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帰郷 三世代警察医物語(光文社文庫) 新津きよみ

帰郷ホラーやサスペンス小説が有名な著者ですが、過去読んだ2作ではその要素はあまり感じられませんでした。今回はどうかな?と思って読み始めましたが、やはりそうした要素はなく、医者を主人公としたミステリー小説といったジャンルになるでしょう。

発刊は2014年でいきなり文庫です。著者あとがきで初めて知りましたが、著者の父親は医者で、地方の警察署の嘱託医を長く務めていて、それがこの小説のモチーフとなっています。

ただサブタイトルの「三世代警察医」は正しくなく、小説では祖父と孫(主人公)の二人が医者で、警察の嘱託医ということで、間の父親は画家という設定です。

また小説に登場する長野県大町市は、あとがきを読むまで架空の都市だとばかり思っていたら、実際に著者の出身地で実家のある場所だということを後になって知りました。

長野と言えば、松本市や長野市、あとは観光で行く安曇野や美しが丘、諏訪湖ぐらいしか馴染みがなく、安曇野のまだ先の北アルプスの麓にある大町市というのは盲点でした。本格的な山登りの好きな人には馴染みがありそうです。

その大町市で開業しながら警察の嘱託医をしている医者の祖父の代わりに空き家で発見された他殺死体の検死をすることになった東京の大学病院で研修医をしている主人公が、どうしてなんの縁もない大町市の空き家に放置されたのか、その謎を追いかけます。

こうした医者を主人公とした小説は、同じ長野県が舞台の「神様のカルテ」など、現役の医者が書くケースが多いのですが、著者の場合は、父親が医者と言うことで、その知識が豊富なのでしょう。

事件としてはそれほど複雑なものではなく、何度も繰り返される「空き家」がキーワードとなっています。日本で一番空き家率が高いのは確か山梨県でしたが、おそらく隣の長野県でも空き家の問題が日常化しているのだろうと思います。それがこの作品のヒントになっていそうです。

またこの小説は既に「父娘の絆 三世代警察医物語」という続編が2015年に出版されています。

★★☆

著者別読書感想(新津きよみ)

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人はどう死ぬのか(講談社現代新書) 久坂部羊

人はどう死ぬのか2022年に発刊された新書で、様々な医療現場に携わったあと、現在は在宅医療を中心にされている著者が本音で語る終末医療、つまり人の死に方についての指南書と言えるものです。

繰り返し書かれているのは、終末医療には限界があり、患者本人のためではなく、その周囲(家族や遠い親戚など)のために、「ベストを尽くしている」という態度や医療を提供することだけという空しい話です。

つまり患者の意思とは関係なく、高齢者や末期癌を患っている人の具合が悪くなると、家族などが慌てて救急車を呼んで病院へ移送されると、そこで待っているのは、ほとんど意味のない検査と治療でそれことスパゲッティ状態にされてしまうという現在の終末医療を非難しています。

現在は約7割の人が病院で亡くなるということですが、「死にたくなければ病院へ行くな。病院へ行くから死ぬんだ」と誰かがテレビの番組で話をしていましたが、7割の人が病院で亡くなっているならそれも正しいかも知れません。

著者も繰り返し、穏やかに最期を全うしたいなら「高齢者や末期癌の人はむやみに病院へ行くべきでない」と書いています。

著者の小説や他の新書でも同様のことがよく書かれていますが、そうした無用な終末医療を避けようとする思想や行動はマスコミや医療従事者含む一部の人には不評で、「人命は地球よりも重い」という迷言でなかなか普及していかないことが著者のジレンマとなっているようです。

私自身、もう高齢者になって、終末を迎える時期も近くなってきましたが、自分の死に方というのはなかなか思い描けず、たとえ考えたとしてもそう思い通りにいくわけもなく、難しい問題です。

本著にも出てきますが、医者に対して「自分ならどういう死に方が一番良いか」という質問では「癌」という答えが一番多いそうで、それはある日突発的に死に至るのではなく、ある程度は計画的に死に近づけるため、その準備をすることができるということでしょう。

この本の中でちょっとわかりづらいなと思ったのは、書かれている理想の終末医療の前提は寿命が近い高齢者向けの話のはずで、これが癌など他の重篤な病気でも体力もある若い人の場合はまたちょっと違うように思います。

