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その女アレックス (文春文庫) ピエール・ルメートル

カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第1作目の「悲しみのイレーヌ」(2006年刊、日本語版は2015年刊)は今年2月に読んでいますが、この作品がシリーズとしては2作目(2011年刊、日本語翻訳版2014年刊)となります。

2019年2月後半の読書と感想、書評「悲しみのイレーヌ」

この作品は日本でも「このミステリーがすごい!2015 海外部門で1位」、「本屋大賞翻訳小説部門で1位」などに輝きましたが、世界的にも大ベストセラーとなっています。

このシリーズは、「わが母なるロージー」(2011年、翻訳版2019年)、「傷だらけのカミーユ」(2012年、翻訳版2016年)がすでに既刊です。

ストーリーですが、ミステリー小説ゆえ、深い内容には触れませんが、主人公は夜道を歩いていたとき、突然誘拐される女性(アレックス)と、フランス警察のカミーユ警部。

女性が誘拐されたのを目撃したとの通報で、警部が担当することになりますが、まったくその足取りや被害者が特定できず、捜査は難航します。

この警部は、過去に自分の妻が誘拐されて惨殺されてしまうと言う経験(前作「悲しみのイレーヌ」 )があり、本来は精神的にもこうした誘拐事件の捜査にはふさわしくないのですが、周囲の仲間から過去を早く吹っ切るためにも事件を担当させられます。

ただし、普通の犯罪小説と違うのが、その誘拐事件は本作品の1/3ぐらいの部分を占めるに過ぎず、その女性の本性や過去に起きた凄惨な出来事が次第に明らかになっていくというものです。

ま、最後のトリックとクライマックスについては、少々どころかかなり無理な感じもしますが、それが小説だ!ということなのでしょう。

長い作品ですが、テンポもよくサクッと読めてしまいます。できればシリーズ1作目の「悲しみのイレーヌ」を先に読んでおくと、主人公の警部の苦悩やレギュラー陣のこともよくわかって良いかも知れません。

★★★

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レオナルドの扉 (角川文庫) 真保裕一

2015年に単行本、2017年に文庫化された長編歴史小説です。タイトルにあるようにレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年~1519年)にまつわる話しがテーマになっていて、小説の舞台となっているのは、ダ・ヴィンチの死後300年のイタリアとフランスで、ナポレオン(1769年~1821年)が皇帝となり武力で支配している地域です。

前からずっと不思議に思っていたことがあり、それが本書にも出てきますが、フランス革命(1789年~1799年)では圧政と堕落した王政に対し民衆が立ち上がり、革命を起こして王政と旧体制を壊したわけですが、その後すぐに軍人であり元貴族ののナポレオンが登場し、革命終結後わずか数年で自らが皇帝になるとというのはどうにも理解できませんでした。

もう王政はこりごりと国民は思って革命を起こしたはずなのに、そうした不可思議な事情は本書の主人公の言葉で出てきますが、その理由は書かれていません。

本書のストーリーは、元ダ・ヴィンチ村に住んでいた祖父とともに、流れ着いたイタリアの小さな村で時計屋を営んでいる若い孫の男の子を主人公として、レオナルドが300年前に書き遺した新兵器などのアイデアを書いたノートのありかをナポレオンが率いるフランス軍よりも早く見つけ出そうとします。

途中、同じくそのノートを手に入れようと、レオナルドの良きライバルでもあったミケランジェロの末裔とも一悶着が起きますが、和解ができて、協力し合い、少年がレオナルドのノートに書かれた新兵器を次々と実現化して、イタリア全土を支配するナポレオンの軍隊を圧倒するなどというエンタメ感満載のストーリーです。

さすがに波瀾万丈、快刀乱麻、よほどの予算がなければ実写映画化は難しいでしょうけど、せめてアニメ映画化しても不思議ではないかなと思います。そのうちできるかも知れませんね。

★★☆

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「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) 森博嗣

普段新書を買うときは、いわゆるジャケ買いで、タイトルを見て面白そうなものを買ってきます。つまり著者は誰でも構わないし知らないケースが多いのです。そのあたりは必ず著者名を見て買う小説と違う点です。

この新書もタイトルを見ただけで買ったので、実際に読むだすまでは誰が書いた作品かは知りませんでした。

で、読む前に、著者名を見ると、おっ!なんと、「スカイ・クロラ」などの作品で有名な作家さんじゃない!ということを知りました。

この著者は数多くの作品を出されていますが、過去にその中の「すべてがFになる」と「ZOKU」という小説を読んでいます。「スカイ・クロラ」はアニメ映画で見ました。

この著者とはまったく同世代で、誕生日が数日違うだけという、なにか不思議な親近感があります。

きっと小学生の頃にはツイスターや人生ゲームで遊び、中学生の頃には好きなアーチストのレコードを買い求め、高校生の頃には深夜ラジオとアーケードゲームのブロック崩しを楽しみ、大学生になってからインベーダーゲームに夢中となったのではないでしょうか。著者は国立大に入った秀才なので、子供時代とは言え、凡人の私と比べるのもなんですけど。

