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1776
高齢夫婦63歳になる少し前にすべての仕事からリタイアしましたが、その前後にはいくつかの「定年本」を読みあさりました。またリタイアと同時にやってくる年金生活や老後の問題など関連本も読みました。何事も知識を得るのは重要です。

しかし、本当は定年やリタイアしてからそういう本を読むのは遅く、少なくとも定年やリタイアする10年ほど前には読んでおくべきだったと後悔しています。

なかなかバリバリ働いている40代や50代のはじめに定年後や老後の関連本を読むというのは心理的にも難しいもので、できれば老後のことなんか考えたくないという感覚が普通ではないかと思います。

なぜ10年前に知識を得ておかなければならないかというと、個人個人で資産や住まい、ローン、子供の教育、趣味やライフスタイルなどが違っているのが普通で、それをよく調べ、考え、対処をした上でリタイアや年金生活に入っていくのが望ましいからです。

わかりやすいのは、定年の時までには住宅ローンや子育て(教育費など)が終わっていることが望ましいですが、人によって違っているはずです。

住宅ローンが65歳まで続くから退職金で繰り上げ返済するか、定年後も引き続き働こうとぼんやり考えていても、定年後に得られる収入は信じられないぐらい減り、退職金も団塊世代がリタイアする頃とは違って今は大きく減っています。私が勤務していたところは自主的に決めるわずかな確定拠出年金制度(401K)はありましたが、退職金制度はありませんでした。

それまで収入に占める割合が低いためにあまり気にならなかった健康保険料や介護保険、各種の税金が少ない収入にズシリと乗っかってきてそれまでの生活スタイルを維持するためには老後のためと思っていた貯蓄がみるみる減っていくことになります。

しかし退職する10年前(50~55歳頃)なら、様々な手がまだ打てます。例えば、持ち家の場合、屋根や外壁の修理など大金がかかる修繕や、マイカーを老後も乗り続ける場合、退職する前に新車を購入しておくほうが良さそうで、さらに住宅ローンも退職する前には完済しておきたいものです。

老後に備えて今流行っている積み立て債権に投資する場合や、国民年金に上乗せする国民年金基金も、60歳になってからではもう遅く、少なくとも50歳になるまでには始めないとその恩恵を得られるのは定年後のずっと後と言うことになりかねません。

その他、保険の見直しや、定年後の仕事(資格取得や勉強)、住まい(住み替えや自宅修繕、移住、引っ越し)なども退職してからではなくその前から準備や計画を始めておくのが望ましいでしょう。

そうしたリタイア後のためにあらかじめできるだけ早く定年本や老後のリアルな話を読んでおくことをお勧めします。

ただ、その一部には実際の世の中のことを知らない学者の先生や、お金持ちの評論家などが非現実的な机上の論理でご立派な自説を述べている書籍もあり、その取捨選択は必要です。

どの本が役立つかは、お金、仕事、健康、介護、家族、人間関係、住まいなど、読者が何を求めるかによっても違ってきますので、「これだけ!」というものはありません。

私が過去に読んだ定年本や老後本と、その感想(リンク)を並べておきます。少しでもお役に立てば良いですが、何を重要に思うかの価値観は人それぞれで、時代によっても変わってきますのでご参考まで。

定年/老後/介護本既読一覧
定年本/エッセイ 著者 感想
定年後 年金前 岩崎日出俊 Entry/650/
定年後 50歳からの生き方、終わり方 楠木新 Entry/876/
定年前後の「やってはいけない」人生100年時代
の生き方、働き方
郡山史郎 Entry/1102/
定年後 年金プラス、ひとの役に立つ働き方 杉山由美子 Entry/1132/
定年バカ 勢古浩爾 Entry/1443/
定年後7年目のリアル 勢古浩爾 Entry/1038/
定年後のリアル 勢古浩爾 Entry/982/
退職金貧乏 塚崎公義 Entry/694/
定年ですよ 退職前に読んでおきたいマネー教本 日経ヴェリタス Entry/1086/
超リタイア術 野口悠紀雄 なし
定年病! 野末陳平 Entry/698/
 
老後・介護/エッセイ 著者 感想
脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法 新井平伊 Entry/1333/
おひとりさまの老後 上野千鶴子 Entry/557/
老後に破産しないお金の話 大竹のり子 Entry/802/
年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方 荻原博子 Entry/1400/
みっともない老い方 60歳からの「生き直し」のすすめ 川北義則 Entry/938/
老いの才覚 曾野綾子 Entry/811/
老後に本当はいくら必要か 津田倫男 Entry/864/
介護ビジネスの罠 長岡美代 Entry/973/
老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する 野澤千絵 Entry/1314/
老いる家 崩れる街 野澤千絵 Entry/933/
風のささやき 介護する人への13の話 姫野カオルコ Entry/698/
下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 藤田孝典 Entry/690/
東京消滅-介護破綻と地方移住 増田寛也 Entry/1273/
老いと記憶 加齢で得るもの、失うもの 増本康平 Entry/1340/
老いる覚悟 森村誠一 Entry/668/
 
