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にぎやかな未来(角川文庫) 筒井康隆

1960年代に雑誌等で掲載されたショートショートを1冊にまとめたもので、最初は1968年に出版され、その後、文庫などが何度か再版された今や大御所となった著者のデビューまもない時期の作品集です。

基本はSFやファンタジーもので、ブラックユーモアの効いたものあり、刹那的な話あり、ディフォルメした未来をよく表しているものもあり、また意味不明なものもあったりと結構楽しめます。

各作品の感想はとにかく数が多くて(41篇収録)いちいち書けませんが、書籍のタイトルにもなっている「にぎやかな未来」の内容だけ少し触れておくと、マスメディアが力を持った未来の話しで、テレビやラジオの放送中にはCMばかりが流れ、買ったレコード(当時はまだCDなんかなかった)にも曲の途中にCMが挟まれようになり、さらに聞きたくないと思っても、法律で常時ラジオをつけておかなければならないと決められ、世の中、どこへ行っても広告の嵐の中におかれます。

これを読んだとき、今テレビをつける度にいつも思うのが「いつもどのチャンネルもCMばかり」で、測ったわけではありませんが、番組のおよそ半分はCMではないかなと思います。公共放送で受信料も払っているNHKですら、自局の放送予定の番組案内や、局の取り組み活動などのCMを流し続けています。

高い料金を支払う有料ネット放送でもCMが入ると嘆いている人がいましたし(私は有料がバカらしいので加入してないから知らない)、とにかくテレビでもラジオでもネットでもつなぐと視聴者は広告の大波にのまれてしまいます。

60年以上前に書かれた近未来のブラックコメディSF小説が、いよいよ現実化しつつあるのだなぁとこの小説を読んで感心しきりです。

★★☆

著者別読書感想(筒井康隆)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

凪の光景(文春文庫) 佐藤愛子

著者は大正生まれ、今年99歳の大御所で、1969年に「戦いすんで日が暮れて」で直木賞を受賞されています。戦前生まれの方にしてはかなり奔放でユニークな方のようで、ご自身の人生も波瀾万丈の中で生きてこられたという感じです。

今回の作品は、1987年から1988年まで朝日新聞に連載された長編小説で、2022年に文庫が発刊されています。1990年と1992年にはテレビドラマが作られています。

小説の中では作者と同じ、戦前生まれの老夫婦と、同じ敷地に住む息子夫婦の二組の夫婦がそれぞれ語り部となり、日々の生活や仕事などが描かれています。

教師生活を定年で辞め隠居生活をしている夫は、碁会所の友人へ後妻の世話をしようと奮闘したり、その妻でわがままし放題で横暴な夫と距離を置いて自由を手にしたいと考え、息子は自動車販売会社で売上ノルマと部下の管理に悩み、その妻はキャリアウーマンとしてバリバリ働く一方、子育てにはあまり関心がないという状態です。

老夫婦の妻は、隣に住むハンサムな浪人生にほのかな恋心をいだき、また長く横暴な夫に仕えてきたことに疑問を感じて離婚や別居を考えるようになり、息子は職場で受付の若い女性の悩みの相談を聞いていたことからやがて深い関係に陥ったりと、著者のリアルと同様に波瀾万丈な展開となっていきます。

それにしても内容はタイトルの「凪」とはまったく逆で、二つの夫婦関係にヒビが入り、それぞれの人生を考え直すことになっていきます。

朝日新聞を購読している読者の多くは、私を含めて中高年夫婦というパターンが多そうですから、身につまされるような内容で、心穏やかに読めない人も少なくなかったでしょう。

ただ一箇所、え!?と思ったのは、40年間教師や校長として奉職してきた男性が受け取っている年金が月30万円というのにはビックリ。

教師だと平均年収もそれほど高くはなかったと思いますが、1980年代にはそんなにもらえたのでしょうか?今だと40年間勤め上げてもその半分ぐらいでしょう。

いずれにしても広い敷地に自宅がある恵まれた環境で、有り余る年金をもらって息子夫婦や孫に囲まれ悠々自適の老後生活をおくる主人公達で、今の若い世代からすると、どこかよその国の話?と思ってしまいそうです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

コブラ(上)(下)(角川文庫) フレデリック・フォーサイス

2011年に前作の「アフガンの男」を読んで以来、12年ぶりのフォーサイスです。本作「The Cobra」は2010年に出版され、日本語版は2012年に単行本、2014年に文庫版が出版されています。

