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1970年代にセイコーマート、ファミリーマート、セブンイレブンなどが次々とオープンし、1980年代頃から都市部に急速に普及してきたコンビニエンスストアは、その成長のスピードはやや落ちてきたものの、すでにデパートの売上規模をしのぎ、年間売上約9兆円、小売業全体の約7%を占めるに至り、総合スーパーに次ぐ巨大な小売り産業となっています。
そのマーケティング戦略やフランチャイズ手法などは専門家にまかせるとして、私がそのコンビニに期待しているのは、昭和の時代ならどこの町や村でも必ず存在していた雑貨店としての機能と、高齢化社会に合わせたプラスアルファとしての機能です。
すでにコンビニのほとんどでは、宅配便の取扱い、銀行や郵便局のATM、コンサートやイベントのチケット購入、公共料金や税金の支払いなどコンビニが普及し始めた30年前なら考えられなかったサービスが次々と行われ、現在もその進化は続いています。
しかしどうしてもコンビニは都会の人口が集中しているところに展開され、都会に住む人向けのサービスが中心となっています。
それはチェーン店であるが故に、商品の統一化、配達の容易さ、販売効率向上、店舗の画一化など、最大の利益を上げるため、また素人でも経営が可能なようにするためマニュアル型ビジネスの典型だからでしょう。
都市部の場合はそれでいいのですが、今後は都市部から郊外地域、場合によっては過疎地域への展開というものがこれからはコンビニの使命ではないかと思っています。
「そんな購買力もない田舎に出すより、勢いのある東南アジアへ出店が先だ」という戦略もわからなくもないのですが、せっかくここまで広めてきた日本流コンビニスタイルを都市部だけで展開するのも惜しいと思っています。
コンビニエンスストアの売上上位7社の国内店舗数は約49,000店あります。そのうち東京都に6,600店(13%)あり、上位5位までの東京都、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県で約40%を占めていますが、店舗数が少ない下位の鳥取県、高知県、島根県、和歌山県、徳島県は、5県足して全体の2.3%にしかすぎません。いかに人口の多い場所に集中しているかがわかります。
ついでに比較的地方地元指向の中小コンビニも含め、コンビニ売上上位14社までを計算すると、総数は53,140店、上位5都道府県で39%を占め、下位5県では2.5%となり、さほど変わりません。
「そりゃ各都道府県の人口が違うから店舗数が違うのは当たり前でしょう」と言われそうですが、都道府県の人口比で比べると、上位5都道府県ではおよそ人口2,100人に1店舗のコンビニがあるのに対して、下位5県では2,960人に1店舗の割合です。
人口が多い場所での店舗展開の効率の良さが一番の理由でしょうけど、人口比の出店数格差は存在します。
フランチャイズ本部からすれば、地方の場合、人口や人口密度の低さ、配送の手間やコスト、サポートの不便さ、ニーズの特殊性などがあり、都市部の展開と同じやり方では通用しないと言うこともあるでしょう。
利益だけを追求すれば、やはり地方は切り捨てるということになりそうですが、これからは思い切って行政や農協、日本郵政、JR、バス会社などを巻き込み、多少都市部とは違う特殊な形態であったとしてもコンビニを展開していくというのは重要なことではないかと思うのです。
つまり、地方の町や村から、駅が消え、商店が消え、銀行が消え、ガソリンスタンドが消えしていく中で、住民サービスとして行政が補助を入れてでも、生活に最低必要な食品や日用品の販売、公共料金の支払や住民票などの発行、ATMなどの機能の他に、郵便局、宅配の集配所としての機能や、セルフガソリンスタンドなども設置、総合病院とも高速回線で結ばれてネット受診が可能となり、役場や日本郵政、宅配会社、地元バス会社など様々な業界から少しずつの負担をしてもらいながら展開していくという方向性です。
また地元住民向けだけでなく、本来ならクルマで通過するだけの人にも利用してもらえるよう、地元の食材をふんだんに使った料理や軽食、地元でとれる特産品を販売したりする機能を持たせるのもいいでしょう。
もちろんコンビニのマニュアルにはないものとなり、柔軟性がない大手コンビニチェーンだと無理かも知れませんが。
最近のコンビニ関連のニュースでは、次の二つの話題が気になりました。
セブンイレブンがJR四国と駅ナカコンビニ出店で提携 2014年7月4日 産経新聞
セブンイレブン・ジャパンが、JR四国と駅ナカコンビニ事業で提携することが4日、わかった。JR四国管内に現在40ある駅構内のコンビニ、売店をセブンイレブンに切り替えていく。 セブンイレブンは今年3月にJR西日本とも駅ナカコンビニ事業で提携しており、駅ナカ出店を加速させる。また、四国について、これまで高知県にセブンイレブンは出店しておらず、駅ナカ店舗が最初の出店になる可能性もある。。 |
コンビニで介護支援、ローソン、ケアマネ配置、運動指導も 2014年8月16日 日本経済新聞
ローソンは高齢者や居宅介護者を支援するコンビニエンスストアを2015年から出店する。昼間はケアマネジャーが常駐し生活支援の助言をしたり、介護に必要なサービスや施設の紹介・あっせんをしたりする。高齢者が集うサロンのようなスペースを設け、健康維持に必要な運動の機会も提供する。高齢化が進む中、身近なコンビニの役割をもう一段広げる。 埼玉県を中心に老人ホームなど介護福祉サービスを手掛けるウィズネット(さいたま市)が、フランチャイズチェーン(FC)加盟店となり、1号店を埼玉県川口市に15年2月に開く。ウィズネット以外の介護事業者とも組み、まず3年で30店出し、以後は順次増やしていく考えだ。 |
ひとつ目の記事は、コンビニが全国でも少ない高知県や徳島県で、こうした異業種と組むことによって活路が開いたという典型です。
将来はもっと複数の異業種と組んで、オールマイティなコンビニを出店していくという手法が増えていくのではないでしょうか(そうなってくればいいなと)。
ふたつ目の記事は、どちらかと言えば、増えつつある高齢者富裕層を狙った都市型サービスで、前述したような地方でのプラスアルファのコンビニ展開とは違いますが、こうした様々な異業種との取り組みを通じて、新たな地方ニーズや、高齢者に向けた新たなサービス、そして画一化された本部マニュアルだけではなく、もっと柔軟性を持った地域から愛されるコンビニ運営などが進んでいけばいいでしょう。
