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身を捨ててこそ 新・病葉流れて (幻冬舎文庫) 白川道
浮かぶ瀬もあれ 新・病葉流れて (幻冬舎文庫)


著者の自伝的な大河ドラマ小説としてスタートしたシリーズは、「流星たちの宴」(1994年)、「病葉流れて」(1998年)、 「朽ちた花びら―病葉流れて 2」(2004年)、「崩れる日なにおもう―病葉流れて〈3〉」(2004年)と続いてきましたが、しばらくあいだが開き、この「身を捨ててこそ 新・病葉流れて」(2012年)、そして「浮かぶ瀬もあれ 新・病葉流れて」(2013年、文庫版2014年)となって帰ってきました。

さらに次の 「漂えど沈まず 新・病葉流れて」(2013年)も発刊されていますが、こちらは文庫版待ちです。

小説の発刊年は上記の通りですが、主人公の年齢は、「流星たちの宴」が一番後になります。デビュー作として一番ノリが良かった頃の内容を最初に書き上げ、それが評価を得たので、次は主人公の若いときに戻ったという感じでしょうか。

とにかく、こうしたシリーズものは前作からあいだがあくと、つい内容を忘れてしまい、新作を読み始めてもなかなか前作とのつながりが思い出せなかったりします。五木寛之著の「青春の門」しかり、宮本輝著「流転の海」しかりです。

主人公は終戦と同じ1945年生まれで、H大学(一橋大学)卒業後に、S電機(三洋電機)に勤務するも、大企業のサラリーマン生活が3ヶ月で嫌になって退職、大阪で麻雀と先物相場で勝負して大勝ちし、しかしヤクザに狙われて重症を負います。ここまでは前作まで。

その大阪の雀荘で知り合った競輪好きの初老の男と意気投合し、二人で東京へ戻ってきます。その知り合った男の紹介で広告代理店のTエージェンシー(東急エージェンシー)へ入社することとなり、さらに男の紹介で、銀座のクラブのママが経営する秘密の麻雀部屋に出入りをするようになります。

とにかく小説ですから、次から次へとモテてモテて、羨ましい限りです。こうしたまっとうな人生をかなぐり捨ててしまっているような影のある不良男というのは、やっぱり現実でもモテるんでしょうねぇ。

小説は1960年代後半から1970年代の高度成長期に入っている時代です。あまりその時代に象徴される世相は出てきませんが、著者がかいま見てきた裏の社会と、やがてはバブル時代へ突入していくことで、さらに行動が派手に、そして怪しくなっていく男の生き様とロマンが興味を沸き立てていきます。

著者別読書感想(白川道)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

田舎暮らしに殺されない法 (朝日文庫) 丸山健二

前に読んだ玉村豊男著「田舎暮らしができる人 できない人」と同様、定年で退職した後、田舎暮らしにあこがれている主として団塊世代向けに書かれた警告本ですが、おそらくこれを読むと団塊世代に対する悪意というか偏見も目立ち、腹立たしくなるのは覚悟の上でどうぞと言ったところでしょうか。

もちろん偏見とは言えない真実を突いたところもあまたありそうですので、それをとやかく言うことはないのですが、田舎に古くから住む人達や、都会の団塊世代になんの恨みがあって?と思わなくもありません。小説にするとそれはそれで面白くていいと思うのですが、エッセイというスタイルなだけに棘が立ちすぎています。

著者は戦中生まれで、団塊世代からすると年の近い兄貴的存在で、学校や就職で数年間都会に住んだ以外、ほとんど長野で暮らしています。それだけに都会で何十年も働き暮らしてきた団塊世代に対して、なにか含むところがあるのは仕方がないとして、田舎暮らしと土着の人との人間関係の厳しさをよく知っているだけに、軽い気持ちで都会からやってきた人とのトラブルや考え方の差に、いい加減ヘキヘキしているのだろうとも想像できます。

いずれにしても、安易に考えて田舎に移住なんかすれば、お金をドブに捨ててしまうようなもので、結局は身ぐるみはがされ、すごすごとまた都会へ戻るハメになるよと突き放した内容となっています。

この本を読んでもなお、闘志がかき立てられて、田舎暮らしを積極的にしようと思う人も多くいると思いますが、逆に、この本を読んだがために、田舎暮らしの素質はあるのに、意欲をそがれてしまった人も多くいるのではないかなと心配します。果たしてその人が田舎暮らしを断念し、都会に残って、やがて朽ち果て、悔いのない幸せな一生だったかどうかは、誰にもわかりません。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

秋田殺人事件 (角川文庫) 内田康夫

テレビドラマでもお馴染みのルポライター「浅見光彦シリーズ」の作品で、初出は2002年、文庫は2004年発刊です。

あとがきに書かれていますが、著者は東京(北区西ヶ原)で生まれ、その後戦争中に疎開や父親の仕事(医者)の関係で、静岡(沼津)や長野へ転居し、その後、秋田の無医村へ移ったそうです。そのため著者にとって秋田は第4の故郷だということです。

