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1889
天に遊ぶ(新潮文庫) 吉村昭

天に遊ぶ
1999年に単行本、2003年に文庫化された、短篇よりも短いショートショート作品集で、あとがきによると、1995年頃、小説新潮の新年号に原稿用紙10枚程度の掌編小説を1篇依頼されたことをきっかけに、その後も新潮社の季刊誌「波」に連載で書いたものを集めた作品集です。

それまで著者は長編小説か、原稿30枚程度の短篇が主で、このような短い原稿で人間の姿を描くことは初めてだったが、意外と楽しいことがわかったということです。

その作品のタイトルは、「鰭紙」、「同居」、「頭蓋骨」、「香奠袋」、「お妾さん」、「梅毒」、「西瓜」、「読経」、「サーベル」、「居間にて」、「刑事部屋」、「自殺」、「心中」、「鯉のぼり」、「芸術家」、「カフェー」、「鶴」、「紅葉」、「偽刑事」、「観覧車」、「聖歌」の21篇です。

それぞれに味わいがありますが、いくつかはエッセイ?と思うような、作家が主人公で、取材のために関係者や地方を訪れた時のエピソードもあれば、別のエッセイで使っていた「地方の飲み屋で刑事とよく間違えられる」という話や、子供の頃の思い出、青年時代に結核を患って療養していた時のことなどを書いたものなど、様々です。

いずれにしても超短篇だけにテンポが良く、登場人物も限られわかりやすいので、ちょっとした暇つぶしや気分転換で読むのに適していそうです。

★★☆

著者別読書感想(吉村昭)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち(新潮文庫) 石井光太

「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち
2016年に単行本として、その後2019年に文庫化された、事件発生(発覚)当時、大きな話題となった我が子を殺した3件の事件を扱ったルポルタージュです。

取り上げられた事件は、

厚木市幼児餓死白骨化事件(2014年発覚)

下田市嬰児連続殺害事件(2014年発覚)

足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件(2013年発覚)

の3件で、本書のタイトルになっている通り、親がまだ自己防衛もできない自分の幼児や嬰児を殺すという、殺人の中でももっともむごたらしく悲惨な事件です。

その事件の中には親世代から続く貧困の連鎖や、加害者の身勝手さ、加害者と親の不和、社会福祉制度の至らなさなど、様々な問題が内包されていて、現代の子育てにまつわる社会問題の縮図ともいえます。

こうした事件が起き、同時期に、NHKでも特集番組が組まれていました。

NHKスペシャル 調査報告 “消えた”子どもたち(NHK)
虐待や貧困などのために学校などに通えず、社会とのつながりを絶たれた“消えた”子ども。神奈川県厚木市で、誰にも気づかれないまま男児が白骨化した遺体で発見されるなど事件が相次いでいる。独自アンケートと追跡取材によって、“消えた”子どもの実態に迫り、子どもたちの命を守るために何が必要か考える。

このノンフィクションで取り上げられた3つの事件を読む限り、加害者に共通するのは、親との不和や子供の時に親から無視され放任されていたことで、加害者の性格にゆがみが生じ、さらに金銭感覚が極めてルーズ、避妊は相手任せで、結局は本来なら産んではいけない子供を産み、その結果、邪魔になって放置し、殺してしまうということでしょう。

事件としては直接手を下した(あるいは育児放置した)若い親に刑事罰が与えられますが、本書では、表向きにはその罪が一切問われることがない加害者の親に、実はモンスターを生み出した根源的な問題と責任があるのではないかと結論づけています。

それにしても、以前読んだ同じ著者の「43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層」と同様、後味が悪い、嫌ミスと似たような読後感です。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

秘められた伝言(上)(下)(講談社文庫) ロバート・ゴダード

秘められた伝言
原題は「Dying to Tell」で、「どうしても話したくてたまらない」「~を言いたくて死にそう」という意味だそうです。2001年に英国で、2003年に日本語版がそれぞれ出版されています。

ロンドンから200kmほど離れたサマセットの田舎に住んでいた無職の独身男に、ロンドンの船会社で働いている幼なじみが行方不明になったと家族から知らされ、頼まれてロンドンへ出向き、その行方を捜すことになります。

船会社だけに、勤務地や出張先が方々にあり、主人公はドイツのベルリン、日本の東京と京都、神戸、そしてアメリカのサンフランシスコと親友の残した足跡をたどっていきます。もし映画でも制作されたら、ちょっとしたロードムービーで、面白そうです。

行方不明の親友は、ある陰謀に巻き込まれていることが徐々に判明していきますが、決して主人公が思っていた清廉潔白な人物ではないことなどがわかってきます。

そして、自分が行方不明になった場合の保険として、その親友がきっと追いかけて謎解きをしてくれるだろうという様々な仕掛けが施されていることに気がつきます。

主人公を簡単に殺すわけには行かないので、そうした謎を解くためのキーマンとして生かされるという、うまいやり方ですが、周囲の人間が次々と殺されていくのに対し、主人公だけはうまく生き延びていくという、あまり都合良すぎという印象もあります。

