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空白を満たしなさい(講談社文庫)(上)(下) 平野啓一郎
2012年に単行本、2015年に文庫化された長編小説です。著者の作品は2011年に単行本で「ドーン」を読んでいます。それ以来なんと9年ぶりです。
2011年3月後半の読書(ドーン)
この小説はSFというか、いやちょっと違うか、死んだ人間が次々と生き返るという小説には良くある「IF物語」のようです。映画にもなった梶尾真治著の「黄泉がえり」をチラッと思い出しました。
著者独特の発想で、対人関係ごとにそれぞれの人格が存在するという「分人主義」を絡めた、大枠ではそのシリーズ作品のひとつだそうです。
生き返る理由や原因は特に明示されてなく、ご都合的ではありますが、結婚して子供を授かり、マイホームも購入したばかりで夫婦仲も良好、仕事はちょっとつまずいたけれど、異動先では新規事業で大成功を収めつつある時に、主人公の男性は会社の屋上から突然謎の飛び降り自殺をしたということになっています。
そしてその3年後に主人公はフラッと自宅へ帰ってきますが、本人にはその3年間の記憶はなく、しかも「幸福の絶頂の中で、自分が自殺などするわけはない」と真相を調べ始めます。
特にその自殺の原因(本人は行動を注意されて逆恨みしている警備員に突き落とされたと主張)追求の行動がこの小説で重要なところと思わないけど、その真相探しが長くてちょっと主題がよくわからなくなってしまっています。ページを増やす理由でもあったのかな。
死者が生き返る現象が、世界中で認められるようになり、そうした事が想定されていない様々な法律や制度に問題が起き、そして差別などが起き始めます。
果たして自殺の真相は?自殺した原因で家族や両親のあいだに大きな亀裂が入ってしまったその修復は?生き返った人達はその後どうなるのか?などは読んでからのお楽しみということで。
う~ん、上下巻の長い小説ですが、あまり変化や抑揚がない、淡々とした流れで、ちょっと退屈な感じがしました。哲学的ともいえますので、読んでいて眠たくなるのは仕方がないのかも知れません。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ブラック オア ホワイト (新潮文庫) 浅田次郎
2013年に週刊新潮で連載され、2015年に単行本、2017年に文庫化された、長編小説です。
西洋の人種問題?ぐらいに思って、内容はまったく知らないまま読み始めましたが、全然違いました。なんと、このタイトルで、夢の話しです。
60過ぎた元エリート商社マンだった裕福な男性が、亡くなった学生時代の友人のお通夜で久しぶりに会った同級生に語る夢の話しですが、その不思議な夢を見た場所が、総合商社員らしくスイス、パラオ、インド、中国、日本(京都)で、そこに白い枕と黒い枕が登場してきます。
白い枕で寝ると、ハッピーな夢に、黒い枕で寝ると不幸な夢をみることになり、夢を見ているときは、それは夢だと言うことがわかっています。
いずれの夢にも、満州鉄道の理事を務め、戦後は総合商社に入社した祖父や、誰かわからない謎の恋人の女性が出てきます。
世界中で活躍する商社員としての仕事の他は、そうした夢の話しが淡々と続くだけの話しですが、なにか仕事を引退した後、昔の輝いていた頃を懐かしんで、誰かに聞いてもらいたいだけ?とも思えて、その真意がイマイチよくわかりませんでした。
★☆☆
◇著者別読書感想(浅田次郎)
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人生を「半分」降りる―哲学的生き方のすすめ (ちくま文庫) 中島義道
1997年に初版が出た後、新潮と筑摩から文庫版が出ましたが私が購入したのは2008年刊の筑摩書房版文庫です。これが書かれたのはまだ20世紀の1996年頃で、当時は電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科教授という肩書きでした(2009年に退任)。
サブタイトルにあるように、哲学の考えを元にした中高年以降の生き方について著者の考え、過去の哲学者などが残した言葉などを紹介した新書っぽい内容の文庫です。
したがって、本文にもありますが、この本の想定対象年齢は40代から50代前半ぐらいで、もうガツガツと野心を持って出世競争をしたくない中高年者という感じで、すでにそこから大きく超えてしまった私にはちょっと遅かった?とも思いますが、ようやく手に入れたので、しっかり読みました。
