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大いなる遺産(上)(下)(新潮文庫) ディケンズ

チャールズ・ディケンズ(Charles John Huffam Dickens)は19世紀中盤(1812年~1870年)に多くの小説を書いた英国の作家です。代表作には本作とともに、『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』などがあり、本作を含め、その多くが映画化されています。

本作「大いなる遺産」(原題:Great Expectations)は、1860年から1861年にかけて初版が出版された著者の後期にあたる作品です。原題を直訳すると「大きな期待」です。

日本語版は複数の出版社から出ていますが、私が買ったのは1951年(昭和26年)に初版が発刊された新潮文庫版の再版です。

大まかなあらすじは、時代は18世紀の中盤頃、まだ赤ちゃんの頃に両親を亡くし、下層労働者の鍛冶職人と結婚した年が離れた姉の元で育てられていた主人公に、匿名の大富豪から、巨額の遺産を相続できる可能性があることを突然家にやってきた弁護士から通知を受けます。「相続できる可能性」がつまりタイトルの「大きな期待」となるわけです。

まだ富豪は存命していて相続するには至ってないものの、下層労働者階級から紳士になるために必要なお金や教育を受けるため、家を出てロンドンに住むようになります。

ロンドンでは、様々なことを学ぶために寄宿する紳士の家で、その家の息子と仲良くなりやがて親友となり家を出て一緒にシェアハウスを借りて住むようになります。

下層労働者の居候だった子供時代に謎だらけの富豪の家に連れていかれますが、そこで知り合った富豪の養女への憧れ、子供の時に沼地で出くわした脱獄囚との関係など、複雑に絡み合いながら、年齢を重ねていくにつれ物語は佳境へと進んでいく一種のミステリー小説です。

ただ、数多くのミステリーを読んできた身としては、その遺産の持ち主が誰かは容易に想像がつき、結果は正解でした。

なにぶん時代背景も執筆されたのも古い小説ですが、テーマのひとつになっている人間性は今も昔も共通した複雑で重要なもので、読んでいても違和感は感じません。

そしてなんと言ってもこの本が長く名作として語り継がれる理由のひとつには、人が生きていくための教訓、友情、親子愛、恋愛、格差、お金の使い道、怨恨などがいくつも散りばめられていて、それぞれの読者の頭の片隅に残るものがあるからだと気がつきました。

あと、まったく本書と直接的に関係はありませんが、最近読んだ「一八八八切り裂きジャック」(服部まゆみ著)と、「ボートの三人男」(ジェローム・K・ジェローム)の小説が、ほぼ同時代で、後に産業革命と名付けられた中のロンドンを舞台とした小説だったので、その頃の世界で最も豊かで洗練され、良くも悪くも話題性に事欠かない都市に住む人達のイメージがダブって見えました。

★★★

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人生にはやらなくていいことがある(ベスト新書) 柳美里

著者の作品は20年以上前に2作品を読んでいますが、どのような背景のある方かは一切知りませんでした。

今回この2016年に出版された新著では、韓国から渡ってきた両親のことや、何度も家出や自殺未遂を繰り返し、名門高校から退学を迫られ中退したこと、10代で劇団に加わりそこで知り合って一緒に住んでいた恋人との死別、シングルマザーとなり、新しい離れた年下のパートナー、購入した鎌倉の家から震災後に福島南相馬市へ引っ越しをした事情など、本人の半生記が何度も同じ事が繰り返して書かれていました。

もちろん、著者にはそういう気はさらさらないでしょうけど、読んでいてこれほどの不幸自慢、貧乏自慢、社会貢献自慢を読まされても気の毒とも思えないし、きっと自己主張が強烈で我の強い人なんだろうなぁというのが感想です。随筆というより自分が波瀾万丈な小説の主人公のようです。

ま、それはともかく、過去に読んだ「家族シネマ」と「フルハウス」は、あまり記憶には残っていないですが、悪い印象はなく(よい印象がなければ2作品目は読まなかった)、作家という特殊な創造性をもった方には、なにか突き抜けた経験と、自信、才能があるものなのでしょう。

この新書を読んだことで、作家のバックボーンが良くも悪くも頭の中に残り、今度著者の小説を読むときには、それらが頭の中を横切り、普通とは違った感想になってしまいそうです。

もちろん著者の大ファンであれば、必読書であることは間違いありません。

★☆☆

著者別読書感想(柳美里)