定年・介護・老後/小説 著者 感想
ハッピー・リタイアメント 浅田次郎 Entry/235/
恍惚の人 有吉佐和子 Entry/672/
老後の資金がありません 垣谷美雨 Entry/1118/
定年ゴジラ 重松清 なし
介護退職 楡 周平 Entry/565/
老いた男 トマス・ペリー Entry/1427/
介護入門 モブ・ノリオ Entry/608/


【関連リンク】
1397 早期退職はありかなしか
1394 あと半年に迫ったリタイア準備
1215 定年退職後の再就職はどうする

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1775
とれない「痛み」はない(幻冬舎新書) 柏木邦友

とれない「痛み」はない著者は珍しい麻酔科医でありながら、現在はフリーの立場で麻酔医として病院で勤務しながら動物病院にも勤務されているという変わり種の方で、本著は2022年に出版されています。


私は2016年に初めて全身麻酔で手術を受けたとき、事前に麻酔医との面接?があり、アレルギーや体調などについてあれこれ問診されたことを思い出しました。

麻酔は手術をする医者(執刀医)がその前段としておこなうものとばかり思っていたので、その時は、「へぇー麻酔の専門医がいるんだー」と思いましたが、この本を読んで麻酔医の役割や、重要性がよくわかりました。

そういうあまり麻酔医という馴染みがない専門医療について書かれた本です。

一般的に人は加齢とともに、様々の痛みと闘っていかなければなりません。関節痛や神経痛、頭痛、腰痛などはもちろん、癌や慢性病など関わっていく病気も増えていきます。また出産という非常に強い痛みを伴う時にも麻酔を使った無痛出産が広がってきています。

麻酔というのは手術の時だけではなく、そうした痛みを和らげ、日常生活に支障が出ないようにする、また残された時間を安寧に送れるようにするために必要な術式で、「麻酔=危険、中毒」という従来からある概念はすでに変わってきています。

麻酔や鎮痛にも種類があり、使いすぎると中毒やオーバードーズになってしまう薬剤もあり、そのあたりの説明もなされています。

一般論としての話で、自分に当てはめてみてどうなのか?というのはわかりにくいのと、馴染みがない専門性の強い話が多くてやや理解が難しいですが、知識として知っておくのには役立ちそうです。

★★☆

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記憶の渚にて(角川文庫) 白石一文

記憶の渚にて2016年に単行本、2019年に文庫版が出版された小説で、ジャンルとしてはミステリーとか一部ファンタジー?という感じの話でした。文庫版で577ページという長編です。

第1部では地方都市で零細なアトピー患者向け石鹸の販売代理をしている主人公が、長く疎遠状態だった作家をしていた兄が謎の自殺し上京しますが、兄の世話をしてくれていたと思われる女性を探し出したところ、その女性と離婚した元夫から難癖を付けられあっさりとナイフで刺されて死んでしまいます。

第2部では第1部から数年後、主人公とその自殺した兄の義理の甥という縁者が主人公となり、作家として活動していますが、自殺した作家の叔父がなぜ自殺しなければならなかったのか、叔父と仕事で関係があった元新聞記者とともに調べていきます。

このあたりから、宗教やスピリチュアルの話が多くなってくるのと、人間関係が叔父や叔母、腹違いの姉妹、遠い親戚など多くの人が登場してきてなかなか頭の中で整理がつかなくなります。

一応、巻頭には主な登場人物が書かれていましたが、実際に登場するのはその何倍もの人たちが次々出てきて、メモリー領域が少ない私は完全にオーバーフローしました。

本当なら登場人物と同時に、その相関関係図(家系図など)もあれば良いのですが、それは後でわかる本題のミステリーの要素にも関わってくるので最初には書けないでしょう。

こうした遺伝子に組み込まれているという前世に経験したことや、手をかざして治療する特殊能力、一晩でアトピーが治る神秘の樹木、亡くなった人の天の声が聞こえるなど、霊やスピチュアルな話はどうも苦手で、読んでいて徐々にしらけてしまったのは個人的な問題で、エンタメとしては脈々とつながる壮大なドラマという話になっています。

★☆☆

著者別読書感想(白石一文)

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袋小路の男(講談社文庫) 絲山秋子

袋小路の男3作の短篇が収録された短篇集で、2004年に単行本、2007年に文庫版が出版されています。

収録作品は「袋小路の男」、「小田切孝の言い分」、「アーリオ オーリオ」の3作で、そのうち「袋小路の男」、「小田切孝の言い分」はほぼ同じ登場人物で展開する不思議な恋愛小説で、二つは視点を変えた同じ物語ですが、見方が変わるだけで内容も変わり、「こういうやり方もあるのか」と感心しました。

