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たのしい知識 ぼくらの天皇(憲法)・汝の隣人・コロナの時代(朝日新書) 高橋源一郎
道理で毎日朝日新聞には目を通していますが気がつかないはずです。もっともやや左に傾いていると言われながらも内容が中立を善とする大手新聞社には過激とも言える内容が含まれているので納得です。
著者の出版物では過去に「君が代は千代に八千代に」と「ぼくらの民主主義なんだぜ」の2作品を読んでいます。
団塊世代の行動派インテリの必修科目である学生運動に傾倒(凶器準備集合罪で逮捕・収監経験あり)していた方で、そうした思想が文章の節々に感じられます。
本著の内容は、「天皇と憲法」「汝の隣人(韓国)」「新型コロナ」の大きく3つのテーマがあります。
憲法の前文についての説明や他国の憲法との比較についてはよく理解ができました。
日本国憲法の「前文」は抽象的なことしか書かれてなくよくわかりません。そこで、強いていうなら「天皇のことに触れた憲法1条から戦争放棄の9条までが実質的な前文と考えられる」という主張には異論も出そうですが、なるほどと納得します。
多くの日本人が「憲法は占領国のアメリカに押しつけられたモノだから独自の自主憲法に改正すべき」という主張をされますが、本当に押しつけられた「だけ」のものなのか、憲法学者によっても意見が分かれるそうです。いずれにしても最終的にそれを承認して公布したのは天皇陛下と日本政府です。
著者は当然護憲派と思っていましたが、内容を読むとそうではなく、ハッキリと前文で天皇の役割や国民主権、戦争放棄と自国防衛について記載をするべきと、改憲派と言っても良いでしょう。一般的な保守改憲派とは改憲の趣旨は違っていそうですが。
二番目の「隣人」とは韓国のことで、その歴史、特に戦前にハングルを禁止され母国語を強制的に奪われた韓国人作家の苦悩と、詩人の茨木のり子氏(故人)の著書からの話です。
三番目は「新型コロナウイルス」が蔓延し始めてきた2020年7月頃までの話で、世の中がガラリと変わっていく姿を作家らしく少し距離を置いて客観的な視点で、自身の経験を元にした内容です。
全体的には、著者の考え方がよくわかるもので、説明や解釈もよく理解できます。ただ著者は若き頃の権力に対する反骨精神が、未だにしっかりと根っこに残っている方だということは理解しておかなければなりません。
★★☆
◇著者別読書感想(高橋源一郎)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
風をつかまえて(文春文庫) 高嶋哲夫
本著は北海道で国産風力発電に挑戦する家族の物語ですが、従業員3名の町工場が先行する欧州の大企業に対抗して手がけるという話にはちょっとリアリティがなくムリ目な感じがします。
風力発電は、欧州では進んでいます(EUは2023年電力の20%が風力発電由来で、日本は約1%)が、国内では自然エネルギーの中では出遅れています。これは単に技術力がないとかの問題ではなく、国の政策で自然エネルギーで発電した電力の買い取り金額が日本は低く抑えられているため採算化しにくい面があってのことです。
本著が出版された2009年頃は1,700基ほどだった風力発電基数は、13年後の2022年には2,600基へと少しずつは増えていますが、世界の中では中国が40%を越えているのに対し日本はわずか0.5%という普及率にとどまっています。
狭い国土と海に囲まれた日本にふさわしいのは、洋上風力発電ですが、工事が可能な遠浅の海が少ない日本列島沿岸を考えると最近できた浮体式洋上発電ということになりそうで、まだ様々な課題が多そうです。
太陽光発電もすでにパネルのほとんどは海外製になってしまい、風力発電も海外製の性能が高くて国産品は競争力がなく、日本製が優位な自然エネルギーは地熱発電装置ぐらいなので、国策として規制を緩和したり設置や買い取り価格に税金を投入すべき自然エネルギー事業は地熱発電ぐらいなのかも知れません。
わずかな希望としては、フィルムのような軽くて曲がる太陽光パネルの開発や、浮体式洋上発電の装置などの純国産技術も出てきているので、そうした日本の伝統である「応用技術」で競争することが可能かも知れません。本著が書かれた2009年当時ならともかく、いまさら風力発電の国産化では話題にもなりそうもありません。
★★☆
◇著者別読書感想(高嶋哲夫)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
燃える男(集英社文庫) A.J.クィネル
元外人部隊で傭兵だった主人公が窮地に追い込まれたら、たいがいこうなるだろうなぁというストーリーで、読み応えはありましたが、特に目新しさや意外なひねりはなく、淡々と復讐を遂げてハッピーエンドで終わります。
ひねりはないと書きましたが、主人公がボディガードをしていた娘が誘拐され殺されたのは、実は裏があったということが最後にわかるのは、一応クライマックスのひねりのようなものとなっています。
