リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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やがて、警官は微睡る(双葉文庫) 日明 恩
昭和時代の香りが漂う無口で強面の刑事と、名家のお坊ちゃまで、一度警察官を辞めi種キャリア採用で復帰してきた軽いノリで多弁な刑事のコンビで活躍するシリーズですが、この3作目は過去のものとは少し違っています。
横浜みなとみらい地区に新規オープンした外資系ホテルで人質を取ったテロが発生し、そのホテルで見合いのためにいた主人公刑事が、若いフロントマンと一緒に武装したテロリスト達と戦うという内容です。
しかし以前のような反社会組織や密輸業者など裏社会との戦いとは違い、多国籍のサイコキラーやあちこちに爆弾を仕掛け、情け容赦なく銃器を打ちまくるというまったくリアリティのない内容にはがっかりしました。
これは「ダイハード」のような、映画やテレビドラマを念頭に派手なエンタメ効果を狙ったものなのか、あまりにも過去の作風と違っていて、シリーズ第1作「それでも、警官は微笑う」(2002年)や、消防署員が主役の別シリーズ第1作で「鎮火報 Fire’s Out」(2003年)以来の著者のファンでしたがもう続編はいいかなという感じです。
★☆☆
◇著者別読書感想(日明恩)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
キル・リスト(上)(下)(角川文庫) F・フォーサイス
主役はアメリカ人のイラクやアフガニスタンで実戦経験のある中年の海兵隊員で、若いときにアラビア語を学んでいたことから、名前すらわからないイスラム過激派のテロリストを探し出して抹殺する仕事を与えられます。
この仕事では、アメリカの国防省、CIA、英国やイスラエルの情報機関、さらには英国の特殊部隊まで巻き込んだ掃討作戦に広がっていきます。
日本語翻訳版が2014年に出版されたと言うことは、英国本国では2013年頃には発刊されているはずで、これは、9.11テロの首謀者ウサーマ・ビン・ラーディンの暗殺(2011年)に触発されたんじゃないかなと勝手に思っています。
本著にも、どうやってウサーマ・ビン・ラーディンの居場所が特定できたかなど書かれていました。
今回は、中東からパキスタン、そしてアフリカと居場所を変えるテロリストを追いかけ、居所を突き止めますが、そこにはイスラエルの貴重な工作員が潜り込んでいるために無人機からミサイルを撃ち込むという荒っぽいことができず、おびき出しての軍事作戦を実行することになります。
盗聴やハッキング、無人偵察機などハイテク軍事技術も満載で、スパイの世界も007の時代からすると大きく変わってしまったものです。
作戦に大きな失敗や破綻はなく、アメリカと英国の密接な連携で淡々と進む話であまりひねりや盛り上がりはないですが、一般人にはまったく馴染みがなく縁がないSFのようなリアルの世界が確かにあるのだということは理解できました。
★★☆
◇著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
検事の本懐(宝島社文庫) 柚月裕子
短編は、「樹を見る」「罪を押す」「恩を返す」「拳を握る」「本懐を知る」の5編です。
地方検察庁に配属された若い検事を主人公としますが、その主人公の父親が元弁護士で、顧問弁護士をしていた企業のオーナーが亡くなった時に業務上横領が発覚し逮捕されて実刑を受けるという過去があります。
主人公の父親は収監中に病気で死亡していますが、今回の短編の中でその事件と、発覚してから一切の言い訳をせず実刑を言い渡されることになった理由などが明らかになります。
その他、大掛かりな事件捜査のため東京地検に呼ばれて地味な仕事を担当しますが、その中で見逃されていた謎に気がつき、上司に報告するも相手にされず、結果的に「できないやつ」という汚名を着せられてしまいます。しかしそのときに上司に伝えたヒントが元になって事件は大きく動くことになります。
5編、それぞれ、派手な活躍などはなく、検事の地味な仕事が綴られていきますが、その中にある人間の思いをくみ取れる正統派検事としての活躍が秀逸です。
このシリーズは、すでに第3弾の「検事の死命」(2013年)、第4弾の「検事の信義」(2019年)が発行されています。また機会を見て読んでみたいと思っています。
★★★
◇著者別読書感想(柚月裕子)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
みちづれ 短篇集モザイクI(新潮文庫) 三浦哲郎
サブタイトルに「短篇集モザイクI」とありますが、1作が約10ページ(文庫)程度のかなり短い作品で、こちらは純文学でジャンルは違いますが、星新一氏のショートショートのような感じです。
読むのは楽で良いですけど、あまりにも短いのでよく理解できないまま、あるいは余韻を楽しむまでもなく終わってしまうというパターンです。
したがって、感想も書きにくく、読んだそばから次の作品へ意識がいってしまい、せっかく面白かったのにすぐ忘れてしまうパターンでもったいない感じです。