その影響もあって土地勘があると言うことで「「横山大観」殺人事件」「本因坊殺人事件 」など秋田を舞台にした作品が他にもあるようです。

この小説では、現実に起きた事件で、秋田県が県内の木材産業活性化のため第3セクター「秋住」を設立して事業をおこなっていたところ、そこを利用した資金の不正流用や汚職、欠陥住宅等の問題が次々と起き、結局は倒産してしまうという不祥事をモデルとしています。ま、よくある猿知恵役人主導事業の失敗と、それを食い物にした悪徳事業家と、お金のニオイに群がる政治家、役人という、いつものよくある構図でしょうか。

その秋田県を揺るがした大事件に絡め、その関係者が次々と亡くなり、捜査はなぜかおざなりにされ、自殺として片付けられていたことを、ひょんなことから新たに副知事となった官僚の臨時秘書となった浅見光彦が、それらが殺人だったことを暴いていきます。

もっと秋田の風光明媚な観光地などが登場するのかと思っていましたが、そういうものはほとんどなく、登場するのは県庁と、県警、所轄署とその関係者の自宅ばかりで、当初思っていたような観光ガイドブックにはなりません。

唯一観光地として見るべきものがあるとすれば、日本で数少ない産油地がある秋田市内の八橋(やばせ)油田の情景が小説にも登場します。

地中から石油を汲み出す恐竜のような形をしたユニット型ポンプが住宅地の中にいくつもあり、今でもせっせと稼働しているというのに驚きました。今では国内でこの地中から汲み出す姿を見られるのは、この秋田と新潟だけと言います。

この場所、著者が子供の頃に父親の仕事で秋田に住んだのは、父親が当時景気の良かった油田開発会社に請われてそこの専属医に就職したためだと後で知りました。きっと著者は子供の頃にこのポンプを初めて目の当たりにし、驚き、そして感動したことでしょう。

(参考)八橋油田

著者別読書感想(内田康夫)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

遠野殺人事件 (光文社文庫) 内田康夫

著者の作品の中では比較的珍しく、シリーズものではない独立した推理小説です。発刊は古く最初はカッパ・ノベルスで1983年(31年前!)で、文庫版の発刊は1987年です。

ところで、読書が秋田の次は遠野(岩手)って、なにか考えあってのこと?

そう、夏休みに東北へ旅行しようと思い、それに関係する小説をいくつか買ってきて読んでいたのです。でも結局は今回は秋田や岩手ではなく福島と山形を中心に回ることになり、その思惑は外れてしまいました。

事件は東京で働くOL(1980年代の小説ですから)が、夏休みの旅行先の遠野にある観光の名所「五百羅漢」で何者かによって殺されます。

その捜査に当たる遠野署のベテラン刑事が本書の主人公で、亡くなった女性にその旅行に誘われていたものの、婚約者の実家へ挨拶へ行くことになり、断った同僚女性がヒロインです。

こちらは上記の「秋田殺人事件」とは違い、遠野の観光地、五百羅漢や曲り家、カッパ淵などが少しですが登場してきます。

昨年、柳田国男著「遠野物語」(1910年)を苦労して読み、遠野の伝承や伝統については少しは知識がありましたが、現代の観光地化された姿は、この小説を読んで初めて知ました。

この夏休みでは結局行くことはかないませんでしたが、機会があれば美しい遠野をじっくり回ってみたいなと思える小説です。

著者別読書感想(内田康夫)


【関連リンク】
 7月後半の読書 蝉しぐれ、博士の愛した数式、砂の女、嘘つきアーニャの真っ赤な真実、田舎暮らしができる人 できない人
 7月前半の読書 陽だまりの偽り、日曜日たち、人生を無駄にしない会社の選び方、佐賀のがばいばあちゃん、真夜中の神話
 6月後半の読書 月に繭 地には果実(上)(中)(下)、人間失格、去年はいい年になるだろう

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夏休み中は特に子供の交通事故が増える季節ですが、クルマを運転するときは常に「子供が飛び出してくるかも」と用心して運転することが求められます。

それにしても先月は悲惨なひき逃げ死亡事故が相次いで起きました。

自転車の男性はね死なす ひき逃げ容疑で男逮捕 千葉・市原(2014/7/6)
千葉県警市原署は6日、自動車運転処罰法違反(過失致死)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、同県松戸市五香、トラック運転手、□□茂容疑者(54)を逮捕した。逮捕容疑は6日午前9時ごろ、同県市原市五井南海岸の国道16号で、自転車の男性を大型トラックで後ろからはね、現場から逃走したとしている。男性は約5時間後、病院で死亡した。
同署によると、亡くなった男性は50~60代ぐらいで、身元確認を進めている。□□容疑者は「木にぶつかった」と供述し、容疑を否認している。□□容疑者の後ろを走っていた軽自動車の男性が事故を目撃し、トラックのナンバーを覚えていて110番通報した。

1.4キロ引きずられ女性死亡=ひき逃げ容疑で川口市職員逮捕(2014/7/13)
7月12日夜、埼玉県川口市の交差点でミニバイクの65歳の女性が後ろから来た車に追突され1キロ以上にわたって引きずられて死亡し、車が逃走した事件で、警察は川口市職員の男を過失運転致死とひき逃げの疑いで逮捕しました。逮捕されたのは川口市市民税課の職員、□□大貴容疑者(26)で、容疑を認めたうえで、「酒を飲んで帰宅する途中だった」と供述しているということです。