アベンジャー」(2003年、日本語版2004年)で主役だったベトナム帰りの弁護士デクスターと因縁深かったCIA捜査官(通称コブラ)がタッグを組んで、コロンビアのマフィアが支配するコカインの欧米への密輸ルートをアメリカ大統領命令でおこなうという痛快ドラマです。

米国と英国がタッグを組み、無人機を使ってコカインの密貿易の海路や空路を見つけ出して断ち、不正を働く税関官吏を罠にはめ、さらにコロンビアのマフィア幹部同士が誰かが情報を漏らしていると疑心暗鬼に陥るよう仕組んでいきます。

こうしたコロンビアマフィアを悪者にしてアメリカが叩く作品はいくつかありますが、ずっと以前に読んだトム・クランシー著「いま、そこにある危機」(1989年)にも詳しく書かれています。それらを最新の戦術でアップデートさせた内容でした。

しかしすべてが予定通りにうまくいきすぎて、そんなに簡単じゃないだろ?と思わなくもありませんが、そこは単なるエンタメフィクションということで納得しておくしかありません。

ヒヤヒヤ、ドキドキすることもなく、あっさりと麻薬戦争は勝利に終わりますが、最後にちょっとだけ意外な展開が待ち受けているのは読んだ人だけのお楽しみと言うことで。

★★☆

著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

百万のマルコ(集英社文庫) 柳広司

1篇を除いて2002年から2005年に小説すばるに掲載され、1篇だけ割と最近の2022年にweb集英社文庫に掲載された歴史物連作短編小説集です。

基本構成は、「東方見聞録」のマルコ・ポーロ(1254年頃~1324年)が、アジアへの旅の後にベネチアに戻ってからの話しが中心(1篇だけ東方への旅に出る前の話しが出てきます)で、ジェノバとの戦争で捕虜となり、ジェノバの収容所に閉じ込められている時(実話)の話しです。

実際にマルコ・ポーロには、イル・ミリオーネ(百万男)というあだ名がつけられていましたが、その理由は様々で定かではない(Wikipedia)ものの、本著では「ほら吹き男」という意味で使われています。

1話1話が、マルコが東方の地、大都(現在の北京)で権勢を振るう大ハーン(クビライ)に謁見後、相談役として仕えていた頃の驚くべき話し、言い方を考えるとホラ話のような話しを、戦争捕虜としてなにも楽しみがない娯楽の一つとして、同じく捕虜になっている僧侶や貴族、労働者などに話しをしていくという流れです。

現実にも、商人の息子マルコ・ポーロは、父親と叔父とともに東方へ商売のために訪問し、謁見したクビライに気に入られしばらくそこで過ごし、またクビライの依頼で近辺の国へ使節として訪問しています。そして故郷ベネチアへ帰ってきたら、敵のジェノバ軍に捕まり戦争捕虜として収容所に収監されています。

東方見聞録は、その捕虜収容所でマルコが語った小話を、同じく収監中の作家ルスティケロ・ダ・ピサが話しをまとめて出版したものが大ヒットしました。

したがって、小説とは言え、ある程度は歴史上の人物や出来事をうまくフィクション化していて、面白い内容です。

こうした歴史上起きた様々な事実や実在した人物を主人公としたり題材に使った作品は結構好きで、著者の作品「新世界」(2003年)では原爆の開発者オッペンハイマーが登場します。

今回の本著はややコミカルな要素があって少し違っていますが、著名人を用いた作品として浅田次郎氏の「終わらざる夏」(占守島守備隊)、「一刀斎夢録」(新選組の隊員だった斎藤一)、松岡圭祐氏の「黄砂の籠城」(北京駐在武官・柴五郎)、「ヒトラーの試写室」(特殊撮影・円谷英二)、服部まゆみ氏の「一八八八切り裂きジャック」(エレファントマン、森鴎外など)、原田マハ氏の「暗幕のゲルニカ」(ピカソ、ドラ・マール)などの小説が面白かったです。

ただ、短篇の頭に繰り返して出てくる前置きは、雑誌に掲載されるときは仕方がないでしょうけど、あらためて文庫化するときには、端折ってくれると(実際は読み飛ばしましたが)読者に優しいなと思いました。

