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非情銀行 (新潮文庫) 江上剛

旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に26年間勤め、広報部時代には銀行の大きなスキャンダル事件にも巻き込まれた経験のある著者は、映画化もされた高杉良氏原作の「金融腐蝕列島」のモデルとなった方です。

まだ銀行在籍時に書いた作品がこの「非情銀行」で、様々な軋轢もあったのかもしれませんが、翌年に銀行は退職されています。

銀行をテーマにした小説は数多くありますが、私も若い頃には城山三郎氏や清水一行氏、高杉良氏、山田智彦氏などの作品を数多く読みました。

最近でも江波戸哲夫氏、幸田真音氏、真山仁氏、池井戸潤氏などの銀行が主役(悪役)の小説は好んで読んでいます。

銀行がテーマの小説の場合、元バンカーだった作家が書く場合と、そうでない場合がありますが、やはり元銀行に勤めていた人の小説の中に出てくるエピソードなどはかなり真実味があって単に人から聞いて書いたというものとはディテールが全然違うなと感じます。

この小説ではバブルがはじけてしまい、多くの不良債権を抱え込み、さらには総会屋など反社会勢力との腐れ縁が話題となった1990年代に大手都銀で起きたことがテーマです。

ちょうどその頃には、財務省の指導もあり、都銀同士の合併が盛んにおこなわれていた時期でもあり、「銀行頭取になったらまず合併を考えるのが仕事」と言われていました。

高杉良氏の小説を30冊は読んでいるので、それと似たような流れで新鮮味はありませんが、実際にその嵐のような大手都銀の中枢部にいただけに書けることもあり、なかなか迫真の展開がスリル満点です。

今ではすっかり都銀は3グループ(りそなグループを含めると4グループ)に収斂して落ち着いてしまいましたが、私が新入社員だった頃は、三菱、住友、三井、三和、富士、第一勧銀、日本興業、東京、太陽神戸、東海、協和、大和、埼玉、北海道拓殖と14行も都銀と称される銀行がありました。

それが次々と合併を繰り返し、毎年のように銀行名が代わり、支店が統廃合され、ユーザーのためというより、自分たちの組織のため、国策のため、経営陣のために不便を強いられたこともあります。

その頃の出来事はこうした小説でしかもう知りうることができませんが、若い人にぜひ読んでおいてもらいたい本です。おそらく登場する経営陣の考え方や、それになびく部下達の滑稽とも言える行動は、若い人達にとってはまったく理解できないでしょうし、すべてフィクションだと思うでしょう。でも事実は小説よりも奇なりなのです。

著者別読書感想(江上剛)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

夜想 (文春文庫) 貫井徳郎

貫井徳郎氏は今年44歳、すでに直木賞候補には過去に何度か挙がっています。そして今年2012年上半期も「新月譚」で候補には挙がりましたが残念ながら受賞とはなりませんでした。まだお若いので次で頑張っていただきたいものです。

多くの名作を数多く発表されていて私も今までに10作ほど読んでいますが、不思議と賞にはあまり縁のない作家さんです。多作傾向にある作家さんには審査員が冷たいのかもしれません。

「夜想」は2007年に発表され、2009年に文庫化された長編の小説です。

主人公は妻と幼い子を自分の目の前で自動車事故で失い、生きる希望を失ってしまっている外車自動車ディーラの男性です。その男性、死んだ妻と夜な夜な空想の中で会話をしたりとちょっと精神的にまいっている感じです。

そしてその主人公が落とした定期券を偶然拾ってくれた女性が、特殊な能力の持ち主で、なにも言わないのにその主人公のつらい想いを瞬時に理解してしまい、涙を流してくれるのを目撃してしまいます。

主人公はその女性の能力をもっと広く人に役立てもらうように奮闘し、会社も辞めてその仕事に没頭していきます。それが妻子を失って生きる気力を取り戻すことになるからです。

もうひとり、地方で夫に先立たれ、娘と暮らしている潔癖性気味の母親がいます。こういうミステリー小説にはつきものの、精神を病んでいる人達です。小説でも映画でも漫画でも、とかくこうした精神的障害がある人をすぐ犯人や悪人にしてしまう傾向があるのは、由々しき問題だと感じているのですが、この小説でもそれは残念ながら例外ではありません。

主人公が病んでいた精神が救われて悩める魂が解放されるのか?という内容で、もしデビュー作「慟哭」のような衝撃のラストを期待していると、ちょっと肩を透かされます。

著者別読書感想(貫井徳郎)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

普通のダンナがなぜ見つからない? 西口敦

2011年に発刊されたこの本は、タイトルが刺激的なせいもあってかよく売れたそうです。確かにこれだけ婚活ブームと言われ、総務省から生涯非婚率なんてものまでが発表されるようになれば、本人のみならず、その両親も手にとって読んでみたいと思うのではないでしょうか。

「普通のダンナ」の「普通」という前提条件が人によって違うでしょうけど、年収1つ取ってみても、既婚者を含み年齢問わずの日本の平均年収が400数十万円なのに、それを未婚者で一般的な結婚対象年齢である20~30代の「普通」の年収と勝手に解釈してはダメよということとか、近年結婚の条件に「三高」が廃れて、その代わりに流行してきた「価値観が近い人」という希望も、砂浜で針を探し出すようなものだというような意味のことが書いてあります。

それらと同様に、女性が常識と思っている誤解や勘違いをわかりやすく解説し、ではどうすればいいの?というところまで書かれた本です。

主として女性向けに書かれているので、男性が読むとエッと驚くような本命男性攻略法や誘惑テクニックなどまで書かれているのでギョッとすること請け負いです。さすがに婚活ビジネスにいるだけに、そういう男性心理を巧みに突いたテクニック指南などお手の物でしょう。

