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イアン・フレミングイアン・フレミングは1908年に英国で生まれ、1964年(享年56歳)で亡くなった「007ジェームズ・ボンド」シリーズで有名な小説家です。陸軍士官学校を卒業後、何度か転職ののちにロイター通信でモスクワ支局長などを歴任し、その後第二次大戦中に英国海軍情報部(NID)に移っています。

そのNID勤務時代は第2次大戦中で、ナチスドイツに近づきつつあったスペインが枢軸国同盟に加わらないよう監視、妨害をする作戦などに従事していました。

そうした海外諜報活動の経験を元にして書き上げたのが「007シリーズ」で、東西冷戦時代に明るい娯楽を求めていた社会で大ヒットします。

先日、同じく英国の作家で「ジャッカルの日」などの著作があるフレデリック・フォーサイス(1938年~)の自伝を読みましたが、彼も若いときには軍隊(英国空軍)に所属し、その後新聞社やテレビ局の海外特派員などを経てから作家の道を歩んでいます。

2024年3月後半の読書と感想、書評「アウトサイダー 陰謀の中の人生 フレデリック・フォーサイス」

フォーサイスの場合は軍の情報部に勤務をした経験はなかったものの、情報部に依頼され東ドイツにいるスパイと接触をするなど東西冷戦の中で似たような経験をしています。

イアン・フレミングの作品は、007シリーズの長編小説が12作品あり、その他に007の短篇小説集が2作品あります。

また、007シリーズ以外に、有名な子供向けの物語「チキ・チキ・バン・バン(空とぶ自動車)」や、ノンフィクションが数冊残されています。映画にもなった「チキ・チキ・バン・バン」(1968年公開)は私が子供の頃(当時11歳)に親に連れられ映画館で見た記憶があります。

遺作となったのは、007シリーズの最終巻「黄金の銃をもつ男」で、その最終校正中に心臓麻痺で亡くなったそうです。56歳と作家としてはまだこれからという年齢だっただけに、急逝しなければ、シリーズの続編がいくつも書かれていたことでしょう。

ところで、007シリーズは小説よりももっぱら映画が有名で、イアン・フレミング原作の作品は長編、短篇ともほぼすべてが映画化されています。

ただ映画の制作順は小説の出版順ではなく、それぞれが独立した作品となっています。さらに、すべての作品の映画化が終わると「消されたライセンス」(1989年)以降、別の作家が書いたオリジナルストーリーで継続されています。

映画に出てくる主人公は小説とはかなり違い、映画では不死身の強いヒーローですが、小説ではなにかにつけクヨクヨと悩み、落ち込んで、時には周囲からあきられるほど酒浸りになる弱い男のシーンがよく出てきます。映画のイメージで小説を読むと驚きます。

映画のようなエンタメでは、小説で出てくる悪人を撃って落ち込むようなひ弱なヒーローでは不向きですが、そうした弱みや感情豊かな愛すべき人間性の主人公が本来の姿であり、小説のそうしたところに強く惹かれます。

私が007シリーズ(小説)を読んだのは1998年~2000年頃で、文庫本は早川書房と東京創元社の2社に別れて出版されていました。出版社は違えど日本語翻訳はどちらも井上一夫氏という変則的な形態です。

その後の新装版などでは新訳として別の翻訳者に変わっている作品もあるようです。なにぶんオリジナルの翻訳版が発刊されたのは1950年代から60年代と今から60年近く前のものなので、言葉遣いや差別用語などが今とは違っているのでそれらの修正ということもあるでしょう。

長編12作の中で私の一番好きだったのは、10作目の「女王陛下の007」です。

その10作目の最後には、ネタバレ防止のため詳しくは書きませんが、007にとって衝撃的なことが起き、その後の11作目ではふぬけになった007が遠く日本へ送られる「007は二度死ぬ」へつながっていきます。

そのふぬけ状態の007はというと、「007は二度死ぬ」の冒頭部分に出てきますが、秘密情報部部長で007の上司のMと、精神状態が最悪だった007の診断を依頼されていた神経科医のサー・ジェイムズ・モロニーとが下記のような会話を交わします。


(M)「出勤時間にも遅れるし、仕事の手を抜く、間違いを犯す、酒も飲み過ぎ、賭博クラブで大金をすっている。一番の腕利きだった部下が、保安上の危険人物にもなりかねている。」

(神経科医)「だが、彼はどこも悪くない。肉体的にはどこも悪くない。ただのショックだったんだ。本人も私にあらゆる情熱がなくなってしまったと認めている。仕事にもう興味はないし、生きていくことにすら興味がないと言うんだ」「ここ数ヶ月のうちに、彼に何か難しい任務を与えてみたかね?」

(M)「ふたつやらせた。ふたつとも失敗した。ひとつではもう少しで殺されそうになったし、もうひとつの仕事では他の連中を危険にさらすような失敗をやった。急にへまばかり足手まといになったんだ」

(神経科医)「それも神経症の徴候だな。それで、どうするつもりだね?」

(M)「クビにする。撃たれて使い物にならなくなったとか、何か不治の病に罹ったのと同じだ。これまでの経歴がどんなものであろうと、心理学者がどんな理由を見つけてくれようと、あの男の部署に能なしを置いておくことはできんからな。もちろん恩給は支給する。」

どうです?このようなヨレヨレのジェイムズ・ボンドは映画ではまず見られないでしょ?