著者の書籍は「人生に生きる価値はない」(2009年)、「「人間嫌い」のルール」(2007年)、「私の嫌いな10の人びと」(2006年)、「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?」(2000年)、「<対話>のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの」(1997年)の5作を読んできましたが、本書が一番著者の専門の哲学に寄った作品です。
2020年3月後半の読書と感想、書評(人生に生きる価値はない)
2015年3月後半の読書と感想、書評(「人間嫌い」のルール)
2014年8月後半の読書と感想、書評(私の嫌いな10の言葉)
内容は、、、、、えぇ、哲学的というか、哲学です。
哲学の本の感想を簡潔に書けと?そ、それは、丁重にお断りしますデス。
著者の専門でもあるカントはもちろん、セネカ、スピノザ、ルソー、ヴァレリー、陶淵明、永井荷風、兼好法師など多くの先達が残した文章や生き方から「半隠遁生活のススメ」を引用しています。
閑職に左遷されてガックリしている方、ライバルに先を越され投げやりになっている人、そしてちょっと変わった知的好奇心を満たしたい方にはうってつけの本です。
★★☆
◇著者別読書感想(中島義道)
【関連リンク】
8月後半の読書 螺旋の手術室、中高年シングルが日本を動かす、スケアクロウ、さよならの手口
8月前半の読書 スロウハイツの神様 、幕末下級武士のリストラ戦記、降霊会の夜
7月後半の読書 郵便配達は二度ベルを鳴らす、衆愚の果て、日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実 吉田裕、奇跡の人
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螺旋の手術室 (新潮文庫) 知念実希人
2013年に「ブラッドライン」というタイトルで単行本が発刊され、2017年に文庫化されたときにタイトルが変更されました。
著者の作品は今年4月に「仮面病棟」を読んでいて、これが2作品目です。
2020年4月後半の読書と感想、書評「仮面病棟」
著者は現役医師ということで、医療サスペンス小説が多く、この作品も大学病院で手術中の医療事故と大学の教授選挙と関係している?という白い巨塔の中でのドロドロとした人間関係が描かれています。
前の「仮面病棟」でもそうでしたが、「一番怪しくない人物が犯人」というミステリーの鉄則はこの著者さんには強烈に強く生かされていて、終盤の謎解きで「おぉ、そういうことか」と感嘆します。現実的ではあり得なさそうですが、そうした読者にアッと言わせるストーリー構成はお見事です。
個人的には、こうした現役医師が書いたシリアスな医療ミステリーは、渡辺淳一氏、帚木蓬生氏、久坂部羊氏、海堂尊氏などの小説を数多く読んできましたが、その中では夏川草介氏の「神様のカルテ」のような、ミステリーではない、ほのぼのとする小説が好きです。
余談ですが、その「神様のカルテ」シリーズは、最近出てないな~と勝手に思っていたら、「神様のカルテ0」(2015年)、「新章 神様のカルテ」(2019年)と出ているのですね。買ってこなくっちゃ。
★★☆
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中高年シングルが日本を動かす 人口激減社会の消費と行動 (朝日新書) 三浦展
2015年~2017年の各種統計調査から描き出した日本の人口構成や消費傾向、将来推定などを分析したことをアナリストがわかりやすく解説した2017年に発刊された新書です。
タイトルの「中高年シングル・・」はちょっと釣りタイトルっぽい感じですが、晩婚、未婚の人が増えていることと、離別・死別を含めて、今後もさらにシングル世帯が増えていくことで、ライフスタイルやそれにともなう経済が従来の形から変わってきたということです。
ただしこれらの調査は、過去のものであって、必ずしも将来を見通しているわけではないということ。当たり前ですが。
人口構成などはそう短期間で変化することはないものの、購買意欲や傾向は、今回のコロナ禍でよくわかる通り、大きな災害や流行、外交問題などが起きれば短期間でガラリと変わってしまいます。
さらに今後、年金の減額や、医療費負担の増減、定年延長などの雇用体制の変更、外国人労働者の流入など、様々な変化に対して、人がどう動くのかという点はまだ十分に明らかではありません。
そして、制度が変わったからと言って、やり直しがきく若い人ならばともかく、中高年者にできる対策というのは極めて限定的です。
それゆえにみな老後の心配が拭えず、高齢者はますます貯蓄に励み、資産の年代格差が広がっていく最大の要因なのだろうなぁって思います。