内容はタイトルにあるとおり、最近の若者がよく言う「やりがいのある仕事がしたい」に、著者なりの反論というか考え方を述べたものです。著者は大学で教鞭をとっていたこともあり、学生やOBから就職などについてよく質問や相談があったそうで、そうした経験からです。

一度も民間企業の会社員になったことがない著者にしては、世の会社の道理をよくご存じで、机上の空論ばかりを述べる学者先生や、自身が有名大学&大企業出身であることをベースにして上から目線でモノ言う有識者と違い、若い人にはなかなか役立ちそうな話しが満載です。

舌鋒鋭く、少し突き放した冷淡な感じもしますが、会社に入ってから「思っていたのと違う」と嘆くより、こうした器用で名をなした人の話を聞いてみるのも悪くはないでしょう。もっとも著者と同レベルに生きられるか?というものとは違いますが。

★★☆

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ノボさん(上) 小説 正岡子規と夏目漱石 (講談社文庫) 上・下巻 伊集院静

2013年に単行本、2016年に文庫化された小説で、若い頃からの正岡子規と夏目漱石の友情と、正岡子規が後世に残した偉大な文化などの話しが中心となっています。

正岡子規(1867年~1902年)というと、真横から撮影されたはげ頭の頭部が異常にでかい?写真がすぐ思い浮かび、ちょっととっつきにくそうな感じがしますが、四国松山から上京し、東大へ通っていた頃は誰もから好かれる好男子だったのですね。

それとその横顔でひげを生やした写真からは、お爺さん?って感じを受けていましたが、35歳という若さで亡くなっていますから、やや老け顔だったのでしょう。

その正岡子規、ほぼ同世代に夏目漱石や同じく松山出身で日露戦争で活躍する秋山真之、俳句で知り合った森鴎外も懇意で、その他にも歴史的人物が子規の周囲に次々と登場してくるのは驚きです。

特に東京大学入学後からの夏目漱石との仲は深く、お互いにその才能を尊敬し合い、行く道は違っていてもその友情はずっと変わりませんでした。

また正岡子規は野球が日本に入ってきてまもなくプレーヤーとして日本での普及に大きな影響をもたらし、ベースボールをもじって野球、バッターを打者、ランナーを走者、四球をファーボールなど訳した最初の人でもあり、野球に対して一家言ある著者(伊集院静)にとっては、この正岡子規を取り上げなければならない運命だったのかも知れません。

松山から希望が叶って上京し、予備門から東京帝国大学へ入学、その間にも俳句や短歌、随筆、浄瑠璃などを書き、自分には小説が向いているのではと創作活動を続けます。

タイトルは、正岡子規の幼名正岡升(のぼる)から、松山時代の友人達から「ノボさん」と親しみを込めて呼ばれていたことからです。

そのハチャメチャで貧しく短い人生ですが、多くの人に影響を及ぼし、明治という時代を駆け抜けていった一人の人間正岡子規を魅力ある人物として描いた小説として秀逸です。

★★★

【関連リンク】
 9月後半の読書 赤ひげ診療譚、非属の才能、笑うハーレキン、土の中の子供、あこがれ
 9月前半の読書 田園発港行き自転車、大人の流儀6 不運と思うな。、日本農業への正しい絶望法、お引っ越し
 8月後半の読書 美学への招待、中年だって生きている、すべて真夜中の恋人たち、孤独の歌声
 8月前半の読書 彼女のいない飛行機、残された者たち、国境(上)(下)、残念な人のお金の習慣
 7月後半の読書 占星術殺人事件、ソクラテスの妻、我が家の問題、「日本の四季」がなくなる日 連鎖する異常気象
 7月前半の読書 俘虜記、地層捜査、定年後7年目のリアル、私の家では何も起こらない、社会を変えるには



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赤ひげ診療譚 (新潮文庫) 山本周五郎

小説の初出は1958年に雑誌にて連載され、1959年に単行本が発刊されました。今からなんと60年前のことです。

この時代小説は、連作の短編集で、「狂女の話」「駆込み訴え」「むじな長屋」「三度目の正直」「徒労に賭ける」「鶯ばか」「おくめ殺し」「氷の下の芽」の8編が収録されています。

赤ひげ」はこの小説を原作として1965年に公開された黒澤明監督、三船敏郎主演の映画として有名です。

その映画のイメージを利用して、サントリー胡麻麦茶のCMで使われていますね。

このCM映像はモノクロのフィルム風で、いかにも当時の映画を加工して作られているように思われますが、実はまったく新しく作られたもので、三船敏郎?と思える役者は若い頃の三船敏郎に似ていると言われている俳優の増田雄一だそうです。私もすっかり騙されていました。

