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コロナ外出自粛中には、自宅の書斎(自分の部屋)の中に乱雑に積まれている既読の本(文庫本、単行本、新書、雑誌、美術誌など)を、新たな書棚を5つも買って、ボチボチ整理をしていました。
時間もあることだし、どこになにがあるかわかるように並べようと思い、ブックオフ式に、(1)日本人作家小説文庫本群、(2)外国人小説文庫本群、(3)ビジネス系やエッセイ集の文庫本群、(4)新書群、(5)単行本群の大きく5つに分類し、さらに日本人作家小説文庫本は数が多いので著者名五十音順に並べることにしました。それ以外は出版社ごとに並べます。
人のよく読む本を知ると、その人となりが、なんとなくわかりそうです。
しかし、蔵書している本でも、40年も前に好んで読んでいた本(作家)と、最近よく読む本(作家)ではかなり違ってきますから一概には言えないなぁって自分の蔵書を見ていて思います。
例えば、学生(中・高・大学)の頃には、幅広くなんでも読んで視野を広げようと思い、国語の教科書や試験問題に出てくるような文学作品を片っ端に読んでいました。
例えば、トルストイや、ドストエフスキー、カフカ、チョーサー、ミルトン、シェークスピア、トマス・モア、プラトン、ヘルマン・ヘッセ、川端康成、夏目漱石、谷崎潤一郎、芥川龍之介、森鴎外、三島由紀夫、島崎藤村などなど。
そうした本は、代表作だけをつまんで読むので、冊数が偏ることがなく、好きで全巻読んだ三島由紀夫以外の特定作家の作品で10冊を超えることはありませんでした。
次に社会人になってからは、20代から30代の頃、城山三郎、高杉良、清水一行、渡辺一雄、深田祐介などのビジネス系小説が面白く好んで買っていました。
また同時に推理小説やホラー、歴史ものにも食指が動き出し、仕事からの現実逃避?で松本清張、森村誠一、阿刀田高、鈴木光司、吉川英治、司馬遼太郎、レイモンド・チャンドラー、イアン・フレミング、ディーン・R・クーンツなど読みあさりました。
その後、レイモンド・チャンドラーのおかげで、ハードボイルド、私立探偵、警察ものの小説に興味が湧き、ロバート・B・パーカーやマイクル・クライトン、ローレンス・ブロック、原りょう、大沢在昌など、クールな私立探偵を主人公とした小説にはまっていきました。
40代になってからは、現代の大衆小説やミステリー小説の易き?に流れ、浅田次郎、宮本輝、山崎豊子、村上春樹、宮部みゆき、東野圭吾など有名処を片っ端に読みました。肩が凝らないこうした小説は、気分転換にもってこいです。同時にビジネス系新書も多く読みましたが、著者が偏るということはありません。
そして今は、ビジネス系の小説も新書も読むモチベーションがないので、大衆小説の合間に、今まで取りこぼしてきた古い名作や、興味が湧いたちょっと古い小説や雑学的な新書を読んでいるところです。
さて、2020年10月1日時点での蔵書で冊数の多い著者順を並べてみます。ずっと以前から蔵書データを作っているので調べるのは簡単です。
ただしこれはひとつの小説で上・中・下の三巻ある場合、それは3冊とカウントしているので、吉川英治著「宮本武蔵」「三国志」だけでそれぞれ8巻ずつ計16巻(16冊)となります。
まずは、31位から45位まで
順位 | 著者 | 冊数 |
45 | ダン・ブラウン | 13 |
45 | イアン・フレミング | 13 |
45 | 吉村昭 | 13 |
40 | 高村薫 | 14 |
40 | 貫井徳郎 | 14 |
40 | 花村萬月 | 14 |
40 | 半村良 | 14 |
40 | 松本清張 | 14 |
38 | 伊坂幸太郎 | 15 |
38 | 海堂尊 | 15 |
34 | 荒俣宏 | 16 |
34 | レイモンド・チャンドラー | 16 |
34 | 柳広司 | 16 |
34 | 山崎豊子 | 16 |
33 | 福井晴敏 | 17 |
31 | 司馬遼太郎 | 18 |
31 | 宮部みゆき | 18 |
45位イアン・フレミング、40位松本清張、34位荒俣宏、レイモンド・チャンドラーの小説は主に1980年代から1990年代に読み、45位ダン・ブラウン、34位柳広司、33位福井晴敏の小説は2010年代に読んでいます。
その中でもイアン・フレミングとチャンドラーは手に入る本はほぼ全部読んだつもりです。
次に13位から27位まで
順位 | 著者 | 冊数 |
27 | 大沢在昌 | 19 |
27 | 白石一文 | 19 |
27 | 楡周平 | 19 |
27 | 村上春樹 | 19 |
26 | 堂場瞬一 | 20 |
24 | 荻原浩 | 21 |
24 | 重松清 | 21 |
20 | 伊集院静 | 22 |
20 | 恩田陸 | 22 |
20 | 白川道 | 22 |
20 | 城山三郎 | 22 |
17 | 奥田英朗 | 23 |
17 | フレデリック・フォーサイス | 23 |
17 | 吉川英治 | 23 |
16 | マイケル・クライトン | 25 |
14 | 真保裕一 | 28 |
14 | 東野圭吾 | 28 |
13 | 清水一行 | 31 |
フォーサイスの小説は1970年代に最初に読み、その後新刊をずっと買い続け、すべてを読みました。ただ最初の頃に読んだ、「ジャッカルの日」と「オデッサファイル」は蔵書にはありません。
20~30代の頃(1980年代~199年代)によく読んだ城山一郎と清水一行のビジネス系小説が目立ちます。
女性作家さんで一番多いのが20位の恩田陸。最近は三浦しをんや湊かなえなどが増えていってますが、まだまだ恩田作品で読んでないものも多く、順位に変動はないかな。
6位から10位まで
順位 | 著者 | 冊数 |
10 | トム・クランシー | 33 |
10 | ディーン・R・クーンツ | 33 |
10 | ローレンス・ブロック | 33 |
09 | 三島由紀夫 | 37 |
08 | ジェフリー・アーチャー | 38 |
07 | 佐々木譲 | 40 |
06 | 宮本輝 | 43 |
クランシー、クーンツ、ブロックの翻訳本が10位33冊で並びました。クランシーとクーンツは1990年代、ブロックは2000年代に集中して読みました。
