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1766
25時(新潮文庫) デイヴィッド・ベニオフ

25時
本著は1970年生まれの著者のデビュー作となる2002年の作品で、10年前に第3作目の「卵をめぐる祖父の戦争」(2008年)を読んだとき、その才能に惚れ込み、「デビュー作もいずれ読んでみたい」と書いたことがありましたが今回やっとかないました。

2014年2月後半の読書と感想、書評(卵をめぐる祖父の戦争)

今回も内容は全く知らずに読み始めましたが、日本とアメリカでは犯罪者が裁判で有罪が確定したあと刑務所への収監までの扱いが全然違うので、まずそれに驚くばかりでした。

というのも、この主人公の話ですが、麻薬の密売で逮捕され7年の懲役刑が裁判で確定したあとも、決められた収監日までは保釈金を積めば外で普段通りの生活ができるのがアメリカらしいです。

タイトルの25時間は、収監されるまであと25時間というところから始まり、7年間の刑に服するか、親が店を売って用意してくれた多額の保釈金を没収されることを覚悟して逃げ回ることにするか、それとも自殺するか、その決断の時が刻一刻と迫ってきます。

7年間の刑がそれほど悩むのか?というのも日本ならではのことで、アメリカでは白人の美少年が刑務所に収監されると、マイノリティの収監者達に襲われるというのが定説で、主人公はその美少年と言える白人青年でした。

派手なアクションなどはなく、主人公とその周囲にいる父親、恋人、親友、そして麻薬ディーラーのボス、密売仲間などとの人間関係、気持ちや感情の移り変わりなど、繊細な描写に終始し、アメリカ人の主にエンタメ系の作家の書いた小説とは思えないほどでした。

最後はややわかりづらかったですが、「もし逃げ出しうまく逃げ延びたら・・・」という妄想?で終わりますが、自業自得とは言え現実はそうでないという、、、

いや面白かったですが、「卵をめぐる祖父の戦争」が突出した作品だっただけに、それには及ばないという感想です。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

晴子情歌(上)(下)(新潮文庫) 高村薫

本著は2002年に単行本、2013年に文庫化された長編小説です。過去に著者の小説は1995年に「黄金を抱いて翔べ」を読んでから、「レディ・ジョーカー」など合計9作品を読んでいますが、それらとはまったく毛色の違った内容で、意外な感じがしました。

文庫の上下巻合計で800ページを超える、通常の文庫本なら3~4冊分はありそうなボリュームで、しかもその中の半分ぐらいが、旧字、旧仮名で書かれた主人公が書いた手紙となっていて、それに慣れるまでに時間がかかりました。

さらに、登場人物が豊富で、巻頭に家系図がありそれに救われましたが、しばしばその家系図を見に行く手間もありサクサクと読めるものではありませんでした。

主人公と結婚した夫の兄弟(義兄、義姉)が4人いて、その配偶者を合わせると8人、夫の両親に主人公の父親の兄弟が5人、母親の姉妹が他に2人などなど。さらに甥や、名家で代議士を出した名家だけに番頭や女中、秘書などもいます。家系図がなければとても読み進められません。

主人公は、戦前に東京で生まれた女性とその息子の二人で、エリートの英語教師だった女性の父親が妻(主人公の女性の母親)を病気で亡くしたあと、仕事を辞めて生まれ故郷の青森の寒村へ引っ越す決意をしたことで、その女性の人生が大きく変わります。

その主人公の女性がやがて女中として奉公していた青森の名家のフラフラと自由人を謳歌していた4男坊と出征する前日に結婚することになり、そしてその夫が戦地にいるいるあいだに義兄の子をもうけ、その子(息子)へ母親から過去の自分の人生や息子の出生のことを手紙に書いて教えていく流れです。

中でも、主人公の父親が故郷に戻ってすぐに親戚を頼って漁師となり、また、息子も東大理学部を卒業した後、女性トラブルを起こしたこともあり、就職せずにやはり親戚を頼って遠洋漁業の船員になるなど、昭和から現代までの漁業についてかなり詳細に書かれています。

テーマは、タイトルからすれば、昭和の戦前に青森の寒村に引っ越した女性の一代記ですが、その息子の母親に対する疑念と愛情、そして主人公の女性の恋心、激動の戦前戦後の日本、特に北方漁業を中心とした社会の縮図と言ったところでしょうか。

とにかく登場人物が多く、読むのに疲れましたが、丁寧に最後まで読み切ったという満足感があります。

★★☆

著者別読書感想(高村薫)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

淀川八景(文春文庫) 藤野恵美

淀川八景
著者は1978年大阪府生まれの作家さんで、著書を読むのは今回が初めてです。今回の著書は文芸作品ですが、過去には児童文学などジュニア向けの作品が多く、今まで名前すら知らなかったのもやむを得ません。

