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1862
八甲田山 消された真実(山と渓谷社) 伊藤薫

八甲田山 消された真実
筆者は青森県生まれの元自衛官で、第5普通科連隊や青森地方連絡部などで勤務をした方で、青森の地勢や、時代は違えど軍隊の規律や習性などを熟知した方です。

著者が所属していた自衛隊でも、過去の失敗から学ぶことを大事にしていて、様々な事件の分析をおこなっていたようです。

1902年(明治35年)に起きた総勢210名中199名が一度に凍死するという世界で最悪の集団凍死事件「八甲田雪中行軍遭難事件」については、新田次郎著の「八甲田山死の彷徨」や、それを原作とした映画「八甲田山」が有名で、私も映画を子供の頃に見て、割と最近、9年前に小説を読みました。

2016年9月前半の読書と感想、書評(八甲田山死の彷徨)

その小説の影響もあり、7年ほど前の夏に青森へ行ったとき、幸畑墓苑や八甲田山雪中行軍遭難資料館、歩兵第五連隊第二大隊遭難記念碑 (八甲田山雪中行軍遭難後藤伍長銅像)など訪問しました。

この新田次郎氏の作品は1971年までに判明していることをなぞりながら、あくまで小説として出版されましたが、それ故に、著者の創作が加わり、時が経ってから新たな証言などが発見されたりしたことで、小説や映画で描かれた内容とは少し違う点が露わになってきています。

この書籍は2018年に出版され、そうした新たな発見や証言から事件について真実を突き止めようとするノンフィクションです。

事件の真相に迫るため使われた資料や証言は多岐に渡っています。事件後すぐに陸軍大臣に提出された大臣報告や、2ヶ月後にあらためて陸軍大臣に提出された顛末書が公式文書としてあり、さらに関係者の談話や、生存者からの聞き取り記録、その他地元の新聞東奥日報や河北新報、全国紙の記事などです。

機密保持が厳格な明治時代の軍隊の中で起きた事件で、さらに責任を回避するため画策したり、ミスを死者に押しつけたりしようとする上官や関係者がいても不思議ではありません。

数名の生存者がいながらもなかなか真実が表面化しない側面があり、真実はどうしてもある程度は想像や推理するしかありません。

本書でも「・・・だろう」という表現がかなり多く見られます。また著者がある程度自信があることやそう信じていることについては「・・・である。」という表現で書かれています。小説ではなくノンフィクションという形態ながら、様々な資料や聞き取り、自分の経験から著者の思い込みも含め、推定以外のなにものでもありません。

それだけに本書のタイトルにあるように「消された真実」が、どこまで真実なのかは未だによくわかりません。

なかなか読み応えのある作品でしたが、著者が元自衛官と言うことで、専門用語や軍隊用語が多く、ある程度は知っている人向けの研究本のような感じなので、先に軽めの小説「八甲田山死の彷徨」を参考に読んでおくほうがより理解がしやすいかなと思いました。

同様に事件を元にした小説で伊東潤著「囚われの山」も、内容はやや大雑把でエンタメっぽいですが、これもそこそこ興味深かったです。

2024年5月後半の読書と感想、書評(囚われの山)

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

四人組がいた。(文春文庫) 高村薫

四人組がいた。
2014年に単行本、2018年に文庫化された連作短篇集です。「四人組、怪しむ」、「四人組、夢を見る」、「四人組、豚に逢う」など、12篇のコミカルな短篇が収録されています。

長野県の過疎の村(現在は合併で市)の郵便局兼集会所に毎日集う、元村長、元助役、郵便局長、近所の老婆の4人が主人公です。

有川浩著「三匹のおっさん」や、加藤実秋著「メゾン・ド・ポリス」のような、高齢者が主役のコミカルな短篇集かと思っていたら、それらよりはファンタジーやホラーなどの要素も加わり、なんだか哲学書を読んでいるかのような難しさと眠けを感じました。

したがって、笑い転げる小説ではなく、どんな突飛な内容でも黙って許せる心の広い人向けで、あまり内容を深く考えたり、突っ込みをいれたりするようなものではありません。

また、高齢化し消滅しそうな地方の村落という問題を提起する社会性があるものでもなく、四つ足のタヌキやクマがエプロンして預かった幼児のおむつ交換をし、キャベツが行進し、ヤマメやウサギと会話するというなんだかよくわからない(それが哲学的)内容で、真剣に読むものではありません。

特に頭が固くなってしまった高齢者(私を含む)には、著者の初期の作品「マークスの山」(1993年)や「レディ・ジョーカー」(1997年)のような本格的なサスペンス小説や、重厚な内容の短篇集の「地を這う虫」(1993年)をイメージして読むと、「なんなんだこれは!」と叫んでしまいそうです。

