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リストラ天国 ~失業・解雇から身を守りましょう~
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花の鎖(文春文庫) 湊かなえ
3人の主人公の女性のことについて書いてしまうと、ひとつの大きな謎に触れてしまうので書きませんが、美雪、紗月、梨花の3人の20代女性を中心に、地方都市の商店街を舞台に起きる人間関係ミステリーです。
主人公が3人いるという事は、その周囲にも関係者がそれぞれ数名ずついるので、やたらと登場人物が多いのが難です。集中して読まないと誰が誰の関係者かわからなくなってしまいます。
デビュー作の「告白」でも度肝を抜かされましたが、この著者の作風としては超弩級の意外な結末が待っていることを期待されてしまいます。そしてこの作品でもその期待は裏切られません。
ストーリー展開は軽い感じですが、壮大な人間ドラマが内包されていて、面白い小説でした。
★★☆
◇著者別読書感想(湊かなえ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
世界インフレの謎 そして、日本だけが直面する危機とは?(講談社現代新書) 渡辺努
本著は今から3年前の2022年に出版されましたが、ちょうど新型コロナ禍騒動が沈静化し、社会が元に戻ろうとしている時期で、タイトルにもあるとおり世界中でインフレが急速に進む中で書かれたものです。
今から思えば、このインフレは2022年頃を起点にしてその後3年経つ現在もジワジワと続き、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻が長引いていることで政情の不安定化、さらにサイコパス的なアメリカファーストの自由貿易を破壊する大統領が吠えることで、その後の世界の行方も混沌としています。
本著では、なぜコロナ禍後に世界同時インフレが発生したのか?、日本は90年代からずっとデフレから脱せなかったのか?、日本だけ世界同時インフレの波を受けずに「安いニッポン」となったのか?世界の金融政策はそうしたインフレにどう対応したのか?などを消費者動向や企業経営の特に賃金施策の統計データを見ながらわかりやすく解説してくれます。
本著では触れられませんでしたが、日本のような高齢者が4割近くを占める老成化した国と、移民など含め平均年齢が若い国ととでは、消費動向は大きく違っているはずなのと、賃金ではなく年金が主を占める社会など、国や地域によって条件の違いはありそうです。
★★☆
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蝉かえる(創元推理文庫) 櫻田智也
著者は1977年生まれ、ライターからの転身で、作家デビュー作は「サーチライトと誘蛾灯」(2017年刊)で、本著と同じ主人公の連作短篇集です。
またこの作品は「日本推理作家協会賞」と「本格ミステリ大賞」を受賞しています。
賞の主宰者を考えると、この作品は一般読者や評論家よりも、同業先輩の推理作家に特にウケが良いようです。
タイトルからもわかる通り、昆虫好きの青年が主人公で、様々な事件や謎を解き明かしていきます。
どの作品も、昆虫はもちろん、薬品や風土病などにも深い知見が必要で、よく勉強されていると思います。そうした難しい知識を寝転びながら気軽に読めて吸収できるのですから感謝しかありません。
「蝉かえる」に出てくる昆虫食に関しては、イナゴや蜂の子の佃煮などは古くからあり、またコオロギの粉末などももう珍しいことではないので触れて欲しかったです。
★★☆
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氷の闇を越えて(ハヤカワ文庫) スティーヴ・ハミルトン
この作品は、私立探偵の「アレックス・マクナイト (Alex McKnight) シリーズ」の第1作目です。
私は過去にシリーズ2作目の「ウルフ・ムーンの夜」と、シリーズ外の「解錠師」(2009年)という二つの作品を読んでいますが、外れのない面白い作品ばかりです。
シャーロック・ホームズ、フィリップ・マーロウ、サム・スペード、スペンサーなど私立探偵ものの多くは、それが元々本業のようなものですが、このシリーズの主人公は、警察官時代にサイコパスに銃撃され重傷を負いそれがトラウマになって警察を辞めます。
その後は父親から引き継いだ山小屋の管理を本業にしていたときに、富豪の友人がトラブルに巻き込まれたことで、その友人の弁護士から半ば強引に友人の警護を頼まれ、私立探偵の免許を取得することになりますが本人はあまり乗り気ではありません。
そして警官時代の自分に3発の銃弾を撃ち込み、また相棒の警察官を射殺して終身刑を言い渡されたはずの異常者から、彼しか知らないはずの内容を書いた手紙が届き、電話がかかってきます。
刑務所から脱獄したのか?と疑心暗鬼となり、眠れぬ夜が続き、周囲では関係者が次々と殺されていきます。
果たしてこの連続殺人事件の犯人は?というクライマックスへと向かいますが、この手の小説は数多く読んできたので、半分ぐらいのところで裏で糸を引く真犯人がわかってしまいました。ただそこへ主人公がどうやってたどり着くかという楽しみがあります。
★★☆
◇著者別読書感想(スティーヴ・ハミルトン)
【関連リンク】
5月前半の読書 月神、潔白の法則(上)(下)、歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ、怪物の木こり
4月後半の読書 それをお金で買いますか、メインテーマは殺人、漱石先生ぞな、もし、何もかも憂鬱な夜に
4月前半の読書 43回の殺意、汝の名、ジーヴズの事件簿才智縦横の巻、シクラメンと見えない密室、ゴースト