長編ですが、ジェットコースターのように次々とピンチとチャンスが訪れて、あっという間に読み終えられます。

★★☆

著者別読書感想(ロバート・ゴダード)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

恋するソマリア(集英社文庫) 高野秀行

恋するソマリア
2015年に単行本、2018年に文庫化されたノンフィクションです。

著者の作品は今回初めて読みますが、早稲田大学在学中には探検部に所属し、その時に経験した冒険譚を書いた「幻獣ムベンベを追え」を出版し、それが実質的なデビュー作となります。

著者が向かう探検先は、もちろん先進国や有名観光地ではなく、アジアの奥地や南米、中近東、アフリカなど、日本人にはあまり馴染みがない場所の紀行や体験談が多いです。

本著は、タイトルでわかるように、アフリカの角(つの)と呼ばれている日本人にとってはもっとも縁遠いと思われる国ソマリアを舞台としたノンフィクションです。

このソマリアという国、平和が長く続いている日本人にはまったく理解しがたいほど、同じ民族でありながら氏族間の紛争や宗教上、利権、政治権力の問題で起きる内戦が長く続いていています。

問題の根は深くてややこしく、正式には2012年からとりあえず統一された形で「ソマリア連邦共和国」ができましたが、その北部地域には同じソマリ人ながら、違う氏族が中心となり、1991年に独自に作ったソマリランドというその連邦には加わらない自主的な国家のような未承認国家が存続しています。

連邦共和国の首都は南部のモガディシュにありますが、治安維持が独自では行えず、アフリカ連合の兵士(つまり他国の軍隊)が駐留し治安維持にあたっていて、近年でも反政府勢力との内戦が続いているという状態で、日本の外務省からは危険レベル4の退避勧告、渡航自粛が出ています。

日本との関係でまれにニュースとなるのは、ソマリア沖で海賊行為が頻発したために、海上自衛隊が2009年から現在まで哨戒活動に従事していることがあります。ただしそれは公海上の哨戒であって海賊が拠点としているソマリアに対しては日本を含め国際機関はノータッチです。

そのようなソマリアへ著者はジャーナリストとして、また現地のケーブルテレビのアジア総局長として何度も訪問し、その模様を詳細にレポートしています。ソマリア語の日常語をかろうじてしゃべれる日本人はおそらくこの著者だけだと思われています。

遠い日本ではほとんど誰も知らないその文化や、言葉、食事、庶民の生活など、外国人、しかもジャーナリストだと、身代金目的の誘拐や殺害がよくある地域で、武装した護衛の兵士などを雇い、飛び込んでいく姿はまさに冒険譚です。

★★☆

【関連リンク】
 4月後半の読書 震える天秤、それでも読書はやめられない、屍泥棒、宿屋めぐり
 4月前半の読書 密売人、春を背負って、ダーク・アワーズ(上)(下)、届け物はまだ手の中に
 3月後半の読書 眼球堂の殺人、殺し屋、続けてます。、月に吠えろ!萩原朔太郎の事件簿、誰も書かなかった日本史「その後」の謎

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1887
震える天秤(角川文庫) 染井為人

震える天秤
2019年に単行本、2022年に文庫化されたミステリー小説ですが、探偵ではないフリーライターが、高齢者のブレーキ踏み間違えによる死亡事故の深層に迫っていくという探偵ものに近い内容でした。

生活保護受給に群がる様々な群像を描いた著者の2017年の小説「悪い夏」を読んで、この著者は社会派ミステリーが得意?ということで、他も読んでみることにしました。

社会派小説は、自分の身近にありながら、ほとんど知らないことが多く、そうしたテーマが割と好きです。

今回は上記に書いたように、地方(福井県)で起きた高齢者の暴走事故で、そうしたよくある社会問題を取り上げようと、雑誌社から依頼を受けて東京から福井までベスパに乗って取材に行くフリーライターが主人公です。ベスパに乗る主人公っていうのも、探偵物語を意識したのでしょうか。

当初は、単なるブレーキとアクセルの踏み間違いでコンビニへ突っ込み、そこの店長が死亡したものと思われていましたが、取材を進めていく中で、様々な疑問と疑惑が湧き出してきます。

そうした地方の高齢化と認知症ドライバーの問題以外にも、コンビニのFC経営者(遺族)と、コンビニ本社との問題、地方の限界集落や、そうした集落内のみんなが顔見知りの共存共生する仕組みなど、様々な社会問題が出てきます。

最後にはそこで起きた事故の真相が語られますが、それを表沙汰にするかどうかは主人公に委ねられてしまいます。

ま、真っ当な終わり方だと思いますが、スクープライターや敏腕ジャーナリストとしての未来はなさそうです。

★★☆

著者別読書感想(染井為人)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

それでも読書はやめられない 本読みの極意は「守・破・離」にあり(NHK出版新書) 勢古浩爾

それでも読書はやめられない
団塊世代の著者にはベストセラーになった「定年後のリアル」(2010年)、「定年後7年目のリアル」(2014年)など多くの著書があります。本書はコロナ禍真っ最中の2020年3月に出版された新書です。

