忍者ブログ
リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~ HomePage http://www.geocities.jp/restrer/
Calendar
<< 2017/07 >>
SMTWTFS
234 67
91011 1314
161718 202122
23242526 272829
3031
Recent Entry
Recent Comment
Category
1   2   3   4   5   6  




1143
思考の整理学 (ちくま文庫) 外山 滋比古

数多くの著書を出されている著者ですが、その中でも代表作と言えるのが1986年に初出のこの本で、その後何度も重版を重ねている名著と言われています。

できれば10代後半とか20代の時に読みたかったですね。今頃読んでも~って気もしますが、初心、いや少年時代に帰って読むのも悪くないでしょう。

この著者の作品では2009年に「知的創造のヒント」(2008年)を読んでいます。

当時の「意識高い系」?って思われそうですが、「2009年12月後半の読書」で同書のことを「自分がいいと思ったこと、好きな言葉や本の羅列でな~んもヒントにはなりません。」と酷い感想を書いています。思えば2009年頃と言えば、リーマンショック直後で担当していた事業の業績が上がらず、なにもかも行き詰まっていた頃だったかも、、、


もっとも、これを読んだらいきなり思考力が高まり賢くなれるとか、問題が解決できるというハウツー本ではなく(ハウツー本で問題を解決できるとも思えませんが)、ちょっとした著者の考え方を知ることで、それが自分にも応用できればそれもよし、うまくいかなければ他の方法を考えれば良しと言ったものです。

例えば、学校教育をグライダーに例え、他者に引っ張ってもらって初めて飛躍することができる人間を作っているが、今の時代はグライダーではなく、みずからで飛び立てるエンジンの付いた飛行機にならなければならないとか、夜よりは朝の方がひらめきが多いことや、スピード社会だからと言ってすぐに結論を出すのではなく、しばらく寝かせておいて熟成させてから再度考えてみるとか、ベテランビジネスマンになると自然と身についているような技術や経験をうまく若手ビジネスマンに伝えています。

もう2年前になりますが、久米宏氏のBS放送の番組に著者が出てきて、当時の新刊「知的生活習慣」(2015年)の話しをされていました。著者は1923年生まれの93歳です(放送出演当時は91歳)けど、まだまだ現役バリバリって感じでした。

著書の感想も2009年当時とは違い、若い人にお勧めに値する内容の濃い作品であることは間違いありません。

ただ書かれた時代にはまだスマホはもちろん、携帯電話やネットやパソコンもほとんど普及しておらず、情報革命以前の話しで、情報の集め方や保管の仕方など現代とはあまりにも違っていて苦笑するところもかなりあります。

例えば調べるときには辞書や文献が主と書かれていますが、今ならネットで検索が主でしょうし、集めた情報をノートやカードに整理というのも今ではちょっとどうでしょう。

そうした現代との違いはあるものの、言わんとするところはわかりますので、それをもってこの本に書かれていることは古いと決めつけてしまうのはもったいないと思います。


★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

白砂 (双葉文庫) 鏑木 蓮

2007年に単行本、2013年に文庫化された長編ミステリー小説です。

著者の作品を読むのは今回が初めてで、簡単に紹介をしておくと、京都在住の現在55歳で、2006年に出したシベリア抑留を描いた「東京ダモイ」が江戸川乱歩賞に選ばれて本格的に作家として活動を始めた方です。

独立した長編小説の他にも「京都・花街の女刑事 片岡真子シリーズ」や「イーハトーブ探偵シリーズ」と言ったシリーズものも手がけているようです。

この長編小説は、結構重いテーマで、東京でひとり住まいの若い女性が自宅マンションで誰かに後ろから鈍器のようなもので撲殺されているのが発見されます。

主人公の刑事は現場の物証などよりも地味で時間もかかりますが、被害者はなぜ殺されたのか?生きているあいだはどういう人物だったのか?など人の気持ちに深く関心をもって捜査を進めるタイプで、警察の中では異色の存在です。

殺された女性は京都の美山町という深い山の中の出身で、両親はすでに亡くくなっていますが、祖母が実家に住んでいます。しかしその祖母へ連絡を入れて遺骨引き取りを依頼すると「関係ない」とかたくなに拒否されます。

なぜ被害者は祖母からそのように疎まれているのか?美山町で暮らしていたときの生活は?なぜ東京でひとり住まいをしているのか?などを調べに刑事は美山町へ行きます。

そこでわかったことは、母親の思いをしたためた俳句を東京で発表し入選したことがわかり、それがやがて犯人に近づいていくことになっていきます。

細かなプロットを積み重ねていき、真実に少しずつ近づいていくというわかりやすい推理小説ですが、主人公刑事と一心同体になって古い過去に起きたことを突き止めていくというわくわく感はとても面白く、すいすいと読めました。

今は夏ですが、本来は秋の夜長にじっくりと読むのに適しているかも知れません。

★★★


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ちょいな人々 (文春文庫) 荻原浩

2008年に単行本、2011年に文庫化された短編小説集です。この著者の本は文庫はほとんど読んでいるお気に入りの作家さんです。

収録されているのは「ちょいな人々」「ガーデンウォーズ」「占い師の悪運」「いじめ電話相談室」「犬猫語完全翻訳機」「正直メール」「くたばれ、タイガース」の7篇です。

タイトルにもなっている「ちょいな人々」は、本人は一生懸命でも、周囲から見るとその行動や発想がこっけいで、軽薄に見えてしまう人々っていう感じの話です。ま、そうしたイジられキャラの人っていますよね。

「ガーデンウォーズ」は一軒家の隣人同士、枝が伸びて日当たりが悪くなったり、家庭菜園でよく発生するうどんこ病が拡がったりとよく起きそうな問題でいがみ合いますが、最後は両家が協力せざるを得ないオチだったり。

う~ん、、この著者は短編作品も多いのですが、残念ながらこれはイマイチのってこれません。

デビュー作の「オロロ畑でつかまえて」や映画化もされた「明日の記憶」、「僕たちの戦争」などが長編が好きです。そしてまだ読んでいませんが、直木賞に輝いた「海の見える理髪店」も、楽しみにしています。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

静かな黄昏の国 (角川文庫) 篠田節子

短編ミステリー&ホラー小説で、2002年単行本、2007年に文庫化されましたが、2011年の福島原発事故のあと、2012年にそれを小説の中に盛り込んだ増補版となって出版されました。

