくつか強烈に印象に残っているものもあれば、すっかり忘却の彼方というのもあります。小説よりもその落差が大きいです。
26冊の中で、強く印象に残っているのは、
田舎暮らしに殺されない法 丸山健二
田舎暮らしができる人 できない人 玉村豊男
人間の土地 サン=テグジュペリ
冷血 カーポティ
宿命―「よど号」亡命者たちの秘密工作 (新潮文庫) 高沢 皓司
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原万里
旅をする木 星野道夫
医療にたかるな 村上智彦
政治家の殺し方 中田宏
で、その中から、ベストを選ぶと「冷血」、次点に「人間の土地」となります。
この二つはいずれも世界の中でもベスト書籍にも選ばれるだけあって、それらと比べられるのも気の毒な話しです。でもここは独断で。
「冷血」の感想は「783 1月前半の読書と感想、書評」
「人間の土地」は「849 8月後半の読書と感想、書評」
にあります。
トルーマン・カーポティは、「ティファニーで朝食を」を書いて一躍有名になった作家で、この「冷血」は小説ではなく1959年にアメリカで起きた一家殺人事件の関係者を徹底取材し、事件の背景から逮捕に至るまでの経過、そして裁判で死刑が確定、執行されるまでをノンフィクションとして書き上げ1965年に発刊されたものです。
読んでいると、なんの恨みも罪もない一家全員をわずかばかりの金欲しさに殺害するという、身の毛もよだつという事件を起こした二人の犯罪者にことが周囲の多くの人から語られ、またその事件の前後の行動は決して重犯罪を起こす(した)ようには見えず、普通の人があまり深く考えずに殺人やその他にもモロモロの犯罪を平気で犯していく様子が平板に描かれています。
この作品以降、同様の手法で、実際に起きた事件を元にノンフィクションとして、または実際の事件を下敷きにしたフィクション小説が多く作られるようになりました。
ただ昔と違って現在では実名はもちろん、仮名で書いたとしても、それとわかるものなら名誉毀損で訴えられる可能性があり、例え事実だけを書いたとしても巨額の賠償金を科せられるおそれがあるだけに、作家としてはリスクを背負う難しいジャンルでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次に17冊(13話)の海外小説部門ですが、特に面白かったのは、
動物農場 ジョージ・オーウェル
ある微笑 フランソワーズ・サガン
殺し屋 最後の仕事 ローレンス・ブロック
卵をめぐる祖父の戦争 デイヴィッド ベニオフ
シッダールタ ヘルマン・ヘッセ
春嵐 ロバート・B・パーカー
その中から私が選んだのは「卵をめぐる祖父の戦争」に決定!です。次点は「殺し屋 最後の仕事」と、パーカーの遺作ということもありオマケして「春嵐」の2作ということで。
「卵をめぐる祖父の戦争」の感想は、「797 2月後半の読書と感想、書評」
「殺し屋 最後の仕事」は、「789 1月前半の読書と感想、書評」
「春嵐」は「805 3月後半の読書と感想、書評 」
にあります。
「卵をめぐる祖父の戦争」(2010年)は、ユダヤ人の自分の祖父が経験した壮絶なる戦争体験を聞かされるという日本でもよくありがちな設定ですが、リアリティがあり、また歴史上の必然性があり、そしてウイットにも富んだ素晴らしい作品です。
460ページ超えとちょっと長めの作品ですが、一気に読み終えることでしょう。タイトルがちょっと変わっていますが、読めば真意がわかります。
「殺し屋 最後の仕事」は、これ単独ではベストとは言えず、今回は次点に入れましたが、過去から続いてきた「殺し屋ケリー」はたいへんよくできた傑作なシリーズ(前作までは連作短編)で、その総集編的な意味合いがありました。
結局今年にこの続編が出ていますので、これで最後ってわけではなかったのですが。もし読む場合は、シリーズの初め(「殺し屋」)から読むことをお勧めします。さすがにもう一般の書店には置いてないでしょうけど。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて70冊62話ともっとも数の多い日本の小説部門です。ミステリー系、純文学系、SF・ホラー系などジャンルに分けるべきかなと一瞬考えましたが、分別が面倒なので全部一緒くたで。
また諸般の事情により、昨年発刊された新作本よりも、古典作品を含め、数年前の小説がメインです。
印象に残り、さらに読後に面白かったなぁって思ったのは、
親鸞(上)(下) 五木寛之
博士の愛した数式 小川洋子
二人静 盛田隆二
東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン リリー・フランキー
ダイスをころがせ! 真保裕一
砂の女 安部公房
塩狩峠 三浦綾子
天地明察 冲方丁
木暮荘物語 三浦しをん
蝉しぐれ 藤沢周平
それでも、警官は微笑う 日明恩
西の魔女が死んだ 梨木香歩
去年はいい年になるだろう 山本弘
戦闘妖精・雪風(改) 神林長平
さて、その中で大賞は、、、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダン、ダン・・・ジャーーン
「東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン」(2005年) リリー・フランキー著です!