★☆☆

著者別読書感想(高村薫)

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人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来(朝日新書)

人類の終着点
サブタイトルに「戦争、AI、ヒューマニティの未来」「世界最高の知性による未来予測」「われわれを待ち受けているのは、黙示録か福音か」とうるさいぐらいに盛られています。

朝日新聞社が主催するシンポジウム「朝日地球会議」で、マルクス・ガブリエル、フランシス・フクヤマ、エマニュエル・トッド、スティーブ・ローへのインタビュー、そしてメレディス・ウィテカー、安宅和人、岩間陽子、手塚眞、中島隆博各氏の座談会などで構成されていて、特定の著者というものはありません。

個人的には子供の頃からずっと朝日新聞を読んできたので、この人選については朝日らしさを感じますが、違和感はありません。しかし読売新聞社や東京新聞社、ニューヨークポストが主催のシンポジウムなら、ゲスト陣はまったく違ったものになるのでしょう。

そうしたことから、マスメディアは知ってか知らずか中立とは言えない偏向した思想や考え方を読者や視聴者に植え付けていきます。ずっと昔からそれを続けてきたので今更っていう話しですけど。

それはともかく、2023年の話なので、まだトランプ大統領が2024年に再選される前で、アメリカがそれまでの路線から大きく舵を切る前の話です。

テーマは、政治やAI、戦争の行方など、近未来の話題が中心で、2年経った現時点でも特に時代遅れではなくリアリティがあります。

気になったのは、フランス出身の歴史学者エマニュエル・トッド氏は「アメリカは有事が起きても日本を守る気はないので、安全保障をアメリカに頼るのはリスクが高く、日本は核武装して自衛するしかない」「日本にとって自国で国民生活のすべてまかなえるロシアや中国はたいして問題ではなく、一番危険なのは自国だけで完結できないアメリカだ」ということ。

繰り返しますが、アメリカは民主党のバイデン大統領だった頃の発言で、同盟国に異常な貿易関税を一方的にかけてくるトランプ大統領に代わる前の話です。

また、マルクス・ガブリエルの「右派と左派を単純化すれば、左派は自由、連帯、平等の理念を大事にし、右派はヒエラルキー(権威主義)と国境(排外主義)を大切にする」という言葉は、昨今の日本含め世界状況を見ているとまったくその通りだなぁと思います。

★★☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

凍原(小学館文庫) 桜木紫乃

凍原
2009年に単行本、2012年に文庫化された著者の作品では珍しい女性刑事が主人公の人間ドラマ小説です。

釧路の湿原である若い男性の絞殺死体が発見され、これが終戦前後の樺太へのソ連侵攻と住民避難へ遡り、壮大な歴史ドラマが始まります。

割と短い小説(文庫で344ページ)ながら、登場人物が多く、しかもそれが戦後から70年近く経った時代まで関係してくるので時々誰が誰とわからなくなることも。

舞台となるエリアも、一部はマップが掲載されていましたが、釧路市内の他、川上郡標茶町、戦前の南樺太、札幌、小樽、留萌、室蘭などが出てきます。北海道の土地勘がないと、どれほどの距離があり、文化的にどう違うのかなどはわかりにくいでしょう。

主人公の女刑事は子供の頃に弟が湿原で行方不明となり、沼地の中にある壺状の穴、谷地眼(やちまなこ)にはまってしまったのでは?とされています。

そのトラウマを引きずりながら、別の殺人事件に取り組みますが、一緒に捜査する相方が、弟の事故の時のベテラン担当刑事で、このコンビがなかなかのもので面白いです。

そう言えば、谷地眼に落ちて死亡する小説に、内田康夫著「釧路湿原殺人事件」というのがありました。しかし実際は過去に谷地眼で人が亡くなったという事故は記録にはないそうです。

★★☆

著者別読書感想(桜木紫乃)

【関連リンク】
 10月前半の読書 十五少年漂流記、シンセミア(上)(下)、私の流儀、残像に口紅を
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)
 9月前半の読書 続高慢と偏見、夢幻花、うれしい悲鳴をあげてくれ、君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい

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1860
十五少年漂流記(新潮文庫) ヴェルヌ

十五少年漂流記
フランスの作家、ジュール・ヴェルヌが1888年に発表した少年向けの冒険小説で、原題は「Deux Ans de Vacances」で、「2年間の休暇」という意味です。

