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天の方舟 (講談社文庫)(上)(下) 服部真澄

 
現実の社会問題や国際問題をテーマに鋭く切り込み、上質なエンタティメントに仕上げた長編小説が多い著者の2011年刊(文庫は2012年刊)の作品です。WOWOWでドラマ化もされていると言うことです。

この作品のテーマはODA(政府開発援助)のいい加減さ、甘い蜜に群がる政治家や企業など、巨額の税金を巡る暗部をえぐり出しています。

現実のモデルとしては日本工営がコンサルティングを請け負ってODAで建設していたベトナムのカントー橋崩落事故の話しなども出てきますが、様々な要素を盛り込みあくまでフィクションとして作られています。

著者の過去の作品では、「龍の契り」(1995年)の香港返還協定について、「鷲の驕り」(1996年)はアメリカの秘密特許で濡れ手に粟の大儲けをする特許法について、「ディール・メイカー」(1998年)は金融システム、「バカラ」(2002年)は最近実現しそうなカジノ合法化問題について、「エル・ドラド」(初出時タイトルGMO、2003年)は遺伝子組み換えなどのアグリビジネスについてと、世界を股にした陰謀渦巻く業界や世界を取り上げてきました。

この小説も主人公は日本と海外を行き来して、ODAの暗部をついて私腹を肥やしたり、国内外の政治家や役人と結託して裏金作りに邁進したりと、いとも簡単に税金を食い物にしてくれます。

そして、主人公は自ら過去の犯罪を告白して外為法違反で逮捕されるわけですが、その裏には意外な隠し球があってと、なかなか読ませてくれます。

ただ主人公は悪に徹するわけでもなく、小説にするには魅力ある人物とは思えず、リアリティを考えてのことか、ちょっとあっさりしすぎって感じです。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

無痛 久坂部羊

著者は現役の医者でもありながら、小説を書き始め、2003年に「廃用身」でデビュー、この作品は2006年に単行本、2008年に文庫版が出ています。

また昨年2015年にはTBSでこの小説を原作とするテレビドラマ「無痛~診える眼~」が制作されていますが、小説とは少しストーリーが変えられたオリジナル脚本となっているようです。

現役医者でありながら小説を書いてきた森鴎外、渡辺淳一、北杜夫、帚木蓬生、海堂尊、夏川草介など、数多くの作家がいますが、豊富な知識や経験を元にしていて、どれも面白く読ませてもらっています。

この作品も医療モノと呼ばれる町医者を主人公としたミステリー小説で、その主人公は人の外見を注意深く観察するだけで、罹っている病気や病歴などを見抜けてしまう特殊な能力を身につけています。

その能力のひとつに、犯因症という「エネルギー過多の一種で、犯罪を起こす者に現れる徴候」を見抜ける力もあり、未然に凶悪な犯罪が起きるのを察知することができることも特徴です。

タイトルは、未来の無痛治療に道を開くかもしれない「先天性無痛症」からきていますが、私自身まもなく手術を受けることから、こうした無痛手術というのは夢物語です。もし可能ならば早く実現してもらいたいものです。それで多くの人が救われるのですから。

そうした高度な医療と、底辺にうごめく犯罪者とをうまく結びつけた内容となっていて、さらには刑法第39条における「精神障害者等の犯罪に関する責任能力」も取り上げられています。

600ページを超える長編作ですが、内容は特に難しいものではなく、サクサクと読めますのでお気楽な感じでいいかもです。ただ、登場人物のほとんどが、現実にはいなさそうな人ばかりというのがちょっとガッカリです。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

下山の思想 (幻冬舎新書) 五木寛之

東北震災直後の2011年に発刊されたエッセイで、震災後にいくらか書き直し?したような感じの内容となっています。

内容としては、栄華を極めた80年代から90年代に対し、いま日本が置かれている位置は、登山で言うなら下山しているところであり、その下山の方法こそが重要であるという話しです。

御歳83歳の著者は、少年時代に徹底的に破壊された敗戦を、青年時代には左翼運動にまみれた学生運動を、そして若いときに高度成長とバブルを経験しているだけに、今のバブル崩壊や東北地震、それに続く原発事故で大きく傷ついた日本を見るとそのような感想をもたれるのは仕方がないでしょうけど、今の若者にとってその下っていく思想は受け入れられるか?というと、ちょっと違うかなと。

