リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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にぎやかな未来(角川文庫) 筒井康隆
1960年代に雑誌等で掲載されたショートショートを1冊にまとめたもので、最初は1968年に出版され、その後、文庫などが何度か再版された今や大御所となった著者のデビューまもない時期の作品集です。
基本はSFやファンタジーもので、ブラックユーモアの効いたものあり、刹那的な話あり、ディフォルメした未来をよく表しているものもあり、また意味不明なものもあったりと結構楽しめます。
各作品の感想はとにかく数が多くて(41篇収録)いちいち書けませんが、書籍のタイトルにもなっている「にぎやかな未来」の内容だけ少し触れておくと、マスメディアが力を持った未来の話しで、テレビやラジオの放送中にはCMばかりが流れ、買ったレコード(当時はまだCDなんかなかった)にも曲の途中にCMが挟まれようになり、さらに聞きたくないと思っても、法律で常時ラジオをつけておかなければならないと決められ、世の中、どこへ行っても広告の嵐の中におかれます。
これを読んだとき、今テレビをつける度にいつも思うのが「いつもどのチャンネルもCMばかり」で、測ったわけではありませんが、番組のおよそ半分はCMではないかなと思います。公共放送で受信料も払っているNHKですら、自局の放送予定の番組案内や、局の取り組み活動などのCMを流し続けています。
高い料金を支払う有料ネット放送でもCMが入ると嘆いている人がいましたし(私は有料がバカらしいので加入してないから知らない)、とにかくテレビでもラジオでもネットでもつなぐと視聴者は広告の大波にのまれてしまいます。
60年以上前に書かれた近未来のブラックコメディSF小説が、いよいよ現実化しつつあるのだなぁとこの小説を読んで感心しきりです。
★★☆
◇著者別読書感想(筒井康隆)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
凪の光景(文春文庫) 佐藤愛子
著者は大正生まれ、今年99歳の大御所で、1969年に「戦いすんで日が暮れて」で直木賞を受賞されています。戦前生まれの方にしてはかなり奔放でユニークな方のようで、ご自身の人生も波瀾万丈の中で生きてこられたという感じです。
今回の作品は、1987年から1988年まで朝日新聞に連載された長編小説で、2022年に文庫が発刊されています。1990年と1992年にはテレビドラマが作られています。
小説の中では作者と同じ、戦前生まれの老夫婦と、同じ敷地に住む息子夫婦の二組の夫婦がそれぞれ語り部となり、日々の生活や仕事などが描かれています。
教師生活を定年で辞め隠居生活をしている夫は、碁会所の友人へ後妻の世話をしようと奮闘したり、その妻でわがままし放題で横暴な夫と距離を置いて自由を手にしたいと考え、息子は自動車販売会社で売上ノルマと部下の管理に悩み、その妻はキャリアウーマンとしてバリバリ働く一方、子育てにはあまり関心がないという状態です。
老夫婦の妻は、隣に住むハンサムな浪人生にほのかな恋心をいだき、また長く横暴な夫に仕えてきたことに疑問を感じて離婚や別居を考えるようになり、息子は職場で受付の若い女性の悩みの相談を聞いていたことからやがて深い関係に陥ったりと、著者のリアルと同様に波瀾万丈な展開となっていきます。
それにしても内容はタイトルの「凪」とはまったく逆で、二つの夫婦関係にヒビが入り、それぞれの人生を考え直すことになっていきます。
朝日新聞を購読している読者の多くは、私を含めて中高年夫婦というパターンが多そうですから、身につまされるような内容で、心穏やかに読めない人も少なくなかったでしょう。
ただ一箇所、え!?と思ったのは、40年間教師や校長として奉職してきた男性が受け取っている年金が月30万円というのにはビックリ。
教師だと平均年収もそれほど高くはなかったと思いますが、1980年代にはそんなにもらえたのでしょうか?今だと40年間勤め上げてもその半分ぐらいでしょう。
いずれにしても広い敷地に自宅がある恵まれた環境で、有り余る年金をもらって息子夫婦や孫に囲まれ悠々自適の老後生活をおくる主人公達で、今の若い世代からすると、どこかよその国の話?と思ってしまいそうです。
★★☆
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コブラ(上)(下)(角川文庫) フレデリック・フォーサイス