その中でもいちばん楽しめたのは、小説の舞台がマルタ(共和国)やイタリアのナポリ、シチリアといったあまり馴染みがなかった場所で、そうした美しい島々や都市がよく描かれていて、想像の中だけでも美しい景色が堪能できたのは嬉しかったです。
イタリアマフィアのゴッドファーザーの生みの親のイタリア南部地域で組織的なマフィアのボス達に敢然と立ち向かっていく孤高の元傭兵というスタイルで、悪人達を片っ端から殺しまくるというよく見かけるダークヒーローものでした。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
アメリカの夜(講談社文庫) 阿部和重
秋分の日生まれの主人公は、語り手の別人格の男性で、映画学校で学びながら、渋谷の西武百貨店の中にあった芸術、文化の複合施設シードホールでアルバイトをしています。
美術展などの時は、監視員として1日中会場で座っているだけのバイトですが、その際に慣例で本を読んでいても構わなかったところ、ある日を境に「読書禁止」を社員から通達され、「小春日和の時代が終わった」と憤慨する感性の持ち主です。
バイト仲間には同じく映画学校で学んでいる同窓生が多く、それぞれの個性や趣向の違いから映画論が飛び交います。
とにかく、大正時代ぐらいの純文学によくあったような、語り手が一方的に映画論や人間関係を訥々と語っていくだけのスタイルなので、ストーリーを追うというより、語り手の頭の中をのぞき見るという、読書好きな人でないとなかなか好きにはなれないでしょう。
ま、それも小説を読むひとつの醍醐味ではあるわけですけど。
タイトルの「アメリカの夜」はフランソワ・トリュフォー監督の1973年公開のフランス映画のタイトルからとっています。
この映画の特徴は、現在のドラマや映画では普通によく使われている昼間に撮影したシーンを暗くして夜の風景とする疑似夜景のテクニックで、ハリウッド映画から普及したため「アメリカの夜」と名付けられたようです。
映画の話しは、かなりマニアックでほとんどついていけませんでした。
★☆☆
◇著者別読書感想(阿部和重)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
最愛(文春文庫) 真保裕一
主人公は地方の小児科医で大学病院へ派遣されている独身男性。ある日警察から「姉が東京で撃たれ重体で入院した」と電話がかかり、急ぎ病院へ向かいます。
両親を早くに亡くして姉とは違う親戚に預けられて育った複雑な家庭環境で、長年姉の消息も知らずにいた主人公ですが、どうして暴力団の街金の事務所で銃撃されることになったのかを調べていくというストーリーです。
よく知らなかった波瀾万丈な女(姉)の半生を様々な関係者から話を聞いていく姿は、山田宗樹著「嫌われ松子の一生」(2003年)を思い出しました。
しかし最後に判明する小児科医となった最大の理由については、動機としてまた倫理的に考えて早く忘れたいことだろうと思い、ちょっと情緒的過ぎて無理があるかなぁと個人的な見解です。
★★☆
◇著者別読書感想(真保裕一)
【関連リンク】
1月前半の読書 世界の終わり、あるいは始まり、世界でいちばん透きとおった物語、クズリ ある殺し屋の伝説、向こうの果て
12月後半の読書 指名手配、白い遠景、時効を待つ女、歴史のミカタ
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世界の終わり、あるいは始まり(角川文庫) 歌野晶午
主人公は埼玉郊外の一戸建て住宅に妻と小学生の長男、長女の4人で暮らしている東京の食品会社に勤務するサラリーマン。
ある日、長男と知り合いの近所の小学生が誘拐され、殺されるという悲惨な事件が起きます。さらに続けて同様の誘拐事件が自宅周辺地域で3件起き、連続誘拐殺人事件となります。
一連の誘拐殺人の特徴は、小学生を誘拐した後、拳銃で殺害したあと、その子供の携帯電話を使い父親の会社あてにメールで犯行声明と身代金を要求するもので、その身代金はすぐに用意できそうな少額です。
犯行は目撃者もなく、警察が関与したお金の受け取りにも現れず捜査は難航しています。
子供のことはほとんど妻に任せっきりにしていましたが、あるとき長男の机に誘拐された子供の父親の名刺を見つけ、どうしてなんの関係もなさそうな誘拐事件の被害者の父親の会社の名刺があるのか?そこから疑心暗鬼となっていきます。
さらに子供の部屋を調べると、犯行に使われたと思われる拳銃などが見つかります。
父親のとるべき方法としては、長男を連れて警察へ出頭するべきか、その前に犯行に使われた証拠品をなぜ持っているのか聞くべきか、いやもし小学生の長男が犯人だった場合、社会は両親や妹に対し猛烈なバッシングを浴びせるだろうし、一生返せない莫大な賠償額などを背負うことになり、、、とグルグルと妄想が渦巻いていきます。
確かにそういう事態が起きて発覚すると、その人(保護者)にとっては「世界の終わり」です。しかし本当にだんまりを続けていて良いのか?それともカオスな「世界の始まり」なのか?