ちょっとしつこいな~と思うのは、某大手広告代理店(H報堂と思われる)の調査報告で、「高年収女性は結婚できない」という間違った決めつけを、何度も何度も繰り返して否定し、それを発表したアナリストをとことんバカにしていること。
この大手広告代理店にはなにか因縁があったのでしょうか、そこまで何度(4~5カ所で繰り返している)もグチグチ書かないで、ひとこと「誤りだ」だけでいいです。個人的な恨みは読者は関係ないので。
★★☆
◇著者別読書感想(三浦展)
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スケアクロウ(上)(下) (講談社文庫) マイクル・コナリー
この著者の作品では刑事 「ハリー・ボッシュシリーズ」や、刑事弁護士「ミッキー・ハラーシリーズ」が有名ですが、この作品の主人公は過去に「ザ・ポエット」(1996年)で主人公だった新聞記者ジャック・マカヴォイが主人公の犯罪ミステリー小説です。
また他のシリーズでも時々登場するFBI捜査官レイチェル・ウォリングが準主役として登場します。
原題は「The Scarecrow」で、初出は2009年、翻訳版文庫は2013年に発刊されています。
ストーリーは、ひとことで言うと最新のデータセンターを運営する会社の管理者と、殺人事件でえん罪事件を調べる新聞記者の対決という構図です。
コナリーの犯罪小説は、悪役がいつも徹底していて、頭が良く、過去の犯罪歴はなく、しかし極めて凶悪という印象です。
この小説でも、MIT出身の天才的な頭脳を持ち、伸び盛りの企業で役員を務めながら、子供の頃のトラウマを抑えきれずに、完全犯罪に近い凶悪犯罪を繰り返すというパターンです。
上記のハリー・ボッシュ自身も子供の頃のトラウマをずっと抱えてきましたし、アメリカの闇というか、そういうパターンが多くちょっとワンパターン化しているかなという印象です。
タイトルは、企業の重要データを保管するデータセンターを農場と例え、果実=データを荒らしにやってくる害鳥≒ハッカーから守るスケアクロウ(かかし)が、データセンターの最高技術責任者の役目という意味です。
実はそのスケアクロウ、もうひとつの意味が隠されているのですけど、それは読んでからのお楽しみということで。
★★☆
◇著者別読書感想(マイクル・コナリー)
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さよならの手口 (文春文庫) 若竹七海
初めて読む作家さんの推理小説ですが、あとで調べてみてわかったのが、以前NHKで放送されたドラマ「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」の原作だということ。
ドラマはチラッと見ただけですが、小説を読んでイメージした主人公とかなり違っているな~という感じです。
というのもドラマの主人公役のシシド・カフカは、ハーフで帰国子女で歌手でドラマー、モデルもこなす身長175cmと大柄でスマート。
一方の小説では体型とかは出てきませんが、色気も男っ気もなく、貧乏なので古いアパートをリフォームしたシェアハウスでフリーター生活をしていて、仕事中に古い家の押し入れの床を踏み抜いて下へ落ち、足から上に引き上げてもらうおっちょこちょいな40歳を過ぎているおばさんというイメージ。ね、落差あるでしょ。
著者は1991年に作家デビューし、数多くの推理小説を出していますが、大きな賞とはあまり縁がなく(2013年日本推理作家協会賞 短編部門受賞)、今まで書店でもあまり見かけませんでした。
評論家にはいまいちうけなさそうですが、ミステリーが好きな人は、中毒になってしまいそうな軽めで、コミカルで読みやすいストーリーです。ただ登場人物が多く、どういう人だったっけと覚えるのが結構大変でもあります。
ストーリーは、元探偵の仕事をしていましたが、勤務先が廃業したため、探偵はやめて古書店のバイトをしている中、怪我をしたことから入院し、そこで知り合った元大女優の老婆から、20年前に家出した娘を探して欲しいと依頼を受けます。
しかしそこには、不可解なことが満載で、病み上がりのまま、その謎にいどんでいくわけですが、その本題の謎と並行して、別の問題も持ち上がってきたりドタバタが激しい感じ。
でもよくできたミステリー小説で、私もファンになりそうです。
★★★
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安藤優一郞著の「幕末下級武士のリストラ戦記」を読んでいて思ったことですが、幕末という時代においてもまだ時計というものは国内では一般的ではなく、お城で太鼓を叩いておおよその時刻を知らせたというようなことが書かれています。
