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新書などの書籍の見返し部分には、著者プロフィールが書かれています。私はよく知らない人が書いた新書を買うときはそのプロフィールを先に読むことが多いのですが、その理由は著者の年齢や背景を知っておくことで、なぜそういう考え方をするかなど参考になるからです。

例えばリクルート出身者はリクルート社の育成プランで育ってきた独特のバックグラウンドがあり、また外資系コンサルファーム出身者もそうした独特の感性や考え方があり、恐ろしいほど画一化されています。

そうした中でも、起業して商売気たっぷりの、いかにも意識高い系の人達のプロフィールは見事なまでの自己満足に酔いしれたキラキラしたプロフィールが本人の手により書かれます。

大学を卒業してもう何十年も経っていても、ハーバードやオックスフォード、東京大学や慶応大学出身者は必ずその学歴を入れたがります。

たぶんそうしたブランド大学名は、自分にとっての誇りであり、なにかにつけ自慢したいのでしょう。そんなに長期間にわたって効果?が発揮できる学歴っていいですね(皮肉です)。

ちょっと考えればわかりますが、よほどの大物や世界的に著名な人でなければ、書籍に入れる自己プロフィールは、出版社から求められ、概ねその全部または大部分を自分で書くことになります。下書きを誰か別の人に頼んだとしても、まったく本人の目を通さず、無断でそのまま掲載されるということはあり得ません。

つまりプロフィールには本人の強い意志やメッセージが込められているのです。

そして面白いのは自分が書いているのに関わらず、その文章は第三者視点のようにして書かれていることです。

ブランド大学名、留学先の大学、社会人になって有名な大手企業勤務した経歴、活躍して社内表彰されたことや、何千人も関わっているような大きなプロジェクトで、さも自分が主体的な立場で関わったみたいに書いてあったり、独立後には聞いたこともないようなマイナーな賞の受賞歴や、起業したり経営してきた企業の数々(倒産したり問題を起こした会社は含まず)、など豪華絢爛な妄想プロフィール満載で、その人の感性と自慢したいツボをよく知ることができます。

新書では、大学教授かフリーランサー(零細企業の経営者)、成功した企業経営者が書くことが多く、その場合は、新書を売ること以上に、自分が手掛けるビジネスや研究に興味を持ってもらいたいという強い欲求がプロフィールに散りばめられています。いわゆる新書やそのプロフィールは盛った名刺代わりってことですね。

ちなみに最近、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から、補助金約4億3100万円を不正に受給したとして逮捕された、齊藤元章容疑者(2017年12月23日現在)の著書のプロフィールはこんな感じです。

研究開発系シリアルアントレプレナー。医師(放射線科)・医学博士。1968年、新潟県生まれ。新潟大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科卒業。東京大学医学部附属病院放射線科の2年間の研修期間修了後、大学院入学と同時に学外に医療系法人を設立して研究開発を開始。3年後の1997年に米国シリコンバレーに医療系システムおよび次世代診断装置開発法人を創業。300名の社員を登用して世界の大病院に8000以上ものシステムを納入。2003年には米インテルのアンドリュー・グローブ会長とクレイグ・バレット社長兼CEO(当時)の推薦で、日本人初のComputer World Honors(米国コンピュータ業界栄誉賞)を医療部門で受賞。東日本大震災を機に、海外での研究開発実績と事業経験を日本の復興に活かすために拠点を日本に戻す。これまで研究開発系ベンチャー企業10社を創業し、累計売上額は1000億円を超える。自ら発明して出願した特許は50件を数え、現在はスーパーコンピュータ技術を開発する株式会社PEZY Computing代表取締役社長、株式会社ExaScaler創業者・会長、UltraMemory株式会社創業者・会長を務める。

どうです。もうキラキラ満載してますね。本人がこれを必死に考えて書いているところを想像してみてください。たとえすごくいい人であったとしても、笑えますでしょ?

アメリカ的な感覚で言えば、こうした過去の業績を盛りに盛って書くのが普通とも思えますが、私は昭和の日本人らしく、シンプルで控えめに現状の立場だけが書かれたプロフィールが好きです。

十数年前、何十年も前に卒業した大学や、そこで研修したことなんてどうでもいいじゃない?って思ってしまいますが、さてどうなのでしょう。

多くの新書を出している他の人のプロフィールをちょっとのぞいてみましょう。

齋藤孝
1960(昭和35)年、静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現職。『身体感覚を取り戻す』で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』『雑談力が上がる話し方』などのベストセラーをはじめ著作多数。

高橋源一郎
1951年生まれ。1981年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長篇小説賞優秀作受賞。1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞受賞。2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞受賞。著書に『ニッポンの小説』、『「悪」と戦う』、『恋する原発』他多数。

中川淳一郎
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

成毛眞
1955(昭和30)年北海道生まれ。中央大学卒。自動車部品メーカー等を経て日本マイクロソフト株式会社入社、1991年同社代表取締役社長。2000年に退社後、インスパイア設立。早稲田大学客員教授ほか書評サイト「HONZ」代表を務める。著書に『これが「買い」だ』等。

養老孟司
1937(昭和12)年、神奈川県鎌倉市生まれ。1962年東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し、2017年11月現在東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』『形を読む』『唯脳論』『バカの壁』『養老孟司の大言論I~III』など多数。

ま、常識的にはこれぐらいの量と内容が標準的なものではないでしょうか?

