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1867
クロイドン発12時30分(創元推理文庫) F・W・クロフツ

クロイドン発12時30分
著者は1879年アイルランド生まれ、1957年に亡くなった英国の推理小説が得意な作家さんです。

この時代、シャーロック・ホームズシリーズのような奇想天外な推理小説が多い中、リアリズムに徹した推理小説で有名です。

この小説は1934年に出版され、原題は「The 12.30 from Croydon」で邦訳タイトルはほぼそのまま直訳です。

意味は、物語の序盤に、ある高齢の富豪が急死しますが、その富豪が亡くなったのがクロイドン発12時30分の飛行機内でした。クロイドンはロンドンから15kmほど南へいった都市で、当時はここに民間飛行場があったようです。

時代背景となった1934年と言えば日本では昭和9年、欧州ではヒトラーやスターリンが幅をきかせ始めますが、英国ではまだ戦争に巻き込まれる予兆はない時代です。

最近では珍しくはないですが、この当時の推理小説としては異例の犯罪者視点で物語が展開していくというスタイルです。

つまり、「誰が犯人だ?」というのが推理小説のキモですが、このスタイルでは「刑事コロンボ」でもお馴染みの犯罪者が犯行を犯す一切を先に見せてから、警察がどうやってアリバイ崩しをしていくかというものです。

主人公は、父親から引き継いだ電機部品工場を経営する独身男性で、不景気になって大きな仕事を失い経営危機に直面しています。

富豪の叔父から巨額の遺産が約束されていましたが、資金がショートするまで数ヶ月というところまで来ていて、また恋人を自分に振り向かせるためにもどうしてもすぐにまとまったお金が必要で、叔父を殺すことを考えます。

練りに練った暗殺方法を考え、完全犯罪を狙い、計画は完璧に成功します。

いったんは病気を気に病んだ自殺とされますが、ロンドンからやってきた警部が多くの謎を解いていきやがて完全犯罪の穴を見つけ崩していきます。

長編小説なので、最後にひねった展開があるかと思いましたが、そうした意外性はなく、犯人の自白がない状況証拠だけで謎を解く推理が披露されます。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

流人道中記(上)(下)(中公文庫) 浅田次郎

流人道中記
2020年に単行本、2022年に文庫化された歴史時代長編小説です。先日読んだ「大名倒産」とも近い江戸時代の末期に、ある事情で江戸から青森まで流人を押送する役目を命じられた目付役人を主人公にロードムービーならぬ、道中小説です。

江戸を出立し、千住大橋、杉戸、雀宮、佐久山、芦野、須賀川、福島、大河原、仙台国分町、七北田、富谷、有壁、山目、前沢、相去(あいさり)、花巻、盛岡、沼宮内(ぬまくない)、金田一、五戸(ごのへ)、野辺地、浅虫、蓬田(よもぎた)、平舘、三厩(みんまや)まで。

現在のGoogleマップでルートを入れて調べると、距離は767km、徒歩で175時間がかかる長旅です。ところどころで馬を借りて乗ることはあっても、毎日8時間歩いて22日ほどかかる計算になります。

流人は破廉恥罪で切腹を言い渡されたが、あろうことか拒否をしたため、代わりに家を取り潰され蝦夷の松前家へお預かりとなった3200石の大旗本のお殿様。

その雲上人に見える流人を見張り青森まで押送する役人は200石の町奉行所に与力見習いで入ったばかりの婿養子19歳。その二人の珍道中です。

貧しい足軽の次男坊から、2段階上の目付へ幸いな縁で出世した真面目一方の主人公と、妻も子もいるかなり遊び人風の流人となった殿様の道中の会話が中心です。

そう言えば、道中小説は少し前に読んだ同時代の大名行列を主題とした「一路」(2013年)もそれに近いものでした。

2017年3月前半の読書と感想、書評(一路)

ただ著者の作品はほとんど読んできたので、話の展開はおおよそ想像がつきます。無理を承知で言えば、押送人の若き目付見習が一皮もふた皮もむけて江戸に帰ってからの活躍、そして大政奉還後に流人が罪を許され江戸に戻ってきて押送人と出会う続編が読みたいです。

★★★

著者別読書感想(浅田次郎)

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2035年の世界地図 失われる民主主義、破裂する資本主義(朝日新書)

2035年の世界地図
先日10月に読んだ「人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来」(2024年)と同種の、朝日新聞社が主催するシンポジウム「朝日地球会議」の2023年版で、エマニュエル・トッド(歴史家)、マルクス・ガブリエル(哲学者)、ジャック・アタリ(経済学者)、ブランコ・ミラノビッチ(経済学者)各氏へのインタビューと、それを元に「與那覇潤氏×市原麻衣子氏」と「東浩紀氏×小川彩氏」の対談でまとめられています。

2025年10月後半の読書と感想、書評(人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来)

