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1901
ドキュメント72時間ほぼ毎週、楽しみにしているテレビ番組に「NHKドキュメント72」があります。

72時間カメラを据えて様々な人間模様を浮き彫りにして描き出す希有なドキュメンタリーですが、その取材地が毎回変わります。

その取材場所ですが、過去に行ったことのある場所は懐かしく、また行ったことがない場所だと行ってみたいなと思います。ちょっとしたロードムービーを見ているような雰囲気もあります。

3年前には、放送前後に行ったリストを作り、それを自己満というか備忘録的にブログにもアップしました。

◇「NHKドキュメント72で放映された場所へ行った

その時に紹介したのは下記の場所と放送タイトルです。

成田市さくらの山
◇「大空に飛行機を見上げて」2018年4月6日放送

山形県鶴岡市立加茂水族館
◇「ゆらゆら くらげに誘われて」2017年6月16日放送

長野県阿智村
◇「長野 天空の絶景を眺めて」2019年12月13日放送

青森県むつ市恐山
◇「恐山 死者たちの場所 」2014年6月6日放送

川崎市子ども夢パーク
◇「“どろんこパーク” 雨を走る子どもたち」2022年9月2日放送

三陸海岸沿い(青森、岩手、宮城)
◇「東北 春を探して 国道45号線を行く」2018年4月20日放送

横須賀市ヴェルニー公園
◇「横須賀 軍艦の見える公園で」2017年2月17日放送

川崎市東扇島西公園
◇「東京湾 真夏の海釣り公園」2020年8月12日放送

その後、新たに訪問したり、過去に訪問した場所が、後日番組で放送されたりしたので情報をアップデートし、第2弾として紹介しておきます。

特に今回は、関東に住んでいる身として非日常感を味わえる遠くの場所がメインです。写真はすべて私が現地で撮った写真です。

  ◇   ◇   ◇

八戸市 蕪島
◇「青森・八戸 ウミネコが舞う神社で」2023年6月2日放送

蕪島


鳥取砂丘
◇「砂丘に呼びよせられて」2013年11月15日放送

鳥取砂丘


松江市 黄泉比良坂(よもつひらさか)
◇「島根・黄泉比良坂 あの世との境界で」2023年10月6日放送 

黄泉比良坂

黄泉比良坂2


北海道 苫小牧西港フェリーターミナル
◇「巨大フェリーの人生航路」2014年4月11日放送

苫小牧フェリーターミナル


北海道函館市 ラッキーピエロ 昭和店(訪問したのは函館市の別店舗)
◇「函館 ハンバーガーと幸せと」2018年10月26日放送

ラッキーピエロ

ラッキーピエロ2


北海道羅臼町 熊の湯
◇「知床半島の秘湯にて」2022年10月28日放送

熊の湯

熊の湯2


北海道稚内市 宗谷岬
◇「最北のバス停で」2014年2月28日放送 

宗谷岬

宗谷岬2

  ◇   ◇   ◇

ドキュメント72時間は熱心なファンも多く、下記リンク先のようなわかりやすいロケ地MAPを作ってくれている方には感謝です。

ドキュメント72時間 ロケ地巡り用MAP完全版を作った(941::blog)

【関連リンク】
1691 NHKドキュメント72で放映された場所へ行った
1338 防衛大学校の深い闇
1205 老人ホームは男性高齢者にとって快適ではないという話し
895 「ドキュメント72時間」を見て日本経済を考えた

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1900
O・ヘンリーミステリー傑作選(河出文庫) O・ヘンリー

O・ヘンリーミステリー傑作選
著者の小説を読むのは、O・ヘンリ短編集(1)~(3)を34年前の1992年に読んで以来です。

34年前というと、私の年齢も重要な仕事を任されていた34歳で、当時は怖いものなしでバリバリのビジネスマン(笑)時代だった頃です。

その頃読んだO・ヘンリーは、仕事や家庭の雑事から一時離れることができて、心の清涼剤になった記憶があります。

心が温まるような話もありますが、それよりもどちらかと言えば皮肉っぽい、ウイットに富んだブラックジョークのようなものもあったと記憶しています。

作家時代に書いた短篇は300に及ぶそうですが、日本語に翻訳された作品で読めるのはそのうちの1/3もないでしょう。

少しでも日本語翻訳版を提供しようと、過去に出版された作品以外から28作を選抜したのが本書で、1984年に出版されました。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