収録作品は「みちづれ」「とんかつ」「めまい」「ひがん・じゃらく」「ののしり」「うそ」「トランク」「なわばり」「すみか」「マヤ」「くせもの」「おさかり」「ささやき」「ねぶくろ」「はらみおんな」「かきあげ」「てんのり」「おさなご」「こいごころ」「にきび」「オーリョ・デ・ボーイ」「さんろく」「ゆび」「じねんじょ」の24篇です。なぜかすべてひらがなかカタカナのタイトルです。
この短篇集モザイクには「ふなうた短篇集モザイクII」「わくらば短篇集モザイクIII」の続編があります。
★★☆
◇著者別読書感想(三浦哲郎)
【関連リンク】
1月後半の読書 25時、晴子情歌(上)(下)、淀川八景
1月前半の読書 東京クルージング、資源カオスと脱炭素危機、カオスの娘、橋を渡る
12月後半の読書 グレイヴディッガー、駐車場のねこ、平凡すぎて殺される、鬼統べる国大和出雲古事記異聞
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毎年1回、1年間に読んだ書籍(小説、エッセイ、ビジネス、教養、ノンフィクションなど)を思い出して、その中からジャンル別にナンバーワンを決めているシリーズで、2012年分から続いています。
1692 リス天管理人が2022年に読んだベスト書籍
1601 リス天管理人が2021年に読んだベスト書籍
1500 リス天管理人が2020年に読んだベスト書籍
1401 リス天管理人が2019年に読んだベスト書籍
1295 リス天管理人が2018年に読んだベスト書籍
1191 リス天管理人が2017年に読んだベスト書籍
1093 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
993 リス天管理人が選ぶ2015年に読んだベスト書籍
886 リス天管理人が選ぶ2014年に読んだベスト書籍
784 リス天管理人が選ぶ2013年に読んだベスト書籍
676 2012年に読んだ本のベストを発表
私が読むのは基本的には文庫や新書の旧刊本で、単行本や新刊本はほとんどなく、あまり著者やジャンルが偏らないよう、できるだけバランス良く、読んでいるというのが特徴です。
2023年の1年間に読んだ本の合計は、作品数が96作品(2022年99作品)、上下巻を2冊とカウントする冊数では110冊(2022年107冊)となりました。前年(2022年)からは作品数では3作品減りましたが、総冊数では3冊増加しました。
リタイア後には暇な時間が増えて読書数も増えるのか、それとも往復2時間の通勤時間がなくなり、その読書時間がなくなり減ってしまうのか、どうなるだろうって思っていましたが、ここ数年みてきた限りほとんど読書量に変化はなさそうです。
ただ、最近は、読書に集中していられる時間が徐々に短くなってきているのと、細かい文字を読むのがつらくなっていることを実感していて今後読書量が増えると言うことはなさそうです。集中力と視力の問題は老化現象ですからやむを得ないかなと思っています。
過去の年間読書数(作品数と冊数)は下記の通りです。
新書/NF | 冊数 | 海外 小説 |
冊数 | 日本 小説 |
冊数 | 作品数計 | 冊数計 | 月間平均 冊数 |
|
2013年 | 86 | 98 | 8.2 | ||||||
2014年 | 26 | 26 | 13 | 17 | 62 | 70 | 101 | 101 | 8.4 |
2015年 | 17 | 17 | 12 | 65 | 94 | 107 | 8.9 | ||
2016年 | 14 | 14 | 12 | 16 | 65 | 79 | 91 | 109 | 9.1 |
2017年 | 26 | 26 | 16 | 21 | 62 | 70 | 104 | 117 | 9.8 |
2018年 | 26 | 26 | 9 | 13 | 64 | 71 | 99 | 110 | 9.2 |
2019年 | 29 | 29 | 8 | 9 | 71 | 77 | 108 | 115 | 9.6 |
2020年 | 29 | 30 | 14 | 19 | 51 | 56 | 94 | 105 | 8.8 |
2021年 | 22 | 22 | 13 | 21 | 58 | 69 | 93 | 112 | 9.3 |
2022年 | 11 | 11 | 15 | 16 | 73 | 80 | 99 | 107 | 8.9 |
2023年 | 16 | 16 | 17 | 27 | 63 | 67 | 96 | 110 | 9.2 |
◇ ◇ ◇
それでは、今回も「新書/ビジネス/ノンフィクション部門」「海外小説部門」「国内小説部門」の3部門に分けて候補作と大賞を発表します。
まずは「新書/ビジネス/ノンフィクション部門」ですが、2023年は16作品(16冊)読んでいます。前年の11作品(11冊)からは5作品増えています。
その中から大賞の候補作は、「最澄と空海」梅原猛著、「新老人の思想」五木寛之著、「年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方」荻原博子著、「定年バカ」勢古浩爾著の4作品です。
その候補から大賞に選んだのは、、、ドコドコドコドコ・・・
「年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方」荻原博子著に決定!!