欧米の識者と言われる人からみた日本や中国、アジアへの理解がこんなものかと思うような軽薄な話しも多くみられますが、それは外部にはそう見えるのだろうと理解するのが良さそうです。

その欧米の識者たちはコロナ禍という事情から講演ではなく、朝日新聞関係者がおこなうオンラインでのインタビューというスタイルなので、キーマンの選択、質問内容、内容の編集など、やや朝日新聞色の付いた内容と思っても良さそうです。

資本主義や民主主義の危機が叫ばれている現代ですが、その危機の度合いも識者によって温度差があるのだなぁということがよくわかりました。

インタビューを受けての日本人同士の対談では、やはり日本から見た景色と、欧米から見た景色の違いが指摘されています。

あと対談の中で、SNSの功罪として、SNSは便利な反面、自分と意見の違う相手をクリックひとつでブロックができますが、リアルな人間社会ではそうした自分と意見が対立する相手とも上手につきあっていかなければなりません。

リアルなコミュニケーションを避けて、メールやSNSばかりに慣れてしまっている若い人が、今後社会に出て、上司や部下を持ち、チームで重責を担うようになってくると、その立場や意見が異なる人とのコミュニケーションに様々な障害がでるのではないかという意見にはもう関係ないからどうでも良いですがなるほどなぁと。

リアルでは例え嫌いな相手でも簡単にブロックできないことがほとんどですから、そういう嫌な相手ともうまくつきあっていくスキルは経験を積んで鍛えていくしかないのは確かです。

★★☆

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歴史とは靴である(講談社文庫) 磯田道史

歴史とは靴である
2020年に単行本、2022年に文庫化された、鎌倉女学院高等学校で2019年におこなわれた「歴史と人間」についての特別授業をまとめたものです。

高校3年生相手と言うことは、ほとんどが時間に追われた受験生達で、そんな中で年号の暗記はともかく、深い歴史に興味がある生徒は少なそうで、そう考えるとチャレンジングな試みです。

高校生相手なので、難しい内容は封印し、誰でもわかりやすい(それでも高校生には?という言葉が多そうです)内容となっています。

著者が歴史と関わっていくことになる話や、自ら興味を高めていく道筋など、なかなか真似はできそうもない人生の歩き方です。

例えば、岡山出身の著者が、町全体が歴史みたいな京都に行けば楽しいだろうとまずは京都府立大学へ入学し、その大学図書館で歴史関連の本をすべて読み尽くし、次は京都大学の図書館で貸し出してもらおうとすると、京大生やOBでないとダメと言われ、それなら江戸時代の研究をされていて尊敬する先生がいた慶応大学へ入学するなど。

過去に起きた歴史を時間をかけて学ぶのは、今すぐに役が立つわけではなく、人によっては無駄なコスパの悪いこととされがちですが、随筆家の内田百閒が言った「1回覚えて忘れた状態を教養という、最初から触れたことがない人間とでは雲泥のちがい」という言葉を著者は座右の銘にしているとか。

年齢を重ね、様々な経験や読書で得た知識をどんどん忘れてしまっている現状ですが、「そうか、教養なんだ!」と思えば気が楽になってきます。

★★☆

著者別読書感想(磯田道史)

【関連リンク】
 11月前半の読書 片腕をなくした男、凍りのくじら、ニッポンの闇、ワイルドドッグ路地裏の探偵
 10月後半の読書 八甲田山 消された真実、四人組がいた。、人類の終着点 フランシス・フクヤマ、凍原
 10月前半の読書 十五少年漂流記、シンセミア(上)(下)、私の流儀、残像に口紅を

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1864
片腕をなくした男(上)(下)(新潮文庫) ブライアン・フリーマントル

片腕をなくした男
英国のMI5のパッとしない風貌のスパイ、チャーリー・マフィンシリーズ第14作目にあたり、以前読んだ「顔をなくした男」(2009年)のひとつ前の作品で2008年に出版されています。

14作目の本作から昨年読んだ15作「顔をなくした男」(2009年)、今年なって読んだ16作目「魂をなくした男」(2013年)が連続した三部作セットとなっています。できればこの14作目から順に読むべきでした。

著者のブライアン・フリーマントルは昨年2024年に亡くなったとのことですので、このチャーリー・マフィンシリーズをまとめておきます。順番、邦題、原題、発行年の順です。