白夜を旅する人々(新潮文庫) 三浦哲郎

白夜を旅する人々
1984年に単行本として、1989年に文庫化された自伝的長編の私小説です。

時代は著者が生まれた昭和6年から始まり、著者の家族、特に兄2人と姉3人を中心とした家族の物語です。

その家族は、姉の二人に遺伝的な障害(先天性色素欠乏症)を抱えながらも、住まいのある青森県八戸市で、仲良くそして明るく暮らしています。

母親の実家が呉服店の本家と言うことで、そののれん分けで呉服屋を営み、番頭や丁稚を抱えている当時としては裕福な一家でした。

前半のその家族のそれぞれの思いや行動については、まだ幼かった作者の創作に違いありませんが、当時の地方の生活感がよく出ています。

そして後半からは一転して、家族の問題が噴出していき、一気に暗い内容となっていきます。

それは、著者の略歴にあるとおり、三男三女の兄弟姉妹のうち、二人の姉が若くして自死を選び、二人の兄が失踪してしまうという自らの家族を描くことでそうなってしまうでしょう。

当時の田舎では、大家族で、子供が何人もいるという家が普通でしたので、この主人公たる一家も子供が6人という賑やかさでしたが、それが順に減っていく悲しさは読み進めていくと気持ちが沈んでいきます。

当然、祖父母や、叔父や叔母など登場人物も多く、現代の核家族や縁遠い親戚とはかなり違った複雑な人間関係があります。

そうした家族や家系というしがらみの中で、たくましく生きていくということは、今は忘れ去られてしまった感がありますが、私が生まれた昭和30年代でもまだ多少は残っていて、昔はそうだったなぁと思い出しました。

★★★

著者別読書感想(三浦哲郎)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

手鎖心中(文春文庫) 井上ひさし

手鎖心中
1972年に出版され、1975年に文庫化された作品で、1972年の直木賞を受賞した作品ですが、今回購入したのは2009年に発刊された文庫の新装版というものです。

2009年というと、著者が75歳で亡くなる1年前の頃で、あらためて、著者の代表的作品として見直されていた時期なのかも知れません。

著者の作品では14年前に「東京セブンローズ」を読んだきりですが、著者の名前は小学生の頃に毎日楽しみに見ていた人形劇の「ひょっこりひょうたん島」(1964年~1969年)の作者ということでよく知っていました。

本書は、直木賞を受賞した「手鎖心中」と、もう一つ「江戸の夕立」という中篇小説が収録されています。

まず「手鎖心中」の主人公は大阪の売れない絵草紙の作家で、一旗揚げようと江戸にやってきて、1年前の大河ドラマの主人公、日本橋通油町で耕書堂を経営する蔦屋重三郎の元に居候をしながら店を手伝いながら作品を作り続けますが芽が出ません。

そんな時、深川の材木屋問屋の若旦那が、絵草紙を書きたいけど才能がないので、お金を払うから主人公達に代わりに描いてもらえないかと頼みに来ます。

タイトルの手鎖とは、若旦那の希望として、禁令を犯して幕府から手鎖50日の処分を受けた山東京伝にあやかり、自分が描いた作品で手鎖の処分が下るように町奉行に頼み込むという暴挙に出ることから騒動が起きるという内容です。最後に主人公達が何者かというオチまで付いています。

大河ドラマ「べらぼう」に登場してきた蔦屋重三郎他、山東京伝、大田南畝、朱楽菅江などが登場してきて、なにかふと懐かしいような、先にこの本を読んでいれば、「べらぼう」に登場する作家たちの人間関係がもっとよくわかったなと思ったりしました。

もうひとつの「江戸の夕立ち」は、江戸で指折りの薬種問屋の若旦那と、語り手で主人公のたいこもち(男芸者)がふとした失敗で、品川で乗った小舟が流されてしまい、釜石まで着岸しない商船に助けられるものの、あきれるほどにどうしようもない若旦那の世話をしながら、ほうぼうへ流れていくという内容です。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

破船(新潮文庫) 吉村昭

破船
1982年に単行本、1985年に文庫化された江戸時代、僻地にある貧しい小さな漁村を舞台とした小説です。

実話を元にしたわけではなく、日本海沿岸に残る古文書に、難破した商船から荷物を奪っていた記述や、治癒が見込めない感染症患者を隔離するため老朽船に乗せて海に流していたことが書いてあり、それを元にしてこの小説を思い立って書いたと言うことでした。