2006年に勤めていた会社を定年で退職し、その後はコンスタントに年2~4冊の本を出版されています。現役時代より忙しいんじゃないかな。

読書の数も半端ない数で、過去には「定年後に読みたい文庫100冊」(2015年)というお勧め書籍の紹介本も出版されています。

読書好きになったきっかけや、いきなり難しい哲学書などに興味を持ち、しかもそれらの多くは難しくて完読できずにいたなど、興味深い話が満載です。

読書が好きと言ってもどんな本でも軽々と楽しく読むという感じではなく、そのあたりは共感を覚えます。

読書家のそうした話を読むと、「あぁ過去に断念した難しい本がいくつもあったのは凡人の自分なら仕方がないことだったのか」と、意図はしていないでしょうけど妙に励まされます。

さらに読書批評家や評論家達の、「あーしろ、こーしろ」という勝手な読書法について、かなり辛口に批判しているのも胸がすきます。

要は、書籍は「おもしろいから読む」でいいのだと。そしてその「面白さ」や「有意義さ」は個人によってまちまちだから、「これぐらいは読まないとダメ」のような決めつけた書籍紹介は断固として受け入れません。

また年齢により読書がどう変わるかという経験を「春夏秋冬」やサブタイトルにありますが「守・破・離」で、うまく分類されています。

そういう解釈では、私も定年が過ぎ、「あとはもう好きな小説だけを好んで読めばいいのか」という気持ちになってきます。

個人的には哲学の書籍はほとんど読まない(読んでこなかった)ので、違いはありますが、小説ではかなり一致した趣向があり、嬉しくなります。

私自身は、できるだけジャンルを決めず、ビジネス書から国内外の小説、健康などのハウツー本まで意図して混ぜながら読む工夫をしていますが、著者は最近(と言っても発刊は6年前)はもっぱら時代小説に凝っているようです。

★★☆

著者別読書感想(勢古浩爾)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

屍泥棒(新潮文庫) ブライアン・フリーマントル

屍泥棒
原題は「The Mind Reader」で、直訳すれば「読心術師」という意味ですが、ここでは、FBIが犯罪捜査に役立てることに成功し、その後世界に広がったプロファイリングを駆使した犯罪捜査に協力する心理分析官のことを指しているようです。

珍しいことに1996年にまず最初に日本(語)で出版された連作短篇集で、その後シリーズ化されることになる「ユーロポール心理分析官クローディーン・カーターシリーズ」の第1作目です。

連作短篇集なので、その短篇ごとに主人公の所属や役割、チームメンバーなどをいちいち説明する面倒なことになりますが、これはよく月刊誌などに連載するときに起きる現象と思っていたら、やはり1996~1997年に月刊小説誌の小説新潮に読み切り短篇として掲載されていたそうです。

全部で12話が収録されていてそれぞれのタイトルは、「最後の被害者」、「屍泥棒」、「猟奇殺人」、「天国への切符」、「ロシアン・ルーレット」、「神と呼ばれた男」、「甦る切り裂きジャック」、「モルモット」、「秘宝」、「誘拐」、「裁かれる者」、「人肉食い」です。

いずれもひと癖も二癖もある犯罪で、EUがアメリカのFBIをモデルに共同で設立した実在するユーロポールに所属する分析官が活躍します。

しかし個人的には、小説や映画などでよく出てくる「天才ハッカー」という存在は、マジシャンのように政府でも金融機関でもどこへでも都合良く不正アクセスができて、都合良く他人の秘密を暴けるドラマでは安易な手法ですが、それはあまりにも現実的ではないので、そういう内容は好きではありません。

そういう「天才ハッカー」が薄給の公務員として重要なチームメンバーになっているのが笑えます。

逆に言えば、そういう全能の神みたいなメンバーが部下として近くにいないと、主人公のプロファイリングも成り立たないということなのかも知れません。

★★☆

著者別読書感想(ブライアン・フリーマントル)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

宿屋めぐり(講談社文庫) 町田康

宿屋めぐり
2008年に単行本、2012年に文庫化された野間文芸賞を受賞した長編小説で、以前読んだ同じ著者の「告白」の850ページには及びませんが、こちらも750ページとボリュームたっぷりです。

一般的な文庫本の3倍ぐらいの分量(川端康成著「雪国」は224ページ)なので、一冊で長い間楽しめますが、寝転がって読むため、文庫としては重量級で多少腕が疲れてしまいます。

さらに中身は町田ワールド全開で、私の場合は先に「パンク侍、斬られて候」や「告白」などを読んで免疫ができていていて、さほど違和感を感じませんが、もし初めて読む著者の小説がこれだと「なんじゃーこりゃ!」となるのは必至です。でも野間文芸賞ですから、公には純文学の範疇です。