つまり高齢者から見て自ら体験してきた日本の栄枯盛衰であり、同世代を生きてきた人にとっては間違いなく、同意し頷ける考え方に違いないでしょう。

一方では昭和時代よりもはるかに拡大していったグローバリズムや、日本人の多くが成長著しいアジアの各国へ出掛けていって仕事をするなんて、今の高齢者には考えもつかなかったことが起きています。

そうした、これからの日本と新しい日本人の生き方について、もっと著者の考え方を知りたかったというのが本音で、何度も何度も同じ話しが繰り返される文章をみて、この著者も寄る年波には勝てないのかぁと少し残念な気持ちがしました。せめて編集者が気をつけてアドバイスや修正をすればいいのでしょうけど、大家の文章に赤を入れるだけの勇気がある編集者もいなくなったと言うことでしょうか。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

沈黙のひと (文春文庫) 小池真理子

2011年に雑誌に連載され、2012年に単行本、2015年に文庫化された長編小説で、2013年には吉川英治文学賞を受賞した作品です。著者の作品では過去に「記憶の隠れ家」(1995年)と「天の刻」(2001年)を読んでいます。

物語の主人公(中年女性)は、自分が子供の頃に両親が離婚し、母子家庭で育てられましたが、別れた父親との交流はその後も長く続き、介護が必要となって老人ホームへ入居するとき、そしてそこで人生を終えた後の遺品整理の時も立ち会うことになります。

前半は亡くなった父親が残した前妻の子(主人公)と、後妻の姉妹達とのやりとりが長々と続きますが、これってこの前見た映画「海街diary」の設定となんとなく似ているなって感じ。

「海街diary」の原作はと言えば元は漫画ですが、異母姉妹の微妙に揺れる感情ってところが似ていて面白いなと。前妻の娘からすれば、自分と母親を棄てる原因となった父親の新しい家庭の娘達という。

その浮気っぽい父親が亡くなったところから始まるパターンが両者に共通する点です。

こちらの小説では、その父親の遺品のワープロから家族が知らなかった別の顔に出会います。

仙台に単身赴任をしていた頃の恋人の存在や、趣味の短歌を通して知り合いずっと文通を続け、一度だけ施設で出会った人のことなどの存在を知ります。

主人公と母を見捨て、離婚していった父親に対して思う感情と、また違う感情を父親が持っていたことも知り、主人公の中で家族とは、肉親とはという思いが変わっていくことになります。

この小説の一部には著者の私的な自伝的要素も加わっているらしく、作中に出てくる父親の短歌は、著者の亡き父親の短歌をそのまま使われていたりします。

読み始めの時には、重く暗い、いまいちまどろっこしい感じが好きになれませんでしたが、途中からなにかグイグイと引きつけられるように感情移入ができ、著者の代表作と言ってもいいような面白い小説だと思います。

★★★


【関連リンク】
 6月前半の読書 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活、深泥丘奇談、他人を攻撃せずにはいられない人、日の名残り
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桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫) 奥泉光

現役近畿大学教授でありながら作家との二足のわらじを履いている著者の2011年単行本、2013年には文庫化されています。またシリーズ化され続編の「黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2」もすでに発刊されています。

著者の作品を読むのは今回が初めてですが、過去の作品には1994年に芥川賞を受賞した「石の来歴」や、2009年には「神器―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)」で野間文芸賞受賞、2014年に「東京自叙伝」で谷崎潤一郎賞受賞など、数々の賞を受賞されている人気作家さんです。

そしてこの作品は2012年に「妄想捜査~桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」としてテレ朝系の連続ドラマになり、その時の主人公は佐藤隆太、その他桜庭ななみ、倉科カナなどが出演しています。

自らが大学教授と言うことで、舞台は勝手知ったる大学の職場風景ですが、ジャンルは推理小説で、本書には「呪われた研究室」、「盗まれた手紙」、「森娘の秘密」の連作中編3作品が収められています。

主人公が自ら降りかかる難問を次々解決していくよくある話しかと思っていたら、思いっきり裏切られて、主人公に降りかかる謎や難問を、教え子の文芸サークルに所属する女生徒が解決をしてくれるという珍しいパターンで、意外性があってその点は面白いですね。

ただ、ドタバタコメディ的な要素が多く、推理小説としてはそれなりに面白いのですが、その周囲というか設定があまりにもふざけすぎていて、ホームレス女子大生とか、准教授の手取り給料が10万円とか、千葉の田舎の偏差値の低い大学を笑いものにしているとか、ちょっとどうかなと思いますね。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