アーチャーも「ケインとアベル」で、大学生時代に現代翻訳小説の面白さを教えてもらったこともあり、(文庫が)出版されるとすぐに手に入れてきました。最近はちょっとマンネリ気味ですけど。
三島由紀夫は中・高校生時代から大学生ぐらいのあいだに、概ね全巻読みました。谷崎潤一郎の作品と共に、耽美的な小説にあこがれ好きだった時代です。
いよいよ上位トップ5です。
順位 | 著者 | 冊数 |
05 | マイクル・コナリー | 44 |
04 | ロバート・B・パーカー | 52 |
03 | 五木寛之 | 55 |
02 | 高杉良 | 61 |
01 | 浅田次郎 | 67 |
4位パーカー、5位コナリーは、2000年以降のお気に入り作家で、いずれも文庫で手に入るものはほとんど買っています。
パーカーはすでに故人でこれ以上冊数が増えることはありませんが(まだスペンサーシリーズ以外で未読の本はありますが)、コナリーはこれからまだまだ増えそうです。
3位五木寛之は、10代の頃から読んだ「さらばモスクワ愚連隊」や「青春の門」に始まり、最近では「親鸞」まで、長く読んできました。多作な作家さんですから、これでも既刊の半分ぐらいでしょうか。しかし若い頃の作品と違って最近は老成したエッセイが多く、今後も積極的に読むかと言えばNoかな。
2位の高杉良は、20代、30代の頃に、書店で片っ端に買って読んでいました。今で言えば半沢直樹の原作者の池井戸潤以上の人気ビジネス小説でした。でも既にビジネス界から足を洗ったこともあり、もう新たに読むことはないかな。
1位は浅田次郎。これは納得です。文庫になった小説は概ね読んでいます。エッセイはあまり読んでいないですけど。ただ最近は創作活動より他の仕事に忙しいのか、「蒼穹の昴」や「中原の虹」のような大作がなく、残念です。
しかし1位の浅田次郎と今後まだ増えそうな5位コナリーの差は現在で23冊あり、浅田次郎の小説は現在も増え続けていますから、冊数を抜くのは至難で、この順位が概ね私の読書の履歴書となりそうです。
余談ですが、並べていると、ダブって購入していた本が次々見つかり、その数25冊ほど。過去にもダブった本は知人に差し上げたり捨てたりしていましたが、まだこんなに残っていて驚きました。
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日本を創った12人 (PHP新書)(前編)(後編) 堺屋太一
前編は1996年、後編が1997年に出版された新書で、お手軽に日本社会に大きな影響を及ぼした偉人達(ひとりは創作小説の主人公もいますが)の伝記と思っても良いかと思います。小学校で習う人もいれば、初めて知る人もいます。
もと旧通産省の官僚出身の著者ですので、日本の伝統的な天皇、政治、思想、文化、宗教、教育、食などには見向きもせず、社会構造(体制)と官僚制度、そして経済に特化した選出という感じです。
話題に上がる12名とは、
(1)聖徳太子・・・「神・仏・儒習合思想」の発案
(2)光源氏・・・「上品な政治家」の原型
(3)源頼朝・・・「二重権限構造」の発明
(4)織田信長・・・「否定された日本史」の英雄
(5)石田三成・・・「日本型プロジェクト」の創造
(6)徳川家康・・・「成長志向気質」の変革
(7)石田梅岩・・・「勤勉と倹約」の庶民哲学
(8)大久保利通・・・「官僚制度」の創建
(9)渋沢栄一・・・「日本的資本主義」の創始
(10)マッカーサー・・・日本を「理想のアメリカ」にする試行
(11)池田勇人・・・経済大国の実現
(12)松下幸之助・・・日本式経営と哲学の創出
です。なかなかシブい人選とテーマでしょ?
伝記自体に特に目新しい発見こそありませんが、この偉人と現代の社会システムと、こういうやりかた(考え方)でつなげますか?という、著者の発想というか考え方がよくわかる本です。少々無理矢理って感じの部分もありますが、なるほどねぇという箇所も多く勉強になりました。
著者は、昨年2019年2月に亡くなられましたが、根っからの関西人らしく、面白く商売気たっぷりの話し方は好きでした。一度目の万博を成功に導いた方ですので、二度目の大阪万博の開催までは元気で活躍してもらいたかったです。
★★☆
◇著者別読書感想(堺屋太一)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
キャロリング (幻冬舎文庫) 有川浩
2014年単行本、2017年に文庫化された長編小説です。変わっているのは舞台の原作を前提として書かれた小説で、その舞台上演と、あと2014年にはNHK BSのプレミアムよるドラマ『キャロリング~クリスマスの奇跡~』として放送もされました。
著者の代表作「阪急電車」や「図書館戦争シリーズ」「三匹のオッサンシリーズ」などいくつか読んできましたが、それらとは違うイメージです。
主人公は、子供の頃に親から虐待を受けてトラウマになっている独身のサラリーマン。高校時代からアルバイトで働いていた零細の子供服メーカーに勤務していますが、資金繰りが厳しくなり、廃業することになります。
タイトルの「キャロリング」とは、仏教徒や無宗教者が多い日本人には馴染みがありませんが、クリスマスイブに歌う聖歌(キャロル)のことを指すそうです。
この小説でも、会社が廃業するのがクリスマスの日で、会社が運営していた保育所に最後まで通っていた児童の通所最終日もクリスマスというのがひとつのキーとなります。
しかし、個人的には、大人顔負けの知識や判断力、理解力を持つ、天才的?な小学生が登場するのは、ドラマや映画でも時々出てきますが、ペンタゴンやFBI、社会保障システムへ簡単に侵入でき、都合良く書き換えられる天才ハッカーが主人公に協力するというような話しと同様、あまりにも都合が良すぎてリアリティがなく好きではありません。
★☆☆
◇著者別読書感想(有川浩)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
トワイライト・シャッフル (新潮文庫) 乙川優三郎
2014年に単行本、2016年に文庫化された短編小説集です。著者の作品では2017年に「脊梁山脈」を読んでいます。とてもよくできた面白い長編小説でした。
2017年4月前半の読書と感想、書評(脊梁山脈)