例えば、草鞋を履いて袷(あわせ)の服をきて徒歩で旅に出ていることから、小説の時代背景は、たぶん江戸時代と思われますが、時代考証など関係なく、お金の単位が万とか億とか、ロイ・ブキャナン、ウタダヒカル、ダーリンダーリン、メルセデスベンツ、ヒットラーの髪型、イオン交換膜などなんだかよくわからない話がいくつも登場します。

主人公は、落ちぶれていた時に身を救ってくれた主(あるじ)の命を受け、権現様(金毘羅大権現がモチーフっぽい)へ大太刀を奉納するため旅をする物語ですが、序盤でいきなり湖から出てきたよくわからない何物かに巻き込まれて別の世界へ移ってしまいます。

そのようなパラレルワールドの世界を旅することこそ純文学ではあるまいか、アルマイト(その謎は文庫本文378ページ参照)

それにしても、一人称でずっと主人公が語る、長い長い苦難が連続する権現様への旅の模様は読んでいて飽きません。

そして最後にはかなり痛々しい拷問風景や、もはやここまでというクライマックス、そして恐ろしい主の謎などが徐々に明らかになっていきます。

★★☆

著者別読書感想(町田康)

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1885
密売人(ハルキ文庫) 佐々木譲

密売人
2004年の「笑う警官」以来「北海道警シリーズ」として続く第5作目で、2011年に単行本、2013年に文庫化されました。その1作目から4作目まではすでに既読です。

主人公は、過去作から引き続き登場している北海道警の刑事と仲間のメンバーで、それぞれが別々の事件に遭遇する中、お互い情報交換をするうちに、被害者達に共通する点があり、独自に動いて調べ始めます。

今回も、腐敗した北海道警の負の遺産という構図ですが、暴力団や、エスと言われる警察への情報提供者、過去の道警幹部の行いなどが次々と明らかになり、警官OB達にこれらの事件の本質を聞くことになります。

こうした小説を書かれると、現場にいる北海道道警の内部の人達はどういう思いをしているのだろう?と考えてしまいますが、きっと苦々しく思う人もいれば、まったく意に介さぬ人、警察官採用に苦慮する人、単にフィクションとして楽しめる人など様々でしょう。

でもどうして道警ばかり叩かれる?と腹を立てている人が多そうな気がしますが、2002年に発覚した現職の警察官が覚醒剤の使用・所持・密売、さらには拳銃の不正所持に関与した「稲葉事件」や、2003年に発覚した警察幹部が大量に処分された「北海道警裏金事件」の影響が大きいのでしょう。

しかし小説のほうは、予定調和で、たいした波乱もなく、無事に落ち着くところに落ち着くので、安心して読んでいられます。

★★☆

著者別読書感想(佐々木譲)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

春を背負って(文春文庫) 笹本稜平

春を背負って
2009年から2010年にかけてオール讀物に連載された連作短篇集で、2011年に単行本、2014年に文庫化されています。

さらに、内容や舞台はだいぶ変わっていますが、2014年に木村大作監督、松山ケンイチ主演で映画化がされています。

事故で亡くなった父親が始めた奥秩父の山小屋が舞台で、東京でエンジニアをやっていた主人公が会社を辞めてそこの経営を引き継ぎ、成長していくという物語です。

特に素人同然の主人公をサポートしてくれる父親にお世話になったという後輩で、山小屋が閉まっている冬期は東京でホームレスをやっているオヤジがいい味を出しています。

映画では豊川悦司がその役を演じていますが、容易にイメージが想像ができて面白そうです。

こうした山岳登山をテーマにした小説は様々ありますが、個人的にはまったく縁遠いというか、趣味の範疇には入っていませんが、一種の憧れもあるので興味はあり、面白く楽しめました。

過去には北村薫著「八月の六日間」(2014年)や、NHKでドラマ化もされた湊かなえ著「山女日記」(2014年)などを読みましたが、まったく知らない登山や山歩きの世界の話だけにどれも興味がわきました。

山岳小説と言えば真っ先に出てくる新田次郎氏や夢枕獏氏の山岳小説、その中でも特に有名な「劒岳 点の記」(1981年)や「神々の山嶺」(1997年)はまだ読めていません。

人類初のエヴェレスト初登頂を果たした登山家ジョージ・マロリーを描いたジェフリー アーチャー著の「遥かなる未踏峰」は、既に読んでいます。

13年前には、趣味としての登山について、ブログを書いていました。

第三次登山ブームが起きたわけ 2013/7/20(土)

あと、地方で父親の事業を継いだ若者の奮闘と成長話という点では、風力発電事業に関わる北海道の過疎地で働く主人公を描いた高嶋哲夫著「風をつかまえて」を思い出しました。

★★☆

著者別読書感想(笹本稜平)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ダーク・アワーズ(上)(下)(講談社文庫) マイクル・コナリー

