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スロウハイツの神様(講談社文庫)(上)(下) 辻村深月

著者の小説は以前短編集の「ツナグ」(2010年刊)を読んでいます。この2007年刊(文庫版は2010年刊)の長編小説が2作品目です。

2016年1月後半の読書と感想、書評「ツナグ」

読んでみてすぐに思ったのは、これは映画化するのに向いた作品で、既にあるなら見てみたいと思いましたが、残念ながら制作はされていません。どうしてかな?

ストーリーは、東京郊外にあるスローハイツという元旅館をリフォームした古びたシェアハウスに住むアーティスト達の人間模様というドラマです。テラスハウスじゃないですが、今なら若者に受けそうなテーマでしょ?

戦後に手塚治虫氏を慕って全国から漫画家の卵達が集まってきたトキワ荘のイメージで、それを現代版に焼き直したという感じです。

住人は脚本家として活躍している女性オーナー、既に超売れっ子作家になっている男性とその担当の敏腕編集者、その他には映画監督や画家、漫画家を目指している若い卵達です。

出てくる男女とも、皆良い人ばかりで、こういうメンバーが集まればシェアハウス生活も楽しいかもですね。世の中そううまくいくことは少ないでしょうけど。

やがて、オーナーの脚本家がアメリカへ行くということで、このチームに終わりが訪れます。オチはその後に判明しますが、意外性もあってたいへん面白く読めました。

★★★

著者別読書感想(辻村深月)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

幕末下級武士のリストラ戦記 (文春新書) 安藤優一郞

2009年に発刊された新書で、幕末から明治期にかけて生きた下級武士だった山本政恒氏が自身で絵と文章で書き残したサムライの一代記を現代風に読みやすくし解説をした新書です。

この人物、下級武士とは言え、ことあれば将軍の影武者として身を挺する職分であり、その後も、篤姫の護衛をしたり、京都での大政奉還や、江戸城開城なども身近で経験している人物です。

さらには、上野寛永寺で起きた彰義隊と官軍との戦い(上野戦争)にも巻き込まれ、やがて、将軍の座から降ろされ、駿河に移された主君徳川家について静岡へ下りますが、その後廃藩置県で食えなくなると、今度は東京、群馬で職を探して家族を養おうと決意します。

そうした幕末の激動の60年間が、器用な絵とともに、日記風に事細かく書いて残すのは、識字率も低く、印刷技術ない時代のことで。当時としては凄いことだと思います。

幕末の話しと言えば、英雄視される坂本龍馬や、勝海舟、西郷隆盛、大隈重信、将軍の座から没落していく徳川慶喜などばかりが取り上げられますが、この山本政恒氏のような庶民に近いところにいた下級武士の苦労と悲哀が語られることはありません。

つい数年前までは江戸城勤めの武士という高いプライドがありながら、幕府がなくなってからは食うに困るようになり、百姓に教えを請うて庭に畑を作り、東京と名称が変わった生まれ故郷の江戸に戻ってからは傘貼りやお面作りなどの内職、家を売って子供のために商店を出してやるなど、サムライのイメージがこれほど変わってしまうことはありません。

これって、大企業に勤務していたけど、経営が傾き、能力がある者や家名がある者はうまく転職出来ても、普通のサラリーマンだったら、、、という現代の状況と同じだなと思わずにいられません。

それほどまでに、江戸幕府から明治新政府に体制がガラリと変わったことで、隅々までに大きな影響が出たのだということが、よくわかるラストサムライ一代記でした。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

降霊会の夜 (文春文庫) 浅田次郎

週刊朝日に連載されていた長編小説で、2012年に単行本、2014年に文庫版が発刊されています。

泣かせの浅田ワールド満載ですが、ちょっと話しが無駄に長く、くどくなってきた感があり、年を取ってから涙もろくなってきているにかかわらず涙が浮かぶことはありませんでした。