終わり方は、読者それぞれに判断を任されているようで、ちょっとモヤッとしますが、それまで散々妄想と付き合わされてきたので、晴れやかな気分でもあります。
★★☆
◇著者別読書感想(歌野晶午)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
世界でいちばん透きとおった物語(新潮文庫) 杉井光
本著は、2023年に文庫で出版されましたが、紙の書籍であることが必須の仕掛けが施されています。ライトノベルなどが多い著者の作品は今回初めて読みました。
元グラフィックデザイナーの京極夏彦氏の小説には「ひとつの文章が次のページにまたがらない」(必ず文末で改行される)という独自ルールがあり、小説の中にはその京極氏に教えを請いたいという主人公の父親の推理小説家が出てきます。
過去に京極夏彦氏の小説は6作品を読んでいますが、そのような独自ルールで書かれていたなんてまったく知りませんでした。しかも単行本や文庫などそれぞれの文字数や行数に応じて修正しているそうです。
この小説もその京極氏の独自ルールが採用されていて、その影響なのかスラスラとリズムに乗って読みやすくなっています。が、しかしここでは明かせませんが、本著の超絶独自ルールはそれだけではありません。
ただ、文中に三点リーダー「・・・・・・」や長音符号「------」がやたらと多いのには違和感がありましたが、その理由は最後になってわかりました。タイトルにも関係しています。
主人公は有名な推理小説家の愛人だった母親の息子で、その小説家が癌で亡くなったことを知ります。母親も数年前に事故で亡くなっています。
一度も会ったことがない父親(推理小説家)のことはどうでも良いと思っていましたが、小説家の息子(義理の兄)から電話があり、遺作がどこかにあるはずなので探して欲しいと頼まれ、フリーで校正作業を出版社から請け負っていた母親と親しかった大手出版社の編集者と一緒に遺作探しをおこないます。
なかなか凝った内容となっていて、久しぶりに驚かされました。
なお、すでに続編「世界でいちばん透きとおった物語2」も出版されているので、そのうち読みたいと思っています。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
クズリ ある殺し屋の伝説(講談社文庫) 柴田哲孝
タイトルの「グズリ」とは、日本には生息していないイタチ科クズリ属に分類される食肉類で、別名クロアナグマと呼ばれています。凶暴で爪と強力な顎で自分よりも大きな動物を一撃で倒すことができ、大きな熊も逃げていくそうです。その愛称を持つ殺し屋が主人公です。
20年も前に日本で暗殺の痕跡を残して消えてしまった殺し屋が、横浜に戻ってきて暗殺の仕事を再開します。
殺す相手は犯罪者で、特に麻薬に関連する人物をお金で依頼を受けて実行します。
警察庁の対テロ対策を担う外事課の警察官もその動向に注目しますが、使われた拳銃以外はまったく謎の人物で、過去に拳銃を売った密売人や、母親と思える人物と親しかった人物と会ったり、裏の動向に詳しい情報屋からネタを受け、ちょうど中国マフィアから送り込まれている二人の殺し屋とグズリを対決させ相打ちしたところで一網打尽にしようと目論みます。
主人公の出自はかなりややこしく、ロシア人の父親と日本人の母親で幼い頃にはロシアで育てられた記憶があり、子供の頃に父親も母親も亡くしています。
そして警察官の狙い通りに中国マフィアと本牧ふ頭で対決することになりますが、結果は想像通りの展開で、特にひねりや驚きはありません。このあたりは他の作品にも共通するパターンであっさりした終わり方です。
この作品の続編として「殺し屋商会」が2023年に発刊されています。
★★☆
◇著者別読書感想(柴田哲孝)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
向こうの果て(幻冬舎文庫) 竹田新
女優としていくつものNHK大河ドラマに出演、数多くのテレビドラマや映画、テレビCM、そして本業とも言える舞台と活躍の場は多いのですが、残念ながら私の記憶にはありませんでした。
ストーリーは、保険金目的の殺人事件で逮捕された女性と検事の対話が主になっていて、その女性の過去や周辺にいた男性達、そして検事自身の過去などが徐々に明らかになっていくという流れです。
容疑者の女性も殺人を認めていて、簡単な裁判になるはずでしたが、検事が女性の沼にはまっていくところはドキドキさせられます。
なにか内容は全然違っていますが、以前読んだ山田宗樹著の小説「嫌われ松子の一生」や有吉佐和子著「悪女について」をふと思い出しました。
いずれも貧しく壮絶な子供時代を送った女性が必死に生きていく姿を表していたからだろうと思います。