ダーク・アワーズ
原題は日本語タイトルと同じ「The Dark Hours」で、米国では2021年に、日本語版は2022年に発刊されています。

「女性刑事レネイ・バラードシリーズ」の4作目ですが、同時に別シリーズの主役、ハリー・ボッシュも私立探偵としてですが、刑事のパートナーとして登場しています。

ボッシュは警察を定年で退職していますから、今後の主役は現役刑事のバラードがメインになっていくのかも知れません。やはり事件解決は探偵より刑事の方が深みに入っていけますから。

今回の事件は、並行して二つの犯罪、つまり「二人組の連続レイプ魔事件・ミッドナイト・メン」と、もうひとつ「年明けのカウントダウンストリートパーティでの殺人事件」を女性刑事がボッシュの力を借りながら独断で調べていくという内容です。

時は2020年の12月末から1月頃にかけての話なので、コロナ禍の真っ最中ということや、大統領選挙の結果に不満を持つ集団が議事堂を占拠した事件、警察官に押さえつけられた黒人が死亡したことに抗議する「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」運動など、当時の世情も反映されています。

通常刑事はコンビを組んで捜査をするはずですが、経費削減や、仕事にやる気がない同僚たちとは言え、なぜかいつも単独で行動しているのがちょっと不思議です。

殺人現場で見つけた薬莢が、過去にボッシュが担当した未解決事件で使われたものと同じと言うことがわかり、ボッシュにその時の話を聞くため近づき、同時に元ベテラン刑事だったボッシュから様々なアドバイスや協力を得ることになります。

犯人に近づいたことで、送り込まれた殺し屋に自宅で寝ている時に襲われますが、それ以外で今回は特に大きな失敗や危険はなく、予定通り(予想通り)に、別々の二つの事件は解決に向かいます。

意図してかどうかはともかく、2名のレイプ犯を罠にかけるため、上司から自宅謹慎を命ぜられていることに背くため、警官を辞職する届けをメールで送り、犯人を待ち伏せ、正当防衛で殺害するという方法をとります。

上司の命令に背き動き回り、私立探偵の拳銃で犯人を追い詰め射殺したことで、大きな問題を犯したことは間違いなく、果たして好きだった刑事の座を手放すことになるのか?というのがポイントです。

★★☆

著者別読書感想(マイクル・コナリー)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

届け物はまだ手の中に(光文社文庫) 石持浅海

届け物はまだ手の中に
2013年に単行本、2015年に文庫化された長編ミステリー小説です。

いきなり最初に、主人公が、復讐のためにある男を殺したことが示され、その後、様々なミステリアスなことが起きていき、その謎を解いていくというちょっと変わったスタイルです。

その殺人をおこなったのはある子供の頃の恩人を交通事故で殺め、親の金の力で反省もせず軽微な罪で許されたことに対する復讐のためです。

当時は同様に復讐を誓っていた親友が、学生時代に起業し、それで大成功を収め、社長として裕福になっていて、一緒に約束したはずの復讐を反故にしたことで、自分ひとりで犯人を殺しそれを友人に突きつけようと、その友人の家にやってくるところから始まります。

復讐を遂げた後、主人公は親友の家を訪れますが、その時その親友の子供の誕生パーティがおこなわれていて、それに加わります。肝心の友人はどうしても手が離せない緊急の仕事が入り、パーティには参加していません。

パーティには、友人の妻と妹、それに友人の秘書の女性3人と、パーティの主役の小学生の息子が参加していて、一見和やかなムードですが、なにか違和感がつきまといます。

その違和感を最後に説明していくことになりますが、探偵小説のように細かな齟齬を積み重ねていき、友人家族や秘書の嘘を見破っていくことになります。

殺人者が、探偵役?というなかなか今までにない面白いスタイルでしたが、あまりにも軽いノリで、リアリティは薄すぎます。

★★☆

著者別読書感想(石持浅海)

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1883
眼球堂の殺人(講談社文庫) 周木律

眼球堂の殺人
2013年に講談社主催のメフィスト賞を受賞した作品で、これがメジャーデビュー作となります。文庫版は2016年に出版されています。

いわゆる著者の「堂シリーズ」の第1弾作品で、当初はシリーズを考えていたわけではなかったそうですが、この作品の評価が高かったことからシリーズ化が決まったそうです。

私は先にシリーズ5作目の「教会堂の殺人~Game Theory~」を読みました。

登場人物が重なることもあるようですが、それぞれのミステリーは独立しているので、特に大きな問題はなさそうです。

その「堂シリーズ」は、すでに

タイトル 副題 発行年
眼球堂の殺人 The Book 2013年
双孔堂の殺人 Double Torus 2013年
五覚堂の殺人 The Burning Ship 2014年
伽藍堂の殺人 Banach-Tarski Paradox 2014年
教会堂の殺人 Game Theory 2015年
鏡面堂の殺人 Theory of Relativity 2018年
大聖堂の殺人 The Books 2019年