この著者さんは文学的な表現というかそのような文章がお好きな方で、ちょっと携帯小説などに慣れている人だと、まどろっこしいとか、回りくどいとか、表現がわからないとか、ひどい場合にはなに言っているかわからないんですけど~ってなるかもしれません。
旧漢字などを普通に使った三島由紀夫の小説などに慣れていればなんの問題もなくすらすら読めます。こちらには旧漢字や旧仮名遣いなどもありませんし。
この著書は短編と言うこともあり、読みにくくはありませんが、私にとってそうした文学的な表現は目に心地よい表現で、好きにならずにいられません。ってまだ2作品目ですけど。
「イン・ザ・ムーンライト」、「サヤンテラス」、「ウォーカーズ」、「オ・グランジ・アモール」、「フォトグラフ」、「ミラー」、「トワイライト・シャッフル」、「ムーンライター」、「サンダルズ・アンド・ビーズ」、「ビア・ジン・コーク」、「366日目」、「私のために生まれた街」、「月を取ってきてなんて言わない」の13話からなるこの作品ではそれぞれに主人公は違いますが、場所はすべて千葉県の房総半島が舞台で、まるで千葉県の観光PR小説か?と思ってしまいました。著者の故郷でもあるのでしょう。
千葉県にも大阪の織田作之助賞みたく、地域をテーマにした小説の文学賞があれば、間違いなく有力候補になっていたでしょう。
房総の鴨川にある近代的な総合病院が出てきたときには、浅田次郎の「天国までの100マイル」がふと頭をよぎりましたし、房総の岬に立つカフェなどが出てきたときは、森沢明夫の「虹の岬の喫茶店」(映画ではタイトルは「ふしぎな岬の物語」)を思い浮かべました。
房総の海岸線って言うのは、絵にも映像にも文学にも向いているのですね。空いている夜中に海岸沿いをグルッと走ってみたくなりました。
★★☆
◇著者別読書感想(乙川優三郎)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
カフーを待ちわびて (宝島社文庫) 原田マハ
著者の実質的なデビュー作で、2006年に単行本、2008年に文庫化されています。2009年には玉山鉄二やマイコが出演した映画も作られています。
著者の作品では、今回の作品よりずっと後に書かれた「奇跡の人 The Miracle Worker」や「楽園のカンヴァス」など3作品を読んでいますが、それらが硬派?な小説に対し、こちらはメロメロなラブロマンス小説というのに最初は違和感がありました。
2020年7月後半の読書(奇跡の人 The Miracle Worker)
2018年1月前半の読書(楽園のカンヴァス)
2017年6月前半の読書(本日は、お日柄もよく)
タイトルの「カフー」は読む前までは、著者の専門分野の美術に関係ある人の名前?とか勝手に思っていましたが、全然違いました。沖縄の方言で「カフー」は、「果報」とか「幸せ」とかいう意味なんですね。
舞台は沖縄県にある架空の小島、与那喜島で、そこにずっと住み、亡き祖母の後を継いで実家兼雑貨屋を営んでいる地元独身男性が主人公です。
その主人公の元に、「お嫁さんにしてください」と手紙が来ます。イタズラかなにかかと思っていたら、若い綺麗な女性が訪ねてきて一波乱が起きるというストーリー。
主人公の父親は昔に事故で亡くなり、母親は祖母との折り合いが悪く失踪、その祖母も亡くなり、ひとりお墓を守って淡々とした日々を送っていますが、リゾート開発の地上げ問題が関わってきます。
果たして、手紙を送ってきた女性は主人公とどのように関わってくるのか?ってことですが、やはり女性作家さんらしく、なにかと女性側に都合良く(女性読者を意識して?)できていて、夢見る乙女達を虜にしたことでしょう。
例えば、離婚して出戻ってきても、また不倫から堕胎したことがある身の上でも、仕事がバリバリできるわけでも家事ができるわけでもなくても、こうした若い女性がのどかな島の初婚の素直な男性のところへいけばドキドキしてもらえ、チヤホヤされて、上を下への大歓迎されるというような。
なにかこのなにも知らない男性主人公が、「いい人」全開で、なにかバカにされているようで気の毒に思いました。
それはともかく、こうしたラブストーリーは、ハーレクインを見るまでもなくやはり女性が好むもので、王子様に、汚れた服を着た貧しい女中見習いが見初められるような、そういうストーリーが好きなのでしょう。
★★☆
◇著者別読書感想(原田マハ)
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NHK BSのプレミアムドラマ「山女日記 女たちは頂を目指して」は湊かなえ氏の小説を原作とし、2017年に放送されましたが、今年2020年には再放送されました。
小説は昨年に読んでいましたが、ドラマを見ると小説の内容とはだいぶんと違います。
2019年6月前半の読書(山女日記 湊かなえ著)
それでも全編ロケ?のお金のかかっていそうな良いドラマでした。今はこうしたお金のかかった贅沢なテレビドラマが制作出来るのはNHKぐらいで、他の民放では無理でしょう。
そのドラマでは、新米山岳ガイド役の主人公に工藤夕貴が演じているのですが、その歩き方にちょっと興味をひかれ、いろいろと調べてみました。
山岳ガイドやベテランの登山者は、急な斜面や足場が悪いところ以外では、腕をお腹の前で組んで歩いています。
背にテントなど大きな荷物を背負っているので、できるだけ前後左右バランスを崩さないように歩くときは身体をひねらず、しかも両手を空けておくためにストックも使わず、淡々と歩く姿が印象的です。
この山岳ガイドがマスターしている歩き方は、いわゆる「ナンバ歩き」に近いものがあります。
「ナンバ歩き」とは、歌舞伎の歩き方というか、古武道や、忍者の歩き方などにもよく使われ、江戸時代までは、多くの日本人がこの歩き方をマスターしていたとも言われています(諸説あり)。
現代の普通の歩き方は、例えば右足を前に出した時に左足で地面を蹴ることで前に進み、右足と逆の左腕が前に出てそれが振り子のようになります。いわゆる「ウォーキングの正しい歩き方」です。
「ナンバ歩き」では、様々な紹介がありますが、ザックリ言えば右足が前に出ると右腕(右肩)も同時に前に出て、逆足で蹴って進むのではなく、体重移動で前に倒れるような感じで前に進む歩き方です。
歌舞伎での歩き方、古武道での足の進め方などにその歩き方が今も残っています。そうそう、「忠臣蔵」など時代劇によく出てくる老中など権力者が履いている裾が足よりもずっと長い「長袴」を履いていてそれを引きずって歩くときをイメージすればよくわかりそうです。