深泥丘奇談 (角川文庫) 綾辻行人

館シリーズなどが有名な京都在住の推理小説の作家さんで、2008年に単行本、2011年と2014年に文庫化された作品です。続編の「深泥丘奇談・続」も2011年(文庫は2014年)もすでに発刊されています。

京都市内に長く住んでいると京都市内北部にある「深泥ケ池(みどろがいけ)」という沼のような池のことを知らない人はいないと思いますが、とかく怪奇現象やその筋の噂が絶えない場所で有名なところです。

何度か地元の新聞にも載りましたが「タクシーが深泥ガ池で女性を乗せて、京大病院までというので走っていたら、いつの間にか消えていた」とか、「深泥が池の近くを走行中に白い服を着た女性が前に飛び出してきて轢いてしまったが、降りてて見ると誰もいなかった」とか。

これらの事故?事件?は、ちゃんと警察にも届けられていて、その警察発表が新聞に掲載されていて、単なる噂や都市伝説の域を超えたものとしてよく知られています。

そうした深泥ケ池をもじった「深泥丘」という地名にある不思議な病院を舞台にして、主人公の作家(著者?)が遭遇する様々な怪奇現象や不思議な人達との話しがコミカルに連作短編で書かれています。

ホラー小説のジャンルに入るのでしょうけど、特にこれといってゾッとするようなわけでもなく、なにかちょっと中途半端な感じです。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

他人を攻撃せずにはいられない人 (PHP新書) 片田珠美

著者は1961年生まれで現在は京都大学の非常勤講師でもある精神科医で、BS日テレの「久米書店」に登場したとき、「精神医学界のエリカ様」を名乗っていたぐらいのユニークな方です。

他にも同様の多くの著書がありますが、本作品は2013年刊の新書です。

目次は、
第1章 「攻撃欲の強い人」とは
第2章 どんなふうに壊していくのか
第3章 なぜ抵抗できなくなるのか
第4章 どうしてこんなことをするのか
第5章 どんな人が影響を受けるのか
第6章 処方箋―かわし方、逃げ方、自分の守り方

事例を元にした「こんな攻撃方をされる」とか「こんな人がいる」といった内容で、読んでいてもあまり実感はなく、「そう言えばあの時の上司がこういうタイプだったかなぁ」とかふと嫌なことを思い出すぐらいで、あまり参考にはならないかな。

こうした文章で書かれたものではなく、著者の講演会みたいなところで、著書に出てくる事例を話し言葉で聞くと現実味があっていいのかも知れません。文章だとなにか違う世界で起きていることのようにしか思えなくて。

しかし悪意があって攻撃する人ばかりではなく、自分を守るため、自分の精神を落ち着かせるため、自分の考え方を正当化するために、他人や友人、部下、同僚を結果的に攻撃してしまうという怖さはこの本でよくわかります。

個人的にはこうした攻撃的に出る人は、余裕や自信のなさから出てくるもので、下手に相手をすればややこしくなるだけなので、完全無視をするのに限ります。

誰とどう付き合うかは最低限自分で選択できる権利でもありますので、そうしたちょっと変な人と関わり合いを持つことは、仕事でもなければできるだけ避けたいものです。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

日の名残り (ハヤカワepi文庫)(原題The Remains of the Day) カズオ・イシグロ

2005年の小説「わたしを離さないで」が有名で、今年TBSでドラマ化もされていましたが、著者の名を有名にしたのは1989年刊の本作で、世界的に権威のある英国ブッカー賞を受賞した作品です。また1993年にはジェームズ・アイヴォリー監督、アンソニー・ホプキンス主演で映画が製作されています。

小説は1956年の「現在」と、第二次大戦前、1920~1930年代の「回想」」とを行き交います。

主人公は父親の時代から名門家の屋敷に住み込みで執事として働いている男性です。

戦前の世界問題に揺れる大英帝国の上流階級の中で仕事をしてきた主人公は、しっかり者の女給長との間に淡い恋愛感情を感じながらも、世界が大きく変わりゆく中で、自分の仕事に専念するあまり、恋を成就させることはできません。

時代がすっかり変わり、没落していく英国貴族の代わりにアメリカ人富豪が屋敷の主となり、様々な変化にもうまく対応していきますが、ずっと以前に結婚をして辞めていった女給長から手紙をもらい、また一緒に働けないものかと考えます。

新しいアメリカ人の主人がしばらく休みを与えてくれて、しかもその頃まだ珍しかった高級自家用車で旅行してくればという提案を受けて、その元女給長が住む街へと旅に出掛けます。