主人公は軽井沢っぽい感じの高級別荘地に男一人で住んでいましたが、ある日、別荘の外で急な雷雨に遭って怯えてしまいうずくまっている女性を助けます。

その助けた女性から、近所に降霊をしてくれる人がいるのでご紹介しますと言われ、冷やかし半分で、同じ別荘地にある家へ出掛けます。

そこには年配の女性と姪の若い女性が住んでいて、仕事としてではなく、頼まれた場合に降霊会を催してひとの役に立つことをしているとのこと。

そして、主人公が小学生だった頃の同級生で、事故で亡くなった友人の霊を呼び寄せます。

降霊でやってくるのは、呼び寄せようとした霊だけではなく、亡くなっているその関係者の霊や、まだ生存中の生き霊までがやってくるという念の入りよう。ちょっと都合良くありません?

浅田次郎作品ということで、読む前からの期待が大きいだけに、今回はちょっと無理しているかな~という感想です。

浅田ワールド作品には、コミカル路線のものも数多くありますが、こちらはいたって真面目なシリアス路線です。そのため出てくる人達や霊はみないい人ばかりで、読者を泣かせようという思惑がありありで、くどく感じた次第です。

シリアス路線の小説で、この世のものではない霊が出てくる作品は、「鉄道員(ぽっぽや)」や「地下鉄に乗って」などがあり読みましたが、いずれも泣かせられました。しかもその両方とも映画化されヒットしています。

また今回泣けなかったのは、「鉄道員」や「地下鉄に乗って」が、家族、親子といった濃密な関係だったのが、この作品では亡くなったのが友人という比較的薄い関係だったからかも知れません。

この小説もいずれ映画化あるいはテレビドラマ化されるのでしょう。もしそうなれば、団塊世代と思える主人公が過ごした戦後の子供時代や、青春真っ盛りの学生紛争時代が、再現映像として出てくることになりそうです。

★★☆

著者別読書感想(浅田次郎)

【関連リンク】
 7月後半の読書 郵便配達は二度ベルを鳴らす、衆愚の果て、日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実 吉田裕、奇跡の人
 7月前半の読書 にじいろガーデン、僕は人生についてこんなふうに考えている、健康格差、幻夏
 6月後半の読書 あなたの人生、片づけます、羊と鋼の森、大学大倒産時代、無私の日本人

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郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)(原題:The Postman Always Rings Twice) ジェームズ・M・ケイン

有名な小説で、映画化もされています。初出は1934年ということで第二次大戦の前という古い小説ですが、今読んでも細部はともかくストーリーの骨格に古くささは感じません。

著者のジェームズ・M・ケインは、1892年生まれのジャーナリストで作家。この著書が実質的なデビュー作品で、その後「殺人保険」などの作品もあります。

小説の内容と、この風変わりなタイトルとはなんの関係もありません。

ストーリーは、アメリカの地方でレストランとガソリンスタンドを経営するギリシア人とその妻の元に流れ者の男がやってきて、たまたま空きのあったガソリンスタンドの仕事を任され雇われます。

そしてすぐに欲求不満の妻と雇われた男と関係ができ、夫を殺して財産を得ようと目論みます。

1回目の犯行は失敗しますが、2回目に自動車事故を装っての犯行は成功したかと思ったら、有能な検事の追及で、犯行がバレてしまいます。

しかしその検事のライバルである有能な弁護士が、保険会社を組み、保険会社の損失を減らすことで犯行はなかったことにしてしまいます。

結果的に犯行は成功したかに思えたところ、、、というストーリーです。

小説では控えめでしたが、映画ではエロと暴力が強調されているそうで、そうした話題が先行していました。映画も1946年の制作と言うことで、太平洋戦争が終戦直後という時代から、奔放な人妻と、保険金殺人というのは大きなセンセーショナルだったでしょう。

この事件は実際に起きた事件が下敷きになっているそうですから、なおさら世間の関心を呼ぶことになりました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