個人的には3作の中で一番好きな「アーリオ オーリオ」は、パスタ好きで、星座に詳しい主人公と、兄貴の中学生の娘(姪)とのほのぼのとした物語で、手紙でやりとりする仲になり、その手紙が届く先を3光日先の星としてタイトルのパスタの名称を付けています。

少し前に読んだ白石一文著「記憶の渚にて」も、兄弟や甥、姪などの関係が甚だしい物語でしたが、このように、家族でも疎遠になっている兄弟や、姪などとの近そうで遠い微妙な関係というのは物語になりやすそうです。

★★☆

著者別読書感想(絲山秋子)

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おれの死体を探せ(徳間文庫) 小松左京

おれの死体を探せ1983年に文庫で出版された短篇集で、「長い部屋」「幽霊屋敷」「おれの死体を探せ」「共食い」「男を探せ」「鳩啼時計」の6篇が収録されています。

前の3作は貧乏な私立探偵が主人公で、コミカルな連作です。後の3作はいずれも独立していますが、どの作品もSFをうまく取り入れていたり、著者の作品にしては幽霊が自分の死体を探しに出てきたり、同時に複合的な誘拐事件が発生したり、性転換手術だったりといろんな面を見せてくれます。

個人的には最後の「鳩啼時計(はとなきどけい)」が好きで、小説の舞台はずっと未来の話ですが昔懐かしい「鳩時計」が出てきます。実は母方の実家に行くと、(本物の)鳩時計があって、欲しくてたまりませんでした。

タイトルの「鳩啼時計」とは、明治生まれの詩人で作詞家だった西条八十が昭和8年に書いて少女向け雑誌「令女界」に掲載された「鳩啼時計」という詩のことです。

詩の1番は「鳩啼時計今啼き 冬の夜ふけの十一時 凩さむき戸外には 利鎌のごとき月冴えて」と、「冬の夜更けの11時に鳩時計がちょうど今啼いて、木枯らしが吹く外にはよく切れる鎌のような月が出ている」という意味。

2番は「過ぎし日君と一つづつ 銀座の街に購へる 鳩啼時計いま啼けば うれいは深しわが心」で、意訳すれば「ずっと昔にあなたと銀座で鳩時計を一つずつ買って、それを今啼くと切ない思いが心に広がる」という、鳩時計の音で昔の恋人を思い出すという内容です。

小説では、その詩のように、昔の恋人と一緒に買った二つの鳩時計が絡む殺人事件が起きて、、、というストーリーです。

なお、この詩は4番までありますが、3番以降はその恋人のことを想う愁いをシクシクと繰り返していて、恋する女学生達に向けた今で言うところのラブソングです。

1980年代のSFらしく、40数年後に読むとテレビ電話や人体移植、人工的に重力を曲げる装置など、40数年後の現在既にあるものもあればまだないものなどあって創造力の面白さを味わえました。

★★☆

著者別読書感想(小松左京)


【関連リンク】
 2月後半の読書 帰郷 三世代警察医物語、人はどう死ぬのか、総員起シ、傷だらけのカミーユ
 2月前半の読書 やがて、警官は微睡る、キル・リスト、検事の本懐、みちづれ 短篇集モザイクI
 1月後半の読書 25時、晴子情歌(上)(下)、淀川八景

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1772
帰郷 三世代警察医物語(光文社文庫) 新津きよみ

帰郷ホラーやサスペンス小説が有名な著者ですが、過去読んだ2作ではその要素はあまり感じられませんでした。今回はどうかな?と思って読み始めましたが、やはりそうした要素はなく、医者を主人公としたミステリー小説といったジャンルになるでしょう。

発刊は2014年でいきなり文庫です。著者あとがきで初めて知りましたが、著者の父親は医者で、地方の警察署の嘱託医を長く務めていて、それがこの小説のモチーフとなっています。

ただサブタイトルの「三世代警察医」は正しくなく、小説では祖父と孫(主人公)の二人が医者で、警察の嘱託医ということで、間の父親は画家という設定です。

また小説に登場する長野県大町市は、あとがきを読むまで架空の都市だとばかり思っていたら、実際に著者の出身地で実家のある場所だということを後になって知りました。

長野と言えば、松本市や長野市、あとは観光で行く安曇野や美しが丘、諏訪湖ぐらいしか馴染みがなく、安曇野のまだ先の北アルプスの麓にある大町市というのは盲点でした。本格的な山登りの好きな人には馴染みがありそうです。

その大町市で開業しながら警察の嘱託医をしている医者の祖父の代わりに空き家で発見された他殺死体の検死をすることになった東京の大学病院で研修医をしている主人公が、どうしてなんの縁もない大町市の空き家に放置されたのか、その謎を追いかけます。