2011年に前作の「アフガンの男」を読んで以来、12年ぶりのフォーサイスです。本作「The Cobra」は2010年に出版され、日本語版は2012年に単行本、2014年に文庫版が出版されています。
「アベンジャー」(2003年、日本語版2004年)で主役だったベトナム帰りの弁護士デクスターと因縁深かったCIA捜査官(通称コブラ)がタッグを組んで、コロンビアのマフィアが支配するコカインの欧米への密輸ルートをアメリカ大統領命令でおこなうという痛快ドラマです。
米国と英国がタッグを組み、無人機を使ってコカインの密貿易の海路や空路を見つけ出して断ち、不正を働く税関官吏を罠にはめ、さらにコロンビアのマフィア幹部同士が誰かが情報を漏らしていると疑心暗鬼に陥るよう仕組んでいきます。
こうしたコロンビアマフィアを悪者にしてアメリカが叩く作品はいくつかありますが、ずっと以前に読んだトム・クランシー著「いま、そこにある危機」(1989年)にも詳しく書かれています。それらを最新の戦術でアップデートさせた内容でした。
しかしすべてが予定通りにうまくいきすぎて、そんなに簡単じゃないだろ?と思わなくもありませんが、そこは単なるエンタメフィクションということで納得しておくしかありません。
ヒヤヒヤ、ドキドキすることもなく、あっさりと麻薬戦争は勝利に終わりますが、最後にちょっとだけ意外な展開が待ち受けているのは読んだ人だけのお楽しみと言うことで。
★★☆
◇著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)
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百万のマルコ(集英社文庫) 柳広司
1篇を除いて2002年から2005年に小説すばるに掲載され、1篇だけ割と最近の2022年にweb集英社文庫に掲載された歴史物連作短編小説集です。
基本構成は、「東方見聞録」のマルコ・ポーロ(1254年頃~1324年)が、アジアへの旅の後にベネチアに戻ってからの話しが中心(1篇だけ東方への旅に出る前の話しが出てきます)で、ジェノバとの戦争で捕虜となり、ジェノバの収容所に閉じ込められている時(実話)の話しです。
実際にマルコ・ポーロには、イル・ミリオーネ(百万男)というあだ名がつけられていましたが、その理由は様々で定かではない(Wikipedia)ものの、本著では「ほら吹き男」という意味で使われています。
1話1話が、マルコが東方の地、大都(現在の北京)で権勢を振るう大ハーン(クビライ)に謁見後、相談役として仕えていた頃の驚くべき話し、言い方を考えるとホラ話のような話しを、戦争捕虜としてなにも楽しみがない娯楽の一つとして、同じく捕虜になっている僧侶や貴族、労働者などに話しをしていくという流れです。
現実にも、商人の息子マルコ・ポーロは、父親と叔父とともに東方へ商売のために訪問し、謁見したクビライに気に入られしばらくそこで過ごし、またクビライの依頼で近辺の国へ使節として訪問しています。そして故郷ベネチアへ帰ってきたら、敵のジェノバ軍に捕まり戦争捕虜として収容所に収監されています。
東方見聞録は、その捕虜収容所でマルコが語った小話を、同じく収監中の作家ルスティケロ・ダ・ピサが話しをまとめて出版したものが大ヒットしました。
したがって、小説とは言え、ある程度は歴史上の人物や出来事をうまくフィクション化していて、面白い内容です。
こうした歴史上起きた様々な事実や実在した人物を主人公としたり題材に使った作品は結構好きで、著者の作品「新世界」(2003年)では原爆の開発者オッペンハイマーが登場します。
今回の本著はややコミカルな要素があって少し違っていますが、著名人を用いた作品として浅田次郎氏の「終わらざる夏」(占守島守備隊)、「一刀斎夢録」(新選組の隊員だった斎藤一)、松岡圭祐氏の「黄砂の籠城」(北京駐在武官・柴五郎)、「ヒトラーの試写室」(特殊撮影・円谷英二)、服部まゆみ氏の「一八八八切り裂きジャック」(エレファントマン、森鴎外など)、原田マハ氏の「暗幕のゲルニカ」(ピカソ、ドラ・マール)などの小説が面白かったです。
ただ、短篇の頭に繰り返して出てくる前置きは、雑誌に掲載されるときは仕方がないでしょうけど、あらためて文庫化するときには、端折ってくれると(実際は読み飛ばしましたが)読者に優しいなと思いました。
★★☆
◇著者別読書感想(柳広司)
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そのタクシー業界やタクシー運転手について、様々な問題が起きているようです。ここ数十年ほとんど関わりがなく馴染みがないので知りませんでした。
