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月と蟹 (文春文庫) 道尾秀介

サラリーマンから作家に転身し、今やすっかり若手の中でも超売れっ子作家の地位を築きあげ、デビューから9年目で手にした2011年の直木賞受賞作品です。過去には「骸の爪」(2006年)、「片眼の猿―One-eyed monkeys」(2007年)を読んでいます。

タイトルからは話の内容がまったくわからず、また予備知識もないまま読み始めました。

主人公は鎌倉で母親と、片足を失った元漁師の祖父と3人で暮らす中学生の男の子。父を病気で失い、高齢になった祖父と同居するために転校してきたこともあり、学校では地元出身の同級生にはとけ込めず、同じく関西から転校してきた同級生と仲良くなっていきます。

淡々とその中学生の生活が描かれています。子供だったらそういう遊びもするだろうなぁってその情景が目に浮かびます。

タイトルの月と蟹のエピソードは、終わり近くで祖父が話してくれることに由来ししていますが、その話しだけでタイトルになるほどのこととも思えず、ちょっと謎です。

私の子供時代は海が遠かったので、この小説で子供がするように、ヤドカリを捕まえて火であぶったりはしませんでしたが、田んぼにいるザリガニを捕まえ、その殻をむき、身を餌にして深くに潜んでいる別のザリガニを釣って遊んだり、時にはカエルを爆破したりと、小説に出てくる少年達と変わらず、今にして思えば残酷なことが平気でしていましたので変わりない感じです。

主人公少年の祖父が操っていた漁船に、調査活動のために乗り合わせていた同級生の母親が船の事故で亡くなっていたという過去や、主人公と仲良しになった友人が家庭内暴力にさらされているようだとか、大人の事情で子供の感情が揺さぶられていく過程がなかなか興味深く、直木賞の選考委員にうまくヒットしたのでしょう。

★★☆

著者別読書感想(道尾秀介)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫) 米原万里

ロシア語の通訳として活躍されていた筆者の実質デビュー作にあたる同著が1994年に単行本、1998年に文庫版が刊行されています。読売文学賞を受賞したエッセイ集です。

著者は書評が中心の「打ちのめされるようなすごい本」の中で触れているように、激しい闘病生活を送り、2006年に56歳の若さで亡くなっています。

この本はその通訳として仕事をしてきた上でのちょっとした笑い話や、通訳と翻訳の違いなどを面白く分析しています。

テレビで放送されるような同時通訳の場合、ま、多少の誤訳があってもそう大ごとには至りませんが、国と国との交渉ごとや、首脳同士の会話の場で誤訳などがあったりした場合にはとんでもないことに発展するという事例もあり驚かされます。

日本の政治家や官僚が「やんわりと断る」意味で普通に使う「善処します」「前向きに検討します」を、外国人にその通りに通訳すると、相手の外国人は「了解した」となってしまい、相手は一国の総理大臣がYesと言ったのに約束を守らないとはどういうことか!って怒ります。

そうした難しさがあって国際会議や首脳会談の通訳というのも国の未来を背負っている職業ということになりますね。

また翻訳の場合は自分が知らない単語やことわざが出てきても調べたり聞いたりすることができるのに対して、自分の知識の範囲で答えるしかない通訳は幅広い知識が必要だと言うこともよくわかります。

タイトルの意味は、同時通訳で話者の発言(原文)を忠実に正確に伝えていれば「貞淑」、原文を裏切っているようなら「不実」とし、訳された文章(通訳)がうまく整っていれば「美女」、ぎこちない文章なら「醜女」とし、もちろん一番いいのは「貞淑な美女」なのですが、通訳の世界ではそれはほとんど期待できず、多くの場合は「不実な美女」か「貞淑な醜女」のどちらかになるということです。

今なら国際化も進み、通訳しやすいように発言したり、事前に発言内容を準備しておくことも普通になりつつありますが、数十年前の通訳では同時通訳者をないがしろにした発言なども多く、そうした例がいくつも紹介されています。