の7作品が刊行されています。「堂シリーズ」は一応これで終わりだそうです。

著者は大学で建築学を学んだという経歴があることから、こうした変わった建築物をテーマにした推理小説がお得意ということで、不思議な建物とミステリーと言えばすぐに思い出されるのは前にも書きましたが綾辻行人著の「館シリーズ」と似ています。

主人公は、放浪する天才的な数学者を追いかけている女性のルポライターで、その数学者が有名建築家が新築したという自宅に招待されたことで、それに同行します。

数学者以外にその完全に隔離された山の中に建設された不思議な建築物に3日間の予定で招待されたのは、ノーベル賞受賞者の物理学者、絵画芸術家、精神医学者、政治家、編集者で、二日目の翌日から次々と殺人が起きていくことになります。

そして長い長い3日間が終わり、事件の謎が解かれた後にももうひとつ「真実」が残されているところは、驚きを隠せません。なかなかどうしてすっかりと騙されたという苦い思いが最後に待っています。

シリーズ以外にも多くの作品があるので、もっと読んでみたいと思える作家さんです。

★★★

著者別読書感想(周木律)

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

殺し屋、続けてます。(文春文庫) 石持浅海

殺し屋、続けてます。
2017年に出版された「殺し屋、やってます。」に続く「殺し屋探偵シリーズ」の第2弾で、2019年に文藝春秋に連載され、2021年に文庫版が出版された一部連作の短篇集です。

一部連作というのは、今回ちょっと前作とは違い、ライバルの殺し屋が登場し、それぞれの活躍?と見知らぬ関係ながら、関わりを持っていくことになります。したがって主人公は各話によってそれぞれの殺し屋、最後は二人の殺し屋ということになります。

その「殺し屋探偵シリーズ」は3作目「女と男、そして殺し屋」(2024年)、4作目「夏休みの殺し屋」(2025年)の計4作品が既刊です。

収録されている短篇のそれぞれタイトルは、「まちぼうけ」「わがままな依頼人」「双子は入れ替わる」「銀の指輪」「死者を殺せ」「猪狩り」「靴と手袋」の7篇です。

「晴らせぬ恨み 晴らします」とばかりに現代の「必殺仕事人」とも言えますが、こちらの殺し屋にとっては必殺シリーズと違い、依頼人の恨みや、やむにやまれぬ事情は関係なく、金が確実に得られ、そして仕事がたやすくできるかどうかが肝心との割り切りがあります。

いとも簡単にターゲットを尾行し、行動パターンをつかみ、そして実行していますが、小説の中での話で、現在はあちこちに防犯カメラがあり、人気のないところで長時間の張り込みをしている不審な人を見かけるとすぐに通報されたりするので、そう簡単なものではないでしょう。

ま、そういうリアルなことは小説ですから考えないとして、もっとも難しく思えるのが、殺しを引き受ける広告(営業)と、依頼人から直接話を聞く1次取り次ぎ者までのところかも知れません。その仕組みも「猪狩り」で少しだけ書かれていました。

しかし依頼人がその「殺人請負」の仕組みをなんらかの方法で知ることができると言うことは、警察や他の一般人が知っていても不思議ではないということで、当然、囮捜査の可能性も考えなきゃなりません。

そういった現実性に乏しいことから、いまいち感情移入がしにくい内容です。

★☆☆

著者別読書感想(石持浅海)

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月に吠えろ!萩原朔太郎の事件簿(徳間文庫) 鯨統一郎

月に吠えろ!萩原朔太郎の事件簿
2003年にノベルスとして、2007年に文庫版が出版された連作短編の推理小説です。

タイトルや副題からもわかる通り、詩集「月に吠える」が有名な大正から昭和初期頃に文壇で活躍した詩人、萩原朔太郎を主人公とした連作短篇小説です。

収録作品は、 「死者からの手紙」 「閉じた空」 「消えた夢二の絵」 「目の前で消えた恋人」 「ひとつの石」 「怪盗対名探偵」 「謎の英国人」の七篇です。

面白いのは、ひとつの事件を解決したあとに、その事件をイメージさせる実際にある萩原朔太郎の詩を挙げて、もちろんフィクションですが、事件からインスピレーションを得たものと匂わせていて、そのあたりは著者の創造力や作品への造詣が深いことがよくわかります。

こうした歴史上の人物を主人公にした小説が好きで、学生時代に教科書に出てきた有名人は実際はどういう人だったんだろう?と思いをはせながら読めます。

登場人物は、萩原朔太郎がホームズ的な探偵役で、語り手としてはその助手的な役割のワトソン役として萩原朔太郎と仲が良かった室生犀星です。

その他、室生とともに一緒の詩人グループ団体「人魚詩社」を作っていた山村暮鳥や、師匠的な北原白秋、「消えた夢二の絵」に登場する竹久夢二本人など。この時代には蒼々たる芸術家が出ています。

また「人魚詩社」が大正時代に実際にあった場所は、淀橋の七曲がりという地域(現在の東京都新宿区下落合)で、それから連想させるように「月に吠えろ!」というタイトルにも笑ってしまいました。もちろん人気テレビドラマ「太陽にほえろ!」と萩原朔太郎の代表作をミックスしてパロディにしています。