その旅の途中で出会う様々な階級の人や、庶民達の政治談義などを持ち前の知識やテクニックでそつなくこなし、英国の田舎町をのんびりと旅をする風景がとてもよく書かれています。

そしてようやく念願の人と再会を果たしますが、その結果はここには書いてはいけないでしょう。

★★☆


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楽園の蝶 柳広司

ジョーカー・ゲーム」などの多くの人気作を執筆されている著者の2013年6月に発刊された長編小説です。

 
時代は上記「ジョーカー・ゲーム」とほぼ同じ時代、1940年代初頭で、日本が傀儡政権を樹立して実効支配している満州が舞台となっています。

主人公は東京の大学在学中に左翼運動に染まってしまい、まともな就職先がなく、逃げるように満州へやってきた新米の脚本家で、謎多き甘粕正彦が率いる満州映画協会に入ることになります。

甘粕正彦は実在した人物で、Wikipediaによると「日本の陸軍軍人。陸軍憲兵大尉時代に甘粕事件を起こしたことで有名。短期の服役後、日本を離れて満州に渡り、関東軍の特務工作を行い、満州国建設に一役買う。満洲映画協会理事長を務め、終戦直後、服毒自殺した。」とあるように、日本陸軍ともつながり、満州国を裏で支えていたとされる人物です。

物語はその実在する満州国、満州映画協会、甘粕正彦氏を絡め、またペスト菌を研究していた731部隊の石井四郎関東軍防疫給水部長も登場するなど、フィクションに史実を織り交ぜながら満州国の行方とその中で生きる人達を描いています。

ただ、物語として面白いか?というと、どうも著者の他の作品とは違って起承転結がはっきりしていなくて、スカッとするような終わり方ではなく、ダラダラとした始まりからいつの間には終わってしまったという不安げな感じで、読後感想が書きにくい。

タイトルに使われている「楽園」も「蝶」も、イマイチ本筋とは関係が薄く、タイトルにも疑問が残ります。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

英雄の書(上)(下) (新潮文庫) 宮部みゆき

  
毎日新聞夕刊で2007年から連載されていた長編小説で、2009年に単行本、2012年に文庫版が出ています。そして2015年には続編とも言える「悲嘆の門」が発刊されています。

著者の作品としては珍しくいわゆる「指輪物語」「ハリー・ポッター」「精霊の守り人」「千と千尋の神隠し」などと同様のファンタジー小説という分野です。多くのミステリー、サスペンス小説を手掛けている著者の作品を期待するとまったく違いますから注意です。

中学生の女の子が、殺人を犯して行方不明になってしまった兄を捜し、本の精霊達に導かれ、架空の異次元の世界に乗り込むというオッサンが読むには少々無理がある内容です。読み始めてからそういう話しだと気がついた私が悪いのですが、、、

文庫では上下巻ありますが、その約半分を使って、想像上の世界の理屈や決まり事が延々語られていて退屈きわまりない感じです。

おそらく映像化を期待しているのだと思われ、それならパッと見せれば済むようなことも文字にすると長々とその説明を書かなければならず、読み進めて行くには相当の忍耐が必要です。

新聞小説は、長さや1回当たりの文字数までがある程度決められているので、それに合わせるため、得てして冗長な感じになります。つまり素早い展開とかはなく、行動にいちいち必ず説明がつきます。

何度か読むのを途中で辞めようかと思いましたが、たまたまじっくりと読書できる時間がたんまりとあったので、一気に飛ばしながら読みました。

あーつまらなかった。損した気分です。(個人的な感想です)

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

男性漂流 男たちは何におびえているか (講談社+α新書) 奥田祥子

 
2015年発刊の新書で、日曜日の夕方にBS日テレでやっている「久米書店」で紹介されていたのを観ての購入です。「久米書店」では、新書の著者をゲストに招き、その中身について久米宏と壇蜜が深く?掘り下げていくという読書好きにはたまらない番組です。

著者はアメリカの大学を卒業後、新聞社に入社して記者として勤務。その後独立してジャーナリストを生業とされている方で年齢は御歳50歳です。

新聞記者時代から興味を持っていたという男性の結婚観から始まって、男性側の婚活事情や、仕事、親の介護、子育てなどに悩む男性を追いかけてインタビューをしたものをまとめたものです。