衆愚の果て (幻冬舎文庫) 高嶋哲夫

理工系の作家さんで、人災、天災問わずにパニック系小説が多く、比較的私の好きなジャンルです。

過去には、「イントゥルーダー」(1999年)、「ミッドナイトイーグル」(2000年)、「ペトロバグ」(2001年)、「M8」(2004年)、「FIREFLY ファイアー・フライ」(2008年)、「首都崩壊」(2014年)の6作品を読んでいます。

988 2016年12月後半の読書(首都崩壊)
588 2012年3月前半の読書(イントゥルーダー)
469 2011年1月後半の読書(ファイアー・フライ)

また、2011年の東日本大震災と原発事故をまるで予言したかのように、「メルトダウン」(2003年)、「M8」(2004年)、「TSUNAMI 津波」(2005年)を上梓されています。それだけにかなり内容においては信憑性があり、説得力もあります。

今回のテーマは選挙制度と国会議員で、今までのようにパニック系とはガラリと違うものです。

主人公は26歳の若さで、仕事を退職後にプータローしていたときに、候補者公募に応募し、比例代表の候補者名簿の下から2番目に載せてもらったところ、政権交代で風が吹く中、アレよと当選を果たします。

「料亭へ行きたい」「BMWを買いたい」と言い放った某若手小泉チルドレンを思い浮かべますが、大物政治家に長く寄り添っていながら芽が出ずコンプレックスをもつ有能な秘書とともに、日本の問題をひとつ解決するため奔走することになります。

小説では、比例代表制や、議員定数、立法や政策よりも次の選挙のことしか考えない地盤などのない政治家、国会議員ながら、選挙区大事で地元の幼稚園の運動会に参加し挨拶することが審議よりも重要とか様々な問題が提起されています。

また議員報酬などお金の話しもたびたび出てきて、著者の怒りは相当なものがありそうです。すっかり慣らされてしまい、怒りを覚えない国民のほうがどうかしているのでしょうけど。

確かに読んでいながら、ムカムカしてくること請け負いですが、そうした政治を望んでいるのが今の国民なのですから仕方がありません。それがこの本のタイトルになっています。

★★☆

著者別読書感想(高嶋哲夫)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書) 吉田裕

2018年に「アジア・太平洋賞特別賞」や、2019年の「新書大賞」1位の本書は、2017年に発刊された硬派な新書です。

新書というと、著者の自己満足的な自慢話しと事業の宣伝に終始しているものが多く、うんざりしているのですが、最近読んだ「バッタを倒しにアフリカへ」(前野ウルド浩太郎著)、「人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長」(吉川洋著)、「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(加藤陽子著、新書ではなく文庫版)など、良いものも時々混じっているので、欠かせません。

その玉石混淆の玉のひとつが本書で、著者は主として昭和時代に焦点をあてた近・現代史の歴史学者さんです。

この新書では、よくある太平洋戦争を分析した歴史書ではなく、戦場に送り込まれた日本軍兵士の目線で凄惨な現場、戦場の生活などを様々な日記や記録から読み取っています。

その他、戦場での自殺や、障害者(特に精神)へのイジメ、軍服や軍靴の劣化、栄養不足、マラリアなどの戦病死、無理な作戦などによる消耗など、悲惨な光景がてんこ盛りです。

日中戦争以降、終戦までに亡くなった民間人を含む日本人は310万人と言われています。軍人や軍属の死者数は230万人で、その中でマラリアでの病死を含む餓死者が140万人(61%)に達するという話しには驚かされます。

勇ましい武勇伝を語る物語よりも、金属不足から竹の水筒を持たされ、訓練も受けず武器を持たない補充兵が最前線にやってくる現場の姿が真実なんだろうなぁと気持ちが暗くなってしまいます。

もう太平洋戦争終結から75年が経ち、体験者はいなくなりつつありますが、こうした現場の実態を記録し、まとめておくことで、日本人の遺伝子の中に組み込んでおくことが今後の日本の平和と安全のためには重要なことなのだろうと思います。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫) 原田マハ

