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自動車事故は様々な要因で起きます。まずは運転者の操作ミスによる事故、飛び出しなど被害者側にも責任がある事故、自然災害や道路陥没などで起こる事故や、トンネル天井落下や道路に大きな落下物がありそれを避けようとしての事故など様々です。
1970年には日本の交通事故死亡者(事故から24時間以内に死亡した人の数)は1万6千人を越えていましたが、その後様々な死亡事故防止対策や救命医療体制の発達により、年々減り続け2012年には4411人と1/3以下に減りました。
特に1985年(昭和60年)に高速道路でのシートベルトの(前席)着用義務化が施行され(翌年には一般道においても前席着用義務化)、違反者は減点されるようになったことや、1980年代にバイクのヘルメット着用義務、それらとあわせてクルマの乗員安全性の研究と成果が進んできたことが大きく関係しています。
その他ではやはり医療技術や救急救命の体制が整い、従来なら生きてはいなかったであろう、意識不明の瀕死の重傷者でも延命装置を施し24時間以上生きながらえさせることができるようになり、統計上24時間以内の死亡者が発生しにくくなったこともあります。24時間を超えてから、どうなったかは過去と現在で比較する資料がないので不明です。
最近ではスバルのアイサイトをはじめとする衝突防止装置を装着するクルマが続々と登場し、ドライバーの脇見などによる追突事故や、アクセルとブレーキを間違って踏んでしまう暴走事故などにたいへん有効なプレ・セーフティ装置として大きな期待が寄せられています。
ただ残念なことにそのような装備は、後付けで装着できるものはなく、新車にオプションという割り増し価格で購入する必要があり(標準装備というのもありますが)、本来なら一番使って欲しい高齢ドライバーや免許取り立ての初心者が、わざわざ高いお金を出して新車や高額オプションを購入してくれそうもなく、行き渡るようになるまでにはまだだいぶんとかかりそうです。
この衝突防止装置は乗員の安全はもちろんですが、一部には自転車や歩行者などの飛び出しに有効なものもあり、従来のように乗員の安全さえ守られればそれでいいという身勝手な安全装備だけではなく、クルマの歴史からみて、初めて乗員以外の安全にも配慮した装置として大きな意義のあるものです。
と言うと、すでに何年も前からボンネットの形状や材質などは、人と衝突したときに跳ね飛ばされた人の衝撃を和らげる工夫をしているとか言われそうですが、実際には事故の状況は実験室の想定とは大きく違っていて、付け焼き刃的な対応ではエンジニアの自己満足でしかなく、気休め程度の効果しかないでしょう。
クルマの歴史は、スピードや乗員の快適性の追求とともに、安全性の追求の歴史でもあります。
衝突の際の衝撃を和らげる衝撃吸収バンパーや、一般的に2点式だったシートベルトをボルボ社が開発して特許を無償でオープンにした3点式シートベルト、ハンドルの中に埋め込んだエアバッグ装置。その発展型で助手席エアバックやサイドエアカーテン、制動時に滑りやすい路面で不安定となる姿勢を安定させる4輪アンチロックブレーキシステム、さらにはカーブで不安定になるのを防ぐ横滑り防止装置など、自動車そのものの安全に関わる装備や装置はこの20~30年のあいだにずいぶん進化してきました。
しかし同じ車種でもそれらの安全装備のいくつかはオプション設定となるケースが多く、同じ車種であっても安全性能に差ができます。本当に有効な安全性の装備はなにとなにか?と聞かれるとそれを証明するデータがなく、我々はメーカーが主張する広告を信用するしかありません。作った会社が一方的にいいと主張するものほどアテにならないものはありません。
例えば衝突防止装置も各メーカーがそれぞれ別々に開発し、光学カメラ、レーザー、赤外線などを組み合わせていますが、実際にそれらを公平な第3者機関が様々な状況で徹底的に検証したものはありません。
テストには莫大な費用がかかり、また条件設定などにより装置の有利不利などが起き、比較されるのを嫌がるメーカーからの協力も得にくいからです。
また効果が一番得られると言っても、その装備を付けるのに車両価格の1割以上も占める高価なものだとなかなか普及は進まないでしょう。
もっと具体的に言うと、登場して間がない前方衝突防止装置は、例えばですが、前方に障害物があることを俊敏に検知して自動的に急ブレーキをかける能力が優れていると、それによって後続のクルマの制動が間に合わず追突してしまうことさえ懸念されます。後を走るクルマに衝突防止装置が付いていないことが多いからです。