平地がなく土地も痩せていて農業ができず、近海の漁業だけしか生活の糧とならない僻地の漁村は貧しく、男も女も次々と厳しい出稼ぎに出るしか家族を養えません。

ただ数年に1度、貴重だった米や絹織物、砂糖、酒などを積んだ商船が漁村近くで難破することがあり、その時には村民が総出で、傷ついた船を襲い、口封じのため水夫を皆殺しにして荷物を奪うという風習があります。

その千載一遇の「お船さま」が来ることを願う祈祷があり、さらには冬の海が荒れた夜には塩焼きと称して大きな明るいたき火をすることで、船を座礁しやすい湾内に呼び込むことまでしています。

そうした漁村の10才になり、出稼ぎに出た父親に代わり、漁で家族を支えている子供が主人公で、村民仲間に魚のうまい捕まえ方などを教わり成長していきますが、まだ「お船さま」は見たことがありません。

そして、いよいよ荷物を満載した「お船さま」がやってきて、村には明るい雰囲気が漂いますが、続けてやってきた別の異様な「お船さま」で、当時治療が出来なかった感染症の天然痘が広がってしまい、、、

貧しい村の希望の星だった「お船さま」と、多くの家族が苦しみ死んでいく絶望の「お船さま」のふたつの難破船をを際立たせ、同時に貧しい漁村の生活を細かに描き出している良い小説でした。

ただちょっと気になったのは、奪った米を2年や3年も保つようなことが書かれていましたが、例え籾殻米としても冷蔵施設もない時代に果たしてそんなことが可能なのかどうか?

あと難破船から奪った上等な絹織物など、隣の村まで山を越えて2日ほどかかるとはいえ、身分不相応な衣類などを見た近隣の村民や、口の軽い漁民から、生活が楽になった自慢話を聞かされ破船を略奪した噂が広がるのを止めるのはいかにも難しそうです。

本当に果たしてそういうことが可能だったのだろうか?と思ってしまいます。

★★☆

著者別読書感想(吉村昭)

【関連リンク】
 7月前半の読書 アヒルと鴨のコインロッカー、ブルックリン・フォリーズ、ザ・ヒート、ノースライト
 6月後半の読書 霧(ウラル)、流出、神の時空 鎌倉の地龍、極楽カンパニー
 6月前半の読書 正体、歴史と人生、祈りのカルテ、犯人のいない殺人の夜

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1898
アヒルと鴨のコインロッカー(創元推理文庫) 伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー
2003年にデビューした著者の5作目の書き下ろし長編小説で、2003年に単行本、2006年に文庫化されています。つまり今ではすっかりベテランの売れっ子作家さんですが、その初期の頃の作品と言うことです。

2007年には、観てませんが、監督が中村義洋、濱田岳、瑛太などの出演で映画が製作されています。

変わったタイトルだなぁと、本屋さんでずっと以前から見て思っていましたが、今回ようやく読むことが出来ました。

タイトルの意味を理解するには、読んでもらうしかありませんが、アヒルは元々野生のマガモを原種とし、それを人間が食用や羽毛採集の利用がしやすいように飼育、改良して作られた鳥だと言うことを初めて知りました。一般に鴨肉として流通しているものはほとんどがアヒルだそうです。

主人公は、仙台の大学に入学するために、単身アパートに引っ越ししてきた男性が語る現在と、同じ仙台でペットショップの女性店員が語る2年前に起きた過去が、同時進行で進んでいきます。

最後に大どんでん返しが待っていますが、ミステリーなら嫌というほどに読んでいるので、気がつきそうながらまったく気がつきませんでした。うまいやり方です。

鍵は、2年前と現在の両方の話に登場する、主人公男子大学生の隣室に住む河崎という男です。ムフフ。しかし映画では、そのどんでん返しがどのように作られているのかちょっと不思議です。

★★☆

著者別読書感想(伊坂幸太郎)

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ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫) ポール・オースター

ブルックリン・フォリーズ
1980年代に書かれた「ニューヨーク三部作」が有名な著者ですが、まだその三部作はいずれも読めていません。本書は2005年に出版され、2012年に日本語翻訳版が出ています。

原題は翻訳版と同じ「The Brooklyn Follies」で、「Follies」は愚行という意味で、主人公が過去の行いで愚行だったと思えることを日記風にノートに書き綴っていることからきています。