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闇の底(講談社文庫) 薬丸岳

著者の作家デビューは2005年の江戸川乱歩賞を受賞した「天使のナイフ」でしたが、それに次ぎ2006年に出版されたのが本書で、2009年には文庫化されました。

著者の警察小説には「刑事・夏目信人シリーズ」が有名ですが、今回の作品はそれらよりもずっと前に書かれた独立した作品です。

少し前に読んだ柚月裕子著「慈雨」と同じく、幼女誘拐殺人事件が主たるテーマになっていて、この同じようなテーマがたまたま続いたことで心苦しくなってしまいました。

主人公は、少年時代に幼い妹が誘拐され殺害された過去を持つ刑事で、同様の事件が起きて捜査をおこないます。

また並行して、過去に幼女を暴行し殺害し、10数年の刑を終えて社会復帰している前科者を、同様の事件が起きる度にその事件と関係があるなしにかかわらず、制裁として凄惨に惨殺していく謎の男性が準主人公となっています。

したがって、警察は、幼女殺害事件とともに、幼女殺害の過去を持つ出所者に対する私的リンチ事件の二つを追うことになります。

果たして幼い妹を殺され、それが自分の責任でもあると思っている刑事に、幼女を殺しておきながら社会復帰してのうのうと暮らしている出所者をリンチから守ることはできるのか?というジレンマがあり、、、というような流れです。

未来と無限の可能性がある子供をターゲットとした犯罪は特に凶悪で許されるべきことではありませんが、日本では死刑制度があるものの、原則として複数名の殺害でないとまず死刑には該当せず、さらになんらかの精神疾患等が認められると意外と軽い刑で社会復帰してくるという問題があります。

さらにこの小説でも問題となっていますが、ペドフィリアは罰せられても再犯の可能性が高く、海外では出所後も居場所を公開されていたり、GPS装置を身につけさせられるという強硬な手段も使われています。

個人的には、刑として敷居が高く、世界の主流(G7の中では日本とアメリカだけが死刑あり)となっている死刑制度は廃止(休止)し、その代わりに、完全に社会とは切り離された住人のいない島に長期受刑者用の刑務所を作り、そこで受刑者自らが農業や畜産をおこない自給自足を原則としながら、長期刑(30年とか50年とか)や終身刑という制度を作ってはどうかと思っています。

★★☆

著者別読書感想(薬丸岳)

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空中庭園(文春文庫) 角田光代

2002年に単行本、2005年に文庫化された連作短編小説で、2002年下期の直木賞の候補になりましたが落選しました(直木賞該当作品なし)。増刷されていないのか、Amazonではなぜか販売されていません(2023/3/12時点)。読みたい人はBOOK-OFFへGo!

収録されている作品は、「ラブリー・ホーム」「チョロQ」「空中庭園」「キルト」「鍵つきドア」「光の、闇の」の6篇です。

東京郊外の団地(本文中はダンチ)に住む夫婦と子供二人の一家と、その近くに住む祖母、夫の若い愛人が、それぞれ語り手となって1話ずつ展開していきます。

こうした東京郊外の巨大団地を舞台にした小説は重松清氏や垣谷美雨氏の小説でもよく出てきますが、世代も施設も画一化された人工都市にすむ似たもの同士で、休日には家族でバスやマイカーに乗って近くの巨大ショッピングセンターへ行くのが家族のレジャーという姿は容易に想像ができます。

一家の夫婦は、若いときにできちゃった婚をし、妻は早く母親から離れたかった理由や、ダンチを購入したことで自分の両親とは違った家族を作ろうと奮闘、夫は職を転々としながらも複数の愛人がいるというダメ夫、子供達もそれぞれのストレスや問題を抱えながら、表向きは一切の秘密がない家族を演じています。

そういう意味では、意外性はない普通の家族ドラマとも言えるかも知れませんが、夫の若い愛人が、子供の家庭教師として家に乗り込んでくると言うのは、ちょっとやり過ぎな感じも。

★★☆

著者別読書感想(角田光代)

【関連リンク】
 2月後半の読書 未来を見る力、カタストロフ・マニア、慈雨、ブルーアウト
 2月前半の読書 幽界森娘異聞、保険ぎらい、ホテル・ニューハンプシャー、A2Z
 1月後半の読書 ボートの三人男、叫びと祈り、帰れないヨッパライたちへ、親鸞 完結篇

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