学歴を入れるかどうかは人によって分かれるところです。特に大学教授の場合は入れるケースが多そうです。

でも現役ビジネス界の人やジャーナリスト、作家の場合は、出身大学や課程などどうでもよくて、それよりも過去の著作物を入れた方がマシという感じがします。

いずれにしてもキラキラプロフィールは、自分に自信がないものだから、せめて言葉で盛りに盛ってPRしようとむなしい努力をしているということで、好ましく思わないのです。


【関連リンク】
1093 2016年に読んだベスト書籍
993 2015年に読んだベスト書籍
886 2014年に読んだベスト書籍
784 2013年に読んだベスト書籍
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コンサルタントという職の謎



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蜩ノ記 (祥伝社文庫) 葉室麟

著者の名前は知っていましたが、一見するとキラキラネームなのでお若い作家さんかと思ったら、今年66歳になった団塊世代にかろうじて入るかどうかというベテラン作家さんです。

2011年単行本発刊で、2012年の直木賞において5回目の候補で本作で見事に受賞され、2013年には文庫化されています。

最初虫偏の「蜩」を魚偏の「鯛」と読み違え「たいのき?」って記憶してしまい、それがいつまでも頭の中に残ってしまい困りました。虫偏の「蜩」は「ひぐらし」です。

この作品は2014年公開の同名映画の原作にもなりました。映画の監督は小泉堯史、主演は役所広司で、その他岡田准一、堀北真希、原田美枝子などが出演し、私もテレビ放送時に見ましたが、泣ける映画でした。

江戸時代の武家の話で、家老の筋がどうしたとか、前のお奉行がどうしたこうした、どこぞのお家の養子が大きくなって家督を継いだとか、とにかく家系や家柄がややこしくて、テンポの速い映画ではそのあたりよくわからず、細かなところはこの原作小説を読んで、あーなるほどと理解できたような次第です。

主人公は昔なじみだった藩主の側室と密通したという疑いがかけられ、10年間は蟄居し、藩史の編纂にあたり、10年後に切腹をするという罪を負わされています。

7年が経過し、切腹前に逃亡するのを防ぐため、監視役として城内で刀傷沙汰を起こした武士がその蟄居先へ送り込まれますが、その主人公の人柄や潔さに惚れ込んでしまい、どうして死罪を着せられてしまったのか、救う手立てはないものかと上司に逆らって奔走します。

そこのところは、映画では役所広司と岡田准一が見事に演じていましたね。

大スペクタル映画のように、派手なチャンバラシーンや騎馬の疾走シーンなどはほとんどありませんが、しっとりとした雰囲気は、大人が見て「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」を感じさせられる、原作に忠実にのっとった良い映画でした。

★★★


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ハードラック (講談社文庫) 薬丸 岳

過去に「天使のナイフ」(2005年)、「刑事のまなざし」(2011年)を読み、お気に入りの作家さんのひとりになりつつあるところです。この作品は2011年単行本、2015年に文庫化されています。

少年や若者の残虐な犯罪に詳しい作家さんですが、この長編小説では派遣ぎりで仕事を失った25歳の若者が、再婚してデキのよい異母兄弟がいる母親の元には帰れず、居場所を失い、闇サイトで仲間を募って一発大きなことをしようと思っていたら、逆に利用されて大きな犯罪に巻き込まれていく物語です。

ちょっと都合よく闇サイトで人が集まったり、殺されても不思議ではない状況で、真犯人の汚名を着せられて生かされたりと考えにくい展開ですが、全体的に重苦しい雰囲気が流れていきます。

私の若いときには、社会に出ると正社員以外の働き方はまずなかったのですが、今は簡単に入れるフリーターとかアルバイターと言って非正規の派遣や季節工員など、様々な働き方があります。

そうした働き方はダメとは思いませんが、あくまで一時しのぎであり、それに慣れてしまうとずっとそのままでいいと思い込んでしまうリスクがありそうです。

結果、主人公のように、派遣切りで住まいを失い、安い漫画喫茶で生活するようになり、ますます就職ができなくなっていく悪のスパイラルに陥っていくことになります。

小説では、最初のうちは怠惰でどうしようもない青年が、凶悪犯罪に巻き込まれ、しかも自分が主犯となって指名手配になってしまうという事態になり、人が変わったように、警察の追跡をかわし、様々なヒントから真犯人探しをしていく成長のストーリーで多少は重苦しい話しが和らぎます。

それにしても最後の結末は、ちょっと驚きでした。

★★☆


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

下鴨アンティーク 回転木馬とレモンパイ (集英社オレンジ文庫) 白川紺子

2015年刊の小説(ライトノベル)で、「下鴨アンティーク アリスと紫式部」(2015年)の続編です。

このシリーズはいずれも短編集で、この作品には「ペルセフォネと秘密の花園「杜若少年の逃亡」「亡き乙女のためのパヴァーヌ」「回転木馬とレモンパイ」の4編が収録されています。

登場人物はほぼレギュラーが決まっていて、旧華族の洋館に住む主人公の女子高生、野々宮鹿乃(かの)、その兄で古物商を営む野々宮良鷹、良鷹と学生時代の同級生で同じ家の離れに同居する現在は大学の准教授の八島慧の3人。

祖母が遺した大量の和服など着物のうち、訳ありのものが蔵に収められています。その訳ありというのが、いずれもミステリアスないわくつきの謎があり、それの謎を解くことで元の着物に戻すというワンパターンの繰り返しです。

ワンパターンだから飽きる?