★★☆

著者別読書感想(柳広司)

【関連リンク】
 10月前半の読書 太陽は気を失う、ジャイロスコープ、一億円のさようなら、七人の暗殺者
 9月後半の読書 見捨てられた者たち、日傘を差す女、信長の血脈、「脱・自前」の日本成長戦略
 9月前半の読書 オロチの郷、奥出雲 古事記異聞、素晴らしき世界、浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話、飛族


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1749
太陽は気を失う(文春文庫) 乙川優三郞

2013年から2015年にかけてオール讀物に掲載された短編小説をまとめて2015年に単行本、2018年に文庫として出版されました。

短篇のそれぞれのタイトルは、「太陽は気を失う」「海にたどりつけない川」「がらくたを整理して」「坂道はおしまい」「考えるのもつらいことだけど」「日曜に戻るから」「悲しみがたくさん」「髪の中の宝石」「誰にも分からない理由で」「まだ夜は長い」「ろくに味わいもしないで」「さいげつ」「単なる人生の素人」「夕暮れから」の14篇です。

さすがに14篇も収録されていると、1篇あたりおよそ20ページ(文庫版)という短さで、深く印象に残らないままサクッと終わってしまう感じです。

そう言えば以前読んだ著者の短篇小説集「トワイライト・シャッフル」も13篇あり、短かった印象ですが、共通するテーマが千葉県の房総半島を舞台にしているという共通点があり、まだしっくりきましたが、今回は熟年者の愛と生という抽象的な共通点と言うことが少しわかりづらいかなと思いました。

ただこの時期の小説らしく、2011年に起きた東日本大震災とその後帰宅難民化する「太陽は気を失う」などはタイムリーな素材がうまく使われています。

掲載誌のオール讀物の読者層が概ね中高年者になっていることもあり、主人公をリアルな熟年男女にするというのは成功していると思います。

★★☆

著者別読書感想(乙川優三郎)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ジャイロスコープ(新潮文庫) 伊坂幸太郎

いろいろと実験的な小説が好きな著者のちょっと変わった短篇集で、それぞれ独立した体裁ですが、通して読むとつながっている?と思わせる内容となっています。それが不思議な動きをするシャイロスコープというタイトルになっているものと思われます。

その短篇のそれおれタイトルは、「浜田青年ホントスカ」「ギア」「二月下旬から三月下旬」「if」「一人では無理がある」「彗星さんたち」「後ろの声がうるさい」の7篇です。

前の6篇は雑誌などに掲載された底本があり、最後の「後ろの声がうるさい」だけが書き下ろし作品で、2015年に文庫として出版されています。

主人公はそれぞれまちまちで、中には不思議なサンタクロースの話だったり、謎の生物によって人類壊滅危機の話しだったりと、時々意味がわからなくなりますが、それらも含めてジッと読み進めていくと、別の話で「そういうことなのね」ということにつながっていきます。

面白いか?と言えば、様々な著者の小説を読んでいて、「きっとこうくるかな?」と想像して読めるようならば面白いし、初めてこの著者の小説を読むというのなら、う~んん、、と思ってしまうかも知れません。

私は嫌いではありませんが、細切れの短篇よりは、質の良い長編か連作短篇が読みたいな~と思いました。

★★☆

著者別読書感想(伊坂幸太郎)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

一億円のさようなら(徳間文庫) 白石一文

久々に面白い長編小説に出会うことができました。著者の作品は過去に20作品読んでいますが、その中のベスト3に確実に入る面白さでした。

この原作を元にして、NHK BSプレミアムで上川隆也、松村北斗などの出演のドラマが製作されています。

2018年に単行本、2020年に文庫化された通常の文庫本2冊分ほどある665ページの長編ですが、テンポ良くすらっと読めてしまいます。

ただ、家庭や仕事でいままさに悩んでいる人がこれを読むと、リストラや子どもの勝手な振る舞い、妻への不信など、重苦しい場面が次々と発生しますので、ストレスが加わって精神的にはあまりよろしくないかもしれません。

主人公は、東京の大手医療機器会社で理不尽なリストラに遭い、親戚の叔父が経営する福岡の化学メーカーに誘われ順調に出世していたものの、叔父が引退してからは閑職へ追いやられている中年サラリーマンです。