チャーリー・マフィンシリーズ
01  消されかけた男 Charlie Muffin 1977年
02  再び消されかけた男 Clap Hands,Here Comes Charlie 1978年
03  呼びだされた男 The Inscrutable Charlie Muffin 1979年
04  罠にかけられた男 Charlie Muffin's Uncle Sam 1980年
05  追いつめられた男 Madrigal for Charlie Muffin 1981年
06  亡命者はモスクワをめざす Charlie Muffin and Russian Rose 1985年
07  暗殺者を愛した女 Charlie Muffin San 1987年
08  狙撃 The Run Around 1988年
09  未訳 Comrade Charlie 1989年
10  報復 上・下 Charlie's Apprentice 1993年
11  流出 Charlie's Chance 1996年
12 待たれていた男 上・下 Dead Men Living 2000年
13 城壁に手をかけた男 King of Many Castles 2002年
14 片腕をなくした男 上・下 RED STAR RISING 2008年
15 顔をなくした男 上・下 RED STAR Eclipse 2009年
16 魂をなくした男 上・下 RED STAR FALLIN 2013年

こうして邦題と原題を並べてみると、直訳はなく、独自の邦題がついています。普通はタイトルには著者の思いが込められているので、これで著者がよく納得したものです。

著者はこのシリーズ作品の他、米露の捜査官がタッグを組むカウリーとダニーロフシリーズや、心理分析官クローディーン・カーターシリーズ、シャーロック・ホームズの続編、ノンフィクションなど豊富な作品を残しています。

本作を含む三部作では、英国のMI5所属のスパイの主人公がロシアでKGBの後を継いだ連邦保安局と丁々発止の戦いというか騙し合いを繰り広げる内容です。

OO7ジェームス・ボンドとは違い、激しい銃撃戦やカーチェイスなどはなく、主人公も内容も地味で、人間味あふれるストーリーが特徴です。

この三部作の初編では、ロシアにある英国大使館の中で殺人事件が発生し、大使館内部の犯行ということで国内の治安維持を担当するMI5の主人公がロシアに派遣され、殺人事件を追うとともに明らかになってくる英国大使館やアメリカCIAなどを巻き込む壮大な陰謀がわかってきます。

そのMI5の主人公には実はロシアの諜報機関に勤務する女性と恋愛関係からその後結婚していて子供までいるというのが、人間くさいところです。

★★☆

著者別読書感想(ブライアン・フリーマントル)

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凍りのくじら(講談社文庫) 辻村深月

凍りのくじら
2004年に作家デビューした著者の2005年にノベルスとして出版され2008年に文庫化された著者の初期の作品です。

「どこでもドア」や「カワイソメダル」、「先取り約束機」など、ドラえもんの秘密道具がそれぞれ章立てに使われていて、小説の中にもそうした道具を模した内容が出てきます。

個人的には、ドラえもんが登場した頃はスポーツに明け暮れていた中学生時代で、そうした漫画を読んだ世代ではなく馴染みがないので、あまりピンときません。

小説では主人公の父親が藤子不二雄が好きで、ドラえもんの漫画が全巻家に置いてあったことから親しみ、生活の中で、そうした「秘密道具があれば!」という場面で思い出します。

主人公は若い女性で、幼児の頃に重病を患い失踪してしまった父親と同じカメラマンになるまでの高校生活を中心に描かれています。

どうもこうした女子高生の人間関係など学校生活を延々と読まされるのは高齢になったオヤジにはキツく退屈でもあります。

タイトルは、主人公がニュースで見た北海道の流氷に囲まれて呼吸ができなくなって死んでしまう鯨のように、息苦しい社会を投影しているものだと思われます。

最後は、映画「シックス・センス」を彷彿させるようなホラー(ファンタジー?)的な内容で、もっとベタな学園モノかと思っていましたので驚きました。

★★☆

著者別読書感想(辻村深月)

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ニッポンの闇(新潮新書) 中野信子、デーブ・スペクター

ニッポンの闇
2023年に出版された新書で、「サイコパス」や「脳の闇」など多くの著書があり、テレビのコメンテーターとしてもよく見かける脳科学者と、アメリカ出身の有名タレント二人の対談をまとめたものです。

目次は「ガイジンの言葉、脳科学者の言葉」 「ムチャクチャだったテレビ」 「メディアとキュレーション」 「サブ・コンプライアンス」 「多様性の罠」 「日本は本当に同調圧力が強いか」 「勝っちゃったら「すみません」」 「謝るときも「すみません」」 「コメンテーターの明暗」 「文化人枠」 「日本の労働者は立ち上がらない」 「不安遺伝子と日本人」 「カルトの定義」 「日本は無宗教か」 「天皇と権威」 「時間割引率」 「テクノロジーが神になった時代」 「日本式は終わるか」 「ティッピング・ポイント」 「遺伝子の交換は情報の交換から」とかなり多岐に富んでいますが、話の内容は雑談っぽくて薄いです。

外国人からみた「ここが変だよ日本人、日本社会」的な話しと、専門の脳科学で読み解く政治家や宗教に絡め取られる人達など、どこかで聞いたような話がほとんどです。

いっそのこと、両者ともテレビによく出ていることから、テレビの変遷や、旧ジャニーズやフジテレビのスキャンダルに代表されるタブーに深く切り込んでいくとかだったら面白かったかも。