今回は、タイトルに惹かれて購入しました。というのも、過去に淀川に架かる豊里大橋(大阪市東淀川区)のすぐそばに短い期間でしたが住んでいたことがあり、なんとなく懐かしさを覚えたからです。

私が淀川や淀という地名を聞くと、すぐ頭に浮かぶのは淀競馬場と淀殿(織田信長の姪になる茶々)ですが、今回は淀川をテーマにした8つの短編の物語で、競馬場も安土桃山時代の話も出てきません。

8編のそれぞれのタイトルは、『あの橋のむこう』『さよならホームラン』『婚活バーべキュー』『ポロロッカ』『趣味は映画』『黒い犬』『自由の代償』『ザリガニ釣りの少年』です。

その中で私が一番好きなのが『ポロロッカ』で、これは淀川河口から上流に向けて遡り琵琶湖(瀬田の唐橋)までをひたすら歩く、紀行ものというか、ロードノベルで、これはできれば短編ではなくもっといろいろな要素やうんちくなどを加味し中編以上の作品で読みたいなと思いました。

ただそれぞれの作品で描かれているのは、日常生活での人間関係の機微がメインで、各編とも完全に独立したそれぞれに味わいの違う作品で、それはそれで十分に楽しめました。

★★☆

【関連リンク】
 1月前半の読書 東京クルージング、資源カオスと脱炭素危機、カオスの娘、橋を渡る
 12月後半の読書 グレイヴディッガー、駐車場のねこ、平凡すぎて殺される、鬼統べる国大和出雲古事記異聞
 12月前半の読書 葬式組曲、ちえもん、夜市、歴史探偵 忘れ残りの記

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1763
東京クルージング(角川文庫) 伊集院静

昨年(2023年)11月に亡くなった著者の2017年に単行本、2020年に文庫化された長編小説です。

小説ですからもちろんフィクションですが、登場してくるのはメジャーに挑戦した松井秀喜氏(実名で登場)と、NHKの元ディレクターで、松井秀喜や王・長島などのドキュメンタリーを制作した大谷実氏(別名で登場)です。

大谷氏は、39歳の若さで志半ばで癌で亡くなりましたが、亡くなる寸前まで周囲に病気を隠して番組制作に奮闘されたようです。そのあたりの周囲に気を遣いながら必死に生きていく姿がこの小説でも描かれ心打たれます。

第1部は、野球好きの作家の主人公とNHKのディレクターが松井秀喜のメジャー挑戦のドキュメンタリーを制作することになったいきさつや、作家とディレクターの心のふれあいがテーマになっています。そしてディレクターから過去に結婚を誓った女性がある日突然消えてしまったという私的な話を聞かされます。

そして第2部では、その消えてしまった女性を主人公とし、壮絶な過去と、拉致誘拐同然で男に連れ去られ、子供を産み、逃げ惑う話が展開していきます。

そういう内容なので、前半部は心穏やかに読めますが、後半は虐待や暴行、逃避行と読んでいても心苦しく胸の痛くなる内容とガラリと変わります。

タイトルは、そのディレクターが学生時代に東京湾クルージング船でアルバイトをしていた時に、その女性と知り合い、お互いが海に思い入れがあり、結婚を約束するまでに至ったことから来ているものと思われます。

★★☆

著者別読書感想(伊集院静)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

資源カオスと脱炭素危機(日経プレミアシリーズ) 山下真一

著者は日本経済新聞社 編集 金融・市場ユニットシニアライターとして活躍されている方で、多くの資源や環境問題等の著書があります。

本著は2022年に出版された資源とエネルギー危機を強くあおる内容で、しかも、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻で世界が大きく変動してきたタイミングで著者のもっとも得意とする分野をまとめたものです。

第1章は原油がテーマ、第2章は石炭と天然ガス、第3章はレアアースを含む金属、第4章は食料高騰となっていて、最後の第5章ではまとめ章で、投資や資源ビジネスなどについて書かれています。

ただ読んでいても、なにか遠くの世界で起きている事柄ばかりの羅列で、それで「日本はどうしている?」「どうすれば良い?」という視点がなく、「世界はこうなっているから、あとはみなさんで勝手に考えてね」という批評するためだけの批評家っぽい論調です。

確かに世界の大きな動きを知っておくことは重要なことでしょうけど、それに直接関係する仕事をしている人以外はあまりにも話が遠すぎて「だからどうなの?」って思います。

資源競争やきな臭い国際情勢を聞かされても、我々庶民ができることとしては、外交に明るく(世界中の重要人物と通じている)、交渉力があり、自分の裏金作りではなく、国家国民の利益を最優先に考えてくれそうな政治家(いるのか?)を選挙で選ぶしかありません。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