いずれにしても男女ともに、コミュニケーション下手と、もっといい人が見つかるはずという甘えやプライドの高さ、結婚はしたいけど自由な生活もいいとか贅沢を言っている人向けですから、解決はそう容易ではありません。

いずれは結婚したいと思っている独身男性が読んでも十分に役立ちそうな話しが満載で(女性の男性に対する行動がわざとらしく見えてしまい恐怖症になる恐れあり)、また他人事ながら結構笑えてなかなか楽しい本です。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

閉鎖病棟 (新潮文庫) 帚木蓬生

精神科医でもある著者はこうした医療関連の小説も多いのですが、「総統(ヒトラー)の防具」や「千日紅の恋人」「聖灰の暗号」、映画化もされた「三たびの海峡」など医療とは関係のない様々なジャンルでも面白い小説を出されています。

この「閉鎖病棟」は1994年の作品で「臓器農場」(1993年)「安楽病棟」(1999年)「風花病棟」(2009年)と内容はまったく別物ですがなにか共通するところがありそうなシリアスで重い内容の作品です。第8回山本周五郎賞受賞作品でもあります。

様々な理由で入院している精神病棟の患者達が主人公で、タイトルのような外部と完全に遮断されいる閉鎖病棟の話しはほとんど出てきません。どちらかと言えば、外出や外泊が自由な開放病棟に長く入院している患者達がメインです。

戦後のまもなくから高度成長期にかけて、日本の裏歴史とも言えるような話しで、なかなか文学に取り上げにくい内容だけに価値があります。

ちょっと淡々とした情景描写(登場人物の過去に犯した犯罪や病歴、そして病院の日常の風景など)が長々と続き、展開が速いミステリー小説などに慣れてしまっていると、途中で少しまどろっこしくなりますが、私は名作の1つと言っていいでしょう。

タイトルや表紙のイメージから最後は後味が悪い結果になるのかなぁと思っていたら、苦難の中にも明るい未来が開けているようになっていてホッとしました。もっと純文学として高い評価がされてもいいような気がします。

著者別読書感想(帚木蓬生)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

「IT断食」のすすめ (日経プレミアシリーズ) 遠藤功/山本孝昭

ITをビジネスに活用することで、本来なら業務効率が上がり、仕事が楽になるはずだったはずなのですが、なぜかそうはならずに、逆に余計な資料を作成することになったり、隣の人に声をかければ済むことをわざわざ時間をかけてメールで書いて送ったりと、なにかITの使い方をみんな間違っちゃいない?という問題提起をしている本です。おそらく読んでいると耳が痛くなるシーンがいくつも登場してきます。

この本を書いたのは株式会社ドリーム・アーツ代表取締役社長山本孝昭氏と大学教授の遠藤功氏です。ドリーム・アーツと言えば様々なソフトウェアを開発しているベンチャー系IT企業ですが、そこの創業社長がIT断食を勧めるところになにか面白味がありますね。

もしビジネスの経験がないか乏しい大学教授や、コンサルタント、ジャーナリストが単独で書いている本だと、真剣に読む気が起きないでしょう。

ま、この本に出てくるビジネスの現場は、多くの人が経験していることでしょうし、それを別に疑問にも感じていない人がほとんどなのでしょう。私もそのひとりです。しかしあらためて現役IT系企業の経営者に指摘されると、なるほどと思ってしまいます。

確かに私が社会人になった1980年は、基幹系システムとしてのオフコンという概念はありましたが、それをコミュニケーションや文書作成ツールとして利用するという機会はありませんでした。

やがて1台200万円以上もするワープロ専用機が登場し、あれよあれよと言う間に90年代からパソコンがオフィスに侵略し始めてきました。でもまだPC1台が80万円とかする時代でしたから、個人が専用で利用するまでには至らず、したがってメールやスケジュールの共有といった今では当たり前のことはできません。

一人一台が普及したのはなんと言ってもWindows95が登場し、続いてWindows98あたりで普及が始まるとPCの価格が一気に下がり、企業も「業務効率化による省力化と創造的業務への移行」を旗印として導入を競いました。

その時には、ネットで世界や人とつながるというのはなんと素晴らしいことかと実感もしましたが、同時になにかを失っていくことに一抹の不安と寂しさを覚えたものです。

結局は、IT導入が進み、仕事が効率化されて、時間に余裕が生まれたビジネスパーソン達が、創造的な仕事をやってきたかというと、これまた疑問が残ることになります。逆にビジネスには必須の対人コミュニケーション能力が著しく落ちてきてしまい、その結果として、著者が指摘するような余計な仕事が増えたり、うつ病や引きこもりの増大といった新たな問題が急増することになります。

ま、そのようなIT中毒に冒されている会社に対し警告をして、それの対策を考えているのがこの本の主旨ですが、本来一番読んでもらいたい肝心の経営層には届きそうもないでしょうね。

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642
第二次世界大戦で数少ないアジアの日本の同盟国として、ともに連合国(主として英国)と戦ったインド共和国(太平洋戦争当時のインド国民軍)ですが、終戦後の東京裁判の際に「イギリスやアメリカが無罪なら、日本も無罪である」とインド人のパール判事が言ったことが示すように、いたって親日的な国です。

そして今年はインドと平和条約締結60周年という節目の年でもありますが、日本国内ではなかなかインドとの政治的な関係について議論されることがありません。

先日「巨人の星」のアニメが舞台を野球からインドで人気のあるクリケットに変えて、テレビで放送されることが決まったと発表がありましたが、日本とインドの接点は意外なほど少ないというのが実態です。

もちろん経済的には鈴木自動車が自動車販売で大きなシェアを持っているとか、インドの地下鉄のシステムをODAであるにせよ日本企業が導入しているとか、経済的に様々な関係はありますが、アメリカや中国、その他のアジア諸国と比べると余りにもその関係性と影響度は小さなものです。