飲酒ひき逃げ容疑で31歳男逮捕=自ら通報、「動転し怖く」(2014/7/14)
北海道小樽市で女性4人がひき逃げされ、うち3人が死亡、1人が重傷を負った事件で、道警は14日、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の疑いで、車を運転していた飲食店従業員□□雅英容疑者(31)=札幌市西区=を逮捕した。「酒を飲んで運転し、人をはねたことは間違いない。申し訳ない」と述べ、容疑を認めているという。

ひき逃げで1人死亡 380メートル引きずられる(2014/7/23)
7月23日午前10時15分ごろ、愛知県小牧市の県道で大破した自転車と血痕を見つけたと、通行人から110番があった。路上には約380メートルにわたり、ばらばらになった遺体が散乱しており、県警小牧署は1人が自転車ごと車に引きずられて死亡したひき逃げ事件とみて捜査している。
(続報)愛知県警は24日、自転車ごと被害者をはねて逃走したとして、自動車運転処罰法(過失致死)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、同県瀬戸市原山台、トラック運転手、□□利光容疑者(65)を逮捕した。

まったく懲りない犬畜生にも劣るって印象で、他の犯罪と比べて事故の際に残していく物証や、付近の監視カメラ、ナンバー読み取り装置、後続車などの目撃者、そして事故を起こしたクルマやトラックという動かぬ証拠がある限り、逃げても無駄と思うのですが、近年特に飲酒運転や無免許運転の厳罰化が進むにつれて、逃げ果せるわずかな可能性を求め、被害者を救助することなくその場から逃げ去るという鬼畜な選択肢を選ぶ輩が増えてきたという印象もあります。

つまり、飲酒や薬物により正常な運転ができなかったり、無免許だったり、逃走した場合などで重大事故を起こした場合、最長懲役18年~20年の厳罰を科すようになり、そのために、事故を起こした場合、逆に真っ先に「なかったものとして」とその場から逃走することを第一に考えてしまった面があるのかも知れません。

従来の交通事故で相手を死なせる業務上過失致死傷罪の場合だと、長くても5年、平均すると懲役2~3年だったものが、飲酒運転など特に悪質なものは、危険運転致死傷罪が新たに適用されるようになり、懲役10年以上もありえるようになってきました。

またダンプやトラックの職業ドライバーのように、重大事故により長期間運転免許を失効してしまった場合、収入が途絶え生活が破綻してしまうという危機感から安易に逃走することも考えられます。事故は必ず起こるものですから、そのあたりのセーフティネットを今後考えておかないと、いつまでも被害者救助よりも逃亡という考え方はなくならないかもしれません。

そしてひき逃げを防ぐためには、「ひき逃げは100%捕まる」というPRを道路の各所の目に付くところに掲示し、すべてのドライバーに、「逃げても無駄」という暗示をかけるしかないのでしょう。

では、実際に死亡ひき逃げ事故の検挙率はどうなっているでしょうか。

本当なら逃げ得は絶対に許さない!と100%の検挙を求めたいところですが、実際は昨年2013年の警察庁のデータでは、全国で発生した死亡ひき逃げ事故185件中、検挙できたのは167件で検挙率は90.3%となっています。数年前までは95~93%でしたので、少し下がってきているのが気になるところです。

もちろん今後時効までに検挙できる場合もあるでしょうから、最終的な検挙率はもう少し高くなるでしょうけど、意外と逃げ得を許してしまっているなというのが感想です。

次に各都道府県で死亡ひき逃げ事故の発生が多いのは、埼玉県17件、茨城県、東京都、大阪府11件、千葉県、神奈川県10件、新潟県、愛知県9件となっています。地域性、県民性などが反映されているとは思いたくないですが、比較的大都市周辺に多いようです(2013年の警察庁データ、以下同)。

ちなみに、ひき逃げに限らず交通事故死者数が多い都道府県は、愛知県が219人、兵庫県187人、千葉県186人、北海道と静岡県184人の順です。

2013年に起きたすべてのひき逃げ事故(死亡事故に限らず)の検挙数は4903件あり、事故後に逃げた理由を聞いています。

 1)事故を起こしたことを恐れて 770(16%)
 2)被害者の被害程度が大したことはないと思ったから 720(15%)
 3)飲酒運転中 605(12%)
 4)無免許運転中 438(9%)
 5)逃走すればわからない 435(9%)
 6)事故を起こしたことが半信半疑 424(9%)

いずれも愚かとしか言いようのない理由ですが、事故の報道でよく出てくる「事故を起こしてパニックになって逃げた」というのは1)に該当するのでしょうかね。よくわかりませんが。

(6)の半信半疑以外は大きく括るといずれも「厳罰を怖れて逃げた」というのが理由なのでしょう。あとは具体的に言えば「社会的立場をや職を失うことを怖れて逃げた」とか、「家族と今の生活を守りたかったので逃げた」という理由も考えられそうです。

高齢化社会となり、加害者も被害者も高齢者が多くなってきています。私もやがては高齢ドライバーの仲間入りをすることになりますが、自分自身でも視力の衰え(視角や動体視力、焦点など)や、とっさの時の判断力、長時間運転の疲労度、継続した集中力の欠如など感じることもあり、そうした人が多くハンドルを握っているということと、高齢で動きが鈍く、ヨロヨロと不安定な自転車や、信号や横断歩道に関係なく気ままに歩く歩行者がいることも理解しておく必要がありそうです。