下記の表は、007シリーズの購入時の表紙と裏表紙に書かれたあらすじ(1950~60年代の本ですから、「冒険活劇」「不死身の快男児」など、今では苦笑するしかない表現があちこちで使われています)です。

年数は日本語訳版の初版発行年、英語の原題にはオリジナル英語版のリンク(Amazon)を付けています。

また短篇集の「オクトパシー」(旧版のタイトルは「007号/ベルリン脱出」)は未読でこの表には含まれません。

ジェームズ・ボンドシリーズ イアン・フレミング
Ian Lancaster Fleming  James Bond Novel
ジェームズ・ボンドシリーズ
 
01 カジノ・ロワイヤル Casino Royale 1953年 東京創元社
カジノ・ロワイヤル ソ連の工作員でフランスの共産系労働組合の大物、ル・シッフル。

財政難に陥った彼は、今夏ヨーロッパで最高の賭けが行なわれると噂の海水浴場ロワイヤルに乗りこむ。

そうはさせじと英米仏三国の共同作戦のもと、バカラ賭博に挑む英国秘密情報部員007号、ジェームズ・ボンド。

賭け金は幾何級数的に上昇するが・・・・・!不死身の快男児ボンドが初登場。これがエンタテインメントの粋。

1999/10/05読了
  
02 死ぬのは奴らだ Live and Let Die 1954年 早川書房
死ぬのは奴らだ ボンドの今回の標的は、全米の暗黒街を牛耳る男ミスター・ビッグ彼はジャマイカから大量の古代金貨を盗み出し、世界の金相場を狂わせようと企んでいた。

Mの指令を受けたボンドはニューヨークへ飛び、旧友のCIA局員ライターとともに調査を開始した。

だがやがて、敵の罠に陥ったライターは瀕死の重傷を負い、ボンドも絶体絶命の窮地に!鮮烈なヒーロー、ジェイムズ・ボンドの名を確立した初期の傑作。改訳決定版

1998/04/17読了
  
03 ムーンレイカー Moonraker 1955年 東京創元社
ムーンレイカー 第二次大戦中ドイツ軍の破壊活動に巻きこまれたその男は、記憶が戻らぬままヒューゴ・ドラックスと名乗ることになった。

戦後、巨億の財をなした男は、国に報復攻撃用の超大型原子力ロケットの寄附を申し出、一躍英雄となる。

ところが、問題のムーンレイカー号が完成目前ドーヴァー海岸にある基地で保安係が疑惑の死を遂げた。

007号ジェームズ・ボンドはひとり、謎の渦中へ・・・・・・

1999/06/03読了
  
04 ダイヤモンドは永遠に Diamonds are Forever 1956年 東京創元社
ダイヤモンドは永遠に アフリカのダイヤモンド鉱山から、年間少なく見積もっても二百万ポンドにのぼる金額のダイヤが密輸されている!

二十世紀初頭からこの商売の主導権を握っている英国にとっては由々しき問題だった。

かくて、海外秘密情報部員ジェームズ・ボンドに、逮捕された運び屋になりかわって密輸ルートに潜入し、ダイヤを目的地アメリカへ送り届けよ、との指令が下る。

波瀾に富む会心作。

1999/06/14読了
 
05 ロシアから愛をこめて From Russia, With Love 1957年 東京創元社
ロシアから愛をこめて 相つぐ自国スパイの摘発に、失地回復のためソ連情報部は西側の重要スパイを一人、暗殺することにした。

標的は英国情報部のジェームズ・ボンド。実行にあたるのは国家保安省の公式殺人機関スメルシュである。

かくして二重三重の罠が仕掛けられたイスタンブールへ、ボンドは誘い出される・・・・・・。

不死身の快男児が追いこまれた絶体絶命の窮地!冒険活劇の粋を集めたシリーズ最高峰。

1999/09/29読了
 
06 ドクター・ノオ Doctor No 1958年 早川書房
ドクター・ノオ 紫紺の影が波のように通りを覆う黄昏。英国情報部カリブ海域地区の責任者は、本部に定期連絡を取るため静まり返ったジャマイカの高級住宅街を歩いていた。

彼が道にうずくまる三人組の男のそばを通りすぎたとき、突如、三挺の消音銃が火を噴いた。

数分後、今度は支局内で悲鳴が・・・・・・

Mの密命を帯び、ボンドは事態を探るためカリブ海に浮かぶ孤島へと飛んだ。

だが、そこは恐るべき陰謀を企む怪人ノオ博士の根城だったのだ!

1998/10/28読了
 
07 ゴールドフィンガー Goldfinger 1959年 早川書房
ゴールドフィンガー 英国情報部員ジェイムズ・ボンドは、オーリックゴールドフィンガーと名乗る謎の男と出会い、男がカードでいかさまを働くのを見破った。

が、黄金を異常に愛するこの男の正体とは、巨大な犯罪組織を牛耳る怪物だったのだ。

やがてボンドは、ゴールドフィンガーが企む恐るべき犯罪計画に単身闘いを挑んでいく!スパイ小説史上もっとも有名なヒーローが、華麗な活躍を見せる永遠の名シリーズを代表する傑作。改訳決定版。

1998/03/14読了
 
08 サンダーボール作戦 Thunderball 1961年 早川書房
サンダーボール作戦 核爆弾を搭載したNATOの爆撃機が、突如連絡を絶った。

その直後、英国首相のもとに核爆弾と引き換えに一億ポンドの金塊を要求する脅迫状が舞い込んだ。署名はスペクター。悪の首魁ブロフェルド率いる世界最強の犯罪組織が姿を現わしたのだ。

爆撃機の行方を追い、バハマへ飛んだボンドを待っていたのは謎の美女との危険な出会いだった!