「赤ひげ」は、映画の他にもテレビドラマとして7回も制作されていたとか(wikipedia)で、団塊世代以上にとっては知らない人はいない懐かしさ満点でしょう。胡麻麦茶も、世代人口が多く、健康志向が強そうなその世代に向けて一番PRしたいのでしょうね。

さて小説の中身ですが、実在していた江戸時代中期の町医者で漢方医の小川笙船をモデルとした「赤ひげ」こと新出去定が、自ら奉行所に提案して作った貧しい人でも無料で医者にかかるようにした小石川養生所での出来事が、もうひとりの主人公で、長崎で西洋医学を学んだきた保本登とともに描かれています。

保本登は長崎留学のあとはエリートコースの幕府の御目見医になるつもりで意気揚々と江戸に帰ってきたものの、許嫁には裏切られ、しがない貧乏町民が集まる養生所で働くよう指示され、やる気をなくします。

しかし養生所の赤ひげや仲間と一緒に過ごすうちに、医学に対する自分の考えが違っていたことや、生き方に変化が現れてきます。

その辺りの心境の変化などが連作短編の中で順々にうまく表現されていて、途中から読むとうまく理解出来ないかもしれません。

やっぱこうした長く読み継がれている小説というのはたいへん良いものです。

★★★

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非属の才能 (光文社新書) 山田玲司

著者は1966年生まれの漫画家さんですが、一般書籍も数多く出版されています。この著作は2007年に発刊された新書で、2011年の本屋大賞、特別企画「中2男子に読ませたい!中2賞」というのを北尾トロ著「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるかデラックス」とともに受賞されています。なんじゃそれ?って気もしますが。

日本人に対してよく言われる、同一性、同調圧力、協調性などは今の時代には役に立たず、孤立化を恐れず人と違うことをやろうという逆張り指南本です。

確かに、他人に同調さえしていればそこそこ楽に生きられます。でもそこから先へは行けないでしょ?というのが主論なわけですが、同時に、発達障害や不登校などでも悩むことはなく、人と違った才能なんだという励ましになっています。

引きこもり、大いに結構ではないかという流れですが、親の年金だけが頼りで、親が亡くなっても届け出ず、不正に年金を受給していたり、なにも守るべきものがない無敵の人となって、子供や弱者を狙って刃物を振り回す一部の中高年引きこもりのことを考えると果たしてそう無責任なことを言っていて良いのかどうか、、、

こうした新書では「常識とは違うぞ!」というのを全面に出さないと売れないし、話題性にもならないので、そういうものばかりという気もしますが、割と感化されやすい中高年者の私や無垢な少年だと「なるほど!」とその時は首肯するかもです。

たびたび書かれていますが、一流アスリートや世界的な有名人はそうした同調しない非属の才能が突出しているというのも理解出来ます。

が、若い人向けに書かれた?という内容の浅さで、想定読者外?の中高年者が読むにはちょっと物足りない感じです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

笑うハーレキン (中公文庫) 道尾秀介

著者の作品の中では過去に「骸の爪」(2006年)、「片眼の猿」(2007年)、「ソロモンの犬」(2007年)、「光媒の花」(2010年)、「月と蟹」(2010年・直木賞受賞)、「獏の檻」(2014年)の6作品を読んでいますが、この作品は、2013年単行本、2016年文庫化された長編小説です。

読むまでは「ハーレキン」の意味すら知りませんでしたが、いわゆる道化師のことです。ピエロと道化師は同じと思っていましたが、本著にも出てくるとおり、ピエロには顔の化粧に涙を描くのが通例で、道化師(ハーレキン)の顔に涙を描けばピエロになるということです。

ちなみにマクドナルドの広告等で出てくる道化師には涙マークはないのでハーレキンです。

ストーリーにピエロや道化師は直接出てきませんが、腕の良い家具職人でありながら、幼い子供を失い、事業に失敗したことからホームレスとなり、精神的に不安定で、自虐的な生活を送る主人公のことを遠回しに表現しているようです。

大人は、ピエロや道化師を見ると、その化粧で笑っていると判断しますが、子供はその表層的な笑顔の中に、実際の顔は笑っていないことに気づき、見ると泣き出す子もいるのではという仮説が出てきます。

私自身も子供の頃は、ピエロや道化師(区別は付きませんでしたが)を見ると、なにかとっても嫌な気分にさせられましたが、それがなにかは判然としません。

おそらく化粧の下の顔が怒っているようで怖かったような気がします。実際は怒っているのではなく、一生懸命に演技をするあまり、無表情で真剣な顔つきになっていたのではないかなと思います。

少しミステリー仕立ての小説の内容には触れませんが、主人公の家具職人のことを考えると、ずっと普通のサラリーマンをやってきて、なにも手に職がないまま老齢期に入る自分の人生と比べると、どうしてこういう道を選ばなかったかな~と今さらながら残念に思います。