2014年に単行本、2018年に文庫化された長編小説で、元祖「奇跡の人」である三重苦の障害を克服したヘレンケラーと家庭教師のアニー・サリバンの二人の関係をモチーフにしています。

著者の作品は割と最近に「本日は、お日柄もよく」と、「楽園のカンヴァス」を読んでいます。どちらも良い小説でした。まだ多くの未読作品があるので、これから少しずつ読んでいきたいと思っています。

本書はヘレンケラーと同様、病気のために見えない、聞こえない、喋れないの三重苦で、家族からも隔離されていた少女の元に、弱視ながらアメリカに留学して様々な知識を身につけた家庭教師となる女性、そして東北の津軽で生まれたときから目が見えず、三味線と歌で生活をする少女が主要な登場人物です。

その三味線弾きの少女には、後に初の重要無形文化財(人間国宝)に指定される狼野キワの若い頃の姿として登場させています。

詳しくは読んでもらうとして、東北の津軽の重苦しい雰囲気の中で、家庭教師の下で1歩1歩、手の付けられない野獣と同じ少女が、ひとりの人間として成長していく姿にうたれます。

5年前に東北へ旅行したとき「津軽藩ねぷた村」で津軽三味線を初めて生で聞くことができました。その演奏の善し悪しがわかるほどの能力はないのですが、激しい三味線の音には感動したことを思い出します。

小説としての出来ですが、これはおそらくなにかの雑誌で連載されていたのでしょうか、よくわかりませんが、同じ話しが何度も繰り返され、起きた事象があとで再度説明され、ちょっとしつこいかなと。

連載小説なら、途中から読む人のために、前に起きたことを繰り返すのもわかりますが、その場合は、単行本化する際に、繰り返される部分はカットするなど編集すべきです。

そうした重なる部分を編集して省略すれば、おそらく全体のページ数は全420ページの3/4ぐらいで済みそうです。

長い小説の場合、そうした無駄に思える部分があちこちにあるのは、ちょっと残念な気持ちになります。

★★☆

著者別読書感想(原田マハ)

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にじいろガーデン (集英社文庫) 小川糸

2014年に単行本、2017年に文庫化された長編小説です。以前NHKで、著者の原作「つるかめ助産院~南の島から~」が放送され、それを時々見ていたので、すっかり原作の小説も読んだ気になっていましたが、この著者の作品を読むのはこれが初めてです。

「つるかめ助産院」のように、癒やし系のほのぼのとした物語かな?と思っていたら、そういう要素もありますが、これはLGBT家族の奮闘と、社会からの差別など様々な問題提起の小説でした。

2020年の今でこそ、先進的な一部の自治体では、パートナーシップ制度など、LGBTにも寛容な社会システムを作り、浸透しつつありますが、この小説が書かれた2014年時点ではまだまだ差別や偏見、それに理解してもらえない家族との絶縁など険しい状況だったでしょう。

もちろん今でもそうした差別や問題は変わらず残っているでしょうけど。

主人公の二人は年齢も育ちもまったく異なりますが、自殺しようとホームに立っていた女子高生の前に、もうひとりの子育て中で夫と別居中の中年女性が心配して声をかけます。

それがきっかけで、二人の女性は仲良くなり、行動的な女子高生の強い希望で、別居中の夫とは離婚し、子連れで知り合いが誰もいない遠くへ駆け落ちをすることになります。

タイトルの「にじいろ」は、1970年頃から使用されるようになったという、レインボーフラッグというLGBTの社会運動を象徴する虹色の旗からきていて、二人が東北?の寒村で住居用として借りた、元小学校だった建物にその旗を立てたことからきています。