全然そういうことはなく、様々な趣向を凝らして、それぞれがミステリアスな面白い物語に仕上がっています。

女性向けの小説ということらしいですが、男性が読んでも十分に楽しめるお気に入りの小説です。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

下鴨アンティーク 祖母の恋文 (集英社オレンジ文庫) 白川紺子

2016年刊のアンティーク着物シリーズ第3弾で、「金魚が空を飛ぶ頃に」「祖母の恋文」「山滴る」「真夜中のカンパニュラ」の4編が収録されています。

感想は上に書いたのと特に変わりありませんが、レギュラー登場人物の3人の他、アンティークな着物や古物品に絡んで何人かが出てきます。これらの人々にもそれぞれ魅力があっていい感じです。

和服のことについても少しはうんちくが語られますので、それらの雑学にも詳しくなります。

また話しの流れから、主人公の女子高生鹿乃と、離れで同居している兄の友人慧とのロマンスも今後進んでいきそうです。ハーレクインなどロマンティックな小説好きにはこれからの展開が楽しみでしょう。

このシリーズは著者も書きやすいのか、立て続けに4弾、5弾、6弾まで出ています。アイデアが次々とあふれ出ている感じで、結構なことです。

続編は、
下鴨アンティーク 神無月のマイ・フェア・レディ」(2016年)
下鴨アンティーク 雪花の約束」(2016年)
下鴨アンティーク 暁の恋」(2017年)
下鴨アンティーク 白鳥と紫式部」(2017年)
となっています。

引き続き続編も読むか?と聞かれると、ちょっと今はバランスも考えて、他の著者の本をもっと読みたいので、当面はいいかな。

★★☆


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

マンション格差 あなたのマンションは「勝ち組」「負け組」? (講談社現代新書) 榊淳司

著者は「マンションは日本人を幸せにするか」(2017年)、「新築マンションは買ってはいけない!! 」(2016年)、「やってはいけないマンション選び」(2015年)などタイトルだけ変えた?って思えそうな新書を何冊か出版されている55歳の住宅ジャーナリストで、この新書は2016年刊です。

読んだのはこの1冊だけですので、他のマンション本はどうなのか知りませんが、この本だけで言うとさすがに業界に詳しい人だけあって、マンション業界の裏事情や悪しき慣習など、面白く読めました。

私の場合、30年ぐらい前に中古マンションを購入し、5年ほどに現在の一戸建て住宅に移ってきたので、マンション価格がどうなろうと関係ないですが、これからマンションでも買おうかという人は、一度は目を通しておいたほうが良さそうな内容です。

目次(章立て)を書いておくと、

第1章 マンションのブランド格差を考える―最初に格差をつけるのはデベロッパー
第2章 管理組合の財政が格差を拡大させる―大規模修繕工事「割高」「手抜き」の実態
第3章 価格が落ちない中古マンションとは―市場はいかにして「格付け」するのか
第4章 マンションの格差は「9割が立地」―将来性を期待「できる」街と「できない」街
第5章 タワーマンションの「階数ヒエラルキー」―「所得の少ない低層住民」という視線
第6章 管理が未来の価値と格差を創造する―理事会の不正は決して他人事ではない
第7章 マンション「格差」大競争時代への備え―賃貸と分譲を比較検討する
特別附録 デベロッパー大手12社をズバリ診断

実社名で結構辛辣なことも書いてあったりしますので、それなりに面白く、参考になります。

私が中古マンションを買った時(30年ぐらい前)は、時代が違うと言うこともありますが、まったくこの本に書かれていることとは逆だったように思います。

つまり、「マンションの評価は立地(駅近)で決まる」と言うことですが、私は首都圏郊外でありながら、最寄りの駅(私鉄)までバスで15分、徒歩は無理でした。また施工会社も大手ディベロッパーではなく、いわゆる「長谷工プロジェクト」物件だったなど。

それでも入居前には無料で内装をリフォームしてもらって、5年間住みましたが、環境も良く、地震でもほとんど揺れず(震度3ぐらいでも気がつかないほど)にしっかりしていて、バブルもはじけた後でしたが、子供が増えて一軒家に買い換えするときには、買った値段よりもだいぶんと高く売れました。タイミングがラッキーだったんですね。

そういうことを考えると、売り買いするタイミングというのは重要で、いまこうだからというのはあまり重要ではないのかも知れません。高齢化や人口減少と確実にやって来る事実だけで、今後その地域の不動産がどうなるのかっていうのもあまり信用がおけません。

高齢者が増えて、郊外の街も老朽化していくというのは事実でしょうけど、緑が少なく人で溢れている都会には住みたくないというファミリー世帯がまだまだ多いのも事実で、30~50年先ならともかく、巨大な災害に襲われない限り、10年やそこらで街が大きく変わるって事もなさそうです。