各章に視点(語り手)となる人物名がそれぞれ書かれていて、またテンポの良さもあって一気に読めてしまうのも特徴だと思います。
★★★
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1819
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
ビジネス界からリタイアしてからはや4年が過ぎ、今年の夏には5年目となります。
元々人に対して過剰なほど気を遣う性格なので、多くの人に交じって働くと大きなストレスを感じます。働かないということはこれほどストレスがなく、精神衛生上に良いものかと日々実感しています。
ただし肉体的に老化で自然に衰えていく分は仕方がないとして、少しでも健康でいたいので、毎日1時間ほどの早歩きを取り入れたウォーキングとストレッチ、家事やDIYなどをこなして身体をよく動かしています。
お正月と言えば年賀状ですが、ここ10年間で鬼籍に入った方や年賀状仕舞いなどで少しずつ減っていき、今では50枚ほどが続いています。
こうした古くからの慣習で、私自身も物心が付いた4~5歳の幼稚園の頃から始めている習慣なので、できればまだ続けたいところですが、今後はどうしようかと考えています。
しかしはがきの値段が今年一気に1枚22円も値上がりし85円になったことでもう愛想が尽きかけています。効率を上げるためだったはずの郵政民営化が正解だったのかわからなくなりました。
私がまだ幼児だった頃、母親あてに実家の祖母からよくはがきが届いていて、いつも見せてもらっていましたが(達筆すぎて読めなかった)、その頃(昭和30年代終盤から昭和40年頃)ははがきの値段は5円、封書が10円だったのをよく覚えています。
そのイメージが強く残っているので、60年間で17倍!(5円→85円)というのはいくらなんでも横暴な上昇としか言いようがありません。ちなみに大卒初任給で言えば昭和40年(1965年)が2.4万円だったのが、令和6年(2024年)が21.6万円で9倍です。
さて、正月早々の愚痴もそこそこにして、今年もスタートは読書感想からです。
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指名手配(創元推理文庫) ロバート・クレイス
原題は「THE WANTED」で、直訳です。でも内容は私立探偵の人捜しですので、一般的に想像する警察がおこなう「指名手配(犯)」とはちょっとイメージが違っています。
著者の作品には他にも警官と警察犬を主人公としたシリーズもありますが、著者の作品を読むのは今回が初めてです。
探偵小説が好きで、チャンドラーや、パーカー、ブロック、コナリーなどを読んできてこのクレイスに気がつかなかった自分は大恥モノです。
その仲でもマイクル・コナリーとは親しい間柄で、双方の作品中にお互い相手の主人公(ハリー・ボッシュとエルヴィス・コール)を登場させるぐらいの仲だそうです。
このコールシリーズを最初から読みたいけど、初期の作品はすでに絶版状態で、気長にブクオフに出てくるのを待つしかなさそうです。またシリーズ17作品の内、邦訳されているのはその半分ぐらいです。
内容は、高級な腕時計を隠し持っていた息子が犯罪に関わっているのではないかと思い、その母親が探偵に調査を依頼しますが、その過程で高級住宅ばかりを狙った連続空き巣犯一味の可能性が高くなってきます。
息子は母親と探偵にバレて警察へ自首することを求められたことで、家出をして行方不明となります。
そこで探偵が様々な関係先を回って調べていくことになりますが、警察以外にも息子を探していることがわかり、、、
強面の相棒で元海兵隊のジョー・パイクはスペンサーシリーズで言うならホークの役で、主人公コールの良き理解者として大いに活躍します。
そう言えば私立探偵コールも相棒パイクもベトナム戦争の帰還兵という設定で、ハリー・ボッシュの経歴とかぶります。
ベトナム戦争でアメリカが関わった時期は1965年から1975年までですから、1975年に20歳で軍に従軍したと考えても、2017年時点では62歳になっているはずですが、スペンサーシリーズと同様(スペンサーは朝鮮戦争に従軍)、何年経っても歳をとらないサザエさん一家のようなスタイルです。その点、ハリー・ボッシュやマット・スカダーは作者と同様に年老いています。
どうしてもこうした長いシリーズとなった場合には、主人公の年齢や過去の経歴などに矛盾点などが発生してしまいます。
サザエさんが最初に登場したのは1946年ですが、戦争の影響もあったでしょうけど当時の日本人男性の平均寿命が50歳、サザエの父親の波平は孫もいる54歳の設定です。30年以上も寿命が延びて、54歳で孫までいる大家族というのは現在では滅多にお目にかかれないでしょう。
★★★