少し古いデータですが日本企業の外国進出数(東洋経済海外進出企業総覧2008年版)を見るとインド(206社)に対し、中国(2,421社)、アメリカ(1,626社)タイ(1,178社)、香港(929社)、シンガポール(784社)、台湾(777社)、マレーシア(605社)、、韓国(569社)、インドネシア(558社)、英国(491社)、ドイツ(475社)、フィリピン(330社)、ベトナム(310社)と、インドへ進出する企業は格段に少ないのが現実です。

また日本企業が出資する現地法人数も加えるとその差はもっと開きます。

日本から仕事等で外国へ渡っている(居住している)在留邦人数を見ると2011年の外務省領事局政策課統計では、(1)アメリカ (397,937人) 、(2)中国 (140,931人)、(3)オーストラリア(74,679人)、(4)英国 (63,011 人)、(5)カナダ(56,891人)、(6)ブラジル(56,767人)、(7)タイ(49,983人)、(8)ドイツ(36,669人)、(9)韓国(30,382人)、(10)フランス(29,124人)・・・と続き、24位にようやくインド(5,554名)という少なさです。

距離的に違いがあるとはいえ中国に住んでいる日本人のたった4%しかインドには住んでいません。アジアだけに限定しても中国、タイ、韓国、シンガポール、台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナムに次いでの10番目という少なさです。

いまの東アジアの緊張状態を考えると、朝鮮半島や中国との関係は決して良好とは言えず、戦後はずっと頼りにしてきたアメリカも、普天間基地やオスプレイなどの複雑な問題を抱え、さらにアメリカの財政事情、アメリカにとってより影響が大きな中東問題優先策などで、今後もずっとよい関係でいられるとは考えられません。

経済問題を考えると、国内需要が今後50年間ぐらいは下降していく日本に明るい未来は見えず、お隣の中国はといえば巨大な市場には違いありませんが、複雑な政治的な問題や、根強い反日感情(教育)はちょっとやそっとでは解決しません。

尖閣諸島や日本海の油田開発の問題ではいつ小競り合いが起きても不思議ではなく、もしいったん起きてしまえば中国全土で日本製品ボイコット、日系の店舗や工場の焼き討ちが起きることは必至です。

そこで、いま日本が外交戦略的、経済的、軍事的なことを考え、今後数十年間のスパンで組み相手として一番ふさわしいのは中国ではなくインド共和国ではないでしょうか。

リスクとしてあげられるのが、多民族で多言語、多宗教の地域があったり、少し前にインドの鈴木自動車の工場で起きた暴動の発端となったと噂されるカースト制(表向きはなくなっている)だったりネガティブな要素がまったくないとは言えませんが、少なくとも日中戦争や日清戦争の頃のことを、ことあるたびに持ち出し感情的に非難し、謝罪を求められ続けなくてもいいことだけは確かです。

インドと組む最大の理由として、まず人口が12億人と中国とそれほど遜色ない世界第二位の巨大なマーケットを有しています。

そして教育のレベルも高く、日本の経済、工業、農業と互いに十分に補完して余りあるものと考えられます。1つの例で言えば医療や宇宙開発、防衛など科学分野で共同研究、共同開発、共同試験、共同運用をおこなえばお互いに効率よくできます。

またよく知られているようにインドの技術は日本と比べて劣っているどころか凌駕している部分も多くあり、あとはそれをいかにマーケットに合わせた商品作りをおこない、流通を整え、豊かになりつつある巨大なインド国内や、その他周辺のアジア諸国、アフリカ諸国に普及させていくかというソフトの部分です。

しかし英国やオランダの植民地として長かったインド国内の目は、特に大手企業の経営層など富裕層は、アジアではなく常に欧米に向いているので、それを欧米だけでなく世界中の市場を席巻したことのある日本と組み、今よりももっとうまくやっていけるということ証明していく必要がありそうです。

そのためには、現在のようなITエンジニアの不足を補うような交流だけではなく、もっと本格的に両国間の関税撤廃を起点とし、先に挙げた医療分野や宇宙開発以外にも、学生の交換留学促進や、両国に各国の大学分校の設立、共同軍事演習、安全保障条約締結(軍事条約)、武器の技術提供や共同開発、共同海洋開発、ハイテクを駆使した大規模農業生産などいくらでもアイデアは出てきそうです。

地政学的な観点(ジオポリティクス)からすると、この日本とインドの同盟関係締結は、巨大な人口と経済力をバックにアジアの中で絶対的な力を誇示し、領土や領海の拡大を謀ろうとする中国にとってもっとも都合の悪いシナリオで、それと比べると尖閣諸島なんて些末な問題に過ぎません。

日印同盟はアジアの中で拡張を急ぐ中国を牽制し、他のアジア周辺国にとっても、中国の脅威に対抗できる唯一の抑止力と考えられるのです。

さらにインドの国の位置はこれからますます発展していく東南アジアや中東、そしてアフリカへの輸出前線基地としても十分に機能する場所にあり、これから経済発展していくそれらの国々を見据えた国家戦略に乗り出すいいタイミングなのです。



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641
その1では主に洛北、洛東付近を中心に紹介しましたが、今回はバラバラです。本格的な観光シーズンに入る前に、気のあった仲間を誘ってブラッと行ってみるのもいいでしょう。

紅葉シーズンは見応えはありますが、とにかく人と車で混みますので、早朝やナイターに限定して観光することをお勧めします。

京都にはユネスコの世界遺産が数多くあります。その多くは19世紀以前に建てられた建築物のほか、その歴史上の重要性などが審査されています。単なる観光地というだけでなく、その歴史的背景などを事前に調べて訪問したいものです。