私も子供の頃に絵本で読んだ記憶がありますが、今回小説で読んでなんとなく思い出しました。

ニュージーランドにある少年が学ぶ学校の夏休みの行事で、帆船でニュージーランドを一周する旅行があり、前日の夜から子供たちは船に滞在していたところ、舫いが外れ勝手に動き出してしまい、嵐の中、太平洋へ出て漂流します。

運悪く、深い霧の中で他の商船と接触したとき、船尾に付けられていた名板が外れ、その後それを見つけた捜索隊は「沈没した」と判断してしまいます。

1880年代という時代の物語なので、現代の感覚とはだいぶん違ったところもあります。

遭難したのは8歳から14歳までの少年ばかりで、無人島に漂着したのち船から荷物を持ち出しますが、その中にブランデーなど酒類も含まれます。最初は怪我をしたときの消毒に使うのかな?と思っていたら、自分たちで飲むためのものでした。、

また積まれていた銃器や大砲まで持ち出し、それを14歳以下の子供が自在に扱っているところなんて今では考えられないでしょう。

そして、島では銃を撃ち、落とし穴で捕まえた鳥や獣を、当たり前に食料としていますが、時代なのか、今の少年に鳥の羽をむしり、動物の皮をはぎ、腹を割いたりと、処理をする技術やたくましさはないでしょう。

無人島ものの小説や映画は好きで、特にお勧めなのがトム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」です。これは見て損はありません。

日本でも無人島サバイバルものはあり、吉村昭著の実話を元にした小説「漂流」や、須川邦彦著の実話「無人島に生きる十六人」は秀逸です。

★★★

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

シンセミア(上)(下)(講談社文庫) 阿部和重

シンセミア
2003年に単行本、2006年に朝日文庫、2013年に講談社文庫として文庫化された長編小説です。

舞台となっているのは、著者の出身地で、すでに既刊となっている「ニッポニアニッポン」(2001年)や「グランド・フィナーレ」(2005年)と同じ、実在する山形県東根市神町(じんまち)です。

タイトルのシンセミアとは、スペイン語の「sin」(ない)と「semilla」(種)に由来しており、直訳すると「種がない」という意味で、一般的には「種なし大麻」という意味で使われ、その「種なし」は男根とつながる比喩的なものとされています。

この神町は、古くは日本陸軍の基地があり、戦後はアメリカ進駐軍とその後の自衛隊の基地ができて栄えた歴史があります。

そうした戦後の混乱期からこの神町を仕切っていた有力者が代替わりしていき、様々な問題をはらんでいきます、

特に主人公というのはなく、汚れ仕事を任されていたパン屋の2代目と、それに反発して若い盗撮グループに加入している3代目、中学生と交際しているロリコン警察官、戦後のヤクザで現在は2代目の次女が不動産企業や建設企業を傘下に置き仕切っている興業企業、その親戚の落ちこぼれで盗撮グループのリーダーをやっている甥など、それぞれの視点で物語が語られ進行していきます。

その神町で、産廃事業反対運動のリーダーだった高校教師が不可解な鉄道事故で死亡、続けて桃の農家の老人が謎の失踪しその後の洪水被害で殺害された姿で発見、幽霊が出ると噂のあった道で自動車整備士が橋の欄干に激突死、さらに洪水発生時に身元不明の死体と続けさまに事件や事故が相次ぎます。

さらに放火や、盗撮、コカイン、リンチ、暴力事件など、かなりハードな場面が多くあり刺激的な内容です。

それまで表も裏もキッチリと仕切ってきた町の有力者仲間の関係にヒビが入ってくると、それまでは隠されてきたなにかとブラックなところが突然表沙汰になってくるものです。

当初文庫版が発刊された時は(1)から(4)まで4冊に分かれていたそうです。この講談社文庫版は上下の2冊にまとめられましたが、上巻487ページ、下巻501ページとボリュームがあり読み応えがあります。

そのため1日1時間程度の読書だと長いあいだ読んでいることもあり、だんだんとあたかも自分が神町に住んでいるかのような気がしてきます。

しかしこのようなアウトローやアブノーマルな住人が多い町に住むのはなんか嫌だなぁ、、、

★★☆

著者別読書感想(阿部和重)

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私の流儀(新潮文庫) 吉村昭

私の流儀
1998年に単行本、2001年に文庫化された幕末頃から戦中戦後の近代歴史小説が多い著者のエッセイ集です。

テーマは、
(1)小説を書く
(2)言葉を選ぶ
(3)人と出会う
(4)酒肴を愉しむ
(5)旅に出る
(6)歳を重ねる
の6章からなっていて、それぞれの思ったこと、感じたこと、身の回りで起きたことなどユーモアを交ぜながら描かれています。

詳細は不明ですが、週刊誌か雑誌などに掲載されたエッセイを上記のテーマごとに集めたものと思われます。

そのため、本来なら連載雑誌で何ヶ月後かに繰り返される同じ話が、このエッセイ集では続けて何度も出てきます。そういうのは書籍化するときの編集段階で修正しないのかな?