【関連リンク】
800 高齢化社会で変化している交通事故の統計を見る
751 自動車事故と車種や装備の関係
658 自転車のマナー違反が特にひどい
557 運転免許証の取得推移と乗用車保有台数推移を並べてみる
518 7月11日の高齢者の交通事故


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841
リストラ天国の各データや日記で書いたことはいつ読んでもかまわない「長~く使える情報」を溜めていくことを大きなテーマに据えていて、いわゆる瞬間的に読まれてすぐに用を足さなくなるニュース系の情報を提供するものとは一線を画してきました。

それはつまりタイムリーなフロー型ではなく、社会に根深い問題や、それに対する自分の意見や感想などで、ストック型の情報を残していこうと心掛けています。

公開と同時に多くの方に読んでもらおうとするのではなく、検索していたら出てきたという内容として意識しています。

そこで、過去のリス天日記の記事の中で、「検索して読みに来てもらっている記事はなんだろう?」ってふと思い、過去数ヶ月間のあいだに、リス天日記にたどりついた検索ワードを調べてみました。

そうすると意外と多かったのが、「洗面台+diy+交換」「洗面台+交換+自分で」「洗面化粧台+diy」など、洗面台、洗面化粧台関連の検索ワードが上位を占めて最多でした。

その記事はこちら
洗面化粧台をDIYで交換 その1準備編
洗面化粧台をDIYで交換 その2工事編

Googleで検索してみると「洗面台 diy 交換」で3番目、「洗面台 交換 自分で」で8番目、「洗面化粧台 diy」でも8番目、「洗面台交換方法」で9番目で、いずれもSEO(検索エンジン最適化)としては上位にランクに位置しています。

そしてGoogle検索結果画面には検索ワードに関連する写真が上の目立つところに出てきますが、その中には私の日記で使った洗面台交換の写真がよく出てきています。これが効いているのかも知れません。

この日記を書いたときは、洗面台のDIYって多少時代が変わってもそのやり方に影響は受けず、ストック型の記事として長く活用してもらえそうと思っていましたが、すでに3年経過しても検索結果の中では一番よく読まれていることに驚きました。少しでも多くの方に役立っていれば嬉しい限りです。

ならば同様なストック型記事として書いたつもりの、今年1月に実施した「浴室のリフォーム、業者選定、工事手順」を書いた記事や、一昨年に実施した「BSアンテナ工事」の記事はどうかな?と思って検索ワードを調べてみましたが、そちらの検索はほとんどありませんでした。思惑が大きく外れてありゃりゃです。

(1)ユニットバスへのリフォーム道険し
(2)続:浴室のユニットバスへのリフォーム前編
(3)続:浴室のユニットバスへのリフォーム後編
(4)浴室のユニットバス化リフォーム工事完了

(1)我が家のテレビ視聴環境改善 準備編その1
(2)我が家のテレビ視聴環境改善 準備編その2
(3)我が家のテレビ視聴環境改善 工事編

その他でよく使われている流入検索ワードでは、「車で行く京都」「京都+車+観光」などで、2年前の日記ですが、Googleでそれぞれ1位と2位を獲得できています。見られた方、参考にしていただけたでしょうか?役立ったか、それとも役に立たなかったか、実際に行った方に教えてもらえると参考になるのですが、、、

クルマで行く京都観光お勧めコース その1
クルマで行く京都観光お勧めコース その2

ユニークなのは「スペンサー+パーカー」での検索ワードがしばしば使われていて、Google検索では12位にありました。書籍の中ではロバート・B・パーカーのスペンサーシリーズについてよく書いているせいでしょう。

スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ

あと、流入元のサイトでは、「不登校、引きこもりからの総合支援教育・CARPE・FIDEM」に貼っていただいているリンクからのものが結構あります。

元々はそこのサイトに書かれていた内容を一方的に引用し、紹介した記事だったのですが、その後、そのサイト内で当リス天日記の内容についても少し触れていただき、リンクも貼っていただきました。感謝です。

その記事というのは、
引きこもりが長期化する前にすべきこと 2013/3/9(土)」

そして、このリストラ天国日記やメインサイトの本来の目的だったハズの「リストラ」や「再就職」関係ではどういう検索ワードでやってこられるのか言えば「○○(企業名)+リストラ」とか「履歴書+虚偽記載」、「○○(企業名)+倒産」という検索ワードで来訪された方が散見されます。しかし悲しいことにあまりそれらの件数は思っていたほど多くはありません。

これらの雇用・労働問題も法律が変わればともかく、ある程度は陳腐化しないような、話題をできるだけ提供してきたつもりですが、タイムリーな人気ワードがなく、なかなか検索ワードで上位に入ってきません。これはちょっと反省材料です。

2014年4月1日から、7月31日までの4ヶ月間で、当ブログへ入ってくるのによく使われた検索フレーズのTOP30は下記の通りです。



ちなみに2002年~2003年頃には、長いあいだGoogleでもYahoo!でもぶっちぎりの検索順位1位を獲得していた「リストラ」ひと文字の検索結果は、現在39位と当時の勢いはなく見る影もありません。

ま、すっかりこのサイトの目的が変わってしまったのと、検索アルゴリズムなどが単純ではなく複雑になり、素人のSEO対策では追っつかなくなってきたのでしょう。

(※検索時期によって順位は常に変動しています)


【関連リンク】
795 定年リタイア時の必要貯蓄額と生涯住宅費用
776 Wikipediaの成長はいつまで続くのか
749 TwitterとFacebookの現状
702 アマゾンジャパンは国内の小売り業を破壊するか?
669 ネット人口の正しい統計
525 転職にSNSは有効なのか?