★★☆


【関連リンク】
 11月後半の読書 死都日本、天国旅行、湖水に消える、体を壊す10大食品添加物
 11月前半の読書 ブラックボックス、老後に本当はいくら必要か、夢を売る男、ふくわらい
 10月前半の読書 秘められた貌、ウルトラ・ダラー、創造力なき日本、海の見える街
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 7月後半の読書 漂えど沈まず、そして奔流へ 新・病葉流れて、本と私、落日燃ゆ、いっぽん桜
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1178
死都日本 (講談社文庫) 石黒 耀

2002年にこの作品で作家デビューを果たした現役内科医が本業の作家さんで、この著者の作品を読むのはこれが最初です。文庫版は2008年に発刊されています。

医者でありながら小説を書いている人って多いですね。しかもこの著者さんは、専門である医療分野のネタを小説にするのではなく、まったく畑違いの火山や地質、防災、政治などをテーマにしているところが凄いところです。

タイトルからして縁起でもない衝撃的ですが、単にひとつの火山が噴火して、逃げ遅れた近隣住民や取材陣に被害が起きますが、これはそんな軽い話しではなく、霧島連山を中心に九州の南半分が吹っ飛び、成層圏にまで及ぶ噴煙が立ち上り、日本はもちろん北半球の世界の環境に大きな影響を与えてしまうと言う壊滅的な火山災害を描いています。

この作品が出たのが2002年ですから、2011年の東日本大震災前の話ですが、破局的噴火の火砕流やその前に起きる火砕サージという高熱の火山ガスが流れ出て街を襲うシーンが、まるで2011年震災当時の津波が一気に街を飲み込むシーンと瓜二つです。

偶然なのか、それともなにか意図されたのか、阪神淡路大震災の時は村山総理、東日本大震災の時は菅総理と、自民党から総理大臣が出ていなかったごくわずかな期間中に大きな災害が起きています。

この小説でも東日本大震災をまるで予言したかのように、それまで野党だった政党が選挙に勝って与党になったあとすぐに起きる設定です。

その時の首相は、切れ者で、政権を取って以降、様々な火山噴火対策をあらかじめ準備をし、日本国が壊滅的危機になってもそれを乗り越えられる策を練っていきますが、九州の大噴火に続き、東南海地震発生の徴候、さらには富士山の噴火徴候がみられ窮地に立たされていきます。

この本を読むと、日本列島は列島すべてが火山とその噴石で出来上がっていて、いつまたそうした大規模噴火に襲われるかわからないという恐怖を感じます。

何千年、何万年、何百万年という間隔があるものの、いつかはまたきっと列島全体の形を変えてしまうほどの火山活動が活発化することはいつか必ず起きます。

こうした自然大災害が日本を襲う小説としては小松左京氏の「日本沈没」や、高嶋 哲夫氏の「M8(エムエイト) ) 」など災害サスペンス3部作、福井晴敏氏の「平成関東大震災 いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった」など数多く読んできましたが、火山を前面に出してその怖さを詳細に説明してくれたものは少なかったように思います。

日本は地震や台風の備えには割と進んできていますが、総合防災の備えという点では今後火山の噴火対策にも備える必要がありそうです。


★★★


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

天国旅行 (新潮文庫) 三浦しをん

2010年に単行本、 2013年に文庫化された短編集小説です。収録作品は「森の奥」「遺言」「初盆の客」「君は夜」「炎」「星くずドライブ」「SINK」の7編です。

タイトルにあるように、収録された短編はすべて人の死に関連したストーリーとなっています。人生でもっとも大きな出来事と言えばやっぱり死ですから、小説には欠かせないテーマです。

事業に失敗して自殺を図ろうと青木ヶ原樹海へ踏み入れた中年男性が、その森の中でサバイバルに慣れている元自衛隊員の男性と出会う「森の奥」、亡くなった祖母に知られざる過去があったことを初めて知る孫の女性が主人公の「初盆の客」、子供の頃から死者の霊が見えて会話もできる特殊能力をもった男性が恋人の死で、その霊とともに生活する息苦しさを感じていく「星くずドライブ」、一家心中で唯一生き残ってしまった男性の心の闇を描いた「SINK」など。

それなりに楽しめますが、やっぱり短編はその道の達人以外の作品では話しが中途半端になりがちで、いまいち好きにはなれません。病院での待合とか、電車の中とか、気が散る場所で、細切れになる時間でちょっと読むのには適しています。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

湖水に消える (ハヤカワ・ミステリ文庫) ロバート・B・パーカー

2002年刊、文庫版は2005年に発刊された警察署長ジェッシイ・ストーン・シリーズの第4作目になります。この作品は、2006年にトム・セレック主演で映画化されています。

主人公はロスの殺人課の刑事でしたが、酒に溺れて謹慎を喰らい、ボストンにもほど近い東海岸の小さな街の警察署長として流れてきました。

別れた前妻にまだダラダラと未練を残していて、またいつかはよりを戻せると願いつつ、一方では女性関係は派手で、エンタメ要素は満載です。

今回の事件は、管内の湖で殺された若い女性の遺体があがり、その女性のたどってきた過去を調べ、犯人に迫っていくというストーリーです。

このシリーズでは、他のシリーズ「私立探偵スペンサー」や「女性探偵サニー・ランドル」と共通する人物が登場することもあり、スペンサーシリーズを全部読み終えた後ですが、懐かしい名前が出てきて楽しめます。