でもそうすると、様々な局から出番を失ってしまう可能性があり、できっこないでしょうけど。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

ワイルドドッグ路地裏の探偵(ハルキ文庫) 鷹樹烏介

ワイルドドッグ路地裏の探偵
2023年に文庫で出版された探偵小説です。著者の作品を読むのは今回が初めてです。

著者は1966年東京都生まれで、日大の農獣医学部卒業ということです。作家デビューは「ガーディアン 新宿警察署特殊事案対策課」(2018年刊)で、警察モノが多い作家さんですが、本作は覚えのない不祥事に巻き込まれ刑事を退職に追い込まれた探偵が主人公です。

探偵と言っても正式な届け出をした調査員ではなく、警察がうかつに手を出せない調査や尾行などを、警察同期の刑事から仕事を回してもらっています。

一見すると、退職後は牙を抜かれて落ちぶれたように見えますが、実は退職に追い込まれたきっかけをつくった巨大な相手を油断させるためということです。

今回は、大手新聞社から関連会社へ左遷された男を調べる役目を与えられ、調べているときに拉致されて行方不明となります。

またこうしたエンタメ系ドラマには不可欠な若い女性が相棒として探偵に加わります。これは身内に反社会勢力がいたために警察官採用が見送られた女性で、子供の頃に両親が何者かに殺されたという過去を引きずっています。

探偵の事務所兼住居が浅草にある潰れたラブホテルという設定で、浅草の町並みがところどころに出てきてあの付近に詳しい人(私)には懐かしい思いがします。

もっとも最近は、外国人観光客だらけで、人情や昔の面影はほとんどなくなってしまったでしょうけど。

★★☆

【関連リンク】
 10月後半の読書 八甲田山 消された真実、四人組がいた。、人類の終着点 フランシス・フクヤマ、凍原
 10月前半の読書 十五少年漂流記、シンセミア(上)(下)、私の流儀、残像に口紅を
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)

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1862
八甲田山 消された真実(山と渓谷社) 伊藤薫

八甲田山 消された真実
筆者は青森県生まれの元自衛官で、第5普通科連隊や青森地方連絡部などで勤務をした方で、青森の地勢や、時代は違えど軍隊の規律や習性などを熟知した方です。

著者が所属していた自衛隊でも、過去の失敗から学ぶことを大事にしていて、様々な事件の分析をおこなっていたようです。

1902年(明治35年)に起きた総勢210名中199名が一度に凍死するという世界で最悪の集団凍死事件「八甲田雪中行軍遭難事件」については、新田次郎著の「八甲田山死の彷徨」や、それを原作とした映画「八甲田山」が有名で、私も映画を子供の頃に見て、割と最近、9年前に小説を読みました。

2016年9月前半の読書と感想、書評(八甲田山死の彷徨)

その小説の影響もあり、7年ほど前の夏に青森へ行ったとき、幸畑墓苑や八甲田山雪中行軍遭難資料館、歩兵第五連隊第二大隊遭難記念碑 (八甲田山雪中行軍遭難後藤伍長銅像)など訪問しました。

この新田次郎氏の作品は1971年までに判明していることをなぞりながら、あくまで小説として出版されましたが、それ故に、著者の創作が加わり、時が経ってから新たな証言などが発見されたりしたことで、小説や映画で描かれた内容とは少し違う点が露わになってきています。

この書籍は2018年に出版され、そうした新たな発見や証言から事件について真実を突き止めようとするノンフィクションです。

事件の真相に迫るため使われた資料や証言は多岐に渡っています。事件後すぐに陸軍大臣に提出された大臣報告や、2ヶ月後にあらためて陸軍大臣に提出された顛末書が公式文書としてあり、さらに関係者の談話や、生存者からの聞き取り記録、その他地元の新聞東奥日報や河北新報、全国紙の記事などです。

機密保持が厳格な明治時代の軍隊の中で起きた事件で、さらに責任を回避するため画策したり、ミスを死者に押しつけたりしようとする上官や関係者がいても不思議ではありません。

数名の生存者がいながらもなかなか真実が表面化しない側面があり、真実はどうしてもある程度は想像や推理するしかありません。

本書でも「・・・だろう」という表現がかなり多く見られます。また著者がある程度自信があることやそう信じていることについては「・・・である。」という表現で書かれています。小説ではなくノンフィクションという形態ながら、様々な資料や聞き取り、自分の経験から著者の思い込みも含め、推定以外のなにものでもありません。

それだけに本書のタイトルにあるように「消された真実」が、どこまで真実なのかは未だによくわかりません。

なかなか読み応えのある作品でしたが、著者が元自衛官と言うことで、専門用語や軍隊用語が多く、ある程度は知っている人向けの研究本のような感じなので、先に軽めの小説「八甲田山死の彷徨」を参考に読んでおくほうがより理解がしやすいかなと思いました。