こうした医者を主人公とした小説は、同じ長野県が舞台の「神様のカルテ」など、現役の医者が書くケースが多いのですが、著者の場合は、父親が医者と言うことで、その知識が豊富なのでしょう。

事件としてはそれほど複雑なものではなく、何度も繰り返される「空き家」がキーワードとなっています。日本で一番空き家率が高いのは確か山梨県でしたが、おそらく隣の長野県でも空き家の問題が日常化しているのだろうと思います。それがこの作品のヒントになっていそうです。

またこの小説は既に「父娘の絆 三世代警察医物語」という続編が2015年に出版されています。

★★☆

著者別読書感想(新津きよみ)

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人はどう死ぬのか(講談社現代新書) 久坂部羊

人はどう死ぬのか2022年に発刊された新書で、様々な医療現場に携わったあと、現在は在宅医療を中心にされている著者が本音で語る終末医療、つまり人の死に方についての指南書と言えるものです。

繰り返し書かれているのは、終末医療には限界があり、患者本人のためではなく、その周囲(家族や遠い親戚など)のために、「ベストを尽くしている」という態度や医療を提供することだけという空しい話です。

つまり患者の意思とは関係なく、高齢者や末期癌を患っている人の具合が悪くなると、家族などが慌てて救急車を呼んで病院へ移送されると、そこで待っているのは、ほとんど意味のない検査と治療でそれことスパゲッティ状態にされてしまうという現在の終末医療を非難しています。

現在は約7割の人が病院で亡くなるということですが、「死にたくなければ病院へ行くな。病院へ行くから死ぬんだ」と誰かがテレビの番組で話をしていましたが、7割の人が病院で亡くなっているならそれも正しいかも知れません。

著者も繰り返し、穏やかに最期を全うしたいなら「高齢者や末期癌の人はむやみに病院へ行くべきでない」と書いています。

著者の小説や他の新書でも同様のことがよく書かれていますが、そうした無用な終末医療を避けようとする思想や行動はマスコミや医療従事者含む一部の人には不評で、「人命は地球よりも重い」という迷言でなかなか普及していかないことが著者のジレンマとなっているようです。

私自身、もう高齢者になって、終末を迎える時期も近くなってきましたが、自分の死に方というのはなかなか思い描けず、たとえ考えたとしてもそう思い通りにいくわけもなく、難しい問題です。

本著にも出てきますが、医者に対して「自分ならどういう死に方が一番良いか」という質問では「癌」という答えが一番多いそうで、それはある日突発的に死に至るのではなく、ある程度は計画的に死に近づけるため、その準備をすることができるということでしょう。

この本の中でちょっとわかりづらいなと思ったのは、書かれている理想の終末医療の前提は寿命が近い高齢者向けの話のはずで、これが癌など他の重篤な病気でも体力もある若い人の場合はまたちょっと違うように思います。

そのあたりの区別が書かれていないので、「若い人の終末医療を懸命におこなわないとはけしからん!」という誤解を生じる人がいるように思います。

私もそう遠くない時期にこうした終末医療を選択する時がやってきます。その時には、本書を参考にして
・口から栄養を摂れなくなっても胃ろうは断る
・痛み止め以外の栄養補給などの点滴も断る
・呼吸が苦しくても人工呼吸器は断る
・自宅で倒れてもむやみに救急車を呼ばない
を大きく紙に書いて貼っておき、家族にも重々申し渡しておこうと思います。

★★☆

著者別読書感想(久坂部羊)

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総員起シ(文春文庫) 吉村昭

総員起シ戦史短編小説集で、当初1971年に単行本が出版された後、2篇が追加され1981年に文庫化されたノンフィクションに極めて近いと思われる作品集です。

収録されているのは、「海の棺」「手首の記憶」「烏の浜」「剃刀」「総員起シ」の5篇です。この5篇はそれぞれ太平洋戦争中か、終戦直後に実際に起きた事件や事故を、関係者などから聞き取り、調べて書かれたもので、極力著者の推理や想像を排して書かれているようです。

「海の棺」は、太平洋戦争中に北海道の襟裳岬近くの日高沖で輸送船大誠丸が米潜水艦に撃沈され、乗員約1400名のうち、死者・行方不明者が651名をで大量の兵士の遺体が日高町の海岸へ流れ着いた話ですが、なぜかその遺体の多くに手首が切り落とされていた謎とは?