収録作品は「リトル・マーメイド」「陽炎」「一番抵当権」「エレジー」「刺」「子羊」「ホワイトクリスマス」「静かな黄昏の国」の8篇です。

どうしてもこういう短編小説では、短い文章で読者の理解を得る必要があるため、まったく意味不明な現象た状態を無理矢理読者に押しつけておいて、それを楽しめないヤツは論外!っていう感じになります。

感受性が豊かな若いときにはそうした押しつけでもある程度は受け入れることができましたが、年齢を重ねていくと、あまりにも現実を知りすぎてというか、新たな発想とか想像の力が弱まってきて、結局はしらけた気持ちになってしまうものが少なくありません。

その点、短編の名手と言われた、O・ヘンリや、サキ、ロアルド・ダール、最近ではジェフリー・アーチャーの短編もすごく凝っていて好印象です。

そうした名手の短編では、読者が無理をせずとも自然とストーリーの中に入っていけて、時には主人公を思って涙腺が緩んだり、(心の中で)ブラボー!と喝采をおくったりということがあります、

そんなわけで、なかなか短編というのは想定読者を誰にするか?って問題もありますが、万人向けには難しいもので、最近絶賛できるものに巡りあったことがないのが残念です。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

召集令状 (角川文庫) 小松左京

2011年に亡くなられた著者が1960年代に発表した短編のSF小説で、発表から30年近く経った1995年に発刊されています。

今回は意図してなかったのですが、5冊中短編集が3冊と偏ってしまいました。できるだけ「小説(国内・海外)」「新書やビジネス」「ノンフィクション」の各ジャンルを混ぜて読むようにしていますが、なぜか偏るときは偏ってしまいます。

特に最近は、本の内容は見ず、著者の名前だけで買って読んでいるせいだと思います。

この作品の収録作品は「戦争はなかった」、「二〇一〇年八月十五日」、「地には平和を」、「春の軍隊」、「コップ一杯の戦争」、「夢からの脱走」、「お召し」、「召集令状」とテーマは戦争というか著者の子供の頃に味わった戦争体験を元にした作品が多く含まれています。

基本は突飛押しもないSF作品ですが、発想がユニークでホラーでもありコミカルでもあります。

「戦争はなかった」は太平洋戦争で敗戦し、広島や長崎への原爆の悲惨さを知っている戦中派の主人公が、大人になってから出た同窓会で軍歌を歌うと同窓生から不思議な顔をされ、軍隊生活の苦労を話すと誰も知らないと言われ「えぇ!?」となるものや、逆に「地には平和を」では戦争中と現代を行ったり来たりするパラレルワールドの世界など。

これこそテレビで時々やっている「世にも不思議なシリーズ」で映像に取り上げてもらいたい作品ばかりです。ってテレビドラマだと制作費をケチるから、迫力のないつまらないものになってしまいそうですが。

東映さん、久々に「8.15シリーズ」として、これらの作品をオムニバス映画として作ってみませんかね?お金は集まりそうもないですが、、、

★★☆


【関連リンク】
 6月後半の読書 反逆、死にたくはないが、生きたくもない。、黒警、尖閣激突!ドローン・コマンド
 6月前半の読書 本日は、お日柄もよく、巨人たちの星、ぼくらの民主主義なんだぜ、戦艦大和
 5月後半の読書 バランスが肝心、獄窓記、十字架、碇星、ようこそ、わが家へ
 5月前半の読書 他人を見下す若者たち、八月の六日間、氷の華、愛と名誉のために、顔に降りかかる雨
 4月後半の読書 一九八四年、ガニメデの優しい巨人、老いの才覚、旅のラゴス、ソロモンの犬
 4月前半の読書 二流小説家、脊梁山脈、国盗り物語(1)(2)、遊びの品格、悪党
 3月後半の読書 下流の宴、老後に破産しないお金の話、過去からの弔鐘、蝶々の纏足・風葬の教室、漱石先生の事件簿猫の巻
 3月前半の読書 夜の国のクーパー、ホクサイの世界、一路(上)(下)、会社という病
 2月後半の読書 天使の囀り、日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか、楽園、サムライと愚か者 暗躍オリンパス事件
 2月後半の読書 私にふさわしいホテル、ボッコちゃん、満月の道 流転の海第七部、死ねばいいのに
 1月後半の読書 ガダラの豚(1)(2)(3)、人間の幸福、塩分が日本人を滅ぼす、メランコリー・ベイビー
 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
 1月前半の読書 怒り(上)(下)、月は怒らない、人間にとって成熟とは何か、ガソリン生活





リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)

PR




1138
反逆 (講談社文庫)(上)(下) 遠藤周作

 
1988年から1989年にかけて読売新聞に連載され、1989年に単行本として出版された時代小説です。その後に出版された「決戦の時」(1991年)、「男の一生」(1991年)と3つ併せて戦国3部作と呼ばれています。

同じく戦国時代の小西行長と加藤清正を描いた「宿敵」(1985年)はどうなるのって気もしますが、そのうちに全部読みたいと思います。

この小説の元となったのは、1959年に発見されたという戦国時代に尾張の前野家が記した「武功夜話」で、そのほか戦国時代を知るための定本となっている「信長公記」や、「フロイス日本史」なども参考にして書かれています。

主人公は、前半は信長に一度は仕えたものの、その残虐さや理不尽さに恐怖と嫌悪を感じ、信長と敵対する毛利勢が援軍に来てくれると信じ、反旗を翻した荒木村重とその家臣竹井藤蔵ら、後半は同じく信長に対して謀反を起こした明智光秀、そして信長亡き後天下統一にひた走る豊臣秀吉と対立した柴田勝家などと、時代の寵児に逆らって英雄になり損ねた戦国時代の武士をメインに置いた小説となっています。

特によく出てくる戦国時代小説と違ったところはありませんが、どちらかと言えば、戦国初心者にもよくわかるように、ところどころで、出典となった作品のことや、著者の感想や推測などが散りばめられています。

なので、もう十分に戦国時代のことには精通しているという人にはあまり面白くないというか、もっと別の視点や歴史書からすると違った解釈ができるのではないかという疑問が出てきたりするでしょう。

あとは、時代の寵児信長や秀吉メインの作品ではなく、その周囲にいて蹴散らされた多くの武士や大名達の視点でみた戦国時代というので読む価値があり、納得できます。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