同様に事件を元にした小説で伊東潤著「囚われの山」も、内容はやや大雑把でエンタメっぽいですが、これもそこそこ興味深かったです。

2024年5月後半の読書と感想、書評(囚われの山)

★★☆

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四人組がいた。(文春文庫) 高村薫

四人組がいた。
2014年に単行本、2018年に文庫化された連作短篇集です。「四人組、怪しむ」、「四人組、夢を見る」、「四人組、豚に逢う」など、12篇のコミカルな短篇が収録されています。

長野県の過疎の村(現在は合併で市)の郵便局兼集会所に毎日集う、元村長、元助役、郵便局長、近所の老婆の4人が主人公です。

有川浩著「三匹のおっさん」や、加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス」のような、高齢者が主役のコミカルな短篇集かと思っていたら、それらよりはファンタジーやホラーなどの要素も加わり、なんだか哲学書を読んでいるかのような難しさと眠けを感じました。

したがって、笑い転げる小説ではなく、どんな突飛な内容でも黙って許せる心の広い人向けで、あまり内容を深く考えたり、突っ込みをいれたりするようなものではありません。

また、高齢化し消滅しそうな地方の村落という問題を提起する社会性があるものでもなく、四つ足のタヌキやクマがエプロンして預かった幼児のおむつ交換をし、キャベツが行進し、ヤマメやウサギと会話するというなんだかよくわからない(それが哲学的)内容で、真剣に読むものではありません。

特に頭が固くなってしまった高齢者(私を含む)には、著者の初期の作品「マークスの山」(1993年)や「レディ・ジョーカー」(1997年)のような本格的なサスペンス小説や、重厚な内容の短篇集の「地を這う虫」(1993年)をイメージして読むと、「なんなんだこれは!」と叫んでしまいそうです。

★☆☆

著者別読書感想(高村薫)

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人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来(朝日新書)

人類の終着点
サブタイトルに「戦争、AI、ヒューマニティの未来」「世界最高の知性による未来予測」「われわれを待ち受けているのは、黙示録か福音か」とうるさいぐらいに盛られています。

朝日新聞社が主催するシンポジウム「朝日地球会議」で、マルクス・ガブリエル、フランシス・フクヤマ、エマニュエル・トッド、スティーブ・ローへのインタビュー、そしてメレディス・ウィテカー、安宅和人、岩間陽子、手塚眞、中島隆博各氏の座談会などで構成されていて、特定の著者というものはありません。

個人的には子供の頃からずっと朝日新聞を読んできたので、この人選については朝日らしさを感じますが、違和感はありません。しかし読売新聞社や東京新聞社、ニューヨークポストが主催のシンポジウムなら、ゲスト陣はまったく違ったものになるのでしょう。

そうしたことから、マスメディアは知ってか知らずか中立とは言えない偏向した思想や考え方を読者や視聴者に植え付けていきます。ずっと昔からそれを続けてきたので今更っていう話しですけど。

それはともかく、2023年の話なので、まだトランプ大統領が2024年に再選される前で、アメリカがそれまでの路線から大きく舵を切る前の話です。

テーマは、政治やAI、戦争の行方など、近未来の話題が中心で、2年経った現時点でも特に時代遅れではなくリアリティがあります。

気になったのは、フランス出身の歴史学者エマニュエル・トッド氏は「アメリカは有事が起きても日本を守る気はないので、安全保障をアメリカに頼るのはリスクが高く、日本は核武装して自衛するしかない」「日本にとって自国で国民生活のすべてまかなえるロシアや中国はたいして問題ではなく、一番危険なのは自国だけで完結できないアメリカだ」ということ。

繰り返しますが、アメリカは民主党のバイデン大統領だった頃の発言で、同盟国に異常な貿易関税を一方的にかけてくるトランプ大統領に代わる前の話です。

また、マルクス・ガブリエルの「右派と左派を単純化すれば、左派は自由、連帯、平等の理念を大事にし、右派はヒエラルキー(権威主義)と国境(排外主義)を大切にする」という言葉は、昨今の日本含め世界状況を見ているとまったくその通りだなぁと思います。

★★☆

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凍原(小学館文庫) 桜木紫乃

凍原
2009年に単行本、2012年に文庫化された著者の作品では珍しい女性刑事が主人公の人間ドラマ小説です。

釧路の湿原である若い男性の絞殺死体が発見され、これが終戦前後の樺太へのソ連侵攻と住民避難へ遡り、壮大な歴史ドラマが始まります。

割と短い小説(文庫で344ページ)ながら、登場人物が多く、しかもそれが戦後から70年近く経った時代まで関係してくるので時々誰が誰とわからなくなることも。

舞台となるエリアも、一部はマップが掲載されていましたが、釧路市内の他、川上郡標茶町、戦前の南樺太、札幌、小樽、留萌、室蘭などが出てきます。北海道の土地勘がないと、どれほどの距離があり、文化的にどう違うのかなどはわかりにくいでしょう。

