忍者ブログ
リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~ HomePage https://restrer.sakura.ne.jp/
Calendar
<< 2025/11 >>
SMTWTFS
2345 678
9101112 131415
16171819 202122
23242526 272829
30
Recent Entry
Recent Comment
Category
1552   1551   1550   1549   1548   1547  



1862
八甲田山 消された真実(山と渓谷社) 伊藤薫

八甲田山 消された真実
筆者は青森県生まれの元自衛官で、第5普通科連隊や青森地方連絡部などで勤務をした方で、青森の地勢や、時代は違えど軍隊の規律や習性などを熟知した方です。

著者が所属していた自衛隊でも、過去の失敗から学ぶことを大事にしていて、様々な事件の分析をおこなっていたようです。

1902年(明治35年)に起きた総勢210名中199名が一度に凍死するという世界で最悪の集団凍死事件「八甲田雪中行軍遭難事件」については、新田次郎著の「八甲田山死の彷徨」や、それを原作とした映画「八甲田山」が有名で、私も映画を子供の頃に見て、割と最近、9年前に小説を読みました。

2016年9月前半の読書と感想、書評(八甲田山死の彷徨)

その小説の影響もあり、7年ほど前の夏に青森へ行ったとき、幸畑墓苑や八甲田山雪中行軍遭難資料館、歩兵第五連隊第二大隊遭難記念碑 (八甲田山雪中行軍遭難後藤伍長銅像)など訪問しました。

この新田次郎氏の作品は1971年までに判明していることをなぞりながら、あくまで小説として出版されましたが、それ故に、著者の創作が加わり、時が経ってから新たな証言などが発見されたりしたことで、小説や映画で描かれた内容とは少し違う点が露わになってきています。

この書籍は2018年に出版され、そうした新たな発見や証言から事件について真実を突き止めようとするノンフィクションです。

事件の真相に迫るため使われた資料や証言は多岐に渡っています。事件後すぐに陸軍大臣に提出された大臣報告や、2ヶ月後にあらためて陸軍大臣に提出された顛末書が公式文書としてあり、さらに関係者の談話や、生存者からの聞き取り記録、その他地元の新聞東奥日報や河北新報、全国紙の記事などです。

機密保持が厳格な明治時代の軍隊の中で起きた事件で、さらに責任を回避するため画策したり、ミスを死者に押しつけたりしようとする上官や関係者がいても不思議ではありません。

数名の生存者がいながらもなかなか真実が表面化しない側面があり、真実はどうしてもある程度は想像や推理するしかありません。

本書でも「・・・だろう」という表現がかなり多く見られます。また著者がある程度自信があることやそう信じていることについては「・・・である。」という表現で書かれています。小説ではなくノンフィクションという形態ながら、様々な資料や聞き取り、自分の経験から著者の思い込みも含め、推定以外のなにものでもありません。

それだけに本書のタイトルにあるように「消された真実」が、どこまで真実なのかは未だによくわかりません。

なかなか読み応えのある作品でしたが、著者が元自衛官と言うことで、専門用語や軍隊用語が多く、ある程度は知っている人向けの研究本のような感じなので、先に軽めの小説「八甲田山死の彷徨」を参考に読んでおくほうがより理解がしやすいかなと思いました。

同様に事件を元にした小説で伊東潤著「囚われの山」も、内容はやや大雑把でエンタメっぽいですが、これもそこそこ興味深かったです。

2024年5月後半の読書と感想、書評(囚われの山)

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

四人組がいた。(文春文庫) 高村薫

四人組がいた。
2014年に単行本、2018年に文庫化された連作短篇集です。「四人組、怪しむ」、「四人組、夢を見る」、「四人組、豚に逢う」など、12篇のコミカルな短篇が収録されています。

長野県の過疎の村(現在は合併で市)の郵便局兼集会所に毎日集う、元村長、元助役、郵便局長、近所の老婆の4人が主人公です。

有川浩著「三匹のおっさん」や、加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス」のような、高齢者が主役のコミカルな短篇集かと思っていたら、それらよりはファンタジーやホラーなどの要素も加わり、なんだか哲学書を読んでいるかのような難しさと眠けを感じました。

したがって、笑い転げる小説ではなく、どんな突飛な内容でも黙って許せる心の広い人向けで、あまり内容を深く考えたり、突っ込みをいれたりするようなものではありません。

また、高齢化し消滅しそうな地方の村落という問題を提起する社会性があるものでもなく、四つ足のタヌキやクマがエプロンして預かった幼児のおむつ交換をし、キャベツが行進し、ヤマメやウサギと会話するというなんだかよくわからない(それが哲学的)内容で、真剣に読むものではありません。

特に頭が固くなってしまった高齢者(私を含む)には、著者の初期の作品「マークスの山」(1993年)や「レディ・ジョーカー」(1997年)のような本格的なサスペンス小説や、重厚な内容の短篇集の「地を這う虫」(1993年)をイメージして読むと、「なんなんだこれは!」と叫んでしまいそうです。