死にたくないが、生きたくもない。 (幻冬舎新書) 小浜逸郎

昨年読んだ「なぜ人を殺してはいけないのか」(2000年)の著者で、数多くの評論や著書を出している団塊世代ど真ん中の大学教授兼評論家です。

この本が出たのが2006年ですので、今から11年前のことです。つまり著者自身が59歳と、今の私と同じ還暦の一歩手前の頃です。

この年代で考えることと言えば同じで、定年後の生活、老後の収入と支出、健康、老いと死あたりでしょうか。20代、30代の頃にはまず考える事がないことばかりです。

そしてこの年代はまだ身体もそこそこは健康ですので、死ぬときは延命などせずにコロッと死にたいという願望を必ずと言っていいほど言います。この本でもそのようなことが書かれています。ところが実際に心身とも弱って死の淵に立つと、少しでも延命したいと願うのは人間の弱さでもあります。そういうところを突っ込んで書いてもらいたかったですね。

実際に元気なうちに書いた「延命措置は不要」という書き置きも、その後数十年が経ち、寝たきりになった状態で、本人に再度確認すると、「延命処置をして欲しい」と言うのだそうです。

著者もこれを書いて11年後の今はまだその気持ちに変わりはないかも知れませんが、さらにあと10年生きて、そろそろ足腰が弱り、気弱になってきたところで、気持ちが変わらないとは言いきれません。

若い人が年金を未納にして「将来もらえるかもわからないので不要」と言いつつ、年金がもらえる年代になったら「年金は欲しい、なんとかしろ、ダメなら生活保護費をくれ」と言うのと同じではないけれど似ていますね。

高齢になってからの生き死については、久坂部羊著「日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか」がお勧めです。 

そのほかにも老齢の恋愛や、お仕着せの高齢者対策など、これから高齢者になっていくための心がけについて幅広く書かれていてそれなりにためになります。

最近曾野綾子氏の著書と言い、そういうのを読むことが多くなってきたことも、高齢者の仲間入り目前ということなのかもね。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

黒警 (朝日文庫) 月村了衛

この作家さんの小説は初めて読みます。この作品は単行本が2013年、文庫版が2016年に発刊されています。

著者の作品にSF小説が多いというのは知っていたので、この小説もその系統かなと思っていましたが、まったく違い、いわゆる刑事もので警察小説でした。

長いものには巻かれろ的でやる気が出ないサラリーマン刑事が主人公で、過去には飲酒運転中だったために新宿の繁華街で助けを求めてきた外国人女性を助けず、男達に連れ去られるのを放置したことがあり、その場面を苦々しく見ていた武闘派のヤクザ幹部と妙な腐れ縁ができています。

外国人労働者を積極的に入れようとする警視庁の幹部と人身売買に手を染める中国マフィアや日本の暴力団組織との関係を知ることになりますが、人身売買の実態をよく知る女性の身を守るために預かった武闘派ヤクザはその女性共々殺されてしまい、やむなく人身売買を嫌悪する謎の集団幹部と義兄弟になり、悪事に走る警視庁幹部を罠にかけていくというストーリー。

最後はあまりにも単純、軽薄すぎて、しかも後味はあまりよくないですが、少し長めの中編と言ったページ数なので、あまり込み入った内容には出来ず、やむを得ないのかも。

たぶん同じ主人公で続編が作られそうな感じ(根拠はありません)なので、それにも期待したいところです。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ドローン・コマンド 尖閣激突! (角川文庫) マイク・メイデン

2016年に出版されたタイムリーさが売りの長編小説です。というのも数々の最新の武器や兵器が登場してきますが、そうしたものも数年も経てば古臭い技術や間違った理解となりますので、この手の小説は難しいものです。

タイトルにもありますように、いま世界的には民間でも軍事目的でもドローンがブームで、うまくそれにのっかって、ドローンや自動化された無人機、無人船などを利用し、公然と南洋進出を狙い、尖閣諸島の奪取を狙う中国との情報戦を想定して書かれています。

著者は日本に在住経験が豊富な人かと思ったら、そうではなくアメリカの大学で政治学を学び、国際関係コンサルティングなどを職としている人で、従って日本の知識と言えば、実際に見て自らが経験してきた話しではなく、歴史書やニュースなどを参考にして書いたという感じで、総じて極右政治家、大物ヤクザ、特攻隊、切腹と国民など、ステレオタイプ的な古風な日本人像というのが残念なところです。ま、一概に外れているとは言えませんけど。

ドローンが今後の戦争や紛争にどこまで効果があるのかはよくわかりませんが、現在、人が乗った戦闘機や偵察機がスクランブルをかけているのを、それこそ24時間体制でドローンが警戒、監視という役目を果たせるようになればそれはそれで大きな戦術転換が可能かも知れませんね。

ただこの小説では勝敗のキーはドローンではなく、最終的にはネットワーク侵入とそれによる妨害という点が実際的なのかも知れません。

この小説に書かれているようなシナリオではないとしても、年々軍備を増強する中国や北朝鮮が、作ったからには一度はそれらを使ってみたいと考える指導者や軍幹部が出てこないとも限りません。

憲法改正とか政治的な問題をここで言うわけではありませんが、日本も国際的なバランスに則った対応が迫られてきているように感じました。

★★☆


【関連リンク】
 6月前半の読書 本日は、お日柄もよく、巨人たちの星、ぼくらの民主主義なんだぜ、戦艦大和
 5月後半の読書 バランスが肝心、獄窓記、十字架、碇星、ようこそ、わが家へ
 5月前半の読書 他人を見下す若者たち、八月の六日間、氷の華、愛と名誉のために、顔に降りかかる雨
 4月後半の読書 一九八四年、ガニメデの優しい巨人、老いの才覚、旅のラゴス、ソロモンの犬
 4月前半の読書 二流小説家、脊梁山脈、国盗り物語(1)(2)、遊びの品格、悪党
 3月後半の読書 下流の宴、老後に破産しないお金の話、過去からの弔鐘、蝶々の纏足・風葬の教室、漱石先生の事件簿猫の巻
 3月前半の読書 夜の国のクーパー、ホクサイの世界、一路(上)(下)、会社という病
 2月後半の読書 天使の囀り、日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか、楽園、サムライと愚か者 暗躍オリンパス事件
 2月後半の読書 私にふさわしいホテル、ボッコちゃん、満月の道 流転の海第七部、死ねばいいのに
 1月後半の読書 ガダラの豚(1)(2)(3)、人間の幸福、塩分が日本人を滅ぼす、メランコリー・ベイビー
 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
 1月前半の読書 怒り(上)(下)、月は怒らない、人間にとって成熟とは何か、ガソリン生活






リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)





1134
本日は、お日柄もよく (徳間文庫) 原田マハ

2006年に「カフーを待ちわびて」でデビューした著者の2010年発表の小説です。

私はこの著者の作品を読むのはこれが初めてですが、すでに2012年の作品で山本周五郎賞を受賞、直木賞にもノミネートされて評価の高い「楽園のカンヴァス」はもう手に入れてます。

著者は現在はフリーの美術品キュレーターの仕事をしつつ執筆ということのようですが、当然にそうした美術工芸品等をテーマにした作品が上記の「楽園のカンヴァス」など多そうです。

今回の作品はそうしたキュレーターの仕事とは関係がなく、スピーチライターという珍しい職業がテーマです。

スピーチライターというと有名なのはアメリカ大統領(候補)が演説をする際に、心に響くメッセージをちりばめて演説を聴いた人に感動を与えるスピーチ原稿を作成する人というのでしょうか、日本においても政治家や著名企業のトップなど、専門のスピーチライターを置いているケースがあるようです。

一種ゴーストライターと同様、裏方に徹する仕事ですから、作家やコピーライターのように陽の目を見ることはまずありません。

主人公は製菓会社のOLで、友人の結婚式に出席しますが、そこで人の退屈なスピーチ中に大きな失態をしてしまいます。その式場で知り合った伝説のスピーチライターに出会い、感動を与えるスピーチを教わっていくことになります。

幼なじみで憧れていた男性が親の遺志を継いで代議士に立候補することとなり、勤めていた会社を辞めて、本気でスピーチライターとして転身していくという女性の転職立身出世物語というべきものでしょうか。ま、話し的にはライトな小説ですから大甘で現実感はまったく感じられませんが、、、

最近は「お仕事小説」というジャンルができるぐらい、こうしたあまり陽があたらず知られていない職業を紹介して興味を引いてもらうという作品が次々と出てきています。ニーズもあり、また興味を持ってもらいたいという要望もあったりして取材もしやすいのでしょう。

今なら最高に人手が不足している介護業界や保育業界において、キツイ、汚い、給料安いの3Kを打ち破り、夢のシンデレラになれるような素敵なお仕事小説を待ちわびていることでしょう。

「お仕事小説」で有名なところでは、「和菓子のアン(和菓子屋)」坂木司、「あぽやん (旅行会社空港カウンター)」新野剛志、「神去なあなあ日常(林業)」「舟を編む(出版社編集部)」三浦しをん、「県庁おもてなし課(役所観光課)」「空飛ぶ広報室(自衛隊広報室)」有川浩、「鎮火報(消防署員)」日月恩などがあります。そのほか、作家や銀行員、医者、警察官を主人公にした小説は星の数ほどあります。

これからも人手不足の折、こうしたお仕事小説でブレークするなら、有名な作家さんにお金を出してでも「書いて欲しい!」っていう業界団体などが出てきても不思議ではありませんね。まずは人材不足の介護業界、保育業界、建設労働者組合、飲食店従業員組合、旅館業界などからやってみてはどうでしょう。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3)) ジェイムズ・P・ホーガン

すっかりこのSFに虜となった「星を継ぐもの」「ガニメデの優しい巨人」の続編で1981年に出版されました。

物語は複雑で、なかなかちゃんと理解できていない部分もありますが、大雑把に書けば、

星を継ぐもの
近未来、人類が太陽系の惑星を探検するようになってから、月面の裏の洞窟に、5万年前のものと思われる宇宙服を着た人間の遺体を発見。また木星の周囲を回るガニメデという衛星で、2千500万年前のものと思われる宇宙船を発見します。その月面の人類と木星の宇宙船とはどういう関連があるのか?月はどうして地球の衛星となったのかという謎を解いていきます。

ガニメデの優しい巨人
2500万年前には太陽系にミネルバという惑星があり、その惑星の痕跡として残るのが、木星の衛星ガニメデだということが推測されます。そこで発見された宇宙船からは巨大な知的生物の痕跡と、地球の生物のサンプルが見つかります。それを調べているところに、突然巨大な宇宙船が冥王星の彼方からミネルバが元々あった場所へとやってきます。人類初の異星人との遭遇です。
高度に発達した異星人とコンタクトをとり、お互いに敵意がないことを確認し、宇宙船を地球へ招待します。この宇宙船は、2500万年前に木星近くにあったミネルバから移住先の調査のため飛び立った宇宙船で、途中で故障して宇宙をさまよった結果、宇宙の時差の関係で、地球の時間で20年後に戻ってみると2500万年が過ぎ去っていて、すでに飛び立った母星ミネルバは破壊されなくなっていたということです。
人類はこの優れた技術をもった異星人を歓迎しますが、修理を終えた宇宙船はわずかな可能性にかけ、2500万年前に祖先が移住したと思われる星へ向かうことになります。

そして、今回のストーリーは、2500万年前に破壊される前のミネルバから移住した先、テュリオスが舞台となります。「ガニメデの優しい巨人」で地球人と出会ったガニメデ人は祖先が住むと思われる星、テュリオスへ向かい、無事到達することができます。

一方そのテュリオスのテューリアンからも地球へメッセージが届けられ、使者が送られますが、国連もテュリオス人もなにか問題を抱えている謎が深まります。その地球人とテューリアンとの遠い祖先に関わる根深い問題とは、、、って感じです。

こうして3話を読み終えると、想像を超える壮大な宇宙ドラマが展開され、丁寧に読んでいないせいか所々は不明なこともありますが、それはさておきガンダムシリーズや宇宙戦艦ヤマトなどとも共通する良質なSFという理解です。

この後、「内なる宇宙」がさらに続きますが、少し今はお腹がいっぱいなので、少し時間をおいてからにします。

★★★

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書) 高橋源一郎

朝日新聞に連載された「論壇時評」の2011年4月から2015年3月をまとめたものです。

連載開始が2011年4月というのがポイントで、あの東日本大震災及び福島原発事故により、日本の社会、政治、生活、価値観が大きく変わったターニングポイントと何年か先にはきっと語られるようになるであろう、そのまっただ中に、やや左寄りとは言われているものの、そこは世界でも有数の発行部数を誇っている朝日新聞紙上で、慰安婦問題など同紙への批判も含めたエッセイ的な内容で、気楽に読めます。