(5)伏見稲荷大社
説明するまでもなく全国稲荷神社の総本山であり商売の神様と言うことで毎年多くの参拝者を迎えています。

ただこの伏見稲荷(京都ではお稲荷さん)は中心部から外れていて、しかも拝観するのに長時間歩くため時間がかかるので、ほぼ半日は見ておかないとなりません。

いくつも回りたい時には効率は悪いですが、クルマで移動なら、そうでもないのでお勧めです。

fusimi.jpg駐車場は門前にいくつも有料駐車場がありますが、スズメの焼き鳥の店など賑やかな参道を歩く魅力もありますので、早朝でなければ駅近辺の駐車場に停めて参道をぶらりと歩くことをお勧めします。

神社の境内はちょっとした山登りハイキングで、ハイヒールやサンダルでなめてかかるとつらい思いをします。たっぷりと石段や坂道を歩くことを覚悟してください。

また伏見稲荷大社の近くには、いずれも有名な東福寺や泉涌寺(せんにゅうじ)があります。この3つを回るのだけで一日かかり、いずれも歩く距離があって大変ですから、欲張らずにどこか1カ所かせいぜい2カ所までとしましょう。


(6)比叡山延暦寺(世界遺産)
有名な天台宗の本山寺院で788年に最澄が創建しました。山岳信仰の場でもあり、多くの仏教徒の修行場でもあります。また比叡山は平安の都からちょうど北東の位置にあり、鬼門を封じる意味で延暦寺を作ったとも言われています。

比叡山は京都市側からは八瀬、滋賀県側からは坂本からケーブルカーが出ていますが、やはりクルマで行くのが便利です。京都市内の銀閣寺付近、または大津市内の浜大津あたりからだと、クルマで30~40分で門前近くまで行けるでしょう。

紅葉の時期はさすがに混み合いますが、それ以外なら比叡山ドライブウェイが快適に走れ、延暦寺のすぐそばに広い駐車場があります。

延暦寺は比叡山の頂上近くにある多くの仏塔の総称で、これが延暦寺本堂ですというものではありません。したがって全部を見て回ろうとすると、離れている場所へはクルマで移動するといいでしょう。

クルマで比叡山から京都側へ降りてくると、「その1」で書いた詩仙堂や黒谷、それと有名な銀閣寺に近い通りに出てきます。それらともうまく組み合わせると効率的に回れます。


(7)金閣寺、竜安寺、仁和寺(3つとも世界遺産です)
洛西の観光地といえば、金閣寺~竜安寺~仁和寺~広沢の池と観光道路が整備されていて一気に回ることができますが、逆にクルマがないと不便な場所ばかりです。

夏の暑いときにひぃひぃ言いながら地図を片手にこの上り下りの激しい観光道路を歩いている観光客を見かけますが(路線バスはあります)、徒歩でこの3つを制覇するのはそこそこ根性がないとお勧めできません。

駐車場はどこのお寺も観光バスが入れる大きな場所が確保してあり、修学旅行や紅葉シーズンと重ならなければ大丈夫でしょう。

観光ガイドはいずれも有名なお寺なので省略です。竜安寺や金閣寺は修学旅行で行ったからもういいという人には、クルマならこれらの寺から近い北野天満宮や大徳寺に変更することも可能です。

仁和寺からだと東映太秦映画村まで15分程度、嵯峨野(嵐山)までは混んでいなければクルマで20分程度ですから、その他の観光地やレストランとセットにして考えてもいいですね。嵯峨野には天龍寺や西芳寺(苔寺)などの世界遺産があります。


(8)円通寺、正伝寺、上賀茂神社(世界遺産)
いずれもちょっと観光客にはあまり知られていないマイナーなお寺で、場所も中途半端なところにありますが、行くと感慨深い想いに浸れます。決して団体客や修学旅行生が来る場所ではないので、静かに時間によっては貸し切り状態で拝観できます。

駐車場は不便な場所にあるだけにちゃんと整備されており、私の記憶ではいずれも無料で門前に停めることができます。

kamigamo.jpgこの両寺はともに比叡山を借景とした傑作の日本庭園が特徴的で、円通寺は元々後水尾天皇(1596年~1680年)の別荘だったところに造られ、見事な枯山水式の庭園があり、国の名勝に指定されています。

京都にも高層マンションがあちこちに建ってきていますが、この庭から霊峰比叡が眺められるよう、その該当する広大な地域に建物の高さの建築制限がかけられています。

鞍馬や貴船から市内に戻ってくる途中にありますから、クルマならばそのついでに組み入れることが可能でしょう。また上賀茂神社、岩倉実相院、国際会議場(宝ヶ池)なども近くです。

正伝寺は、1268年に創建されたお寺ですが、その後何度か消失し、現在あるのは豊臣秀吉や徳川家康の援助を受けて再建されたものです。そして今では跡形もない豊臣秀吉の居城だった伏見城の一部がここに移築されています。

そして廊下の天井は「血天井」として有名で、1600年関ヶ原の戦いの前哨戦として徳川家康側が攻めて伏見城が落城した際に、自決した豊臣家臣鳥居元忠などの血の跡と言われています。血天井はここだけでなく方々のお寺で見られます。

そういう生臭い歴史はともかく、庭は枯山水の比叡山を借景に通称「獅子の児渡しの庭」と呼ばれている見事な庭園です。
こちらも鞍馬や貴船の帰り道に近く、上賀茂神社(世界遺産)からもそう遠くない場所にありますので時間があればということで。

お勧めルート3(健脚向け)
9時  伏見稲荷神社
14時  清水寺(世界遺産)や京都霊山護國神社(幕末維新ミュージアムや龍馬の墓参拝)
16時  祇園界隈を散策(建仁寺への拝観もあり)
18時  先斗町豆腐茶屋で湯豆腐とか