面白かったのは、東西酒豪作家がなにかの雑誌に載り、東の横綱に著者が選ばれ、西の横綱が藤本義一氏だったという話しや、取材旅行では、編集者などと一緒に行くと旅費などの費用が相手の出版社もちになるのが嫌で取材旅行は基本ひとりで行くという話し。

その他にも馴染みの居酒屋で編集者と「廃刊」という言葉を連発していたら、居酒屋の店主が、配管工事の職人と間違えられ、店を改装するためその配管工事を依頼されたり、など。

なにげない日常の話しが多く、作家の仕事というのがよくわかるエッセイでした。

★★☆

著者別読書感想(吉村昭)

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残像に口紅を(中公文庫) 筒井康隆

残像に口紅を
1989年に単行本、1995年に文庫化された「言葉遊び」を取り入れた変わり種の長編小説です。

今から35年以上前の小説ですが、ロングセラーを続けていて、今年2025年には寺田浩晃画の同名漫画が出ています。

どういう内容かというと、主人公のベテラン作家と大学教授で評論家の友人同士が、思いつきで日本語の言葉をひとつずつなくしていった先の小説はどうなるのだろう?ということから、1章ずつ50音+濁音、半濁音などの言葉を1つずつ(時々2音)消えていく内容です。

例えば人名になくなった言葉が含まれているとその人は消えていなくなり、使うこともできません。「ち」がなくなれば「父親」という言葉は使えず、この小説では「自分を産んだ男親」という言い方に変えられています。

そして全66章で、順番にあまり使われない言葉から消えていきますが、消えた言葉が半分ぐらいに達するとかなり厳しい物語になっていきます。

ストーリーは、作家自身の日常生活や、友人の大学教授のリクエストで濡れ場シーン、子供の頃の思い出として、戦争中に疎開していた話しや、子供の頃には漫画を描くのが好きだったとかなどは、この主人公が著者自身という想像もできます。

今ならパソコンのワープロやプログラムを使えば、消えた言葉を回避して別の言葉に置き換えたりすることは容易でしょうけど、執筆された1989年と言えばようやくワープロが一般に普及していた頃で、個人でミスをチェックするのは大変だったと思います。

それでも出版後に、本文中の5箇所に消えたはずの言葉が使われているのが発見されていて、それは巻末に様々なデータと共に書かれていました。

こうした作家さんの実験的小説や変わった手法の小説もたまには気分が変わっていいものです。

言葉遊びではないですが、京極夏彦氏のひとつの文章がページをまたがらない独特の手法や、杉井光氏の「世界でいちばん透きとおった物語」のような驚天動地の手法、小説の中に事件の謎を説くための別の小説があるアンソニー・ホロヴィッツ著「カササギ殺人事件」など、いずれも嫌いじゃありません。

★★☆

著者別読書感想(筒井康隆)

【関連リンク】
 9月後半の読書 女のいない男たち、ものごとに動じない人の習慣術、流星の絆、風神雷神(上)(下)
 9月前半の読書 続高慢と偏見、夢幻花、うれしい悲鳴をあげてくれ、君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい
 8月後半の読書 エアー2.0、警告、日本史の探偵手帳、あなたならどうする

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1858
女のいない男たち(文春文庫) 村上春樹

女のいない男たち
2013年から2014年に文藝春秋などに掲載された短・中篇小説をまとめたもの(1篇のみ書き下ろし)で、2014年に単行本、2016年に文庫化されました。

その中の中編「ドライブ・マイ・カー」は、濱口竜介監督、西島秀俊、三浦透子などの出演で2021年に映画化されています。

カンヌ国際映画祭で日本映画初となる脚本賞を含む計3部門を受賞し、アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞しています。

公開時に映画の予告編がCMで流されていたので気になっていましたが、まだ見ていません。

収録されている小説は「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6篇で、最後の「女のいない男たち」だけ書き下ろしです。

ドライブ・マイカー内容は、男性視点での女性との別れや死別、離婚などがテーマとなっています。

タイトルから容易に想像できそうな「全然モテずに女っ気がまったくない独身中年男性の哀れ」という内容ではありません。

前書きに、あまり好きではないという短篇を今回出した理由や、出版社等に頼まれて書くことはないのに書いた1篇のことなど、面白くこの短篇集の背景が書かれています。そういうのって珍しいですね。