◇古武術研究家甲野善紀氏のYoutube動画
◇参考にした論文
論文「日本人の歩き方」PDF(椙山女学園大学 人間関係学部教授 山根一郎)
電車も自動車もない江戸時代に旅をするのはすべて徒歩です。しかも険しい山道も含め1日平均で30~40kmを10日間以上毎日歩くのは普通で、女性や体力がない男性でも、こうした全身の負担が少ない「ナンバ歩き」だからこそできたという説もあります。
西洋人のように、筋力や体力に優れていれば、片足ずつ後ろに蹴って歩くのはそう大変でもなかったでしょうけど、江戸時代の日本人平均身長は男性で155cm~156cm、女性で143~145cmと、かなり小柄で、栄養事情もよくなかったので、体力をできるだけ消耗しない「ナンバ歩き」が発達したとも言われています。
なぜ「ナンバ歩き」が省エネかと言うと、上記にも書いたように、後ろ足で蹴って前に進むのではなく、体重移動で、前に倒れる力で進むことで、足の筋肉をあまり使わなくて済むということと、歩く度に身体をひねらない(普通の歩き方では右足が前に出ると左腕が前にきてお腹をひねる)ので、内臓に優しい歩き方と言われています。
上記の山岳ガイドが、体力を温存し、重い荷物を背負っていてもバランスを崩さないよう、身体のブレや動きは最小にして歩く方法として「ナンバ歩き」をするのは理にかなったことです。
腕を前で組んでいるのは、経験上、ナンバ歩きの場合、腕を振るよりも動かないよう固定しておく方が歩きやすいからです。
初めて日本地図を作った伊能忠敬は、55歳から、日本全国約3.5万キロ(約5千万歩)を歩いて測量したと言われていますが、1日平均で1万3千歩、山道や未開の道なき道、海岸の砂浜などを歩いたそうです。
今の舗装された道の1万3千歩ではありません。おそらくですが、それが可能なのはナンバ歩きだったのではないでしょうか。
明治時代になり、西洋式軍隊が導入され、現代の(洋式の)歩き方に統一されたという研究者もいますが(諸説あり)、確かに小学校の体育の授業で最初に教わるのは、整列しての行進で、その時の歩き方は西洋風の歩行を教えられます。
時々要領の悪い子がクラスの中にはいて、必ず足と手が逆(つまりナンバ歩き)になり、クラスでは笑いものになりますが、もし江戸時代にナンバ歩きが主流であったのならば、その子は正しい日本人のDNAを引き継いでいる貴重な存在なのかも知れません。
「ナンバ歩き」は別名で常足(なみあし)と呼ばれる時があります。これは乗馬の際、馬の歩き方のひとつ「常足(なみあし)」からきているようです。
この「常足」を利用して武道や球技、陸上競技などに生かそうという運動もあるそうで、同好会もチラホラできています。
私も個人的に少し興味がわき、毎日のウォーキングの時、人の目がなさそうなところで、時々意識して「ナンバ歩き」を実践しています。人に見られると、ちょっと違和感があり「変な歩き方をしている不審者?」と思われそうです。
「ナンバ歩き」は慣れると確かに身体のブレやひねりが少なく、足の負担もなく、淡々と歩くのは楽です。上記にも書きましたが、腕は振らずに、前で押さえておくのがコツと言えばコツです。
ただ毎日のウォーキングは、身体を動かし、足の筋肉を鍛え、全身をほぐすためなので、負担が少ない「ナンバ歩き」ばかりをしていると、本末転倒で、「ナンバ歩き」をメインにしようとは思いませんが、今後、広いゴルフ場のコースなどで、パッと切り替えられるようにしておくのも悪くないかなと思っています。
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以前、と言ってもずいぶん前の6年前の2014年に「ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ」を書きましたが、意外と今でもよく読まれているようで、このブログのページ別ランキングでは常にベスト10入りしています。スペンサーシリーズの著者ロバート・B・パーカー氏が亡くなってもう10年経つのですけどね。
そこで、その勢いを借りて(柳の下のドジョウ)、私の好きなマイクル・コナリー(Michael Connelly)氏の出世作「ハリー・ボッシュシリーズ」についてまとめておきます。
コナリー氏は現在64歳でご健在、ボッシュシリーズの続編も今後出てくると思いますけど、とりあえずです。
当初は扶桑社から出版されていましたが、人気が出てきて、おそらく翻訳権の費用の問題でしょうか、途中から講談社に版権が移っています。不思議なのはなぜか1作品のみ早川書房が版権を得ていることです。
翻訳は出版社に関係なく、ずっと古沢嘉通氏が担当していますので、発行元が変わったことで、翻訳者も変わり、雰囲気がガラッと変わるってことはないのでそれは良かったです。
著者マイクル・コナリー氏は、チャンドラーの小説に憧れて小説の舞台ロスへ行き、新聞記者の仕事を経て作家となります。
1992年(著者36歳の時)にロス市警の刑事を主人公にした第1作「ナイトホークス」を出版し、それがアメリカ探偵作家クラブの「エドガー賞 処女長編賞」を受賞、一躍人気作家の仲間入りを果たしました。
コナリー氏はボッシュシリーズ以外にも、「リンカーン弁護士シリーズ」など、別の主人公の小説がいくつもあり、それらの小説にもボッシュ刑事が時々顔を出すこともありますが、今回はハリー・ボッシュが主人公の小説だけをピックアップしています。
主人公ハリー・ボッシュは、大学へ行くためにその資金と資格を得るため陸軍に入隊し、ベトナム戦争で実戦経験があります。その戦場でベトコンゲリラと激しい戦闘を経験し、帰国後ロス市警に入ってからもそれがトラウマになっています。
名前の由来は15世紀のオランダ(ネーデルランド)の有名な画家ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch)と同名同性で、アメリカ人には発音が難しく、通称の「ハリー」と呼ばれています。
ロス市警で刑事をやっているところから始まりますが、その後いったん警察を辞めて私立探偵の時代があります。その後再びロス市警に呼び戻されて刑事を務めることになります。