例えばふたつ目の記事の「老人ホームなど介護福祉サービスを手掛けるウィズネット」の代わりに、それぞれの町役場の職員や、仕事から引退した地元の人が交代で、コンビニに配置され、販売、配送、配達、集荷の仕事はもちろん、住民票の発行や、福祉サービス、高齢者の通院補助、訪問介護など様々なサービスを提供する拠点のようなところになれば地方独自のコンビニ進化系が作れそうです。
いずれにしてもコンビニの進化系と言えば、駅の売店やKIOSKなんかはもちろん、古い言い方では学校の購買部、今の大学生協や、道路のパーキングやサービスエリア、総合病院内やイベント会場などの売店、震災の時に活躍した移動販売車などまだまだ多くの余地が残されています。
それに例えば銀行や郵便局が莫大なコストをかけて支店や出張所を開設しなくとも、その地域にコンビニ1軒あれば、それだけで9割以上のニーズには応えられ(住宅ローン相談とかは無理でしょうけど、そうそう頻繁にあるとは思えず)、その気になれば各種保険加入や人材派遣登録・依頼、携帯電話の加入手続き、そして役所や警察の臨時出張所や、病院の移動健康診断や簡易診療所などのサービスも全部ひとつのコンビニとその付帯設備を核としてやってしまうことができるでしょう。
もうコンビニは単なる街の便利な小売店ではなく、少子化高齢化が進む社会において、その地域に根ざしたライフステーション的な役割を担うことができる可能性を秘めた総合サービス業なのです。
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派遣労働者の受け入れ期間上限を撤廃するなどを盛り込んだ人材派遣法の改正は、条文にミスがあったという呆れた理由でいったん国会で見送られましたが、また秋以降の国会で再燃する見通しです。
今回の改正では多くの顧客からの派遣依頼がある大手の派遣会社が有利になると考えられ、中小派遣会社の整理、淘汰を裏の目標としているのでは?とも言われています。
なぜ大手が有利かと言えば、まず期間が撤廃されると企業は人事戦略的に派遣枠を作ることができ中長期に派遣を活用することができますので、派遣の需要は高まるでしょう。
しかし3年以上同じ人を同じ職場で派遣することは禁止されますので、やむなく派遣労働者を交代せざるを得ません。その時に大手派遣会社ならすぐに新しい交代要員の確保と、交代させられた人の次の長期派遣先の確保が比較的容易にできます。
零細派遣会社だとその交代がスムーズにいかず、派遣先は変わっても、長期で働きたいと願う派遣労働者にとっても不都合です。
ま、それはさておき、ニュースと言うにはすでに旧聞になりつつありますが、人材派遣業界に二つちょっとした話題がありました。
ひとつめは中堅派遣会社の中でも準大手にランクされる「パナソニックエクセルスタッフ」が売りに出されることになりました。
こうした大手企業子会社の派遣会社は十数年前から次々に売却やリストラをされて、残っていたのが珍しいぐらいですが、とうとうお前もかという思いです。
人材派遣6位を売却、パナソニック、今秋入札(日本経済新聞)
パナソニックは人材派遣事業を売却する。売上高で人材派遣6位だが、非中核事業の撤退や売却で、住宅や自動車関連の戦略事業に経営資源を集約する一環。 今秋をめどに入札を実施し、2015年3月期中に売却先を決める。パナソニックの事業売却が派遣業界の再編を促す可能性もある。 売却するのは子会社のパナソニックエクセルスタッフ(大阪市)。14年3月期の売上高は640億円で、3月末の派遣登録者数は約31万4000人。グループ内外に事務系従業員を派遣し、電子機器の技術者派遣にも強みを持つ。売却額は200億円規模の見通し。 |
この事業売却で「派遣業界の再編」というのは、マスコミがよく使う「煽り」に過ぎませんが、すでに多くの派遣会社は大手や外資に次々吸収されてきた実績があり、今後それが加速していく可能性はあります。
昔、リクルートスタッフィングがスタッフサービスを、テンプスタッフがインテリジェンスを手中に収めたように、大手同士の吸収合併が当たり前の業界ですから、中堅の同社をどこが買収しても驚くに値しません。案外人材派遣業界以外のところから、異業種参入を狙って買いに来るケースも考えられます。
同社の場合は未公開企業なので経常利益は公表されていません。しかし一般的な人材派遣ビジネス(事務系派遣がメインの場合)の利益率(経常利益/売上)は中堅で3~4%、大手なら2~3%でしょうから同社の場合、売上が640億円ということは経常利益率を4%とすると、経常利益は26億円、3%とすると19億円となります。
買収に200億円を投資しても計算上は10年以内ですべて回収でき、IPOすれば一気に何倍となって利益を生みますので、資金に余力のある投資家達に狙われるかもです。もちろん今後も経営が安定、あるいは成長するというのが前提ですが。
特にこうした公開入札の場合だと、密室で寝技の得意な日本企業ではなく、日本進出を狙う外資系の草刈り場になる可能性もあります。
外資系派遣会社以外でも、いわゆるハゲタカファンドが買い、やっつけですぐに上場をさせて濡れ手に粟を狙うこともあれば、純粋に投資として買い、より高く買ってくれる先を探してすぐに転売するビジネスも考えられます。特にアジアの金満某国には日本への足がかりを作りたい投資家も多そうです。
パナソニックの場合、買った三洋電機をすぐに中国のハイアールに社員共々売っぱらった過去がありますので、どうなるのか注視していきたいところです。
二つめの話題は、古くから根深い問題として、派遣社員と派遣先の雇用の関係についてのニュースですが、
マツダと元派遣社員和解、正社員の地位確認訴訟、原告15人全員(日本経済新聞)
実質的な雇用契約があったのに不当に雇い止めされたとして、マツダ防府工場の元派遣社員15人がマツダに正社員としての地位確認を求めた訴訟は7月22日(2014年)、広島高裁(川谷道郎裁判長)で和解が成立した。原告団によると、15人にそれぞれ和解金が支払われる。職場に復帰はしない。 |
この和解という裁定に、別にどちらの肩を持つということはありませんが、私が感じたのは、
1)高裁は判決で決するのを避けた気がする。あるいは最高裁へ持ち込みたくなかった?