主人公には学生の娘と息子がいますが、それぞれ若い身で結婚を前提とした恋人がいて、娘は妊娠、息子の彼女は息子の従姉妹にあたり、主人公を閑職に追いやった会社の社長の娘という複雑さです。

そしてタイトルにあるように、妻には亡くなった叔母の遺産を相続した数億円の遺産があり、それをずっと隠していることがあるとき発覚します。

主人公は、そうした子供達の問題や、妻の隠し財産、仕事の問題などにより人間不信に陥り、妻に黙って福岡の家を出て金沢で新たに人生をやり直すことにします。

タイトルの「一億円」とは、妻が隠していた財産があることがバレた後に、主人公の夫に好きに使って良いと渡したお金です。その一億円を持って仕事を辞めて家を出て、金沢で再起するという流れです。

小説の中には、悪意に満ちた邪悪な人が何人も出てきます。誰でもそういう人を何人も見てきているでしょう。私もそうした邪悪な人が出てくると、今までせっかく忘れようと努力してきましたが、ある人物のことが思い浮かび、凄く嫌な気持ちになりました。

私の昔話でもそれほど強烈に思い浮かべてしまいますので、いま現在そうした邪悪な人と関わり合いを持っている人は思わず投げ捨ててしまいたくなるかも知れません。

例えば、いまイジメで苦悩している人が、イジメを喜々として仲間と共におこなっているシーンが何度も出てくる小説を読めるか?ということです。

小説の主人公は、そうした邪悪な人を見て、自分の中にもそうした同じ邪悪な感性があるのかもと悩む場面もありますが、それらに打ち勝てる強さがあり、また慕ってくれる社員や家族がいて救われます。

まるで上がったり下がったりのジェットコースターのように浮き沈みを経験する人生を生きていく主人公ですが、果たしてここまで一人で決めて強くなれるか?と言うと、自分は自信はないです。

★★★

著者別読書感想(白石一文)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

七人の暗殺者(ハヤカワ文庫) エイダン・トルーヘン

原題は「The Price You Pay」で直訳すれば「あなたが支払う代償」となりますが、小説の主人公「Jack Price」(ジャック・プライス)の名前をもじっています。

著者は覆面作家で、この小説がデビュー作なのか、別の小説等ですでに名をなしている人かは不明ですが、英国人だそうです。

日本語版は2019年に発売されていますが、読んでいる限り時代背景はまだスマホの登場前で携帯電話は通話とメッセージがメインの頃かなと思います。

麻薬のディーラーだった主人公が住んでいるアパートで、真下の部屋に住む老婆が見せしめのように惨殺され、これは自分を狙ったものか?あるいは脅しのためか?と思って犯罪者に詳しい知人に様子を聞きに行きますが、そのすぐ後に何者かが部屋に侵入し「事件に首を突っ込むな」とボコられ重傷を負い警告されます。

めげずにさらに調べていくと、誰かに雇われた国際犯罪組織で暗殺を請け負うグループ(セブン・デーモンズ)から狙われていることがわかり、なぜ身寄りのなく財産もない老婆が殺され、それを調べると困る人がいるのか?そして攻撃されるなら逆にしてやるとばかりに、あれやこれやと凶悪な暗殺者と対決していくというクライムノベルです。

とにかく原書自体がクセが強く(訳者あとがき)、とにかく慣れるまでは非常に読みにくい文章です。

基本的には主人公の一人称で語られていますが、主人公が語った言葉か、誰か別人の発言かの区別がついてなく、最初のうちはわからなくて何度も立ち止まって読み返す羽目になり、この調子だと、途中で読むのを断念しそうだと思いました。

また翻訳者は女性ですが、主人公の口調が汚いスラングとエロだらけで、翻訳が大変だったろうと思われ、読んでいても下ネタの罵声や、ぶっ飛んだ野郎独特の下品さなどが長々と続き、女性の翻訳家がよく書けたなと思います。

しかし慣れてくると、そうした誰が誰と話ししているというパターンはわかってきて、中盤以降は逆にまどろっこしさがなくなり素早く読めるようになります。

ストーリーもぶっ飛んだあり得ないことばかり(英国の小説と言えば007シリーズだってそうですけど)で、よほど暇人以外には勧めはしない小説です。

★☆☆

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1746
見捨てられた者たち(ハヤカワ文庫) マッシミリアーノ・ヴィルジーリオ