まず、タクシーの利用者数と営業収入ですが、この50年間を見ると「増えてる?減ってる?横ばい?」ですが、下記のグラフの通り、利用者数は大幅に減っていますが、意外ながらも営業収入は増収です。
データ出典は、「一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会」です。
輸送人員及び営業収入の推移
1970年は万博?、2020年はコロナ禍のため数値に異常値が出ていますので、1975年と2019年を比較すると、利用者数は19.5億人(60%)の減少、営業収益(売上)は1473億円(11%)の増収です。
ただ1970年代はまだ物価が安く、タクシー料金も安価(1975年は初乗り料金220円~280円)でしたので、営業収入も少なかったですが、1980年以降からはタクシー料金が大幅に上昇し(1980年初乗り料金380円、1990年初乗り料金520円))、利用者が一番多かった1990年と2019年を比べると44%ほど営業収入が下がっています。
つまり1990年頃から現在を見ると利用者も売上も大幅にダウンしているということになります。
◇ ◇ ◇
次に、タクシー運転手の労働時間と賃金ですが、2022年のデータでは、年間労働時間は2,232時間、年間推計額は3,636千円で、これは全産業平均の労働時間2,172時間、年間推計額5,549千円で、タクシー運転手は労働時間は長く、賃金は低いということです。
下記のグラフは、「タクシー運転者(男)と全産業労働者(男)の賃金・労働時間の推移」です。2015年以前は5年ごとの調査となっています。データ出典は上記と同じく「一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会」です。
年間労働時間(棒グラフ)は左目盛りで単位は時間、年収(折れ線グラフ)は右目盛りで単位は千円です。
労働時間が全産業平均よりも少なかったのはコロナ禍の2021年だけで、あとは調査年すべてでタクシー運転手の労働時間が長くなっています(棒グラフ)。
賃金(収入)は、1985年からすべて全産業平均を大きく下回っていて、特に2020年と2021年のコロナ禍の時には出来高制の収入がメインのタクシー運転手の収入は顕著に下がっています。
◇ ◇ ◇
利用者の減少が続き、労働時間が長く、収入が平均よりも少ないというこれらのことからすると、何年も前から若い人の新たな参入は見込めず、したがってタクシー運転手の高齢化がよく言われています。
では、どうすれば良いかというと、労働時間を短くするワークシェアリングを導入する、安全や勤務時間の配慮をすることで運転手全体に占める割合がまだ4.2%(2023年時点)しかいない女性運転手を増やす努力をする、利用料金は既に電車が導入している「時間帯別料金」や観光地などでは「土曜日・休日割増し料金」など柔軟性のある料金体系を導入するなどが考えられそうです。
また、若い人も「運転してみたい!」「カッコイイ!」と思えるような、アウディやベンツ、BMW、レクサスなど高級車のタクシーを増やし、運転することがステイタスみたいな演出をすることも必要でしょう。あの不格好でパワーのないトヨタのジャパンタクシーを「運転してみたい!」と思う若い人がいるとは思えません。
アメリカなどで人気のウーバーなどのライドシェアは、日本のような権益や省益などを堅持している役所(国交省や警察庁)たタクシー業界の抵抗が根強く簡単には導入できないでしょう(一部の地域でNPOが実験的に実施しています)。
しかし、こうしたライドシェアのノウハウをそのままいただき、都市部ではタクシー会社の壁を越えて一つのアプリですべてのタクシーが呼べるようになると、効率の良い配車や、タクシーの客待ちで無駄な時間を減らすことができ、環境にも優しくなると思います。
同時に、タクシー運転手の2種免許の取得条件を緩和することで、ウーバーで働きたいと思うような人達に二種免許を取ってもらい、空いているときのアルバイトとしてタクシーに乗務してもらうということができるのではないでしょうか。現在は二種免許を取得するには一般的に20~30万円、教習所通いなど1ヶ月が必要で、副業やパートタイムで働くにはハードルが高すぎます。
ただ問題は過疎が進む地方などでは、利用者はもちろんタクシーや運転手も少なく、タイムリーな配車ができません。そうしたタクシーが少ない特定地域においては、エリアや保険などを手厚くした条件付きでライドシェアサービスができるようにしていくというのもありでしょう。
続編です
続・タクシー業界の行く末 2023/11/18(土)
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1701 信号待ちでサイドブレーキを引かない?