カオスの娘(集英社文庫) 島田雅彦

2007年に単行本、2012年に文庫化された長編スピリチュアルミステリー小説です。スピリチュアルというかファンタジー&ホラーとも言えますが、誘拐された女子高生が監禁され乱暴の限りを尽くされるなど、読んでいて良い気分にはなれません。

主人公は、祖母から予言者のシャーマンの素質を引き継いで、網走の原野で修行を積みその才能を開花させていく若い男性。

もうひとりの主人公が女子高生で、ある日、男に誘拐され佐世保のマンションの一室に監禁され抵抗できないよう肉体的、精神的に追い詰められていきます。これがタイトルの「カオスの娘」を指しているのでしょう。

この女性が、やがて誘拐犯自身が企んだ自殺に巻き込まれ、精神が壊れ記憶喪失になり、次々と迫ってくる男達を殺していくことになります。

シャーマンの男性が、殺人を繰り返していく若い女性の居場所を探し、どうやって記憶喪失を治し、精神状態を正していくかというストーリーですが、悪人ばかりではなく、孫のためにシャーマンの極意を伝え引き継いで亡くなる老婆や、女性を助けるために命をかける第三者、連続殺人事件を調べ核心に迫るものの、真相を知ってそれ以上の追求を手放す刑事など、登場人物達が魅力的です。

著者の小説は過去4作品を読みましたが、今までとはまったく毛色の違う内容で、ちょっと意外な感じがしました。当時、新境地を切り開いた作品なのかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(島田雅彦)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

橋を渡る(文春文庫) 吉田修一

2014年から2015年にかけて週刊文春に連載された長編小説で、2016年に単行本、2019年に文庫化されました。

第1部に相当する「春」には、子供がいない夫婦の住む都心の一戸建て住宅に、父親の海外赴任の関係で高校生の甥が居候することになり、静かだった家に騒動が起きることになります。

第2部の「夏」では、東京都議会議員の妻が主人公で、セクハラヤジで大問題化し、自分の夫があのヤジを飛ばしたのではないかと疑念と不安を持ちつつ、子供がそのことでいじめられないか、自分が周囲のママ友達から後ろ指を指されないか不安に陥り精神的に追い詰められていきます。

そして早くその話題がニュースからなくなり忘れ去られることを願っていますが、一番仲の良かったママ友が、スイミングスクールのインストラクターと逢い引きしているところを偶然見てしまい、、、

第3部の「秋」は東京のテレビ局でドキュメンタリー制作をしている男性が主人公で、ある日妻が浮気をしていることを知り、一度は許すつもりだったのが、妻から三行半を突きつけられ思わず首を絞めてしまい、逃亡を謀り遠く対馬まで流れてきたものの、指名手配で通報され捕まります。

ここまでに「歌舞伎町風俗」「セウォル号沈没」「東京都議会セクハラヤジ」「STAP細胞論文不正」など、当時実際に起きた風俗や事件が出てきます。

そして第4部の「冬」では時代が一気に70年後の東京に飛んでしまい、そこでは先の1部~3部で登場してきた人やその子供達がそれぞれに絡んでくると言うややこしい物語です。

なにがややこしいかと言って、第1~3部にはそれぞれ登場人物が何人も出てきますので、第4部ではその人たちとさらに子供や孫達でもう誰が誰だったかよくわからず何度も前へ読み返すことになります。

せめて登場人物相関図でもあれば良いのですが、そういう気の利いたものはもちろんなく、記憶力の悪い人(私)にはなかなか理解するのがたいへんでした。

★☆☆

著者別読書感想(吉田修一)

【関連リンク】
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1761
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


今年も読書感想から1年がスタートです。芸がなくてすみません。


グレイヴディッガー(講談社文庫) 高野和明

著者の作品としては初期のもので2002年に単行本、2004年に文庫化されています。今年2023年には「踏切の幽霊」で直木賞候補になり、面白そうなので、早く文庫が出版されるのを待っています。

タイトルの「グレイヴディッガー」は、中世ヨーロッパの宗教裁判によって殺された死者が蘇って、審査した者を殺して回るという伝説に出てくる殺人者の名前ということです。ただこれらは作者の創作だと解説で知りました。

麻薬の売人だった男がトラブルからナイフで刺されて連れ去られます。目撃者の証言からひとりの麻薬中毒で売人から麻薬を買っていた男が捕まり、殺害した犯人を示す数多くの証言と証拠があります。

それとはまったく関係のないところで、主人公は小さな詐欺などを繰り返してきたワルですが、人生を変えたいと思って白血病患者に髄液を提供するドナー登録をし、適合する患者がいることがわかり翌日に病院へ行くことになっています。

その主人公が、金欠で病院へ入院する前に小銭を借りようとホストをやっている知人の東京都北区赤羽にあるマンションに行きますが、そこでその知人が惨殺されているのを発見します。