お勧めルート4(春の桜、秋の紅葉シーズンは避けるべきコース)
10時  金閣寺
12時半 竜安寺か仁和寺(お昼は観光道路に駐車場付きのレストランやカフェ多数あり)
15時  東映太秦映画村
19時  嵯峨野(嵐山近辺)で夕食

お勧めルート5
9時  比叡山延暦寺
12時  銀閣寺(近くの「おめん」で昼食)
14時  円通寺か正伝寺
15時半 上賀茂神社(上賀茂神社周辺には和菓子や漬け物の老舗店多し)
18時半 宝ヶ池か北山あたりのオサレなカフェかレストラン


クルマで行く京都観光お勧めコース その1(鞍馬・貴船・詩仙堂・三千院・黒谷)

【関連リンク】
マイカーで東京から京都まで旅行する場合 その1
マイカーで行く東京から京都・大阪・和歌山へのルート 2022/5/21(土)

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640
秋の旅行シーズンが近づいてきました。昔近くに住んでいたことがあり、今でも年一回ぐらいのペースで行くことがある京都ですが、クルマで行くことを前提にして私のお薦めポイントを紹介します。

なぜ、クルマ?と言われると、ちまたでは京都市内は道が狭くて渋滞も多いので、電車、バス、タクシーなどの公共交通を使って巡ろうという情報は書籍やネットに山ほどありますので、それを見たほうがずっといいからです。

また地下鉄が整備されてきたとはいえ、観光名所の多くは京都市営バスや民間バスを使わなければならない場所も多く、これがまた評判がよくなかったりします。

そして一言で京都と言っても桜の綺麗な春、灼熱で蒸し暑い夏、紅葉の秋、底冷えする冬とその季節によって見所は変わってきますので、あくまで参考までの情報です。

例えば伏見稲荷神社は全国の稲荷神社総本山で商売の神様ということもあり、またパワースポットとしても有名な場所なので勧められることがあります。

しかしそれを鵜呑みにして真夏の昼に行くと、ちょっとした登山をするようなものですから、大量の汗をかいてたいへんな目に遭います。行くなら涼しい10月~5月でしょう。


(1)鞍馬寺、貴船神社
20120912_1.jpg言わずと知れた鞍馬天狗発祥の地でもあり、源義経が若い頃に修行をした場所です。

創建は770年というから1242年も前にできています。今では宇宙エネルギーが多く集まるパワースポットとして若い人にも人気が出ています。

特に正殿前にある石造りの六芒星の中心に立つことで、宇宙からの自然のエネルギーを受け取る事が出来るとも言われていますが、なんとなくその気にさせる雰囲気が周囲には漂っています。

場所は京都市の北の外れにあり一般的には京福電鉄鞍馬線に乗って行くルートがお勧めとして挙がりますが、クルマで行くことももちろん可能。

駐車場ですが、仁王門(山門)のすぐ前にあるカフェ擁州路(ようしゅうじ)の前(モロ参道ですが平気)にクルマを停め、いったんそこでコーヒーやわらび餅でもいただいて、その後に店の人に「参拝にいくので少しの間クルマを置かせてください」と頼めばたぶん快くOKしてくれます(保証の限りではありませんが断られた人を知らない)。

お寺までの上りは歩くと30分ぐらいかかる(下りは10分程度)ので、時間を節約したければケーブルカー(100円)に乗って上がるのが無難かも。

ケーブルカーと言っても乗っている時間は2~3分程度の極めて短い時間と距離で、そこから本堂までは少し歩いて登ります。帰りもケーブルに乗るのもいいですが、ずっと下り坂で楽なので歩いて帰るのをお勧めです。

この鞍馬寺から貴船神社(きふねじんじゃ)へは山の中を通り抜けて歩けるコースもありますが、クルマなら途中の三叉路で貴船側へ曲がればすぐなので便利です。電車の貴船口からは少し歩かなければなりません。

貴船神社は水の神を祭ってあり、おみくじも水に濡らすと文字が浮き出てくるという変わり種です。

貴船神社周辺には料理屋や料理旅館があり、夏場は清流の貴船川の上に川床を設置してそこで京会席や流しそうめんなどがいただけます。

たいへん風流でいいのですが、なんしろすっかり観光化しているのと値段がべらぼうに高い割に味のほうは、、、という意見もあるので、そこは割り切りましょう。

貴船の駐車場は貴船神社前に少しある程度で、その他公共の駐車場はなく、道もすれ違うのに苦労する狭い道なので、特に紅葉シーズンと夏の土日曜日の昼頃はクルマだと身動きできないほど混雑しますので避けるほうがいいでしょう。


(2)修学院離宮、詩仙堂
北白川付近には他にもいろいろとお寺や庭園がありますが、暑い夏でも寒い冬でもしっとりとした京都らしい日本庭園を眺めるのは心が落ち着いていいものです。

北白川周辺はメイン通りの白川通り以外は狭い道が多いのですが、あまり気にせずクルマでどんどんと中まで入っていけば、たいてい寺社の門前には駐車場が整備されています。

電車やバスの人が、ふぅふぅ言いながら歩いているのを横目でみながら追い越して、一気に門前まで到着できるのがクルマのありがたみです。

ただ詩仙堂と白川通りの中間には宮本武蔵と吉岡一門が対決したとされる一乗寺の下り松の記念碑がありますが、クルマだと通り過ぎてしまいそうです。武蔵の銅像があるわけでもなく松が一本台の上に植わっているだけですが。

詩仙堂の中に入ると外の喧噪が嘘のように静まりかえって見事な庭が向かえてくれます。また庭を見ながらゆるりとお抹茶をいただくのもいいでしょう(時期とタイミングによりますが受付で頼むと入れてくれる)。

修学院離宮は宮内庁が管理しているので、予約なしには見学ができません。郵送とネットで予約申し込みをしますが、なんでもネット分の割り当てが非常に少なく、郵送で申し込みをしないとなかなか予約ができないようです。そのかわり予約さえできれば、混雑などない少ない人数でゆっくりと回れますので快適です。