「手首の記憶」は、太平洋戦争当時日本の領土だったサハリンにある太平炭鉱病院に勤務していた看護師達が終戦後にソ連の侵攻で追い詰められ集団自決をしますが、そこで死ぬことができず生き残った女性達のその後。

「烏の浜」は終戦直後の8月22日、樺太から避難してきた疎開者を乗せた小笠原丸が北海道の増毛町沖で、米軍の指示で無線信号を出しマストに航海灯を点灯して航海中、国籍不明(その後ソ連と判明)の潜水艦から攻撃を受けて乗員乗客638名が死亡した事件。

「剃刀」は、那覇の民間人の理容師が軍属として、司令部とともに米軍に南へ南へと追い詰められていく切ない話。

「総員起シ」は、愛媛県松山沖で、試験航海中に沈没してしまった伊号第三十三潜水艦の戦後9年が経ってから引き上げることになった話です。沈没しながらも二名が決死の脱出を成功させたことで、その状況が明らかになっていきます。

その沈没した潜水艦の中で、9年間、酸素が尽きた艦内の閉鎖区域では遺体は腐敗せず「総員起シが発令されたらみな飛び起きそうな状態」だったという話には泣かされます。

いずれの作品も、暗く、不条理な悲劇ばかりで、読んでいて息が詰まるほど重苦しいですが、こうしたリアルな歴史をわずか80年前に日本人が経験していたということは知っておくべきことかなと思いました。

★★★

著者別読書感想(吉村昭)

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傷だらけのカミーユ(文春文庫) ピエール・ルメートル

傷だらけのカミーユ「カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作」の第3弾にあたり、2012年にフランスで発刊され、翻訳版は2016年に文庫で発刊されています。原題は「Sacrifices」(犠牲)です。

毎度壮絶な残虐なシーンが出てきて、読み終えてからもしばらく嫌な思いが残ってしまうので、もういいかなと思っていましたが、忘れた頃にまた読みたくなる一種の中毒に罹ってしまったかのようです。と言ってもまだ今回が3作品目です。

今回もいきなり主人公カミーユ警部の恋人が宝石店に入ったギャングと鉢合わせして散々な目に遭わされます。世界一ついてない男と称されるジョン・マクレーン(映画ダイ・ハードの主人公)ばりにこのフランス警察のカミーユ警部もとことんついていません。

上司をだまし、同僚をだまして、恋人に重傷を負わせた強盗犯をひとりで追い詰めようとします。まったく後先のことを考えない直情的な性格で、それゆえ一歩離れた場所から眺めている読者は一緒に感情を高めていくことになるか、あるいはしらけていくかのどちらかでしょう。

私は仕事に感情を持ち込まないのを常としていたので、その後者の方です。したがって、どうも主人公には感情移入ができず、気持ちもわからず、逆に冷静な犯人を応援したくなってしまいます。

このシリーズは、この3部で終わりらしいので、どうでも良いですが、もし続編が出てももうさすがに良いかなと思っています。

★☆☆

著者別読書感想(ピエール・ルメートル)


【関連リンク】
 2月前半の読書 やがて、警官は微睡る、キル・リスト、検事の本懐、みちづれ 短篇集モザイクI
 1月後半の読書 25時、晴子情歌(上)(下)、淀川八景
 1月前半の読書 東京クルージング、資源カオスと脱炭素危機、カオスの娘、橋を渡る

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1769
やがて、警官は微睡る(双葉文庫) 日明 恩

やがて警官は微睡る一般的に「武本&潮崎シリーズ」と言われる警察官が主人公の小説の第3作目で、2013年に単行本、2016年に文庫が出版されています。このシリーズはすでに2018年に第4作「ゆえに、警官は見護る」が単行本(文庫は2022年刊)で出版されています。

昭和時代の香りが漂う無口で強面の刑事と、名家のお坊ちゃまで、一度警察官を辞めi種キャリア採用で復帰してきた軽いノリで多弁な刑事のコンビで活躍するシリーズですが、この3作目は過去のものとは少し違っています。

横浜みなとみらい地区に新規オープンした外資系ホテルで人質を取ったテロが発生し、そのホテルで見合いのためにいた主人公刑事が、若いフロントマンと一緒に武装したテロリスト達と戦うという内容です。

しかし以前のような反社会組織や密輸業者など裏社会との戦いとは違い、多国籍のサイコキラーやあちこちに爆弾を仕掛け、情け容赦なく銃器を打ちまくるというまったくリアリティのない内容にはがっかりしました。

これは「ダイハード」のような、映画やテレビドラマを念頭に派手なエンタメ効果を狙ったものなのか、あまりにも過去の作風と違っていて、シリーズ第1作「それでも、警官は微笑う」(2002年)や、消防署員が主役の別シリーズ第1作で「鎮火報 Fire’s Out」(2003年)以来の著者のファンでしたがもう続編はいいかなという感じです。

★☆☆

著者別読書感想(日明恩)