主人公の女刑事は子供の頃に弟が湿原で行方不明となり、沼地の中にある壺状の穴、谷地眼(やちまなこ)にはまってしまったのでは?とされています。

そのトラウマを引きずりながら、別の殺人事件に取り組みますが、一緒に捜査する相方が、弟の事故の時のベテラン担当刑事で、このコンビがなかなかのもので面白いです。

そう言えば、谷地眼に落ちて死亡する小説に、内田康夫著「釧路湿原殺人事件」というのがありました。しかし実際は過去に谷地眼で人が亡くなったという事故は記録にはないそうです。

★★☆

著者別読書感想(桜木紫乃)

【関連リンク】
 10月前半の読書 十五少年漂流記、シンセミア(上)(下)、私の流儀、残像に口紅を
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)
 9月前半の読書 続高慢と偏見、夢幻花、うれしい悲鳴をあげてくれ、君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい

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1860
十五少年漂流記(新潮文庫) ヴェルヌ

十五少年漂流記
フランスの作家、ジュール・ヴェルヌが1888年に発表した少年向けの冒険小説で、原題は「Deux Ans de Vacances」で、「2年間の休暇」という意味です。

私も子供の頃に絵本で読んだ記憶がありますが、今回小説で読んでなんとなく思い出しました。

ニュージーランドにある少年が学ぶ学校の夏休みの行事で、帆船でニュージーランドを一周する旅行があり、前日の夜から子供たちは船に滞在していたところ、舫いが外れ勝手に動き出してしまい、嵐の中、太平洋へ出て漂流します。

運悪く、深い霧の中で他の商船と接触したとき、船尾に付けられていた名板が外れ、その後それを見つけた捜索隊は「沈没した」と判断してしまいます。

1880年代という時代の物語なので、現代の感覚とはだいぶん違ったところもあります。

遭難したのは8歳から14歳までの少年ばかりで、無人島に漂着したのち船から荷物を持ち出しますが、その中にブランデーなど酒類も含まれます。最初は怪我をしたときの消毒に使うのかな?と思っていたら、自分たちで飲むためのものでした。、

また積まれていた銃器や大砲まで持ち出し、それを14歳以下の子供が自在に扱っているところなんて今では考えられないでしょう。

そして、島では銃を撃ち、落とし穴で捕まえた鳥や獣を、当たり前に食料としていますが、時代なのか、今の少年に鳥の羽をむしり、動物の皮をはぎ、腹を割いたりと、処理をする技術やたくましさはないでしょう。

無人島ものの小説や映画は好きで、特にお勧めなのがトム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」です。これは見て損はありません。

日本でも無人島サバイバルものはあり、吉村昭著の実話を元にした小説「漂流」や、須川邦彦著の実話「無人島に生きる十六人」は秀逸です。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

シンセミア(上)(下)(講談社文庫) 阿部和重

シンセミア
2003年に単行本、2006年に朝日文庫、2013年に講談社文庫として文庫化された長編小説です。

舞台となっているのは、著者の出身地で、すでに既刊となっている「ニッポニアニッポン」(2001年)や「グランド・フィナーレ」(2005年)と同じ、実在する山形県東根市神町(じんまち)です。

タイトルのシンセミアとは、スペイン語の「sin」(ない)と「semilla」(種)に由来しており、直訳すると「種がない」という意味で、一般的には「種なし大麻」という意味で使われ、その「種なし」は男根とつながる比喩的なものとされています。

この神町は、古くは日本陸軍の基地があり、戦後はアメリカ進駐軍とその後の自衛隊の基地ができて栄えた歴史があります。

そうした戦後の混乱期からこの神町を仕切っていた有力者が代替わりしていき、様々な問題をはらんでいきます、

特に主人公というのはなく、汚れ仕事を任されていたパン屋の2代目と、それに反発して若い盗撮グループに加入している3代目、中学生と交際しているロリコン警察官、戦後のヤクザで現在は2代目の次女が不動産企業や建設企業を傘下に置き仕切っている興業企業、その親戚の落ちこぼれで盗撮グループのリーダーをやっている甥など、それぞれの視点で物語が語られ進行していきます。

その神町で、産廃事業反対運動のリーダーだった高校教師が不可解な鉄道事故で死亡、続けて桃の農家の老人が謎の失踪しその後の洪水被害で殺害された姿で発見、幽霊が出ると噂のあった道で自動車整備士が橋の欄干に激突死、さらに洪水発生時に身元不明の死体と続けさまに事件や事故が相次ぎます。