ニューヨークを舞台とした小説は様々ありますが、その中でもローレンス・ブロックの小説が好きでよく読んでいますが、今後は機会があれば上記の「三部作」を読んでみたいと思っています。

今回の作品はタイトルからわかるように、ニューヨークが舞台で、保険会社をリタイアしたあと、余生をゆっくり過ごそうと、中心地のマンハッタンから少し離れたブルックリンに引っ越してきた初老の主人公が語るドラマです。

妻とは離婚していて、一人娘はすでに結婚していて、蓄えもあり、ひとり住まいの寂しさはあるものの、悠々自適の老後です。

娘との仲が悪くなり、悩んでいるときに、親戚の中では一番優秀で学者だった甥と偶然出会うところから一気に物語は思わぬ方向へと加速していきます。

主人公が語り手で、一方的な考え方やものの見方を強いられますが、ゲイやレズビアン、前科者、実家住まいの美人妻、突然親元から家出してきた喋らない幼い姪など、登場人物がそれぞれユニークで愛すべき人達ばかりです。

なんだかんだありますが、結局は自然と収まるところに収まり、ハッピーエンドと言えるほのぼのするドラマでした。

★★☆

著者別読書感想(ポール・オースター)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ザ・ヒート(ハルキ文庫) 浜田文人

ザ・ヒート
1949年生まれの著者の作品は今回初めて読みました。元々、警察やヤクザなどをテーマにした作品やシリーズものが多い方です。

本書は、タイトル買いで、特に内容は気にしていませんでした。書き下ろし作品で、文庫の発行は2015年です。

主人公は、東京で表と裏の名簿屋としてビジネスをおこなっている関西出身の強面の男で、様々な思惑からヤクザと刑事に挟まれながら危機を脱していくハードボイルドテイストな作品でした。

作品の中では、主人公のビジネスの個人情報の取り扱いについては、現在でも頻繁に不正に流出したり、売買が普通に起きています。

匿名流動型犯罪などにも、個人情報がよく利用されていることから、そうした名簿売買のビジネスが今も実際に繁盛しているのでしょう。

ネットでなにかを買うときはもちろん、問い合わせをしたり、記事を読むためだけでも過剰に個人情報を入力しなければならない世の中はリスクがいっぱいです。嫌な世の中になってきたものですが、ほとんどの人は気にならないみたいです。

末端の犯罪者だけを捕まえても、数ある個人情報の流出元を取り締まらない限りいくらでも次々と犯罪に利用されていくのでしょう。

それが嫌なら、一切の入力を拒否し、ネットでは買わない、情報を入れないことに徹するしかありませんが、現代人としてそれも難しそうです。

そして一方では、なりすましを防ぐための、ログインセキュリティが厳しくなり、様々なサービスを使うときの手間が何重にも複雑化して不便になっていきます。

ユーザー側に面倒をかける認証だけを厳しくされても、元々のデータ管理はどうなんだ?と思いますが、どうしたものでしょうかね。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ノースライト(新潮文庫) 横山秀夫

ノースライト
2019年に単行本、2022年に文庫化された長編ミステリー小説です。

読み進めていく中で戦前にドイツから日本へ亡命してきたドイツ人建築家「ブルーノ・タウト」の話が出てきて、それにかすかな記憶があり「あれ、前に読んだっけ?」と頭をよぎりました。

それはこの小説を原作にしたテレビドラマをNHKが製作し、2020年に「土曜ドラマ」として2回に分けて放映していました。それを全部ではないものの、ドラマ内で出てきた「ブルーノ・タウトの椅子」を見た記憶が残っていて既視感が蘇ってきたということでした。

内容は、ミステリー仕立てで、主人公は、バブルが弾けた後、仕事が激減し、勤めていた会社を辞めて、現在は大学時代の友人が経営する小さな建築設計事務所に勤務している中年男性です。

仕事は一級建築士の資格をもった建築デザイナーで、1年前には降ってわいたような自由度の高い住宅デザインを任され、それが建築雑誌に掲載されるなどして評価を上げました。

その信濃追分に建てた住宅は、南向きの太陽の光を直接ではなく、北向きの大きなガラス窓から光を間接的に取り入れる変わった工夫がされているデザインで、それがタイトルにもなっている特徴的な「ノースライト」です。