小・中学生の頃から、図工や工作、機械いじりが好きで、細かな手作業が得意で、もしそうした職人の道へ入っていたなら、今とは違う、自分にとっては有意義なもっと別の世界を見られたのにと残念に思います。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

土の中の子供 (新潮文庫) 中村文則

2005年に単行本が、2008年に文庫化された中短編小説で、2005年に「土の中の子供」で芥川賞を受賞されています。同書にはもうひとつ短編「蜘蛛の声」が収録されています。

著者の作品の中では今年3月に「教団X」(2014年)を読んでいます。

2019年3月後半の読書と感想、書評「教団X」

この小説の主人公は、親からの激しいDVを受け、トラウマが消えていない男性です。

子供の頃には、土の中に埋められて殺されかけた後に、施設で育てられ、現在はタクシー運転手をしながら生計を立てています。

自ら公園にたむろしている暴走族に対し喧嘩を売り、こっぴどく痛めつけられたりと、自傷や被暴力に対してコンプレックスを抱えているという暗く重苦しい精神が全体に流れています。

この小説が出た2005年にはこうした家庭内DVや、それららがトラウマになったまま生きていく人達のことはすでに社会問題化していましたが、2019年の今になっても、子供が親から殺され、虐待される事件はなくなりません。

最後の最後で、ひどい目に遭わせた父親との訣別を決意し、トラウマから脱する可能性をわずかに示した主人公に、明るい未来を感じることができる良い小説でした。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

あこがれ (新潮文庫) 川上未映子

2008年に「乳と卵」で芥川賞を受賞した著者の作品は過去に「ヘヴン」(2009年)と「すべて真夜中の恋人たち」(2011年)の2作品を読んでいて、今回が三作目です。

この作品は「ミス・アイスサンドイッチ」と「苺ジャムから苺をひけば」の2つの連作短編小説が収録されています。

主人公が小学生という私のもっとも苦手とする小説で、最近の小学生って、こんなに気が利いて、頭が良くって、物知りで、想像力豊かで、語彙が豊富だったっけ?と思うぐらいに、小賢しい限りです。

もっとも、大人、しかも才能のある作家さんが、想像の中から創り出す小学生ですから、何でもありって言えばその通りで、楽しければそれで良いという軽い読者には十分なのかも知れません。

テレビを見ていても、そこに登場してくる子供(子役?)達は、大人顔負けの知性と将来への固い決意、そして無垢な純粋な心を合わせもち、だらしない大人を煙に巻くというのがだいたいの流れとなっていますので、小説においても、ま、そういうことになりますか。

いや、自分の小学生の頃と比べると、そのあまりの落差で、フィクションとは言えなにか恥ずかしくなってくるだけに、小中学生が理路整然と難しいうんちくを語り、高度な知性を発揮する小説というのはとても苦手です。

この小説には出てきませんが、同様に、最近の映画には欠かせない、政府機関などどこにでもハッキングができて、主役にいたく協力的な天才ハッカーの存在も、もういい加減に飽き飽きしています。

ま、そういうことで、ストーリーは、洗練された大人の頭脳?を持った普通の小学生の日常を淡々と描いたもので、なにかとりたてて、魅力的なものではありません。

★☆☆

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田園発 港行き自転車 (集英社文庫)(上)(下) 宮本輝

2015年に単行本、2018年に文庫化された長編小説です。元々は富山市に本社を置く北日本新聞に2012年から約3年間にわたり連載されていた小説です。

そうしたこともあり、富山県各地の自然の美しさ、様々な交通機関、美味しい料理などがふんだんに取り上げられていて、私が名付けた「うんちく小説」という著者の作品群にバッチリ当てはまっています。

私は若い頃に、富山には行ったことがありますが、その時は、黒部ダムを見に行くのが主目的で、その他はほとんど素通りでしたので、あらためてこの小説を読むと、富山の海岸沿いへ行きたくなりました。

登場人物の相関関係はややこしく、これは著者自身の自伝的小説「流転の海」ほどではないにしろ、ややこしい限りです。

主人公は、宮崎へ出張と言いながら、なぜか富山で急死した自転車会社社長の娘、そして京都の花街の中で親の代から茶屋を営む女将さん、さらに、東京の企業に勤める中年男性、その3人の視点で物語は進んでいきます。

それらに加え、富山で美容院を営む亡くなった社長の愛人とその息子、昔は祇園で浮名を流していたが事業に失敗し、その後富山で警備会社を経営する男性、祇園の芸者置屋の女将、自転車会社社長と仲が良かった若くして亡くなった伝説の芸子、京都の出版社勤務の編集者、亡くなった自転車会社の社長の右腕だった老齢男性などなどが絡んできます。