海底に展開するボンドとスペクター一味の死闘。冒険活劇の醍醐味あふれる第三弾

1998/04/30読了
 
09 わたしを愛したスパイ The Spy Who Loved Me 1962年 早川書房
わたしを愛したスパイ 今度はわたしが男に牙をむく番だ―そんな決意を秘め、ヴィヴィエンヌはアメリカへ渡った。

イギリスでの生活と、彼女を弄んで捨てた男たちから逃げだして。

が、ここでも男たちの魔手が彼女を襲った。二人組のギャングが、彼女が独りでいたホテルに押し入ってきたのだ。

彼女の窮地を救ったのは、ジェイムズ・ボンドと名乗る謎の男だった・・・・・・

女性の視点からボンド像に光を当て、強烈なスリルとエロティシズムで綴る異色作

1998/06/27読了
 
10 女王陛下の007 On Her Majesty's Secret Service 1963年 早川書房
女王陛下の007 窮地を救い、ボンドが一夜を共にした女性―彼女はマフィアの首領カピューの娘だった。

彼に惚れこんだカピューは、ボンドの宿敵ブロフェルドがスイスにいる事実を突きとめてくれた。

ブロフェルドは伯爵をかたり、なぜか若い女性だけを集めて山中に潜んでいるらしい。

ボンドは准男爵に化け、敵の本拠地へ乗り込む!アルプスに展開する壮絶な追跡行。

ボンドの人生に華麗かつ残酷な歴史が刻まれる注目の一作。改訳決定版

1999/02/02読了
 
11 007は二度死ぬ You Only Live Twice 1964年 早川書房
007は二度死ぬ 愛妻を殺され、傷心のボンドをMは日本へ送りこんだ。

万能暗号解読機を入手するため、そして使い物にならず、解雇寸前のボンドに最後のチャンスを与えるためでもあった。

彼を迎えたのはタイガー田中と名乗る男だった。男は解読機を渡す代わりに、福岡で毒草を栽培する危険な植物学者の殺害を命じる。

ボンドは条件を呑んだ。だが、その学者の写真を見た彼は…!

ボンドの眼を借りた日本観が横溢する注目作。改訳決定版

2000/03/10読了
 
12 黄金の銃をもつ男 The Man with the Golden Gun 1965年 早川書房
黄金の銃をもつ男 任務中に行方不明となり、死亡したと伝えられていたボンドが突然帰国した。

報告を受けるMをボンドの銃が襲った。失踪中に洗脳されたらしい。ボンドの復帰を願うMは、再洗脳後“黄金の銃をもつ男”として恐れられる殺し屋スカラマンガの暗殺を命じた。

この男こそ、西側の情報部員を次々と亡き者にしてきた宿敵なのだ。

ボンドは身分を隠して敵の本拠地キューバに乗り込んでいく!永遠の名シリーズの掉尾を飾る迫力篇。

2000/03/06読了
 
13 バラと拳銃 短篇集 From a View To A Kill 1964年 東京創元社
バラと拳銃 常に生と死の境目で、綱渡りのように危険な任務を遂行する英国秘密情報部員007号、ジェームズ・ボンド。

パリ近郊の森の中に設置されたソ連軍情報機関の破壊、ジャマイカに横行する兇悪なナチ残党の暗殺、ローマからベニスへ通じる麻薬ルートの追跡・・・・・・。

東奔西走、世界を股にかけた不死身の快男児の、胸のすくような冒険の数々。

スリル満点の五編を収めた、ファン待望の一巻!

1999/06/16読了

もし将来に最初からリメイクされて映画化がされることになった場合は、スーパーヒーローではなく小説の主人公に限りなく近い"人間くさい"主人公で製作してもらえることを切に願っています。

【関連リンク】
1559 浅田次郎の歩き方
1472 ハリー・ボッシュシリーズはまだ未完
808 ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ

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無駄だらけの社会保障(日経プレミアシリーズ) 日本経済新聞社編

無駄だらけの社会保障2020年に発刊された新書ですが、本文中で使われているデータやインタビューなどの調査がコロナ禍前のもので、やや出版のタイミングが悪かったと言うしかありません。

というのも、中身は平穏な世の中において高騰し続ける医療や介護の社会保障費の実態と、それらをどうやって削減していくべきかのご立派な提言で、あのコロナ禍中のドタバタを見ていると、日本の医療・社会保障行政や医療機関はまるで頼りにはならないことが露呈してしまったわけで、その内部から実のある改革ができるとはとても思えません。

しかし本文中で繰り返し語られているように、病院は空きベッドを減らすため無理してでも入院患者を増やし、医薬品の処方箋をたっぷりと出すことで利益が得られ、経営が安定するという構造や、介護施設でもコロコロ変わる政策に合わせ補助金頼みで、医療と介護がうまく連携ができていない状況が変わらない限り、医療費の削減はいくら一般患者に「医療費削減」を求めても無理な話です。