また、英語がほとんどしゃべれない日本人重鎮が、リップサービスのつもりで最後に英語で一言「One Please!」ってのが、本人曰く「ひとつ、よろしく」の意味だったというのには苦笑せざるを得ません。

★☆☆

著者別読書感想(米原万里)

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

左京区恋月橋渡ル (小学館文庫) 瀧羽麻子

京都のしかも京都大学がある左京区を舞台にした恋愛小説ということで、やはりというか著者は京大出身の方です。

京大卒業生にとっては、京都市左京区の中にある一番有名な場所と言えば、銀閣寺より、大原三千院より、平安神宮より、やっぱり京都大学とその周辺の地域ということになるのでしょう。

その先輩にあたりますが、似た経歴の作家さんには「鴨川ホルモー」の万城目学氏、「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦氏がいて、作風もなんとなく似通っている感じがするのは先入観ってやつでしょうか。

それでもこの3人に共通する小説の舞台が、出町柳の三角州、下鴨神社(糺ノ森)、吉田山とか、祭りと言えば葵祭だったりするところもよく似ています。京大生の行動範囲がだいたいそのあたりに限られているからでしょうか。

また小説の舞台となる場所は同じでも、児童養護施設送りになったこともある荒れた生活をしてきた花村萬月氏(現花園大学客員教授)著の「百万遍 古都恋情」とは大きく雰囲気が違います。いずれにしてもあの周辺はとかく小説の舞台にするには恰好のエリアなのかも知れません。

主人公は京大の理工系男子で大学の寮住まいをしています。ま、その女性にはめっぽう弱そうな理系男子のほのぼのとした甘ったるい初恋物語ってとこですが、女性作家が描いているだけあって、夢とロマンがあふれていて読んでいると回りに薔薇や星がきらめいている感じがします。同じ京大の学生寮でも鴨川ホルモーに出てくる九龍城のような寮とは対極です。

さて、この小説は2012年(文庫は2015年刊)に単行本が出版されていますが、その前の2009年に刊行された「左京区七夕通東入ル」の続編という形になっています。つまりシリーズ2巻目から読んでしまったという無粋なことをしてしまいました。

でも、登場人物の説明もキチンと本文中にあり、特に問題はなく、普通に読めましたが、できれば登場人物をよく知っておく意味では順番に読むのをお勧めします。

★☆☆

  ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

交換殺人には向かない夜 (光文社文庫) 東川篤哉

2010年刊の「謎解きはディナーのあとで」が、第8回本屋大賞を受賞するなどして人気沸騰中(大げさ?)のミステリー作家さんの小説で、いくつかあるシリーズのうち「烏賊川市シリーズ」4作目の作品になります。2005年に刊行され、2010年に文庫化されています。

その「謎解きはディナーのあとで」は櫻井翔主演で2011年にテレビドラマ化、2013年には映画化もされていますので、ジャニーズファンの方にはお馴染みの作家さんなのかも知れません。私はこの著者の作品は今回初めて読みました。

それにしても小説の舞台が「烏賊川市」って「いかがわし」と人を食ったような(想像上の)地名で、内容もシリアスなものではなく、茶化したコミカルなミステリー小説となっています。

主人公は私立探偵の鵜飼杜夫で、周囲を探偵事務所が入っているビルの大家の女性、探偵事務所のアルバイト従業員男性、烏賊川市署の警部などが脇を固めています。なおテレビドラマでは、ビルの大家の女性役を剛力彩芽が演じて主役になっています。

★☆☆

【1000回まであと☆8】

【関連リンク】
 12月後半の読書 雪の夜話、銀河ヒッチハイク、首都崩壊、龍は眠る
 12月前半の読書 早春の化石、冬蛾、中国化する日本、恍惚の人
 11月後半の読書 ラストチャイルド(上・下) 、老いる覚悟、Nのために、昭和の犬

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