話しの中心にははやりそのときのご時世から「原発問題」が中心で度々登場してきます。ただ、発言や書籍等を引用している人が、個人的には嫌悪している低俗というか信頼の置けない人が多いというのが率直な私の感想です。

また朝日新聞を批判している文章もあれば、朝日新聞となにか歩調を合わせているなぁって思える左巻きな思想もチラホラと出現し、やっぱり根っからの朝日新聞読者が賛同する内容なのだろうなぁて思われます。

そういう私自身も小学生の頃から、朝日新聞一色で(大学時代に地方新聞や日経新聞、社会人になってから、1年間の名古屋勤務時代には中日新聞がメインとなった事はありますが)、根っからの朝日新聞派だと思っていましたが、どうも本書を読んでいると、これらの文章が若い人向けに書かれている印象があり、違和感がつきまといます。

朝日党に違和感を感じさせるというのが狙いだったのかもしれませんが、残念ながら新聞、しかもテレビ欄やスポーツ面ではなく、こうした「論壇時評」まで熟読している人は、もう高齢者以外考えられず、ちょっと狙いが違っていないか?って気もします。でもまぁ、いいこともいっぱい書かれていて面白く読めました。

少し前から「意識高い系」という言葉が広まっていますが、いつの時代にもそういう人達はいて、さしずめ1990年代にこの著者の本を並べていた人なんかはそれに近いものがあるでしょう。今ならホリエモンやちきりん、荻上チキ、古市憲寿などの著書を並べている人ということでしょう。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

戦艦大和 (角川文庫) 角川文庫 吉田満

この戦記は、戦後まもなく吉川英治の勧めで執筆され、1946年に雑誌に掲載される予定だったのが、GHQの検閲で出版ができず、1951年のサンフランシスコ講和条約後の1952年になってようやく出版ができたという「戦艦大和ノ最期」を元としています。

当初はノンフィクションだと思っていましたが、生き残った他人に聞いた話や、著者の推測や想像で書かれた部分も混じっているようで、公式にはノンフィクションではなく戦記文学のジャンルに入るようです。

著者は東京帝大在校中に学徒出陣で戦艦大和に乗艦し、刀折れ矢尽きた日本帝国が決めた無謀な沖縄特攻作戦「天一号作戦」に臨むこととなり、壮絶な大和の撃沈とともに海に投げ出され、その後奇跡的に救われ帰還した数少ないひとりです。

内容は、淡々と出撃に至った状況と、最後の帝国海軍の艦隊として出航後まもなく暫時攻撃に遭い、次々と仲間を失い、大和が沈むと判明した後には艦隊の司令長官でもある大和艦長は沖縄への特攻指令を中止し、帰還する命令を出して艦長室に入っていったことなど、艦橋近くにいた著者でなければわからない艦内の状況が描かれます。

もしその時艦隊司令長官から特攻の中止命令が出されていなかったら、戦闘で生き残った数隻の巡洋艦や駆逐艦は救助した大和の乗組員を乗せたまま、沖縄への特攻が継続され、全員が亡くなっていたかも知れません。

米軍から何十回と空からの反復攻撃を受け、大和の傾きが限界まで達し、著者他多くの乗員は海に放り出され、巨大なスクリューに巻き込まれそうになりながらも、生き残って海面に浮き出ます。

海に浮かぶ大量の重油にまみれ、鱶(ふか)に襲われ、力尽きて沈んでいく同僚達を見ながら、やがては自分も海の藻屑に消えるものと確信していたら、近くに傷つきながらも持ちこたえた駆逐艦に救われます。

ただそのシーンでも、部下を海から艦へ押しあげて、自分は力尽きて見えなくなってしまう上官や、すでに救助者で満員となった救援ボート(内火艇)に群がってくる大和の乗員達を、ボートが転覆しないようにするため軍刀で切りつけるという悲惨なことがおこなわれます。

情景を思いながら読んでいると、涙なくして読めないです。

その貴重な実体験に基づく戦記とともに、この作品が戦後GHQや評論家に思わぬ妨害や非難を受けることになった話しや、その後出版にこぎ着けるまでの経緯など、散文が付け加えられています。

若い人はこうした過去の追い詰められた日本の汚点とも言える特攻を、国や愛する人のために命を捧げるという美点としか見ない人もいるでしょうから、どれほど多くの人が召集令状1枚で無駄死にをし、その家族が苦渋の涙を流したことか、この作品を読むことで多少は考えさせられるでしょう。

まもなく、なにも成すことなく死んでいく中高年(私のことです)ではなく、これからなんでもできるし、大きな事を成すこともまだできる若い人にぜひ読んでもらいたい作品です。

★★★


【関連リンク】
 5月後半の読書 バランスが肝心、獄窓記、十字架、碇星、ようこそ、わが家へ
 5月前半の読書 他人を見下す若者たち、八月の六日間、氷の華、愛と名誉のために、顔に降りかかる雨
 4月後半の読書 一九八四年、ガニメデの優しい巨人、老いの才覚、旅のラゴス、ソロモンの犬
 4月前半の読書 二流小説家、脊梁山脈、国盗り物語(1)(2)、遊びの品格、悪党
 3月後半の読書 下流の宴、老後に破産しないお金の話、過去からの弔鐘、蝶々の纏足・風葬の教室、漱石先生の事件簿猫の巻
 3月前半の読書 夜の国のクーパー、ホクサイの世界、一路(上)(下)、会社という病
 2月後半の読書 天使の囀り、日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか、楽園、サムライと愚か者 暗躍オリンパス事件
 2月後半の読書 私にふさわしいホテル、ボッコちゃん、満月の道 流転の海第七部、死ねばいいのに
 1月後半の読書 ガダラの豚(1)(2)(3)、人間の幸福、塩分が日本人を滅ぼす、メランコリー・ベイビー
 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
 1月前半の読書 怒り(上)(下)、月は怒らない、人間にとって成熟とは何か、ガソリン生活





リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)





1130
バランスが肝心 ローレンス・ブロック傑作集2 ローレンス・ブロック

1993年(翻訳版は1994年)の短編集で、18編の小ネタが載っています。その中のひとつ「バッグ・レディの死」という短編が著者の大ヒットシリーズ「マット・スカダー」が登場する作品となっています。