★☆☆

著者別読書感想(高村薫)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来(朝日新書)

人類の終着点
サブタイトルに「戦争、AI、ヒューマニティの未来」「世界最高の知性による未来予測」「われわれを待ち受けているのは、黙示録か福音か」とうるさいぐらいに盛られています。

朝日新聞社が主催するシンポジウム「朝日地球会議」で、マルクス・ガブリエル、フランシス・フクヤマ、エマニュエル・トッド、スティーブ・ローへのインタビュー、そしてメレディス・ウィテカー、安宅和人、岩間陽子、手塚眞、中島隆博各氏の座談会などで構成されていて、特定の著者というものはありません。

個人的には子供の頃からずっと朝日新聞を読んできたので、この人選については朝日らしさを感じますが、違和感はありません。しかし読売新聞社や東京新聞社、ニューヨークポストが主催のシンポジウムなら、ゲスト陣はまったく違ったものになるのでしょう。

そうしたことから、マスメディアは知ってか知らずか中立とは言えない偏向した思想や考え方を読者や視聴者に植え付けていきます。ずっと昔からそれを続けてきたので今更っていう話しですけど。

それはともかく、2023年の話なので、まだトランプ大統領が2024年に再選される前で、アメリカがそれまでの路線から大きく舵を切る前の話です。

テーマは、政治やAI、戦争の行方など、近未来の話題が中心で、2年経った現時点でも特に時代遅れではなくリアリティがあります。

気になったのは、フランス出身の歴史学者エマニュエル・トッド氏は「アメリカは有事が起きても日本を守る気はないので、安全保障をアメリカに頼るのはリスクが高く、日本は核武装して自衛するしかない」「日本にとって自国で国民生活のすべてまかなえるロシアや中国はたいして問題ではなく、一番危険なのは自国だけで完結できないアメリカだ」ということ。

繰り返しますが、アメリカは民主党のバイデン大統領だった頃の発言で、同盟国に異常な貿易関税を一方的にかけてくるトランプ大統領に代わる前の話です。

また、マルクス・ガブリエルの「右派と左派を単純化すれば、左派は自由、連帯、平等の理念を大事にし、右派はヒエラルキー(権威主義)と国境(排外主義)を大切にする」という言葉は、昨今の日本含め世界状況を見ているとまったくその通りだなぁと思います。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

凍原(小学館文庫) 桜木紫乃

凍原
2009年に単行本、2012年に文庫化された著者の作品では珍しい女性刑事が主人公の人間ドラマ小説です。

釧路の湿原である若い男性の絞殺死体が発見され、これが終戦前後の樺太へのソ連侵攻と住民避難へ遡り、壮大な歴史ドラマが始まります。

割と短い小説(文庫で344ページ)ながら、登場人物が多く、しかもそれが戦後から70年近く経った時代まで関係してくるので時々誰が誰とわからなくなることも。

舞台となるエリアも、一部はマップが掲載されていましたが、釧路市内の他、川上郡標茶町、戦前の南樺太、札幌、小樽、留萌、室蘭などが出てきます。北海道の土地勘がないと、どれほどの距離があり、文化的にどう違うのかなどはわかりにくいでしょう。

主人公の女刑事は子供の頃に弟が湿原で行方不明となり、沼地の中にある壺状の穴、谷地眼(やちまなこ)にはまってしまったのでは?とされています。

そのトラウマを引きずりながら、別の殺人事件に取り組みますが、一緒に捜査する相方が、弟の事故の時のベテラン担当刑事で、このコンビがなかなかのもので面白いです。

そう言えば、谷地眼に落ちて死亡する小説に、内田康夫著「釧路湿原殺人事件」というのがありました。しかし実際は過去に谷地眼で人が亡くなったという事故は記録にはないそうです。

★★☆

著者別読書感想(桜木紫乃)

【関連リンク】
 10月前半の読書 十五少年漂流記、シンセミア(上)(下)、私の流儀、残像に口紅を
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)
 9月前半の読書 続高慢と偏見、夢幻花、うれしい悲鳴をあげてくれ、君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい

[PR] Amazon 書籍 売れ筋ランキング

ビジネス・経済

ビジネス実用本

新書

文庫

文学・評論

コミック

ゲーム攻略・ゲームブック 

ハヤカワ・ミステリー  

創元推理文庫

新潮文庫

講談社文庫

角川文庫

集英社文庫

岩波文庫

文芸作品

ノンフィクション

ミステリー・サスペンス

SF・ホラー・ファンタジー 

歴史・時代小説

経済・社会小説

趣味・実用

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
PR

コメント
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
ブログ内検索
プロフィール
HN:
area@リストラ天国
HP:
性別:
男性
趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
============
プライバシーポリシー及び利用規約
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine

Powered by [PR]


忍者ブログ