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840
特に都市部においては「水を飲む」と言った場合の「水」はボトルに入った「ミネラルウォーター」や浄水器を通した水を指すことが多く、いつの間にか飲み水は蛇口をひねると出てくる水道水のことではなくなってしまいました。私の家でも、万が一の災害で長く水道が使えなくなった場合に備え、ずっと昔からミネラルウォーターを箱で購入し常備しています。それらの水は期限があるので、古いものからもっぱらコーヒーやお茶を煎れるときに使い、随時新しい水を補充しています。

また仕事中やスポーツのあとにも、ミネラルウォーター買ってを飲むことが多く、昭和の時代のように水道水をそのままガブガブ飲むことは滅多にありません。これは30年ほど前に大阪に住んでいた時、水道水があまりにもまずかったことから、次第に水道水はまずいという記憶と先入観が頭に刷り込まれ、大阪から転居したあともそれにしたがった行動をとっています。

昔から「水と空気はタダで手に入る」と言われてきました。

「え?空気はともかく、水は有料なのでは?」という人はおそらく昭和40年代以降の生まれではないかと思いますが、私が子供の頃(昭和30年代)には、どこにでも井戸があり、もちろん飲み水としても使えましたが、それはすべて無料でした。

そして次は空気の有料化です。

「空気が有料になってきた」言うとまだ抵抗がある人も多いと思いますが、中国から流れてくる黄砂やPM2.5、昭和期に数多く植えられたスギやヒノキの花粉、毎年訪れるインフルエンザの流行、嫌煙権などの影響などもあり、綺麗な空気もお金を出して買う時代がすでにやってきています。

住宅街でも近くに小中学校があると、そこのグラウンドから飛来する砂や、国道や高速道路のような幹線があれば風向きによってはホコリや煤塵が開け放った窓から侵入してきます。

あるいは遠くにあっても工場やごみ焼却場、火葬場などの高い煙突から出る煤が、今はかなり改善されてきているとは言え、やはり半日も窓を開けていると、部屋の中はうっすらとチリとほこりが積もることは珍しいことではありません。

部屋の掃除が好きではない家族が住む我が家も、ふと気がつくと、すでに4台の空気清浄機が常時動いていますが、さらにもう一台買う予定があります。

空気清浄機のなにがいいと言うと、もちろん部屋に入ってくるホコリや花粉を集めてとってくれたり、部屋の中のじゅうたんや布団などからでる細かなほこりやニオイまで吸収してくれて、スッキリ透明感のある状態に保ってくれることが一番のメリットですが、使ってみてから知ったのですが、それ以外にも役立ってくれます。

それは、都会の家ではしばらく拭き掃除をせずにいると部屋の中のオーディオやテレビやテーブルの上に、うっすらとホコリが積もるのが普通ですが、そのホコリのたまる量が格段に減ってきます。つまり部屋のあちこちに積もるはずだったホコリを吸い取ってくれているのですね。これで掃除する手間がだいぶんと省けますし、PCや家電など精密機械の中に入り込むホコリが減れば故障の可能性を減らしてくれそうです。

その家庭用の空気清浄機には大きく分けて2つのタイプがあります。

それはファン式空気清浄機と、かつて流行ったイオン式空気清浄機です。それとファン式には付加機能として加湿機能や除湿機能がつくものもあります。

先に言っておくと、現在はファン式の空気清浄機が主流で、かつて一世を風靡したものの、その後宣伝されていたような効果はないと不当表示で広告の排除命令が出されたイオン式空気清浄機は現在は一部が細々と生き残っている状態です。

ファン式空気清浄機の付加機能としてイオン発生器を付けたものは多くありますが、ファンのないイオン式空気清浄機というのは、家庭用では通販で細々と売られているのと、あとは自動車用に少しあるぐらいです。

なので、2つのタイプと書きましたが、実質的に空気清浄機と言えばファン式空気清浄機だけと思っていいでしょう。

で、我が家にある空気清浄機はと言うと、

1)ダイキン製空気清浄機 TCK55M STREAM-ER(ファン式)
2)シャープ製加湿機能付き空気清浄機 KC-B50 プラズマクラスター(同上)
3)パナソニック製空気清浄機 F-PXD50-W (同上)
4)ヤーマン イオニック空気清浄機 Ionicpro TURBO STA-98 (イオン式)


の4つが稼働中です。見事にメーカーバラバラです。

1)のダイキンは空調機器メーカーとしては世界一の規模と実績を誇っているメーカーで、特に業務用エアコンが得意ですが、家庭用のエアコンや空気清浄機「光速ストリーマ」シリーズの評価も高いです。値段はそれなりに高価で、普及している平均的なもので3~5万円します。