えっ?とってもありきたり?
う~ん、、、でも「事実は小説よりも奇なり」って言葉があるように、実体験を多少脚色はするだろうけど書いた小説って、やっぱり真に迫っていて面白い。どこにも創作の無理や矛盾がない。私は涙は流さなかったけど、最後の亡くなった母親をみんなが見送るシーンは多くの人がきっと涙したでしょう。
健さんの映画「南極物語」も、裕ちゃんの映画「黒部の太陽」も、もし完全創作だったらあれほどメジャーな話しにはならなかったでしょうし、事実を元にした作品はやっぱり強い。本来プロの作家はそうしたものに打ち勝たなければならないので大変でしょう。
「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」を読んだ感想は、「879 11月後半の読書と感想、書評」
最後まで悩んだ次点には「親鸞」(2010年)と「二人静」(2010年)。
「親鸞」は仏教になにも興味がなくても軽いエンタテーメントとして読める歴史小説で、タイトルをもう少しライトに違ったものにすれば若い人にも取っつきやすくていいのになと思います。
逆に団塊世代を含む高齢者向けだとしたら内容がちょっと奇抜すぎて子供向けっぽい感じです。
続編の「親鸞 激動編」(2012年)も昨年中に読みましたが、激動というには「親鸞」と比べるとインパクトは薄れていて、なんとなく歴史に沿って淡々と書かれたって感じです。もちろん事実とは違って創造の産物がメインです。
「親鸞(上・下)」の感想は「818 5月前半の読書と感想、書評」
「親鸞 激動編(上・下」は「879 12月前半の読書と感想、書評」
「二人静」は近年大きな社会問題となっている高齢の親の介護をしながら働くという難しさや、情緒不安定な子供を持つシングルマザー、そして大人の淡い恋愛をうまくマッチさせたとてもいいストーリーの小説です。
普通であれば重く暗澹となりそうなテーマでありながら、終盤では暖かみさえ感じることができます。
「二人静」の感想は「789 1月前半の読書と感想、書評」
その他「塩狩峠」や「砂の女」は古い小説ですが、多くの人にこれからもずっと読み継がれていくと思ういい小説です。
映画にもなった「博士の愛した数式」は80分間しか記憶が持たない前行性健忘という奇病を扱いながらも娯楽性も豊かで読んで気持ちがホカホカする小説でした。
あまり日本のSF小説は読まないのですが、1980年代に発刊され、当時は本屋に平積みされていてずっと気になっていた「戦闘妖精・雪風(改)」を今回ようやく読むことが出来ました。
30年以上も前に書かれたSF小説なのですが、たいへんよくできていて、今でも古臭さはまったく感じさせません。今後も国産のSF小説の代表作として長く読み継がれることでしょう。
「戦闘妖精・雪風(改)」の感想は、「805 3月後半の読書と感想、書評」
【過去のリス天年間優秀賞】
2013年の結果は「リス天管理人が選ぶ2013年に読んだベスト書籍」
2012年の結果は「2012年に読んだ本のベストを発表」
今年もいっぱいいい本に出会えますように!