太陽光が直接入ると読書に適さない図書館や、一定の室温や照度が必要な精密工場などではそうしたデザインがよく使われていますが、一般住宅では珍しいデザインです。

しかしその住宅を見学に行った顧客から「どうも誰も住んでいないようだ」と聞かされ、不審に思い家主に連絡を取りますがつながらず、「なにかとんでもないことが起きている?」と心配し、信濃追分まで出掛け、4ヶ月前に完成して家主に引き渡した住宅を見に行きます。

そして誰もいない空き家になっている住宅は鍵が壊されていて中に入ってみると、引っ越しをしてきた様子はなく、独特の作りの椅子だけがリビングに置いてあるのを発見します。

その椅子が、戦前ドイツから日本へ渡ってきて、建築や工業デザインなどを日本人技師に教えた世界的な建築家「ブルーノ・タウト」のデザインした椅子に似ているということがわかり、それを手がかりに行方がわからない家の注文主家族を探していくことになります。

登場人物はそう多くはなく、読みやすいですが、人捜しのプロではない建築デザイナーですから、いろいろと遠回りをしながら、また「ブルーノ・タウト」つながりで新聞社の記者などにも協力してもらいながら消えた一家を探していきます。

テレビドラマを見ていたので、途中で思い出してきて、大きな謎はすっかり解けましたが、細かなところまでは見てなかったので、面白く最後まで読めました。

★★☆

著者別読書感想(横山秀夫)

【関連リンク】
 6月後半の読書 霧(ウラル)、流出、神の時空 鎌倉の地龍、極楽カンパニー
 6月前半の読書 正体、歴史と人生、祈りのカルテ、犯人のいない殺人の夜
 5月後半の読書 70歳の正解、もしも俺たちが天使なら、あの日、パナマホテルで、終活の準備はお済みですか?

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1896
霧(ウラル)(小学館文庫) 桜木紫乃

霧(ウラル)
2015年に単行本、2018年に文庫化された終戦後の北海道の東端、根室を舞台にした長編小説です。

小説に出てくる根室や、野付半島は、終戦間際にソ連軍に攻撃され奪われた国後島と10数キロという近さで、戦後にはそこに住んでいた日本人が多く逃れてきて住んでいるという事情があります。

また百田尚樹著「錨を上げよ 第3巻 漂流篇」で読みましたが、ソ連の警備艇に追われながら根室から近い歯舞群島の貝殻島周辺へウニの密漁に出掛ける港として裏の漁業が盛んでした。、

そうした根室の街で生まれて育った3姉妹の物語ですが、真ん中の次女が主人公で、国後島から逃げてきた男性と芸者時代に知り合い、やがて結婚することになります。

その結婚相手の男性は、国後島から逃げ出すときに家族を全部失い、漁業のボスに拾われ、ボスの身代わりで賭博場の責任者として刑に服しますが、出所後には独立し、土木工事を兼ねる裏組織の組長として根室で力を付けていきます。

3姉妹の長女は政略結婚で、やがて国政に出ようとしている根室の運送業業者の長男と結婚し、そして3女も政略結婚で、地元根室で金融を支配している次男と婚約することになります。

そうした3姉妹の様々な事情や思惑がこの小説の醍醐味で、内容は全然違いますが、40年ぐらい前に読んだ谷崎潤一郎の「細雪」の4姉妹をふと思い出しました。

昭和の時代、しかもこうした地方では、まだまだ親が決めた結婚というのは当たり前にありましたが、主人公の次女だけは、中学校を卒業した後、自分の意志で家を飛び出し、芸者の修行をするという独立心が旺盛で自我の強い女性です。

著者の小説はいくつか読んできましたが、こうした時代がかった愛憎の小説は初めてで、新たな発見でした。

★★★

著者別読書感想(桜木紫乃)

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流出(上)(下)(新潮文庫) フリーマントル

流出
過去にも同じようなことを書いたような気がしますが、英国のスパイと言えば007ジェームス・ボンドが有名ですが、007はMI6という主として対外国の諜報活動をするスパイですが、今回の主人公チャーリー・マフィンは主に国内のテロ防止や諜報活動をおこなうMI5所属です。

本著はその「チャーリー・マフィンシリーズ」の第11作目で、原題は「Charlie's Chance」、1996年(日本語版は1999年刊)に出版されています。

このシリーズは過去に3作を読んでいますが、比較的新しい作品で、過去に遡って読んでいるという感じになっています。

本当なら、作品をまたがって登場する人物との関係性から最初から順番に読む方が正しい読み方ですが、たまたま手に取った順で読んできたので仕方がありません。

その「チャーリー・マフィンシリーズ」は下表のようになっています。著者は2年前に亡くなっているので、誰かが権利者の許可を取って続編を書かない限り、もう続きはありません。