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キル・リスト(上)(下)(角川文庫) F・フォーサイス

キル・リスト2014年に単行本、2020年に文庫化された著者お得意の国際謀略サスペンス小説です。

主役はアメリカ人のイラクやアフガニスタンで実戦経験のある中年の海兵隊員で、若いときにアラビア語を学んでいたことから、名前すらわからないイスラム過激派のテロリストを探し出して抹殺する仕事を与えられます。

この仕事では、アメリカの国防省、CIA、英国やイスラエルの情報機関、さらには英国の特殊部隊まで巻き込んだ掃討作戦に広がっていきます。

日本語翻訳版が2014年に出版されたと言うことは、英国本国では2013年頃には発刊されているはずで、これは、9.11テロの首謀者ウサーマ・ビン・ラーディンの暗殺(2011年)に触発されたんじゃないかなと勝手に思っています。

本著にも、どうやってウサーマ・ビン・ラーディンの居場所が特定できたかなど書かれていました。

今回は、中東からパキスタン、そしてアフリカと居場所を変えるテロリストを追いかけ、居所を突き止めますが、そこにはイスラエルの貴重な工作員が潜り込んでいるために無人機からミサイルを撃ち込むという荒っぽいことができず、おびき出しての軍事作戦を実行することになります。

盗聴やハッキング、無人偵察機などハイテク軍事技術も満載で、スパイの世界も007の時代からすると大きく変わってしまったものです。

作戦に大きな失敗や破綻はなく、アメリカと英国の密接な連携で淡々と進む話であまりひねりや盛り上がりはないですが、一般人にはまったく馴染みがなく縁がないSFのようなリアルの世界が確かにあるのだということは理解できました。

★★☆

著者別読書感想(フレデリック・フォーサイス)

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検事の本懐(宝島社文庫) 柚月裕子

検事の本懐最後の証人」(2010年)から始まった「佐方貞人シリーズ」の第2弾の連作短編集です。出版は2011年に単行本、2012年に文庫化されています。

短編は、「樹を見る」「罪を押す」「恩を返す」「拳を握る」「本懐を知る」の5編です。

地方検察庁に配属された若い検事を主人公としますが、その主人公の父親が元弁護士で、顧問弁護士をしていた企業のオーナーが亡くなった時に業務上横領が発覚し逮捕されて実刑を受けるという過去があります。

主人公の父親は収監中に病気で死亡していますが、今回の短編の中でその事件と、発覚してから一切の言い訳をせず実刑を言い渡されることになった理由などが明らかになります。

その他、大掛かりな事件捜査のため東京地検に呼ばれて地味な仕事を担当しますが、その中で見逃されていた謎に気がつき、上司に報告するも相手にされず、結果的に「できないやつ」という汚名を着せられてしまいます。しかしそのときに上司に伝えたヒントが元になって事件は大きく動くことになります。

5編、それぞれ、派手な活躍などはなく、検事の地味な仕事が綴られていきますが、その中にある人間の思いをくみ取れる正統派検事としての活躍が秀逸です。

このシリーズは、すでに第3弾の「検事の死命」(2013年)、第4弾の「検事の信義」(2019年)が発行されています。また機会を見て読んでみたいと思っています。

★★★

著者別読書感想(柚月裕子)

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みちづれ 短篇集モザイクI(新潮文庫) 三浦哲郎

みちづれ昨年、芥川賞を受賞した短編集「忍ぶ川」(1961年)を読んで、面白かったので1991年のこの短編集を読むことにしました。

サブタイトルに「短篇集モザイクI」とありますが、1作が約10ページ(文庫)程度のかなり短い作品で、こちらは純文学でジャンルは違いますが、星新一氏のショートショートのような感じです。

読むのは楽で良いですけど、あまりにも短いのでよく理解できないまま、あるいは余韻を楽しむまでもなく終わってしまうというパターンです。

したがって、感想も書きにくく、読んだそばから次の作品へ意識がいってしまい、せっかく面白かったのにすぐ忘れてしまうパターンでもったいない感じです。

収録作品は「みちづれ」「とんかつ」「めまい」「ひがん・じゃらく」「ののしり」「うそ」「トランク」「なわばり」「すみか」「マヤ」「くせもの」「おさかり」「ささやき」「ねぶくろ」「はらみおんな」「かきあげ」「てんのり」「おさなご」「こいごころ」「にきび」「オーリョ・デ・ボーイ」「さんろく」「ゆび」「じねんじょ」の24篇です。なぜかすべてひらがなかカタカナのタイトルです。

この短篇集モザイクには「ふなうた短篇集モザイクII」「わくらば短篇集モザイクIII」の続編があります。

★★☆

著者別読書感想(三浦哲郎)

【関連リンク】
 1月後半の読書 25時、晴子情歌(上)(下)、淀川八景
 1月前半の読書 東京クルージング、資源カオスと脱炭素危機、カオスの娘、橋を渡る
 12月後半の読書 グレイヴディッガー、駐車場のねこ、平凡すぎて殺される、鬼統べる国大和出雲古事記異聞