そのあたりの区別が書かれていないので、「若い人の終末医療を懸命におこなわないとはけしからん!」という誤解を生じる人がいるように思います。

私もそう遠くない時期にこうした終末医療を選択する時がやってきます。その時には、本書を参考にして
・口から栄養を摂れなくなっても胃ろうは断る
・痛み止め以外の栄養補給などの点滴も断る
・呼吸が苦しくても人工呼吸器は断る
・自宅で倒れてもむやみに救急車を呼ばない
を大きく紙に書いて貼っておき、家族にも重々申し渡しておこうと思います。

★★☆

著者別読書感想(久坂部羊)

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総員起シ(文春文庫) 吉村昭

総員起シ戦史短編小説集で、当初1971年に単行本が出版された後、2篇が追加され1981年に文庫化されたノンフィクションに極めて近いと思われる作品集です。

収録されているのは、「海の棺」「手首の記憶」「烏の浜」「剃刀」「総員起シ」の5篇です。この5篇はそれぞれ太平洋戦争中か、終戦直後に実際に起きた事件や事故を、関係者などから聞き取り、調べて書かれたもので、極力著者の推理や想像を排して書かれているようです。

「海の棺」は、太平洋戦争中に北海道の襟裳岬近くの日高沖で輸送船大誠丸が米潜水艦に撃沈され、乗員約1400名のうち、死者・行方不明者が651名をで大量の兵士の遺体が日高町の海岸へ流れ着いた話ですが、なぜかその遺体の多くに手首が切り落とされていた謎とは?

「手首の記憶」は、太平洋戦争当時日本の領土だったサハリンにある太平炭鉱病院に勤務していた看護師達が終戦後にソ連の侵攻で追い詰められ集団自決をしますが、そこで死ぬことができず生き残った女性達のその後。

「烏の浜」は終戦直後の8月22日、樺太から避難してきた疎開者を乗せた小笠原丸が北海道の増毛町沖で、米軍の指示で無線信号を出しマストに航海灯を点灯して航海中、国籍不明(その後ソ連と判明)の潜水艦から攻撃を受けて乗員乗客638名が死亡した事件。

「剃刀」は、那覇の民間人の理容師が軍属として、司令部とともに米軍に南へ南へと追い詰められていく切ない話。

「総員起シ」は、愛媛県松山沖で、試験航海中に沈没してしまった伊号第三十三潜水艦の戦後9年が経ってから引き上げることになった話です。沈没しながらも二名が決死の脱出を成功させたことで、その状況が明らかになっていきます。

その沈没した潜水艦の中で、9年間、酸素が尽きた艦内の閉鎖区域では遺体は腐敗せず「総員起シが発令されたらみな飛び起きそうな状態」だったという話には泣かされます。

いずれの作品も、暗く、不条理な悲劇ばかりで、読んでいて息が詰まるほど重苦しいですが、こうしたリアルな歴史をわずか80年前に日本人が経験していたということは知っておくべきことかなと思いました。

★★★

著者別読書感想(吉村昭)

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傷だらけのカミーユ(文春文庫) ピエール・ルメートル

傷だらけのカミーユ「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作」の第3弾にあたり、2012年にフランスで発刊され、翻訳版は2016年に文庫で発刊されています。原題は「Sacrifices」(犠牲)です。

毎度壮絶な残虐なシーンが出てきて、読み終えてからもしばらく嫌な思いが残ってしまうので、もういいかなと思っていましたが、忘れた頃にまた読みたくなる一種の中毒に罹ってしまったかのようです。と言ってもまだ今回が3作品目です。

今回もいきなり主人公カミーユ警部の恋人が宝石店に入ったギャングと鉢合わせして散々な目に遭わされます。世界一ついてない男と称されるジョン・マクレーン(映画ダイ・ハードの主人公)ばりにこのフランス警察のカミーユ警部もとことんついていません。

上司をだまし、同僚をだまして、恋人に重傷を負わせた強盗犯をひとりで追い詰めようとします。まったく後先のことを考えない直情的な性格で、それゆえ一歩離れた場所から眺めている読者は一緒に感情を高めていくことになるか、あるいはしらけていくかのどちらかでしょう。

私は仕事に感情を持ち込まないのを常としていたので、その後者の方です。したがって、どうも主人公には感情移入ができず、気持ちもわからず、逆に冷静な犯人を応援したくなってしまいます。

このシリーズは、この3部で終わりらしいので、どうでも良いですが、もし続編が出てももうさすがに良いかなと思っています。

★☆☆

著者別読書感想(ピエール・ルメートル)


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