この書籍に出てくる下級武士は、大政奉還がされるまでは今で言うところのVIPの護衛官、または江戸城(現在の皇居)付の警察官という位置づけで、今で言えば公務員、もっと言えばその他大勢のサラリーマンです。
サラリーマン生活を40年経験した私からすると、後半の10年ぐらいを除いて、目覚まし時計がないと決まった時間に起きることができませんでした。
後半の10年ぐらいはさすがに体内時計が身体に染みついているのと、年をとるとそれほど睡眠時間が必要でなくなることから、目覚まし時計が鳴る前に目を覚ますことができるようになりました。
そうした、下級武士=サラリーマンが、ほぼ毎日城へ出仕するわけですが、その頃の時間の感覚というのは上記のお城の太鼓やお寺の鐘以外にどのように判断をしていたのか疑問に思いました。
例えば9時にお城に到着するには、朝7時に起きて、朝食を食べて、身なりを整え、8時になれば御徒町の家を出て、30分歩いてお城へ通勤するのが日課だとしても、時計がないので、7時起床とか、8時に家を出るとかは毎日なにを基準として判断していたのか不思議です。
現代と同様の置き時計や掛け時計が日本で製造されるようになったのは、明治時代中期1880年代のことです。
写真出典:Wikipedia |
その和時計ですが、動力にはゼンマイや錘を使い、夏と冬とで昼と夜の長さが違うので、1年を24に分ける二十四節気ごとに調整する必要がある結構面倒な代物でもあります。
世界を見るとヨーロッパ、特にスイス、イギリス、フランスでは、18世紀(1700年代)頃から貴族などが中心ですが、様々な機械式時計が作られ、ジュネーブには時計職人が多く集まり産業として機能していました。
我々世代には、時計と言えばスイスを追い抜いた日本製が一番正確でしかも安い!というイメージがありましたが、日本が時計を製造し始めたのはかなり後のことです。
江戸時代の「時の鐘」は上記に書いたとおり、お城の鐘や太鼓、お寺の鐘、そして町内の鐘(火事の時などに鳴らす半鐘でしょうか)ということだったようですが、その鐘を鳴らす時刻は、江戸城など和時計がある場合はともかく、お線香が燃え尽きるタイミングなどでおおよその時間を計っていたと言うことですから、結構いいかげんなものです。
そのようないい加減というか、かなり幅のある時間が当たり前の世の中だと、現在のように「遅刻した!」とか「約束の時間を守れ!」という状況はなかったのでしょう。
そういうまったりと時間が流れていく時代も良いですね。
そう言えばアフリカの国の話しだったと思いますが、ガイドだったか運転手だったかが、「待ち合わせの時間から2~3時間遅れてやってくることはごく普通」「約束した時間に遅れてもなにも悪びれたところがない」という話しをテレビで見た記憶があります。江戸時代以前の庶民や、サラリーマンの武士の生活もそういう感覚だったのかも知れません。
日本人は、明治以降、努力して時計産業が隆興を極めたせいで、なにかにつけて時間の管理にうるさくなってしまったのかも。
私も新入社員時代に先輩からキツく指導され、時間にはうるさい方で、部下との待ち合わせで5分でも遅れてきたら、キツく叱っていた気がします。気持ちや仕事に余裕がなかったのでしょう。
リタイアしたあとは、決まった時間になになにをしなくちゃいけないってことがないので、時間の感覚がなくなってきました。
その気持ちよさったら、今では上記のアフリカ人ガイドが約束の時間を守らないという考え方に熱烈賛同します。
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1236 新しい元号はなにに決まる?
832 いま腕時計の需要はどうなっているのか
408 TAGがつかないHeuerが宝物
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スロウハイツの神様(講談社文庫)(上)(下) 辻村深月
著者の小説は以前短編集の「ツナグ」(2010年刊)を読んでいます。この2007年刊(文庫版は2010年刊)の長編小説が2作品目です。
2016年1月後半の読書と感想、書評「ツナグ」
読んでみてすぐに思ったのは、これは映画化するのに向いた作品で、既にあるなら見てみたいと思いましたが、残念ながら制作はされていません。どうしてかな?
ストーリーは、東京郊外にあるスローハイツという元旅館をリフォームした古びたシェアハウスに住むアーティスト達の人間模様というドラマです。テラスハウスじゃないですが、今なら若者に受けそうなテーマでしょ?