患者は医者や病院からの提案を断ることはできないから、治療や入退院、投薬などすべては専門家の言いなりになるしかありません。つまりまずは医療機関や医者自身が大きく変わらない限り、今のままズルズルといくことになるのでしょう。

それでも一般的には何年も入居待ちと言われている要介護者が入居できる特別養護老人ホーム(特養)が、実は介護人材不足と、高い個室部屋が敬遠され、国の机上の予想との乖離があってかなり空きがあるということはこの本で知りました。

あと、本著では一切触れられていませんが、政治的な圧力団体で医者の利益代表でもある保守的で利権体質の医師会の存在が改革の大きな障壁になっていると思っていて、患者第一主義ではない現在の各種の医療業界にはびこる規制やルールなどの問題にも触れて欲しかったというのが感想です。

★★☆

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あなたが消えた夜に(毎日文庫) 中村文則

あなたが消えた夜に本作品は2014年に毎日新聞の連載小説として掲載され、2015年に単行本、2018年に文庫化されました。

主人公は子供の頃に起きた(起こした)トラブルからトラウマに悩まされている東京郊外の警察署所属の中堅刑事と、殺人事件発生で応援にやってきた警視庁の新米刑事の女性の二人です。こういう組み合わせ、よくありますね。

その二人の刑事の掛け合いがメインですが、捜査する事件や登場人物が複雑で、読んでいても混乱します。

ましてや新聞連載小説だと、毎日切れ切れで読むことになり、時には読めない日もあったりして「これで大丈夫だったの?」と勝手に心配しました。

しかし所々で、登場人物や、事件に関わりのある人の説明が加わっていたので、なんとか路頭に迷わず最後まで読むことができました。

連続殺人事件や模倣犯といった、古くからある犯罪ミステリーですが、そこは一筋縄では終わらない著者の鋭いアイデアがちりばめられています。

また現実にはこれから殺そうとする人物を探偵会社に頼んでその居場所を突き止めてもらうとか、刑事が通りで不審者を見つけ、本人の了解もなしに持ち物のバッグの中をあらためるとか、現実的にはちょっと無理がありそうというところはともかく、当初の人間関係がガラガラと崩れ変わっていく物語は、ミステリー小説としての醍醐味は感じられました。

★★☆

著者別読書感想(中村文則)

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木漏れ日に泳ぐ魚(文春文庫) 恩田陸

木漏れ日に泳ぐ魚婦人公論に2006年~2007年に連載され、2007年に単行本、2010年に文庫化された長編小説です。

主人公は二人、一緒に住んでいた若い二人の男女ですが、次の日の朝には部屋の鍵を不動産会社に渡し、この部屋を出て別々の道を行くことが決まっていて、その最後の夜から始まります。

なぜ別れるのか、お互いがある殺人に関わっていたのではという疑念があり、それはどのようなことだったのか?など、読者に数々の疑問を抱かせながら二人の深夜の話し合いが淡々と進められていきます。

登場人物は少なく、わかりやすい設定ながら、徐々に明らかになってくる二人の関係性や、複雑な家族の話などが明らかになるにつれ物語の深刻さがジワジワと浸みてきます。

ただ最後はいまいちわかりにくい感じで、二度三度読んでもなにがどうした?って混乱してしまいました。著者の作品は、割とこうした読者に考えさせる終わり方をする作品が多いようです。

★★☆

著者別読書感想(恩田陸)

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ロウソクの科学(角川文庫) ファラデー

ロウソクの科学1861年と言いますから今から163年前に英国の王立研究所で行われた物理学者マイケル・ファラデーの講演をまとめたものです。

1860年~1861年頃と言うと、日本は江戸時代で桜田門外の変(1960年)、アメリカではリンカーンが大統領に就任し(1860年)し南北戦争が始まり(1961年~)、中国は清の時代で西太后の摂政政治が始まります(1861年~)。

当然、当時はまだ電灯はなく、夜の灯りと言えばガス灯かロウソクしかない時代です。また科学や化学も今の小中学生レベルの常識がまだ通用するかしないかの社会です。

そういう時代に、多くの市民や子供を集めたクリスマス講演で、ロウソクがなぜ灯るのか、火がついてどう変化するのか、なにが発生するのか、発生した気体はどういう特徴があるのか、などを様々な実験器具を用いてわかりやすく説明していきます。

現代人が読むと、「そんなこと知っているよ」という酸素や水素、窒素、炭素(二酸化炭素)の話などが中心になりますが、160年も前にそれらの役割を知っていた人は限られるでしょう。

ローソクが燃えると言うことは、その酸素や水素、窒素、炭素が関係するということで、テーマが馴染みのあるローソクにスポットを当てているのでしょう。

今、大人が読んでもその話は面白く、当時の子供達が科学をこれから勉強したいと思わせるような良い講演だったろうと思います。

★★☆

【関連リンク】
 3月後半の読書 ものごとに動じない人の習慣術、アジアンタムブルー、アウトサイダー 陰謀の中の人生、僕の探偵 
 3月前半の読書 とれない「痛み」はない、記憶の渚にて、袋小路の男、おれの死体を探せ
 2月後半の読書 帰郷 三世代警察医物語、人はどう死ぬのか、総員起シ、傷だらけのカミーユ