パチパチパチ!
感想は、
◇2023年4月前半の読書と感想、書評(年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方)
上記の感想でも書きましたが、結論としては「年金だけでは暮らせない」ということでタイトルに虚偽ありですが、こうしたタイトルは刺激的でなければ売れないので仕方ないでしょう。
できればこれは年金生活に入る前、それも10年以上前には読みたい本です。そうでないと、いろいろ準備ができません。
それでも、今の生活に無駄はないか?お金の使い方、貯め方は間違っていないか?など参考になることがいっぱいです。
◇ ◇ ◇
次は、「海外小説部門」です。昨年2023年は、17作品(27冊)読みました。2022年は15作品(16冊)でしたので、作品数と冊数も増えています。
その15作品の中から大賞候補は、「ロスト・シンボル(上)(中)(下)」ダン・ブラウン著、「大いなる遺産(上)(下)」ディケンズ著、「マルタの鷹」ダシール・ハメット著、「もう年はとれない」ダニエル・フリードマン著、「ホテル・ニューハンプシャー(上)(下)」ジョン・アーヴィング著の5作品です。
今回、この海外小説部門は力作や古典的名作が多くて迷いました。
大賞は!、、、ドコドコドコドコ・・・
「大いなる遺産(上)(下)」ディケンズ著に決定です!
パチパチパチ!
感想は、
◇2023年3月前半の読書と感想、書評(大いなる遺産)
今回は候補に入りませんでしたが、同時期のロンドンが舞台の「ボートの三人男」ジェローム・K・ジェローム著を先に読んでいたことから、当時の社会情勢やテムズ川周辺の様子などがわかり面白く読めました。
アメリカンドリームが生まれる前の、産業革命の成功で世界の中で経済大国をひた走る英国の格差社会とイングランドドリームの話ですが、今読んでも色あせることがないよくできたドラマでした。
僅差の次点で「マルタの鷹」ダシール・ハメット著が続きますが、これは私の個人的な趣味(探偵好き)が影響しているせいかもしれません。
◇ ◇ ◇
最後にもっとも読んだ作品数が多い「国内小説部門」です。昨年2023年に読んだ国内小説は63作品(67冊)で、一昨年2022年の73作品(80冊)から大きく減りましたが、これはバランスを意識して前年より新書や海外小説を多めに読んできたためで想定内です。
その63作品の中から大賞候補としてあげたのは、
「JR上野駅公園口」柳美里著、「漂流」吉村昭著、「オライオン飛行」高樹のぶ子著、「一八八八切り裂きジャック」服部まゆみ著、「光と影」渡辺淳一著、「二人のクラウゼヴィッツ」霧島兵庫著、「暗幕のゲルニカ」原田マハ著、「二千七百の夏と冬(上)(下)」荻原浩著の8作品です。
これらはどれも力作で、私の好奇心や趣向をくすぐり、感情を揺さぶり、そして読み終えてしまうのが残念に思った面白い小説でした。
それでもどれか一作を選ぶとすると、、、、、、ドコドコドコドコ・・・ドコドコドコドコ・・・ドコドコドコドコ・・・ドコドコドコドコ・・・
パンパカパーーーン!
「暗幕のゲルニカ」原田マハ著に決定です!
パチパチパチ!パチパチパチ!パチパチパチ!