2)原告個人が「よくこの長期間にわたって訴訟を持ちこたえたな」という思い
です。
原告団は「和解により、経済面や健康面などで困難を抱えた原告を早期に救済することができた」とする声明を発表。原告の一人の男性(44)は「和解と聞いて涙が出た。今日はゆっくり過ごして、明日からまた頑張りたい」と語った。 |
個人対企業の労働問題に関する訴訟では、企業側は必ず長期戦へ持っていこうとします。そうすることで、個人は収入の道が閉ざされ、逆に弁護士費用や訴訟費用の負担で貯金も底を突き、生活のために裁判を断念せざるを得ないと言うことがわかっているからです。
その点は、裁判のさらなるスピードアップ化や、個人が原告の場合の生活保障や、条件付きでいいので国選弁護士の利用など今後の対策を検討してもらいたいところですが、今回の場合は、複数の個人が「原告団」としてまとまり、労働組合等のサポートがあったのかどうかは不明ですが、一審、二審の5年間もの長期間にわたる訴訟を、誰もくじけずにがんばれたのはたいへんに珍しいことと言えます。
原告(労働者)の人達にとって厳しいのは、少なくとも勤務していた企業を訴訟している人を雇う企業はありませんし、また今回のように「正社員としての地位確認」を求めている以上、例えできたとしても他企業へ就職するわけにはいかないでしょう。
一番働き盛りの30代~40代の5年間を、この先どうなるのかまったく不透明な裁判に明け暮れるというのはなにより原告の方々は精神的にも肉体的にもつらかったでしょう。
よく持ちこたえられたものです。その長くつらい日々と、実際にどういうサポートがあったのかなど、本にまとめてもらいたいものです(少なくとも私は買います)。
マツダ側も、非正規社員の個人が相手ですから、当初は1年もしないうちに音をあげて白旗を揚げると想定していたと思いますが、結局ズルズルと5年も経ち、さすがにこのままでは自動車販売というお客様商売ということもあり、また少し景気が持ち直したことで臨時雇いの労働者を大量に雇うことになって、それらへの悪影響を考えるとマズイと思ったか、さらには高度成長期以降一貫して地元大企業の味方だと思っていた地裁、高裁の裁判官の心証もなんだか怪しくなり、今回の和解を渋々受け入れたと言うことでしょう。
それにしても、今まで人材派遣されて働いていた人が、「派遣先と実質的な雇用関係にあった」とされる訴訟では、なかなか原告(労働者)側に有利な判断がされることは少なそうで、一流弁護士を揃え、税金をたくさん払っている地元の名門企業と、一個人が争っても普通ではかなうはずもありません。
それだけに、今回マツダは最初から相手をなめきって油断をしていたとも言えます。
和解金は公表されないものの、この3月の決算では1407億円の経常利益をあげている大企業のマツダとしては、チリほどのものでもないでしょうが、もし裁判で負けるようなことがあれば、きっと優秀な社員(現在では昇進していて偉くなっているハズ)が作った派遣社員対応について瑕疵があったことを認めなきゃならないことや、自社で働いて貢献してくれた労働者相手に冷酷で非情な対応をしたという悪評がたつことを嫌ったのでしょう。
今回、もし裁判が最高裁までいき、「派遣先と実質的な雇用関係が生じていた」と認定でもされた場合、派遣労働者を長期間使っている全国の多くの企業に衝撃が走り、また全国各地で同様な裁判が起きる事態となっていたかも知れません。
高裁(広島)までは名門マツダの地元の威光や人脈が利用できても、最高裁ではそれが効かず、判決が覆ってしまう可能性があります。
そうした社会の混乱や、マツダの威光が届かない最高裁判決を避けるため、広島の高裁はマツダに強く和解を申し入れ、あくまで強気のマツダに対して相当なプレッシャーをかけたのではないかなと勝手に想像します。
せっかくマツダもヒット車を次々に生み出して、海外市場では絶好調なのですから、こうした内向きの問題は、もっと素早く好感が持てる対応と引き際を見せて欲しかったなと思わなくもありません。
【関連リンク】
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
697 非正規雇用拡大の元凶が人材派遣だって?