今回は、スペンサーシリーズに時々登場するギャングの殺し屋ヴィニィ・モリスが登場しています。スペンサーシリーズでは拳銃の腕はナンバーワンとスペンサー自身も評価をしているヴィニィ・モリスですが、この作品の中では「クレー射撃の的を拳銃で撃つ」という伝説の話しが出てきて笑いました。

今回の話しでは主人公自らボストンへ出向くことも多く、スペンサーとどこかで接点がないかとドキドキしましたが、さすがにそれはありませんでした。

★★☆


 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

体を壊す10大食品添加物 (幻冬舎新書) 渡辺雄二

著者は「買ってはいけない」「ヤマザキパンはなぜカビないか」などの著書がある食品や環境にテーマを置いたジャーナリストです。

その「買ってはいけない」は、スポンサーや広告主に配慮して物言えぬメディアに代わり言いたい放題で、様々な反響を呼び、その本に対する批判本なども多く出てきましたから、それらの著作が食品添加物などに一石を投じる効果は大いにあったようです。

帯の「がんになりたくなければ、これだけは食べるな!」は刺激的でオーバーかなと思いましたが、ついそれに誘われて購入して読んでみました。

多くの添加剤や防かび剤、抗菌剤、残留農薬などから発がん性があるとされたものやその疑いが濃いものを特定し、それらを食べるなと書いています。中には具体的な製品名なども書いてありますので結構衝撃的です。

但しこの本の発刊日は2013年ですので、その後改善されたりしている製品もあるかも知れませんので、製品名と言うよりは内容物をいちいち記憶しそれを確かめないとなりませんから、そのあたりは面倒くさいです。

さてタイトルに挙がっている危険な10大食品添加物というのは、

1)亜硫酸Na(漂白、酸化防止剤)・・・おにぎりの明太子、ハム入りサンドイッチ等
2)カラメル色素(メチルイミダゾール)・・・コンビニ弁当やラーメン、ジュースなど多数
3)合成甘味料(アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK)
4)パン生地改良剤・臭素酸カリウム・・・ヤマザキランチパック、食パン芳醇、超芳醇など
5)合成着色料・タール色素・・・真っ赤な福神漬けや紅ショウガ、菓子パン、ジュースなど
6)防かび剤・OPPとTBZ・・・輸入オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど
7)殺菌料・次亜塩素酸ナトリウム・・・(一部の店舗で)刺身、魚介類、食肉等の殺菌
8)酸化防止剤・亜硫酸塩・・・ワイン、甘納豆、コンビニ弁当
9)合成保存料・安息酸Na・・・栄養ドリンク
10)合成甘味料・サッカリンNa・・・パックにぎり寿司、歯磨き粉

これだけ並べると、食べられるものがないじゃん!って思いますが、これらを摂取するのが常態化しなければ仕方がないでしょうと言う感じです。但し小さな子供や、妊婦さんは特に注意する必要がありそうです。

当然のことながら、コンビニやスーパーなどで手軽に安く買えるお弁当や加工食品、価格の安いお惣菜や安価で提供されるレストランでの肉や魚といったものにはそれなりの理由がありそうです。

もちろんこの本の内容については様々な異論や反論もありますから、闇雲に神経質になる必要はありませんが、これだけ化学物質が世の中に蔓延している中、業界利益の都合とか、外国の圧力で認められたような危険な添加物などもあり、それらだけでも注意をしていこうという姿勢は間違っていないのではないでしょうか。

一応、この著者の本に対する反論、討論本も紹介しておきます。

「買ってはいけない」は買ってはいけない
「買ってはいけない」大論争―ほめる人、けなす人
「買ってはいけない」論争 解決篇

★★☆


【関連リンク】
 11月前半の読書 ブラックボックス、老後に本当はいくら必要か、夢を売る男、ふくわらい
 10月前半の読書 秘められた貌、ウルトラ・ダラー、創造力なき日本、海の見える街
 9月後半の読書 象の墓場、ナイト&シャドウ、美しい家、お別れの音、偽悪のすすめ
 9月前半の読書 危険なささやき、会社の品格、男の勘ちがい、安土城の幽霊
 8月後半の読書 白雪姫殺人事件、里山資本主義、デセプション・ポイント、漂流者たち
 8月前半の読書 転落の街、となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術、長女たち、殺戮にいたる病
 7月後半の読書 漂えど沈まず、そして奔流へ 新・病葉流れて、本と私、落日燃ゆ、いっぽん桜
 7月前半の読書 思考の整理学、白砂、ちょいな人々、静かな黄昏の国、召集令状




1174
ブラックボックス (講談社文庫)(上)(下) マイクル・コナリー

2012年に米国で発刊され、翻訳版文庫は2017年に出た、翻訳版としてはハリー・ボッシュシリーズの第16作目の邦訳最新刊です。ちなみに米国では現在シリーズ20作目までが刊行済みです。

タイトルのブラックボックスとは、航空機に搭載されていて事故が起きた場合にその原因となる情報が詰まっているブラックボックに例え、事件の捜査で不明なことが一気に解明できるブラックボックスのような存在がどこかにあるということを示唆しています。