修学院といえばアニメファンには「けいおん!」の舞台だとよく知られていて、修学院の風景がよく登場するそうです。

その他北白川通り沿いにはその他狸谷不動尊、曼殊院などがあり、銀閣寺もクルマならばそう遠くはありません。


(3)大原三千院、宝泉院、寂光院
三千院へ公共交通で行くにはバスしかなく、しかも山の中の道をグルグル走りあまり気持ちのいいものではありません。しかしクルマならば、修学院離宮や詩仙堂のあとすぐに向かえる場所にあり、また鞍馬や貴船に行くのにも割と便利な場所です。

三千院の近くには観光駐車場がいくつもありますが、メインの国道367号線沿いにある観光駐車場からだと結構な距離があります。

詳しい地図で調べるとわかりますが、市内から入ると少し手前にあるファミリーマート付近の交差点から右斜め上に上がっていく狭い道があり、それをどんどんと登っていくと、突き当たりが三千院の山門です。

駐車場の料金は少し高めになりますが、門前に停めれば坂道を登らなくても済みますし、時間の大幅節約にもなりますのでお勧めです。

三千院は今から1200年ぐらい前に開かれた天台宗の寺院で、本尊は薬師如来、開基は最澄です。

他の有名寺院の仏像と比べると迫力はありませんが、阿弥陀三尊坐像は国宝です。季節的には秋の紅葉のシーズンが最高ですが、夏でも市内と比べるとずっと涼しく快適に庭を観賞できます。

冬でも意外と雪は積もりませんが、市内は大丈夫でも大原付近は雪という時があるので注意です。

宝泉院は三千院のすぐそばにあり、三千院門前の駐車場にクルマを停めたままそのまま歩いて行けます。盤桓園(立ち去りがたい意)というお庭は「額縁庭園」と呼ばれています。

拝観料込みとなっているお抹茶とお菓子をいただきながらゆっくりと幽玄な庭を観賞できます。

廊下の天井には戦乱に巻き込まれた伏見城遺構の床を使用していていわゆる「血天井」でも有名です。

もうひとつ大原には寂光院という寺があります。三千院から歩くと15~20分ぐらいかかりますが、クルマなら5分もかからず到着しますので、時間があれば寄るのもいいでしょう。

ただ三千院と比べて見所は少なく元々は尼寺ですから派手さもなく、わびさびの世界にどっぷり浸りたい人や、平家物語のファンだと、清盛の娘であり天皇家に入内した建礼門院徳子が最後に隠棲した場所という儚い思いを感じるためにはいいでしょう。特に女性の参拝者が多いようです。

京都市内からこの大原へ向かう途中にお土産で有名な「土井の柴漬け本舗」本店があります。広い駐車場もあり、レストランとお土産ショップが併設されていますので、休憩とお土産の購入に立ち寄るのもいいでしょう。

そういうこともクルマならではできることです。駐車場でクルマから降りると季節によってはすぐ近くで栽培している「しその葉」の香りが漂ってきます。


(4)黒谷(金戒光明寺)、聖護院
意外と知られていないのが黒谷と呼ばれている金戒光明寺です。数年前のJR東海の「そうだ京都へ行こう」キャンペーンに使われていましたが、いわゆる普通の観光コースには入ってこないお寺です。

20120912_2.jpg浄土宗の法然上人が1175年に比叡山から降りてきて開いたとされるお寺で、重要文化財の文殊塔(三重塔)なども地味ですが見事です。

江戸末期には京都守護職の本陣とされ、会津藩や新撰組が一時本陣を敷いていた場所でもあります。

また近年は時代劇映画やドラマの撮影によく使われることが多く、周囲はいかにもっていう感じで時代を感じさせる雰囲気が満ちあふれています。

駐車場は狭い道をどんどん奥へ入っていくと突き当たりに広いコインパーキングが突然現れます。

黒谷からクルマなら3分ほどしかかからない聖護院は一般的には聖護院八つ橋として有名ですが、元々は多くの信者が聖護院参りに来た際にお土産として買ったことから普及したお菓子です。お伊勢さんの赤福みたいなものですね。今でも聖護院の前には2軒の八つ橋を売っている店舗(本店)がひっそりと店を構えています。

その聖護院、本来は修験道の中心的な存在で、皇室とも縁が深く江戸時代には何度か仮皇居となったこともあるそうです。
地味といえば地味な存在ですが、黒谷からも近く寄ってみるのもいいのですが、基本的には事前に郵送で拝観予約が必要です。駐車場も予約すれば利用できます。

その他にもこの黒谷や聖護院の近くには銀閣寺や南禅寺、永観堂、哲学の道、平安神宮といった観光名所がいくつもあります。しかしすべて歩いて回るにはかなり健脚でないとつらいです。その点クルマがあれば暑い夏でも寒い冬でも平気で楽ちんです。

お勧めルート1
 10時  鞍馬(門前には老舗土産店あり)
 11時半 貴船(昼食)
 13時  修学院離宮(要予約)か詩仙堂
 15時  黒谷か聖護院(要予約)
 17時  岡崎の順正か瓢亭、美濃吉あたりで夕食

お勧めルート2
 10時  三千院、宝泉院(抹茶サービスあり)
 14時  貴船(昼食)
 15時  鞍馬
 17時  上賀茂神社
 18時半 宝ヶ池(童夢経営のDe PLUS CAFE)か北山(安:キャロット、高:キャピタル東洋亭)などで夕食


クルマで行く京都観光お勧めコース その2(伏見稲荷神社・比叡山延暦寺・仁和寺・円通寺など)へ続く

マイカーで行く東京から京都・大阪・和歌山へのルート 2022/5/21(土)