著者は1979年ナポリ生まれの44歳で、作品を読むのは今回が初めてです。

原題は「L'AMERICANO」で、主人公の親友の母親がアメリカ人で、夏休みなどはその母親の実家があるアメリカへよく行っていることから、周囲から「アメリカ人」とニックネームがつけられていました。それが原題のタイトルとなっています。

時代や国は違いますがギリシア人作家エリア・カザンが自らの経験を元に小説を書き、さらに映画まで製作した「America,America」(1963年)と、なんとなく先進国アメリカにあこがれる、まだ貧しかった国の人々の印象が似ていて思い出しました。

イタリアナポリ生まれの主人公は父親が銀行員、母親は専業主婦という中流家庭の子どもで、同じアパートに住み遊び仲間の年上の子どもの父親はマフィア組織の下っ端で、アメリカ人の母親は教会でホームレスへの食事の提供などの活動をしています。

その子供時代の二人の関係が話の中心ですが、やがて成年しそれぞれの道を歩むことになりますが親友の父親はなにかの事件に巻き込まれて殺されてしまいます。

そしてアメリカへ渡ろうとしていた直前に、父親のかたきを討とうとナポリに巣食うマフィアのボスの命を狙いますが、その企ては失敗し、殺される代わりにマフィアが殺した数多くの遺体を広大な田舎の農園の中に埋めて処分する仕事を負わされます。

大人になってからは二人の関係や接点はまったくなくなりますが、親友の妹の結婚式で二人は再会することになりますが、、、

やや冗長な感じもしましたが、子どもの頃の甘美な思い出と、大人になってからの厳しい現実としがらみなど、味のある作品となっています。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

日傘を差す女(文春文庫) 伊集院静

2018年に単行本、2021に文庫化された、著者には珍しい長編警察ミステリー小説です。

2011年の作品「星月夜」の続編というか、同じ警視庁捜査1課が関わる事件で、「星月夜」の主人公が今回は若い刑事の主人公の上司として出てきます。

ビルの建設工事をしていた作業員が、隣のビルの屋上に遺体があることを発見し、状況から自殺のように思われましたが、主人公の捜査や、同じ凶器を使った殺人事件が2件続いて起きたことで、連続殺人事件となりほとんどない目撃情報や、口の堅い花柳界などに捜査は苦しめられます。

物語の舞台は東京だけでなく、殺された元捕鯨船船員の地元和歌山の太地町や、同じく厳しい環境の青森の最北端三厩なども出てきて旅情豊かで楽しめます。

以前読んだ「志賀越みち」(2010年)は京都の花柳界が舞台でしたが、今回は赤坂の花柳界が出てきます。著者はきっと花柳界が大好きなのでしょうね。

★★☆

著者別読書感想(伊集院静)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

信長の血脈(文春文庫) 加藤廣

2008年に織田信長の遺骸の謎を追う信長公記などを書いた太田牛一を主人公にした小説「信長の棺」(2005年)がたいへん面白く、その後も何作か、戦国時代の小説を読んできましたが、今回はその中の「安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録」(2011年)と同様の短篇集で、2014年の作品です

短篇作品のタイトルは「平手政秀の証」「伊吹山薬草譚」「山三郎の死」「天草挽歌」の4篇で、前の二つがオール讀物に、あとの二つは書き下ろし作品となっています。

タイトルに信長が使われていますが、信長自身がメインとしては登場せず、戦国時代からその後の江戸時代に脇役というか、歴史の表舞台とは違うところで生きた武将などが主役となっています。

信長というタイトルは完全に釣りです。「信長の血脈」となれば某元フィギュアスケーターまで書かないといけませんけどそんなのは読みたくもないです。

それでも、4作とも著者が信長や秀吉、明智左馬助などの作品を書いた時に、様々な資料を調べていくなかで疑問に思ったり、新しい発見やアイデアがあったりして、それらを深めて短篇集にまとめたということで、まったくの無関係と言うことでもありません。

「平手政秀の証」は信長の幼少時代に文武の教育係として任された家老が信長の親子の葛藤の中で苦しめられる物語、「伊吹山薬草譚」はよく知られていますが、伊吹山に戦国時代に南蛮由来の薬草畑が作られて、現在でもそうした外来種の草花が繁殖している話し、「山三郎の死」は、豊臣秀吉の子とされている秀頼の本当の父親は?という話し、最後の「天草挽歌」は明智光秀の一番の家臣、明智左馬助の息子で三宅藤兵衛が肥後国で穏やかに過ごしていたところ、天草の乱が起き、人を殺すよりは良いと自死を選ぶという物語です。