その中ではやはり映画にもなった文庫で51ページある中編「ドライブ・マイ・カー」が良かったのと、「木野」はタイトルが主人公の名前ですが、ちょっとホラーだったのが意外で面白かったです。

★★☆

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ものごとに動じない人の習慣術 冷静でしなやか、タフな心をつくる秘訣(KAWADE夢新書) 菅原圭

ものごとに動じない人の習慣術
同姓同名にシンガーソングライターがいてややこしいですが、こちらの著者はコピーライターや出版社勤務を経たフリーのライターさんで、「努力する人は報われない」など多数の著書があります。

実は1年半前にも同じ書籍を購入し読んでいました。情けない、読み終わって整理するまで気づかないというのは痴呆寸前かもです orz,,,

この新書は2020年に出版されています。購入した理由は、まさにタイトル買いで、今更ながら「ものごとに激しく動じてしまう自分をなんとかできるのか?」と思ってのことで、前にも購入していたということは、このことが気になって仕方がないのでしょう。

1年半前に読んだ時に感想を少しだけ書いています。

2024年3月後半の読書と感想、書評 (ものごとに動じない人の習慣術)

★☆☆

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流星の絆(講談社文庫) 東野圭吾

流星の絆
2008年に単行本、2011年に文庫化された長編ミステリー小説です。

タイトルに記憶があったので「すでに読んだかな?」と思いましたが、調べると読んでなく、2006年9月から2007年9月まで週刊現代に連載されていたということで、それを見たことがあったのでしょう。

2008年には二宮和也や戸田恵梨香が出演するテレビドラマが製作されています。

ストーリーは、三兄妹がまだ幼かった頃に、自宅で食堂を経営していた両親が何者かに殺されてしまい、その時効がくる直前の14年後に、成人した三兄妹が偶然犯人の手がかりを見つけます。

三兄妹は親が亡くなったために、施設に預けられ、大きな苦労を味わいます。そして生きていくためにと、三人で詐欺行為を生業として、世の中の不条理に向き合って生きています。

しかし手がかりと行っても確証がなく、警察に知らせても相手にしてくれないだろうと考え、知らせず3人だけで犯人と思われる容疑者を追い詰めていくことになります。

推理小説でもありますが、事件の謎は最後の最後でないとわかりませんでした。なかなか複雑に凝っています。でも読み応えがあり面白かったです。

★★☆

著者別読書感想(東野圭吾)

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風神雷神(上)(下)(講談社文庫) 柳広司

風神雷神
2017年に単行本、2021年に文庫化された国宝「風神雷神図屏風」で有名な江戸時代初期の謎が多い絵師、俵屋宗達筆の伝記的小説です。

数多くある作品の中でも晩年に描いた最高傑作に近い、風神雷神図屏風は現在京都国立博物館に所蔵されています。

私も本物かレプリカかは不明ですが、同博物館で見た記憶があります。

ストーリーは、子供の頃、京都の扇屋に養子として入った俵屋宗達(子供時代は伊年)は、商売よりも絵を描くことが好きで、本業でもある扇の絵はもちろん、頼まれれば屏風や絵巻物、水墨画、書籍などにも絵を提供しています。

風神雷神図屏風

中でも書道家でもあった本阿弥光悦との合作で、多くの屏風絵などを残しています。

しかし実際は俵屋宗達のことは墓所や生誕年含め、わかっていないことが多いそうですが、小説の中では著者の相当の想像力と創作が大胆に散りばめられています。

実際に交流があった公家の烏丸光広や文化人本阿弥光悦との出会いと共作、福島正則からの依頼で平家納経の修復、町の絵師としては異例の法橋の位が授けられたことなど事実も、小説の中にも盛り込まれ、タイトルの風神雷神図など、現在も残る彼の代表作が次々と出てきます。

もう少し時代背景を取り入れた深い内容であれば、蔦重よりもNHK大河ドラマの原作にふさわしいネタだっただけに、読みやすく現代風にアレンジした軽めの作品だけにちょっと残念だったかも。

★★☆

著者別読書感想(柳広司)

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1856
続 高慢と偏見(ちくま文庫) エマ・テナント

続高慢と偏見
著者は1937年英国生まれ(2017年死去)の小説家で、著名なジェイン・オースティンの長編小説「高慢と偏見」(Pride and Prejudice 初版1813年)の続編という形で1993年に出版された小説です。