こうしたハードボイルド主人公には、スペンサーにはホーク、探偵マット・スカダーにはミック・バルーなど信頼が置ける相棒の存在が欠かせないところですが、ボッシュ刑事には、特に決まった相棒という存在がいません。以前は同僚の刑事キズミン・ライダーがそうだったのですが、途中から異動してしまいます。ま、その後も時々登場してボッシュを助けますが。
このシリーズは、レギュラー的に登場する人物(同僚や上司など)、以前に単発で登場した人物が、別の作品の重要な局面で出てきたりしますので、できればシリーズ順に読む方が理解が進みやすいです。途中から読んでもサッパリわからないということではありませんけど。
私がこのシリーズを読み始めたのは1992年にシリーズ第1作の「ナイトホークス」からです。当時はまだ続編が出るのか知りませんでしたが、その時はタイトルに引き込まれて、いわゆるジャケ買いでした。
さて、そのシリーズを下記の一覧にまとめておきます。(2023年6月3日に追記しています)
米国、日本とあるのはそれぞれの国での初版発刊年です。
1 | ナイトホークス |
The Black Echo | ブラックエコー。地下に張り巡るトンネルの暗闇の中、湿った空虚さの中にこだまする自分の息を兵士たちはこう呼んだ......パイプの中で死体で発見された、かつての戦友メドーズ。未だヴェトナム戦争の悪夢に悩まされ、眠れぬ夜を過ごす刑事ボッシュにとっては、20年前の悪夢が蘇る。事故死の処理に割り切れなさを感じ捜査を強行したボッシュ。だが、意外にもFBIが介入。メドーズは、未解決の銀行強盗事件の有力容疑者だった。孤独でタフな刑事の孤立無援の捜査と、哀しく意外な真相をクールに描く長編ハードボイルド。 | ○ | ||
米国発刊日 | 1992年 | |||||
日本発刊日 | 1992年 | |||||
2 | ブラック・アイス |
The Black Ice | モーテルで発見された麻薬課刑事ムーアの死体。殺人課のボッシュはなぜか捜査から外され、内務監査課が出動した。状況は汚職警官の自殺。しかし検屍の結果、自殺は偽装であることが判明。興味を持ったボッシュは密かに事件の裏を探る。新しい麻薬ブラック・アイスをめぐる麻薬組織の対立の構図を知ったボッシュは、鍵を握る麻薬王ソリージョと対決すべくメキシコへ......ハリウッド署のはぐれ刑事ボッシュの執念の捜査があばく事件の意外な真相!『ナイトホークス』に続く傑作ハードボイルド第2弾。<解説・関口苑生> | ○ | ||
米国発刊日 | 1993年 | |||||
日本発刊日 | 1994年 | |||||
3 | ブラック・ハート |
The Concrete Blonde | 11人もの女性をレイプして殺した挙げ句、死に顔に化粧を施すことから“ドールメイカー(人形造り師)”事件と呼ばれた殺人事件から4年――。犯人逮捕の際、ボッシュは容疑者を発砲、殺害したが、彼の妻が夫は無実だったとボッシュを告訴した。ところが裁判開始のその日の朝、警察に真犯人を名乗る男のメモが投入される。そして新たにコンクリート詰めにされたブロンド美女の死体が発見された。その手口はドールメイカー事件と全く同じもの。やはり真犯人は別にいたのか?人気の本格ハードボイルドシリーズ第3弾! | ○ | ||
米国発刊日 | 1994年 | |||||
日本発刊日 | 1995年 | |||||
4 | ラスト・コヨーテ |
The Last Coyote | ロサンジェルスを襲った大地震は、ボッシュの生活にも多大な影響を与えた。住んでいた家は半壊し、恋人のシルヴィア・ムーアとも自然に別れてしまう。そんななか、ある事件の重要参考人の扱いをめぐるトラブルから、上司のパウンズ警部補につかみかかってしまったボッシュは強制休職処分を受ける。復職の条件である精神分析医とのカウンセリングを続ける彼は、ずっと心の片隅に残っていた自分の母親マージョリー・ロウ殺害事件の謎に取り組むことに。『ブラック・ハート』に続く傑作ハードボイルド・シリーズ最新作。 | ○ | ||
米国発刊日 | 1995年 | |||||
日本発刊日 | 1996年 | |||||
5 | トランク・ミュージック |
Trunk Music | ハリー・ボッシュが帰ってきた!ハリウッド・ボウルを真下に望む崖上の空き地に停められたロールスロイスのトランクに、男の射殺死体があった。くトランク・ミュージック>と呼ばれる、マフィアの手口だ。男の名はアントニー・N・アリーソ、映画のプロデューサーだ。どうやら、彼は犯罪組織の金を<洗濯する>仕事に関わっていたらしい。ボッシュは被害者が生前最後に訪れたラスヴェガスに飛ぶ。そこで彼が出会ったのは、あの「ナイトホークス』で別れた運命の女性、エレノア・ウィッシュだった......。 | ○ | ||
米国発刊日 | 1997年 | |||||
日本発刊日 | 1998年 | |||||
6 | エンジェルズ・フライト |
Angels Flight | LAのダウンタウンにあるケーブルカー、<エンジェルズ・フライト>の頂上駅で惨殺死体が発見された。被害者の一人は、辣腕で知られる黒人の人権派弁護士ハワード・エライアス。市警察の長年の宿敵ともいえる弁護士の死に、マスコミは警官の犯行を疑う。殺人課のボッシュは、部下を率いて事件の捜査にあたるが......。緻密なプロットと圧倒的な筆力で現代アメリカの闇を描き出す、警察小説の最高峰<ハリー・ボッシュ>シリーズ第六弾、ついに待望の文庫化。(単行本「堕天使は地獄へ飛ぶ』改題) | ○ | ||
米国発刊日 | 1999年 | |||||
日本発刊日 | 2001年/2006年 | |||||
7 | 夜より暗き闇 |
A Darkness More Than Night | 心臓病で引退した元FBI心理分析官テリー・マッケイレブは、旧知の女性刑事から捜査協力の依頼を受ける。殺人の現場に残された言葉から、犯行は連続すると悟ったテリーは、被害者と因縁のあったハリー・ボッシュ刑事を訪ねる。だが、ボッシュは別の殺しの証人として全米が注視する裁判の渦中にあったー。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2001年 | |||||
日本発刊日 | 2003年 | |||||
8 | シティ・オブ・ボーンズ |