チャーリー・マフィンシリーズ 読後感想
01  消されかけた男 Charlie Muffin 1977年
02  再び消されかけた男 Clap Hands,Here Comes Charlie 1978年
03  呼びだされた男 The Inscrutable Charlie Muffin 1979年
04  罠にかけられた男 Charlie Muffin's Uncle Sam 1980年
05  追いつめられた男 Madrigal for Charlie Muffin 1981年
06  亡命者はモスクワをめざす Charlie Muffin and Russian Rose 1985年
07  暗殺者を愛した女 Charlie Muffin San 1987年
08  狙撃 The Run Around 1988年
09  未訳 Comrade Charlie 1989年
10  報復 上・下 Charlie's Apprentice 1993年
11  流出 Charlie's Chance 1996年 2026/7/4
12 待たれていた男 上・下 Dead Men Living 2000年
13 城壁に手をかけた男 King of Many Castles 2002年
14 片腕をなくした男 上・下 RED STAR RISING 2008年 2025/11/15
15 顔をなくした男 上・下 RED STAR Eclipse 2009年 2024/10/5
16 魂をなくした男 上・下 RED STAR FALLIN 2013年 2025/7/5

主人公のチャーリー・マフィンは、ジェームズ・ボンドと違い、小男で風采が上がらず、足を悪くしているので走れず、靴は履き古したハッシュパピーしかダメという対照的な主人公が魅力です。

今回の舞台は、冷戦後のソ連が崩壊し、失業した軍人やKGB職員、核開発技師などが世界中に流出し、核兵器の原料がロシアンマフィアの手によって国外に流出する危険が迫っていることから、アメリカからはFBIが、英国からはMI5の主人公がロシアに渡り、協力して核の流出を防ぐため、対マフィア戦を繰り広げることになります。

それにしてもロシアの社会全体の腐敗やアメリカのFBI、英国のMI5のそれぞれの権力闘争など、これでもかというほど醜い国際関係が出てきます。

主人公は、そうした動きにくい中で、英国やアメリカ、ロシアを説得して、やがて自分自身がマフィアの中へ飛び込んで囮捜査を提案しますが、、、

少し時代は古い国際陰謀小説になり、今読むとやや古ぼけた感じもしますが、ドキドキハラハラは相変わらずで、楽しめました。

しかし英、米、露、独、伊など、それぞれの国の登場人物が多いのと、さらにロシア人名の名前が難しく(覚えられず)、誰が誰だった?と思い出しながら読むのが大変でした。

★★☆

著者別読書感想(ブライアン・フリーマントル)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

神の時空 鎌倉の地龍(講談社文庫) 高田崇史

神の時空 鎌倉の地龍
QED(桑原崇&棚旗奈々)シリーズ」や「古事記異聞シリーズ」など、いくつもシリーズがある作品の中で、2014年から始まった「神の時空シリーズ」の第1作目となります。このシリーズは他に8作品が出版されています。

そのシリーズ第1作目のこの小説は、2014年に単行本、2017年に文庫化されています。

主人公というか語り部は、少しネタバレになってしまいますが、7年前に事故で亡くなっている歴史好きな青年で、いわゆる妖怪の「ぬりかべ」となっています。

この普通の人には見えない主人公と、代々シャーマン的な能力を持つ家族とが、過去の怨念を解き放ち混乱させようとする勢力に対抗しようとします。

その家族の一員で次女の女子高生が、突然襲われて危篤状態になります。それは、鎌倉時代に殺された武人達の封じられた怨念を解き放とうとする妖怪に気がついて後を付けたことから始まります。

修善寺で謀略により暗殺されその地に封じられた源範頼や源頼家の怨霊を謎の集団が解き放ち、続いて鶴ヶ丘八幡宮の一の鳥居、二の鳥居を次々と倒壊させ、最後の三の鳥居が壊されると、鎌倉幕府を打ち立てた源頼朝の怨霊まで解き放つこととなります。

それを阻止するため、主人公とシャーマン家系の家族が、どうして頼朝が怨霊になってしまったかなど、歴史の暗部を推測していきます。

2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、その源頼朝を将軍まで押し立てた北条一族、義時や、その父親の時政、姉の北条政子をメインにした面白いドラマでしたが、似たような名前が多く人間関係にやや混乱することがありました。