当然、そうした保守的な寒村ということもあり、なかなか理解を得るどころか、嫌がらせなども続きますが、二人とその子供達の成長が清々しくたいへん面白く読めました。

最後は残念ながら、ハッピーエンドではなく、そのことに様々な意見はあるでしょうけど、無理矢理、予定調和的な円満、万事解決で終わるより、LGBTの厳しい現実などを象徴するかのように自然で良いのかも知れません。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫) 浅田次郎

2003年に単行本、2006年に文庫化された、著者の多くの作品の中からテーマ毎に一部を抜き出したアンソロジー的な内容です。

読むまでは知らなかったのですが、著者がこの本のために書いたのは「あとがき」だけで、想像ですが、出版社の熱烈な浅田ファンの編集者が「私が過去の著書から抜き出しますから、それで1冊作らせて!」と頼んだのではないかなぁーと。

なので、著者の作品だと思って読むと、正直ちょっとガックリです。

と言うのも、ごく一部だけ小説の登場人物が発する言葉や、著者のエッセイのひと言を抜き出し、それらを寄せ集めただけのものですから、感動もなければ、わくわく感もありません。

せめて、エッセイだけから抜き出しているのなら「僕は・・考えている」もわかりますが、小説の登場人物の言葉を抜き出して、それを「著者の考え」というのはあまりにも乱暴すぎます。

これじゃーこの本の著者名は浅田次郎氏ではなく、○○編集部編ってするのが正しそうですが、それじゃー売れませんものね、、、

そんなわけで、著者にはなんの不満も恨みもありませんが、Amazonに1円で並ぶぐらいの評価するに値しないつまらないものでした。

☆☆☆

著者別読書感想(浅田次郎)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

健康格差 あなたの寿命は社会が決める (講談社現代新書) NHKスペシャル取材班

2016年にNHKで放送された「NHKスペシャル 私たちのこれから#健康格差~あなたに忍び寄る危機~」のために2年半も取材した内容を、番組だけでは放送しきれない部分を含め再構成された2017年に発刊された濃い内容の新書です。

私自身、先月末でリタイアし、これからは健康年齢を高める努力をしつつ、残りの人生を思いっきり楽しみたいので、この健康問題についてはいま一番興味あるテーマです。

本書では、「世代間の健康格差」「都市部と地方の健康格差」「地域コミュニティーの健康格差」をデータや実例をあげてわかりやすく解説されています。

さらに健康格差の解消に向けた提案などもあり、公共放送局のNHK取材班らしく、危機感を大げさにあおるのではなく、悲観的でもなく、無難にサラッとまとめてありますが、その代わりに、読み終わってもさして印象に残らないのは残念なところです。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

幻夏 (角川文庫) 太田愛

著者はドラマや映画、特撮ものなどの脚本家として有名な作家さんで、小説も4作ありますが、著者の作品を読むのは今回が初めてです。この著書は2013年に単行本、2017年に文庫化された長編小説です。

まず読んでみて思ったのは、脚本家らしく、情景描写が細かく丁寧で、自然とその場面の映像が目に浮かぶような書き方です。

例えば、

「繁藤修司が雑居ビルの階段を駆け上がる軽快なスニーカーの歩調に合わせて、紙袋の中のオニオンリングがカサカサと美味しい音をたてた。しかし、軽快な歩調に反して修司の心は重かった。(18ページ)」

は、ストーリーにはなにも関係がない描写ですが、すべてに渡ってこのような視覚に変換しやすい、さらに言えばこれを演じる役者が、自分がこの役をどう演じれば良いのかが理解出来る書き方です。

ストーリーは、調査会社(探偵)をやっている男が、23年前に起きた男児失踪事件にまつわる調査依頼をその行方不明になった男児の母親から受けますが、調べて行くうちに謎が謎を呼んでいきます。

それと同時に元検察官だった男の孫の女児が誘拐され、容疑者として元裁判官の息子が別件逮捕されます。

そして23年前に行方不明となった男児と幼馴染みだった男が現在刑事になっていて、女児が誘拐された事件に関わりますが、23年前男児が行方不明になった場所に刻まれていた同じマークが、今回の女児が誘拐された場所にもあることを発見し、事件が23年前の失踪とつながっていることを確信します。