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
白い遠景(講談社文庫) 吉村昭
主に昭和40年代に書かれたものがほとんどで、時代を感じるものもあれば、作家の矜持のような普遍的なものまで様々です。
1927年(昭和2年)生まれの著者は、代表作に「戦艦武蔵」など戦記物が多いので、太平洋戦争に従軍していた方と思っていたら、戦時下で学校を繰り上げ卒業したものの予備役で終戦を迎えたとのこと。もう数ヶ月早く生まれていたら完全に徴兵され、他の多くの同級生と同様、南方へ送られ生きては帰れなかっただろうとのことで、人の運命なんてわからないものです。
エッセイでは著者の様々な小説の裏話というか取材の実際や、事件や事故が起きた現地へ足を運んでその場所を確かめることを常としていることなどがよくわかります。
太平洋戦争の話しは取材できる相手がまだいた時代(昭和40年代)ですが、江戸時代や幕末の頃の話しは直接見聞きした人からの取材はできず、そのため様々な古文書や研究資料から史実は曲げない範囲で著者独自の創作力が発揮できて楽しいということです。
多くの新聞や雑誌にそれぞれ掲載されたものを集めていますので、かなり重複しているところもありますが、小説では書けなかった著者が感じた雰囲気や、戦争の悲惨な現場に実際遭遇した人たちがポツリポツリと話す内容には小説以上の重々しさがあります。
★★☆
◇著者別読書感想(吉村昭)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
時効を待つ女(徳間文庫) 新津きよみ
著者はサスペンス・ホラー要素の強い作品が多いのはよく知られていますが、先日読んだ「帰郷 三世代警察医物語」は意外な感じがしましたが、真っ当な家族愛とミステリーを絡めた作品でした。
さて今回はどのような展開なのかな?とわくわくしながら読みました。
タイトルになっている初っぱなの「時効を待つ女」はミステリー要素が強いものの、ひねりが効いていて最後の大どんでん返しでは「え?えっ?えぇぇぇ!」と、最初に戻って読み返すことになるほど驚かされました。
「ムフフ、してやったり」とまったく会ったこともないし見かけたこともない方ですが、著者のにやけ顔が思い浮かびます。
他の短篇もそれぞれにユニークな発想で、ありえねぇー!と思いつつも、意外な展開で面白かったです。ただ一番目の作品の衝撃が大きかったため、期待値が大きく上がってしまい、それと比べるとややパワー不足に感じました。
★★☆
◇著者別読書感想(新津きよみ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
歴史のミカタ(祥伝社新書) 井上章一、磯田道史
タイトルの「ミカタ」とは「見方」であって「味方」ではありません。読むまでどっちなんだろう?と思っていました。歴史学者としては、歴史をもっと好きになって欲しいという歴史の「味方」という意味も裏にはありそうです。
共著には違いないですが、もっぱら主導して喋っているのは歴史学者の磯田氏で、井上氏はわざとかも知れませんが的外れというか、茶化したり、脱線した話が多いように感じました。
幅広い日本の歴史を語るには、古文書をスラスラ読めて、さらにNHKで歴史番組を長くやっている磯田氏にはかないませんから、磯田氏の独壇場になるのは仕方ないでしょう。井上氏は自身が生まれ育った京都の歴史や世界史、特にローマ時代などには造詣が深いです。
本書で語られていますが、日本の歴史の学習はとにかく年号や人名などの暗記が主となっていて、それでは興味を持ってくれる若い人が少ないというのもうなづけます。
また大河ドラマでは語られない英雄達の派手な女性関係など、時代錯誤と言われる今の時代では取り上げにくい話などにこそ興味を引く面白いことがあったりします。
また女性天皇(国王)が、文明が発生した大陸では少なく、欧州(半島)や朝鮮半島までくるとやや増えてきて、日本や英国のような島国では結構多くなると言う文化が伝わってくる時間と距離によって変わってくる経緯など「なるほど!」といった話しは面白いです。
★★☆
◇著者別読書感想(磯田道史)
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12月前半の読書 生存者ゼロ、七つの会議、遺言、名もなき少女に墓碑銘を
11月後半の読書 カササギ殺人事件、探偵は絵にならない、歩きながら考える、遠い唇
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生存者ゼロ(宝島社文庫) 安生正
本書は著者のデビュー作でありながら、2012年の「このミステリーがすごい!」で大賞に輝いた作品で、ベストセラーになりました。この作品は、2013年に単行本、2014年に文庫化されました。