すでに定年延長契約期間に入っているハリー・ボッシュは未解決事件捜査担当のままで、今回は1992年に起きたロサンゼルス暴動の際、デンマークから取材に来ていた女性記者がLA管内で何者かに射殺されていた事件についてスポットをあてます。

1992年は「ナイトホークス」で、ハリー・ボッシュシリーズが始まった年でもあり、当時ボッシュはLA警察の殺人課刑事で、まだ暴動が冷めない中、治安維持のため派遣されていた州兵に守られて、女性記者が殺害された現場へ行き、最初に現場検証をおこなっていましたが、その後の捜査は別の刑事に移っていました。

1992年のロサンゼルス暴動は、黒人のロドニー・キングがスピード違反で捕まった際、白人警官に度を超す暴行がなされ、その行為がビデオに撮られ、何度も繰り返して放映されました。ところが法廷では暴行を加えた警官が無罪となり、黒人達が怒りの声を上げ、やがて焼き討ちや強盗、殺人などへと発展していきます。

数少ない20年前の事件の証拠や関係者をたどり、何十年かぶりに表に現れた拳銃から、やがては1990年の湾岸戦争にまでたどり着きます。そして殺されたデンマークの女性記者もその湾岸戦争を取材しています。

しかし警察署の中では、白人女性の未解決事件だけが重点的に捜査されているという噂が出ては困ると配慮があり、それを捜査するボッシュに圧力がかかります。

その他、多感な年頃の娘や、恋人と強姦罪で刑務所にいるその恋人の息子など、プライベートな諸々も絡み合いながら、60過ぎのボッシュが精力的に動き回り、最後には死の一歩手前まで追い詰められていきます。

それだけにわかりやすい勧善懲悪ドラマですが、アメリカの暗部をこれでもかと引きずり出すスタイルはアメリカ人にとってはあまり心地よいものではないだろうなと心配してしまいます。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

老後に本当はいくら必要か (祥伝社新書192) 津田倫男

著者は私と同年代の方で国立大学を卒業後にアメリカの大学でMBAを取得し、外資系企業を渡り歩き、その後独立して企業アドバイザーというよくわからない意味不明な仕事をされている方で、「意識高い系」の先駆者とも言える方です。

この著書は2009年に書かれたもので、ちょうど民主党政権が与党となって、世の中これから大きく変わるぞーと意味もなく、リーマンショックが世界を飲み込もうとしている中、すがるような思いで新政権に期待をしていた時代です。

なので社会保障や医療制度、雇用環境など当時から変わった話しなどもありますが、言わんとすることは今でも十分い通用するノウハウが書かれていて参考になります。

特に、ファイナンシャルや証券について、プロフェッショナルな会社員が勧めるものには素人は食いつかないことや、ハイリスク・ハイリターンではなく、ハイリスク・ローリターンな投資案件なども実際にあるということを、わかりやすく説明し書かれています。

つまり、通常のサラリーマンなら、現在なら63~65歳から年金が支給されるので、定年退職後からそれまで間食いつなげるだけのものがあれば、まずなんとかなるものだと。

次に夫婦で、平均寿命を考えて、年金だけでは不足する分をできるだけ早くから貯金するか、年収から考えて生活レベルを落とすか、あるいは持ち家があるならそれを担保にして借金をするなど、方法はいくらでもあると。

勧められるがまま、下手に投資をして、せっかくの貯金や退職金を減らしてしまわないよう、どういった投資がいいか、分散方法としてどういうのがいいかなど。

いつまでもお金のことで老後を不安がっても仕方ないぞ。せっかくだからお金のことは忘れて楽しい老後を送ろうといったところが著者の言いたいところでしょうか。

今の高齢者が老後の不安を感じるのは、いつ年金が減らされたり、医療費負担が増やされたり、消費税が拡大されたりするか?というのがまったく未知数で、真っ暗でしかも霧深い険しい道を手すりも道しるべもなく歩かされているようなものだからです。

政治家や学者が「年金財政破綻」「年代格差」「医療費の急増」などと高齢者をおびえさせる話しをしている限り、高齢者のタンス預金からお金が出てくることはなく、せいぜいオレオレ詐欺業界を潤すだけでしょう。

ま、この問題は、一言、いや1冊の新書ぐらいでは結論が出るわけもなく、毎年のようにこのテーマで新しい新書が出てきていますね。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

夢を売る男 (幻冬舎文庫) 百田尚樹

2013年に単行本、2015年に文庫化された長編小説で、出版業界と自分の作品を出版したいと思う人達を皮肉ったブラックコメディ小説です。

なにかと作品以外で話題が多い著者ですが、そのせいで、読む前から毛嫌いされてしまうリスクがあり、お互いに不幸なことです。

それにしても出版業界というのは再販制度や取次店制度などに守られていて、なかなか一般人にとっては馴染みが薄く理解しがたい業界ですが、そうし
た内幕を容赦なく暴露しています。

出版業界は出版不況のまっただ中で、現在は過去の資産を食い潰していく事態に陥っていますが、確かに今の若者にはお金を出して本を買い、苦労しながら面倒な文字を追わなくても、テレビもあればネットもあり、いつでもどこでもスマホさえあればみたいものが見られ、動画であろうと調べ物であろうとなんだってできてしまいます。