舞台が、京都の祇園や地方都市の富山でしかも滑川という場所だけに、小説自体もなにか時がゆっくりと流れている昭和の香りがします。

タイトルだけ見たときには著者の初期の作品「青が散る」のような青春小説かな?と思いましたが、全然違って、複雑な人間模様と、時代に翻弄されたそれぞれの人生を描いたなかなか奥の深い小説でした。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

不運と思うな。大人の流儀6 a genuine way of life 伊集院静

大人の流儀」シリーズの第6弾で、2016年刊の新書です。確か週刊現代に連載されているエッセイをまとめたものだと思います。

帯に「生きる勇気が湧いてくる。感動の1冊」と大げさに書いてあったので、60過ぎのオッサンに生きる勇気を持たせてくれるのかと、わくわくしながら読みましたが、肩すかしも良いところです。

著者の小説やエッセイは好きで、過去に16作品(19冊)を読んでいますが、著者の作風が変わったのか?それとも読み手の私が年齢とともに感性が変わったのか?その両方かもしれませんけど、これはいただけません。

とにかく、同じ事を何度も書く、しつこく書く、中には自慢たらしく思えるようなことを自慢げに書く、過去の美しい想い出を何度も書く、あまり考えずに単なる思いつきだけで書いている?と思う箇所など、これはいずれも高齢者の多くに見られる現象のような気もします。著者は今年で69歳、いつまでも若くはないですね。

好きな作家さんだけに、こうした症状が垣間見えるのは、ちょっと残念です。

もっとも、若い人にとっては、こうした波瀾万丈の生き方をしてきた人の経験を垣間見ることで、いろいろと考えることもできるでしょうから、すべて悪いと言うつもりはありません。

要は読み手がどう思うかですから、私も個人的な感想を述べているだけで、それを誰かに批判されても困ります。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書) 神門善久

2012年刊の新書で、日本の農業の実態と、その周囲に群がる政治家、官僚、マスコミなどを赤裸々に告発しています。

著者が言うように、一度も現場に足を向けないような、役人や識者と呼ばれる学者、ジャーナリスト、マスコミの記者などが、日本の農業は素晴らしいという情緒的なイメージを作っているというのはなんとなくわかります。

また効率化を図って世界と戦える大規模農業こそが、生き残る道だという主張や世論にも警鐘を鳴らしています。

私自身は農業とは縁遠い世界にいるだけに、いったいなにを信用すれば良いのかはわかりませんが、様々な主張をこうして読むことで、一方的な考え方になるのだけは防ごうと思っています。

この本の中でも、へぇーと思ったのは、「農家は一般的なサラリーマンよりも収入面で恵まれている」という部分。

なにかイメージ的には「農家は収入が低いけど、ある程度自給自足ができるので食っていける」というものがありますが、実態としては、農家は平均的に年収も高く、しかも家や土地があり、優遇された税制や補助金まであるということ。

テレビで見る農家は「台風で水浸しになって困惑する姿」や、「高齢化した夫婦が毎日畑に出掛ける姿」などで、「農家ってたいへんだなぁ」というイメージしかありません。

この本を読むと、農地として税制優遇を受けておきながら、駐車場に変えて利益をあげていたり、息子に分家するという名目で税制優遇された土地を譲り、その土地に家を建て、その家を第三者に転売するなど、様々な農家の錬金術が書かれていて、上記のようなほのぼのとした農家のイメージは崩れてしまいます。

若い人が地方へ行き、新たに就農することでも、農家は荒れて使えない土地しか貸してはくれず、何年かかけて苦労して土地を改良し使えるようにしたら、貸し出し期間の延長はしないとか、やりたい放題な農家もあるとか。

ただ、日本の農業の未来について著者が言うような「農業技能を高め、質の高い生産物を作る」というのも、そういう高くても良いものを求める著者のような人も中にはいるでしょうけど、安くてそこそこな野菜や米などがあれば十分という需要が国民の大部分を占めている現状があるわけで、そうしたことを真っ先に考えるべきではないかと思います。

★★☆

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お引っ越し (角川文庫) 真梨幸子

ホラーじみた連作の短編小説集で、2015年に単行本、2017年に文庫版が発刊されています。収録作品は、「扉」「棚」「机」「箱」「壁」「紐」の6編です。

著者の作品は過去に「あの女」と「殺人鬼フジコの衝動」を読んでいますが、その両作品はイヤミス(読後感が悪く、イヤな気持ちになるミステリー)の女王というイメージ通りの作品でした。

2019年2月後半の読書「あの女」

2015年2月前半の読書「殺人鬼フジコの衝動」

ただ、今回のような短編小説になると、そのイヤミスパワー(この短編ではそれが目的ではないかも知れませんが)も大きく減衰してしまい、それに期待をしすぎるとガッカリします。