★★☆

著者別読書感想(鯨統一郎)

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誰も書かなかった日本史「その後」の謎(中経の文庫) 雑学総研

誰も書かなかった日本史「その後」の謎
著作者の雑学総研というのは、聞いたことがなく、匿名にしたい任意の団体か、仮のグループ名のような気がしますが、書籍には「珍談奇談の類から、学術的に検証された知識まで、種々雑多な話題をわかりやすい形で世に発表する集団」とあります。実際に存在が確認できずよくわかりません。

2014年に出版された文庫ですが、角川グループの中経出版が編集し、KADOKAWAが発行しています。

全部で146ものエピソードがわかりやすく簡素に書かれていて、読みやすいのはいいのですが、様々な時代(飛鳥時代~昭和時代)が行ったり来たりして、時代感覚が狂ってしまいそうです。

例えば、「明治維新後、徳川宗家はいったいどうなった?」の次が、「大化の改新後、蘇我氏の子孫は実は栄えていた?」で、その次には「坂下門外の変のあと、老中・安藤信正はどうなった?」というような感じです。

その他にも、史実と違って「本当は生き延びていた?」という話も豊富です。

「壇ノ浦に消えたはずの安徳天皇は生きていた?」
「ロシア皇太子と一緒に帰国?生存説が根強かった西郷隆盛」
「日本全国に生存説が!真田幸村はどこで死んだのか?」
「実は生き延びていた?忠興の妻・細川ガラシャ」
「生存説も根強かった東洋のマタハリ川島芳子」
「新撰組組頭・原田左之助は満州で馬賊になっていた?」
「ヨーロッパ逃亡説もささやかれる大塩平八郎のその後」
「琉球へ流れ着いた源為朝、子孫は琉球王国の初代王に?」
など。

単なる噂話だけでなく、古い文書や手紙、石碑などからも検証していて、説得力は?ですが、面白い話です。

ただあくまで、下世話でどうでも良さそうな雑学レベルのものが多いのと、あまり有名ではない(私は知らなかったというだけであるところでは有名なのかも知れません)人物、例えば大川周明や林子平、川上貞奴、飯沼貞吉、聖武天皇、谷干城、河口慧海などの話は、雑学としては良いけど興味は薄いです。

暇つぶしには十分役立ちそうな良い本です。

★★☆

【関連リンク】
 3月前半の読書 カウントダウン、斬に処す 甲州遊侠伝、嫉妬/事件、プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」
 2月後半の読書 幕末紀 宇和島銃士伝、大還暦 人生に年齢の「壁」はない、殺しのライン、この国のかたち(1)
 2月前半の読書 騙し絵の檻、日本のタブー3.0、日御子(上)(下)、この闇と光

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カウントダウン(新潮文庫) 佐々木譲

カウントダウン
2008年から2009年にかけて雑誌連載されていた「二度死ぬ町」を加筆修正し、2010年に単行本、2013年に文庫化された長編小説です。

夕張市が財政破綻したのが2006年で、そうした厳しい北海道の自治体と地方政治を舞台として、やがて北海道に限らず、日本の多くの自治体が陥るであろう財政破綻について予言的な内容となっています。

選挙をテーマとした小説はよくあり、若い主人公が様々な老害や既得権益受益者からの妨害を受けながら奮闘していくというものばかりですが、この小説はそれだけでなく、夕張市を引き合いにした地方都市ならではの問題を突いています。

主人公は夕張市と双子市と言われている架空の地方都市で、亡くなった父親から引き継いだ司法書士事務所で働きながら1期目の市会議員として財政破綻の心配をしている男性。

二十年の長きにわたり取り巻きを増やし独裁的に振るまっている市長の6選を阻止すべく、主人公が立ち上がるわけですが、そのきっかけとなったのが、著名なやり手選挙コンサルタントが突然事務所に現れたことで、破綻寸前の市の市長になったところで、なにができるのか?と悩みながらも一歩踏み出す物語です。

過去の箱物行政や、市長の息子が経営する第三セクターのせいで、市町村の赤字が膨らみ、借金が財政の20%を超えると財政再生団体に指定され、国や都道府県の自治体から厳しい指導下におかれ、公共工事の停止や公共施設の廃止、住民税の増額、職員などの減数などがおこなわれます。

現在(2026年)までは夕張市だけですが、やがて日本の多くの市町村でこうした財政破綻が起きてくるのではないか?という問題提起でもありますが、夕張市の場合は、北海道庁とグルで負債を長く隠していたと言われていて、なかなか表面化しづらく住民にとっては寝耳に水ということもあります。

今後、高齢化した人口が大きく減少していく中で、老朽化した公共インフラの改修や、昔作った贅沢な公共施設の維持費など、すでに破綻が間近に見えている市町村もありそうで、そうしたところは、平成の大合併で生き残り策をとりましたが、今後はもしかすると都道府県単位での合併、つまり道州制などの導入も検討することになるかも知れません。