そりゃ、若者が読書離れしても不思議ではありません。

それに今まで熱心な読者層を占めていた団塊世代以上の人達は、老いて年々その数は少なくなっていき、また仕事からも離れ、通勤中や出張中に本を読む機会も減っていきますから、新しい読者が増えない限り書籍の売り上げは下がり続けます。

一方ではこれほど出版不況の中でも、自分が書いた作品を世に問いたいとか、人に著書があることを自慢したいと願う人も後を絶たず、それらをうまく結びつけてみなハッピーになろう!というのが、この小説の主人公です。

主人公は元名門出版社で数多くの名作や著名作家の作品を世に出してきましたが、年々下降していく書籍売上に早く見切りを付けて、それまでの経験を生かし、口八丁手八丁で自分でお金を出してでも出版したいと思う人達に、その夢を売っていきます。このお手並みが見事言うか面白い。

新聞を読んでいると「自費出版」の広告がよく出ていますが、この小説では、おとりの「新人文学賞」に応募があった中から、無料で作品が出版される大賞に選ばれなかった人達に対して、出版社と折半で出版しないかと持ちかけるわけですが、実は出版にかかる経費は個人が負担する金額の何分の一で済ませるという一見すると阿漕な商売です。

相手の懐次第で、100万円~200万円を支払ってもらい(原価は30~40万円)、1千部を刷り、そのうちの何冊かはちゃんと書店に配本して、著者に対して「もしかするとベストセラーになって増刷に次ぐ増刷になるかも~」という夢を与える商売と考えると、確かにそれもアリかなと。

そうした出版社が生き残りを賭けた様々な仕掛けをこれからもやってくるぞという、業界内幕暴露小説でした。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ふくわらい (朝日文庫) 西加奈子

2012年に単行本、2015年に文庫化されたなんとも不思議な小説です。

主人公は冒険作家でほとんど家にはいなかった父親と家政婦に育てられた女性で、早くに母親を亡くし、父親も一緒に旅をしていた南米でワニに襲われて亡くなり、親戚の家で育てられましたが、現在は出版社の作家担当として勤務し、自立した生活を送っています。

主人公は小さな頃から無表情、無感動な子供でしたが、ふくわらいで初めて大笑いし、その後もふくわらいの遊びを続けるようになります。

会話の中でゲシュタルト崩壊という言葉がよく出てきますが、ひとつの全体のまとまりに集中すると、それぞれのパーツひとつひとつが不思議と理解できなくなる現象のこと言いますが、ふくわらいにおいても、人の顔の全体がまずあって、その顔のパーツそれぞれが単独で動いてしまうとそのパーツが意味不明になってしまうという暗喩が秘められているように思います。

著者の小説は「通天閣」と「きいろいゾウ」と荒削りな初期の作品を読んでいましたが、16作目となるこの作品はいよいよ売れっ子作家として、また余裕が出てきたというかベテランの域に入りつつある作品で、とてもよいデキです。

そしてこの作品の2年後、2014年には「サラバ!」で、2回目のノミネートながら見事、直木賞を受賞しますので、その創作力、文章力はここ数年で格段にその才能が伸びてきているのでしょう。

★★★


【関連リンク】
 10月後半の読書 黒書院の六兵衛、夢をかなえるゾウ、深川黄表紙掛取り帖、悪意のクイーン
 10月前半の読書 秘められた貌、ウルトラ・ダラー、創造力なき日本、海の見える街
 9月後半の読書 象の墓場、ナイト&シャドウ、美しい家、お別れの音、偽悪のすすめ
 9月前半の読書 危険なささやき、会社の品格、男の勘ちがい、安土城の幽霊
 8月後半の読書 白雪姫殺人事件、里山資本主義、デセプション・ポイント、漂流者たち
 8月前半の読書 転落の街、となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術、長女たち、殺戮にいたる病
 7月後半の読書 漂えど沈まず、そして奔流へ 新・病葉流れて、本と私、落日燃ゆ、いっぽん桜
 7月前半の読書 思考の整理学、白砂、ちょいな人々、静かな黄昏の国、召集令状




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1170
黒書院の六兵衛 (文春文庫)(上)(下) 浅田次郎

2012年頃、日本経済新聞に連載されていて、その後2013年に単行本、2017年に文庫化された時代劇長編小説です。

あらすじは、江戸幕府が終わり、新しい明治政府に江戸城を引き渡す段になったところ、どうしても江戸城から動かない武士がいて、なんとか円満に新政府に引き渡したい勝海舟など旧幕臣と、けしからんという新政府側でもめます。

その問題となった人物は不可解で、金で旗本の地位を買ったとされる一方、勤務はいたって真面目で堕落し腐りきっていた江戸末期の多くの武士達とは違うなにか本物の武士の魂をもっています。

そうした一本筋が通った謎多きラストサムライと、江戸から東京へと移り変わる混乱した世相を面白おかしく仕立てたもので、実際に活躍した歴史の人物が多く登場して楽しめます。