610 労働者派遣法改正
569 人材派遣会社の動きが活発だ
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今回はボランティアであってビジネスではありませんが、一応シリーズものとしてタイトルはそのままにしておきます。
過去の「高齢者向けビジネス(第1部 居住編)」、「高齢者向けビジネス(第2部 趣味編)」、「高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)」に続く第4弾です。
比較的裕福で「もうガリガリ働いて生活費を稼がなくてもいいや」という恵まれた高齢者の方もたくさんいらしゃいます。
なんと言っても60才以上の高齢者世帯の平均預貯金額は2000万円を軽く超え、持ち家率も90%を上回り、さらに年金などの所得も1世帯の年間平均で300万円以上あります(平成25年版 高齢社会白書より)。
もちろん「余裕はあるけど、もっと働きたい」という人は、本当にお金が必要な若い人の邪魔にならない程度に働いて、収入を得てもそれは自由なわけですが、そうした生活に心配がない高齢者に相応しい働き方としてボランティアがあります。
このボランティアという制度が日本で根付いてきたのは私の知る限りでは、1995年の阪神淡路大震災の時以降かなぁと思っています。もちろんそれ以前からもあったでしょうけど、散発的だったり地域的なものだったりして、組織だったメジャーなものは少なかったと思われます。
その後、東日本大震災などの地震被害、台風被害、竜巻、雪害など主に天災に見舞われた地域への集団的、組織的なボランティア活動が特に若者を中心として盛んになっていきました。また従来からある個人的なボランティアも一般的になってきたせいか増えています。
一概に高齢者に対して「ボランティアでもやったらどうでしょう?」と言うと、具体的にはどこでなにをやればいいのかよくわからないと思いますし、また高齢者が可能なボランティアも限られてはいます。
高齢者になにもない被災地にいきなり入って身体ひとつでおこなうような肉体的にハードなボランティアは向かないでしょうし、時には「ボランティアという名を借りた被災地観光」とか「邪魔なだけ」と非難されるケースが高齢者に限らず発生し、せっかくの好意と善意がうまくかみ合わないケースもあります。
ボランティア活動が本格的に普及してきた1995年と言えば団塊世代はすでに40代後半に入り、目の前の仕事や子育てなど家庭に忙殺され、ボランティア活動どころではなかった状態です。それだけに今の高齢者(60才以上)にとってはボランティア活動には馴染みが薄く、最初は敷居が高く感じられるでしょう。
そうした中で、国や自治体にぜひ率先して制度を作って推進してもらいたいと思っているのが、小学校や中学校へ派遣する高齢者ボランティアです。
今の学校教師は昔と比べるとたいへん大きな役割とプレッシャーがかかっているように思います。
例えばモンスターペアレント、ストレスが多く情緒不安定になりがちな子供達、長期間の不登校生徒対応、家族崩壊など保護者の問題、携帯やスマホによる子供同士のネットワーク、いじめや自殺問題、体罰、子供や保護者が教師を査定するなどなど。
日本の先生、世界一多忙なのに指導には胸張れない(朝日新聞DIGITAL)
そうした教員のサポート役として、地域の高齢者が日替わりでいいのでバックアップし、教師の負担となっている事務処理や保護者対応、子供の指導や見守り役などを肩代わりして、生徒と直接向き合う指導や、質の高い授業のために事前の準備をしっかりとおこない、外部の研修にも積極的に出ていくという、いまよりはもっと創造的な仕事をやってもらうのです。
ボランティアなら教員免許を持っていなくても、企業内でマネージメントや事務処理の経験があり、人の説得に長けた高齢者がサポートにつけば、最初のうちは双方とも思惑がなかなか一致せず、ギクシャクするかもしれませんが、いろいろと修正を加えていくことで長い目で見れば先生にとっても強い味方になるでしょう。
やる前からあれこれ心配するのではなく、失敗例は反省し、成功例が出てくればそれを推進していけばいいのです。
時には道徳の時間で、そうしたボランティアの高齢者に、自分が子供だった頃の話しや、仕事で世界中を飛び回った経験談などを話してもらうことで、教師ではできない生の社会人の話が聞ける機会は、自分の親のことぐらいしか知らない視野の狭い子供達にとっては大いに役立つと思います。
放課後も高齢者ボランティアがいることで、勉強が遅れがちな子供の学習サポートや、スポーツや遊技の安全指導、監視などいくらでもやってもらえそうです。
またそうしたことを積極的にやってくれる人は決してお金のために動くような人ではなく、子供達と無理なく接することで、生き甲斐となります。
そのためにも教員の「自分の仕事が奪われかねない」とか「教師を削減しようとしているのではないか?」とか、あるいは「安全面で誰が責任をとってもらえるのか?」など保護者からの心配などを国や自治体が責任を持って払拭するよう努め、登録&事前教育ありのボランティア制度として導入してみてはどうでしょう。
登録しているどの人に来てもらうかどうかは、それぞれの学校や教員の判断で、来てもらう曜日や時間帯は、高齢者ということを考慮した上で面接の際に決めればいいのです。
次のボランティアは、小さな町にも商店街があり、商店街があればそこには商店会という組織があり、地域の祭りや年末セール、地域消防訓練などを率先しておこなっています。
そうしたところでは、商店会の有志の人が細々と商店会のホームページを作っているところもありますが、素人の片手間ではなかなか作ったきりで更新が進んでいないというのが実情でしょう。
そうした商店会&各商店のホームページの作成と更新作業をボランティアとして引き受けて、商店会だけでなく、その地域の魅力や名所を広く伝え、結果的に商店会を盛り上げるというお手伝いするというのはどうでしょう?