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曜日の関係からこの年末年始は9連休という長い休みになりました。子供達も大きくなったので、もはや家族揃って温泉旅行へ出掛けたり、スキーへ連れて行ったりという親としての役目からは解放され、昨年と同様のんびりと家で過ごしました。
お正月休みにはぬくぬくしたふとんに入ってのんびりと読書をするのが最高の贅沢ですが、同時にDVDを借りてきたり録画しておいた映画を見るのもまた楽しからずやです。
昨年のお正月には「永遠の0」を見に行きました。もちろん今年も映画館へ足を運んでとも考えましたが、ちょうどいまかかっている映画でぜひ観たいって思えるものがないので、ちょっと前の映画をDVDレンタルしての鑑賞です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【神様のカルテ2】
現役医師、夏川草介氏の小説「神様のカルテ2」を映画化したもので昨年2014年3月に公開されました。前作「神様のカルテ」も小説を読んでから映画を見ましたが、原作に沿っていてたいへんいい出来でした。
監督は深川栄洋、主演は櫻井翔、宮崎あおいという前作同様の布陣です。舞台はもちろん松本。そして主人公栗原一止の医学生時代同期生だったエリート医師進藤辰也役に藤原竜也です。
個人的な意見を言えば、アイドル歌手が本業の櫻井翔はともかく、一応俳優専業の藤原竜也の演技と役がどうもしっくりいっていない感じがします。
小説の進藤辰也のイメージと違いすぎ、藤原竜也にエリート然としたところがありません。私のイメージで言えば玉山鉄二か玉木宏がやるべき役だったような気がします。
映画の中で常念岳の想い出話しが何度か登場しますが、常念岳ってどこだっけ?恥ずかしながら知りませんでした。
調べると「飛騨山脈(北アルプス)南部の常念山脈にある標高2,857 mの山」とのことで、長野県松本市・安曇野市にまたがる山で日本百名山に指定され有名らしいですね。
小説で読んでいたので、場面が先々わかってしまうだけに、余命少ない先輩医師と妻を病院のルールを破って屋上のヘリポートへ連れ出すシーンでは不覚にもその後の展開が先に思い浮かんで思わず涙ぐんでしまいました。いや~映画っていいもんですねぇ~
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【選挙】
2007年公開のドキュメンタリー映画で想田和弘監督作品です。2005年9月に行われた川崎市議会選挙というローカルな選挙がテーマですが、私が以前に長く住んでいた地域ということもあり、懐かしさもあってこれは見ないといけないなと前から思っていました。
映画は政治は全くの素人で公募で決まった40歳の山内和彦氏が、川崎市議の補欠選挙に落下傘候補として自民党から出馬し、他の民主党候補や神奈川ネットワーク運動や共産党候補と激戦を繰り広げる始終が描かれます。
ドキュメンタリーですからすべて実名、やらせなしで、選挙に出るというのはこういうものなんだとあらためて感心させられます。
山内候補と奥様のやりとりや、即席で作った後援会事務局、一癖もふた癖もありそうな自民党川崎支部の面々、さらに同日投票日の参議院選挙に神奈川から立候補していた川口順子、その応援にやってくる客寄せパンダの小泉首相(当時)、石原伸晃、橋本聖子など有名人。
市議会選挙の他党候補は、政治家としては実績のあるベテラン揃いで、山内氏はまったくの素人、ジバン(地盤:支持者組織)もカバン(鞄:選挙資金)もカンバン(看板:知名度)がなにもない中で、駅前で「自民党」「小泉純一郎」と自分の名前を連呼するドブ板選挙をおこないますが、党の重鎮達からは素人候補に遠慮なく厳しい叱責が飛びます。
誰でも新人というのはそういうものなのでしょうね。最大の自民党ですら知名度や実績がないと苦戦するわけですから、大政党に所属せず素人が選挙に出ても勝てる可能性はほとんどないっていうのが今の現状なのでしょう。
その4年後、東日本大震災直後の2011年4月におこなわれた同じ川崎市会議員選挙では自民党からの公認は得られず、「脱原発」を訴えて無所属で挑戦した時のドキュメンタリー映画「選挙2」も楽しみです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【トリック劇場版 ラストステージ】