「バッグ・レディ」とは、大きなバッグに財産すべてを入れて持ち歩いている、いわゆるホームレス女性のことです。

ホームレスですがそれなりの財産は持っている女性で、その女性が何者かに殺されて亡くなったあと、遺書から自分が死んだとき、マットやその他何人かの知り合いに遺産を分けて支払うという文書が見つかり、弁護士がやってきて小切手で受け取ることになります。

そしてそのお金は「自分の死について調べて欲しい」というメッセージだろうと解釈し、殺害されるに至った経緯や犯人を突き止めていくというストーリーです。

短編ですので、テンポが速く、登場人物も限られていますが、通り魔の犯行なのか、それともなにか怨恨があったのか、警察もホームレスの死ということで本気で捜査はおこなわれておらず、なかなか真相に迫れず、終盤になってから急転直下真相にたどり着くというかなり忙しい感じです。

著者は上記のように「マット・スカダーシリーズ」や「泥棒バーニイ・シリーズ」などの長編作品が多く、この短編集は副題に「ローレンス・ブロック傑作集2」とあるように、「おかしなことを聞くね ローレンス・ブロック傑作集1」に続く2番目の短篇集とのことです。

著者の短編はこれら以外にも、「殺し屋屋ケラー・シリーズ」の中でも連作短編という形で存在しています。

この短編集に収録されている作品は、「雲を消した少年」「狂気の行方」「危険な稼業」「処女とコニャック」「経験」「週末の客」「それもまた立派な強請」「人生の折り返し点」「マロリイ・クイーンの死」「今日はそんな日」「安らかに眠れ、レオ・ヤングダール」「バランスが肝心」「ホット・アイズ、コールド・アイズ」「最期に笑みを」「風変わりな人質」「エイレングラフの取り決め」「カシャッ!」「逃げるが勝ち?」「バッグ・レディの死」の18編です。

正直に言うと、面白いものもあれば、さっぱりなものもあり、玉石混淆って感じです。「殺し屋屋ケラー・シリーズ」の連作短編はそれなりに楽しめましたが、こうした1話完結の短編集については、やや出来不出来の幅が大きいという印象です。

実はこのローレンス・ブロックの作品を最初に読んだのが1993年に読んだ短編集「おかしなことを聞くね」で、それ以来著者のファンになり、上記の「マット・スカダーシリーズ」や「殺し屋屋ケラー・シリーズ」のほぼすべてを読むことになります。本来は短編の名手とも言われているので、面白くないという感覚は、読み手側の責任もあるかもですね。

今回の短編は短編集第1作目の「おかしなことを聞くね」の出来がとても良く、もっと大きな期待をしていただけに、ちょっと残念な感じでした。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

獄窓記 (新潮文庫) 山本譲司

年のせいにはしたくないのですが、5年前にこの本を読んでいたのに、まったく気がつかず最後まで読みきりました。

2012年4月後半の読書の感想」で、あらましを書いています。

感想としては、あらためて今回読み返した(事実上は初めて読んだ感じ)ところでは、上記ブログで書いたことと変わりませんので、割愛させていただきます。

この著者はその後2012年には「覚醒」という小説を上梓されています。まだ単行本しか出ていないので、文庫になれば買って読みたいと思います。

あぁ、しかし我ながら情けない、、、

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

十字架 (講談社文庫) 重松 清

2009年単行本、2012年に文庫化された長編小説で、2010年に吉川英治文学賞を受賞した作品です。

筆者の作品は好きでよく読みますが、それにしても多作家で、次々と作品が出てくるものだからとてもすべては読んでいません。

以前からテレビのコメンテーターとして見かけることもあり、そうした多忙な中、よくこれほどに創作意欲がわくものだと感心しきりです。

読んだ小説は、数えてみると14タイトルありましたが、Amazonに登録されている著者の文庫だけで100タイトル以上ありますから、実質的に著者の作品の1割ちょっとしか読んでいないということでしょう。

過去に読んだ筆者の作品の中では「疾走」「その日のまえに」「ビタミンF」(直木賞受賞)「哀愁的東京」などが良かったかな。

基本的には「家族」や「定年後のオヤジ」「子供と父親」「幼なじみと友情」と言った割と軽い、懐かしさや郷愁を誘うテーマが多い感じです。

さて、この作品は、同級生がイジメを苦にして自殺しますが、そのイジメを見て見ぬふりしていた幼なじみの同級生や淡い恋をしていた相手の子が背負ってしまったトラウマというか十字架がテーマとなっています。

学校などでのイジメ問題が社会問題化してもう相当長いですが、小説にもこうしたイジメ問題はよく出てきますね。学園ものにはもう不可欠になっていると言えます。

自殺した子供の父親は、イジメをした同級生だけでなく、それを見過ごしてきた担任教師や同じクラスの子供に対しても反感を持ち続け、マスコミを利用して非難を続け責任を問い続けます。

私なら「それなら親の責任はどうなんだ?」「死にたいほど困ったことが話せない家庭に責任はないのか?」と真っ先に反発するところですが、なぜかそうしたところは無視されていますね。

ちょっと感動的に盛り上げていこうというところにわざとらしさが感じられ、著者の作品としてはちょっとどうなのかなぁって思わざるを得ません。多作しているとどうしてもあまり深掘りはせずに、ついそれでも通用してしまうテクニックに走ってしまうのでしょうかねぇ、、、

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

碇星 (中公文庫) 吉村昭

1999年に単行本、2002年に文庫化された短編集で、「飲み友達」「喫煙コーナー」「花火」「受話器」「牛乳瓶」「寒牡丹」「光る干潟」「碇星」の8篇が収められています。

著者の作品は過去に10タイトルほど読みましたが、歴史もの、時代もの、戦争もの、現代もの、事件、紀行、人物記、随筆など含め、ざっと数えただけでも140近い作品があり、今まで外れだったことがない秀作そろいで、今後折に触れて他の作品も読んでいきたいと思っています。

タイトルの碇星(いかりぼし)とは、「カシオペア座の W 形の五星を碇に見たてた和名」(大辞林)ということです。

その「碇星」はある会社の中で葬儀専門部署に配属になった嘱託社員の話し、「喫煙コーナー」は定年後どこにも行く当てがない高齢者が大きなショッピングセンターの喫煙コーナーへ毎日集まってくるという話し、人生の哀愁を帯びた話しが多く高齢化社会に向けた「すぐそばにある現実」を思い知らされます。