感想は、
◇2023年6月後半の読書と感想、書評(暗幕のゲルニカ)
こちらからでも感想が読めます。
◇著者別読書感想(原田マハ)
国連に飾られているピカソのゲルニカはピカソの祖国スペインが内戦で無差別爆撃で破壊された街を抽象的に描いたことは有名な話ですが、この小説ではそのゲルニカを描くことになったパリに住んでいたピカソの晩年生活と、恋人でカメラマンのドラの生活が生き生きと蘇ってきました。
個人的な趣味趣向で、小説でも実際に起きた歴史的事象や有名人をモチーフにした作品が好きで、過去には「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク著や、「八甲田山死の彷徨」新田次郎著などが年間大賞に、太平洋戦争中、無謀とも言えるキスカ島からの撤退を描いた「八月十五日に吹く風」松岡圭祐著や、水戸の黄門様の真実に近い小説「光圀伝」冲方丁著が年間大賞次点に入っています。
今回の候補作の中にも、「漂流」吉村昭著、「オライオン飛行」高樹のぶ子著、「一八八八切り裂きジャック」服部まゆみ著、「光と影」渡辺淳一著、「二人のクラウゼヴィッツ」霧島兵庫著の5作品は、いずれも歴史に出てくる人物(有名・無名、本名・別名にかかわらず)が登場してくる作品です。
中でも「一八八八切り裂きジャック」が描く舞台は、先述の「海外小説部門」大賞の「大いなる遺産」と時代も場所も近く、知識の相乗効果が得られて楽しめました。
また無人島漂流ものが大好きな私としては、ノンフィクションに近いと思われる江戸時代に船が嵐に遭い漂流し凄まじい無人島生活をおくる「漂流」吉村昭著はお勧め小説です。
さて、それらの秀作揃いの「国内小説」の次点は、「一八八八切り裂きジャック」服部まゆみ著とさせていただきます。
感想は、
◇2023年1月前半の読書と感想、書評(一八八八切り裂きジャック)
日本でもよく知られている「切り裂きジャック」ですが、今回この小説を読み、その後wikiなどでも調べてかなり詳しくなりました。
この小説が舞台となった同時期に、日本から欧州へ公費留学していた森鴎外(森林太郎)や北里柴三郎が脇役で登場したり、昔映画化されて有名になったエレファントマンが大衆見世物小屋で客を集めていたのをうまく小説に取り込んでいます。そうすることで、なにかその時代と遠い場所が読者にとって身近に感じられるという巧い手法です。
以上、「リス天管理人が2023年に読んだベスト書籍」でした。
今年も面白い本に出会えますように。
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25時(新潮文庫) デイヴィッド・ベニオフ
◇2014年2月後半の読書と感想、書評(卵をめぐる祖父の戦争)
今回も内容は全く知らずに読み始めましたが、日本とアメリカでは犯罪者が裁判で有罪が確定したあと刑務所への収監までの扱いが全然違うので、まずそれに驚くばかりでした。
というのも、この主人公の話ですが、麻薬の密売で逮捕され7年の懲役刑が裁判で確定したあとも、決められた収監日までは保釈金を積めば外で普段通りの生活ができるのがアメリカらしいです。
タイトルの25時間は、収監されるまであと25時間というところから始まり、7年間の刑に服するか、親が店を売って用意してくれた多額の保釈金を没収されることを覚悟して逃げ回ることにするか、それとも自殺するか、その決断の時が刻一刻と迫ってきます。
7年間の刑がそれほど悩むのか?というのも日本ならではのことで、アメリカでは白人の美少年が刑務所に収監されると、マイノリティの収監者達に襲われるというのが定説で、主人公はその美少年と言える白人青年でした。
派手なアクションなどはなく、主人公とその周囲にいる父親、恋人、親友、そして麻薬ディーラーのボス、密売仲間などとの人間関係、気持ちや感情の移り変わりなど、繊細な描写に終始し、アメリカ人の主にエンタメ系の作家の書いた小説とは思えないほどでした。
最後はややわかりづらかったですが、「もし逃げ出しうまく逃げ延びたら・・・」という妄想?で終わりますが、自業自得とは言え現実はそうでないという、、、
いや面白かったですが、「卵をめぐる祖父の戦争」が突出した作品だっただけに、それには及ばないという感想です。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
晴子情歌(上)(下)(新潮文庫) 高村薫
本著は2002年に単行本、2013年に文庫化された長編小説です。過去に著者の小説は1995年に「黄金を抱いて翔べ」を読んでから、「レディ・ジョーカー」など合計9作品を読んでいますが、それらとはまったく毛色の違った内容で、意外な感じがしました。
文庫の上下巻合計で800ページを超える、通常の文庫本なら3~4冊分はありそうなボリュームで、しかもその中の半分ぐらいが、旧字、旧仮名で書かれた主人公が書いた手紙となっていて、それに慣れるまでに時間がかかりました。