もちろんそうしたホームページを作るセンスや、多少の知識がないとできませんが、2~3日も勉強すれば、基本はそこそこマスターできますし、あらためてレンタルサーバを借りて独自に作るのではなく、Facebookなど、無料で商用利用が可能な便利で使いやすいインフラを利用してもいいでしょう。
ボランティアが介在すれば商店会のメンバーが作るのではなく中立公平な立場で作れますし、その地域に長く住んでいる人ならば、地域のこともよく知っていて、地域の魅力を発信するのに最適です。
地域の催し情報、災害時の避難場所情報、お買い得情報、商店会各店舗の割引クーポンなどをホームページ上に掲載したり、商品の宅配サービスの受付など、専従者がいるとアイデアは次々と出てきそうです。
3つめのボランティアですが、私は中学生から高校生の頃には通学にも使っていた自転車に凝っていて、最終的には各パーツをひとつひとつ買い集め、世界で1台の自転車をひとりで組み上げた経験があります。
そうしたなにか自分にちょっとした得意分野があれば、例えば上記の自転車を例にあげると、自宅近くに自転車屋さんがあれば営業妨害にもなりかねませんが、もしなければ、自宅に「自転車修理を無料でおこないます」の看板をあげると、そりゃご近所さんや自転車のトラブルで困っている通りがかりの人から喜ばれること確実です。
自転車修理の部品代なんてたかがしれていて、パンク修理キット(約5回分のパンク修理ぐらいはできる)は100円ショップでも売っていますし、作業も慣れていれば10分もかかりません(特殊なタイヤや自転車は除く)。
さすがにチューブやタイヤを交換するような時は部品代の実費は負担してもらうことになるでしょうけど、空気抜けやパンク、虫ゴム交換、サドルやハンドル高さ調整、チェーンのゆるみ調整、ブレーキ調整、給脂、スポーク折れ交換など、ほとんど費用がかからない修理を無料でおこなうことで地域に貢献ができます。
さらに地域の自転車通学がある学校へ出向き、学校の了解をもらい、自転車置き場にある生徒の自転車を点検し、タイヤの空気を補充し、ブレーキをちゃんと効くようにし、修理や調整した箇所を自転車に書いて貼っておくことで、生徒の自転車事故やトラブルを未然に防ぐというボランティアだってできそうです。
こうした個人でできるボランティアは、世の中がなんでも金・カネ・かねという社会に一石を投じることになるのではないでしょうか。(自転車屋さんごめんなさい)
以上、組織的におこなうボランティアもあれば、個人が自分の特技や好きなことを発展させて役立てていくというボランティアなど、やる気になればいくらでもありますよとホンの一例をあげてみました。
私なら、足が悪いので、外で長く出歩き、また肉体労働的なボランティアはできませんが、ネットでできることや、座ってできる仕事であれば、それが多くの人に喜ばれるならぜひやってみたいなと考えています。
例えば昔はよくお世話になった公立図書館へ行き、古い本や傷んだ本の修復作業や、返却本の消毒、クリーニングなどを自主的にやるとかいいかもしれません。周りを本に囲まれた仕事っていうのも一度はやってみたいなと思っています。そういう仕事があるかどうかは知りませんが。
【関連リンク】
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)
800 高齢化社会で変化している交通事故の統計を見る
740 高齢者の犯罪が増加
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
687 旺盛な高齢者の労働意欲は善か悪か
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中学生になった時に、親に買ってもらった初めての腕時計SEIKO 5ACTUS(1970年)から、数本の腕時計を経て、現在は四半世紀ほど前のまだ中国に返還される前の香港で買ったHEUER(ホイヤー)の時計を長く愛用しています。
このスイス製のホイヤー(2000 Professional)は1985年にTAGグループに買収(現在は1999年にルイ・ヴィトンで有名なLVMHに再買収されその傘下)される前の製品で、余計な機能や飾りはなにもついてない質素な廉価版のダイバーズウォッチですが、小振りで頑丈で、今まで本体の故障や、時間の狂いがなく、電池は長持ち(約5年)し、ダイバーズウォッチという特性からもちろん防水機能も確かで、私の過去の腕時計遍歴の中では最高の相棒となっています。
唯一の悩みは電池交換や分解掃除の時、防水機能のチェックと品質保証のため、代理店かメーカー直営店へ持っていかなければならないのと、その際は結構な値が張ることでしょうか(確か電池交換だけで5千円程度)。
なんどか電池切れを起こしそうな時(秒針が3秒おきに刻み知らせてくれる)、普通の「電池交換やります」と書いてある時計店へ持っていき電池を交換してくれないかと頼んでみたところ、この時計は防水機能の保証があるので、正式なところでないとできないと断られました。
そういうこともあり、私の場合はいつも表参道にある高級ブティックのような直営店へ持ち込むのですが、店の人に渡すとTAGのついていない頃のHEUER製品が珍しいのか、「お!」と注目されるのがちょっとだけ嬉しかったりします。
あ、もうひとつ、これは仕方ないのですが、アナログ式のカレンダーがついていて、小の月のあとは、その都度修正をしなくちゃいけません。デジタル式なら数百年分のカレンダーが内蔵されていて、いちいち修正の必要もないでしょうけど、これはそういうわけにはいきません。