原題は「Pemberley: A Sequel to Pride and Prejudice」で、日本語翻訳版の単行本は1996年、文庫は2006年に出版されています。Pemberley(ペンパリー)は、小説の中に出てくる英国の架空の地域名で、上流貴族と結婚した主人公が住む邸宅がある場所のことです。

設定や登場人物などはそのままオリジナルを引き継いでいて、執筆時期や執筆者が違うという点については私は違和感はありませんでした。

高慢と偏見」は今年の3月に読みました。

2025年3月後半の読書と感想、書評(高慢と偏見)

また「高慢と偏見」の設定と登場人物を下敷きにしたホラー映画「高慢と偏見とゾンビ」(2016年)という映画も今年6月に見ています。

2025年5~6月に見た映画(高慢と偏見とゾンビ)

今回の続編を含め、過去に3度の映画化やパロディ作品などが作られることは、それだけこの本編(高慢と偏見)が優れていて多くの人に読み継がれ、愛されているかがよくわかります。

確かに19世紀初頭の英国は世界に先駆けて産業革命などが起き、世界中の富と名声を独占し、やや傾きつつありましたが旧来からの華々しい貴族社会と、労働者のあいだの貧富の差が大きく、ドラマ作りでは面白い時代だったのでしょう。

続編では、トップクラスの貴族の元へ嫁いだ落ち目の貴族出身の娘だった主人公が、上流階級の中で様々な嫌がらせや批判を浴びつつも、奮闘する姿と、跡継ぎができないことで、莫大な遺産が当時英国で主流だった「男子単一長子相続制」のため、親戚へと移ってしまうかもというプレッシャーにさらされることなどがテーマとして語り継がれます。

ただ登場人物はほぼ「高慢と偏見」と同じで、あらためてそれらがどういう人物かという話はこの続編では出てこないので、必ず先にオリジナル版を読んでおくことと、その人物相関がまだ記憶にあるうちに読むことをお勧めします。

それができれば、オリジナルに劣らない、たいへん面白く読める作品です。

★★★

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夢幻花(PHP文芸文庫) 東野圭吾

夢幻花
2013年に単行本、2016年に文庫化されたミステリー長編小説で、「加賀恭一郎シリーズ」などのシリーズものではない単独の作品です。

タイトルは、本作品でテーマとなる覚醒効果があるとされる黄色い花のアサガオなど、通常には存在しない草花の俗称です。

主人公は、水泳が得意で、大学時代にオリンピックを目指せるほどの能力がありながら、あることから断念した女子大生。

その女子大生の祖父が、黄色い花びらのアサガオを咲かせたあとに、何者かに殺されてしまい、それを発見したことから、事件に巻き込まれていきます。

子供の頃から私の自宅の庭でもアサガオは毎夏に母親が大切に育てていて、青や紫、赤色のアサガオを見るたびに「夏だなぁ」というお気楽な印象しか持ってませんでしたが、確かに黄色いアサガオというのは見たことがありませんでした。

実際に黄色いアサガオの種に覚醒効果があるのかどうかは不明ですが、大麻草や、コカの実、ケシの種など、麻薬や覚醒剤の多くは植物から作られるので、身近な鑑賞用の草花の突然変異でそうした作用のある実や種が発生しても不思議ではありません。

なかなか読み応えのある面白いストーリーでした。ホントにこの著者の作品には大きなハズレはないです。

★★☆

著者別読書感想(東野圭吾)

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うれしい悲鳴をあげてくれ(ちくま文庫) いしわたり淳治

うれしい悲鳴をあげてくれ
著者は1977年生まれの楽曲の作詞活動をメインにしている方で、中孝介、土岐麻子、少女時代、布袋寅泰、Little Glee Monsterなど多くの楽曲の作詞を手がけています。著書としてはこの作品が初めてのものです。

音楽系の雑誌「ROCKIN'ON JAPAN」に2004年から2009年に連載されたものと、一部書き下ろしをまとめたもので、半分が小説、半分がエッセイという変わった構成となっています。2007年に単行本、2014年に文庫化されました。

小説はショートショートと言えるほどの短いもので、オチがあるものもあれば、ちょっと?というものも玉石混淆という感じです。

またエッセイも、小説に近そうな盛りに盛ったような内容で、すべてフィクションと思ってもそう間違っていないだろうなというのが実感です。

元々、作詞など文章を考え創造するのがお得意な方だけに、こうした短文エッセイ(ショートショート含む)はお得意なものでしょう。

小説の「密室のコマーシャリズム」は、浅間山荘事件がカップヌードルの爆発的ヒットした要因というのをうまく利用しているようで、立てこもり事件で犯人が使った粘着テープが全国に知れ渡ることになる話です。