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1767
毎年1回、1年間に読んだ書籍(小説、エッセイ、ビジネス、教養、ノンフィクションなど)を思い出して、その中からジャンル別にナンバーワンを決めているシリーズで、2012年分から続いています。

1692 リス天管理人が2022年に読んだベスト書籍
1601 リス天管理人が2021年に読んだベスト書籍
1500 リス天管理人が2020年に読んだベスト書籍
1401 リス天管理人が2019年に読んだベスト書籍
1295 リス天管理人が2018年に読んだベスト書籍
1191 リス天管理人が2017年に読んだベスト書籍
1093 リス天管理人が選ぶ2016年に読んだベスト書籍
993 リス天管理人が選ぶ2015年に読んだベスト書籍
886 リス天管理人が選ぶ2014年に読んだベスト書籍
784 リス天管理人が選ぶ2013年に読んだベスト書籍
676 2012年に読んだ本のベストを発表

私が読むのは基本的には文庫や新書の旧刊本で、単行本や新刊本はほとんどなく、あまり著者やジャンルが偏らないよう、できるだけバランス良く、読んでいるというのが特徴です。

2023年の1年間に読んだ本の合計は、作品数が96作品(2022年99作品)、上下巻を2冊とカウントする冊数では110冊(2022年107冊)となりました。前年(2022年)からは作品数では3作品減りましたが、総冊数では3冊増加しました。

リタイア後には暇な時間が増えて読書数も増えるのか、それとも往復2時間の通勤時間がなくなり、その読書時間がなくなり減ってしまうのか、どうなるだろうって思っていましたが、ここ数年みてきた限りほとんど読書量に変化はなさそうです。

ただ、最近は、読書に集中していられる時間が徐々に短くなってきているのと、細かい文字を読むのがつらくなっていることを実感していて今後読書量が増えると言うことはなさそうです。集中力と視力の問題は老化現象ですからやむを得ないかなと思っています。

過去の年間読書数(作品数と冊数)は下記の通りです。

新書/NF 冊数 海外
小説
冊数 日本
小説
冊数 作品数計 冊数計 月間平均
冊数
2013年 86 98 8.2
2014年 26 26 13 17 62 70 101 101 8.4
2015年 17 17 12 65 94 107 8.9
2016年 14 14 12 16 65 79 91 109 9.1
2017年 26 26 16 21 62 70 104 117 9.8
2018年 26 26 9 13 64 71 99 110 9.2
2019年 29 29 8 9 71 77 108 115 9.6
2020年 29 30 14 19 51 56 94 105 8.8
2021年 22 22 13 21 58 69 93 112 9.3
2022年 11 11 15 16 73 80 99 107 8.9
2023年 16 16 17 27 63 67 96 110 9.2

  ◇   ◇   ◇

それでは、今回も「新書/ビジネス/ノンフィクション部門」「海外小説部門」「国内小説部門」の3部門に分けて候補作と大賞を発表します。

まずは「新書/ビジネス/ノンフィクション部門」ですが、2023年は16作品(16冊)読んでいます。前年の11作品(11冊)からは5作品増えています。

その中から大賞の候補作は、「最澄と空海」梅原猛著、「新老人の思想」五木寛之著、「年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方」荻原博子著、「定年バカ」勢古浩爾著の4作品です。

その候補から大賞に選んだのは、、、ドコドコドコドコ・・・

年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方」荻原博子著に決定!!

パチパチパチ!

感想は、
2023年4月前半の読書と感想、書評(年金だけでも暮らせます 決定版・老後資産の守り方)

上記の感想でも書きましたが、結論としては「年金だけでは暮らせない」ということでタイトルに虚偽ありですが、こうしたタイトルは刺激的でなければ売れないので仕方ないでしょう。

できればこれは年金生活に入る前、それも10年以上前には読みたい本です。そうでないと、いろいろ準備ができません。

それでも、今の生活に無駄はないか?お金の使い方、貯め方は間違っていないか?など参考になることがいっぱいです。


  ◇   ◇   ◇

次は、「海外小説部門」です。昨年2023年は、17作品(27冊)読みました。2022年は15作品(16冊)でしたので、作品数と冊数も増えています。

その15作品の中から大賞候補は、「ロスト・シンボル(上)(中)(下)」ダン・ブラウン著、「大いなる遺産(上)(下)」ディケンズ著、「マルタの鷹」ダシール・ハメット著、「もう年はとれない」ダニエル・フリードマン著、「ホテル・ニューハンプシャー(上)(下)」ジョン・アーヴィング著の5作品です。

今回、この海外小説部門は力作や古典的名作が多くて迷いました。

大賞は!、、、ドコドコドコドコ・・・

大いなる遺産(上)(下)」ディケンズ著に決定です!