その知人とは、お互いにそれぞれに自分名義でマンションを借りて、実際に住むのは入れ替わって住むという、犯罪者の悪知恵を使っているため、自分の(名義の)部屋で知人が惨殺されているということになります。

さらにその部屋で呆然としている時、3人の男たちが強引に入ってきたので、殺人者が戻ってきたと思い、窓から逃げだします。

この時から何者かわからない男たちと、部屋に残された知人の死体のため警察の二つから追われることになります。そして翌日には大田区六郷にある病院に入院して全身麻酔で髄液を抜かなくてはそれを待っている患者の命に関わることになります。

東京近郊の地理に詳しくないとわかりませんが、北区赤羽は23区の最北部、病院のある大田区六郷は23区の最南部でもっとも距離があり、通常なら赤羽から京浜東北線で品川、品川から京浜急行で六郷土手という乗車時間約1時間のルートになります。

しかし逃げる主人公はお尋ね者で、タクシーに乗ると逃亡犯の情報提供を求める無線が隠語で入ってきたり、電車では駅の監視カメラに映り込むのと、すでに緊急指名手配となっていて警官がいる駅には近づけないので様々な工夫をしながら、また捕まりそうになりながらも逃げて逃げて・・・

こうした逃亡者が数々のピンチを切り抜けて逃げ回るというのは「逃亡者」(テレビドラマ1963年、映画1993年)が有名ですが、私は子供の頃に見たアメリカのコミカルな連続ドラマ「逃げろや!逃げろ(Run Buddy Run)」(1966年)が一番記憶に残っています。

追いつ追われつドキドキするのが普通ですが、この主人公はなにか天然っぽい感じで、詐欺師らしく人の裏をかこうとフラフラとしていてあまり緊張感がありません。エンタメとしては楽しめますが、逃亡中に携帯電話を何度も使うというのはこの時代だからでしょうね。今ならすぐに場所が特定されます。

★★☆

著者別読書感想(高野和明)

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駐車場のねこ(文春文庫) 嶋津輝

1969年東京生まれで、2018年に短編「駐車場の猫」を雑誌に、2019年にデビュー作「スナック墓場」を単行本で出版をしたというぐらいしか情報の少ない作家さんですが、本著はそれらの短編作品をまとめたもので、文庫化にあたりタイトルも変更されています。

収録されているのは、「ラインのふたり」「カシさん」「姉といもうと」「駐車場の猫」「米屋の母娘」「一等賞」「スナック墓場」の7編でそれぞれ独立した作品です。

日常のさりげない風景や人間関係を独特の視点で切り取った作品集で、どれも肩肘を張らないで気楽に面白く読めます。

印象が強かったのは、「ラインのふたり」と「姉といもうと」で、「ラインのふたり」は、ロマンチック街道と交差するドイツのライン川のほとりで恋人たちが、、、というような話ではなく(そういうのは宮本輝さんにおまかせ)、工場のラインで働く中年女性達の話で、「姉といもうと」は幸田文の「流れる」に触発され女中に憧れを持って家政婦をしている姉と、ラブホテルで働く妹の話です。

女性作家さんらしく、女性の日常や感情の機微、そしてたくましさがうまく文章で表現されていて、読み込むほどジワーと味がしみてきます。

内容的には中高年男性にはあまり向かないかもしれませんが、のんびりと頭をリセットしたいときに読めばスッキリするように思います。

★★☆

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平凡すぎて殺される(創元推理文庫) クイーム・マクドネル

アイルランド出身の作家さんのおそらくデビュー作品で、原題は「A Man with One of Those Faces」です。元本は2016年に出版されましたが、日本語翻訳版(本著)は少し遅れて2022年に出ています。

アイルランド出身の作家さんの小説では過去にアーナルデュル・インドリダソン著の「湿地」と「緑衣の女」を読みましたがどちらも秀逸でした。また石持浅海著の「アイルランドの薔薇」は、アイルランドを舞台にした小説でした。

映画では「シング・ストリート 未来へのうた」や「デビル」などがアイルランドが舞台となったものでした。

本著はアイルランドのダブリンに住む20代の無職男性が、亡くなった叔母の遺言で遺産の一部を手に入れるためボランティアの社会貢献活動として病院の認知症患者や身寄りのない入院患者の話し相手をしています。

あるときいつもの病院で、看護師の女性に頼まれ話し相手として謎の老人の部屋へ行ったとき、突然誰かと間違われてナイフで刺されるという事件に遭います。どこにでもある平凡な顔をしていることが原因だと思われます。

そしてそれだけならともかく、老人は刺した後に心臓麻痺で亡くなり、殺人の疑いや、その謎の老人が実は過去に大きな話題となった未解決の誘拐事件に関与した疑いのある犯罪者だったことから、その誘拐事件の関係者から秘密を知ってしまったと思われて殺し屋を送られます。