エッセイの「殺人タクシー」は、乗車したタクシーで著者がタバコを吸おうとしたところ(昔はタクシーでタバコが普通に吸えたし灰皿もついていた)、運転手はぜんそく持ちで、大量の薬を見せられ、「タバコは死にますよ」と注意されながら、その運転手は咳き込みながらタバコを吸い始めるという話しです。

そういった話が満載で、それなりに楽しめます。

★☆☆

 ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟

君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい(文春文庫) 浅田次郎

君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい
2011年に単行本、2014年に文庫化された様々な雑誌や広報誌などに掲載されたエッセイを集めたものです。

内容は、子供の頃の話や、祖父や父親など家族のこと、ギャンブルについて思うところ、小説家になるまでの苦労や様々な職業と多岐に渡っています。その中でもまだ未成年だった時代から続いている競馬について多くの話が割かれています。

あとはその時々に書いている小説について、その周辺事情などは映画のメイキング映像のように思い出されて楽しいです。

しかし、執筆された年月やテーマが様々で、寄せ集めした感が拭えず、ホンの暇つぶしには向きますが、読書という範疇にはなさそうです。

こういう売れっ子作家さんの著書を、予算の都合があるのでどうしてもこのタイミングで出したいという出版社の事情が垣間見えます。

そう言えば「僕は人生についてこんなふうに考えている」 (2003年)も、出版社の事情を優先した過去の著書の中から文章を引っ張ってきてまとめただけのひどい内容の寄せ集めの駄本でした。

本著は著者が実際に書いているエッセイ集なので、それよりはずっとマシですが、この著者の魅力はこうしたエッセイやまとめ本ではなく、長編小説にあるということがよくわかります。

★☆☆

著者別読書感想(浅田次郎)

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1854
エアー2.0(小学館文庫) 榎本憲男

エアー2.0
7月に読んだ「巡査長 真行寺弘道」と同じ著者の作品で、2015年に単行本、2016年に文庫化された長編の近未来経済サスペンス小説です。

2025年7月前半の読書と感想、書評(巡査長 真行寺弘道)

2020年東京オリンピック開催以前の東京や、原発事故で帰宅困難地区がある福島が舞台となっています。

肉体労働者の青年が新国立競技場の建設工事で、他の労務者からイジメに遭っていたパッとしない老人と知り合いになります。

しかしその老人は、あとでその謎が明かされますが、自ら最先端の市場予測システムを開発していて、それをその老人の指示に従って政府へ売り込み、莫大な資金を得ることになります。

そこで青年は得た資金を、青年の出身地で原発事故で立ち入りが規制されている福島のエリアを国に特別自治区に指定してもらい、そこに新たな起業家に投資し、福島の復興計画をスタートさせます。

東日本大震災や原発事故をテーマにした小説はいくつか読みましたが、これは新しい切り口で、しかもSF的な要素もあり面白いです。

タイトルはその完全な市場予測システムの名称で、ソフトウエアとハードウェアがセットになったモノという立て付けです。

原発事故で壊滅した地域を再興するために、原発でしか得られない莫大な安定した電力が必要なシステムという組み合わせがなかなか矛盾をはらんでいてユニークです。

2024年には、弱点を克服しスケールアップした続編の「エアー3.0」が出版されています。

★★☆

著者別読書感想(榎本憲男)

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警告(上)(下)(講談社文庫) マイクル・コナリー

警告
著者の作品には、刑事「ハリー・ボッシュシリーズ」や、弁護士「ミッキー・ハラー シリーズ」が有名です。

本作はその中でも珍しい記者を主人公とした「ジャック・マカヴォイシリーズ」に属する作品で、「ザ・ポエット」(1996)、「スケアクロウ」 (2009)に続き11年ぶりの3作目です。

原題は「Fair Warning」で、2020年に米国で出版され、2021年に和訳版が出版されています。

直訳すると「真っ当な警告」と、タイトルはほぼ直訳ですが、もうひとつ、主人公の記者が在籍する実在するアメリカの消費者問題を扱うWEBニュースサイト「Fair Warning」社そのものをタイトルに使っています。

文庫のあとがきで知りましたが著者はこのニュースサイトの取締役でもあり、社長は実在の社長の名前を使っていることから、このサイトのPRにもなっているのでしょう。うまいやり方です。

このニュースサイトは刑事事件を追いかけるようなメディアではありませんが、そこの記者として勤めている主人公が、過去に一夜を共にしたバーで知り合った女性が殺されたことから参考人として刑事の訪問をうけ、その事件を調べると連続殺人の可能性があることを発見します。