パチパチパチ!

感想は、
2023年3月前半の読書と感想、書評(大いなる遺産)

今回は候補に入りませんでしたが、同時期のロンドンが舞台の「ボートの三人男」ジェローム・K・ジェローム著を先に読んでいたことから、当時の社会情勢やテムズ川周辺の様子などがわかり面白く読めました。

アメリカンドリームが生まれる前の、産業革命の成功で世界の中で経済大国をひた走る英国の格差社会とイングランドドリームの話ですが、今読んでも色あせることがないよくできたドラマでした。

僅差の次点で「マルタの鷹」ダシール・ハメット著が続きますが、これは私の個人的な趣味(探偵好き)が影響しているせいかもしれません。

  ◇   ◇   ◇

最後にもっとも読んだ作品数が多い「国内小説部門」です。昨年2023年に読んだ国内小説は63作品(67冊)で、一昨年2022年の73作品(80冊)から大きく減りましたが、これはバランスを意識して前年より新書や海外小説を多めに読んできたためで想定内です。

その63作品の中から大賞候補としてあげたのは、

JR上野駅公園口」柳美里著、「漂流」吉村昭著、「オライオン飛行」高樹のぶ子著、「一八八八切り裂きジャック」服部まゆみ著、「光と影」渡辺淳一著、「二人のクラウゼヴィッツ」霧島兵庫著、「暗幕のゲルニカ」原田マハ著、「二千七百の夏と冬(上)(下)」荻原浩著の8作品です。

これらはどれも力作で、私の好奇心や趣向をくすぐり、感情を揺さぶり、そして読み終えてしまうのが残念に思った面白い小説でした。

それでもどれか一作を選ぶとすると、、、、、、ドコドコドコドコ・・・ドコドコドコドコ・・・ドコドコドコドコ・・・ドコドコドコドコ・・・

パンパカパーーーン!

暗幕のゲルニカ」原田マハ著に決定です!

パチパチパチ!パチパチパチ!パチパチパチ!

感想は、
2023年6月後半の読書と感想、書評(暗幕のゲルニカ)

こちらからでも感想が読めます。
著者別読書感想(原田マハ)

国連に飾られているピカソのゲルニカはピカソの祖国スペインが内戦で無差別爆撃で破壊された街を抽象的に描いたことは有名な話ですが、この小説ではそのゲルニカを描くことになったパリに住んでいたピカソの晩年生活と、恋人でカメラマンのドラの生活が生き生きと蘇ってきました。

個人的な趣味趣向で、小説でも実際に起きた歴史的事象や有名人をモチーフにした作品が好きで、過去には「マリー・アントワネット」シュテファン・ツヴァイク著や、「八甲田山死の彷徨」新田次郎著などが年間大賞に、太平洋戦争中、無謀とも言えるキスカ島からの撤退を描いた「八月十五日に吹く風」松岡圭祐著や、水戸の黄門様の真実に近い小説「光圀伝」冲方丁著が年間大賞次点に入っています。

今回の候補作の中にも、「漂流」吉村昭著、「オライオン飛行」高樹のぶ子著、「一八八八切り裂きジャック」服部まゆみ著、「光と影」渡辺淳一著、「二人のクラウゼヴィッツ」霧島兵庫著の5作品は、いずれも歴史に出てくる人物(有名・無名、本名・別名にかかわらず)が登場してくる作品です。

中でも「一八八八切り裂きジャック」が描く舞台は、先述の「海外小説部門」大賞の「大いなる遺産」と時代も場所も近く、知識の相乗効果が得られて楽しめました。

また無人島漂流ものが大好きな私としては、ノンフィクションに近いと思われる江戸時代に船が嵐に遭い漂流し凄まじい無人島生活をおくる「漂流」吉村昭著はお勧め小説です。

さて、それらの秀作揃いの「国内小説」の次点は、「一八八八切り裂きジャック」服部まゆみ著とさせていただきます。

感想は、
2023年1月前半の読書と感想、書評(一八八八切り裂きジャック)

日本でもよく知られている「切り裂きジャック」ですが、今回この小説を読み、その後wikiなどでも調べてかなり詳しくなりました。

この小説が舞台となった同時期に、日本から欧州へ公費留学していた森鴎外(森林太郎)や北里柴三郎が脇役で登場したり、昔映画化されて有名になったエレファントマンが大衆見世物小屋で客を集めていたのをうまく小説に取り込んでいます。そうすることで、なにかその時代と遠い場所が読者にとって身近に感じられるという巧い手法です。

以上、「リス天管理人が2023年に読んだベスト書籍」でした。
今年も面白い本に出会えますように。

【関連リンク】
1692 リス天管理人が2022年に読んだベスト書籍
1601 リス天管理人が2021年に読んだベスト書籍
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