腕時計はおそらく40代以上の人なら、仕事中は概ね持っていて腕に巻いていると思いますが、20代より下の年代では逆に持っていない人のほうが多いような感じです。
それは今の20代の人が高校生だった頃には携帯電話やスマホを持っているのが当たり前になっていて、そしてそれには必ず時計が組み込まれているので、あらためて時間を知るためだけの腕時計を持つ習慣がなかったというのが理由だと思われます。
現に私の子供達から、時計を買って欲しいと言われたことはなく、ごくまれに「今度試験を受けるので腕時計を貸して」と言われることがあります。
つまり携帯やスマホが持込禁止で時間を知る必要がある時だけ腕時計が必要になるということです。次男坊に「私が仕事を引退したら、このホイヤーを形見として先に渡しておく」と言ったら興味なさそうな顔をされました。
そういう状況だから、さぞかし国内の時計会社の売上は携帯やスマホの普及に伴い、年々苦戦を強いられているだろうと思いきや、いやいやどうして、なかなか健闘しているので驚きました。
。
社団法人日本時計協会の「2013年日本の時計産業の概況」から引用してみます。
図1 日本のウオッチ完成品総出荷(輸出+国内出荷)数量の推移 [機種別]
図2 日本のウオッチ完成品総出荷(輸出+国内出荷)金額の推移 [機種別]
2009年から2013年までの推移を見ると、出荷数量はほぼ横ばいですが、出荷金額は順調に伸ばしています(国内企業の海外生産品を含む)。
但し、2007年まではもっと売上も本数も多かったのですが、リーマンショックの影響か、2008年から大きく落ち込んで2009年が底となったようです。
携帯やスマホが急速に普及してきた中で、それと比例してここ10年間腕時計の売り上げは大きく減っているものと思っていましたが、どうもその見立ては間違っていたようです。
海外生産と輸出も含めてですが、日本の時計メーカーは2013年で腕時計を6,720万本も出荷し、その売上は2,145億円にのぼります。4年前の2009年と比べると本数で1,050万本増え、金額では633億円増加しています。
この5年間の売上高の右肩上がりは時計会社の並々ならぬ努力の結果でしょうけど、若い人の腕時計離れと今まで最大需要だった団塊世代が腕時計を必要とするビジネスから引退していくアゲンストの風の中で、この数字は立派としか言いようがありません。
本数や金額の増加は、輸出分が多いのでは?と疑問に思う人もいるでしょうから、国内出荷の推移をあげておきます。
図3 日本のウオッチ完成品国内出荷の推移[機種別]
国内出荷もまずまず順調に伸ばしています。2013年で国内出荷数740万本、金額にして897億円(1本平均12,000円)となっています。
そりゃそうです、なにも携帯やスマホが流行しているのは日本だけではありませんから、日本だけがそれを原因として売上が落ち込むわけではないでしょう。
しかしこれから先を見ると、スマホの影響は少ないとしても、少子化で労働人口が減り、ビジネスの現場で活躍してきた団塊世代も順次引退して、腕時計の国内需要自体は急速に減っていきそうです。私も仕事以外では腕時計の必要性は感じず、家に置きっぱなしの時が多いです。
また海外市場でもブランドイメージが高いスイスのメーカーや、格安のアジアン製品とのあいだで闘いを強いられることとなり、そのあたり、腕時計メーカーは生き残りのため今後どのようなマーケティング戦略を立てているのでしょうか、気になるところです。
【関連リンク】
764 思い出の香港
709 Amazonにガチ対抗できるのはイオンかセブン&アイか
702 アマゾンジャパンは国内の小売り業を破壊するか?
547 中高年者とスマートフォン
408 TAGがつかないHeuerが宝物
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普段から「最近の若い奴らは、、、」とか「腹黒い天下り官僚は、、、」とか、「自分勝手な『オレ様』がのさばっていて、、、」など、小心者でへたれな自分のことはさておいて好き勝手を書いているわけですが、世間、特に若い世代は私の世代、つまり50代をどのように見ているのか?とちょっと調べると、これがまた手厳しい~という話しです。
でも面白いので、反省と自戒の念も込めて書いておきましょう。
その前に、今の50代と言うと、1955年(昭和30年)~1964年(昭和39年)生まれの、いわゆる昭和30年代生まれ世代です。団塊世代は昭和20年代が中心ですので、ちょうどそれより10年ほど後、つまり団塊世代が激しい受験戦争、学生運動、就職戦争、恋愛・結婚競争、出世競争、資産形成ゲームなどに明け暮れ、もう社会は荒れ果てて、ぺんぺん草も生えない不毛な状態になった後で、それでも強大な影響力を持つ団塊世代の後を必死に追いかけていくしかなかった世代とも言えます。
団塊世代の群れとは違い、学生運動や同世代間の激しい闘いや競争などもなく、割とのんびりした学生生活をおくってきた、一般的には「しらけ世代」とか「無共闘世代」とも呼ばれ、すぐそのあとに続く変化の兆しが見えてきた「新人類」と呼ばれる人達の直前の、社会にはほとんど影響を及ぼさなかったひっそり埋もれた大人しく従順な世代です。
必ずしも上記とは一致しませんが、この世代生まれの有名人は、
1955年 江川卓、所ジョージ、掛布雅之、九重親方、具志堅用高、明石家さんま、滝田洋二郎
1956年 大友康平、桑田佳祐、役所広司、大沢在昌、竹中直人、岡田武史、長渕剛、周防正行
1957年 野田佳彦、大竹しのぶ、石破茂、鈴木光司、山崎ハコ、山下泰裕、高橋留美子
1958年 東野圭吾、秋元康、宮本亜門、秋元康、原辰徳、石川さゆり
1959年 やくみつる、山口百恵、宮本亜門、秋元康、原辰徳、石川さゆり、田口ランディ、渡辺謙
