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二風谷自販機日本は自動販売機(以下、自販機)大国というのはあちこちで紹介されているので知っている人は多いと思います。

日本国内では人口減少に歯止めがきかず、また労働者不足が叫ばれている中で、自販機はさらに増加し発展していくのではないかなと思い、現状の自販機事情を調べてみました。

ここでいう自販機は、よくある清涼飲料水の自販機以外に、駅での券売機や駐車場の自動精算機など幅は広いものです。

まず、自販機大国と言われているぐらいなので、毎年自販機の設置台数は順調に伸び続けているとばかり思っていましたが、意外にもここ10数年ほどは、横ばいか下がり続けています。

自販機普及台数推移
普及台数 前年比 増減
2012年 5,092,730 100.2%
2013年 5,094,000 100.0% 1,270
2014年 5,032,600 98.9% -61,400
2015年 5,001,700 99.3% -30,900
2016年 4,941,400 98.8% -60,300
2017年 4,271,400 86.4% -670,000
2018年 4,235,100 99.2% -36,300
2019年 4,149,100 98.0% -86,000
2020年 4,045,800 97.5% -103,300
2021年 4,003,600 99.0% -42,200
2022年 3,969,500 99.1% -34,100
2023年 3,931,900 99.1% -37,600

自販機の設置台数推移
データ出典:日本自動販売システム機械工業会

2013年に509万4000台あった自販機は、2023年には393万1900台と、116万台以上も減少しています。

この10年間にはコロナ禍に見舞われた3年間が含まれていて、人と接客しなくても済む自販機の需要が高まってもおかしくないタイミングでしたが、そうした中でも減少しているのです。

なぜ減少しているのか?と言えば、一番の理由は人口減少で、需要が減り、自販機の設置、商品の補充、メンテナンス、電気代等のコストの採算がとれなくなってきたということでしょう。

自販機の種類(機種別普及台数)と占有率は下記の表の通りです。

機種別普及状況 台数 占有率
飲料 2,218,600 56.4%
食品 81,000 2.1%
タバコ 75,300 1.9%
券類(乗車券、食券など) 63,600 1.6%
日用品雑貨 201,400 5.1%
自動サービス(両替機、精算機など) 1,292,000 32.9%
合計 3,931,900 100%

自販機機種別普及台数
データ出典:日本自動販売システム機械工業会

全体の過半数が飲料を占めていて、これは実感するところでしょう。駅や遊園地、ラーメン店などに設置されている券売機や玩具のガシャポン、コインロッカー、コインパーキングなどの機器も自販機の範疇に入ると今回初めて知りました。

それにしても飲料の自販機が突出して多いというのはそれだけ競合が激しくなっているということで、現状ではすでに需要に対し飽和状態になっているでしょう。

そうすると、今後期待できる自販機は、時々情報番組などでも取り上げられるような変わり種の自販機、例えば熱々おでんが食べられる缶詰や、会社帰りに駅の中で買える野菜や肉、お惣菜、お米などの食料品などでしょうか。しかし毎日でも飲みたい飲料品とは違い、たまにしか買わないものを自販機で買う意味は薄いのも事実です。

同様に冷凍ラーメンや冷凍餃子などの自販機も最近はよく見かけますが、そうした食料品の自販機は着実に普及しているのか?と言えば、飲料の自販機と比べるとまだまだ珍しいという少なさです。

世界を見ると自販機の設置台数世界一は650万台(2023年)のアメリカですが、人口比で見ると日本の約2倍の人口のアメリカより一人当たりの自販機台数では日本が一番多いと言うことになります。

自販機の本場アメリカで人口比で日本並みに普及しなかった理由は、自販機荒らしが絶えなかったことがありますが、最近はIoTを利用した電子マネーでしか買えない、ということは自販機にお金が貯まらず、また自販機の中に入っている商品が生ものや少額のモノで、転売目的の自販機荒らしができないものとなっているようです。

そういう事情もありアメリカでは、食品の自販機販売が飲料の自販機の約半分近くまでに達しています。日本では飲料自販機と比べると食品自販機はそのわずか3%ほどに過ぎません。

自販機で販売している食品ってなに?と言えば、アメリカでは調理済みのハンバーガーやサンドイッチ、ピザ、パスタ、ラーメン、調理パン、スナック菓子、スイーツなど、ランチ用や小腹が空いた時にサクッと食べられる日常的に買う物がメインのようです。

日本人の感覚では、鯛焼きやたこ焼き、おにぎり、幕の内弁当、みたらし団子、えびせんなどが自販機で当たり前に売られているという感覚でしょうか。

日本で食品の自販機が普及しにくい理由の一つとして、全国くまなく展開しているほぼ24時間営業のコンビニエンスストアの存在があります。

例えばお弁当やスナック菓子を買うとき、無機質な自販機で買うより、ほとんどの人は近くにあればコンビニへ行って買うでしょう。コンビニだと、手に取って見てから買えるのと、レンジで温めたり、お湯やお手拭きをもらったりできる便利さがあります。

コンビニがない地方の中のさらに過疎地では?というと、今は道の駅がその代わりとして機能しています。24時間営業ではないものの、地元の人だけでなく、旅行者や商用中の人も取り込み、コンビニの役目を果たしているところが増えています。

古くから飲料の自販機ばかりに固執し、それにおいては世界一の技術やノウハウを持っていても、新たな商品を旧来と同じ方法で自販機で販売しようとする古い戦略はうまくいかず、すでに世界は自販機にITやマーケティング、アイデアを利用したインテリジェント自販機、スマート自販機を実際に投入してその先へ向かおうとしています。

生産性向上に貢献しそうな自販機の需要が年々減少していく中、日本が自販機大国と言われているのは、もうそう長くはないのかも知れません。

【関連リンク】
1405 コンビニは時代に合わせて変われるのか?
856 コンビニの活用はどこまで進むのか
719 道の駅は次の段階へ進めるか

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