1629 クルマの運転でわかるドライバーの文明度
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太陽は気を失う(文春文庫) 乙川優三郞
2013年から2015年にかけてオール讀物に掲載された短編小説をまとめて2015年に単行本、2018年に文庫として出版されました。
短篇のそれぞれのタイトルは、「太陽は気を失う」「海にたどりつけない川」「がらくたを整理して」「坂道はおしまい」「考えるのもつらいことだけど」「日曜に戻るから」「悲しみがたくさん」「髪の中の宝石」「誰にも分からない理由で」「まだ夜は長い」「ろくに味わいもしないで」「さいげつ」「単なる人生の素人」「夕暮れから」の14篇です。
さすがに14篇も収録されていると、1篇あたりおよそ20ページ(文庫版)という短さで、深く印象に残らないままサクッと終わってしまう感じです。
そう言えば以前読んだ著者の短篇小説集「トワイライト・シャッフル」も13篇あり、短かった印象ですが、共通するテーマが千葉県の房総半島を舞台にしているという共通点があり、まだしっくりきましたが、今回は熟年者の愛と生という抽象的な共通点と言うことが少しわかりづらいかなと思いました。
ただこの時期の小説らしく、2011年に起きた東日本大震災とその後帰宅難民化する「太陽は気を失う」などはタイムリーな素材がうまく使われています。
掲載誌のオール讀物の読者層が概ね中高年者になっていることもあり、主人公をリアルな熟年男女にするというのは成功していると思います。
★★☆
◇著者別読書感想(乙川優三郎)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ジャイロスコープ(新潮文庫) 伊坂幸太郎
いろいろと実験的な小説が好きな著者のちょっと変わった短篇集で、それぞれ独立した体裁ですが、通して読むとつながっている?と思わせる内容となっています。それが不思議な動きをするシャイロスコープというタイトルになっているものと思われます。
その短篇のそれおれタイトルは、「浜田青年ホントスカ」「ギア」「二月下旬から三月下旬」「if」「一人では無理がある」「彗星さんたち」「後ろの声がうるさい」の7篇です。
前の6篇は雑誌などに掲載された底本があり、最後の「後ろの声がうるさい」だけが書き下ろし作品で、2015年に文庫として出版されています。
主人公はそれぞれまちまちで、中には不思議なサンタクロースの話だったり、謎の生物によって人類壊滅危機の話しだったりと、時々意味がわからなくなりますが、それらも含めてジッと読み進めていくと、別の話で「そういうことなのね」ということにつながっていきます。
面白いか?と言えば、様々な著者の小説を読んでいて、「きっとこうくるかな?」と想像して読めるようならば面白いし、初めてこの著者の小説を読むというのなら、う~んん、、と思ってしまうかも知れません。
私は嫌いではありませんが、細切れの短篇よりは、質の良い長編か連作短篇が読みたいな~と思いました。
★★☆
◇著者別読書感想(伊坂幸太郎)
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一億円のさようなら(徳間文庫) 白石一文
久々に面白い長編小説に出会うことができました。著者の作品は過去に20作品読んでいますが、その中のベスト3に確実に入る面白さでした。
この原作を元にして、NHK BSプレミアムで上川隆也、松村北斗などの出演のドラマが製作されています。
2018年に単行本、2020年に文庫化された通常の文庫本2冊分ほどある665ページの長編ですが、テンポ良くすらっと読めてしまいます。
ただ、家庭や仕事でいままさに悩んでいる人がこれを読むと、リストラや子どもの勝手な振る舞い、妻への不信など、重苦しい場面が次々と発生しますので、ストレスが加わって精神的にはあまりよろしくないかもしれません。
主人公は、東京の大手医療機器会社で理不尽なリストラに遭い、親戚の叔父が経営する福岡の化学メーカーに誘われ順調に出世していたものの、叔父が引退してからは閑職へ追いやられている中年サラリーマンです。
主人公には学生の娘と息子がいますが、それぞれ若い身で結婚を前提とした恋人がいて、娘は妊娠、息子の彼女は息子の従姉妹にあたり、主人公を閑職に追いやった会社の社長の娘という複雑さです。
そしてタイトルにあるように、妻には亡くなった叔母の遺産を相続した数億円の遺産があり、それをずっと隠していることがあるとき発覚します。