いずれにしても、北海道の地方都市の問題というだけでなく、未来の日本国全体の縮図として読むと背筋が凍るような思いがする小説です。

★★☆

著者別読書感想(佐々木譲)

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斬に処す 甲州遊侠伝(小学館文庫) 結城昌治

斬に処す
1971年に週刊アサヒ芸能で連載され、1972年に単行本、その後文庫化された時代小説です。

個人的には江戸時代の任侠ものや博徒についてはまったく詳しくないので、清水の次郎長などは名前ぐらいしか知らないので、その敵役で、この小説の主人公、黒駒勝蔵という博徒も当然知りませんでした。

通常は清水次郎長は強きをくじき弱きを助ける善玉の侠客で、敵対するヤクザの親分達は大悪人と相場が決まっていました。

しかし著者が調べたところ、幕末の混乱していた時代、要領よく立ち回った次郎長にうまくやられてしまったという図式で、侠客を名乗りつつ、やることは博打の元締めや時には役人の手先となって敵方のみならず仲間も平気で裏切りお縄にしたり謀殺しています。

結局は、どっちもどっちで、次郎長だけが善良とは言えず、逆に胡散臭そうではないか?という疑問から、この次郎長を敵役とした小説ができたそうです。

他にも、この主人公、黒駒勝蔵を称えるような小説があり、同様に考えて大悪人とされていた黒駒勝蔵の名誉回復に寄与した歴史家や作家は多そうです。

しかし結局は、江戸時代の博徒の時の殺人が、明治に変わった後に尾を引き、幕府を倒す新政府側の小隊長として功績を挙げながらも、タイトルにあるとおり「斬に処す」刑罰が下り、40歳の生涯を閉じます。

一方の敵役で要領の良い次郎長は、明治26年、当時としては長命の73歳で天寿を全うします。

★★☆

著者別読書感想(結城昌治)

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嫉妬/事件(ハヤカワepi文庫) アニー・エルノー

嫉妬/事件
著者は1940年生まれで元中高校の文学教員をしながら小説などを執筆してきたフランスの作家で、2022年にはノーベル文学賞が与えられています。

本著は、2000年と2004年にフランスで出版された中短編小説を合わせ、2004年に日本語翻訳版として出版されたものです。

他の作品を読んでいないので、他はどうなのかはわかりませんが、この収録2作品は、小説と言うより著者自身の実体験を元にした内容となっているそうです。

つまり、「嫉妬」は、40代の著者が主人公で、30代の愛人が別れを告げて別の女のところへ行ってしまったことをネチネチとストーカーじみた感情を吐露しつつ、相手の女性に嫉妬を募らせていくという話し。

もうひとつの「事件」は、著者がまだ学生だった時代、親元から離れ奔放な寮生活を送っていましたが、妊娠してしまいます。

しかし当時、1960年代のフランスでは中絶は違法で、本人も処置をした医者も罪に問われ懲役が科せられる重い犯罪でした。

そのため、闇で処置をしてくれるところを探し求めていくというかなりプライベートな話で、当時の日記をもとにして、当時の感情の動きや、心理描写が迫真に迫っています。

こうした自分のプライベートで、ナーバスな問題を作品のネタにする作家は時々見かけますが、ここまであけすけに、しかも創作ではなく当時の日記に書いていたことを元にしてリアル(っぽい)話の作品は初めてです。

性生活にオープンなフランス人独特の価値観などもあるでしょうけど、まず日本人作家(男女関わらず)は恥ずかしくてとても書けそうもない、つまり読むことはできそうもない新鮮な作品でした。

★★☆

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プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」(朝日新書) 野口悠紀雄

昔若いビジネスマンだった時代(1990年代)には「「超」整理法シリーズ」などの実務で役立つ書籍でお世話になっていました。すでに85歳と言うことですがお元気そうでなによりです。

本書は2023年に出版された新書です。タイトルからわかるとおり、この数十年間の日本経済と政治の低落ぶりを各種のデータを元にこれでもかと披露しこの先を憂慮しているってことです。

2023年の刊行なので、コロナ禍があけてまもない今から3年以上前の日本の話ですが、それでも急速な円安や物価高、実質賃金の低下、国際競争力の劣化、高度専門家の海外流出、中国との関係、弱体化を進める補助金ジャブジャブなど、予言的な話もあり、なかなかジワッと身にしみてきます。

特に著者が批判をしているのがアベノミクスで、これが今の貧困大国のすべての元凶だったというような内容になっています。

私は違いますが、アメリカのトランプ大統領同様、安倍元総理の熱狂的な支持者やファンは日本には多そうなので、この新書で多くの敵を作ってしまったことでしょう。

今年にはそのアベノミクスの後継者を自認している新総理が誕生したので、著者もヤレヤレといったところでしょう。もちろん批判するばかりではなく、ちゃんと経済学者としての処方箋も書いてあります。

★★☆

著者別読書感想(野口悠紀雄)

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