先に読んだ高野和明著の「グレイヴディッガー」は東京で追いつ追われつの逃亡劇小説でしたが、こちらはダブリンやその近郊での逃亡劇小説でした。執拗に追われる秘密がクライマックスで明らかになるなど、なにか似ています。

こちらは比較的書かれた時代が新しいため、携帯電話で位置情報がバレるからと早々に破棄したり、誰も知らないボランティアで知り合ったお金持ちの老婆の家に逃げ込むなど現代的です。

そして未解決だった誘拐事件の真実が明らかになっていきますが、最後は荒唐無稽な感じで、やや興ざめしてしまいました。それでもまったく馴染みのないダブリンの街での追跡劇は楽しめました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

鬼統べる国、大和出雲 古事記異聞(講談社文庫) 高田崇史

鬼棲む国、出雲」、「オロチの郷、奥出雲」、「京の怨霊、元出雲」に次ぐ「古事記異聞シリーズ」第4弾の作品で2020年に新書が出版、2022年に文庫化されています。

出雲と奥出雲についてはすでに読んでいますが、京都はまだ読めていません。できれば順に読んだ方が良かったと後になって後悔しています。

既に2022年に次の第5作目「古事記異聞 陽昇る国、伊勢」が新書で出版されています。来年には文庫で出てくるかな。

しかし「出雲」という1つのテーマで島根県の出雲、奥出雲、京都、大和(奈良)、伊勢とよくぞ引っ張ります、お見事。

元々は、2023年に島根の松江や出雲へ旅行するため、関連する小説を探していて読んだところからスタートしましたが、その後もこのシリーズにすっかりはまってしまいました。

ほとんどの日本人は、「出雲」と言えば、山陰の島根県にある出雲大社を思い浮かべると思いますが、京都や奈良にも出雲を名乗っていた地や出雲地方で重要とされている神々を祀っている神社が多くあり、それはどうして?というのが第3弾と第4弾のテーマです。

実は京都に住んでいた頃、近所に加茂川にかかっている「出雲路橋」というのがあり、旧山陰道ではなく、どうしてこんな場所(京都市内の北部の鞍馬口近く)に出雲路?ってずっと不思議に思っていました。

その謎が明らかになるのは、まだ未読のシリーズ第3弾「京の怨霊、元出雲」ですが、今回の第4弾「大和出雲」にもその理由の一部が出てきました。

そのように、シリーズを飛ばして読んでもそれなりに物語は楽しめますが、やはり順を追って読む方が理解が進みやすそうです。

しかし、古代の神々や皇族、有力者の名前や、それが時代で変形していくなど、素人が入っていくには難解で難易度が高い内容ですが、主人公を女子大学院生として、できるだけわかりやすく解説(推理)されているところが上出来です。

ただ、このシリーズ、文庫カバーのキラキラなカワイコちゃんを描いたアニメチックな絵だけは、おそらく若い人にも気軽に手に取ってもらおうという出版社なりの理由がありそうですが、歴史ミステリーを扱うには中身が軽薄そうに見えるのと、中高年男が手に取るには敷居が高そうです。

★★☆

著者別読書感想(高田崇史)

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 11月後半の読書 こちらあみ子、戦国武将、虚像と実像、極東動乱、二人のクラウゼヴィッツ
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1758
葬式組曲(文春文庫) 天祢涼

1978年生まれの推理小説を得意とされる作家さんの作品で今回初めて読みました。この作品は2012年に単行本、2015年に文庫化されましたが廃刊後、2022年に別の出版社から再び文庫が出版されています。

内容は連作短篇小説で、「父の葬式」「祖母の葬式」「息子の葬式」「妻の葬式」「葬儀屋の葬式」の5篇からなっています。

従業員は4人だけの小さな葬儀屋が舞台で、タイトル通り様々な人の死に関わりながら、一般人にはあまり馴染みがないお葬式の実態や、そこで働くこと、そしてそれぞれの死にまつわる謎や葬儀の遺言などをドラマ化しています。

葬式というと厳かで静謐とした雰囲気がありますが、当然ながらビジネスとして成り立っていて、葬儀屋や僧侶はこのときばかりと失意に打ちひしがれている遺族に対してアレもコレもとお金を使わせることに専念していきます。

葬儀屋の仕事は如何にして他社よりも早く、死亡者とその遺族の元へ駆けつけるかというのが一般的な手法ですから、死亡者の情報が一番早い病院や警察と利権で深くつながっている葬儀屋も少なくありません。

そういうところは病院や警察への謝礼の分だけ割高になるので、できれば亡くなる前に本人があらかじめ葬儀の内容(想定参列者数や家族葬にするとか)を考慮し、ネットの評判も調べて(サクラも多いが)決めておき、もし亡くなったらここに電話をして依頼をすると決めておくのが良さそうです。