主人公は、そうした子供達の問題や、妻の隠し財産、仕事の問題などにより人間不信に陥り、妻に黙って福岡の家を出て金沢で新たに人生をやり直すことにします。
タイトルの「一億円」とは、妻が隠していた財産があることがバレた後に、主人公の夫に好きに使って良いと渡したお金です。その一億円を持って仕事を辞めて家を出て、金沢で再起するという流れです。
小説の中には、悪意に満ちた邪悪な人が何人も出てきます。誰でもそういう人を何人も見てきているでしょう。私もそうした邪悪な人が出てくると、今までせっかく忘れようと努力してきましたが、ある人物のことが思い浮かび、凄く嫌な気持ちになりました。
私の昔話でもそれほど強烈に思い浮かべてしまいますので、いま現在そうした邪悪な人と関わり合いを持っている人は思わず投げ捨ててしまいたくなるかも知れません。
例えば、いまイジメで苦悩している人が、イジメを喜々として仲間と共におこなっているシーンが何度も出てくる小説を読めるか?ということです。
小説の主人公は、そうした邪悪な人を見て、自分の中にもそうした同じ邪悪な感性があるのかもと悩む場面もありますが、それらに打ち勝てる強さがあり、また慕ってくれる社員や家族がいて救われます。
まるで上がったり下がったりのジェットコースターのように浮き沈みを経験する人生を生きていく主人公ですが、果たしてここまで一人で決めて強くなれるか?と言うと、自分は自信はないです。
★★★
◇著者別読書感想(白石一文)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
七人の暗殺者(ハヤカワ文庫) エイダン・トルーヘン
原題は「The Price You Pay」で直訳すれば「あなたが支払う代償」となりますが、小説の主人公「Jack Price」(ジャック・プライス)の名前をもじっています。
著者は覆面作家で、この小説がデビュー作なのか、別の小説等ですでに名をなしている人かは不明ですが、英国人だそうです。
日本語版は2019年に発売されていますが、読んでいる限り時代背景はまだスマホの登場前で携帯電話は通話とメッセージがメインの頃かなと思います。
麻薬のディーラーだった主人公が住んでいるアパートで、真下の部屋に住む老婆が見せしめのように惨殺され、これは自分を狙ったものか?あるいは脅しのためか?と思って犯罪者に詳しい知人に様子を聞きに行きますが、そのすぐ後に何者かが部屋に侵入し「事件に首を突っ込むな」とボコられ重傷を負い警告されます。
めげずにさらに調べていくと、誰かに雇われた国際犯罪組織で暗殺を請け負うグループ(セブン・デーモンズ)から狙われていることがわかり、なぜ身寄りのなく財産もない老婆が殺され、それを調べると困る人がいるのか?そして攻撃されるなら逆にしてやるとばかりに、あれやこれやと凶悪な暗殺者と対決していくというクライムノベルです。
とにかく原書自体がクセが強く(訳者あとがき)、とにかく慣れるまでは非常に読みにくい文章です。
基本的には主人公の一人称で語られていますが、主人公が語った言葉か、誰か別人の発言かの区別がついてなく、最初のうちはわからなくて何度も立ち止まって読み返す羽目になり、この調子だと、途中で読むのを断念しそうだと思いました。
また翻訳者は女性ですが、主人公の口調が汚いスラングとエロだらけで、翻訳が大変だったろうと思われ、読んでいても下ネタの罵声や、ぶっ飛んだ野郎独特の下品さなどが長々と続き、女性の翻訳家がよく書けたなと思います。
しかし慣れてくると、そうした誰が誰と話ししているというパターンはわかってきて、中盤以降は逆にまどろっこしさがなくなり素早く読めるようになります。
ストーリーもぶっ飛んだあり得ないことばかり(英国の小説と言えば007シリーズだってそうですけど)で、よほど暇人以外には勧めはしない小説です。
★☆☆
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1748
前回の「外勤の楽しみは食べ歩き その1」に続き、「孤独のグルメ」に触発されたB級外食食べ歩きについてです。
私は新卒で入社してから、東京(新宿)、名古屋(名駅)、大阪(本町・中之島)、東京(虎ノ門、渋谷、広尾、新宿)と勤務先(本支店)を経験してきましたが、当初は外勤営業が主体だったため事務所のある場所でランチを食べることは少なく、ほとんどは出先でひとりで食べていました。