とは言うものの、いつもの長編とは勝手が違ってか、それとも読み手の読解力不足のせいか、いまいちすっきりした結末とはほど遠く、なにかもや~としたものが残ってしまいます。ちょっと尻切れトンボみたいな終わり方も多くて、、、

作家的には、こうした短編を膨らませて長編小説に仕上げたりする人もいるのでしょけど、元々長編小説に手練れた作家さんはやはり長編が一番似合います。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ようこそ、わが家へ (小学館文庫) 池井戸潤

ミーハー的には「半沢直樹シリーズ」で、文学少年少女的には直木賞を受賞した「下町ロケット」で、そして社会派としては「鉄の骨」や「空飛ぶタイヤ」で、それぞれよく知られた銀行出身の売れっ子作家さんの文庫オリジナル作品で2013年に発表されました。

いずれも元銀行員という仕事を通じてなじみのある企業あるいはビジネス小説が多い作家さんなのですが、この小説はそれらとは一線を画しタイトルからもわかるように「家族」が主たるテーマになっています。

と言っても主人公の一家の主は銀行マンで中小企業へ出向していて、その会社で不正を見つけたものの、所詮は外様という軋轢との戦いがあり、そうしたところは著者の最も得意とするところです。

その主人公は通勤途中で電車に割り込みをしてきた男に勇気を絞って注意をします。それがきっかけとなり、自宅への嫌がらせが始まり、エスカレートしていくという、重苦しい話しです。

しかし、通称イヤミス(イヤな気分になるミステリー)の湊かなえ氏や沼田まほかる氏の小説とは違って、両親と二人の子供の4人家族の関係は極めて良好で、一緒に協力しあって犯人を突き止めようとするなど、著者の性格が反映しているかなと思われます。

そして勤務先の中小企業にも、自宅への嫌がらせにも、最後に意外な展開が見られましたが、なかなかストレートなビジネス&ファミリー小説と言えるでしょう。

★★☆


【関連リンク】
 5月前半の読書 他人を見下す若者たち、八月の六日間、氷の華、愛と名誉のために、顔に降りかかる雨
 4月後半の読書 一九八四年、ガニメデの優しい巨人、老いの才覚、旅のラゴス、ソロモンの犬
 4月前半の読書 二流小説家、脊梁山脈、国盗り物語(1)(2)、遊びの品格、悪党
 3月後半の読書 下流の宴、老後に破産しないお金の話、過去からの弔鐘、蝶々の纏足・風葬の教室、漱石先生の事件簿猫の巻
 3月前半の読書 夜の国のクーパー、ホクサイの世界、一路(上)(下)、会社という病
 2月後半の読書 天使の囀り、日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか、楽園、サムライと愚か者 暗躍オリンパス事件
 2月後半の読書 私にふさわしいホテル、ボッコちゃん、満月の道 流転の海第七部、死ねばいいのに
 1月後半の読書 ガダラの豚(1)(2)(3)、人間の幸福、塩分が日本人を滅ぼす、メランコリー・ベイビー
 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
 1月前半の読書 怒り(上)(下)、月は怒らない、人間にとって成熟とは何か、ガソリン生活


 

リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)



1127
好きな探偵小説というと、レイモンド・チャンドラー「フィリップ・マーロウシリーズ」やロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」、マイクル・コナリー「ハリー・ボッシュシリーズ」、原りょう「沢崎シリーズ」などと並んで、このローレンス・ブロックの「マット・スカダーシリーズ」を外すわけにはいきません。
 
 原作「獣たちの墓」)2014年米 今回はそのアル中探偵「マット・スカダーシリーズ」について、長編・短編ともほぼすべて(手に入りにくい2冊を除き)を読み終えたことで、備忘録として書いておきます。

フィリップ・マーロウはロサンジェルス、ハリー・ボッシュもロサンゼルス、スペンサーはボストンで、沢崎は東京、そしてマット・スカダーはニューヨークが活躍の舞台です。

これは著者が長く住んでいる場所がその活躍の舞台となるのは仕方がないとして、やはり大都会でなければ成立しない職業なのは自然の摂理です。

マット・スカダーも他の多くの探偵と同様、元警察官で(マーロウとスペンサーは検事局捜査官出身)は、事情があって退官したあと、生活費を稼ぐためにひとりで探偵を始めています。

マット・スカダーの前に接頭辞のごとく付く「アル中探偵」「酔いどれ探偵」とは、結果的に警官を辞めることとなった誤射事故で、犯人逮捕の際に撃った弾が跳弾して小さな子供に当たってしまうという悲劇から立ち直れず、警官時代からアル中になりいつも酒を浴びていたという名残りです。

タイトルに「元」と入れたのは途中からはすっかりアルコールが抜けて、色っぽいガールフレンドから酒を勧められても毅然と断り、ニューヨークの深夜バーでコーヒーを飲むことができるようになります。なので、私の中ではもう「アル中」ではないので「元」を入れたわけ。

しかし途中までは正体をなくすまで飲み続ける生活からなんとか脱しようとAA協会(Alco- holics Anonymous アルコーリックス・アノニマス、匿名酒害者協会)の会合へ毎日のように通い、その苦労の様子が何話も続きます。

そのアル中から、アルコールを断てたのは第7作「慈悲深い死」あたりです。但し不安と孤独にさいなまされつつ毎日アル中自主治療協会へ通う日々が重苦しく感じられます。

日本でもアル中患者(アルコール依存症患者)は100万人を超え、増加傾向にあるということですが、アルコール依存が比較的高いアメリカやロシアは割合から言ってもその比ではないでしょう。

日本なら健康保険制度のおかげで病院へ入院して治療というように考えますが、そこはアメリカ、お金持ちでなければ自分で治すしかありません。

そうした人達のために、主に教会が会場を提供し、アル中患者を立ち直らせるためのボランティア活動が活発に行われているようです。

マット・スカダーもそうした集会に顔を出しては、自分の経験談などを参加者に話しをする順番が回ってくると「マット・スカダーです。今日は特に話しはなにもありません」と答えるのを常としているところなど、彼の性格と深刻さが伝わってきます。

そして、スペンサーやボッシュのような犯人との派手な立ち回りとかはあまりなく、物静かにコツコツと歩き回って物事の真相に近づいていくという派手さはないものの、なにか人の琴線に触れるような物語です。