2014年公開の映画で、トリックシリーズの完結編と言われています。監督は劇場版前3作と同じく堤幸彦で、トリック初の海外ロケ映画です。
偉大なりマンネリと言えばその通りで、それがこのシリーズの魅力でもあるのでしょうけど、さすがにもう飽きてきたって感じです。以前のように何が出てくるか?っていうワクワク感がありません。
トリックがテレビの深夜枠でひっそり始まったのが2000年。当時は仲間由紀恵はまだ主役級の女優ではなく、ちょい役や声優などで活躍していましたが、このトリックで火が付きその後一気にブレークしました。なので仲間由紀恵にとっては女優の原点とも言える作品です。
当時の仲間由紀恵にはハングリー精神があり、演技の上手下手ではなく、たかが深夜のテレビドラマでも、その役に対する必死さがよく感じられました。
しかしその後は多くの映画で主役をこなし、テレビやCMで引っ張りダコの人気が出てからは、余裕というか貫禄というものが年齢相応に備わってしまい、それが貧乏でどん欲なトリックの主人公役には相応しくなくなってきたのかなと思います。
ま、いずれにしても、これがシリーズ最後と言うことで、いい潮時かも知れません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【夜叉】
昨年亡くなった高倉健主演の1985年に公開された映画で、監督は降旗康男、共演者は妻にいしだあゆみ、主人公と同様大阪みなみから流れてきた魔性の女螢子役に田中裕子、その他には漁師仲間の田中邦衛、螢子のヒモでチンピラ役のビートたけし、大滝秀治など、いつもの降旗組メンバーが揃っています。
他の作品との関係で言うと、「南極物語 」と「居酒屋兆治」が1983年の公開で、この作品がその後に撮影・公開されました。高倉健出演の映画はこのあと3年ほど間が開き、1988年に「海へ-See You-」、1989年に「ブラック・レイン」へと続きます。
1981年に高倉健と共演した「駅 STATION」(監督降旗康男)での評判がよかったのか、この映画でも高倉健の妻役で重要な役柄をいしだあゆみが演じています。
ポキリと折れそうなほど細く、スマートで洋風な顔立ちのいしだあゆみが、働き者の漁師の妻を演じるにはちょっと無理があるように思いますが、なんとかこなしていました。でもやっぱりいしだあゆみは横浜のようなお洒落な大都会向きの女優さんで、寒村の漁港には向いていない感じです。
映画の舞台というかロケ地は福井県三方郡美浜町近くの漁村で、厳しい冬の感じがよく出ていました。
近年は周囲にできた原発のおかげで様々な施設や補償金などで、綺麗な道路が整備され、大きな公共施設なども次々と建ち潤ってきた地域なのでしょうけど、原発が停まってしまっている昨今は景気はどうなっているのかわかりません。
この作品を含め、高倉健主演のまだ観ていない作品がいくつかあるので、また機会を見つけて鑑賞したいと思っています。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【ドクトル・ジバゴ】
1965年のアメリカとイタリアによる合作映画で、監督は「戦場にかける橋」(1957年)や「アラビアのロレンス」(1962年)の監督を務めたデイヴィッド・リーン、主演は「アラビアのロレンス」で重要な脇役として出演していたオマー・シャリフです。
映画は米アカデミー賞の脚色、撮影賞、作曲賞、美術監督・装置賞、衣裳デザイン賞の5部門を受賞した名作ですが、映画以上に挿入曲「ラーラのテーマ」が強く印象に残っていて、その曲を聴くと「どこかで聞いたことがある」と思う人が多いのではないでしょうか。
作品はロシアの作家、ボリス・パステルナークによる同名の小説で、1914年に始まった第1次世界大戦での敗北から始まったロシア帝国内部への不満、1917年にはロシア革命が起きて皇帝が殺害され、共産主義がジワジワと台頭してくる激動のロシアを描いたものです。
子供の頃に両親を亡くし、知り合いに育てられた主人公のジバコは、医者として仕事をしながらも趣味で書いていた詩が「個人的すぎる」ことで反革命的と決めつけられ、家を追われ家族と共にシベリアのウラル地方へ移住することになります。