それを見る前に、この小説を読んでおけば、その人間関係や思惑、権力闘争の暗部など、さらに面白く見られたのになと思いました。

★★☆

著者別読書感想(高田崇史)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

極楽カンパニー(集英社文庫) 原宏一

極楽カンパニー
著者は1954年生まれの作家さんで、ミュージシャンやコピーライターのあと、作家としてのメジャーデビューは40歳を過ぎてからという比較的遅いデビューの方です。

本著はメジャーデビューから3作目となり、1998年に単行本、2009年に文庫化されています。この著者の作品を読むのは初めてです。

内容は、サラリーマンを定年退職し、毎日やることがなく、図書館で時間をつぶしていると、同じ境遇の男性と話が合い、「会社員の様式美」を再度経験するため、フェイクの疑似会社を作り、そこへ毎日出社し、擬似的な取引をおこなうことになります。

同じく定年退職後に暇を持て余していた同輩が次々と集まり、やがては支店や各都市ごとに疑似会社がが作られていくブームに発展していきます。

ちょっとフェイクの会社で取引をするというイメージがわきにくいですが、そこは、ま、小説なので。

そしてその疑似会社の社長の息子が、独立しようと勤めていた商社を辞め、そのフェイク会社をベースに起業を目論みますが、、、

この小説が書かれたのが、1998年以前なので、まだ超高齢化社会には至ってなく、団塊世代はまだ現役で働いている頃です。

したがって、高齢化社会という点ではまだあまり緊迫した社会状況ではありませんが、戦後から猛烈に働き、高度成長時代に企業の中枢部にいた団塊世代より少し前の世代にとっては共感を覚えるのかも知れません。

しかしその世代というのは、一般的には、退職金をがっぽりもらい、年金も60才からフルに支給されていて、今からすれば中年以降はずっと恵まれてきた世代で、引退後は好きなことをなんでも出来そうです。

それだけに、団塊世代の次のしらけ世代の私にとっては、面白く読めるというより、残念ながら嫉妬が混じった古びた歴史物語というイメージしかわきません。

★☆☆

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1894
正体(光文社文庫) 染井為人

正体
昨年デビュー作の「悪い夏」(2017年)、今年には3作目の「震える天秤」(2019年)を読み、社会派小説が読み手にとっては心地よく(中身はドロドロな話ですが)、今回は2020年に単行本、2022年に文庫化された死刑とえん罪をテーマにした長編(文庫で610ページ)小説を読みました。

この小説を原作として、2022年に亀梨和也主演でテレビドラマ化(WOWOW)、2024年には藤井道人監督、横浜流星主演で映画化されています。

建築現場で働く日雇い労働者や、8年間も妻と離婚してくれると信じて不倫をしていた中年の独身女性、認知症高齢者のお世話をする介護福祉施設、悪徳新興宗教、痴漢えん罪で弁護士の仕事を失った男性など、社会の底辺や現代社会の問題を浮き彫りにした内容が盛り込まれています。それだけに変化があって映像化に向いている作品なのかも知れません。

第一章では、最後にまた出てくるグループホーム、第二章は、東京オリンピック直前でテニス競技場を作るため突貫工事で働く日雇い労働者、第三章では、ネット情報誌でフリーライターが書く原稿を編集する編集者、第四章では、菅平高原のスキー場ホテルでリゾートバイトをしているメンバー、第五章では新興宗教にはまった主婦、第六章と第七章では第一章のグループホームが舞台で、それぞれに語り手が代わっていきます。

赤ちゃんを含む一家殺人事件から始まるだけに、内容は重苦しく、読み進めるのが最初のうちは大変です。

しかし中盤ぐらいから、徐々に殺人犯とされていた人物に対する見方が徐々に変わっていくことになり、展開や読むスピードも上がっていきます。

小説での最後と映画の最後は違っているとのことでしたが、インパクトは断然こちらの小説にあるように思います。詳しくは書きませんが。

実際に一度死刑判決が確定しながら、再審で無罪が確定したケースは、免田事件(1983年無罪確定)、財田川事件(1984年無罪確定)、松山事件(1984年無罪確定)、島田事件(1989年無罪確定)、袴田事件(2024年無罪確定)があります。