私も学生時代に、葬儀屋ではなかったものの、葬儀でよく使われる竹材を扱う店でアルバイトしていたことがあり、発注先や納品先(葬儀場)へ竹飾りをよく配達、設置していたことを思い出しました。タダみたいな汚い竹を私がもみ殻で必死に磨いたものが、葬儀場では何万円にも化けていました。

主人公はその葬儀社を父親から継いだ若い女性社長、葬儀のことに詳しい胡散臭い雰囲気の中年男性、ただひとりの身寄りの祖母を亡くしたばかりの若い男性などです。

1話完結のミステリー小説ですが、驚いたことに最後の「葬儀屋の葬式」でちゃぶ台のひっくり返しがおこなわれますので、それまでの短篇にいくつもの伏線が敷かれているのがユニークで楽しめました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ちえもん(小学館文庫) 松尾清貴

今回も初めて読む作家さんの作品で、2020年に単行本、2022年に文庫化された長編小説です。著者は1976年生まれで、2004年にデビュー、現代物もありますが、歴史物がお得意のようです。

本著は江戸時代に実際に生きた貧しい漁村に次男として生まれ、その後才能を生かして商人になっていく名もなき男をモデルにした歴史小説です。

前半から中盤は、かつて山口県の瀬戸内にあった小さな漁村櫛ケ浜(現周南市櫛浜町)で廻船問屋に生まれ、病弱で次男ゆえ本家の厄介者と言われていた少年が、仲間内では体力では負けるが知恵で勝負とばかりに頭角を現していきます。

そして商才を発揮し、生まれ故郷を離れて長崎の香焼島(こうやぎしま、現長崎市香焼町)に新たな漁場を開き、役人達の命令で本意でないものの唐や南蛮との抜け荷の脱法行為をしながらも事業を拡大していきます。

鎖国中の当時は、幕府が認めた輸出入以外、外国船との抜け荷は重罪で、見つかれば関係者全員が市中引き回しの上で斬首と厳しくなっている頃です。

そしてクライマックスは、長崎で座礁し沈没したオランダの商船引き揚げ法を考え提案します。そのオランダ商船とは抜け荷をおこなう予定になっていて、他人事ではなかったこともあります。

表向きは、余所者の身でありながら漁場を開くことを許してくれた長崎にお礼をしたいということと、なにかと因縁をつけてくる地元の有力者の排除です。

ちえもんと村人から呼ばれて信頼を集めていきながらも、子供の頃から仲が良く未来を語り合った親友を海で亡くしていて、その想いを引きずりながら、再び生まれ故郷の海へと戻ってくるラストは泣かせます。

★★☆

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夜市(角川ホラー文庫) 恒川光太郎

1973年東京生まれの作家さんで、32歳の時にこの作品でデビューされました。この作品は日本ホラー小説大賞を受賞し、さらに直木賞の候補作にも入る新人離れした作品と言われています。ジャンルとしてはホラー小説がお得意のようです。

個人的には怖がりなのでホラー作品はあまり好きではありませんが、本作品はホラーというより、ファンタジー小説または幻想小説と言えるもので、特に背筋が凍るような思いはしません。

本作品は2005年に単行本、2008年に文庫化されていて、表題の「夜市」と「風の古道」の中篇2篇が収録されています。

この2作品はまったく別物ですが、内容的には非常に近く、人間がすぐ近くにある異世界へ入り込むことによって様々なことが起きていくという話です。欧米風のファンタジーというよりは、水木しげるの妖怪の世界に近いかも知れません。

「夜市」では昔、弟と一緒に入り込んだ異世界で、何かを買わないと元の世界に戻れないことから、人さらいに弟を売って戻ってきた青年の苦悩と贖罪、「風の古道」では、友人とともに冒険のつもりで入り込んだ異世界の古道で、その古道で産まれたために戻れず放浪を続ける青年と一緒に旅をする話しです。

どちらもハッピーエンドとは言えませんが、それでも嫌な感情が湧いてくるものではなく、やっぱりホラーとは思えない異世界幻想小説というものでしょう。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

歴史探偵 忘れ残りの記(文春新書) 半藤一利

著者は一昨年2021年に90歳で亡くなっていますが、ジャーナリストとして、また作家として少年時代に自身戦争を体験したことや、戦争に関わった人を仕事で取材した経験などを生かした作品を多く残しています。