さらに放火や、盗撮、コカイン、リンチ、暴力事件など、かなりハードな場面が多くあり刺激的な内容です。

それまで表も裏もキッチリと仕切ってきた町の有力者仲間の関係にヒビが入ってくると、それまでは隠されてきたなにかとブラックなところが突然表沙汰になってくるものです。

当初文庫版が発刊された時は(1)から(4)まで4冊に分かれていたそうです。この講談社文庫版は上下の2冊にまとめられましたが、上巻487ページ、下巻501ページとボリュームがあり読み応えがあります。

そのため1日1時間程度の読書だと長いあいだ読んでいることもあり、だんだんとあたかも自分が神町に住んでいるかのような気がしてきます。

しかしこのようなアウトローやアブノーマルな住人が多い町に住むのはなんか嫌だなぁ、、、

★★☆

著者別読書感想(阿部和重)

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私の流儀(新潮文庫) 吉村昭

私の流儀
1998年に単行本、2001年に文庫化された幕末頃から戦中戦後の近代歴史小説が多い著者のエッセイ集です。

テーマは、
(1)小説を書く
(2)言葉を選ぶ
(3)人と出会う
(4)酒肴を愉しむ
(5)旅に出る
(6)歳を重ねる
の6章からなっていて、それぞれの思ったこと、感じたこと、身の回りで起きたことなどユーモアを交ぜながら描かれています。

詳細は不明ですが、週刊誌か雑誌などに掲載されたエッセイを上記のテーマごとに集めたものと思われます。

そのため、本来なら連載雑誌で何ヶ月後かに繰り返される同じ話が、このエッセイ集では続けて何度も出てきます。そういうのは書籍化するときの編集段階で修正しないのかな?

面白かったのは、東西酒豪作家がなにかの雑誌に載り、東の横綱に著者が選ばれ、西の横綱が藤本義一氏だったという話しや、取材旅行では、編集者などと一緒に行くと旅費などの費用が相手の出版社もちになるのが嫌で取材旅行は基本ひとりで行くという話し。

その他にも馴染みの居酒屋で編集者と「廃刊」という言葉を連発していたら、居酒屋の店主が、配管工事の職人と間違えられ、店を改装するためその配管工事を依頼されたり、など。

なにげない日常の話しが多く、作家の仕事というのがよくわかるエッセイでした。

★★☆

著者別読書感想(吉村昭)

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残像に口紅を(中公文庫) 筒井康隆

残像に口紅を
1989年に単行本、1995年に文庫化された「言葉遊び」を取り入れた変わり種の長編小説です。

今から35年以上前の小説ですが、ロングセラーを続けていて、今年2025年には寺田浩晃画の同名漫画が出ています。

どういう内容かというと、主人公のベテラン作家と大学教授で評論家の友人同士が、思いつきで日本語の言葉をひとつずつなくしていった先の小説はどうなるのだろう?ということから、1章ずつ50音+濁音、半濁音などの言葉を1つずつ(時々2音)消えていく内容です。

例えば人名になくなった言葉が含まれているとその人は消えていなくなり、使うこともできません。「ち」がなくなれば「父親」という言葉は使えず、この小説では「自分を産んだ男親」という言い方に変えられています。

そして全66章で、順番にあまり使われない言葉から消えていきますが、消えた言葉が半分ぐらいに達するとかなり厳しい物語になっていきます。

ストーリーは、作家自身の日常生活や、友人の大学教授のリクエストで濡れ場シーン、子供の頃の思い出として、戦争中に疎開していた話しや、子供の頃には漫画を描くのが好きだったとかなどは、この主人公が著者自身という想像もできます。

今ならパソコンのワープロやプログラムを使えば、消えた言葉を回避して別の言葉に置き換えたりすることは容易でしょうけど、執筆された1989年と言えばようやくワープロが一般に普及していた頃で、個人でミスをチェックするのは大変だったと思います。

それでも出版後に、本文中の5箇所に消えたはずの言葉が使われているのが発見されていて、それは巻末に様々なデータと共に書かれていました。

こうした作家さんの実験的小説や変わった手法の小説もたまには気分が変わっていいものです。

言葉遊びではないですが、京極夏彦氏のひとつの文章がページをまたがらない独特の手法や、杉井光氏の「世界でいちばん透きとおった物語」のような驚天動地の手法、小説の中に事件の謎を説くための別の小説があるアンソニー・ホロヴィッツ著「カササギ殺人事件」など、いずれも嫌いじゃありません。

★★☆

著者別読書感想(筒井康隆)

【関連リンク】
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)
 9月前半の読書 続高慢と偏見、夢幻花、うれしい悲鳴をあげてくれ、君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい
 8月後半の読書 エアー2.0、警告、日本史の探偵手帳、あなたならどうする

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女のいない男たち(文春文庫) 村上春樹

女のいない男たち
2013年から2014年に文藝春秋などに掲載された短・中篇小説をまとめたもの(1篇のみ書き下ろし)で、2014年に単行本、2016年に文庫化されました。