戦後に手塚治虫氏を慕って全国から漫画家の卵達が集まってきたトキワ荘のイメージで、それを現代版に焼き直したという感じです。
住人は脚本家として活躍している女性オーナー、既に超売れっ子作家になっている男性とその担当の敏腕編集者、その他には映画監督や画家、漫画家を目指している若い卵達です。
出てくる男女とも、皆良い人ばかりで、こういうメンバーが集まればシェアハウス生活も楽しいかもですね。世の中そううまくいくことは少ないでしょうけど。
やがて、オーナーの脚本家がアメリカへ行くということで、このチームに終わりが訪れます。オチはその後に判明しますが、意外性もあってたいへん面白く読めました。
★★★
◇著者別読書感想(辻村深月)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
幕末下級武士のリストラ戦記 (文春新書) 安藤優一郞
2009年に発刊された新書で、幕末から明治期にかけて生きた下級武士だった山本政恒氏が自身で絵と文章で書き残したサムライの一代記を現代風に読みやすくし解説をした新書です。
この人物、下級武士とは言え、ことあれば将軍の影武者として身を挺する職分であり、その後も、篤姫の護衛をしたり、京都での大政奉還や、江戸城開城なども身近で経験している人物です。
さらには、上野寛永寺で起きた彰義隊と官軍との戦い(上野戦争)にも巻き込まれ、やがて、将軍の座から降ろされ、駿河に移された主君徳川家について静岡へ下りますが、その後廃藩置県で食えなくなると、今度は東京、群馬で職を探して家族を養おうと決意します。
そうした幕末の激動の60年間が、器用な絵とともに、日記風に事細かく書いて残すのは、識字率も低く、印刷技術ない時代のことで。当時としては凄いことだと思います。
幕末の話しと言えば、英雄視される坂本龍馬や、勝海舟、西郷隆盛、大隈重信、将軍の座から没落していく徳川慶喜などばかりが取り上げられますが、この山本政恒氏のような庶民に近いところにいた下級武士の苦労と悲哀が語られることはありません。
つい数年前までは江戸城勤めの武士という高いプライドがありながら、幕府がなくなってからは食うに困るようになり、百姓に教えを請うて庭に畑を作り、東京と名称が変わった生まれ故郷の江戸に戻ってからは傘貼りやお面作りなどの内職、家を売って子供のために商店を出してやるなど、サムライのイメージがこれほど変わってしまうことはありません。
これって、大企業に勤務していたけど、経営が傾き、能力がある者や家名がある者はうまく転職出来ても、普通のサラリーマンだったら、、、という現代の状況と同じだなと思わずにいられません。
それほどまでに、江戸幕府から明治新政府に体制がガラリと変わったことで、隅々までに大きな影響が出たのだということが、よくわかるラストサムライ一代記でした。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
降霊会の夜 (文春文庫) 浅田次郎
週刊朝日に連載されていた長編小説で、2012年に単行本、2014年に文庫版が発刊されています。
泣かせの浅田ワールド満載ですが、ちょっと話しが無駄に長く、くどくなってきた感があり、年を取ってから涙もろくなってきているにかかわらず涙が浮かぶことはありませんでした。
主人公は軽井沢っぽい感じの高級別荘地に男一人で住んでいましたが、ある日、別荘の外で急な雷雨に遭って怯えてしまいうずくまっている女性を助けます。
その助けた女性から、近所に降霊をしてくれる人がいるのでご紹介しますと言われ、冷やかし半分で、同じ別荘地にある家へ出掛けます。
そこには年配の女性と姪の若い女性が住んでいて、仕事としてではなく、頼まれた場合に降霊会を催してひとの役に立つことをしているとのこと。
そして、主人公が小学生だった頃の同級生で、事故で亡くなった友人の霊を呼び寄せます。
降霊でやってくるのは、呼び寄せようとした霊だけではなく、亡くなっているその関係者の霊や、まだ生存中の生き霊までがやってくるという念の入りよう。ちょっと都合良くありません?