ただどうしても短篇だけに、中身はそれほど深掘りはされてなく、サラッと終わっているので、印象に残りにくい感じです。

★★☆

著者別読書感想(加藤廣)

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「脱・自前」の日本成長戦略(新潮新書) 松江英夫

著者はデロイトトーマツグループ執行役で経営コンサルタントの方で、テレビなどにも時々出演されている著名?な方らしいです。知りませんでしたけど。

本著は2022年に書き下ろされたもので、ザックリ言えばタイトルの通りアメリカでは古くからのビジネスモデルとなっているファブレス(fabrication facility)、工場を持たない製造業的な考え方がこれからの日本の企業経営には必要という話です。

日本の経済基盤たる大手メーカーやそれを頂点とするピラミッド構造の下請け、孫請けなどの関連会社まで、基本的には自社製品は自社工場で製造し、資本系列以外の外部には発注しないという閉じたスタイルから、バブル崩壊後にはすでにそれらは破綻していますが、高度成長期からバブルの頂点までそれで成功を収めてきた人達の思考を転換させる必要があるのではと言うことです。

百回ぐらい「タコツボ社会」の弊害が書かれていますが、若い人に「タコツボ」と言ってもおそらくそれがなにか知らない人がほとんどでイメージすら湧きにくく、自己満足な内容です。もうちょっとスマートな言い回しやサンプリングはなかったのでしょうかね。蛸壺って、、、

他には様々な事例や企業名をあげての変革、成功例などが書かれていますが、経営者として勤務するトーマツグループでは今度ビッグモーターの再建に取り組むというニュースがあり、直接担当をするのかどうかは知りませんが、数年後にその時の模様をぜひ活字化して欲しいと思いました。守秘義務とかあって無理とは思いますけど。

★☆☆

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1744
大学定期的に大学進学費用について書いていますが、ここしばらくなかったので調べました。

大学の授業料や入学金は上がることはあっても下がることはなく、この40年間を見ても上がり続けてきました。

物価や給与は上がったり下がったりしますから、大学の学費もそれらに合わせて上下すればいいのですが、なぜかそうはなりません。

特に目立って上がったのは、私立大学ではバブル絶頂の1990年前後、その後は少し落ち着きましたが2017年頃からまた値上がり傾向にあります。

国立大学は1980年代から1990年半ばまでに大きく上昇し、2000年代に入ってからまた上がりましたがその後は落ち着いています。

1980年当時の国立大学の授業料は年間180,000、入学金は80,000円ですので、4年間にかかる費用は80万円です。私立大学(平均)だと、授業料が355,156円、入学金が190,113なので、4年間161万円です。

それが、2021年には国立大学で4年間にかかる費用が242万円、私立大学は397万円となり、1980年比で、国立+162万円(約3倍)、私立+235(約2.5倍)となっています。

しかし給与はと言うと失われた30年と言われているように、判明している1989年の452万円から2021年の443万円と下落しています。

平均給与は2014年を底にして、2020年はコロナの影響があったのか前年比が下回っていますが、ここ数年はわずかながら上昇傾向です。

そして原油高を引き金にした世界的なインフレ傾向で、ようやく日本でも給与の上昇が本格的になってきたので、現在の2023年にはようやくバブルの真っ只中の1989年の平均給与を超えそうです。

1980年から2021年までの大学(国立・公立・私立)授業料4年分と入学金の合計と、1989年から2018年までの平均給与の長期推移をわかりやすいようにひとつのグラフにしました。

平均給与と大学費用推移比較グラフ
(出典1)国公私立大学の授業料等の推移(文部科学省)
(出典2)平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)(厚生労働省)

以前から、教育費の高騰が叫ばれていて、夫婦が子どもを作らない、作ってもひとりだけという少子化が進むひとつの要因となっています。

子どもが3人いる経験から言えば、なんとか二人まではなんとか、私立高校+私立大学(文系)まではなんとかできたものの貯金は使い果たし、3人目は私立高校さえ厳しい状況でした。