その中の中編「ドライブ・マイ・カー」は、濱口竜介監督、西島秀俊、三浦透子などの出演で2021年に映画化されています。

カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を含む計3部門を受賞し、アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞しています。

公開時に映画の予告編がCMで流されていたので気になっていましたが、まだ見ていません。

収録されている小説は「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6篇で、最後の「女のいない男たち」だけ書き下ろしです。

ドライブ・マイカー内容は、男性視点での女性との別れや死別、離婚などがテーマとなっています。

タイトルから容易に想像できそうな「全然モテずに女っ気がまったくない独身中年男性の哀れ」という内容ではありません。

前書きに、あまり好きではないという短篇を今回出した理由や、出版社等に頼まれて書くことはないのに書いた1篇のことなど、面白くこの短篇集の背景が書かれています。そういうのって珍しいですね。

その中ではやはり映画にもなった文庫で51ページある中編「ドライブ・マイ・カー」が良かったのと、「木野」はタイトルが主人公の名前ですが、ちょっとホラーだったのが意外で面白かったです。

★★☆

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ものごとに動じない人の習慣術 冷静でしなやか、タフな心をつくる秘訣(KAWADE夢新書) 菅原圭

ものごとに動じない人の習慣術
同姓同名にシンガーソングライターがいてややこしいですが、こちらの著者はコピーライターや出版社勤務を経たフリーのライターさんで、「努力する人は報われない」など多数の著書があります。

実は1年半前にも同じ書籍を購入し読んでいました。情けない、読み終わって整理するまで気づかないというのは痴呆寸前かもです orz,,,

この新書は2020年に出版されています。購入した理由は、まさにタイトル買いで、今更ながら「ものごとに激しく動じてしまう自分をなんとかできるのか?」と思ってのことで、前にも購入していたということは、このことが気になって仕方がないのでしょう。

1年半前に読んだ時に感想を少しだけ書いています。

2024年3月後半の読書と感想、書評 (ものごとに動じない人の習慣術)

★☆☆

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流星の絆(講談社文庫) 東野圭吾

流星の絆
2008年に単行本、2011年に文庫化された長編ミステリー小説です。

タイトルに記憶があったので「すでに読んだかな?」と思いましたが、調べると読んでなく、2006年9月から2007年9月まで週刊現代に連載されていたということで、それを見たことがあったのでしょう。

2008年には二宮和也や戸田恵梨香が出演するテレビドラマが製作されています。

ストーリーは、三兄妹がまだ幼かった頃に、自宅で食堂を経営していた両親が何者かに殺されてしまい、その時効がくる直前の14年後に、成人した三兄妹が偶然犯人の手がかりを見つけます。

三兄妹は親が亡くなったために、施設に預けられ、大きな苦労を味わいます。そして生きていくためにと、三人で詐欺行為を生業として、世の中の不条理に向き合って生きています。

しかし手がかりと行っても確証がなく、警察に知らせても相手にしてくれないだろうと考え、知らせず3人だけで犯人と思われる容疑者を追い詰めていくことになります。

推理小説でもありますが、事件の謎は最後の最後でないとわかりませんでした。なかなか複雑に凝っています。でも読み応えがあり面白かったです。

★★☆

著者別読書感想(東野圭吾)

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風神雷神(上)(下)(講談社文庫) 柳広司

風神雷神
2017年に単行本、2021年に文庫化された国宝「風神雷神図屏風」で有名な江戸時代初期の謎が多い絵師、俵屋宗達筆の伝記的小説です。

数多くある作品の中でも晩年に描いた最高傑作に近い、風神雷神図屏風は現在京都国立博物館に所蔵されています。

私も本物かレプリカかは不明ですが、同博物館で見た記憶があります。

ストーリーは、子供の頃、京都の扇屋に養子として入った俵屋宗達(子供時代は伊年)は、商売よりも絵を描くことが好きで、本業でもある扇の絵はもちろん、頼まれれば屏風や絵巻物、水墨画、書籍などにも絵を提供しています。

風神雷神図屏風

中でも書道家でもあった本阿弥光悦との合作で、多くの屏風絵などを残しています。

しかし実際は俵屋宗達のことは墓所や生誕年含め、わかっていないことが多いそうですが、小説の中では著者の相当の想像力と創作が大胆に散りばめられています。

実際に交流があった公家の烏丸光広や文化人本阿弥光悦との出会いと共作、福島正則からの依頼で平家納経の修復、町の絵師としては異例の法橋の位が授けられたことなど事実も、小説の中にも盛り込まれ、タイトルの風神雷神図など、現在も残る彼の代表作が次々と出てきます。

もう少し時代背景を取り入れた深い内容であれば、蔦重よりもNHK大河ドラマの原作にふさわしいネタだっただけに、読みやすく現代風にアレンジした軽めの作品だけにちょっと残念だったかも。

★★☆

著者別読書感想(柳広司)

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