すべて仮名での登場なので、どこまでホントの話し?って勘ぐりたくもなりますが、想像で書くのだったらもっと面白く書けるでしょうからほとんどは事実に近いことなのでしょう。

もっとも、この本で取り上げられている男性が世の中の男性の平均像というわけではなく、ある種特殊な方々ばかりが取り上げられていると思って間違いないでしょう。

ただその特殊な人達がこれからさらに増えていくことで、数年後か十数年後にはもう特殊といえないレベルにまでなってくるかもという警告にはなっています。

各章立てはこんな感じです。

 第1章 結婚がこわい(婚活圧力と生涯未婚ラベリング)
 第2章 育児がこわい(仮面イクメンの告白)
 第3章 介護がこわい(「ケアメン」―男性の介護時代)
 第4章 老いがこわい(若返りで家庭崩壊の危機)
 第5章 仕事がこわい(増える中年男性の非正規)

まぁ流行語を散りばめていて、いかにも新書らしい感じです。

読みやすく、理解しやすいのはいいのですが、ニュースとかをちゃんと見ていれば予想されることが淡々と書かれているだけで、心に残ったり響いたりすることがなく、「あ、そうなのね」ぐらいで終わってしまうのがちょっと残念です。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫) コーマック・マッカーシー

 
2006年に発刊された長編小説で、2009年には映画も製作されています。少し前にBSでやっていた映画を録画して観た映画「ノーカントリー」(2007年)は著者の作品「血と暴力の国」の映画化作品だったことを後になって知りました。その作品も原作のタイトル通りヤバかったです。

この作品はいわゆる終末期モノで、地球に核戦争?のような終末期が訪れ、文明や都市は破壊しくつされ、ほとんどの生物は死に絶えています。

主人公がどのようにして生き延びていたのか?、なぜこのような事態が起きたのか?などはまったく明らかにされていませんが、とにかく生き残った者同士、生死を賭けたサバイバルゲームが展開されていきます。

生き残っている人の多くは食料を求め凶暴化し、一部は食人化しています。そうした中で、核の冬?のせいか寒くなった地域からひたすら暖かな南へと向かってアメリカ大陸を歩いていく父親と幼い子の親子の情愛がたっぷりなロードストーリーです。

襲ってくる凶暴な集団たちと闘ったり、打ち壊された家の中に隠されている食料品を知恵を絞って探し出したり、難破船から水や食料を引き上げたりと、マッドマックスを彷彿とさせるようなロストワールド的な世界が描かれています。

また日本の安いドラマによく出てくるような、子供がやたらと賢くて大人顔負けの活躍をするようなものではなく、現実に親にすがるしかなく、また親の背中を見て少しずつ育っていき、時には我が儘をいう普通の子供が描かれているのにも好感が持てます。

息子を守るため、また親が死んだ後でも危険な事態に対応ができ生き残れるようにとサバイバルを教えつつ、愛情深く寄り添っていく父親の姿がとても魅力的で。最後はハッピーエンドとは言えませんが、かと言って後味の悪い終わり方でもなく、よい終結だと思います。ぜひ映画も見てみたいですね。

★★★


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 12月後半の読書 雪の夜話、銀河ヒッチハイク、首都崩壊、龍は眠る
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オリーヴ・キタリッジの生活 (ハヤカワepi文庫) エリザベス・ストラウト

2009年にピューリッツァー賞 フィクション部門を受賞した連作短篇集で、アメリカでは2008年刊、翻訳版は2010年(文庫は2012年)に発刊されています。

作品に収められているのは「薬局」「上げ潮」「ピアノ弾き」「小さな破裂」「飢える」「別の道」「冬のコンサート」「チューリップ」「旅のバスケット」「瓶の中の船」「セキュリティ」「犯人」「川」の13作品。

最初の「薬局」では主人公は40代でしたが、最後の「川」では70代になっています。特に有名ではない普通の田舎に住むアメリカ人の女性が、結婚して、子供ができて、その子供が成長し巣立っていき、夫が先に亡くなってしまい、、、という連作になっています。

さて読んでみたものの、そういうものなのか、それとも翻訳がまずいのか、主婦の井戸端会議のような話しが細かすぎて中身がさっぱり頭に入ってこないのです。

近所の人や教え子(主人公は学校教師)など登場人物も多い上に、アメリカの田舎の文化、生活習慣などが違うこともありなにを言っているのかさっぱりわからなくなってしまいます。