私は出身が関西のため、味付けなどは関西風に馴染んでいて、東京に住んでいたときも関西風の店や関西系チェーン店などをよく利用していました。
まず東京のランチですが、家賃が高いので料理の値段も高くなるのは仕方ないのと、味も全国から集まってくる人向けに万人に受けるようによく考えられていて、競争の激しい場所では外れはあまりありません。
しかし高層ビル群や大きなショッピングセンターなどでは、家賃も高額で競争店が限られていることもあり、美味しくない店や、ボリュームのない店も多く、そういうところはできるだけ避けていました。
つまり東京では店によって当たり外れがあるということと、美味しいものを食べたければお金をいっぱい払えばなんでも食べられるという感じです。逆に言えば特に都市部においては安くて美味しいものはあまりないという印象です。
その点、大阪のランチは「食い道楽の大阪」を象徴するように、どの場所でどの店を選んでも、まず当たり外れはなく、値段は安くても味やボリュームも満足できる水準にあります。
私も大阪で「お好み焼き定食」、お好み焼きをおかずとして、ライスと味噌汁がついている定食で、大阪では当たり前にありますが、それを当時初めて知って小躍りしたしました。今なら炭水化物だらけで敬遠するところですが。
大阪で特にお気に入りだったのは、ビジネス街にあるこぢんまりした一軒家風の洋食屋さんで、ランチタイムは500円程度で絶妙なタレで炒めた豚バラ肉と、ゆるめのスクランブルエッグをセットにしためちゃ美味しい焼肉ランチがありました。ライスはセルフで食べ放題、料理をダブダブ(肉と玉子のダブル)に増やして足繁く通いお気に入りでした。
その他には、20種類ぐらいある惣菜の大鉢1品と小鉢2品を自由に選び、それとライス(大中小)と味噌汁がついて500円ぐらいの店や、ランチの時間は塩ちゃんこ定食しか出さない店で、カウンターに置いてあるガスコンロの上で、ひとりちゃんこ鍋が楽しめる店、そして昭和初期に活躍した織田作之助がよく通っていて代表作「夫婦善哉」にも出てくる自由軒で、インディアンカレーや微妙に辛旨いドライカレーもよく食べました。
そして名古屋ですが、味がちょっと関西人には合わないのか、転勤が決まったときに「名古屋では食い物に苦労するかも」と同じ関西出身の先輩に忠告された通りでした。
特に揚げ物や焼き物、うどんまでなんでも八丁味噌で味付けするような食文化には関西人としては抵抗があり、東京大阪なら中身を知らなくてもオーダーできる定食類も、名古屋では中身をよく確認することが必須でした。
麺が硬くてボソボソした名古屋の味噌煮込みうどんは、ツルツルとのどごしが良いうどんと澄んだダシスープが当たり前に思っている関西人(私)が最初食べたときは「こんなのうどんじゃねぇー!」と思いましたが、何度か名古屋らしいランチが食べたいという出張者につきあって食べているうちに「慣れてくると悪くないかも」と思うようになりました。
トーストにベーコンエッグ、ボリュームたっぷりのサラダやフライドポテト、さらには茶碗蒸しやコンソメスープ、フルーツがついていたりします。
そしてモーニングは11時半頃までやっているところが多く、ちょっと早めのランチにすることもできそうなボリュームでいつも仕事前の朝か、ひと仕事を終えてから早めのランチとして利用していました。
あまり先入観を持ってはいけませんが、それぞれの地方の食は、その地方に住む人の感性に最適化されているのが普通なので、誰に対しても素晴らしく感じる味や料理というのは本来はないでしょう。
それぞれ自分が持っている本来の味覚や感性とは違う味や量を楽しめる人が、ハッピーなんだろうと思います。「孤独のグルメ」の主人公のように。
【関連リンク】
1607 代表的なB級ファストフードの価格推移
1165 ラーメンと私
1015 丼飯を日本の文化として育てていきたい
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著者別読書感想INDEX
1747
内容は、輸入インテリア雑貨を販売する事業を営んでいる自営業の主人公が、スーツ姿で各地の客先へ出掛けて行き、商談のあとその地域で店を探しランチや夕食を食べるというものです。
松重豊は細身で、どこにそれだけ入るの?というぐらい、料理を注文をしまくり、ガシガシと美味しそうに食べます。ドラマでは食費にかかる費用までは出てきませんが、大衆食堂のランチに関わらず3~4千円分ぐらいを平気で注文しているのが現実離れしています。