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ものごとに動じない人の習慣術(KAWADE夢新書) 菅原圭

ものごとに動じない人の習慣術著者は元出版社で勤務したあとフリーライター、作家として活動されていて数多くの啓発本を出版されています。

この本は、2020年出版ということでまだ新しい本と思って買いましたが、元は2008年に出版した同名の新装版ということで、すっかり河出書房新社に騙されてしまいました。

お正月に国立競技場へラグビーの試合を見に行ったとき、河出書房新社のビルが健在で懐かしかったです。

というのも、40数年前の1980年頃に、週1回は河出書房新社へ仕事で通っていたことがあり、当時の担当者が「良かったら読んでみて」とくださった書籍は読んだ後今でも私の書棚に置いてあります。

河出書房新社は、歴史ある名門の出版社ですが、過去2度倒産の憂き目に遭い、苦労しながら再建してきた会社で、社名につけられた「新社」がそれを物語っています。仕事ではたいへんお世話になったこともあり、陰ながらずっと応援していました。

閑話休題、著書の感想ですが、20代後半から30代の人向けと思われる内容で、還暦過ぎた酸いも甘いも経験してきた親父が読むのには向きませんでした。

私も若いときにもっとこういう自己啓発本を読んでいれば、また違った人生を歩んでいたかもと思いますが、なにぶん今の人向きにノリが軽い話が多く、私の若いときの仕事や上司には絶対服従の根性論とは違っていますから合わなかったでしょう。

個人的には、予定通りにいかなかったときに、冷静になれず慌ててしまう性格で、それを直したいな~と思ってタイトルに惹かれ手に取りましたが、そういう感じではありませんでした。

★☆☆

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アジアンタムブルー(角川文庫) 大崎善生

アジアンタムブルー著者の作品は、20年前の2004年に「パイロットフィッシュ」(2001年)を読んで以来なので20年ぶりです。本著は2002年に単行本、2005年に文庫版が出版されています。また2006年には阿部寛主演で映画も製作されています。見てないけど。

この作品は、「パイロットフィッシュ」、「エンプティスター」(2012年)とともにエロ系雑誌の編集者、山崎隆二を主人公とする恋愛三部作です。

アジアンタムブルーって何?と知らないまま読み始めましたが、作中に「観葉植物のアジアンタムが水不足で葉がちりちりになってしまい、その状態がみるみるうちに葉全体に広がってしまう現象のこと」ということだそうです。

観葉植物のアジアンタムの話や、熱帯魚の王様といわれている飼育が難しいディスカスの話、ブリティッシュ・ロック、そして酒と料理の話など、著者の趣味の多くが小説の中で生かされている感じがします。

内容は、仕事がらみで知り合った女性のカメラマンと付き合うようになったきっかけや、一緒に同棲を始めた後にその恋人が胃がんの末期ということがわかり、、、という悲恋の物語です。

ま、若い恋人や連れ合いが不治の病に倒れてあらためて愛を考えるというのは恋愛小説やドラマでは定番過ぎて、もう今はお腹いっぱいっていう感じですが、青春時代に読むとそれなりに感動もするのでしょう。えぇ私にもそういう時期がありましたもの。

この小説に出てくる登場人物はいずれも魅力的で、主人公と気の合うSMの女王や、主人公と仕事を超えて気の合う風俗ライター、恋人の余命宣告をし主人公の無茶な提案を受け入れてくれる主治医、フランスのニースで知り合ったタクシー運転手など善人ばかりで、実際には周囲に山ほどいるはずの悪人は表だって出てこない私の好きなタイプの小説です。

★★☆

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アウトサイダー 陰謀の中の人生(角川文庫) フレデリック・フォーサイス

アウトサイダー日本語版の単行本が2016年に出版されたこの作品は著者の今までの国際陰謀スリラーとは違い、完全な自伝です。

理解のある両親の元で比較的裕福な家庭に育った著者の中学生時代、全寮制の高校時代、そしてパイロットを志望して空軍に入り、その後は海外特派員になりたくて新聞社や放送局(BBC)などで活躍する姿とその失望などが生々しく書かれています。

ジャーナリストとして世界中を飛び回ったことで、デビュー作「ジャッカルの日」や2作目「オデッサファイル」、3作目「戦争の犬たち」の構想を得て、窮乏状態をなんとかしようと小説を書いて打開しようと出版社を回ったことなどリアルです。

そして出版社回りがうまくいかずバーでやけ酒を飲んでいるところに知り合った紳士の助けで幸運もありベストセラー作家として上り詰めていきます。

特に秀逸だったのは新聞社に記者として勤務していた時に、どこへ行くにも監視がつく東ドイツのベルリンでの勤務時代です。

子供の頃からフランスやドイツにホームステイして多国語を自由に操れるようになり、その能力を生かしてまるでサスペンス映画のような様々な危機をしのいでいきます。

また英国の情報部から東ドイツのドレスデンまで行き、ソ連のスパイと書類を交換する仕事を頼まれ、自分のクルマで美術研究者として活動するシーンはスパイ映画も顔負けの展開です。