気が散りがちな満員の通勤電車の中ではなく、落ち着いたところでじっくり読めば良かったのかもしれませんが、こうした細かな神経をもつ女性の感性に共感を持ち同調しなければ理解できそうもない小説はちょっと無理かなぁ、、、

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

年金の教室―負担を分配する時代へ (PHP新書) 高山憲之

少し古い2000年発刊の年金の新書ですが、基本的な構造は変わっていないので、問題ありません。

著者の考えは、年金の基礎支給部分を年金目的に限定した消費税にして、それで賄うことで、減少を続ける働く人達の年金負担を下げ、また年金逃れをする人をなくし、公平に、世代間の格差をなくそうという、もっともな理論を展開してきた人です。

様々なシミュレーションを元にして現在の年金制度とこれからとるべき方策を比べ、また世界の他の国の制度も参考にして、わかりやすく?理路整然と説明されています。

ただいかんせん、それでなくともややこしい年金制度の仕組みと数字が複雑に合わさって、専門家にとっては「なんでこれがわからないの?」という感じでしょうけど、読み始めるとすぐにあくびの連続で、読み終わるまでに結構かかってしまいました。集中して読めばおそらく2時間ぐらいもかからずに読めてしまう分量だと思いますが、、、

私が読んだ版は2002年版で、少々古いものですが、同書にも記載されていますが、最新の情報などはWebサイトに上がっていますので、併用して読むのが良いかも知れません。

高山オンライン

年金の現状と今後の課題(2015年9月26日プレゼンデータ PDF)

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

0.5ミリ (幻冬舎文庫) 安藤桃子

2011年刊の小説ですが、著者は元々映画監督で、この小説も2014年には実父の奥田瑛二が製作総指揮、自らは監督で、主演は実妹の安藤サクラを起用し映画化されています。

自らの介護経験を元にした内容で、主人公の女性は、介護ヘルパーとして派遣されている家庭で、その家族から「もう長くはないので、最後のお願い」と頼まれ、会社の規則に背いて認知症が進む老人の添い寝をすることになります。

しかしその老人の力があまりにも強くて、暴れたために火事を引き起こしてしまい、ヘルパーの仕事もそれまで住んでいた家も失ってしまうことになります。元々根無し草のような生活だったようですが。

その後、街に出てひとりきりの老人や、万引きしているところを見つけてはその弱みにつけ込み、その家に押しかけて、介護ヘルパー的な同居生活を始めます。

そういう展開はドラマや映画としては面白いのかも知れないけど、いきなり美少女がタイムスリップしたり、主人公の前に都合良く政府機関の重要情報に簡単にアクセスができちゃうニートのハッカーが現れたりするみたいな、ちょっと常識的にありえなさそう。

タイトルの0.5ミリは、人のささいな、0.5ミリぐらいの小さな心の積み重ねが、社会を動かすことになると、老人が日記に書いていたことからの抜粋と思われます。つまりそうした小さなことや思いの積み重ねが人間関係や社会に大きな影響を与えていくのだよということかな。

あとこの文庫には「クジラの葬式」という短編も入っています。

こちらは老人の話という共通点はあるものの、ガラリと変わって謎深い老人の生と死を扱ったショートストーリー。私はどちらかと言えば、こちらの話しのほうが好きでした。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

恋文の技術 (ポプラ文庫)  森見登美彦

京都大学出身の作家と言えば、古くから井上靖、大岡昇平、小松左京、高木彬光、隆慶一郎、和久峻三など大御所が並び立ちますが、最近でも万城目学、平野啓一郎、我孫子武丸、綾辻行人、貴志祐介など売れっ子作家さんがズラリといて、早稲田大学ほどではないにしても、なかなかの文筆学閥ができそうな勢いがあります。もちろん「夜は短し歩けよ乙女」や「太陽の塔」など京都を舞台にした作品がある著者もそのひとりです。

この作品は2009年に単行本、2011年に文庫化された小説で、中身はすべて書簡(手紙)のスタイルをとっています。

主人公は京都の大学院生で、クラゲの研究のため人里離れた能登の研究室へ送られますが、それを機に手紙の奥義をマスターし、いずれは恋文マスターになろうかと、友人や先輩、妹などと手紙のやりとりを始めます。

そう言えばもう「文通」とか「恋文」って言葉は現代においては死語になっていますが、恥ずかしながら、私も暇だった高校生時代には何人かと文通をしていたことをふと思い出しました。もう40年以上前のことです。