私は過去に著者の作品では「ゼロの迎撃」(2014年)を読んでいてこの作品が2作目です。
読んでみて思ったのは、とてもデビュー作とは思えない力作で、受賞したのも十分に頷けるものでした。ただあれこれと余計に盛り込みすぎて、やや間延びしてしまうのが残念なところです。
しかも、規模は違いますが(小説では北海道内だけで想定何十万人もの死者が出ている)、2019年末から拡がってきた新型コロナ騒動を彷彿させる内容で、先見の明というかバイオSF的にも読めます。
主人公は、自衛隊員ですが、ドンパチする現場の隊員ではなく、さる事情から内勤の陸上自衛隊の中央情報隊に配属されていて、見えない敵と戦うことになります。
国内で想定外の事件が起きると、決められない総理大臣、官房長官、厚労大臣、その他関係省庁大臣などがオロオロする中で、自衛隊と警察が盾となり奮闘しますが、なにが起きていて、なにと戦っているのかが皆目わからないというジレンマがあります。
普通ならば、映画「感染列島」(1994年)や、小松左京著の小説で映画にもなった「復活の日」(1964年)のように、人類とウイルスや細菌との戦いというのが今までのこういう場合はアルアルですが、この小説の場合はそれだけでは終わりません。そこが凄いです。ヒントは途中から出てくるヒロインが生物学者ということです。
原発事故やパンデミック、さらには台湾有事など、国の未来を大きく左右する時にこそ、総理大臣の正しいリーダーシップや有能で即座に行動できる内閣がないと、とんでもないことが起きるということがこの小説でよくわかります。
★★☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
七つの会議(集英社文庫) 池井戸潤
著者が得意とする銀行ものではなく、中堅電機メーカーを舞台にした連作の短篇を集めたような仕組みになっています。
過去には三菱自動車のリコール隠しを小説化した「空飛ぶタイヤ」(2006年)を2010年に文庫で読みましたが、その舞台を自動車メーカーから電機メーカーに変えたような内容です。
ただし、リアルな出来事を小説にしたものとは違い、アクが強かったり、妙に魅力ある登場人物が何人もいてエンタメ小説として成功していると思います。
第1話から第8話までの短編小説風ですので、それぞれに登場人物が代わっていきます。したがってこの小説では、舞台となる大手電機メーカーソニックの子会社で、いかにも昭和にはよくあった猛烈会社の東京建電という会社が主人公と言えます。
私自身、こうしたノルマを追い求める猛烈な営業が中心の会社に長く在籍していたことから、登場人物の気持ちはよくわかります。もしギリギリのノルマ達成のため、甘い不正の誘惑があれば、普段は真正直な人でも気持ちが揺れ動くということは、その場にいる人でないとわからないかも知れません。これは会社の体質そのもので、個人に責任はないとも言えそうです。
でもそれを一時の迷いでやっちゃうと、後日会社の存続を揺るがす取り返しが付かない大事に至るというのがこの小説でもよくわかります。
★★☆
◇著者別読書感想(池井戸潤)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
遺言。(新潮新書) 養老孟司
21年前の2003年に大ベストセラーの「バカの壁」を読んで、正直言うとなにが言いたいのかよく理解できず、文系のしらけ世代の私にはきっと理解し合えない著者なのだろうと勝手に決めつけ、それ以来の著者の新書です。
さすがに20年経てば双方に歩み寄れることもあるだろうと読み始めました。
しかし、やっぱりダメでした。こうした秀才で自己本位型が強烈な人の話しにはどうもついていけませんし、理解ができません。えぇ私がバカなだけですけど。
「感覚と意識の対立」とか「同じとイコールへの収斂」、「芸術は同じからの解毒剤」など、無理矢理自分の中の複雑な考えを披露されていますが、まったく理解ができません。えぇ、私がバカなのです。
「おまえの脳みそは筋肉でできている!」と言われそうですが、確かに文化会系か体育会系か?と問われると体育会系に違いないし、文系か理系かと問われると当然文系だし、記憶力は良い方か?と問われると、まったく人の顔が覚えられない記憶力の悪さだし、そういう日本人がいるということがこうした秀才には理解できないというか、ハナから見捨てているのでしょう。
★☆☆
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
名もなき少女に墓碑銘を(PHP文芸文庫) 香納諒一
著者の作品は過去には「心に雹の降りしきる」とアンソロジー「名探偵で行こう」の中の一篇「花を見る日」を読んでいます。