特徴の光速ストリーマとは「イオンをつくるためのプラズマ放電技術の名称」のことで、ファン式空気清浄機でイオンを発生させて、さらに細菌を分解するというのがうたい文句です。

2)のシャープは花粉の時期には「プラズマクラスター」シリーズのCMがよく流されていて、液晶テレビ等一般家電の業績不振で窮地に陥っていたシャープが立ち直るきっかけとなり、今や屋台骨を支える製品にまで成長しています。スタンダードな製品で2~3万円ってところでしょうか。

このプラズマクラスターはシャープ独自のイオン発生装置のことで、そのイオンで除菌効果があるとされていますが、それほど明確な効果が期待できるわけではなさそうです。それよりもPM2.5対応の製品は、中国では品切れになるほどよく売れているそうです。

3)のパナソニックも生活家電に力を入れていて「エアーリッチ(ナノイー)」シリーズがよく知られています。ナノイー(nanoe)とは微粒子イオンの力によってカビ菌やニオイ成分を分解するというものです。売れ筋の製品はやはり2~3万円のものでしょう。

光速ストリーマもナノイーもプラズマクラスターもイオンを発生させて除菌、脱臭効果を期待させるうたい文句が書かれていますが、誰でもが体感できるというものではなく、そう言われるとそうなのかな?と思うぐらいの効果しか期待はしないほうがいいかもしれません。

こうしたイオンを使った効果は、その使用条件など(一般的には公表される実験データは密閉された空間で人工的な環境でとられたデータとか)で大きく変わってきたりしますので、研究者や技術者には失礼ながら、「そう言われるとなんとなく効いているのかも」というブラシーボ効果が一番ではないかと言われています(もちろん敏感な人が実感することを否定はしませんが)。

消費者の立場からすれば、技術的なことはともかく、「イオンの力で除菌も脱臭もしてくれる!」と書いてあれば、価格的に大差がなければ、それがついていないものよりは付いている製品に食指がのびやすくなるのではないでしょうか。

さてここで、問題の4)イオニック(メーカー名はヤーマン)の空気清浄機ですが、ファンがなく、深夜でも動作音がほとんど聞こえないぐらい、たいへん静かでいいのですが、ネット上では極端な悪評と好評のオンパレードです。

使ってみての正直な感想を言えば、空気清浄機としてはちょっとどうかな?と疑問符が付きます(個人的感想)。

たいへん好評の口コミもありますが、この製品は通販でしか売られていないようなので、アフェリエイトへの誘導目的という可能性があり、あまりにも褒め称えている書き込みは信憑性を疑います。

私は安かったこともあり、半分騙されたつもりで買ってみました。なんと言っても他のメーカーの妖怪ぬりかべみたいな製品とは違ってスタイリッシュです(笑)。これで首振り機能がつけば立派な送風機にもなりそうです(そんなに風は強くありません)。

このイオニック(イオニック プロ ターボ STA98)が、なぜファンなし、フィルターなしで汚れた空気やホコリ、ニオイを吸い込み、取り込めるの?って言えば、中に据えられた大きな電極のプラスとマイナスの間に気流が発生するのを使って空気を流し、帯電させた大きなブレードという金属にホコリなどを付着させています。

確かに中にある金属ブレードに運転開始後すぐ黒い汚れがどんどん付着しますので、効き目がないとは言いませんが、他のファン式のフィルターと比べると、たまる量があまりにも微量です。

このイオニックの特徴は、ファン式空気清浄機と比べて、イオン発生装置に重きを置いていて、さらにファンがないことで音がほとんどしないこと、交換用フィルターの必要がないことなどをメリットとしています。

イオン発生装置だと割り切って買うのならばいいのですが、イオンの効き目そのものに懐疑的な人や、これでカタログや高評価の書き込み通りにホコリやニオイをよくとってくれるって期待するのはちょっとどうでしょう。

各社、それぞれ自社製品に有利なデータや根拠を元に製品をアピールしますので、なかなかその本質は一般人には見抜けません。

それに通販サイトの口コミでは大手メーカーの製品でも「いかにもこれはサクラだろう?」って思えるような讃辞一色の書き込みもあり、それらがホントに信用できる情報かどうかの見極めも難しいところです。条件がバラバラの部屋の空気が綺麗になったかどうかなんて、感覚的なもので、数値では表せず、結果言ったもの勝ちというところがあります。

それならば、あまり細かな機能や科学的データなどにこだわらず、浮遊物などホコリや花粉、ペットのニオイなどを目に見える形で(ニオイは目に見えませんが)取ってくれたらいいと割り切って、そこそこ売れ筋の大手メーカーの製品(ファン式)を選んでおくのがベターな選択でしょう。

あと、くれぐれも量販店へ行って、店員さんに売れ筋やら人気製品を聞いてみるというのは避けたほうがよさそうです。

店員さんは店の儲けが大きいもの(原価率が低い製品や原価率が同じなら高額な製品、そしてメーカーから販売奨励金やキックバックがあるもの)を客に勧めるよう上司から厳しく指導されていますので、決して客のことを第一に思って良心的にアドバイスしてくれるわけではありません。