もしいま丁重なお手紙をもらったとしても、正直言うと迷惑なだけで、手紙で返事を返さなければならないと考えただけで暗澹たる気になります。

割とそうした手紙に慣れている中高年の私でもそうですから、今の10代、20代の人でちゃんとした手紙を手書きで書いたことがある人って少ないのではないのかなぁって思ったり。

物語は能登の日常の風景やら、友人との思い出など、さすがにプロの作家が書く手紙だけあって、面白くそして情景豊かに綴られています。

キーボードに慣れてしまった人にとって、手書きの文章というのは大層ホネで、漢字もなかなか思い出せなかったりするものです。そしてこの手書き風の文章は、著者がパソコンでキーを打って書いたのだろうなぁって思うと、ちょっと不合理を感じたりもします。

★★☆


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放浪記 (新潮文庫) 林芙美子

著者は明治、大正、昭和とめまぐるしく変化する日本を生きて、多くの詩や小説を残してきました。その中の代表作とも言える本書は最初1930年(昭和5年)に単行本が発刊され、その後何度か改版、新装され続け、現在に至っています。

発刊当時は第1次世界大戦後で軍事国家が支配しつつある日本で、婚約者に裏切られながら、貧困の中で、必死にもがいて生きていく筆者の日記を元としています。

2012年に亡くなった森光子が亡くなる寸前まで帝劇等の舞台で演じていたのがこの作品の演劇で、2015年からは仲間由紀恵が跡を継ぎ主人公役を演じています。ちなみに演劇の中で注目される「でんぐり返し」の場面は、本書では出てきません。

本作品は小説ではなく、日記を本にしていますので、日付とその時々の様子や筆者の考えなどが赤裸々と言うか遠慮会釈なく、この時代の女性にしてはいたって明るく奔放な様子が書かれていて、読む者を引きつけていきます。

ただ、時代が時代だけに、この頃の女性の労働環境や、貧しい地方から東京へ出てきた苦労などは、今からは想像できないぐらいに違っていて、そうしたことを理解しながら読むのにはちょっとした想像力なども必要です。

こうした明治から大正時代の実録職業婦人の記録は、ほとんどないでしょうから、歴史的な価値はもちろんのこと、研究論文の参考図書としても十分利用できそうです。

ただ、一読者として読むのには、日記が書かれている日が飛び飛びで、次々出てくる内容の関連性がわかりにくく、また小説ではないのでストーリーが一気通貫してはなく、その当時の時代背景の説明もないので、それを理解して読み進めていくのは結構つらいものがありました。

自分で日記を書いてもたぶんそうなるでしょうけど、「旅をした」とか「就職した」とか、大きな変化があったときは細かに書いても、日々淡々と過ぎてしまうと何ヶ月もすっぽりその部分は抜け落ちることになります。

あの大きな関東大震災が起きた時も、本書では震災の数日後にちょっと触れられているだけで、それよりも日々の生活がたいへんって感じの書き方でした。ちょっと肩すかしをされたような感じです。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

しない生活 煩悩を静める108のお稽古 (幻冬舎新書) 小池 龍之介

2014年に刊行された新書で、30代の現役の若いご住職が書いた仏教的生き方の知恵みたいな感じの本です。

章立ては5つからなり、合計108つの「しない」が書かれています。というか108つのエッセイと言ったほうがいいかも知れません。その5つの章は、「つながりすぎない」、「イライラしない」「言い訳しない」、「せかさない」、「比べない」です。

以前読んだことがある仏教の教えについてわかりやすく解説したひろさちや氏の「仏教に学ぶ八十八の智恵」(1983年刊)とも共通するところがあるなぁと思いながら108つの煩悩?を一気に読み進めました。

中では53番の「ネットを断って一人に立ち返ることこそ、最高の安息」はちまたでもよく言われていることですが、現代のネット依存に対してあらためて考えさせられる内容です。

「つながり過剰に情が縛られたら己を見失う。つながり過剰にその恐れを感じて、犀の角のように孤独に歩むように」は経集の自由訳からですが、名言です

若い著者ですので仕方がないのですが、文章の中に「トホホ・・・」とか「にっこり」というネットでよく使われているスラングががやたらと使われていたりして、ちょっと幻滅。

そこまでして若い人の流行に合わせなくてもいいのではないかな。読んでいてなんだか痛々しく感じてしまいます。本来なら編集者が遠慮なくスパッとつまらない意味のない言葉はカットしてしかるべきことですが、編集者の毅然とした力も最近は弱まっているのでしょうかね。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