現在の少子化が進む理由はひとつではなくいくつかあるでしょうけど、「経済的な理由」は大きな割合を占めそうです。

私立高校までは親が負担しても、大学までは無理という家庭が多いので、大学へいくなら奨学金という名の学生ローンを自ら借りて、卒業後に自分で返済していくということになります。

日本学生支援機構「令和2年度 学生生活調査」によると、2020年時点で、学生ローンや奨学金を利用している学生は約50%、つまり半数の学生は借金して大学へ行っています(一部に返還不要の奨学金もあり)。

大学を卒業してすぐに高額な給与がもらえる一部の恵まれた人を除き、ほとんどの人は卒業から15~20年間、ひたすらローンの返済をしなくてはなりません。

借金を抱えた状態では結婚や、まして子作りに踏み切ることも躊躇われますので、少子化に歯止めをかけるためには教育費は北欧の福祉先進国並に教育費の無償化や、親の所得税の大幅な減免など極端なことでもしなければならないでしょう。

財源は?ってことになりますが、少子化対策で、児童手当などという名目で、親の飲酒やパチンコ代をばらまくのではなく、国全体の教育レベルを上げるために意味のある支援で使ってもらいたいものです。

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オロチの郷、奥出雲 古事記異聞(講談社文庫) 高田崇史

以前から行きたいと思っていた出雲について調べようと思い、今回の作品のシリーズ1作目の出雲が舞台の小説「鬼棲む国、出雲 古事記異聞」を読んで一気にファンになりました。

2022年12月後半の読書と感想、書評(鬼棲む国、出雲 古事記異聞)

おかげさまで、出雲4大神はじめ、多くの寺社、博物館など密度濃くまわることができました。あらためて御礼を。

さて、その前作に続き、主人公の大学院生の女性が、出雲を回った後、まだ解けない謎と見落としがあると思ってもう1泊増やして奥出雲へ行くことになります。

私も奥出雲へはこの小説を読む前に行ってきましたが、主人公が宿泊する亀嵩や、「奥出雲たたらと刀剣館」でたたら製鉄の地下施設「実物大断面模型」を見てきました。

小説では、「主人公が行く先に殺人事件あり」で、今回は遺体の発見者ではないものの、宿泊した民宿の主人が発見者で、その関係もあって前作で捜査に協力した島根県警の刑事とも再会します。

今回は奥出雲で残る八岐大蛇(やまたのおろち)伝説について、その謎解きと奥出雲のたたら製鉄との関係を結びつけていきます。

そして前作から引っ張ってきた「櫛(くし)」の謎について、今回の作品で主人公なりの解釈を披露します。

小説のストーリーとしてはやや心許ない感じですが、出雲や奥出雲の歴史や神話の世界の現代での解釈や推理などは、ふむふむと面白いものです。

★★☆

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素晴らしき世界(上)(下)(講談社文庫) マイクル・コナリー

ハリー・ボッシュシリーズの21作目で、原題は「Dark Sacred Night」で、2018年にアメリカで出版され、日本語翻訳版は2020年に出版されています。

原題を直訳すると同じハリー・ボッシュシリーズの9作目のタイトルにつけられた「暗く聖なる夜」になるとのでそれは使えず、この原題タイトルはルイ・アームストロングの「What a A Wonderful World」の歌詞の中からとられていることから、曲のタイトルの直訳を日本語翻訳版のタイトルに使ったと訳者あとがきにありました。

また本文中でも、捨てられた殺人事件の遺体捜索のために、汚臭おびただしいゴミの集積場で数日前のゴミを調べていた捜査員が皮肉を込めて「なんて素敵な世界だ」と会話しています。

今回の特徴は、以前読んだ同じ著者の作品「レイトショー」で主人公だったハワイ生まれの女性刑事とボッシュの二人が勤務先の違いを超えてペアとなり古い未解決事件を解決していくという流れになっています。

2020年5月前半の読書と感想、書評(レイトショー)

前作「汚名」でボッシュが麻薬組織に潜入捜査をした時に助けられた薬物中毒の女性から、その娘の未解決殺害事件について聞かされ、その女性を救うとともに、娘の未解決事件について調べると約束をしていました。

その事件はロサンゼルスで起こり、ボッシュはロス市警に寄ったときに部外者であるに関わらず無断でキャビネットの中の古い資料を探しているときに、もう一人の主人公である女性刑事に見つかってしまい、女性刑事から理由を求められ、それに興味を持ち協力することを伝えられます。