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「パナソニックは今回発表した6カテゴリーと、先行して発売済みの炊飯器、電子レンジとを併せ、8カテゴリーのスマホ連携機能付き製品を「スマート家電」と名付けてシリーズ化する。14年度にかけて、対応カテゴリーを倍増させる方針だ。」

「まさにスマート!洗濯機や冷蔵庫といった生活家電。年を追うごとにどんどん高機能になってきていますが、ついにスマートフォンと連動する日がやってきました。」

「パナのスマホ家電の未来感がヤバイ! 外からスマホでエアコンオン」


まさにスマホ家電が日本の製造業を復活させるかのような記事のタイトルですが、果たしてスマホと家電製品との連携内容とはいったい、、、

pana2.jpg

例えば洗濯機では、利用者が普段使っている洗剤の商品名をスマホで選択し、洗濯機の読み取り部にスマホをタッチする。こうすると、次回以降の洗濯時に、その洗剤の投入量がより正確に表示される。従来は、一般的な洗剤を使用した場合の目安量を表示するのみで、利用者が個々の洗剤の説明書と照らし合わせて投入量を調整する必要があった。またエアコンは、外出時にスマホを使って運転状況を確認でき、必要に応じてオン/オフや温度調整といった操作が可能だ。

洗濯時に洗濯機に投入する洗剤の分量を、スマホに頼り細かな単位まで量って入れる必要がある人ってどれほどいるのでしょう。

同じ重量の洗濯物を洗うときでもその汚れ方や繊維の種類で、目分量でパッパと入れる人がほとんどではないでしょうか?汚れ方や洗濯の分量まで見分けてくれるはずもないスマホに頼る必要が本当にありますか?

また省エネや節電意識の高まりから外出時はエアコンを切って出掛けるべきで、不在時に運転状況を確認したり、温度調節をする必要がいったいどこにあるのでしょう?まさか赤ちゃんを一人で寝かしておいて自分だけ外出するための機能?だとしたらそれはそれでマズイでしょう。

節電には興味がなく、家に帰ったらすっかり涼しく(暖かく)なっていないと嫌だというのなら、それはどんな廉価版のエアコンにも標準で付いているタイマーでほとんどの場合は解決します。

また消し忘れを防止するならば、人感センサーを付ければ、一定時間人がいないと判断したら自動で停めてくれるほうがずっと役立ちそうです。

冷蔵庫では、読み取り部にスマホをタッチすると、省エネ運転していた時間やドアの開閉回数などをスマホの画面でグラフ表示できる。同様にエアコンや炊飯器、電子レンジでは電気代のチェックが可能だ。製品の故障時には、エラー情報を読み取って詳細な故障内容と復旧方法をスマホの画面で表示したり、簡単なボタン操作で同社のサポートセンターに電話したりできるという。

あきれかえってもうなにも言葉が出てきませんが、世の中の普通の人は、こういうドアの開閉回数や日常使用する家電品の電気代のチェック機能などを考えつく大メーカーの人ほど暇人だと思っているのでしょうか?

「故障時に簡単なボタン操作でサポートセンターにつながる」っていうけれど、壊れたら普通にサービスセンターか買った店に電話すればいいでしょう?それにいったいどれほどの手間と時間がかかるのでしょう?

pana1.jpg

「製品の故障時には、エラー情報を読み取って詳細な故障内容と復旧方法をスマホの画面で表示」も、家電製品が短期間でそう何度も故障されては困りますし、おそらくどこが故障したかはちょっと見てわからなければそれを自動検知でわかるとも思えず、多くの場合「サービスに連絡してください」と表示されることになるのでしょう。

PCや高級車に組み込まれる不具合の自動検知を見ても、正確な不具合箇所の検知率は決して高いとは言えません。

逆にこういう複雑な機構を組み込むことで新たに起きる故障や不具合のほうがずっと心配です。構造がシンプルなほど壊れにくいというのは工業製品の鉄則なのです。

これらの不要な機能を追加するために、メーカーはどれほどの無駄なコストと時間を使い、それがどのぐらい市販価格に転嫁されるのでしょうか?

韓国や中国、台湾の後発の家電メーカーに、世界中のマーケットを次々と食われている現状が、単に労働コストのせいにする日本の大メーカー様にはまだまったく理解できていないようです。

しかもこういうアホなことを自慢げにプレス発表するのが、隙間を狙ったベンチャー企業ならまだ理解もできますが、押しも押されぬ大メーカーのパナソニックだということが、日本の製造業の病巣の深さを感じてしまいます。

シャープもつい数年前までは地デジ化特需のおかげで勢いがあったのですが、それが収束すると一気にダメになってしまいました。

この話を聞いてふと思い出したのが、1990年代に経営危機に陥った日産自動車で、危機に陥る数年前に同じようなことが起きていました。

1980年に発売された日産の初代レパードはトヨタの元祖ハイソカーのソアラに対抗し高級志向が売り物でした。ちょうどその頃から日産の物作りが「基本性能技術」から「小手先だけの技術」へと変わってきていて、おかしくなり始めていました。

それを象徴するかのようにその初代レパードには数々の世界初、日本初、業界初の新機能を盛り込みながらも、肝心のエンジンやミッションは使い古された時代遅れのもので、当然販売成績はソアラには遠く及びませんでした。

さらに「世界初!ワイパー付きフェンダーミラー!」なんてものを誇らしげに宣伝していたのにはもう笑うしかありませんでした。

今ではタクシーぐらいでしか見ることがなくなった小さな小さなフェンダーミラーに、これまた玩具のような小さなワイパーがコキコキと動く姿を見て、多くの人が「もう『技術の日産』は死んでしまった」と感じたでしょう。