新たな証言や発見から物語は二転三転していき、ちょっとややこしいのですが、たいへんよく考えられたストーリーで、映像化が頭の隅にあったのでしょうか、そのまま実写ドラマ化が十分可能な内容です。まだドラマや映画化はされていませんが、そのうち実現するのではないでしょうか。

ただ、小学生に刑事などを騙す凶悪犯罪の隠蔽がとっさの判断でできるのか?襲われて大きな怪我をしたホームレスだった身元不明の少年を警察や役所がなにも調査せずに里親に引き渡すか?って考えるとどうもそのあたりのリアリティがなく詰めも甘い感じがします。

★★☆

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あなたの人生、片づけます (双葉文庫) 垣谷美雨

連作短編のこの小説は、2013年に単行本、2016年に文庫化されています。この著者の作品は最近「老後の資金がありません」を読んでいます。

2020年4月後半の読書と感想、書評「老後の資金がありません」

タイトルだけ見ると、伊坂幸太郎著の「死神の精度」的な死神小説か?それとも、コミカルなローレンス・ブロック著の「殺し屋ケラーシリーズ」か?って思ってしまいそうですが、全然違っていて、部屋の片付けができない人の、心を変えることで生き方と整理整頓を勧めていくという、ほのぼのとした心の断捨離小説です。

確かにゴミ屋敷や汚部屋に代表される、部屋を片づけられない、逆によそのゴミまで集めて持って帰る人って、いくら物の道理を話しして「ゴミは捨てましょう」と言っても「ハイそうですね」とはなりません。

結局は心の問題で、それを解決しないことには、そうした片づけられない習慣は繰り返すだけでしょう。それだけに抱えている闇のプライベートに入っていかなければならず、難しい問題です。

そういう仕事には、この小説の主人公のような、どこにでもいるおばちゃんタイプが良さそうで、依頼された場所へズカズカと入り込み、部屋の持ち主の前でチッと平気で毒づき、大きくため息を漏らすという普通の反応が面白いです。

短編は「ケース1 清算」「ケース2 木魚堂」「ケース3 豪商の館」「ケース4 きれいすぎる部屋」の4編で、それぞれに、「社内不倫に疲れた30代OL」、「妻に先立たれた職人気質の老人」、「子供に見捨てられた資産家老女」、「謎の一部屋だけ綺麗に片づいた部屋がある主婦」の心の中に分け入って変化をもたらせることで、解決していきます。

部屋の片づけ方の手法をいくら教えても改善しないであろう場合(本書では重症)、そうした心の問題を解決していかなくてはならないということがよくわかる小説です。

夏場になって臭いがたまらなくなるゴミ屋敷などの相談が持ち込まれることが多い役所の福祉関係者にもぜひ読んでいただきたいです。

★★☆

著者別読書感想(垣谷美雨)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

羊と鋼の森 (文春文庫) 宮下奈都

2015年に単行本、2018年に文庫化された小説で、2016年の本屋大賞で大賞を受賞しています。また2018年には橋本光二郎監督、山﨑賢人、鈴木亮平などの出演で映画が制作され公開されました。

著者の作品は、昨年「遠くの声に耳を澄ませて」を読んでいますので、今回が2作品目です。

2019年6月後半の読書と感想、書評「遠くの声に耳を澄ませて」

タイトルからは内容が想像出来ませんでしたが、ピアノの調律師の話です。ピアノ調律師と羊?鋼(ハガネ)?というのは、やっぱり小説を読んで理解してください(意地悪)。

北海道の地方都市の高校生が、試験の後にひとり教室に残っていたため、先生から「学校を訪ねてくる調律師を体育館へ案内してくれ」と頼まれます。

調律師がグランドピアノのフタを開け、調律を始めますが、ピアノの精緻な構造を見て感動し、また調律師の仕事を間近に見て、自分にはこれしかないと、調律師を目指します。

そう、一人の若い男性の成長物語です。こりゃアイドル映画にはもってこいですね。

小説は、普段馴染みのない調律師の現実と理想の世界を浮かび上がらせて、三浦しをんさんがお得意とする「お仕事小説」とも言えます。別に著者はそういうつもりで書いたわけではないでしょうけど。