まだ読んだ作品数が少ないので決めつけられませんが、この著者の作品は、いろいろといわく付きで読ませる長編こそ魅力がありそうです。

ちょっとユニークなのは、文庫本の最後にある解説がよくある普通の解説ではなく、本文の続きになっているようで、この短編集の解説を依頼されたライターが、「この本は読まない方が良い」と書きます。そして自分とは出会わない方が良いと、登場人物になって忠告を与えています。ホラーでしょ。

★☆☆


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 6月後半 湿地、偶然のチカラ、よるのふくらみ、転々、遠くの声に耳を澄ませて
 6月前半の読書 不死身の特攻兵、友情、あなたにもできる悪いこと、山女日記、アルトリ岬
 5月後半の読書 逆流 越境捜査、友がみな我よりえらく見える日は、友情、ピストルズ(上)(下)
 5月前半の読書 光のない海、地方消滅 東京一極集中が招く人口急減、家守綺譚、芥川症、バカ売れ法則大全



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1361
美学への招待 増補版 (中公新書) 佐々木健一

東大の名誉教授で美学者というタイトルの著者は、日本ではあまり浸透していない美学の第一人者ということなのでしょう。著書の中でもそうした自慢があちこちに見られます。

ところで、一般的にはほとんど知られていない(と思う)美学とはなんぞや?ですが、Wikipediaによれば「美の本質や構造を、その現象としての自然・芸術及びそれらの周辺領域を対象として、経験的かつ形而上学的に探究する哲学の一領域である。森鴎外により「審美学」という訳語が与えられたが、現在では美学と呼称される。」とな。

う~む、「経験的かつ形而上学的に探究する哲学の一領域」と言われてもなぁ、、、
この年になってもこうした哲学的な学問は苦手です。洞察力が鋭く、なににおいても深く考え込めるような、好きな人は好きなんでしょうけど。

この著者が言う芸術の定義は「背後に精神的な次元を隠し持ち、それを開示することを真の目的としている活動」ということになります。わからないでもないですけど、そういうことなしで、結果的に後世に芸術となったものはいくらでもありそうですね。例えば洞窟の中の落書きとか古墳の中の絵や埋葬物など。

元々は美術、建築、彫刻、音楽などの芸術を中心に西洋で発達してきた美学という学問ですが、日本でも独自の「わびさび」や「和歌」などもそれに該当するらしく、地域によってその対象とすべきものや、美や芸術に対する感性は違ってくるのでしょう。

本書では、入門的な内容という前書きでしたが、最高学府の学者先生らしく、内容がとても高尚で、ジックリ考えることが苦手になってきたただの平民オヤジには理解しがたい(頭に入ってこない)ところが多く、読むのも難渋しました。

もっと若くて頭が柔軟な頃に読めば違ったのかもしれませんね(変わらんて)。

それでも、苦心しつつ、最後まで目を通してみたら、それなりに芸術に対する見方が少し変わったかなという気がします。

★★☆

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中年だって生きている (集英社文庫) 酒井順子

エッセイストの著者は、著書「負け犬の遠吠え」(2003年)の中で、「美人で仕事ができても、30歳代以上・未婚・子なしの3条件が揃った女は負け犬」と断じ、自虐的、逆説的な負け犬ブームを作った方です。

年齢が二世代近く違いますが、やはりエッセイストの上野千鶴子氏にも、なんとなーく似ています。闘士たる上野氏ほど発言・行動が過激ではないにしても。

このエッセイでは、自身が中年にどっぷりつかり、様々な環境の変化、肉体的な変化や、これから起きるであろうことなど、客観的にあけすけに語っています。

同世代の女性、しかも逆説的に「負け犬」と呼ばれた、未婚女性にはたいへん共感を与え、受けそうな内容となっています。

男性がこれを読むことでは、中年女性の扱い方、距離感、など、特に中年女性の部下となったり、同僚になったりしたときに役立ちそうな思いが詰まっていると考えましょうかね。

確かに、団塊世代の女性達の多くは、まだ専業主婦がメインで、上野千鶴子氏など、男性社会の中で苦労しながら社会に出続けた人は少なかったのですが、著者の年代は雇均法もあり、日本の史上初めて女性管理職や第1線で働く女性達が巨大な塊となっています。

笑ってしまったのは、20~30代の若者向けに、浅野温子・浅野ゆう子のダブル主演の1988年のトレンディドラマ「抱きしめたい!」が、その25年後の2013年には「抱きしめたい!Forever」として53歳という設定の主人公達が、やはり恋愛ありのトレンディドラマとして成立しているというところ。

そのうち70歳を過ぎた主人公が老人ホーム内で恋愛に溺れるトレンディドラマとかも作られるようになるのかもしれません。

テレビや新聞の視聴者、読者の平均年齢がどんどん上がってきていることもあり、さもありなんです。

言うまでもないことですが、世の中はどんどんと変わっていくものです。

★★☆

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すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫) 川上未映子