それはさておき、このドラマを見ていると、懐かしさがよみがえってきます。
というのも、1980年に社会人となり、その後25年間ぐらいは外勤営業の仕事をメインにしていたので、外出先でひとりで食事をすることがほとんどでした。まさに「孤独のグルメ」の世界です。また結婚してからも夜遅くまで働いていたことから、夕食もほとんどは外食していました。
夕食は会社で店屋物を食べるか、あるいは帰宅途中にある店で食べるかで、場所や料理は概ね決まっていましたが、ランチはドラマの主人公と同様、出掛けた先の近くでブラッと店を探して入るということが多かったです。
それでも、長年外勤をやっていると、例えばよく行く機会のあった渋谷駅周辺ならこの店か、あの店、東京駅周辺ならココ、品川駅なら、、と駅や地域ごとにだいたいいくつかの候補が決まっていましたが、初めての場所だとドラマの主人公のように勘を頼りに新規開拓です。当時はスマホやぐるなびのようなサービスもありません。
ドラマと一番違うのは、やはりボリュームで、主人公のようにセットや定食以外に何品も追加で注文したり、さらに定食を食べた後にラーメンやデザートを追加するということはありません。
それに若い頃は、ドラマのように昼飯代で3~4千円も使えませんでしたし、個人的にはランチは食後のコーヒーを含めて1980年代だと700円以内、1990年代で800円、2000年以降は1000円以内がめどでした。値上げラッシュの今だとコーヒー含めて1000円以内ってのは大都市圏ではほぼ難しいでしょう。
当時お昼になにを食べていたかなぁと考えると、日々のことであまり印象に残らないのか、店は覚えていても何を頼んでいたかはあまり覚えていません。
好きなメニューは、コロッケやメンチ、生姜焼き、野菜炒めなどの定食、トンカツ、ラーメン、カレー、牛丼、カツ丼、チャーハン、焼きそば、スパゲティと言ったところでした。 ドラマの主人公は好き嫌いはなさそうで、未知の料理、食材でもチャレンジングにオーダーし、そして美味しそうに食べていますが、私の場合は、好き嫌いがあり、寿司や刺身など生魚、鶏肉系は基本的に好んで食べないので、自ずと店やメニューが限られてきます。
また喫茶店でもお昼に美味しくてボリューム(これ大事)のあるランチを提供してくれる店もあり、そういうところもよく利用していました。外勤で身体を使うのでしっかりボリュームがあって安い店をいつも探していました。味はその次です。
ただ喫茶店という形態は1990年頃を境として急激に数が減ってしまい、代わりにドトールや、高いので滅多に行きませんがスターバックス、ターリーズなどへと変わってきたので、個人的には残念な思いです。
下記グラフは、喫茶店数の推移です。データ出典は、総務省統計局「事業所統計調査報告書」と 「経済センサス基礎調査」です。
1980年代は圧倒的に数が多い団塊世代が30代後半になり、脱サラで始める商売として喫茶店の人気があり、1980年代には15万店を超えていました。しかし1990年代に急速に減り始め、2000年には9万店を切り、2021年には5万8千店と最盛期の4割以下に減っています。
当時の喫茶店には、朝はモーニング(トースト、ゆで卵、サラダ、コーヒー)のセット、昼時はランチでセットものがあり、スポーツ新聞や週刊誌、漫画誌などが置いてあり、サラリーマン、特に外勤営業マンの憩いの場でした。馴染みだった喫茶店がなくなってしまうと、もうガッカリしたものです。
今でこそ、スマホやパソコンで、どこの場所でどういうものを食べるかというのはチャッチャとネットで調べられますが、当時は当然そう言うものはなく、またドラマの主人公もガラ携を使っていて、本能のまま直感勝負で店を選んでます。
そうした初めての店に入ってみて初めてわかる店の雰囲気やメニューなど、ちょっとドキドキしたものですが、今ではあらかじめ行く店を調べておき、メニューもある程度は決めていることが多いので、そういう楽しみが減ったなと思います。当たり外れはもちろんあります。
今は暇があるので、昔よく通った店巡りでもしようかなと思っているところです。つぶれていないことを願うばかりですが、ビルの中(多くは地下)にあったお店は、ビルの建て替えなどで家賃が大きく跳ね上がり、また店主の高齢化もあり個人営業の定食屋や喫茶店はなくなってしまうケースが多いようです。
(その2へ続く)
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