ピアノ調律師の需要は、家庭へのピアノ普及率に大きく影響するでしょうけど、少子化ゆえ、今後仕事が拡大していくという想像はできず、逆に厳しくなっていく状況のような気がしますが、これを読んで、調律師を目指してみよう!という若者が出てくればそれはそれでいいなと思います。

★★☆

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大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学 (朝日新書) 木村誠

教育書籍の学研出身の著者は、多くの教育関連本を出している教育ジャーナリストさんです。この新書は、2017年の発刊です。

タイトルは衝撃的で、これは釣りタイトルか?というと、「2011年 新聞・テレビ消滅」のような、まったく根拠なき釣りタイトルではなく、そこそこ現実的な問題となってきています。

少子化で子供の数が減ってきているのに、大学の新設や既存大学の定員増員など、多少進学率が上がったとしても、既に大学は飽和状態にあります。

特に学費が高騰しているのに反して、所得が上がらない人が増え、所得格差も拡がっていることで、一部の富裕層以外は子供を進学させたくてもできないという現実もあります。

奨学金という名の学生ローンは、アメリカの例を出すまでもなく、卒業と同時に返済が大きな負担となり、就職に失敗したり、就職先の業績が不安定だったりすると、もう即座に返済が滞ります。

そして有名な国立大学、学費が安い公立大学、ブランド化している私立大学、若者が好きな場所に立地している大学などに人気が集中し、郊外や地方の立地で、特段特徴のない大学はすでに定員割れをしています。

何年も定員割れが続くと、良い教員をジックリ育てたり、スカウトして雇うだけの資金はなく、良い教員がいないと、研究も進まず国からの補助金も減らされ、やがては行き詰まることになってしまいます。

そうした大学の実情を、国立大学、私立大学、地方大学などごとに分析データとともに危ない大学、安心な大学が読めばわかるようになっています。

しかし今回この本で地方にもキラリと光る人気校などがあることを知りました。地方の大学って情報はほとんど入ってこないので、校名すら知らないところがたくさんありました。

それにしても、学校の関係者は、相当な努力をされているのでしょう。日本は資産となるもの少なく、高度な教育ぐらいしか子供達に残せないので、逆風の中でも頑張ってもらいたいものです。

★★☆

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無私の日本人 (文春文庫) 磯田道史

映画で有名になった「武士の家計簿」などの著書がある磯田氏は、今やテレビの歴史番組の解説者として欠かせないキャラクターとなっているユニークな学者先生です。

私も毎週欠かさずNHK BSの「英雄たちの選択」を録画して楽しく見ています。それにしても、古代天皇から、昭和時代まで、どうしてそんなに詳しいの?と思えるぐらい博学で、しかもテレビに向いた雄弁な方です。

この著作は、実話を元にして、様々な古い資料から3人のそれぞれの生き方をとりあげています。小説でもなく、ドキュメンタリーでもなく、ノンフィクション的な、あり知名度はないけれど、江戸時代から幕末、明治初期に生きた、無名に近い偉大な3人の歴史実話物語です。

その3人とは、「穀田屋十三郎」「中根東里」「大田垣蓮月」で、よほどの歴史研究家、江戸時代の詩人、和歌の研究家でなければ、まず知られていないでしょう。私もまったく知らなかった人々です。