さらに、登場人物が豊富で、巻頭に家系図がありそれに救われましたが、しばしばその家系図を見に行く手間もありサクサクと読めるものではありませんでした。
主人公と結婚した夫の兄弟(義兄、義姉)が4人いて、その配偶者を合わせると8人、夫の両親に主人公の父親の兄弟が5人、母親の姉妹が他に2人などなど。さらに甥や、名家で代議士を出した名家だけに番頭や女中、秘書などもいます。家系図がなければとても読み進められません。
主人公は、戦前に東京で生まれた女性とその息子の二人で、エリートの英語教師だった女性の父親が妻(主人公の女性の母親)を病気で亡くしたあと、仕事を辞めて生まれ故郷の青森の寒村へ引っ越す決意をしたことで、その女性の人生が大きく変わります。
その主人公の女性がやがて女中として奉公していた青森の名家のフラフラと自由人を謳歌していた4男坊と出征する前日に結婚することになり、そしてその夫が戦地にいるいるあいだに義兄の子をもうけ、その子(息子)へ母親から過去の自分の人生や息子の出生のことを手紙に書いて教えていく流れです。
中でも、主人公の父親が故郷に戻ってすぐに親戚を頼って漁師となり、また、息子も東大理学部を卒業した後、女性トラブルを起こしたこともあり、就職せずにやはり親戚を頼って遠洋漁業の船員になるなど、昭和から現代までの漁業についてかなり詳細に書かれています。
テーマは、タイトルからすれば、昭和の戦前に青森の寒村に引っ越した女性の一代記ですが、その息子の母親に対する疑念と愛情、そして主人公の女性の恋心、激動の戦前戦後の日本、特に北方漁業を中心とした社会の縮図と言ったところでしょうか。
とにかく登場人物が多く、読むのに疲れましたが、丁寧に最後まで読み切ったという満足感があります。
★★☆
◇著者別読書感想(高村薫)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
淀川八景(文春文庫) 藤野恵美
今回は、タイトルに惹かれて購入しました。というのも、過去に淀川に架かる豊里大橋(大阪市東淀川区)のすぐそばに短い期間でしたが住んでいたことがあり、なんとなく懐かしさを覚えたからです。
私が淀川や淀という地名を聞くと、すぐ頭に浮かぶのは淀競馬場と淀殿(織田信長の姪になる茶々)ですが、今回は淀川をテーマにした8つの短編の物語で、競馬場も安土桃山時代の話も出てきません。
8編のそれぞれのタイトルは、『あの橋のむこう』『さよならホームラン』『婚活バーべキュー』『ポロロッカ』『趣味は映画』『黒い犬』『自由の代償』『ザリガニ釣りの少年』です。
その中で私が一番好きなのが『ポロロッカ』で、これは淀川河口から上流に向けて遡り琵琶湖(瀬田の唐橋)までをひたすら歩く、紀行ものというか、ロードノベルで、これはできれば短編ではなくもっといろいろな要素やうんちくなどを加味し中編以上の作品で読みたいなと思いました。
ただそれぞれの作品で描かれているのは、日常生活での人間関係の機微がメインで、各編とも完全に独立したそれぞれに味わいの違う作品で、それはそれで十分に楽しめました。
★★☆
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東京クルージング(角川文庫) 伊集院静
昨年(2023年)11月に亡くなった著者の2017年に単行本、2020年に文庫化された長編小説です。
小説ですからもちろんフィクションですが、登場してくるのはメジャーに挑戦した松井秀喜氏(実名で登場)と、NHKの元ディレクターで、松井秀喜や王・長島などのドキュメンタリーを制作した大谷実氏(別名で登場)です。
大谷氏は、39歳の若さで志半ばで癌で亡くなりましたが、亡くなる寸前まで周囲に病気を隠して番組制作に奮闘されたようです。そのあたりの周囲に気を遣いながら必死に生きていく姿がこの小説でも描かれ心打たれます。
第1部は、野球好きの作家の主人公とNHKのディレクターが松井秀喜のメジャー挑戦のドキュメンタリーを制作することになったいきさつや、作家とディレクターの心のふれあいがテーマになっています。そしてディレクターから過去に結婚を誓った女性がある日突然消えてしまったという私的な話を聞かされます。
そして第2部では、その消えてしまった女性を主人公とし、壮絶な過去と、拉致誘拐同然で男に連れ去られ、子供を産み、逃げ惑う話が展開していきます。
そういう内容なので、前半部は心穏やかに読めますが、後半は虐待や暴行、逃避行と読んでいても心苦しく胸の痛くなる内容とガラリと変わります。
タイトルは、そのディレクターが学生時代に東京湾クルージング船でアルバイトをしていた時に、その女性と知り合い、お互いが海に思い入れがあり、結婚を約束するまでに至ったことから来ているものと思われます。
★★☆
◇著者別読書感想(伊集院静)
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資源カオスと脱炭素危機(日経プレミアシリーズ) 山下真一