そこで運命的出会いをするのが医者をやっているときに何度か会ったことがあるラーラという子供もいる人妻です。
男というもの、先の高倉健主演の「夜叉」と同様、幸せな家庭を持ちつつも、魔性の女と出会ってしまうとついふらふらとそっちへのめり込んでしまうという性(さが)は、時代も国も違うのに似たようなストーリーで笑ってしまいました。ストレートに言えば不倫をなんだかんだと理由を付けて美化しているわけなんですけどね。
とにかく長い映画で本編だけで200分ほどありますが、場面展開が速いのでちゃんと集中して見ていないと途中でわからなくなりますので注意が必要です。寝転がって見ていると途中何度か考え事をしたりして意識が外れ、もう一度巻き戻して見直す羽目になりました。
母親が亡くなりひとりぼっちになった少年時代のジバコが親の遺産として渡されるロシアの楽器バラライカが、その世代交代を表す小物としてうまく使われていたのがとても印象的でした。
架空の人物ドクトル・ジバコの生涯の話しと言うよりも、第一次大戦、そしてロシア革命と内戦、共産主義国家成立までの大スペクタル政治ドラマって見方もできるかなと思います。
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明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
今年2015年のお正月休みは、昨年12月27日(土)~1月4日(日)までの9連休のところが多かったのではないでしょうか。
こりゃ~年の初めから縁起がいいやねぇ~と感じた人もいたのではないでしょうか?えぇ私のことです。
定年が近づいてきたせいか、それとも年相応に身体のあちこちが傷みだしてきたせいか、どうも労働意欲が衰えてきます。
これは30代40代の働き盛りの時にはまったく思ってもいなかったことで、少しでも身体を休ませられる休日がとても楽しみになっています。
通常自分で商売をやっている人や、宿泊や飲食、警備、交通などサービス業、医療や介護、農業や畜産業に就いている人は、9連休のような休みがとれることなどほとんどないわけですが、一般公務員や製造業、建設業、商社、流通業などでは時々こうした長期連続休暇が一斉にとれることがあります。
学校の先生など9連休など珍しくないという人も多いと思いますが、休みの時もそれなりに研究会の出席や、個人差があるにしても独自に勉強が欠かせないというのもあるでしょう。
サラリーマンを30年以上やってきて思うのは、こうした8連休や9連休という長期休暇が気兼ねなくとれることは特権とも言えることで、すごくラッキーだということです。
若いときには労働者の当然の権利みたいに考えてしまいますが、一部業種をのぞくサラリーマンや公務員でなければ、仕事の心配事なしに、また同僚に負担を強いることなしに、こうした長期休暇がとれるなんてことはありません。
フリーランスになって自由だと言っている人も、頭の片隅では次の仕事、その次の仕事、新しいプランというプレッシャや不安が離れられないはずです。
私の20代の時には土曜日も毎週普通に出勤でしたから、連休というのはせいぜい祝日と日曜日の2連休か、夏休みとお正月にとれる4~5連休が最大でした。
それから比べると、昨今の労働環境は夢のような休日だらけとも言えます。若い人には当たり前すぎてもっと休暇をよこせって声も出てきそうですが。
そしてそれが普通になってきて、今度は有給休暇の消化にまで及び、ダイバーシティやイクメン、ライフスタイルの多様性などと言って、さらに労働時間を短縮できるか?というステージに移っています。
この労働時間の短縮と、日本の産業力低下には深い関係があります。
もちろん、劣悪な環境より人間らしい生き方、自分が望むような仕事ができる働き方のほうがいいに決まっていますし、それに反対するつもりはありません。
一方では毎年利益を出さなければ、やがては滅びてしまう企業は、労働時間短縮のため業務の効率化を図り、無駄を廃し、コストを下げてという力学が働きます。
利益は関係ない公務員でも、民間と比べると緩やかではありますが投入されるコストと求められる成果について測られるようになってきました。