小説の2作目「乳と卵」で芥川賞を受賞した優秀な作家さんで、旦那さんは同じく作家の阿部和重氏という、なにか気の休まるところがなさそうな、同業者カップルです。

著者の作品は昨年(2018年)に「ヘヴン」(2009年)を読んでいます。

6月前半の読書と感想、書評 2018/6/13(水)「ヘヴン」

この著作は上記「ヘヴン」のあと、2011年に上梓された小説です。

主人公は30代の未婚女性で、仕事は出版社などから依頼を受けて内容のチェックをおこなうフリーの校閲者です。作家というか物書きの人とは接点が深く、その習性や行動パターンなどにも理解があるのでしょう。

一応、女性向けの恋愛小説という体ですが、どちらかというと、30過ぎた未婚女性の同性同士の関係性において出てくる嫉妬やひがみ、あきらめなど深層心理に深く刺さる描写がメインのような気もします。

したがって、男性が読むと、女性の思考パターンなどが理解しやすくなるのかも。でも小説ですから、出てくる人達は決まって極端に振れている感じなので、それがすべてってわけでもないから、ややこしいです。

恋愛小説と思って読むのはちょっとどうかなぁって男性の私は思いますけど、一般的な女性からすると、これでもリアルな恋愛小説なのかもしれません。

★ ★☆

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孤独の歌声 (新潮文庫) 天童荒太

著者の作品は、過去に「永遠の仔」(1999年)と「悼む人」(2008年)を読んでいて、イメージとしては暗く深い人間の闇をえぐり出すような感じですけど、まぁ好きな作家さんです。「悼む人」では2009年の直木賞を受賞されています。

2012年3月後半の読書「永遠の仔」
2011年8月後半の読書「悼む人」

この著作は、それらよりも前の発刊で、1994年に単行本、1997年に文庫化されたサイコホラー的な小説です。また1997年と2007年に、それぞれテレビドラマ化されています。

主人公は、子供の頃に友人の女の子が目の前で誘拐され、その後殺されてしまったというトラウマを持つ女性刑事と、コンビニでアルバイトをしながら、自分で曲を作り、ライブハウスで歌っている若い男性。

女性を誘拐して切り刻み、捨てるという猟奇犯罪が連続して起き、主人公の女性刑事が住むマンションの隣人の女学生も突然行方不明となり、過去の友人が誘拐されたトラウマを引きずりながらも、犯人を追いつめていきますが、やがてその女性刑事自身が誘拐のターゲットになっていきます。

タイトルは、もうひとりの若い男性が歌う歌が、孤独にさいなまれた人に浸みていくというところから人気がジワジワとでてくるということで、都会に暮らす現代人と社会を表しているのでしょう。

最近のミステリーの常道として、最後の数ページで大きな転回が予想されましたが、結局予想外の展開はなく、オーソドックスに収束していきます。

★★☆

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彼女のいない飛行機 (集英社文庫) ミシェル・ビュッシ

2015年に文庫が発刊された、フランス人著者の長編ミステリー小説です。この作品が大ヒットし、その後「黒い睡蓮」(2017年)も各種の賞を得るなど活躍されています。

650ページを超える大作ですが、ストーリーは、1980年に飛行機事故で唯一生き残った赤ちゃんはいったい誰の子か?という、DNA検査が発達している現代ではなしえないミステリーとなっています。

トルコ発の旅客機に偶然乗り合わせた二人の乳児がいて、「奇跡の赤ちゃん」と言われた旅客機事故機のそばで見つかった乳児はどちらの子(遺児)ということで、双方の遺族の祖父母が激しく対立します。

その双方の祖父母は対称的で、一方は大金持ち、一方は古いワゴンを改造して食べ物を売り歩く貧しい家庭。

裁判になって、勝ったのは貧しい祖父母の孫だと決まり、その乳児がフランスの成年となる18歳となり、それまでの期間、金持ち夫婦に依頼された私立探偵が、DNA検査までおこなっても結果が判明しないということで、とうとう自殺を決意していたところ、その理由に気がつくことになります。

主人公は、その乳児の兄とされる男性で、妹でありながら、恋愛感情を持ってしまい、本当に妹なのか?ということに悩みます。

結果は書きませんが、途中でなんとなくわかりました。もちろんそのような偶然や、行動ができるはずもなく、現実的ではないという前提ですが。

とにかく長い小説ですが、ミステリーなのでどこに謎が隠されていないかと、しっかりと読み込むより、サラッと読み進めていくのをお勧めします。

謎がどこかに隠されているというようなものではなく、調べていく内に、新たな発見が、、、ってことですので、過去の発言や行動にこだわらなくてもよく、淡々と読めば良いです。