幸い日産はその後ルノーに救済され、送り込まれたポルシェが大好きな年収10億円のフランス人経営者の手によって見事に復活しましたが、すでに日本メーカーとは思えなくなっています。

なにか今回のスマート家電は、その時の「ワイパー付きフェンダーミラー」の臭いと同じような気がします。

もちろん今のスマート家電からもっと発展し、今後役に立つ素晴らしい機能が生まれるのかもしれませんが、少なくとも現在の利用法は完全に間違っています。

日産が救済されて復活したように、数年後、パナソニックを救済してくれる外国企業が現れるのでしょうか?こういうことをやっていたのでは、NECやシャープに続いて経営危機に陥るのではないかと心配です。

先行発売した電子レンジと炊飯器では、50~60歳代の利用者の比率が全体の2割に達した。当社の予想を上回る比率で、幅広い利用者にスマート家電を使ってもらえることが分かった(中島本部長)

50代以上の人が小さな文字で見づらいスマホを有効に使っているとはとても思えません。タブレットなら多少は可能性あるでしょうけど、50代ならタブレットではなくまだPCが主体のハズです。スマホ家電が本来役立つのはおそらく20代30代の独身者で、50代以上をターゲットの中に含めるのは間違っています。

そして50~60歳代と言えば団塊世代を含む比較的富裕層で、しかも新しいモノ好きの人達ですから、新製品が出ればそれは買うでしょう。若者向きの比較的安い新型スポーツカーでもその層だけで3割以上を占めているのです。

日本全体の消費支出の44%は60歳以上(第一生命経済研究所調べ)なのです。それなのに50代60代がたった2割で予想を上回るとはどんなマーケティングをやっているのか不思議です。

それと売れたというのは「壊れたから買いに行った」けど、今まで使っていた「ナショナル(現パナソニック)製品なら安心」という50代以上にはまだ残っている松下神話と、少しでも高価なモノを売りたい家電量販店員に「売れ筋と勧められた」からに他なりません。

決して「スマート家電が気に入った!」と買った人は多くないと思いますよ。そんなことは調査せずともわかりそうなものですが、長く大メーカーの中でふんぞり返っている人にはわからないのかも知れません。

おそらくこのプレス発表を聞いた記者の多くは、内心では「大企業病もここまできたか」「日本の製造業がダメになるわけだよ」と思って話しを聞いていたのでしょう。

しかしこれらの大企業がマスメディアに使う広告宣伝費は、かつて原発の悪口を書かせぬよう広告費と接待費をマスコミにばらまいていた電力会社以上で、決して本心や疑問を正直に記事に書くようなことはできません。

私が過去に買った家電で高付加価値を認めたのは東芝のエアコンで、標準的なエアコンにプラスして吸排気空調機能付きのものを選んだことがあります。

これは外気と内気を吸排気することができ、普段閉めきっていた部屋でも、湿気防止や結露防止などに役立ちました。

取り付けに来た電気工事業者の人と雑談をした時「取り付けは少し面倒だけど、おたくさんはいい買い物したね」と言われました。

当時小型のエアコンで本格的に吸排気ができるエアコンはダイキンと東芝だけしかなく、「他のメーカーにも吸排気機能をオマケ的に付けた製品があるけど、容量が小さすぎて実際には使い物にはならない」と言ってました。

上記のエアコンは別として私が家電製品を選ぶときは、普及品の標準的な製品だけですが、それは本来生活家電製品に求められる一番重要なこと「壊れない」と「もし壊れてもすぐに交換部品が手に入り、特殊な専門家でなくてもどこにでもいる電気屋さんで修理が出来る」ことなのです。

引っ越しが好きな人でなければ、普通は1カ所に10年20年住み続けることは珍しくありません。また引っ越ししても家電製品の多くはそのまま使い続けることが多く、使い慣れた家電製品を長く使いたいと思うのが普通の感覚です。

冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどは本来故障なしで最低でも10年、できれば15年(本当言えば20年)は使いたいものです。まだ登場して5年も経たないスマートフォンが10年後、20年後にどうなっているか想像ができるでしょうか?

そして家電の買い換えは、「壊れた」という理由ではなく「古いので電気消費量が大きくて」「古くて保守交換部品がなくなってしまい」「新居に取り付けるにはサイズや色が合わないので」という理由で買い換えたいものです。

「スマホを変えたので家電を買い換えよう」なんてのは本末転倒です。いまのスマホ家電はそうなる可能性も秘めています。

Panasonicとしては同社のスマホユーザーを増やしたいという考えがあるのかも知れませんが、それだって怪しいものです。移り変わりや流行廃りの激しいスマホ本体やそのOS、アプリが、10年20年と大きく変化せずにいられるでしょうか。

このようなメーカーだけが自己満足し、単なるおためごかしに終始する報道があるたびに、今後の日本製造業の将来は限りなく闇に閉ざされ暗澹とした気分に陥ってしまいます。

最後にボロクソに書いてしまいましたが私自身は昔は松下電器のファンで、以前は家電のほとんどを松下製で揃えていた時期がありました。

しかしこれを書いていてふと気がついたのですが、残念ながらここ十数年は旧松下電工製の電気シェーバーを除き、松下電器(Panasonic)製の製品を買った記憶がありません。

意図したわけではないのですが、冷蔵庫も洗濯機もテレビもDVDプレーヤー(旧VTRプレーヤー)も電子レンジもエアコンも炊飯器も掃除機もアイロンもFAX付き電話機もすべて松下電器製から他のメーカーの製品に変わってしまいました。

とはいえ日本で一番信頼ができる(と思っていた)ブランドPanasonicにはつまらない流行に左右されることなく、本来の家電メーカーの役目(シンプルかつ誰でも簡単で使いやすく壊れない)に立ち戻ってもらいその重要な責務を果たしてもらいたいものです。

それが松下幸之助氏の信条でもあったように思うのですが。

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