その結果、合理化で注意不足による設計ミス、究極のコスト削減による品質劣化、コミュニケーション不足による職場人間関係の悪化、ユーザーの信頼消失、正社員と非正規社員との格差増長、商品の安全性や耐久性の軽視へとつながっていくように思えてなりません。
安全で耐久性があるものを丁寧に作って提供するにはやはりそれなりのコストと時間と関わる人達の余裕が必要です。
しかし出来上がった製品の外見だけでは、多くのユーザーの意見を取り入れ、十分な過酷なテストを経てできたものかどうかはわからず、消費者は値札を見て見当を付けるしかありません。
それを実感するのは、家電やPC、自動車部品・用品類などで、値段は確かに下がりましたが、昔と比べ長期間使い切れる製品がかなり少なくなってきました。
特に低価格のいかにもアジアン製品の壊れる速さは、一時期流行った使い捨てカメラのように、1年おきに買い直してくださいと言わんばかりです。
精密機器であるPCもすでに国産品は珍しくなってきましたが、3年は持たない設計?と思ってしまうほどで、数年でHDDやメモリーや、接続端子が壊れていきます。
日本のメーカーブランドがついているからと言って安心は出来ません。製造は外国で、ブランドだけ日本名をつけて売られているものも多く、それの故障率たるや凄まじいものがあります。
海外で製造しているものの日本から技術指導や品質管理までを徹底しておこなっている良品は別です。
国産品でもタカタのエアバックリコールの問題を見てもわかるとおり、おそらく合理化や他の海外製品との激しい競争でコスト削減の煽りを受けている気がします。命に関わる部品だけに見逃すことが出来ません。
「その代わりにユーザーに届く商品は安くなっていいるでしょ?」と言われるとその通りなのですが、使い捨ての文化というのがエコ賞賛時代に果たしてどうなのよ?って思う気持ちがあります。
個人的には愛着ある製品は、壊れると修理して長く使いたいところですが、中のコンポーネンツはブラックボックス化され、仕様はコロコロ変わって補修部品がなく、修理に出そうとすると「部品がないので新しいものを買ってください」と言われる始末です。
つまるところ、1980年代までの働き蟻と称されていた日本の労働環境が、国産品の質を高めることに成功したものの、やがてはそれが過剰品質とまで言われ、最終的にはシンプルで安い外国製品に駆逐されているというのが現状です。
そして労働条件が労働者に優しくなるにしたがい、より過酷な労働をする諸外国にコスト、品質、技術で追いつかれ、追い越されていくというのが日本の製造業の宿命でしょう。
日本の製造業は、低コストを追い求めることに汲々してしまった結果、海外生産に移ってしまいましたが、本来なら、ジャパン品質を「高いけど優秀、すぐには壊れず、ユーザーに優しく、デザインも優れ、もし故障しても修理が可能」を徹底追求してもよかったのではないかと今さらながら。
世界の道を席巻しているトヨタのランドクルーザー70は30年間という長きに渡ってモデルチェンジをせず(細かなマイナーチェンジはおこなわれる)、日本を代表するクルマのひとつですが、そうした長く愛される製品こそがジャパンブランドではないかなと思います。
「安ければどこの国の製品でもOK」という人もいれば、「日本のブランドなら安心」という買い方をする人もいるわけなのに、その日本のブランド価値を貶める結果になったのは工場の海外移転だったのではないでしょうか。
日本の製造業は、戦う相手と場所を誤ってしまったのかも知れません。
しかし、今年こそ一転製造業の反撃の年になると、日本の景気も上向きになりますが、さてどうでしょうか。
著名なエコノミストのJesper Koll氏はこう言っています。
「日本の23歳に生まれ変わりたい」
海外エコノミストが語る、日本がこれから黄金時代を迎える3つの根拠(ログミー)
ぜひ期待したいものですね。
【関連リンク】
725 農業の大規模化と零細な起業
639 前からだけど日本の大手製造業はやっぱり変だぞ
611 海外移転で製造業の労働者はどこへいったのか?
591 日本の平均有給休暇取得数
527 教員の高齢化について
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