浅田次郎作品ということで、読む前からの期待が大きいだけに、今回はちょっと無理しているかな~という感想です。
浅田ワールド作品には、コミカル路線のものも数多くありますが、こちらはいたって真面目なシリアス路線です。そのため出てくる人達や霊はみないい人ばかりで、読者を泣かせようという思惑がありありで、くどく感じた次第です。
シリアス路線の小説で、この世のものではない霊が出てくる作品は、「鉄道員(ぽっぽや)」や「地下鉄に乗って」などがあり読みましたが、いずれも泣かせられました。しかもその両方とも映画化されヒットしています。
また今回泣けなかったのは、「鉄道員」や「地下鉄に乗って」が、家族、親子といった濃密な関係だったのが、この作品では亡くなったのが友人という比較的薄い関係だったからかも知れません。
この小説もいずれ映画化あるいはテレビドラマ化されるのでしょう。もしそうなれば、団塊世代と思える主人公が過ごした戦後の子供時代や、青春真っ盛りの学生紛争時代が、再現映像として出てくることになりそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(浅田次郎)
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7月後半の読書 郵便配達は二度ベルを鳴らす、衆愚の果て、日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実 吉田裕、奇跡の人
7月前半の読書 にじいろガーデン、僕は人生についてこんなふうに考えている、健康格差、幻夏
6月後半の読書 あなたの人生、片づけます、羊と鋼の森、大学大倒産時代、無私の日本人
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郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)(原題:The Postman Always Rings Twice) ジェームズ・M・ケイン
有名な小説で、映画化もされています。初出は1934年ということで第二次大戦の前という古い小説ですが、今読んでも細部はともかくストーリーの骨格に古くささは感じません。
著者のジェームズ・M・ケインは、1892年生まれのジャーナリストで作家。この著書が実質的なデビュー作品で、その後「殺人保険」などの作品もあります。
小説の内容と、この風変わりなタイトルとはなんの関係もありません。
ストーリーは、アメリカの地方でレストランとガソリンスタンドを経営するギリシア人とその妻の元に流れ者の男がやってきて、たまたま空きのあったガソリンスタンドの仕事を任され雇われます。
そしてすぐに欲求不満の妻と雇われた男と関係ができ、夫を殺して財産を得ようと目論みます。
1回目の犯行は失敗しますが、2回目に自動車事故を装っての犯行は成功したかと思ったら、有能な検事の追及で、犯行がバレてしまいます。
しかしその検事のライバルである有能な弁護士が、保険会社を組み、保険会社の損失を減らすことで犯行はなかったことにしてしまいます。
結果的に犯行は成功したかに思えたところ、、、というストーリーです。
小説では控えめでしたが、映画ではエロと暴力が強調されているそうで、そうした話題が先行していました。映画も1946年の制作と言うことで、太平洋戦争が終戦直後という時代から、奔放な人妻と、保険金殺人というのは大きなセンセーショナルだったでしょう。
この事件は実際に起きた事件が下敷きになっているそうですから、なおさら世間の関心を呼ぶことになりました。
★★☆
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衆愚の果て (幻冬舎文庫) 高嶋哲夫
理工系の作家さんで、人災、天災問わずにパニック系小説が多く、比較的私の好きなジャンルです。
過去には、「イントゥルーダー」(1999年)、「ミッドナイトイーグル」(2000年)、「ペトロバグ」(2001年)、「M8」(2004年)、「FIREFLY ファイアー・フライ」(2008年)、「首都崩壊」(2014年)の6作品を読んでいます。
988 2016年12月後半の読書(首都崩壊)
588 2012年3月前半の読書(イントゥルーダー)
469 2011年1月後半の読書(ファイアー・フライ)
また、2011年の東日本大震災と原発事故をまるで予言したかのように、「メルトダウン」(2003年)、「M8」(2004年)、「TSUNAMI 津波」(2005年)を上梓されています。それだけにかなり内容においては信憑性があり、説得力もあります。
今回のテーマは選挙制度と国会議員で、今までのようにパニック系とはガラリと違うものです。
主人公は26歳の若さで、仕事を退職後にプータローしていたときに、候補者公募に応募し、比例代表の候補者名簿の下から2番目に載せてもらったところ、政権交代で風が吹く中、アレよと当選を果たします。
「料亭へ行きたい」「BMWを買いたい」と言い放った某若手小泉チルドレンを思い浮かべますが、大物政治家に長く寄り添っていながら芽が出ずコンプレックスをもつ有能な秘書とともに、日本の問題をひとつ解決するため奔走することになります。