本著も、様々な雑誌や広報誌などに書いたエッセイをまとめたもので、かなり繰り返しで重なっている部分がありますが、戦争中の貴重な話がいろいろと参考になります。

過去に読んだ「日本のいちばん長い日」と「ノモンハンの夏」の感想は、著者別読書感想(半藤一利)にまとめてあります。

また著者の配偶者が夏目漱石の孫ということもあり、夏目漱石に関連した作品も数多くあります。

この2021年に出版されたエッセイ集では、著者が戦前の下町の向島生まれで、戦争中の浅草や銀座、そして東京大空襲で逃げ惑った話など、貴重な体験談が読めます。

またこのエッセイ集シリーズには「歴史探偵 昭和の教え」と「歴史探偵 開戦から終戦まで」(いずれも2021年刊)の続編があります。機会があればまた読んでみたいです。

★★☆

著者別読書感想(半藤一利)

【関連リンク】
 11月後半の読書 こちらあみ子、戦国武将、虚像と実像、極東動乱、二人のクラウゼヴィッツ
 11月前半の読書 忍ぶ川、定年バカ、二千七百夏と冬(上)(下)、長く高い壁 The Great Wall
 10月後半の読書 にぎやかな未来、凪の光景、コブラ(上)(下)、百万のマルコ

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こちらあみ子(ちくま文庫) 今村夏子

2010年に発表したデビュー作「あたらしい娘」がいきなり太宰治賞を受賞し、タイトルを「こちらあみ子」に改題し、別の短篇を追加した単行本を出版した2011年には三島由紀夫賞を受賞しています。

2014年に文庫版が出版され2022年に大沢一菜、井浦新などの出演で映画化されています。

この2014年に文庫が出てからはしばらく休筆状態でしたが、2016年以降、主として短篇集がポツリポツリと発表されています。

そして2019年に出版した「むらさきのスカートの女」で芥川賞を受賞しています。

広島出身の著者で、その子供の頃の思い出やエピソードがうまく使われている小説です。したがって登場人物の口調は広島弁です。

女性の子供の頃のイメージは、妹や姪など近しい女の子が周囲にいなかったこともあり、私にはイマイチ実感がありませんが、小中学生の頃の主人公あみ子の自由奔放な行動やぶっ飛んだ思考パターンはアルアルなのでしょう。変わり者には違いないでしょう。

タイトルは、まだ小学生の頃にトランシーバーを買ってもらい、「こちらああみ子、応答せよ!」と語るところからつけられています。

実は自分も小学生の頃にオモチャのトランシーバーをクリスマスだったか忘れましたが親にリクエストをして買ってもらったことがあり、小説と同じく、最初は兄とやりとりし、次第に誰も相手をしてくれなくなり、ザーザーと音を立てるトランシーバーに向かってひとりで喋っていた記憶がよみがえってきました。まるで、そのシーンは自分の子供の頃を見ているようで驚きました。

子供とは言え、人の感情や思考に深く入り込んだ内容の小説は、純文学的でもあり、自叙伝的でもあり、読書でしか拡げることができない(と思っている)、他人の感情の流れや生き方をまざまざと見せつけられ、様々な考えが頭の中をよぎっていきます。

著者の狙いではないかも知れませんが、そうした読者に考えさせることができる文学というのは読むとなにかお得感がいっぱいな気がします。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

戦国武将、虚像と実像(角川新書) 呉座勇一

著者は1980年生まれとまだ若い歴史学者さんですが、すでに多くの書籍を書いておられ、テレビでもNHK BSの「英雄たちの選択」などにもゲスト出演し、学者にしては野心を強く感じる方です。

ちょうど10年先輩の歴史学者磯田道史氏(慶応大出身)の後釜を狙っているような気がします。

東大卒の著者としては学者として負けたくはないでしょう。

タイトル通り、巷で知られている戦国武将の真の姿とは?というテーマで、様々な古い文献や資料から読み解いています。

ただその記述が正しいのか間違っているのかはあくまで著者の想像でしかありません。

本著で取り上げられている戦国武将は、お馴染みの
1.明智光秀
2.斎藤道三
3.織田信長
4.豊臣秀吉
5.石田三成
6.真田信繁(真田幸村)
7.徳川家康
の7人です。

歴史小説やドラマ・映画では、作家や脚本家が作り上げた想像上の戦国武将が登場しますが、時代によってその姿は大きく変わってきます。

特に戦国時代の後の江戸時代では、神君・徳川家康を英雄視し、徳川家を持ち上げ忖度した内容の記述が多くなり、江戸時代が終わったあとの明治時代は一転して尊皇派や主君への忠義者が名誉挽回を果たし、大戦前には尊皇はもとより、国家のためなら命を投げ出し、朝鮮や中国への侵攻した武将が高く評価されます。

そして戦後にはまたガラリと変わり、革新や進取、合理主義、部下思いなどが優れた武将とされていきます。

我々、平成や令和に生きる人達は、多くは昭和時代以降に書かれた小説を読み、それを元にしたドラマや映画を見ることになりますので、本著で触れられている戦国時代や江戸時代、明治時代に書かれた書籍や資料で現される戦国武将の姿は違ったイメージとなります。