1960年 宮部みゆき、松尾貴史、石田衣良、浅野ゆう子、乃南アサ、三池崇史、黒木瞳、佐藤浩市
1961年 江川達也、杏里、島田雅彦、真保裕一、中井貴一、石橋貴明
1962年 松田聖子、茂木健一郎、豊川悦司、是枝裕和、俵万智
1963年 宮根誠司、若田光一、京極夏彦、浜田雅功、池井戸潤
1964年 山崎貴、薬師丸ひろ子、西原理恵子、山口智子
いろいろと調べてみたのですが、この世代の前後には多い豪快な人ってどうも少なそうです。
社会に出たのは1980年前後で、石油ショックなどで冷えた時期もありましたが、割と就職は緩やかで、世代人口も少なく激しい競争などはあまりありません。
しかし上述の通り、会社の中では数の論理から圧倒的優勢で、海千山千の魑魅魍魎とした団塊世代が上司として君臨しており、逆らうことはもちろん異議を挟むこともできない状況で、彼らの意のまま彼らに奉仕する会社人間が製造されていくのが普通でした。
そんな日陰世代の50代を若いビジネスパーソン達はどうみているのか?日刊SPA!からの引用が主です。
タイトル:50代[不良在庫社員]の大迷惑
「実は今、こっそり会社でお荷物となり疎まれているのが「50代」だという。昭和の“企業戦士”の最後の世代、気づけば“老兵”となった彼らが巻き起こす混乱を見ていこう。」
と、いきなりドキッとする前振りからはいります。
嫌ですねぇ、、、「気がつけば老兵」っての。自覚しているだけに、、、
◆若手のやる気を削ぐ50代[不良在庫社員]の言動
「親会社からの出向で仕事を覚えようともせず、一日中、麻雀ゲームとソリティア三昧。後ろの席から聞こえるカチカチというクリック音がウザい」「IT化についていけず、子会社に転籍。のんびりした社風も災いし、営業時間に釣りに行く人も出てきている」「クレーム的な電話がくると姿を消し、気づけばホワイトボードに『NR』」「会議で意見を求められても当たり障りのないことしか言わず、反論が出るとすぐにそっちに翻る」
さらには、「パソコンが使えず、資料作成はすべて部下任せ。そのくせ、営業成績が悪いと『オレの出世の邪魔をするつもりなのか!』とキレ始める」「仕事は派遣社員に丸投げ。自分は、みかんやお菓子を食べ歩きながら部下に横から茶々を入れているだけ」
50代っていうのは会社に居場所がないんですよねぇ~って同意を求めているわけではないのだけど、誰しも皆やがては50代になります。そしてその時にハッキリとした自分の居場所があるのはその中の1割ぐらいの人だけ。残りの9割はみな同じような不良在庫になってしまうのですよ。ま、20代30代の人が、まさか自分が不良在庫になるなんて、夢にも思っちゃいないでしょうけどね。でも9割の人は確実になりますから。
◆給料が減った分、仕事をしないのも当然!な50代社員たち
「55歳で役職定年となり、課長から主任という名ばかりヒラ社員になったんですよね。年収も900万円ほどあったのが、600万程度になって、『給料が減ったんだから、仕事量が減るのは当然』と勝手に仕事をセーブし始めて。そのセーブ量が半端ではなく、仕事量7割引、質にいたっては9割引き」
「しかも、この会社では数年前の分社化以前、50代半ばになれば子会社の部長クラスに横滑りできたそうで、何かにつけ「ワリを喰った」と口にするのだとか。」
今の50代が20代、30代だった頃は、日本の企業なら年功序列と終身雇用が当たり前で、それが世界に誇る日本の伝統とまで言われてきました。
そしてその代わりに20代30代は、今以上に安い賃金と過酷な労働(休みは日曜日だけ、サービス残業当たり前、上司の言うことには絶対服従)でも、明るい未来がきっと来るだろうからと歯を食いしばってやってきたのです。
と、ところが、バブルが崩壊して少し後の2000年代(今から10数年ぐらい前ね)に、いきなり「終身雇用はや~めた」「これからは年功は関係なく能力主義、成果主義ね!」「それが嫌ならいつでも辞めてね~」っとなったわけで、今の50代が「ワリを食った!」と考えるのはうなずけます。
そのように都合の良いルールを変えた団塊世代はもう50代も半ばを過ぎてアガリのポジションであとは定年を待つばかり。と、視点を会社側から見るか、本人側から見るかによってそれは180度違って見えてきます。
大手企業ですらそのような厳しい環境になってきたということは、実際には世の中のほとんどの人が働いている中小企業では、もっと過酷な運命をたどっているわけです。
50代社員にとっては割り切れないどころかやる気さえそがれちゃいます。
◆簡単にクビにはならない「50代ヒラ社員」問題
「トラブルを避け、イヤなことは人に押し付ける。上や女子社員には媚びつつ、下にはいばり散らす。顧客に謝らない部下を叱れない、ヒステリーな50歳主任係長。」「彼らが40代のころ、リストラがあって、課長や課長代理がヒラ社員に落とされることになったんです。ほとんどの人はそのときに辞めて、今、いる人たちは言わば、その残党。転職よりも降格人事を受け入れた人たちで、当然、やる気は皆無。だけど、会社としては波風立てず定年まで飼ってあげようという方針なんだと思います。」
そりゃ~年功序列で年収も役職も上がるとずっと信じ込まされていた人が、ある日手のひら返して「成果主義です」と言われると、やる気もモチベーションも落ちるでしょう。ベイスターズのノリが二軍に落とされモチベーションが維持できないというのとはまったく違います。
例えば「今期の業績予算を10%上回る成績を残せばボーナスは二倍出す」と言われて必死に休みなく働いてその予算をクリアしたら、「会社は儲かったけど世の中の景気が悪いので二倍の約束はなかったことに」と言われてその先のモチベーション上がりますか?