著者は日本経済新聞社 編集 金融・市場ユニットシニアライターとして活躍されている方で、多くの資源や環境問題等の著書があります。
本著は2022年に出版された資源とエネルギー危機を強くあおる内容で、しかも、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻で世界が大きく変動してきたタイミングで著者のもっとも得意とする分野をまとめたものです。
第1章は原油がテーマ、第2章は石炭と天然ガス、第3章はレアアースを含む金属、第4章は食料高騰となっていて、最後の第5章ではまとめ章で、投資や資源ビジネスなどについて書かれています。
ただ読んでいても、なにか遠くの世界で起きている事柄ばかりの羅列で、それで「日本はどうしている?」「どうすれば良い?」という視点がなく、「世界はこうなっているから、あとはみなさんで勝手に考えてね」という批評するためだけの批評家っぽい論調です。
確かに世界の大きな動きを知っておくことは重要なことでしょうけど、それに直接関係する仕事をしている人以外はあまりにも話が遠すぎて「だからどうなの?」って思います。
資源競争やきな臭い国際情勢を聞かされても、我々庶民ができることとしては、外交に明るく(世界中の重要人物と通じている)、交渉力があり、自分の裏金作りではなく、国家国民の利益を最優先に考えてくれそうな政治家(いるのか?)を選挙で選ぶしかありません。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
カオスの娘(集英社文庫) 島田雅彦
2007年に単行本、2012年に文庫化された長編スピリチュアルミステリー小説です。スピリチュアルというかファンタジー&ホラーとも言えますが、誘拐された女子高生が監禁され乱暴の限りを尽くされるなど、読んでいて良い気分にはなれません。
主人公は、祖母から予言者のシャーマンの素質を引き継いで、網走の原野で修行を積みその才能を開花させていく若い男性。
もうひとりの主人公が女子高生で、ある日、男に誘拐され佐世保のマンションの一室に監禁され抵抗できないよう肉体的、精神的に追い詰められていきます。これがタイトルの「カオスの娘」を指しているのでしょう。
この女性が、やがて誘拐犯自身が企んだ自殺に巻き込まれ、精神が壊れ記憶喪失になり、次々と迫ってくる男達を殺していくことになります。
シャーマンの男性が、殺人を繰り返していく若い女性の居場所を探し、どうやって記憶喪失を治し、精神状態を正していくかというストーリーですが、悪人ばかりではなく、孫のためにシャーマンの極意を伝え引き継いで亡くなる老婆や、女性を助けるために命をかける第三者、連続殺人事件を調べ核心に迫るものの、真相を知ってそれ以上の追求を手放す刑事など、登場人物達が魅力的です。
著者の小説は過去4作品を読みましたが、今までとはまったく毛色の違う内容で、ちょっと意外な感じがしました。当時、新境地を切り開いた作品なのかも知れません。
★★☆
◇著者別読書感想(島田雅彦)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
橋を渡る(文春文庫) 吉田修一
2014年から2015年にかけて週刊文春に連載された長編小説で、2016年に単行本、2019年に文庫化されました。
第1部に相当する「春」には、子供がいない夫婦の住む都心の一戸建て住宅に、父親の海外赴任の関係で高校生の甥が居候することになり、静かだった家に騒動が起きることになります。
第2部の「夏」では、東京都議会議員の妻が主人公で、セクハラヤジで大問題化し、自分の夫があのヤジを飛ばしたのではないかと疑念と不安を持ちつつ、子供がそのことでいじめられないか、自分が周囲のママ友達から後ろ指を指されないか不安に陥り精神的に追い詰められていきます。
そして早くその話題がニュースからなくなり忘れ去られることを願っていますが、一番仲の良かったママ友が、スイミングスクールのインストラクターと逢い引きしているところを偶然見てしまい、、、
第3部の「秋」は東京のテレビ局でドキュメンタリー制作をしている男性が主人公で、ある日妻が浮気をしていることを知り、一度は許すつもりだったのが、妻から三行半を突きつけられ思わず首を絞めてしまい、逃亡を謀り遠く対馬まで流れてきたものの、指名手配で通報され捕まります。
ここまでに「歌舞伎町風俗」「セウォル号沈没」「東京都議会セクハラヤジ」「STAP細胞論文不正」など、当時実際に起きた風俗や事件が出てきます。
そして第4部の「冬」では時代が一気に70年後の東京に飛んでしまい、そこでは先の1部~3部で登場してきた人やその子供達がそれぞれに絡んでくると言うややこしい物語です。
なにがややこしいかと言って、第1~3部にはそれぞれ登場人物が何人も出てきますので、第4部ではその人たちとさらに子供や孫達でもう誰が誰だったかよくわからず何度も前へ読み返すことになります。