そうした時代ごとに、評価がどう変わっていったのかという話しがメインで、本当はどうなの?というのは結局よくわかりません。

そりゃそうです。その時代に生きたら現在とは価値観も社会情勢も物事の善悪すらも違っていて、さらに小説や記録を書いて残した人の立場や思想によっても変わりますから、それで400年以上前の武将達の性格を知り、評価をするのは難しいものです。

★★☆

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極東動乱(ハヤカワ文庫) デイヴィッド・ブランズ&J・R・オルソン

2019年に米国で出版された本作の原題は「Rules of Engagement」で、直訳すると「交戦規定」となります。著者は二人で、ふたりとも海軍兵学校出身の元海軍士官という変わり種の作家さん達です。日本語版は2022年に発刊されています。

そういう職業軍人だったことから、本著で重要なポイントとなる軍事シミレーション、特に軍隊用の最新ネットワークシステムや世界中の軍隊が躍起になっているハッキング合戦など、リアリティのある内容となっています。

内容はタイトルで表現されている通り、北朝鮮に亡命している天才的テロリストが、ロシアの軍需産業マフィアから極東に軍事的な緊張をもたらして欲しいという依頼があり、中国人民軍、日本の自衛隊、そしてアメリカ海軍のネットワークに自立型のウイルスを仕込むことに成功します。

そして公海上を飛ぶ米国海軍の哨戒機や、自衛隊の護衛艦などに対し、ニセの指令で中国空軍が突然ミサイルを撃ってくるという事態が発生し、全面戦争に陥る前に天才テロリスト対アメリカの若き士官候補生チームとの電子戦が始まります。

もちろんアメリカ人が書く大衆受けを狙った戦争小説ですから、最後はどうなるかは言うまでもないことです。

現代の戦争は、ウクライナやガザで起きている従来型の大砲やミサイル、戦車、歩兵などを使ったものが現実としてありますが、この小説では、あくまでもスマート?に、電子戦で優位に立てば戦争に勝てるという綺麗事のような内容にちょっと現実離れした話しで気持ちが乗っていきません。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

二人のクラウゼヴィッツ(新潮文庫) 霧島兵庫

1975年生まれの著者の小説は今回初めて読みますが、過去にはいくつか時代物の作品を書いておられます。そしてなぜかは不明ですが、今年2023年から名前を野上大樹に変えると発表されています。

文庫の解説に書いてありましたが、著者の前職は自衛官で、陸上自衛隊で攻撃ヘリAH-1S(通称コブラ)に乗っていたというから、著者の描く戦記物には独自の視点や発想があるのだろうと思います。

本著は、タイトルでもわかるとおり、「戦争論」で有名な19世紀前半に活躍したプロイセン王国の陸軍軍人カール・フォン・クラウゼヴィッツを描いています。

2020年に「フラウの戦争論」として単行本が出版された後、2022年にタイトル名を変更して文庫化されました。「フラウ」とはクラウゼヴィッツの妻の名前(愛称?)です。

小説では、フランスの皇帝ナポレオンから侵略され、何度も激突するプロイセン王国の軍人として活躍している時代と、もうひとつは、ナポレオンが失脚し流刑されてフランスとの戦争が終わり、左遷に近い兵学校の校長として余生をおくりつつ、ナポレオンとの数々の戦争を元にした「戦争論」の論文を書いている時代との2つが交互に出てきます。

その兵学校の校長として勤務中は、その仕事に鬱々としながらも妻と一緒に平和に暮らしながら論文をまとめていますが、隣国のポーランドで暴動が起き、再び戦争の危機が訪れて参謀として出征することになります。

しかしその戦争中にコレラが流行り、1831年にあっけなく戦地で病死してしまいます。

そして時代が過ぎて、妻のクラウゼヴィッツが夫の残した「戦争論」を出版するために駆けずり回ることになるという物語でした。

小説の中では、日本人にはほとんど馴染みがない18世紀初頭に起きたナポレオンと欧州諸国との戦争、イエナ・アウエルシュタットの戦い、アイラウの戦い、ボロジノの戦い、グロースゲルシェンの戦い、ライプツィヒの戦い、リニー、カトル・ブラの戦い、ラ・ベル=アリアンスの戦い(通称ワーテルローの戦い)が詳細に地図入りで説明されています。

ちょうど今、リドリー・スコット監督の大作映画「ナポレオン」が公開されていて話題になっていますので、先にこの本を読んでから映画を見ると双方からの視点で見ることができてよくわかるかも知れません。

聞き慣れない地名や名前が多くて読むのはたいへんですが、1820~1830年頃というと日本では江戸時代で天保の大飢饉(1832年)などが起きた鎖国時代の真っ只中で、そのような中で欧州ではこのような激動が起きていたということを知れて歴史ファンは大いに楽しめると思います。

★★★

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