販売額や利益率、特定品の販売ノルマ等(個人や店舗ごと)が自分の給料や賞与、昇級に反映し直結しますので、その唯一の目的に向かって当たり前のことをやっているまでです。それを親切に教えてくれたと信じ込むのは勝手ですが、言われるままの購入では決してベストな買い物にはならないでしょう。

それに空気清浄機は毎日24時間フルに動かしておくことが多いので、最小消費電力やフィルターなどの交換頻度、消耗品の価格などにも購入するときに注意しておくべき点でしょう。消耗品は意外と高くつきます。

元々空気清浄機の場合、普及品は最大適用床面積が20畳とか30畳など、各社ともかなり大き目に表示しています。旅館やホテルの宴会場でもなければ30畳なんて部屋は普通の家ではまずないでしょう。ただし金額に大差がなければ、大きめのものを買って最少モードで運転しておくと、意外と静かで電力消費も少なく抑えられます。

売れ筋を見ていると、概ね24~28畳タイプの普及品が6~8畳の部屋で、もう少し広いリビングダイニングなどでは30畳以上のタイプを使っているという感じです。

現在市販されている中で、お勧めは、やっぱり売れ筋の大手メーカー製で、

(加湿機能なし、最大床面積24~28畳タイプ)
ダイキン(DAIKIN) ストリーマ空気清浄機「光クリエール」 ホワイト TCM75P-W
シャープ PM2.5対応空気清浄機(24畳まで)高濃度プラズマクラスター7000搭載 FU-D51-W
シャープ PM2.5対応 プラズマクラスター搭載 空気清浄機 ホワイト系 FU-B51-W

(加湿機能あり、最大床面積23~25畳タイプ)
ダイキン(DAIKIN) 加湿ストリーマ空気清浄機「うるおい光クリエール」 ホワイト TCK55P-W
シャープ PM2.5対応加湿空気清浄機(空清23畳まで/加湿13畳まで)高濃度「プラズマクラスター7000」搭載 KC-D50-W
Panasonic 加湿空気清浄機 ナノイー搭載 8~14畳相当 ホワイト F-VXJ50-W

あたりでしょうか。我が家の5台目空気清浄機は、お手頃でお値打ちなシャープFU-B51かなと思っています。


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蝉しぐれ (文春文庫)  藤沢周平

1988年に発刊された長編小説で、初出は新聞連載でした。この作品は、テレビドラマ(2003年)や映画(2005年)、その他にも宝塚公演、舞台公演でも原作として使われた著者の代表的作品と言えるものでしょう。

著者は1997年にすでに故人となられていますが、直木賞受賞作「暗殺の年輪」(1973年)や、吉川英治文学賞「白き瓶―小説長塚節」(1986年)など数々の名作が残っていますので、これから折をみて読みたいと思っています。

実はこの小説、Amazonの「オールタイムベスト小説100」に出ていたので、なにも考えずにブラッと買ってきましたが、実は10年ほど前にたぶん映画化に合わせて書店に平積みされていたのだと思いますが、その時に買って一度読んでいました。

読み始めてから、だんだんと先のストーリーが見えてきて、調べるとそういうことかと気がつきました(遅いわ!)。でも読んだのがもう10年前のことでもあるので、もう一回ちゃんと読もうと決意して読み進めました。

内容はお得意の時代小説で、貧しい下級武士の子供が、親友とともに大人へと成長していく姿を描いたものです。

またこの「蝉しぐれ」と同時に買ってきた司馬遼太郎著「城をとる話」も既読で、こちらは数ページを読み、あ!これは読んだなとすぐに内容を思いだしたので中断しました。いよいよ老人性健忘が始まってきたのか、最近こうした過去に買った本をまた買うという症状に陥っています。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

博士の愛した数式 (新潮文庫) 小川洋子

この小説は2003年に発刊され、翌2004年には本屋大賞を受賞するなどして一躍有名になりました。そして2006年には寺尾聰主演で映画化され、私もこの映画をテレビで見て、原作を読みたくなって買ってきました。

小説の主人公というか語り手は、事故で記憶喪失になった初老の男性の世話をするため家政婦紹介所から派遣されてきた女性ですが、映画では十数年後に教師になった家政婦の息子が昔のことを思い出して生徒達に語るという設定に変わっていました。

その記憶喪失の初老男性は、記憶喪失といっても、交通事故に遭った20年ぐらい前までの記憶はちゃんと残っているものの、それ以降の記憶はきっかり80分間しか持たないという特殊な記憶喪失です。つまり1時間前の記憶はあるけれど、2時間前の記憶はまったくありません。

事故に遭うまでは大学で数理、数式、数論を教えていたいわゆる数字オタクで、数字や数列の記憶力は天才的で、あらゆる数字に意味を持たせてしまう特殊な才能を持っています。

映画「レインマン」(1988年)に出てきた自閉症でダメ人間とされていたダスティン・ホフマンが、数字だけは抜群の記憶力を持っていて、その記憶力を使って弟役のトム・クルーズがカジノで大儲けするシーンなどをふと思い出しました。

また若年性アルツハイマー病患者を描いた萩原浩著「明日の記憶」(映画は渡辺謙主演で2006年公開)と同様、患者と介護する人との感動話しということが共通していて、なかなかいいものでした。