せめて登場人物相関図でもあれば良いのですが、そういう気の利いたものはもちろんなく、記憶力の悪い人(私)にはなかなか理解するのがたいへんでした。
★☆☆
◇著者別読書感想(吉田修一)
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遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年も読書感想から1年がスタートです。芸がなくてすみません。
グレイヴディッガー(講談社文庫) 高野和明
著者の作品としては初期のもので2002年に単行本、2004年に文庫化されています。今年2023年には「踏切の幽霊」で直木賞候補になり、面白そうなので、早く文庫が出版されるのを待っています。
タイトルの「グレイヴディッガー」は、中世ヨーロッパの宗教裁判によって殺された死者が蘇って、審査した者を殺して回るという伝説に出てくる殺人者の名前ということです。ただこれらは作者の創作だと解説で知りました。
麻薬の売人だった男がトラブルからナイフで刺されて連れ去られます。目撃者の証言からひとりの麻薬中毒で売人から麻薬を買っていた男が捕まり、殺害した犯人を示す数多くの証言と証拠があります。
それとはまったく関係のないところで、主人公は小さな詐欺などを繰り返してきたワルですが、人生を変えたいと思って白血病患者に髄液を提供するドナー登録をし、適合する患者がいることがわかり翌日に病院へ行くことになっています。
その主人公が、金欠で病院へ入院する前に小銭を借りようとホストをやっている知人の東京都北区赤羽にあるマンションに行きますが、そこでその知人が惨殺されているのを発見します。
その知人とは、お互いにそれぞれに自分名義でマンションを借りて、実際に住むのは入れ替わって住むという、犯罪者の悪知恵を使っているため、自分の(名義の)部屋で知人が惨殺されているということになります。
さらにその部屋で呆然としている時、3人の男たちが強引に入ってきたので、殺人者が戻ってきたと思い、窓から逃げだします。
この時から何者かわからない男たちと、部屋に残された知人の死体のため警察の二つから追われることになります。そして翌日には大田区六郷にある病院に入院して全身麻酔で髄液を抜かなくてはそれを待っている患者の命に関わることになります。
東京近郊の地理に詳しくないとわかりませんが、北区赤羽は23区の最北部、病院のある大田区六郷は23区の最南部でもっとも距離があり、通常なら赤羽から京浜東北線で品川、品川から京浜急行で六郷土手という乗車時間約1時間のルートになります。
しかし逃げる主人公はお尋ね者で、タクシーに乗ると逃亡犯の情報提供を求める無線が隠語で入ってきたり、電車では駅の監視カメラに映り込むのと、すでに緊急指名手配となっていて警官がいる駅には近づけないので様々な工夫をしながら、また捕まりそうになりながらも逃げて逃げて・・・
こうした逃亡者が数々のピンチを切り抜けて逃げ回るというのは「逃亡者」(テレビドラマ1963年、映画1993年)が有名ですが、私は子供の頃に見たアメリカのコミカルな連続ドラマ「逃げろや!逃げろ(Run Buddy Run)」(1966年)が一番記憶に残っています。
追いつ追われつドキドキするのが普通ですが、この主人公はなにか天然っぽい感じで、詐欺師らしく人の裏をかこうとフラフラとしていてあまり緊張感がありません。エンタメとしては楽しめますが、逃亡中に携帯電話を何度も使うというのはこの時代だからでしょうね。今ならすぐに場所が特定されます。
★★☆
◇著者別読書感想(高野和明)
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駐車場のねこ(文春文庫) 嶋津輝
1969年東京生まれで、2018年に短編「駐車場の猫」を雑誌に、2019年にデビュー作「スナック墓場」を単行本で出版をしたというぐらいしか情報の少ない作家さんですが、本著はそれらの短編作品をまとめたもので、文庫化にあたりタイトルも変更されています。
収録されているのは、「ラインのふたり」「カシさん」「姉といもうと」「駐車場の猫」「米屋の母娘」「一等賞」「スナック墓場」の7編でそれぞれ独立した作品です。
日常のさりげない風景や人間関係を独特の視点で切り取った作品集で、どれも肩肘を張らないで気楽に面白く読めます。
印象が強かったのは、「ラインのふたり」と「姉といもうと」で、「ラインのふたり」は、ロマンチック街道と交差するドイツのライン川のほとりで恋人たちが、、、というような話ではなく(そういうのは宮本輝さんにおまかせ)、工場のラインで働く中年女性達の話で、「姉といもうと」は幸田文の「流れる」に触発され女中に憧れを持って家政婦をしている姉と、ラブホテルで働く妹の話です。
女性作家さんらしく、女性の日常や感情の機微、そしてたくましさがうまく文章で表現されていて、読み込むほどジワーと味がしみてきます。
