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ネットを使う人にとってはもう欠かせないサイトになっているインターネット百科事典Wikipedia(ウィキペディア)ですが、利用することは多いのですが、その概要についてはほとんど理解していませんでした。

Wikipediaがスタートしたのは2001年のこと12年前のことです。まずは英語版をベースとして始まり、日本語を含む多国語への対応も同じ年から始まりました(日本語版は2002年に改良が施されて現在の形になる)。

運営するのは民間企業ではなく「ウィキメディア財団」というジミー・ウェールズが創設した非営利組織で、記事執筆はすべて無償のボランティアです。

運営資金は寄付などによりまかなわれており、私が考えるにインターネットができて以来、無償でこれほど世界中の人に役立つコンテンツサイトはないと断言できます。

Wikipediaで使用されている言語は286種類、まだ増えていく可能性もあります。掲載されている記事(中身のある1ページ)は世界中に25,227,270記事あり、そのうち日本語で書かれている記事は、885,856記事あり、日本語の記事だけでも毎月4~5千記事が増加しています。

岩波書店発行の広辞苑に収録されている日本語の数はおよそ23万項目(語)と言うことですので、それの3倍以上となります。

ただしこれは広辞苑などには含まれない著名人や芸能人、各種キャラクター、企業名、楽曲名などの固有名詞などが数多く含まれているためと思われます。広辞苑などの辞書は掲載する言葉や種類をプロが厳選しますが、Wikipediaは誰でも自由に加えていけるところが特徴です。

先日、三浦しをん著「舟を編む」を読み、辞典の編集についての内幕を知ることができましたが、専門家が言葉を集め、紙の書籍の限界から説明文の文字数や収録すべきかどうか、もっとひいて発刊がビジネスとして成り立つかどうかの判断など、制作者側の都合で編纂したり決められるものとは違い、ネットを活用する辞典では収録数や文字数などに制限はなく、百科事典にとっては最高の環境といえるのかも知れません。

しかしながら、Wikipediaの特徴でもある、誰でもが自由に記事が書け、編集できるということは、書かれていることが信頼できる誰かに保証された内容とは限らないわけで、意図してあるいは意図せず誤った内容が書き込まれたり、自分や特定の会社に有利に解釈して書くことも可能で、それを信じた人が、損害や迷惑を被るということも当然起きます。

そのような問題はさておき、Wikipediaによって、無料で素早く疑問を解決することができるようになったことは、人類の大きな進歩ではないかと思っています。

「『知るは楽しみなり』と申しまして、知識をたくさん持つことは人生を楽しくしてくれるものでございます。」と「クイズ面白ゼミナール」(1981年~1988年)の番組冒頭で語っていたのは鈴木健二氏ですが、Wikipediaはまさに、この知るという楽しみを身近に与えてくれるひとつとなっています。

このWikipediaに関する各種データを拾ってきましたので掲載しておきます。数値は基本2013年10月現在です。

まず言語別の記事数のランキングです。



フィリピンは最近は英語がメインに使われているので、現地語は地方や高齢者以外はあまり使われていないのかと思っていましたが、なんと10位、11位にふたつもの現地語がランクインしています。

それだけフィリピンではこのWikipediaの利用が盛んなのでしょうか?フィリピン人のIT活用がこれほど進んでいるとすれば、今後IT業界が人材や開発拠点を求める先は中国やインドではなくフィリピンなのかも知れません。

ネイティブスピーカー(母国語を喋る人)が多い言語は、1位中国語、2位英語、3位ヒンディー語、4位スペイン語、5位アラビア語という順ですが、Wikipediaの言語別記事数は当然その順番とはなっていません。

特に中国本土では、何度かWikipediaへのアクセスがブロックされたせいもあり、中国語を使う人口が多い割りには記事数はあまり伸びていません。

オランダの人口は約1660万人で世界で58番目という国ですが、オランダ語の記事数は英語に次ぐ171万記事、第2位というのには驚かされます。それだけオランダ語圏でWikipediaの活用(閲覧だけでなく投稿や編集含め)が進んでいるのでしょう。

英語版のWikipediaで2012年の1年間にもっとも多く見られた記事は、1位Facebook、2位Wiki、3位Deaths in 2012(2012年に亡くなった人リスト)、4位One Direction(英国・アイルランド出身のポップスグループ)、5位The Avengers (2012年公開の映画)です。