スペンサーの相棒ホーク、ボッシュの相棒ジェリー・エドガー、キズミン・ライダーなどと同様、よき理解者でもあり、また時には協力者となってくれるミック・バルーというアイルランド系の元ギャングがいます。現在はバーの裏の経営者ですが、このミック・バルー、血まみれの肉屋のエプロンをして早朝のミサへ出かけるなど、とても魅力的で、マットとの会話も洒落ています。

それにこのマット・スカダーは、他の多くのシリーズものと違い、主人公は年々ちゃんと年を取っていきます。スペンサーが最初に登場してから38年間ほとんど年を取らず、サザエさん一家と同様にいつまでも変わらずに若々しいのと大きく違います。

1976年にシリーズ最初の「過去からの弔鐘」が出たときから、一番最後の2011年「償いの報酬」まで35年が経過していますが、最後のほうでは探偵を引退し、老人になったマットがミック相手に警官時代の回想をするという内容になっています。

これは作者ローレンス・ブロックの年齢、つまり1938年生まれで、1976年のデビュー作当時38歳、そしてマット・スカダーシリーズの最終作?が出版された2011年当時は73歳という年齢がリンクしているものと思われます。

大都会NYではこの35年というのは世界貿易センターへの航空機テロを置いても大きく変貌しています。NYへは一度も行ったことがありませんが、東京や香港の35年前と今を比べて見ればよくわかります。

そうした情景の変化とともに、主人公の感性にも徐々に変わってきていて、警官時代の悪夢は最後まで消えないものの、その後自分が行ってきたことに悔いはなかったと思える節があり、やっと安らかに過ごせる日々がやってきたのだろうかと想像します。

できればあともう一つ最終章として、マットが亡くなり、彼の葬儀に過去関わってきた様々な人が集まり、マットとの思い出(いいのも悪いのも)を語り、最後はミックが話しを締めてくれるというのを期待したいところですが無理でしょうね。ずっとマットの一人称が語る内容から、一転して三人称で語られるマットの人生なんか面白そうですけどね。

このシリーズ作品の長編は全17作品ありますが、日本の出版社の都合なのでしょうか、一番最初に日本語に翻訳されたのは1986年に出版された6作目の「聖なる酒場の挽歌」でした。

その後、そのヒットに気をよくしたためか第1作目の「過去からの弔鐘」と第2作目「冬を怖れた女」(いずれも米国出版は1976年)が、1987年に翻訳されて出版されています。

と言うように、出版社の都合?でシリーズの発刊時期が前後しましたが、内容はほぼ一話完結ですので、それほど気にすることなく読めます。ただアル中時代とアル中から抜け出した後では多少変わっていますので、注意が必要です。

17の長編以外にも短編集にマット・スカダーが登場する作品がいくつかあります。そちらから入るのも悪くはないですが、やはり短編では長編の醍醐味は味わえません。

そして免許を持たずに探偵の仕事をしている関係で、依頼があって収入を得ると、自ら10%税と称して、受け取った依頼料の10%を教会の寄付箱に入れます。そうした律儀?なところも主人公に共感できる点です。

あと、余談ですが、この作者ローレンス・ブロックは、この「マット・スカダーシリーズ」以外に「泥棒バーニイ・シリーズ」「快盗タナー・シリーズ」「殺し屋ケラー・シリーズ」があります。

その中では個人的には「殺し屋ケラー・シリーズ」がお勧めで、長編と短編が半々ずつあり、こちらは最初はシリーズ第1作目の「殺し屋」(1998年)、第3作目「殺しのパレード」(2006年)など、短編から入るのもいいかもしれません。抱腹絶倒です。

「マット・スカダーシリーズ」作品リスト
題名 原題 出版年 翻訳版
1 過去からの弔鐘 Sins of the Fathers 1976 1987
2 冬を怖れた女 In the Midst of Death 1976 1987
3 1ドル銀貨の遺言 Time to Murder and Create 1977 1988
4 暗闇にひと突き A Stab in the Dark 1981 1990
5 八百万の死にざま Eight Million Ways to Die 1982 1988
6 聖なる酒場の挽歌 When the Sacred Ginmill Closes 1986 1986
7 慈悲深い死 Out on the Cutting Edge 1989 1990
8 墓場への切符 A Ticket to the Boneyard 1990 1995
9 倒錯の舞踏 A Dance at the Slaughterhouse 1991 1999
10 獣たちの墓 A Walk Among the Tombstones 1992 2000
11 死者との誓い The Devil Knows You're Dead 1993 2002
12 死者の長い列 A Long Line of Dead Men 1994 2002
13 処刑宣告 Even the Wicked 1996 2005
14 皆殺し Everybody Dies 1998 2006
15 死への祈り Hope to Die 2001 2006
16 すべては死にゆく All the Flowers Are Dying 2005 2006
17 償いの報酬 A Drop of the Hard Stuff 2011 2015

マット・スカダーが登場する短編集
おかしなことを聞くね ローレンス・ブロック傑作集1 ローレンス・ブロック傑作選
バランスが肝心 ローレンス・ブロック傑作集〈2〉
夜明けの光の中に ローレンス・ブロック傑作集〈3〉
やさしい小さな手 現代短篇の名手たち7
頭痛と悪夢―英米短編ミステリー名人選集〈4〉
探偵稼業はやめられない『ジャーロ』傑作短編アンソロジー)

映画化された作品
800万の死にざま 1986年米 主演ジェフ・ブリッジス
誘拐の掟(原作「獣たちの墓」)2014年米 主演リーアム・ニーソン





101112
131415
1617
短編集

 
映画
 


【関連リンク】
881 私立探偵ハードボイルド小説2つ
808 ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ
328 スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
327 さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー
269 ハードボイルド的男臭さ満点小説




リストラ天国TOP
おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)

カウンター
カレンダー
 
06  2017/07  08
S M T W T F S
2 3 4 6 7
9 10 11 13 14
16 17 18 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
最新コメント
[05/31 すいか男]
[04/08 area@管理人]
[04/08 すいか男]
[11/22 Anonymous]
[11/03 restrer@管理人]
最新TB
ブログ内検索
プロフィール
HN:
area@リストラ天国
HP:
性別:
男性
職業:
今のところ会社員
趣味:
ドライブ・日帰り温泉
自己紹介:
過去に上場企業の役員とリストラ解雇で就職浪人の経験がある、紆余曲折の人生を歩む、しがないオヤヂです。
お勧めPR
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine
Powered by [PR]
/ 忍者ブログ