内容的には中高年男性にはあまり向かないかもしれませんが、のんびりと頭をリセットしたいときに読めばスッキリするように思います。
★★☆
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平凡すぎて殺される(創元推理文庫) クイーム・マクドネル
アイルランド出身の作家さんのおそらくデビュー作品で、原題は「A Man with One of Those Faces」です。元本は2016年に出版されましたが、日本語翻訳版(本著)は少し遅れて2022年に出ています。
アイルランド出身の作家さんの小説では過去にアーナルデュル・インドリダソン著の「湿地」と「緑衣の女」を読みましたがどちらも秀逸でした。また石持浅海著の「アイルランドの薔薇」は、アイルランドを舞台にした小説でした。
映画では「シング・ストリート 未来へのうた」や「デビル」などがアイルランドが舞台となったものでした。
本著はアイルランドのダブリンに住む20代の無職男性が、亡くなった叔母の遺言で遺産の一部を手に入れるためボランティアの社会貢献活動として病院の認知症患者や身寄りのない入院患者の話し相手をしています。
あるときいつもの病院で、看護師の女性に頼まれ話し相手として謎の老人の部屋へ行ったとき、突然誰かと間違われてナイフで刺されるという事件に遭います。どこにでもある平凡な顔をしていることが原因だと思われます。
そしてそれだけならともかく、老人は刺した後に心臓麻痺で亡くなり、殺人の疑いや、その謎の老人が実は過去に大きな話題となった未解決の誘拐事件に関与した疑いのある犯罪者だったことから、その誘拐事件の関係者から秘密を知ってしまったと思われて殺し屋を送られます。
先に読んだ高野和明著の「グレイヴディッガー」は東京で追いつ追われつの逃亡劇小説でしたが、こちらはダブリンやその近郊での逃亡劇小説でした。執拗に追われる秘密がクライマックスで明らかになるなど、なにか似ています。
こちらは比較的書かれた時代が新しいため、携帯電話で位置情報がバレるからと早々に破棄したり、誰も知らないボランティアで知り合ったお金持ちの老婆の家に逃げ込むなど現代的です。
そして未解決だった誘拐事件の真実が明らかになっていきますが、最後は荒唐無稽な感じで、やや興ざめしてしまいました。それでもまったく馴染みのないダブリンの街での追跡劇は楽しめました。
★★☆
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鬼統べる国、大和出雲 古事記異聞(講談社文庫) 高田崇史
「鬼棲む国、出雲」、「オロチの郷、奥出雲」、「京の怨霊、元出雲」に次ぐ「古事記異聞シリーズ」第4弾の作品で2020年に新書が出版、2022年に文庫化されています。
出雲と奥出雲についてはすでに読んでいますが、京都はまだ読めていません。できれば順に読んだ方が良かったと後になって後悔しています。
既に2022年に次の第5作目「古事記異聞 陽昇る国、伊勢」が新書で出版されています。来年には文庫で出てくるかな。
しかし「出雲」という1つのテーマで島根県の出雲、奥出雲、京都、大和(奈良)、伊勢とよくぞ引っ張ります、お見事。
元々は、2023年に島根の松江や出雲へ旅行するため、関連する小説を探していて読んだところからスタートしましたが、その後もこのシリーズにすっかりはまってしまいました。
ほとんどの日本人は、「出雲」と言えば、山陰の島根県にある出雲大社を思い浮かべると思いますが、京都や奈良にも出雲を名乗っていた地や出雲地方で重要とされている神々を祀っている神社が多くあり、それはどうして?というのが第3弾と第4弾のテーマです。
実は京都に住んでいた頃、近所に加茂川にかかっている「出雲路橋」というのがあり、旧山陰道ではなく、どうしてこんな場所(京都市内の北部の鞍馬口近く)に出雲路?ってずっと不思議に思っていました。
その謎が明らかになるのは、まだ未読のシリーズ第3弾「京の怨霊、元出雲」ですが、今回の第4弾「大和出雲」にもその理由の一部が出てきました。
そのように、シリーズを飛ばして読んでもそれなりに物語は楽しめますが、やはり順を追って読む方が理解が進みやすそうです。
しかし、古代の神々や皇族、有力者の名前や、それが時代で変形していくなど、素人が入っていくには難解で難易度が高い内容ですが、主人公を女子大学院生として、できるだけわかりやすく解説(推理)されているところが上出来です。
ただ、このシリーズ、文庫カバーのキラキラなカワイコちゃんを描いたアニメチックな絵だけは、おそらく若い人にも気軽に手に取ってもらおうという出版社なりの理由がありそうですが、歴史ミステリーを扱うには中身が軽薄そうに見えるのと、中高年男が手に取るには敷居が高そうです。
★★☆
◇著者別読書感想(高田崇史)
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