★★☆

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残された者たち (集英社文庫) 小野正嗣

2015年に「九年前の祈り」(2014年刊)で芥川賞を受賞された著者の、受賞後すぐの2015年に文庫で刊行された小説です。初出は2011年の雑誌「すばる」です。

なにかタイトルにひかれた面がありますが、思っていたような内容ではなく、かつては漁村だった限界集落に住む家族と、そこに住むひとりの小学生と教員とのふれあい、家族模様、隣の集落から通ってくるようになったアジア系外国人の子供など、現在進行中とも思える日本の寒村を抽象的に描いた作品です。

すでに人口の2%を超えるようになった外国人ですが、すでに北海道のニセコ町や東京都新宿区は住人の外国人比率が12%を超えていて、ここはどこの国?と思える環境になりつつありますが、今後は仕事は豊富だけど住みにくく生活費も高い都会より、若い人が不足している地方へ流れていく外国人が多そうな気がします。

そうした環境をこの小説では描いていますが、もうすでに外国人というレッテルはもう地方においてもなきに等しい感じがします。

そのうち、日本人が誰もいなくなった村や町に、外国人が集まってきて外国人だけの村や町を作るっていうことが起きるのかもしれません。

その場合、この小説にも出てくるように、まるで治外法権のような、「無免許当たり前、誰に迷惑をかけているわけでもない」というようなことになるのでしょうか。

★☆☆

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国境(上・下) (文春文庫)  黒川博行

2001年に単行本が発刊され、その後2003年に講談社から文庫版発刊、さらに2014年に文藝文春からも文庫版が発刊されています。この著者の作品は、過去に「暗礁」(2005年)を2008年に読んでいます。

この長編小説は、1997年からスタートしている「疫病神シリーズ」の第2弾の作品で、ヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮が主人公です。

このシリーズは不定期に続いていて、最新では昨年2018年に第7作目の「泥濘」が発刊されていることからすると、なかなかの人気シリーズなんですね。知りませんでした。

この小説で出てくる北朝鮮は、2001年当時の状況ですが、現在2019年と比べてもほとんど変わりはなさそうで、そのことが、日朝間の関係と北朝鮮の国内情勢を表している感じがします。

日本国内で詐欺に遭った暴力団や、仲介した中古建設機器販売会社から脅され、詐欺師を追って北朝鮮に侵入しますが、様々なアクシデントもあり、その緊張感が半端なく伝わってきます。なんにしろ、密航で捕まったら処刑されそうな国ですからね。

強面で古い時代のヤクザらしいヤクザのイケイケ桑原と、喧嘩にはめっぽう弱そうな自営の建設コンサルタントの二ノ宮のコンビは、映像化にも向きそうで、2015年にBSの連続ドラマとしてシリーズ1作目「疫病神」と第5作目の「破門」が、2017年には「破門 ふたりのヤクビョーガミ」というタイトルで映画化されています。

こうした、性格などが違った、動と静、または陰と陽のふたりの男性を主人公としたドラマは多いですね。古くは、「傷だらけの天使」「俺たちの勲章」「あぶない刑事」、最近では「まほろ駅前多田便利軒」「相棒」などなど。

但し、この「国境」に関しては、話しの半分が北朝鮮国内の設定だけに、ドラマや映画化にはロケ地などモロモロとお金もかかりそうで、政治的にもトラブルが起きそうで厳しいでしょう。

ストーリーもよく考えられていて、北朝鮮の国内状況、密航方法などもどこっまで創作かはわかりませんが、よくできていて、スリル満点です。

久しぶりに、ドキドキするハードボイルド小説?を読んだって気がします。

★★★

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残念な人のお金の習慣 (青春新書プレイブックス) 山崎将志

2011年12月に発刊された新書です。著者はアクセンチュア出身のビジネスコンサルという、掃いて捨てるほどいそうな経歴の方です(失礼)。

情けないことに、2016年にも買って読んでいました。が、最後までそれに気がつきませんでした。

2016年7月後半の読書と感想、書評「残念な人のお金の習慣」

この著者の本では、その他に「残念な人の思考法」を読んでいます。

2010年9月前半の読書「残念な人の思考法」

感想は上記を読んでいただくとして、[お金の習慣」という点では、もうなにをするにしても手遅れな年齢になってしまいましたが、過去を振り返って客観的に自己分析すると、稼ぐ力は100点満点中80点を取れたと思いますが、使い方については40点ぐらいだったかなと最近考えるようになりました。

そのうちダメダメだった「残念な使い方」の話しをブログに書いておこうと思いますが、こうした経験は、その時代、そのタイミング、健康状態や気持ちの余裕、家族や家庭の事情など多くのことが複雑に絡み合っておこなわれるもので、それが反面教師になるかというと、たぶんなりません。

つまり、お金の習慣というのは、その時代やライフスタイル、彼女や配偶者、親兄弟など様々な要因で一人一人変わってくるものじゃないかなというのが実感です。

そして、例え外から見れば「バカな使い方している」と思っても、使っている本人は案外ハッピーなのかも知れません。それは外からはまずわかりません。

★★☆

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