日本語版に限定すると、1位AV女優一覧、2位AKB48、3位ももいろクローバーZ、4位ONE PIECE、5位嵐 (グループ)となっています。なんて平和で脳天気でスケベな人が多く活用している日本語版でしょう。

しかし日本語版で今年12月のある1週間だけを切り取り、もっとも多く見られた記事を見ると、1位特定秘密保護法案、2位軍刀、3位ネルソン・マンデラ、4位彬子女王、5位山口鉄也となっていて、2位と5位については?ですが、それ以外は社会性のあるテーマが上位を占めています。どっちが本当の日本人ユーザーなのか?です。

さて、このWikipediaという巨大な存在は、まるで生き物のように、今後もどんどんと成長を続けていくのでしょうか?

Wikipeddiaに登録をして記事を書いたり編集をおこなう人達のことをウィキペディアン (Wikipedian) といい、誰でもなることができますが、実際に記事を書いたり頻繁に編集をしている人は限られています。

このウィキペディアンの増加と活性化が今後のWikipediaが成長、発展していくかどうかを左右しています。もちろん記事の質も問われています。

現在でも世界広域で見ると、記事の偏りが見られ、例えばウィキペディアンが多い高等教育を受けた西洋人・白人から見た社会現象や歴史認識と、そうでない人達から見たそれとでは大きく食い違っていて当たり前です。

もっと言えば、Wikipedia日本語版と韓国版で竹島や慰安婦の記事はおそらく双方相容れない内容が書かれていることは容易に想定されます。

そうした政治や宗教、人種、戦争、文化、歴史、領土などの記述については、書いた者勝ちとなってしまうことが得てしてあり、あとから反論を付け加えたり書き換えることもできますが、現状ではウィキペディアンの勢力が強いものが勝ってしまう状態です。

したがって、現在まだネットにアクセスできない世界中の多くの人達が、今後ネットにつながりWikipediaを見ると、驚き、嘆き、哀しみ、怒りとなって様々な問題、例えば国際紛争や宗教戦争を引き起こすきっかけとなるかもしれません。

いずれにしても「世界の44億人がまだネットにアクセスをしたことがない」と国連の専門機関国際電気通信連合が発表しています。この数は、世界人口のおよそ6割に相当し、概ね発展途上国に集中しています。

これらの人が今後ネットにアクセスすることになればWikipediaはもっと発展すると同時に、前述したような先進国やIT活用度の高い国の一部の人が書いた内容が議論を巻き起こすことになるのでしょう。

それと英語の記事が439万もあると言うことは、それをすべて各国語に翻訳するだけでも相当なボリュームがあり、さらに紙の辞書が数年ごとに改版されるように、Wikipediaも日々更新されるコンテンツが数多くあり、ここで終わりというものがありません。現状ではまだ無限の可能性を秘めていると言っても差し支えないでしょう。

ひとつの危険性を述べておくと、このような巨大なデータベースを持ち、世界中で大きな影響力を持つ存在になったWikipediaを運営する「ウィキメディア財団」が、公正中立(なにをもって公正中立かという別の問題もありますが)な立場で居続けられるのかという疑問もあり、野心ある誰かが、それをうまく利用して情報操作や利益誘導に使わないとも限りません。過去にはそのような問題も実際に起きています。

万が一、公正中立な立場が失われてしまえば、「Wikipediaの記事はまるで信用がおけない」という評判が一気に広まり、悪影響を怖れる検索エンジンの結果からも除外されてしまい、結果、優秀で良心的なウィキペディアンが去り、忘れ去られた遺物になってしまうこともあり得ます。

また、初心者やITリテラシィが低い人ほど、ある特定個人が書いた主張を定説と誤認し、その内容を盲目的に信じ込んでしまう危険性もはらんでいます。

そうした意図的で作為的な記事についてはWikipedia運営側や良心的なウィキペディアンの素早い対応や判断(削除や注意書き)が要求されるでしょう。これはどこまで人が無償で奉仕を続けられるかという重い課題にもつながっていきます。

したがって「ウィキメディア財団」が今後長年にわたって、広告主などスポンサーを得ることなく、寄付金でまかない、特定企業や国家に頼ることなく運営し、公正中立な立場を堅持し続けてこの巨大なシステムを維持して、さらに質を担保していけるのかがこれからの大きな問題となってくるのでしょう。


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