ユニークなのは、犯罪事件で画期的な捜査手法となっているDNA検査の盲点や、それを民間企業が利用する場合に規制する法律などがなく、犯罪者にとっては利用価値のあるものというストーリー展開で、新鮮な切り口で楽しめました。

ハリー・ボッシュシリーズの中でも時々登場し、この小説でも大きな役割をする元FBI捜査官のレイチェル・ウォリングや、ハリー・ボッシュの元妻の元FBI捜査官だったエレノア・ウィッシュなど、主人公のロマンス相手として女性FBI捜査官を登場させるのが著者はお好きなようです。

★★☆

著者別読書感想(マイクル・コナリー)

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日本史の探偵手帳(文春文庫) 磯田道史

日本史の探偵手帳
2004年から2016年頃までに文藝春秋などで発表したエッセイ等を、

第1章 中世の武士と近世の武士の違い
第2章 歴史を動かす英才教育
第3章 古文書を旅する
第4章 歴史を読む

の4章にまとめたもので、2019年に文庫として出版されました。

歴史として定番と思っていたことや、時代劇映画などでよくあるシーンなどにも、歴史学者の目からはまた違った解釈や、あり得ない間違いと思うことがよくあるそうです、

例えば、ドラマなどでよくあるシーンとして、商人が、奉行や代官など役人に賄賂として金の小判を手渡すシーンがありますが、小判25枚を紙封した封金は、現在の価値に直すと750万円、菓子折の下に敷き詰めた小判は3億円にもなるそうで、そんな大金の賄賂をやりとりできるはずがないとか。

江戸時代の税金は基本が米で納める年貢だけなので、商売やその他で得られた収入には税金がかからないので、農民でも米以外の作物を作り、収入の道はいくらでもあったとか。一番貧乏なのは物入りも多い下級の侍という話など面白く読めます。

もっともそうした知識は、仕事の役にたったり、生きていく上で必要なモノではありませんが、日本の歴史の教養のひとつとして味わえます。

また最終章には、「日本と日本人を知る100冊」として著者お勧めの書籍があげられています。

★★☆

著者別読書感想(磯田道史)

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あなたならどうする(文春文庫) 井上荒野

あなたならどうする
2017年に単行本、2020年に文庫化された1作のオリジナルの歌詞と、9作の懐かしい歌謡曲をタイトルにしてそれをモチーフとした小説の短篇集です。

歌謡曲のタイトルや歌詞からイメージを膨らませるというのは誰でも経験があるでしょうけど、小説家が創造するとちょっと変わった物語になります。

収録作はオリジナルの歌詞「人妻ブルース」、あとは短編小説で「時の過ぎゆくままに」、「小指の想い出」、「東京砂漠」、「ジョニィへの伝言」、「あなたならどうする」、「古い日記」、「歌いたいの」、「うそ」、「サルビアの花」です。

最初の「人妻ブルース」以外は、65歳以上の人は実際に耳にしたことのある昭和歌謡曲のタイトルです。

若い人には馴染みがないと思われるので、タイトルになった曲の歌手と発売年を書いておきます。

ほとんどが昭和40年代の曲です。

時の過ぎゆくままに 沢田研二 1975年
小指の想い出 伊東ゆかり 1967年
東京砂漠 内山田洋とクール・ファイブ 1976年
ジョニィへの伝言 ペドロ&カプリシャス 1973年
あなたならどうする いしだあゆみ 1970年
古い日記 和田アキ子 1974年
歌いたいの 山崎ハコ 1975年
うそ 中条きよし 1974年
サルビアの花 早川義夫 1969年

短篇はそれぞれ歌詞をモチーフにしていますが、直接曲とは関係はなく、著者の創造力とイメージで書かれているようです。

「ジョニィへの伝言」などはわかりやすく、ジョニー大倉に似た彼氏と、二人でふるさとの町を出て行く予定だったのが、約束の時間になっても彼が来ず、ひとりで東京へ向かう主人公の話など。

一般的には小説中に歌詞を入れるのはJASRACへの使用料が発生するので出版社は嫌がりますが、そうしたことを超越して9作の歌詞が堂々と掲載されていて、編集者をきっと慌てさせたことでしょう。

こうして昭和時代の歌詞とそれをモチーフにしたドラマを並べると、その多くがベタベタした男と女の愛と別れの哀愁を歌い上げたものが多かったなぁという印象です。

もっとも数多くある中から著者自身がこれらの昭和歌謡を選んだわけなので、わざとそういう内容の歌詞を選んだとも言えますが、こういうモチーフの使い方、選び方は小説としては斬新で面白いです。

★★☆

著者別読書感想(井上荒野)

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