名もなき毒 (文春文庫) 宮部みゆき

誰か―Somebody」の続編にあたる「杉村三郎シリーズ」第2弾の長編小説で、元々は新聞で連載されていた小説で、2006年に単行本が発刊されています。

2013年には前作とともに連続テレビドラマ化がされて放映されました。主人公役には著者の指名で小泉孝太郎だったそうです。

宮部氏ぐらいの大物にもなるとドラマの主人公役が指名できるのですね。そういうのはプロに任せておいたほうがいいと思うのですが、映画「模倣犯 」でも不満を表したとか、なかなか自我の強い人なのでしょう。

そしてこのシリーズは、すでに第3弾として「ペテロの葬列」が2013年に発刊されています。また読まなくっちゃ。

2013年6月前半の読書 「誰か―Somebody (文春文庫)」 宮部みゆき


主人公の杉村三郎は弱小出版社で児童書などの編集の仕事をしていましたが、その時に偶然知り合い恋仲になった女性が大企業オーナーの娘で、結婚をする条件に父親の大企業へ転職することを約束させられ、オーナーの義父直轄の広報室勤務という、いわゆる世間的には逆玉の男という変わった設定になっています。

今回の活躍の場は、大きくふたつあり、ひとつは主人公が勤めている広報室でバイトとして働いていたエキセントリックな女性を解雇したことで起きる様々な問題。

もうひとつが、上記の解雇した女性の職歴等を調べている中で、偶然知り合った女子高生とその母親が、当時世間を騒がしている連続青酸カリ毒物事件の被害者遺族だったことから、その事件の真相にも関わっていくことになります。

また並行して住宅地の土壌汚染や建築材のシックハウス問題も出てきたりしてお腹いっぱいになりそうな盛りだくさんの内容です。

そしてクライマックスでは主人公の子供が危機一髪のスリリングな展開が待ち受けていますが、安っぽいテレビドラマじゃあるまいし、原作で果たしてここまでする必要があったのかはちょっと不自然な感じもします。

★★☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

青春の彷徨 高橋 寛治

2012年に発刊された「青春の彷徨」「幻想の断崖」「めぐり来る春」の3編の中編小説が収録された単行本です。発刊から4年が経ちましたが、文庫化はされないのかな?

「青春の彷徨」の主人公は東大へ通う大学生で、学生運動が盛んで、普通の家に下宿をするという時代ですから1960代後半頃の話しでしょうか。

その下宿先というのが、家の1階で書店を営む、夫を病気で亡くした女性と、その子供の女子高生の二人住まいの家です。

主人公は女子高生に勉強を教えたり、映画を見に行ったりと仲良くなっていきますが、夏休みを終えて下宿に戻ると娘は軽井沢の友人の別荘へ出掛けていて、艶めかしい夫人と一線を越えてしまいます。

ま、それだけの話しなのですが、やがてはその関係が娘にも気づかれてしまい、、、とよくあるパターンで、それが「青春の彷徨」かと言えば、えらく時代的で大げさなと思わなくもありません。

「幻想の断崖」は小学校の教員の主人公が、夏休みの嵐の夜に上野発の夜行列車で金沢、能登半島へ向かいます。そこで知り合った訳ありの女子大生と高校生の姉妹。

旅から戻ってから話しを聞くと、姉妹は大金持ちの事業家の娘で、父親が愛人を作ったことで母親が自殺し、それを許さない女子高生の妹が登校拒否となってしまったことを知ります。

教師の端くれとということで、その一家というか妹を立ち直らせるために、様々な協力をすることになりますが、特に盛り上がることもなく、不幸中の幸いでハッピーエンドっていう感じ。どうもまとも過ぎて、あと一癖二癖の工夫が足りないような気がします。

「めぐり来る春」では国語の高校教師が公園で知り合った子連れの女性の離婚騒動に巻き込まれていくという話しで、その離婚係争中の旦那の暴力的性格と、女性が経営している飲み屋の客で女性に横恋慕する男がストーカーさながらで、薄気味悪いったらありません。

私の夢にまで出てきてうなされましたので(笑)、たぶんその異常的行動が真に迫っていたのではないかと思っています。

あとがきを読むと、65歳になって初めて書いた小説ということで、なるほど、ベテラン小説家のように、いかにも読者を引きつけるテクニックや緻密なプロットはないものの、素人は素人らしく、素直に淡々と書かれた話しだなって感じは受けました。このまま文庫化もされずに埋もれてしまうのはなにか惜しい気もします。

★☆☆


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