その後はアフリカへ飛んで、ナイジェリアから独立しようとするビアフラとの戦争を中に入り込んで取材をしてレポートを揚げますが、雇い主のBBCは英国政府が支持するナイジェリア政府の汚点は表面化することがなく、逆に著者はビアフラで悲惨な飢餓状態や英国製の武器で一般市民が蹂躙されるのを目の当たりにします。

解説で少し書かれていましたが、著者はアフリカの赤道ギニア共和国の政府を転覆させようと、私財をつぎ込み傭兵を雇ってクーデターを起こしたと言われていますが、本文中にはそれらのことはあまり触れられていません。著者にとっては根も葉もないことなのか、それとも触れたくない大きな汚点だったのかは不明です。

あと、著者はずっと昔のインタビュー記事で、日本嫌いということが書かれていたのを読んだことがあります。

理由は確か太平洋戦争時の日本軍と英国軍の戦いと、日本の戦争捕虜の扱いなどに憤慨したということでしたが、今ではその日本嫌いの思いは薄まっているようで、本著の中にも夫婦で日本を旅行し、高野山などへ行ったことなどが書かれています。しかし相変わらず日本や日本人が好きという感じではなさそうです。

この自伝がおそらく著者の最後の作品となりそうです。1996年に一度絶筆宣言をし、その4年後に再び作品を出した経緯がありますが、もうお金を稼がなくても十分らしいので、そのモチベーションはなさそうです。

★★★

著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)

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僕の探偵(創元推理文庫) 新野剛志

僕の探偵2012年に「素人がいっぱい ラブホリックの事件簿」というタイトルで単行本が出版され、2016年に文庫が出版されるときにタイトルが変更された連作短篇集です。

「死者に名を」「雨宿り」「女王様のクリスマスプレゼント」「恋は紫色」「生者に花を」の5篇で組み立てられていて、最後まで読むと不可思議な登場人物の謎などが明らかになります。

単行本タイトルの「ラブホリック」とは主人公が勤務する渋谷の風俗店デリバリーヘルスの店名で、その主人公と大学時代の頭脳明晰な友人が探偵役で、三軒茶屋のアパートで同居しています。

そのデルヘリで起きる様々な事件や不可解な出来事を推理して解決に導くホームズ役が主人公の友人で、その周囲でオタオタするのがワトソン役の主人公というよくあるパターンです。

解説でも書かれていましたが、居候として同居する友人が探偵役とするのは、三浦しをん著の直木賞受賞作「まほろ駅前多田便利軒」と設定等が似ているところがあります。

ま、事件も風俗の仕事の様子もあまりリアリティはなく、さすがに著者自身が実際に現場経験してきた空港勤務の旅行代理店職員「あぽやん」と比べて内容に軽さと薄さが目立ちます。仕方ないですけど。

★★☆

著者別読書感想(新野剛志)

【関連リンク】
 3月前半の読書 とれない「痛み」はない、記憶の渚にて、袋小路の男、おれの死体を探せ
 2月後半の読書 帰郷 三世代警察医物語、人はどう死ぬのか、総員起シ、傷だらけのカミーユ
 2月前半の読書 やがて、警官は微睡る、キル・リスト、検事の本懐、みちづれ 短篇集モザイクI

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1776
高齢夫婦63歳になる少し前にすべての仕事からリタイアしましたが、その前後にはいくつかの「定年本」を読みあさりました。またリタイアと同時にやってくる年金生活や老後の問題など関連本も読みました。何事も知識を得るのは重要です。

しかし、本当は定年やリタイアしてからそういう本を読むのは遅く、少なくとも定年やリタイアする10年ほど前には読んでおくべきだったと後悔しています。

なかなかバリバリ働いている40代や50代のはじめに定年後や老後の関連本を読むというのは心理的にも難しいもので、できれば老後のことなんか考えたくないという感覚が普通ではないかと思います。

なぜ10年前に知識を得ておかなければならないかというと、個人個人で資産や住まい、ローン、子供の教育、趣味やライフスタイルなどが違っているのが普通で、それをよく調べ、考え、対処をした上でリタイアや年金生活に入っていくのが望ましいからです。

わかりやすいのは、定年の時までには住宅ローンや子育て(教育費など)が終わっていることが望ましいですが、人によって違っているはずです。

住宅ローンが65歳まで続くから退職金で繰り上げ返済するか、定年後も引き続き働こうとぼんやり考えていても、定年後に得られる収入は信じられないぐらい減り、退職金も団塊世代がリタイアする頃とは違って今は大きく減っています。私が勤務していたところは自主的に決めるわずかな確定拠出年金制度(401K)はありましたが、退職金制度はありませんでした。

それまで収入に占める割合が低いためにあまり気にならなかった健康保険料や介護保険、各種の税金が少ない収入にズシリと乗っかってきてそれまでの生活スタイルを維持するためには老後のためと思っていた貯蓄がみるみる減っていくことになります。

しかし退職する10年前(50~55歳頃)なら、様々な手がまだ打てます。例えば、持ち家の場合、屋根や外壁の修理など大金がかかる修繕や、マイカーを老後も乗り続ける場合、退職する前に新車を購入しておくほうが良さそうで、さらに住宅ローンも退職する前には完済しておきたいものです。