City of Bones | 丘陵地帯の奥深く、犬が咥えてきたのは少年の骨だった―20年前に殺された少年の無念をはらすべく、ハリウッド署の刑事ハリー・ボッシュは調査を始めた。まもなくボッシュは現場付近に住む児童性愛者の男に辿りつくが、男は無実を訴えて自殺を遂げる。手掛かりのない状況にボッシュは窮地にたたされ......深い哀しみを知る刑事ボッシュが、汚れきった街の犯罪に挑む。ハードボイルド界屈指のベストセラー作家が放つ感動作 | ○ | ||
米国発刊日 | 2002年 | |||||
日本発刊日 | 2005年 | |||||
9 | 暗く聖なる夜 |
Lost Light | ハリウッド署の刑事を退職し、私立探偵となったボッシュには、どうしても心残りな未解決事件があった。ある若い女性の殺人と、その捜査中目の前で映画のロケ現場から奪われた200万ドル強盗。独自に捜査することを決心した途端にかかる大きな圧力、妨害......事件の裏にはいったい何が隠されているのか? | ○ | ||
米国発刊日 | 2003年 | |||||
日本発刊日 | 2005年 | |||||
10 | 天使と罪の街 |
The Narrows | 元・ロス市警刑事の私立探偵ボッシュは、仕事仲間だった友の不審死の真相究明のため調査を開始する。その頃ネヴァダ州の砂漠では多数の埋められた他殺体が見つかり、左遷中のFBI捜査官レイチェルが現地に召致された。これは連続猟奇殺人犯、"詩人(ポエット)"の仕業なのか?そしてボッシュが行き着いた先には...。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2004年 | |||||
日本発刊日 | 2006年 | |||||
11 | 終決者たち |
The Closers | 3年間の私立探偵稼業を経てロス市警へ復職したボッシュ。エリート部署である未解決事件班に配属された彼は、17年前に起きた少女殺人事件の再捜査にあたる。調べを進めるうち、当時の市警上層部からの圧力で迷宮入りとなっていた事実が判明。意外な背後関係を見せる難事件にボッシュはどう立ち向かうのか。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2005年 | |||||
日本発刊日 | 2007年 | |||||
12 | エコー・パーク |
Echo Park | ロサンジェルスのエコー・パーク地区で、女性二人のバラバラ死体を車に乗せていた男が逮捕された。容疑者は司法取引を申し出て、死刑免除を条件に過去九件の殺人も自供するという。男の口から語られるおぞましき犯罪。その中に未解決事件班のボッシュが長年追い続ける、若い女性の失踪事件も含まれていた。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2006年 | |||||
日本発刊日 | 2010年 | |||||
13 | 死角オーバールック |
The Overlook | 深夜、ロスの展望台で発見された男の射殺体。後頭部に二発。怨恨か処刑か――。殺人事件特捜班での初仕事に意気込むボッシュだが、テロリストが関与している可能性が浮上。FBIの捜査介入に阻まれながらも、ボッシュはひたすら犯人を追う。十二時間の緊迫の捜査を描く、スピード感溢れる傑作サスペンス。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2007年 | |||||
日本発刊日 | 2010年 | |||||
14 | ナイン・ドラゴンズ |
Nine Dragons | かつて暴動が起きたエリアで酒店を営む中国人が銃殺された。ロス市警本部殺人事件特捜班のボッシュは、事件の背後に中国系犯罪組織・三合会が存在することをつきとめる。報復を恐れず追うボッシュの前に現れる強力な容疑者。その身柄を拘束した直後、香港に住むボッシュの娘が監禁されている映像が届く。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2009年 | |||||
日本発刊日 | 2014年 | |||||
15 | 転落の街 |
The Drop | 絞殺体に残った血痕。DNA再調査で浮上した容疑者は当時8歳の少年だった。ロス市警未解決事件班のボッシュは有名ホテルでの要人転落事件と並行して捜査を進めていくが、事態は思った以上にタフな展開を見せる。2つの難事件の深まる謎と闇!許されざる者をとことん追い詰めていく緊迫のミステリー! | ○ | ||
米国発刊日 | 2011年 | |||||
日本発刊日 | 2016年 | |||||
16 | ブラックボックス |
The Black Box | ロス暴動大混乱の最中に発生し、まともに捜査ができず心に残っていたジャーナリスト殺害事件から20年。すべての事件には解決につながる「ブラックボックス」があるという信念のもと、ロス市警未解決事件班ボッシュは再捜査を開始。市警上層部の政治的圧力による監視をくぐり抜け、単独で事件を追いかける。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2012年 | |||||
日本発刊日 | 2017年 | |||||
17 | 燃える部屋 |
The Burning Room | ボッシュはあらたな相棒として、若き新米女性刑事ルシア・ソト(28歳)と組むことになった。ソトはメキシコ系アメリカ人で、四人の武装強盗と対峙して二人を撃ち倒した事件で有名になり(その際、相棒は殉職した)、刑事に昇進し、未解決事件班に配属されたのだった。今回、ふたりが担当するのは、十年まえに銃撃され、体に残った銃弾による後遺症で亡くなったばかりの元マリアッチ・ギタリスト、オルランド・メルセドの事件。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2014年 | |||||
日本発刊日 | 2018年 | |||||
18 | 贖罪の街 |