但し、江戸城の中や、しきたりなど、なかなか頭の中でイメージがしにくく、読んでいてもあまりワクワク感がなく、退屈この上なく、途中で断念しそうになりました。著者の作品はいつも一気に読み進められるのに、これは珍しいパターンです。

新聞連載小説と言うことで、一気に読むのではなく、かみしめながらじっくりと何ヶ月もかけて読むとまた違うのかも知れませんが、この作品はお得意の泣かせの場面もなく、ちょっと著者の作品らしくないなって感じです。

★☆☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

夢をかなえるゾウ 水野敬也

200万部を超えるベストセラーになった著者の三作目の小説というか、ライトノベルというか、人生の指南書というか、ビジネス本というか、よくわからないジャンルの本で、2007年に発刊されています。

またこの作品を原作として小栗旬主演でテレビドラマや、アニメ化(声優に草なぎ剛や笑福亭鶴瓶)もされていますので、知っている人は多いのではないでしょうか?

ヒットすると続編が出てくるのは世の常で、2012年に「夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神」、2014年に「夢をかなえるゾウ3 ブラックガネーシャの教え」が刊行されています。

内容は、しがないサラリーマンの若い独身男性がインド旅行に行った時、買ってきた置物(ガネーシャというヒンドゥー教の神)に乗り移った神様とのやりとりがメインで、「お金持ちになりたい」「今までとは違う自分になりたい」という男性の願いをかなえるため、なぜか関西弁あれこれ指示を出していきます。

その指示を正当化するため、過去の偉人や成功者、大金持ちの言葉や行動様式を引用することが多く、その点はいかにも軽い新書のノリがあります。

ま、そういう意味では、新書やビジネス書によくありそうな「こうすれば年収3000万円!」とか「あなたの人生が劇的に変わる!」とか「金持ち父さん、貧乏父さん」という本と変わりなさそうですが、それがアニメを見ているように二人のコミカルなやりとりを通じて面白くすっと入ってくるような感じで書かれているのが特徴的です。

読みやすい本で読書慣れしている人なら1~2日で軽く読み終えてしまうでしょうけど、活字離れした若い人にはアニメや映像、そしてオーディオブックまで準備されているので、それなりに幅広い需要があるのだと思われます。

でも結局は読んだだけでは、金持ちにもなれないし、自分も変われません。成功するには継続と行動力であることをもっと伝えるべきでしょうけど、なにかを50年間継続したからといって、自分が思い描く結果になるわけでもなく、結局は面倒なことでもなんでも進んでやる、その人のやる気次第なのかな。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

深川黄表紙掛取り帖 (講談社文庫) 山本一力

2002年に単行本、2005年に文庫化された著者お得意の江戸時代の庶民を描く時代劇小説の連作短編集です。

江戸の裏社会で恨みを晴らすため暗殺を手掛ける必殺シリーズはバイオレンス時代劇ですが、こちらも裏家業には違いないですが、殺しなどは一切なく、アイデアと知恵で阿漕な金持ちを懲らしめたり、困っている商売人を救う手立てを考えたりする温厚な裏家業集団です。

その主役を張るのは、それぞれに商売をしている4人の若者で、うち一人は男装の女性というちょっと魅力的なメンバーです。

時は生類憐れみの令が出された頃ですので、第5代将軍徳川綱吉の貞享から元禄時代と言ったところです。

この著者の描く江戸庶民の図は、直木賞に輝いた「あかね空」など、まるで実際に見てきたかのように生き生きと細かく描写されています。

緻密な時代考証をおこなえば、違っている点などもあるのでしょうけど、そうした細かなことを言わなければ今から320年前にタイムスリップができて楽しめます。

★★☆


  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟


悪意のクイーン (徳間文庫) 井上 剛

京大卒で二足のわらじを履き、主としてSF小説を発表してきた作家さんで、2014年に発刊されたこの4作目の小説はSFではなく、いわゆる後味の悪い女性同士の憎しみのミステリー小説です。

ママ友の輪の中で、ひとり浮いてしまっている恵まれた環境にいる若妻が主人公です。この若妻とは別で、ランクのが高い女学校の中学生ももうひとりの主人公です。

このふたりの女性の人生が狂い始め、憎しみや絶望が沸き起こり、そして最後にはもう一名の女性が加わって複雑に絡み合っていくという流れです。

ま、女性の恨み辛み、極度の憎しみを男性が描くとこういう事になるのでしょうけど、それにしてもやりすぎって思います。

正直にこれを読んで共感できたり、面白かったという人はほとんどいないでしょう。

ストーリー的にも同時に二つ(二人)の話しが同時に進行する、ありふれたパターンで、特に秀逸と思えるところがありません。

自殺や、飲酒運転による交通事故死、不登校、家庭崩壊、子育てヒステリー、売春、殺人とミステリー小説では定番とも言えるこれらを散らばめただけという感じもします。

才能ある作家さんなのでしょうから、もっと深いものを期待したいところです。

★☆☆



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 6月前半の読書 本日は、お日柄もよく、巨人たちの星、ぼくらの民主主義なんだぜ、戦艦大和
 5月後半の読書 バランスが肝心、獄窓記、十字架、碇星、ようこそ、わが家へ
 5月前半の読書 他人を見下す若者たち、八月の六日間、氷の華、愛と名誉のために、顔に降りかかる雨
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