老後に備えて今流行っている積み立て債権に投資する場合や、国民年金に上乗せする国民年金基金も、60歳になってからではもう遅く、少なくとも50歳になるまでには始めないとその恩恵を得られるのは定年後のずっと後と言うことになりかねません。

その他、保険の見直しや、定年後の仕事(資格取得や勉強)、住まい(住み替えや自宅修繕、移住、引っ越し)なども退職してからではなくその前から準備や計画を始めておくのが望ましいでしょう。

そうしたリタイア後のためにあらかじめできるだけ早く定年本や老後のリアルな話を読んでおくことをお勧めします。

ただ、その一部には実際の世の中のことを知らない学者の先生や、お金持ちの評論家などが非現実的な机上の論理でご立派な自説を述べている書籍もあり、その取捨選択は必要です。

どの本が役立つかは、お金、仕事、健康、介護、家族、人間関係、住まいなど、読者が何を求めるかによっても違ってきますので、「これだけ!」というものはありません。

私が過去に読んだ定年本や老後本と、その感想(リンク)を並べておきます。少しでもお役に立てば良いですが、何を重要に思うかの価値観は人それぞれで、時代によっても変わってきますのでご参考まで。

定年/老後/介護本既読一覧
定年本/エッセイ 著者 感想
定年後 年金前 岩崎日出俊 Entry/650/
定年後 50歳からの生き方、終わり方 楠木新 Entry/876/
定年前後の「やってはいけない」人生100年時代
の生き方、働き方
郡山史郎 Entry/1102/
定年後 年金プラス、ひとの役に立つ働き方 杉山由美子 Entry/1132/
定年バカ 勢古浩爾 Entry/1443/
定年後7年目のリアル 勢古浩爾 Entry/1038/
定年後のリアル 勢古浩爾 Entry/982/
退職金貧乏 塚崎公義 Entry/694/
定年ですよ 退職前に読んでおきたいマネー教本 日経ヴェリタス Entry/1086/
超リタイア術 野口悠紀雄 なし
定年病! 野末陳平 Entry/698/
 
老後・介護/エッセイ 著者 感想
脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法 新井平伊 Entry/1333/
おひとりさまの老後 上野千鶴子 Entry/557/
老後に破産しないお金の話 大竹のり子 Entry/802/
年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方 荻原博子 Entry/1400/
みっともない老い方 60歳からの「生き直し」のすすめ 川北義則 Entry/938/
老いの才覚 曾野綾子 Entry/811/
老後に本当はいくら必要か 津田倫男 Entry/864/
介護ビジネスの罠 長岡美代 Entry/973/
老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する 野澤千絵 Entry/1314/
老いる家 崩れる街 野澤千絵 Entry/933/
風のささやき 介護する人への13の話 姫野カオルコ Entry/698/
下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 藤田孝典 Entry/690/
東京消滅-介護破綻と地方移住 増田寛也 Entry/1273/
老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの 増本康平 Entry/1340/
老いる覚悟 森村誠一 Entry/668/
 
定年・介護・老後/小説 著者 感想
ハッピー・リタイアメント 浅田次郎 Entry/235/
恍惚の人 有吉佐和子 Entry/672/
老後の資金がありません 垣谷美雨 Entry/1118/
定年ゴジラ 重松清 なし
介護退職 楡 周平 Entry/565/
老いた男 トマス・ペリー Entry/1427/
介護入門 モブ・ノリオ Entry/608/


【関連リンク】
1397 早期退職はありかなしか
1394 あと半年に迫ったリタイア準備
1215 定年退職後の再就職はどうする

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1775
とれない「痛み」はない(幻冬舎新書) 柏木邦友

とれない「痛み」はない著者は珍しい麻酔科医でありながら、現在はフリーの立場で麻酔医として病院で勤務しながら動物病院にも勤務されているという変わり種の方で、本著は2022年に出版されています。


私は2016年に初めて全身麻酔で手術を受けたとき、事前に麻酔医との面接?があり、アレルギーや体調などについてあれこれ問診されたことを思い出しました。

麻酔は手術をする医者(執刀医)がその前段としておこなうものとばかり思っていたので、その時は、「へぇー麻酔の専門医がいるんだー」と思いましたが、この本を読んで麻酔医の役割や、重要性がよくわかりました。

そういうあまり麻酔医という馴染みがない専門医療について書かれた本です。

一般的に人は加齢とともに、様々の痛みと闘っていかなければなりません。関節痛や神経痛、頭痛、腰痛などはもちろん、癌や慢性病など関わっていく病気も増えていきます。また出産という非常に強い痛みを伴う時にも麻酔を使った無痛出産が広がってきています。

麻酔というのは手術の時だけではなく、そうした痛みを和らげ、日常生活に支障が出ないようにする、また残された時間を安寧に送れるようにするために必要な術式で、「麻酔=危険、中毒」という従来からある概念はすでに変わってきています。

麻酔や鎮痛にも種類があり、使いすぎると中毒やオーバードーズになってしまう薬剤もあり、そのあたりの説明もなされています。

一般論としての話で、自分に当てはめてみてどうなのか?というのはわかりにくいのと、馴染みがない専門性の強い話が多くてやや理解が難しいですが、知識として知っておくのには役立ちそうです。