転職したり起業がしやすい30代半ばまでにそういう判断をすることができれば、まだ別の道を探すこともできたでしょうけど、妻も子供もいて、住宅ローンでがんじがらめの40代になってから、世の中がそういうムードだからと言って、ルールを勝手に変えられたら頭にもくるでしょう。
いつも約10年上の団塊世代に、数の力でいいように扱われてきました。年金だって団塊世代は60歳から満額支給されていますが、50代は段階的に65歳以降の支給で、さらに減額をされる可能性も高まっています。若い人に「まだもらえるだけマシだろ!」って言われるとその通りですが、何十年も前から分かり切っていた人口構成にかかわらず、年金政策を見通せず、若い人への負担を押しつけたのは今の50才代の人の責任ではありません。
さらに団塊世代の老後のために新たな財源をという趣旨で始まった介護保険法が施行されたのは2000年4月。その時団塊世代の多くは50歳を過ぎていましたが、いまの50代の我々は、40歳以上から支払義務のある介護保険を25数年間のあいだ丸々収めることになる最初の世代となりました。これが団塊のいじめと言わずしてなんと言うのでしょう。
◆今どき「エクセル」も使えない50代社員は大迷惑
「統計やリポートの作成が彼の仕事なんですが、肝心のエクセルをまるで使えないんです。ただ彼は地方の支社長を務めた経歴があり、話術は巧みで世渡りはうまい。同僚に教えてもらうポーズを取りつつ、なし崩し的に仕事を丸投げして帰ってしまうんです」
「上司としては一応、教則本を読んで勉強してほしいとやんわり伝えてはみたものの、「オレは昔、土日も関係なく出社して会社のために働いてきた。だから今はラクをしてもいいはずだ」と強弁。」
50代ならパソコンぐらい使えると思いますが、自分でいうのもなんだけど、若い人に「この計算ならマクロやVLOOKUP関数を組めば簡単にできるでしょ?」と軽く言われると、一瞬固まってしまうのが50代かも知れません。
30代までなら知らなくてもちょっと調べるだけでサクサクっと作っちゃうのでしょうけど、50過ぎてからマクロ組む勉強するのは勘弁して欲しいなぁと思う。もうそんな思考も忍耐力もないので。
それにワープロは純和風のワープロ専用機や一太郎に長く慣れ親しんでいた50代は、いたってアメリカンなWordに四苦八苦する人も多く、若い人から「つかえねぇヤツ」と思われても仕方ありません。
ちょうど納豆と鮭と味噌汁で毎日サラッと朝食を食べている人が、いきなり脂身ばかりのベーコンと味のしないパサパサしたパンしかない場末のビジネスホテルの朝食みたいなものを出されたようなもので、食欲もわかず戸惑う気持ちは私にはよくわかります。
もうひとつ言い訳すれば、20代30代では絶対わからない50代のことに、健康問題というのがあります。どんな精巧な機械でも50年間故障せず動き続けるというのは奇跡に近いもので、それは人間の身体においても同様なのです。
50代にもなれば若いときにいくら健康だった人でもどこかが必ず傷んできます。肉体的なもの、精神的、神経的なもの、古傷や老化が原因のもの、遺伝性のもの様々ですが、少なくとも若いときに酷使した50代の身体はもう傷だらけと言っても差し支えありません。
敦盛の「人間五十年」というのも、元々は当時の寿命がそれぐらいという意味でしょうけど、現代に当てはめても、十分満足に働けるのがそれぐらいまでとよく言い当てています。
◆毎週末の帰省を“出張”申請する厚顔50代社員
「何もせず儲かったバブル時代をいまだに引きずっているんですよ。景気が悪いんだから仕方ない、頑張ってもムダという風潮で、若い社員を育てる気はなく、何か新しいことをしようとすると50代が潰しにかかる。当然、若い人は辞めていくし、ここ数年、募集もしていません。気づけば会社の平均年齢は44歳です。社内の雰囲気? 明るいはずがないですよ」
「金曜に訪問予定を入れ木曜から連泊で出張ということが多かったので探ってみたところ、彼の本来の目的は妻子のいる実家への帰省でした。それを出張という名目で交通費と宿泊代を会社に請求しているんです。」
自分からバブル時代の思い出を嬉々として喋りたがるのは団塊世代かそのすぐ下の世代じゃないかな。
その頃(80年代)は50代の人はまだ会社では下っ端も下っ端、美味しいところはみなその上の世代が享受し、その残りかすを少し分けてもらったというのが実情で、自慢できる武勇伝は少なく、先輩から聞いた話しをまるで自分が経験したがごとく語るぐらいしかできないのが50代です。
会社の平均年齢が上がっていくのはこれ自明の理です。だって少子化と長引く経済不況で若年層の採用が抑制され、一方では定年延長で企業は65歳(段階的に)まで雇用しなければならないわけで、それで平均年齢が下がったらおかしいでしょう?
もう実際に中小・零細企業では平均年齢が50歳を超えているところがあってもなんら不思議ではありません。
カラ出張は誉められたものではありませんが、上がると思っていた年収が上がらず、仕事の都合でやむなく離れて過ごす家族の元へ週末に帰る時に、出張を組み合わせるという悲しいぐらいに涙ぐましい努力は大目に見てあげてもいいのではないでしょうか。
そういうことをする人の多くは自分の元上司が当たり前のようにやっていたことを真似ているケースが多く、将来今の若い人もそれと同じようなことを真似せざるを得ない時がやってきます。
以上のように、世代間の格差や不満というのは常にあるもので、50代を笑いたければ笑うがいいでしょう。今の20代30代が50代になったときにも同様か、もっと厳しく若者に糾弾され、嘲笑される時がやってくるでしょう。
例えば「年金が自分が支払った分以上にもらえるなんて非常識だ!」とか「役に立たない中高年正社員の解雇が自由にできないなんて考えられない!」とか。歴史は繰り返すなのです。
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