いずれも、警察や検察の取り調べに問題があり、自白を強要されたり、証拠がねつ造されたりしたことが何年も後になってから明らかになりました。

再審の壁を高くしてきた検察官の抗告の権利をなんとしても残そうとする権力側の横暴を見ていてわかるように、ゆがんだプライドから99.9%の有罪率を誇る検察は、絶対に自分たちの間違いを認めたくない機関だけに、再審でえん罪を証明し無罪を勝ち取るのは相当にハードルが高そうです。

こうした「人(特に権力者)の判断は誤ることがある」という事実から、世界では実施が少数派となっている死刑制度の維持について日本でも考えなければいけない状態になっているように思います。

1年前にそのことを書いています。

死刑制度廃止と終身刑 2025/6/28(土)

★★★

著者別読書感想(染井為人)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

歴史と人生(幻冬舎新書) 半藤一利

歴史と人生
2018年に出版された著者の過去に出版した著書からテーマごとに一部を抜粋した内容です。

著者は2021年に亡くなっているので、その3年前に総集編的なものを編集者から提案されてそれにのったというところでしょうか。想像ですが。

同じようなスタイルでは、浅田次郎氏の「僕は人生についてこんなふうに考えている」という作品がありましたが、著者自ら選んだわけではなさそうで、編集者の趣味趣向、それに商売気が表に立った選択ばかりでうんざりした記憶があります。

過去の著者から抜粋したものなので、過去に読んだ本と同じ内容も出てきますが、総集編と思えばそれも仕方ありません。

選ばれたテーマは、著者が得意とする江戸時代から昭和までの歴史について、和歌や俳句、著者の配偶者が夏目漱石の孫という縁から、夏目漱石の文学論、そして最後に「近ごろ思うこと、憂うこと」です。

太平洋戦争中はまだ子供だったとはいえ、戦中派の著者だけに、反戦感情は強く、昨今(2018年頃)の憲法改正問題や、防衛力増強については猛烈に批判しています。もし2026年の今、著者に話を聞けば、「戦争が出来る国」へと1強状態で政治が動きつつある状態をさらに憂慮されることでしょう。

★☆☆

著者別読書感想(半藤一利)

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祈りのカルテ 再会のセラピー(角川文庫) 知念実希人

祈りのカルテ
2022年に単行本、2025年に文庫化された医療がテーマの連作短篇集です。後先になりまだ読んでいませんが、2018年(文庫は2021年)に出版された「祈りのカルテ」の続編になります。

短篇は「救急夜噺」「割れた鏡」「二十五年目の再会」の3篇とその間に幕間があります。

また、これらの作品を原作として、玉森裕太や池田エライザが出演するテレビドラマが2022年に放送されています。

主人公は、すでに大学付属病院で循環器内科医となっていますが、同僚や若手の研修医と飲みに行った際に、研修医時代の話しを聞かれます。

その内容がそれぞれ医療ミステリー仕立てとなっていて、その謎を解いていきます。

特に最後の「二十五年目の再会」は、緩和ケア科の研修中に、悪性中皮腫で余命幾ばくもない前科持ちの患者の主治医を命ぜられますが、なかなか話が込み入っていて感動ものです。タイトルから想像ができそうですが。

★★☆

著者別読書感想(知念実希人)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

犯人のいない殺人の夜(光文社文庫) 東野圭吾

犯人のいない殺人の夜
今から36年前の1990年に単行本、1994年に文庫化された短編ミステリー小説集です。実質1985年にデビューしたので、そのデビューから5年後の初期の作品と言うことになります。

収録作品は、「小さな故意の物語 」、「 闇の中の二人 」、「 踊り子 」、「 エンドレス・ナイト 」、「 白い凶器 」、「 さよならコーチ 」、「 犯人のいない殺人の夜」の7篇で、1985年から1988年までの、主に小説宝石や小説現代に掲載された短篇作品がまとめられています。

すでにミステリー界で不動の地位を築いている現在とは違い、まだ作家としては駆け出しの頃の作品と言うこともあり、内容ではやや無理なところがあちこちに見られますが、それがまた初期の頃の熱さが伝わってきてなかなか良いものです。

「小さな故意の物語」は他の複数の短篇集にも収録されている作品ですが、高校生が学校の屋上から謎の転落死をし、その幼なじみで親友だった高校生が、その謎を解いていくというストーリーで、意外な結末が用意されていました。

それぞれに、一筋縄ではいかないミステリーがうまくまとめられていて、「長編で長々読むのはタイパ悪くてしんどい!」って人にはお手軽に楽しめそうです。

★★☆

著者別読書感想(東野圭吾)

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