ストーリーは、昔刑事だった頃に2度捕まえたことのある常習空き巣犯だった男が出所して連絡してきましたが、その時は電話に出られずそれっきりになってしまいます。
その元空き巣犯だった男が多摩川に浮かんでいるのが発見され、直前に電話を入れていたと言うことで刑事が探偵を訪ねてきてその男が死んだことを知らされます。
死んだ男が娘を探していたことを知り、すでに依頼者はいないのに娘を探しているうちに、娘の母親で、男が昔結婚していた女性の複雑な家庭環境を知ることになり、事件に巻き込まれていくという流れです。事件の謎を追う探偵モノ小説は大好物で、元警察官の男臭いハードボイルドものです。
ただ日本の小説では珍しく巻頭に登場人物の一覧があるので助かりましたが、人間関係が複雑で、誰と誰が兄弟で、誰の子で、誰の孫とか混乱します。
また出生の秘密とか、出生届の問題など、あまり詳しくはないですけど、そういうことが事実上可能なのかどうかってことも気になります。
この私立探偵のシリーズは他に「熱愛」(2010年)が本書の前に出版されています。そちらも読みたくなりました。
★★☆
◇著者別読書感想(香納諒一)
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11月後半の読書 カササギ殺人事件(上)(下)、探偵は絵にならない、歩きながら考える、遠い唇
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カササギ殺人事件(上)(下)(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ
この小説は、日本国内の「このミステリーがすごい!」、「週刊文春ミステリーベスト10」、「本格ミステリ・ベスト10」、「ミステリが読みたい!」などの賞に輝いています。文庫の帯には7冠と書かれています。それだけ評価が高かったのでしょう。
文庫上下巻で735ページにわたる長編ミステリー小説ですが、ユニークなのは上巻のほとんどが小説上の架空の売れっ子ミステリー作家の小説「探偵アティカス・ピュントシリーズ第9作目」、タイトルは「カササギ殺人事件」の出版前の原稿で、その原稿にはなぜかミステリーの肝と言える最終章の謎解きの部分だけが抜けています。
そして下巻では、そのミステリー作家の担当編集者の女性が、謎解き部分がない原稿を読み終わり不思議に思っていたところ、執筆した作家が謎の自殺をしてしまい、同時に遺書が郵便で出版社の上司宛に届きます。
そこで、その女性編集者は、ミステリー小説の謎解きと同時に作家が自殺した、あるいは自殺に偽装された死の謎について探偵よろしく様々な関係者に会って調べていきます。つまり小説の殺人事件の謎と、現実の自殺の二重の謎解きという構図になっています。
上巻のほとんどを占めるミステリー小説の時代背景は、50年ほど前の英国の郊外で、富豪の名門家の女中が階段から転落し亡くなり、さらにその2週間後には名門家の主人の男爵が首を切断され亡くなります。その謎解きにエルキュール・ポアロに似た雰囲気のロンドン在住の私立探偵が登場してきます。
一方の下巻では作家が自殺したことで結末が不明のままで最新作が出版できない事態に陥った編集者の謎解きは現代の英国が舞台です。
二つの時代を交互に繰り返していく小説はよくありますが、ミステリー小説の中にミステリー小説があり、その二つの時代のミステリーがそれぞれに影響したり、物語の中に解決のヒントが組み込まれていたりしてしっかり読み込まないと混乱してしまいます。
登場人物の名前だけでも、上巻のミステリー小説と、下巻の現代の有名作家の自殺騒動とで二種類の登場人物があり、油断していると「あれ?誰だっけこの名前は?」と混乱しちゃいます。記憶容量が急激に少なくなってきた年齢ですので、、、
このまま、モヤモヤした二つの謎解きはどうなるのか?と心配でしたが、ちゃんと最後の最後には明かされますので安心してください。
★★★
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探偵は絵にならない(ハヤカワ文庫) 森晶磨
何度も書いてますが「マーロー」や「スペンサー」「スカダー」「スペード」「沢崎」「神山」など「探偵」の小説が好きなので、タイトルにあると内容はともかく買ってしまいます。
本書は2020年に書き下ろしが文庫で出版され、その後続編の「探偵は追憶を描かない」が2021年に出版されています。
この小説には特に探偵という職業は出てこず、単に同棲していた女性がいなくなり、それを探しに画家の主人公の生まれ故郷の浜松へ戻るという流れです。人捜しなので探偵ということなのでしょうけど、単に素人の人捜しなので全然探偵小説の範疇には入ってこない感じです。