内容は、いずれもめちゃ面白くしかも感動する内容で、これはクドクド書くよりも、まず読んでいただくとして、その中の「穀田屋十三郎」は、2016年に中村義洋監督、阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡などの出演で「殿、利息でござる!」というタイトルで映画化されています。さらにこの映画には仙台つながりなのかスケーターの羽生結弦が最後にちょい役で出演しているそうです。

江戸時代にこうした英雄でもなんでもないけれど、控えめで奥ゆかしく、成果をひけらかすこともなく、欲はなく、貧しくても人のために身体を張った人がいるのだということがわかります。

お金(税金)を集めて、自分のためにばらまくのが仕事だと思っている今の政治家さんにはぜひ読んでもらいたい書籍です。

そして偉人や英雄伝には決して出てこないけれど、素晴らしい市井の隠れた英雄達を取り上げてくれる著者には感謝しかありません。

★★★

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ちょうど今は3月末決算企業の定時株主総会(以下総会)が開催されている集中期にあたります。

私が社会人になった1980年は、ほとんどの企業が、総会を円満に終わらせるため、総会屋を避けるために総会日を合わせ、結果的には一般株主もどこか1社にしか総会に参加できないという無茶苦茶な時代でした。

1982年に改正された商法が施行され、大きく総会の形が変わってきましたが、それでも企業側は反社の影に怯え、裏では総会屋とつながり、総会の集中日も相変わらず継続していました。

その総会集中日は2000年頃から緩やかに(開催日が集中しなく)なってきました。

警察の総会屋への締め付けが厳しくなってきたことや、上場企業にベンチャー企業など、過去から総会屋など反社会勢力とのしがらみとは縁のない企業が増えてきたこともあるでしょう。

総会が集中する日に総会をおこなう企業数を3月決算の上場企業全体の数で割った割合を「集中率」と言いますが、もっとも集中率が高かったのは1990年代後半頃で95%もありました。

仮に3月末決算の上場企業が2000社あればそのうち1900社が、同じ日に総会を開いているのですから異常ですね。それにしてもよく会場が確保できたものです。

その過去90%を超えていた集中日は、ここ直近5年間は30%前後と大きく下がっています。

定時株主総会集中率

2016年 32.2%
2017年 29.6%
2018年 31.0%
2019年 30.9%
2020年 32.3%

今年2020年の最集中日は6月26日(金)で、3月決算上場企業のうち総会日程が決定公表している2094社の中で677社がこの日に開催されます。

下記は今年2020年の3月末決算企業の総会開催日のグラフです。横棒が長い方が企業が集中しています。6月8日以前、7月1日以降の開催日は少数なのでグラフからカットしています。



6月26日に次いで多いのは前日の6月25日(木)で474社、その次は6月24日(水)で279社の開催となっています。この3日間で、68%を占めています。

3月決算企業の総会開催日を調べていて、いくつか気がついたことを書いておきます。

・一番早い開催は株式会社スクロールの5月29日
・一番遅い開催は株式会社フォーバルの8月12日
・開催日未定はNTTドコモや東芝など21社(6月5日時点)

今年はコロナウイルスの影響で、「(法律上)総会は開催はするけれども、来ないで欲しい」という要望が多くみられ、今まで一般株主を数多く集めるために、お土産を出していたところも、それを中止したり、別会場で映像を見るという形態に変わったりしています。

来年以降は、それに加えて、ネット上でリアルタイムに議決権行使もできるようになるのかも知れません。別に準備期間さえあれば難しいことではありません。

ネットなど糞食らえ!という高齢の株主が現在はまだ多そうなので、一気に全面的に移行するのは無理でしょうけど。

今年の総会では、コロナの影響を受けて業績が落ち込むところや、今期の計画についても抑制しがちで、株主にとっては精神上よろしくない状態のところが多いでしょう。

しかしこればかりは、経営の責任と言うより、災害ですから、今回の総会はそういう言い訳で切り抜けられたとしても、今期はどのように再生し成長させるのかが経営に問われる珍しい総会になりそうです。

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