小説では、比例代表制や、議員定数、立法や政策よりも次の選挙のことしか考えない地盤などのない政治家、国会議員ながら、選挙区大事で地元の幼稚園の運動会に参加し挨拶することが審議よりも重要とか様々な問題が提起されています。
また議員報酬などお金の話しもたびたび出てきて、著者の怒りは相当なものがありそうです。すっかり慣らされてしまい、怒りを覚えない国民のほうがどうかしているのでしょうけど。
確かに読んでいながら、ムカムカしてくること請け負いですが、そうした政治を望んでいるのが今の国民なのですから仕方がありません。それがこの本のタイトルになっています。
★★☆
◇著者別読書感想(高嶋哲夫)
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日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書) 吉田裕
2018年に「アジア・太平洋賞特別賞」や、2019年の「新書大賞」1位の本書は、2017年に発刊された硬派な新書です。
新書というと、著者の自己満足的な自慢話しと事業の宣伝に終始しているものが多く、うんざりしているのですが、最近読んだ「バッタを倒しにアフリカへ」(前野ウルド浩太郎著)、「人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長」(吉川洋著)、「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(加藤陽子著、新書ではなく文庫版)など、良いものも時々混じっているので、欠かせません。
その玉石混淆の玉のひとつが本書で、著者は主として昭和時代に焦点をあてた近・現代史の歴史学者さんです。
この新書では、よくある太平洋戦争を分析した歴史書ではなく、戦場に送り込まれた日本軍兵士の目線で凄惨な現場、戦場の生活などを様々な日記や記録から読み取っています。
その他、戦場での自殺や、障害者(特に精神)へのイジメ、軍服や軍靴の劣化、栄養不足、マラリアなどの戦病死、無理な作戦などによる消耗など、悲惨な光景がてんこ盛りです。
日中戦争以降、終戦までに亡くなった民間人を含む日本人は310万人と言われています。軍人や軍属の死者数は230万人で、その中でマラリアでの病死を含む餓死者が140万人(61%)に達するという話しには驚かされます。
勇ましい武勇伝を語る物語よりも、金属不足から竹の水筒を持たされ、訓練も受けず武器を持たない補充兵が最前線にやってくる現場の姿が真実なんだろうなぁと気持ちが暗くなってしまいます。
もう太平洋戦争終結から75年が経ち、体験者はいなくなりつつありますが、こうした現場の実態を記録し、まとめておくことで、日本人の遺伝子の中に組み込んでおくことが今後の日本の平和と安全のためには重要なことなのだろうと思います。
★★★
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奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫) 原田マハ
2014年に単行本、2018年に文庫化された長編小説で、元祖「奇跡の人」である三重苦の障害を克服したヘレンケラーと家庭教師のアニー・サリバンの二人の関係をモチーフにしています。
著者の作品は割と最近に「本日は、お日柄もよく」と、「楽園のカンヴァス」を読んでいます。どちらも良い小説でした。まだ多くの未読作品があるので、これから少しずつ読んでいきたいと思っています。
本書はヘレンケラーと同様、病気のために見えない、聞こえない、喋れないの三重苦で、家族からも隔離されていた少女の元に、弱視ながらアメリカに留学して様々な知識を身につけた家庭教師となる女性、そして東北の津軽で生まれたときから目が見えず、三味線と歌で生活をする少女が主要な登場人物です。
その三味線弾きの少女には、後に初の重要無形文化財(人間国宝)に指定される狼野キワの若い頃の姿として登場させています。
詳しくは読んでもらうとして、東北の津軽の重苦しい雰囲気の中で、家庭教師の下で1歩1歩、手の付けられない野獣と同じ少女が、ひとりの人間として成長していく姿にうたれます。
5年前に東北へ旅行したとき「津軽藩ねぷた村」で津軽三味線を初めて生で聞くことができました。その演奏の善し悪しがわかるほどの能力はないのですが、激しい三味線の音には感動したことを思い出します。
小説としての出来ですが、これはおそらくなにかの雑誌で連載されていたのでしょうか、よくわかりませんが、同じ話しが何度も繰り返され、起きた事象があとで再度説明され、ちょっとしつこいかなと。
連載小説なら、途中から読む人のために、前に起きたことを繰り返すのもわかりますが、その場合は、単行本化する際に、繰り返される部分はカットするなど編集すべきです。
そうした重なる部分を編集して省略すれば、おそらく全体のページ数は全420ページの3/4ぐらいで済みそうです。
長い小説の場合、そうした無駄に思える部分があちこちにあるのは、ちょっと残念な気持ちになります。
★★☆
◇著者別読書感想(原田マハ)
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