味があると思ったのは、地元浜松でアロマテラピーの店を経営している主人公の友人がいて、香りで様々な推理をしたりアドバイスをします。その各種のアロマについてもうんちくも楽しいです。
ちょっと思っていた探偵小説とは違いましたが、やや重めのミステリー小説「カササギ殺人事件」を読んだ直後だったので、サラッと軽くてリフレッシュできました。
★★☆
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歩きながら考える(中公新書ラクレ) ヤマザキマリ
新型コロナが広がり始めた2020年に出版された「たちどまって考える」の続編と言える作品でしょうか、前作は読んでいないのでわかりませんが。
著者は夫とその家族が住むイタリアと、著者自身の主な仕事場の日本(東京)の二重生活(当時は子供がハワイに住んでいたので三重生活?)をしていたこともあり、2019年暮れから始まった新型コロナ騒動で行動制限がかかり著者の生活に大きな変化をもたらしたことでしょう。
本書が書かれた2022年時点では、すでにワクチンや治療薬があり、東京オリンピックも開催され、かなり行動制限は緩和されていて、経済をまわそうという動きがあり、そこで著者も外へ出掛けて従来とは違った新たな視点をもって、、、と思っていたら、後半1/3は映画や読書の話しがメインになって、若い人向きの人生訓などへと移っていきます。
このようにコロナ禍で人生、特に仕事や人間関係などに大きな変化が起きた人は著者のみならず多数いたでしょう。私は幸いにもコロナ禍以前から在宅ワークを実践していたので、その在宅リモートの日が増えただけであまり変わりませんでしたが、それでも週に3~4回はしていた外食に行きにくかったり、映画館など大勢人が集まる場所は避けたりと多少の変化はありました。
10数年後には「失われたコロナの2年間とか3年間」とか言われるのでしょうけど、2024年時点ではすでにコロナ禍はかなり遠くの存在になってしまい、それよりも物価高が続く経済問題や、別の感染症などの心配をするようになっています。
本書を読むと、あの頃のことが蘇ってきますが、それにしてもコロナ禍の中で著者の日常や考え方を一方的(紙の書籍だから双方向はあり得ませんが)に述べられても、「あぁそうですか」という感想以外は出てきません。
著者は、17歳で画家を目指し海外に出て、未婚のままで出産をし、子育てしながら苦労して漫画で大ヒットを飛ばし、著名知識人の仲間入りした方で、現在は14歳年下のイタリア人と結婚、子供も大学を卒業して子育ても終わりという通常の内向きな日本人には理解しがたい特殊な経験の持ち主だけに、その知識はともかく生き方や価値観などは参考にはなりません。
なので、波瀾万丈物語やそうした経験を元にした人生訓を聞かされても、年寄りにとっては眠たいだけに終わります。しかしもっと感性豊かで夢と輝かしい未来のある若い人が読むと勇気づけられたりするのでしょう。
★☆☆
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遠い唇(角川文庫) 北村薫
収録作品は、「遠い唇」「しりとり」「パトラッシュ」「解釈」「続・二銭銅貨」「ゴースト」「ビスケット」の7篇です。
短篇作品もあれば、ショートショート的な短い作品もありますが、いずれも謎解き作品となっています。
ただ、中には江戸川乱歩の作品「二銭銅貨」を多少は知らないとよくわからないものや、著者の過去の作品「八月の六日間」の主人公が登場する作品があるなど、多少はツウ向けの作品集なのかなと思いました。
表題の作品「遠い唇」は、暗号もので、読者が推理し解読するのはまず無理という内容、「しりとり」と「ゴースト」の主人公は、「八月の六日間」で山歩きをするやり手の女性編集者、「パトラッシュ」は若い男女の恋愛ものです。
「解釈」は私の一番のお勧め短篇で、地球外生命の新星探査隊基本情報調査官達が、人間が読んでいる書籍を奪ってこの星の状況を調べようとしています。奪った本は夏目漱石の「吾輩は猫である」、太宰治の「走れメロス」、川上弘美「蛇を踏む」で、それぞれの言語記録(小説)からこの星を支配する人間というものを理解しようと試みます。小松左京や星新一ののショートショートに似ています。
「続・二銭銅貨」は江戸川乱歩の大正12年のデビュー作「二銭銅貨」をモチーフに、その中にある小さな謎について新たな解釈というか謎解きをするというもの、「ビスケット」は著者の過去の作品の「冬のオペラ」などに何度か登場した探偵が謎解きをする短篇です。
それぞれにユニークさが際立ち、著者の幅広い知識や興味の世界がわかり、ミステリー短篇の名手としての地位は不動です。
★★☆
◇著者別読書感想(北村薫)
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