上記の場合、装置の誤認識だったり、本来ならハンドルを少し切ることで避けられ、急ブレーキをかける必要がない場合でも、衝突防止装置が働き余計な事故を増やしてしまう本末転倒の結果が出ることも考えられます。
流れの中で十分な車間距離をとることができればいいのですが、必ずそういう場面ばかりではありません。阪神高速などを走行していると、前のクルマとホンの10mも空けていると、すぐに2~3台が割り込んできます。
私は重大な交通事故の検証・調査を警察が事件性の検証をするだけではなく、第三者機関が車種と安全装備の有無、車体の色、使用年数、走行距離、整備状況、タイヤの摩耗度、運転者の習熟度(過去の運転歴とその事故を起こしたクルマの運転歴)、その他に事故が起きた道路状況や事故発生の時刻、天候・気温などを総合的に検証し、できるだけ多くの事故のデータを公表する必要があると前から主張しています。
安全なクルマとそうでないクルマ、安全な装備とそうでもない装備、車内の乗員の安全性と歩行者など車外にいる人の安全性、運転習熟度によって選ばれるクルマの違い、事故が起きやすい車種、車体の色、時間、天候、整備状況、運転者の詳細など様々な角度から第三者が検証します。
損害保険会社には、過去の事故や盗難など、車種ごと、運転者の年齢ごとに保険の支払に関するデータが残っていて、車種や年齢など条件によって保険金額のランクが違っていたりするのは普通です。
つまり保険会社のデータにさらにもっと条件を付加して公平中立な機関がデータを蓄積していけば、保険会社が個々に調べる必要もなくなりますし、消費者にとってはクルマを選ぶ際に、スピードや快適性などより、乗員安全性を求めるならこの車種と装備の組み合わせというのがわかります。
また前席の乗員に死亡者が多いクルマや、逆に後席の乗員に死亡者が多いクルマ、夕暮れに追突されやすいクルマの色、スリップ事故の起きやすい車種やタイヤのメーカー、過去○年間、ひとりの死亡者も出していない車種と言った有意義な情報が得られます。メーカーにとっては困るでしょうけど。
下記は最近起きた自動車事故のうち自損と考えられる転落事故です。
フェンスを突き破って40m下まで転落するも軽傷
道路右側のフェンスを突き破って、約40m下まで転落する事故が起きた。転落によって車両は大破したが、運転していた42歳の男性は軽傷だった。
駐車場で暴走のクルマ、フェンスを突き破って15m下に転落
金属製のフェンスを突き破って、約15m下を流れる川へ転落する事故が起きた。クルマは大破し、乗っていた2人が死傷している。
ヘアピンカーブを曲がりきれなかったクルマ、約25m下に転落
ガードレールを突き破って、約25m下の雑木林に転落する事故が起きた。運転していた30歳代とみられる男性が重傷。
ガードレール突き破って50m下に転落、運転者が意識不明の重体
道路右側のガードレールを突き破り、約50m下の谷に転落する事故が起きた。運転していた21歳の男性はヘリコプターで救出された。
このように40m転落しても軽傷で済んだケース、15mの転落で死傷者が出たケースと様々です。事故の様々な状況にもよりますが、それに加えて事故を起こしたクルマの車種や安全装備、シートベルト着用の有無、運転者の運転経験度などを数多く蓄積することにより、事故の原因や死亡原因、そしてクルマの車種別、装備別の安全性などがわかってくるはずです。そしてそれらは警察だけの秘密情報ではなく、広く公開すべき情報だと思っています。
多額の広告料でマスコミを押さえている大メーカーの自動車会社は、そんなレベル分けをしてもらっては商売に影響があるということで猛反対するでしょうけど、毎日十数名の死亡者や多くのけが人を出し続けている凶器とも言えるクルマを作って売る以上は、もう経済性や乗員安全性ばかりを主張するのでなく、自動車メーカー同士互いに切磋琢磨して乗員や歩行者ともに安全で、事故が起きにくく、またドライバー(=自社の製品のユーザー)の安全教育にも力を入れるようにしていくのが当然の義務ではないでしょうか。
そしてそれが世界の市場に対して日本車が他国の安いけれど安全でないクルマと差別化できる数少ない優位な点となります。
それでもまだ事故の車種別公表に反対するのであれば、美味そうに吸うタバコの広告が禁止されたように、音も出さず誰もいない綺麗な海岸線を違法スピードに違いないハイスピードで走り抜ける自動車のコマーシャルなどは即座に禁止し、「このクルマは昨年交通事故により○○人の死亡者を出しました」という表示をCMに入れるよう義務付けするのが妥当という気がします。
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