それぞれに事件を抱える忙しい身でありながらも、9年前の未解決事件を探っていくという気の遠くなる調査です。

今回は、ボッシュ自身が勤務する地元の犯罪組織に拉致され閉じ込められるという危機一髪のシーンなどもあり、ヒヤヒヤし、また高齢から来る膝の痛みに耐え、針治療を受けるなど年齢を感じさせるものがありました。

著者と主人公がほぼ同年齢で進んできた本シリーズですから、そうした身体の衰えなどは自身が経験してきたことかも知れません。そうなんです、心身とも健康な若い人には、高齢になってやって来る様々な身体の衰えは実感がないからわからないし書けないものです。私自身、著者とほぼ同年齢なのでよくわかります。

★★★

著者別読書感想(マイクル・コナリー)
ハリー・ボッシュシリーズはまだ未完

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浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話(光文社文庫) 鯨統一郎

2007年に単行本、2010年に文庫化された、著者が得意とする昔話をテーマにした謎解きの短篇作品集で、9年前に読んだ桜川東子シリーズ「九つの殺人メルヘン」の続編です。

2012年2月前半の読書(九つの殺人メルヘン)

著者の小説としては2021年に「邪馬台国殺人紀行 歴女学者探偵の事件簿」を読んで以来なので2年ぶりです。

今回の昔話は誰もがよく知っている日本の童話を元にして、探偵に依頼された事件の謎を解決していくというワンパターンの短篇集となっています。

バーに集まる還暦オヤジ3人衆が、昭和時代の話しをした流れで、不思議な事件について話しをすると、その謎解きをひとりで日本酒を飲んでいる美人大学院生の桜川東子が推理していきます。

その童話とは「浦島太郎の真相」「桃太郎の真相」「カチカチ山の真相」「さるかに合戦の真相」「一寸法師の真相」「舌切り雀の真相」「こぶとり爺さんの真相」「花咲爺の真相」の8篇です。

童話はいずれも子供の頃に絵本で読んだり、読み聞かせしてもらったりした懐かしい記憶が思い浮び、まだ純真な心だった時代に戻って気分がとても良くなってきます。それだけでもこの小説を読む意味があります。

★★☆

著者別読書感想(鯨統一郎)

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飛族(文春文庫) 村田喜代子

2019年に単行本、2022年に文庫化された小説で、時代を代表とする作品に贈られる谷崎潤一郎賞を受賞しています。

著者の作品を読むのは今回が初めてですが、1987年に芥川賞を受賞した「鍋の中」は、黒澤明監督の映画「八月の狂詩曲」(1991年)の原作になった小説で、著者は作品がお気に召さなかったようですが、その原作も読んでみたくなりました。

タイトルしか見ずに買いましたが、「なにかファンタジーもの?」ぐらいに思っていましたが、全然違って日本の西の果て、国境に近い離島に住む老婆が二人と、高齢の親が心配になって里帰りしてきた娘、と言っても60歳を過ぎている女性の3人が繰り広げる過疎化が進むリアリティのある物語です。

島で生まれ、高校に通うため本土(九州)に出てから、滅多に島には帰らなくなった娘が、90歳を超えてなおひとりで暮らしている離島に帰ってきて、親を引き取ろうと説得しますが、頑として受け入れてくれません。

島では3人の老婆が残っていましたが、そのうちのひとりが亡くなり、92歳と88歳の二人だけになり、それでもほぼ自給自足の生活を淡々と過ごしています。島の住人は、男は漁師、女は海女というのが普通で、残った二人の老婆も元海女でした。

そういう離島の話しは都会で生活しているとまったく見聞きすることはありませんが、昔は唐に渡るために遣唐使の船が最後の補給に寄ったとか、最近は中国の不法漁船や、アジアの難民船などがやってきたりする話しや、キリシタンが隠れ住んでいた五島列島に近い離島と思えるので、昔から伝わる歌の中には「ゼウス(神)」や「サルース(救済)」があったりして知的好奇心が満たされます。

またタイトルにもなっていますが、島に寄る海鳥たちも、カツオドリ、ハチクマ、シギ、ミサゴ、アジサシなど様々な種類があって、山育ちのあと都会暮らしのため海鳥というとウミネコかカモメぐらいしか知らない身にとって勉強になります。

★★☆

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