著者別読書感想(小川洋子)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

砂の女 (新潮文庫) 安部公房

1962年の著者の代表的作品です。勅使河原宏監督のモノクロ映画(1964年)を何年か前にテレビでみたことがあり、今回その原作小説を買ってきました。映画では若い頃の岸田今日子がとてもセクシーでした。

小説は戦後の高度成長期に入り始めた頃に書かれたもので、都会では毎日多くの勤め人が満員電車で通勤し、会社の歯車となっていった頃の話しです。

この小説の主人公は教師で、日々の忙しい仕事の合間に、趣味の昆虫採集をするためにやってきた海岸の砂浜で道に迷い込み、その日はそこにあった小さな部落に泊めてもらおうと住民に頼みます。その砂丘地帯の中にある部落では、砂嵐を避けるためか蟻地獄のような大きな穴の中にはしごで降ろされ、世話係の女とともにそこで1泊することになります。

ところが翌朝になっても縄ばしごは降ろされず、出るに出られなくなります。穴は深くて自力ではそこから這い出すこともできず、女からは穴の中にたまる砂を毎日かき出す仕事を要求されることになります。

その仕事をさぼれば、毎日差し入れられる水の補給を停められ、仕方なくその与えられた無意味とも思える作業を女と共におこないます。

やがてそのような閉鎖された社会の中で暮らす日々が徐々に身体に染みついていくと、監禁された不自由な生活であってもそうすることが生きる希望へとつながっていくという人間の不思議な感情と精神状態に陥っていきます。

それらがなにを意味しているかは様々な意見や感想がありますが、通常は現代の権力者にうまく言いくるめられ、貧乏で不自由な生活の中でもそれが当然と思い込み、搾取されながら社会の底辺で生きていかざるを得ない庶民のことを描かれ、また不合理なことでも毎日それを繰り返しやっていると不思議にも思わなくなる会社に飼い慣らされてしまったサラリーマンへの痛烈な批判、そしてそれらの問題を見失ってしまった社会へ警鐘をならしているものではないかと思われます。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) 米原万里

2001年に単行本、2004年に文庫版が発刊されたノンフィクションで、日本共産党幹部だった父親の仕事の関係で、中学校の途中まで過ごしたチェコで、ソビエト学校時代の友達を探し、ヨーロッパを訪ね歩いた記録です。

著者はロシア語通訳として著名だった方で、その関係で世界を旅する機会が多く、その旅のお供をする様々な書籍の批評にも優れた方でした。

過去には、「ガセネッタ&シモネッタ」と「打ちのめされるようなすごい本」を読みましたが、書評がメインの「打ちのめされるようなすごい本」では、著者に癌が見つかり、余命少ないとわかってからも、凄まじい闘病生活の模様が書かれていました。そしてその治療の甲斐もなく2006年に56歳の若さで亡くなっています。

最初はこの本は自身の経験を元にした小説だと思って買ってきて読み始めましたが、前述のように中・東欧への探訪実録記でした。

いくつかは盛っているな?と思う箇所もありますが、それにしてもユニークな友達達とその出自で、ベルリンの壁が崩れ、ソ連邦が崩壊したり、激変してきた東欧の歴史に翻弄されてきたことがよくわかるというか、すっかり忘れていたことを思い出せるノンフィクションでした。

著者別読書感想(米原万里)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

田舎暮らしができる人 できない人 (集英社新書) 玉村豊男

エッセイストやテレビのコメンテーター(以前)として知られている著者は、ひげを生やした風貌や話しの節々に、田舎暮らしのことがよく出てきて、根っからのアウトドア派の方かと思っていましたが、本人も妻も東京生まれの東京育ち、30代後半に田舎に生活の場を移した方だったのですね、知りませんでした。

数多くの著作物や、田舎に居を移してから始めたという絵画、それに今では酒税免許をとってワイナリーやレストランまで経営するという、結局はなにをやらせてもうまくできる多才な方です。

年齢的に著者は団塊世代より少し上の兄貴的な存在で、ちょうど雇用延長の65歳が過ぎ、都会人のあこがれで一気に田舎志向が強まってきている団塊世代に甘辛両面でアドバイスをしようと書かれたものと思われます。

正直に、このマルチな才能をもつ著者夫婦がうまく田舎生活ができたからと言って、多くの標準的な凡人夫婦が真似できるようなことではないと思いますが、それなりの覚悟をもって、あるいはうまくいかなかったときの予防線を張っておいて、田舎暮らしを始めるのは悪いことではないでしょう。その指南本、入門書としては最適ではないでしょうか。

定年後の田舎暮らしをする上でキーとなるのはやはり妻ということは、先々月にNHKの土曜ドラマでも放映された村上龍氏原作の「55歳からのハローライフ」の中の「キャンピングカー」にも出てきましたが、なんとなく理解ができます。

妻からすれば都会に住む便利さや、友人づきあいなどを捨ててまで、田舎住まいをしたいと思う人は少なく、本能的に様々な田舎独特の新たな仕事や面倒事を押しつけられることがわかると書かれていました。確かに普段家のことはなにもしてこなかった旦那にはわからないことでしょうね。


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