The Crossing | ボッシュはDROP(定年延長選択制度)の任期半ばでのロス市警退職を余儀なくされ、異母弟のミッキー・ハラーを代理人に立て、ロス市警への異議申立ての訴訟をおこなっているが、それ以外は、引退後の念願だった、古いバイクのレストアを老後の楽しみにしようとしていた。 ところがハラーから呼び出され、子飼いの調査員が怪我をして入院しているため、いま抱えている殺人事件弁護の調査員になってくれないか、と頼まれる。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2016年 | |||||
日本発刊日 | 2019年 | |||||
19 | 訣別 |
The Wrong Side of Goodbye | ある日、元ロス市警副本部長で、現在はセキュリティ会社トライデント・セキュリティの重役になっているクライトンに呼び出され、トライデント社の顧客の大企業のオーナーである富豪、ホイットニー・ヴァンス(八十五歳)が、ボッシュを名指しで依頼したいことがあると言っている、と告げられる。依頼内容は、クライトンも知らず、ボッシュにのみヴァンス本人から伝えるとのこと。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2016年 | |||||
日本発刊日 | 2019年 | |||||
20 | 汚名 |
Two Kinds of Truth | サンフェルナンド市警の刑事として、自発的に未解決事件捜査にあたっているボッシュ。三十年ほど前に逮捕し、服役中の死刑囚連続殺人犯ボーダーズに関し、新たな証拠が出たとして、再審が開かれる見込みだと聞かされる。一方、薬局経営の親子が銃殺されるという事件が所轄で発生、麻薬捜査に駆りだされる。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2017年 | |||||
日本発刊日 | 2020年 | |||||
21 | 素晴らしき世界 |
Dark Sacred Night | ロス市警ハリウッド署深夜勤務担当女性刑事レネイ・バラードが、ハリー・ボッシュと共演。深夜勤務からハリウッド署に戻ってきたバラードは、古い事件ファイルを見ず知らずの男が漁っていたのに気づく。男はロス市警を引退したハリー・ボッシュだった。ハリウッド分署管内で発生した古い未解決事件のファイルを調べていたのだった。ボッシュを追いだしたバラードだったが、その事件に興味を示す。十五才の家出少女がハリウッドの路地で殺害された事件だった。バラードはボッシュと協力して、殺人事件の真相解明に向かう。 | ○ | ||
米国発刊日 | 2018年 | |||||
日本発刊日 | 2020年 | |||||
22 | 鬼火 |
The Night Fire | ハリー・ボッシュが新人の殺人事件担当刑事だったころ、パートナーを組んで、殺人事件に関する取り組み方を一から教えてくれた恩師にあたるジョン・ジャック・トンプスン元刑事が亡くなり、ボッシュが葬儀に参列したところ、未亡人から夫が自宅に残していた一冊の殺人事件調書を託される。二十年まえに(2000年1月)ロス市警を引退したトンプスンは、その調書を市警から盗んで、自宅に保管していたらしい。 その事件とは、1990年に起こった元服役囚で麻薬中毒者の白人男性ジョン・ヒルトン(24歳)がハリウッドの路地で後頭部を撃たれて亡くなった未解決事件だった。 |
|||
米国発刊日 | 2019年 | |||||
日本発刊日 | 2021年 | |||||
23 | ダーク・アワーズ |
The Dark Hours | ブラック・ライヴズ・マター運動がロス市警にも逆風となった2020年。 深夜勤務刑事のバラードは二人組のレイプ犯(ミッドナイト・メン)を追って大晦日の警戒態勢に入っていた。年越しの瞬間に銃による殺人事件が発生し、薬莢から10年前の未解決事件で同じ銃が使われていることが判明する。その担当は現役時代のボッシュだった。 ハリー・ボッシュとレネイ・バラード共演第3弾。 |
|||
米国発刊日 | 2021年 | |||||
日本発刊日 | 2022年 |
過去にハリー・ボッシュが主役の小説で読書後の感想を書いたのは、
1721 2023年5月後半の読書(贖罪の街)
1667 2022年9月後半の読書(燃える部屋)
1174 2017年11月前半の読書(ブラックボックス)
1151 2017年8月前半の読書(転落の街)
918 2015年4月後半の読書(ナイン・ドラゴンズ)
887 2015年1月前半の読書(シティ・オブ・ボーンズ)
853 2014年9月前半の読書(暗く聖なる夜)
469 2011年1月後半の読書(死角)
410 2010年7月前半の読書(エコー・パーク)
です。ご参考まで。
【関連リンク】
1782 イアン・フレミング著「007ジェームズ・ボンドシリーズ」全巻まとめ
1127 元アル中探偵マット・スカダーに惚れる
881 私立探偵ハードボイルド小説2つ
808 ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ
328 スペンサーシリーズの読み方(初級者編)
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著者別読書感想INDEX
1471
しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF) グレッグ・イーガン
著者はオーストラリア出身の物理学を学んだSF作家さんで、やはり理科系の坂村建氏の解説でも書いてありましたが、文系の人にはよくわからない話しがバンバンでてきて、しかも文系にも理解してもらおうと丁寧な説明などは一切ない小説短編集です。
「適切な愛」「闇の中へ」「愛撫」「道徳的ウイルス学者」「移相夢」「チェルノブイリの聖母」「ボーダー・ガード」「血をわけた姉妹」「しあわせの理由」の9話からなります。
読後には、あの話しってどの短編だっけ?と、文系の私にはそんなあやふやなままです。
ただのSFではなく、哲学的SF小説(坂村建氏解説)ということで、未来科学と哲学と両方を理解しなければ十分に楽しめないというのは、なかなか難易度が高いです。
理数系も哲学も得意じゃない私としては、実はそれなりには面白かったです。意外な感じ。でもそれが正しい(著者が意図した)理解と楽しみであったかは神のみぞ知るです。