★★☆

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記憶の渚にて(角川文庫) 白石一文

記憶の渚にて2016年に単行本、2019年に文庫版が出版された小説で、ジャンルとしてはミステリーとか一部ファンタジー?という感じの話でした。文庫版で577ページという長編です。

第1部では地方都市で零細なアトピー患者向け石鹸の販売代理をしている主人公が、長く疎遠状態だった作家をしていた兄が謎の自殺し上京しますが、兄の世話をしてくれていたと思われる女性を探し出したところ、その女性と離婚した元夫から難癖を付けられあっさりとナイフで刺されて死んでしまいます。

第2部では第1部から数年後、主人公とその自殺した兄の義理の甥という縁者が主人公となり、作家として活動していますが、自殺した作家の叔父がなぜ自殺しなければならなかったのか、叔父と仕事で関係があった元新聞記者とともに調べていきます。

このあたりから、宗教やスピリチュアルの話が多くなってくるのと、人間関係が叔父や叔母、腹違いの姉妹、遠い親戚など多くの人が登場してきてなかなか頭の中で整理がつかなくなります。

一応、巻頭には主な登場人物が書かれていましたが、実際に登場するのはその何倍もの人たちが次々出てきて、メモリー領域が少ない私は完全にオーバーフローしました。

本当なら登場人物と同時に、その相関関係図(家系図など)もあれば良いのですが、それは後でわかる本題のミステリーの要素にも関わってくるので最初には書けないでしょう。

こうした遺伝子に組み込まれているという前世に経験したことや、手をかざして治療する特殊能力、一晩でアトピーが治る神秘の樹木、亡くなった人の天の声が聞こえるなど、霊やスピチュアルな話はどうも苦手で、読んでいて徐々にしらけてしまったのは個人的な問題で、エンタメとしては脈々とつながる壮大なドラマという話になっています。

★☆☆

著者別読書感想(白石一文)

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袋小路の男(講談社文庫) 絲山秋子

袋小路の男3作の短篇が収録された短篇集で、2004年に単行本、2007年に文庫版が出版されています。

収録作品は「袋小路の男」、「小田切孝の言い分」、「アーリオ オーリオ」の3作で、そのうち「袋小路の男」、「小田切孝の言い分」はほぼ同じ登場人物で展開する不思議な恋愛小説で、二つは視点を変えた同じ物語ですが、見方が変わるだけで内容も変わり、「こういうやり方もあるのか」と感心しました。

個人的には3作の中で一番好きな「アーリオ オーリオ」は、パスタ好きで、星座に詳しい主人公と、兄貴の中学生の娘(姪)とのほのぼのとした物語で、手紙でやりとりする仲になり、その手紙が届く先を3光日先の星としてタイトルのパスタの名称を付けています。

少し前に読んだ白石一文著「記憶の渚にて」も、兄弟や甥、姪などの関係が甚だしい物語でしたが、このように、家族でも疎遠になっている兄弟や、姪などとの近そうで遠い微妙な関係というのは物語になりやすそうです。

★★☆

著者別読書感想(絲山秋子)

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おれの死体を探せ(徳間文庫) 小松左京

おれの死体を探せ1983年に文庫で出版された短篇集で、「長い部屋」「幽霊屋敷」「おれの死体を探せ」「共食い」「男を探せ」「鳩啼時計」の6篇が収録されています。

前の3作は貧乏な私立探偵が主人公で、コミカルな連作です。後の3作はいずれも独立していますが、どの作品もSFをうまく取り入れていたり、著者の作品にしては幽霊が自分の死体を探しに出てきたり、同時に複合的な誘拐事件が発生したり、性転換手術だったりといろんな面を見せてくれます。

個人的には最後の「鳩啼時計(はとなきどけい)」が好きで、小説の舞台はずっと未来の話ですが昔懐かしい「鳩時計」が出てきます。実は母方の実家に行くと、(本物の)鳩時計があって、欲しくてたまりませんでした。

タイトルの「鳩啼時計」とは、明治生まれの詩人で作詞家だった西条八十が昭和8年に書いて少女向け雑誌「令女界」に掲載された「鳩啼時計」という詩のことです。

詩の1番は「鳩啼時計今啼き 冬の夜ふけの十一時 凩さむき戸外には 利鎌のごとき月冴えて」と、「冬の夜更けの11時に鳩時計がちょうど今啼いて、木枯らしが吹く外にはよく切れる鎌のような月が出ている」という意味。

2番は「過ぎし日君と一つづつ 銀座の街に購へる 鳩啼時計いま啼けば うれいは深しわが心」で、意訳すれば「ずっと昔にあなたと銀座で鳩時計を一つずつ買って、それを今啼くと切ない思いが心に広がる」という、鳩時計の音で昔の恋人を思い出すという内容です。

小説では、その詩のように、昔の恋人と一緒に買った二つの鳩時計が絡む殺人事件が起きて、、、というストーリーです。

なお、この詩は4番までありますが、3番以降はその恋人のことを想う愁いをシクシクと繰り返していて、恋する女学生達に向けた今で言うところのラブソングです。

1980年代のSFらしく、40数年後に読むとテレビ電話や人体移植、人工的に重力を曲げる装置など、40数年後の現在既にあるものもあればまだないものなどあって創造力の面白さを味わえました。

★★☆

著者別読書感想(小松左京)


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