理解出来た(それなりに面白く読めた)短編は、脳内の記憶をコンピュータに移し替えることで生き続けることができる「移相夢」、古いイコンを巡って殺人事件が起きる「チェルノブイリの聖母」、子供の頃に死ぬときも一緒と話し合った一卵性双子の姉妹が離れた場所で遺伝子に関係する新型ウイルスに罹る「「血をわけた姉妹」、そして表題にもなっている脳内ドーパミンや新たな脳内手術法が出てくる「しあわせの理由」。
こうしたSFを読むときは、例えサッパリわからない時でもイライラせずに、淡々と読むに限ります。そのうちボンヤリとでもわかってくるものです。サッパリわからない時もありますけど。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
向田理髪店 (光文社文庫) 奥田英朗
小説宝石に2013年~2015年連載され、2016年に単行本、2018年に文庫化された連作短編小説です。
好きな作家さんで、1999年の実質デビュー作「最悪」以来、ほとんどの作品を読んでいます。
最近は「我が家のヒミツ」「我が家の問題」などの「平成の家族小説シリーズ」をチマチマと読んでいます。感想の評価はあまり高くないですが。
2019年11月後半の読書(我が家のヒミツ)
2019年7月後半の読書(我が家の問題)
この作品は「向田理髪店」「祭りのあと」「中国からの花嫁」「小さなスナック」「赤い雪」「逃亡者」の6編からなり、主人公はいずれも北海道の夕張をイメージできる、財政破綻したひなびた元炭鉱都市にある、理髪店の50代店主です。
店主の息子は都会へ出て働いていましたが、実家へ帰ってきて理髪店の跡を継ごうとしますが、父親の店主はこんなところで店をやっていても将来性はないと乗り気でありません。
そうした疲弊した地方都市での騒動がテーマとなりますが、これがまた「若者は大都市へ出て行き高齢者だらけで活気のない町」「跡取り息子の嫁のきてがなく中国の地方から」「出戻りで故郷に帰ってスナックを始めた色気たっぷりなママさん」「映画ロケに町中あげての応援とエキストラ出演」など、誰でもがすぐにこれといった産業がないくたびれた地方都市をイメージする内容で、ちょっとガッカリ。
短編で直木賞を受賞した「伊良部シリーズ」や、長編だけど「サウスバウンド」「オリンピックの身代金」のようなキレのある小説はもう出てこないのかな、、、
ちょっと期待していただけに、残念ながら最近読む著者の作品は私にとってはあまり向かない感じです。
★☆☆
◇著者別読書感想(奥田英朗)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
邂逅の森 (文春文庫) 熊谷達也
私と同年代の著者が2004年に直木賞を受賞した作品で、一般には馴染みがなく、近代化で消えつつあるマタギと呼ばれる山の狩猟民を描いた小説です。
マタギとヒグマが登場した小説としては、過去に吉村昭著で実話の巨大な羆が村を襲った1915年(大正4年)の三毛別羆事件を題材にした「羆嵐」を読みました。
2015年10月前半の読書と感想、書評(羆嵐)
こちら(邂逅の森)の小説は、時代は大正末期から昭和初期の頃の話しで、世界を見ると、第一次世界大戦や、日露戦争、満州事変ぐらいの時代背景です。
小説の舞台は山形から秋田周辺の山深い里が中心で、マタギの父親から当然のように跡を継いだ少年が、様々な経験と苦難を乗り越えていく半生です。
夜這いをかけた村の実力者の娘とのあいだに子ができてしまい、実家を追い出され、マタギの仕事を失い、炭坑で働くようになりますが、やがてマタギの血が騒いで、熟練工となった炭坑夫の仕事を捨てて、再びマタギの世界へ足を踏み入れます。
医薬品として高く売れるヒグマの胆嚢を富山の薬売りに騙されて持ち逃げされたり、閉鎖的な村に住まわせてもらう条件として、女郎として売られたあとに、村に戻ってきていた女性を嫁にすることになったりします。
そして、会うこともかなわなかった、若いときの過ちで生まれた息子との出会い、その母親と息子に課せられた過酷な生活、最後に、マタギをやめるかどうか迷いつつ、ツキノワグマとの壮絶な闘い(クライマックス)と続きます。
いやー、とっても面白かった。読み進めると同時に、その場面場面の映像がリアルに思い浮かぶ内容で、もし映画になれば絶対に見たいと思います。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
血の収穫【新訳版】 (創元推理文庫) ダシール・ハメット
原題は「RED HARVEST」で初出は1929年の作品です。その後多くの出版社から翻訳版が出版されましたが、今回購入したのは2019年刊の東京創元社版で翻訳者はローレンス・ブロック作品などの翻訳で馴染みのある田口俊樹氏で、この作品では8人目の翻訳者(解説より)とのことです。
ハードボイルド小説でレジェンド的な著者ですが、この作品が長編としては記念すべき最初の作品です。この作品の内容をモチーフとした映画や小説がその後数多く作られていますが、その中のひとつに黒澤監督の映画「用心棒」があります。
そのモチーフとは、ある問題を抱えている町(村)に第三者がやってきて、その町を牛耳っている悪人達の中に入り込み、悪人同士が殺し合いをするように仕向けていくという流れです。
著者の作品では、かなり昔に代表作「マルタの鷹」を読んでいますが、その後あまり食指が動かずこの作品で2作目です。映画「マルタの鷹」はハンフリー・ボガートが主演し世界中でヒットして有名になりました。
主人公は、著者が勤務していたこともあるアメリカの大手探偵事務所ピンカートン探偵社の私立探偵で、依頼があり町へやってきます。
しかしその依頼主である新聞社CEOが、直前に殺されてしまい、依頼主の父親で、町の大物の実業家へ会いに行くと、この町に巣くう悪人達を一掃して欲しいと新たな仕事を依頼されます。
そこで、上記にも書いたように、警察官を含む悪人同士を対立させ、抗争を起こさせるように仕向けていきます。
今から90年も前に書かれた小説ながら、翻訳者の努力もあってか、古さはほとんど感じず、現代の小説と言っても通用しそうな話となっています。まったく素晴らしい。
またタフな私立探偵が自ら語っていくという一人称スタイルを取り入れ、ハードボイルド小説のひとつの形式を確立した記念碑的な作品です。いや~面白かったです。
★★★
【関連リンク】
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