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おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
著者別読書感想INDEX
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月神(角川文庫) 葉室麟
幕末が小説に取り上げられると、そのほとんどは薩摩や長州、新撰組などを中心にするのが定番ですが、この小説では薩摩と長州に挟まれ、尊皇攘夷派と維新派の中で翻弄される福岡藩の武士が前半の「月の章」の主人公です。
そして後半の「神の章」がとても面白いのですが、前半の「月の章」ではチラッと登場する前半の主人公の甥が主人公で、明治政府の官僚として北海道に渡り、新たに北海道開拓に従事させる目的で国内の受刑者を収監する樺戸集治監を設立します。
以前、網走監獄博物館へ行ったとき、明治時代、収監された罪人は過酷な環境で、道路建設などに従事させられ、多くの人が亡くなったという話を知りました。
網走監獄は明治23年(1890年)に釧路集治監の分監として網走囚徒外役所ができたのが最初ですが、樺戸集治監はその9年前の明治14年(1881年)に石狩川の上流部に新たに開拓して建設され、この小説の主人公月形潔の名前からとって月形町として現在も残っています。
その後半の舞台となる樺戸集治監は現在は月形樺戸博物館として残されています。
★★★
◇著者別読書感想(葉室麟)
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潔白の法則 リンカーン弁護士(上)(下)(講談社文庫) マイクル・コナリー
裁判の弁護が成功し、そのお祝いのパーティをおこなったあと、事務所兼移動用として使っている愛車のリンカーンに乗って帰宅していた時、パトカーに停められトランクを開けると中から射殺された死体が見つかり逮捕されるところから始まります。
殺されたのは過去に弁護を担当したことがある詐欺師の男で、主人公ハラーの自宅駐車場で犯行がおこなわれたものとわかります。そしてその殺された男から弁護士費用が支払われず、強い督促をしていたことも犯行の動機だとみなされます。
そして刑務所に収監されますが、裁判では自分の弁護をするために、様々な対策を練ることになります。
面白いのは、単に無罪判決を受けても、それが有罪の疑いが残るような判決ではその後の仕事が成り立たなくなります。
そこで、誰が自分を陥れようとしているのか?実際に殺人の実行犯や指示したのは誰か?など事件の背景を調べ、さらに機密であるはずの弁護方針が漏洩するのはなぜか?など、数々の障害を乗り越えていくことになります。
レギュラー陣の調査員シスコとともに、すでに警察を引退した腹違いの兄弟ハリー・ボッシュも脇役ですが登場し、お得意の推理と行動力で無罪の証明を手助けしていきます。
そして物語の時代設定が、執筆された時と同じ2019年から2020年頃とされ、当時まだ対策がよくわからない新型コロナが徐々に拡がっていく背景が描かれていて、それも敵の正体がわからない不気味さを増大させています。
こうしたリーガル・サスペンスは、日本の司法制度とも違っていて複雑で退屈になりがちですが、展開が早く、細かなところはうまく端折ってテンポ良く読めるのが著者の優れたところです。とても面白く読めました。
★★★
◇著者別読書感想(マイクル・コナリー)
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歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ(中公新書) 磯田道史
埋もれている古書を探し出して解読するのが仕事でもあり趣味でもある著者が、図書館や古書店、由緒ある家の蔵などから発掘してきた古文書を手がかりに、あまり知られてなかった歴史の新しい解釈や発見を披露しています。
我々一般人は、学校の教科書で習う歴史の他、歴史小説や映画、大河ドラマなどで一定の歴史観を持っていますが、教科書に載っている歴史は時代と共に変わっていくのと、歴史小説やそれを原作とする映画やドラマはあくまで著者の想像が多く含まれるフィクションです。
その点、著者など歴史学者は、残された遺物や古い文献、交わされた手紙や命令書などを元に歴史の出来事を解明、推理していくのが仕事です。
特に古文書が多く残っている戦国時代以降は、それまで常識とされてきたことがそうした遺物で解釈が大きく変わってしまうことも珍しくありません。
さらにこの新書が書かれたのが東日本大震災直後ということもあり、歴史学者としては、過去に起きた震災について書かれたものを探しだし、それを未来の災害対策に役立てようとの試みも書かれています。
江戸時代にも過去の経験から津波の恐ろしさがわかっていて、住人が逃げ込める現代で言うところの津波タワーに相当する場所を作ったことが書かれた文書なども紹介されています。
そうした過去に起きた巨大地震、東南海地震を調べるため、2012年には震源地に近い浜松にある大学へ勤務先を変えるなどその行動力には驚かされます。
★★★
◇著者別読書感想(磯田道史)
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怪物の木こり(宝島社文庫) 倉井眉介
2019年に単行本、2020年に文庫化され、2023年にはこの小説を原作とする三池崇史監督、亀梨和也、菜々緒出演の映画が公開されています。
タイトルは、童話(絵本)で出てくる斧を持った木こりが、突然怪物に変わり次々と話し相手を殺して食べていくことを模倣したような怪物の面を付けた殺人鬼が連続殺人事件を起こすところから来ています。
そのシリアルキラーは殺した相手の頭を割り、脳みそだけを奪っていくという習性があり、警察はその謎に迫っていきます。
と、同時に、悪徳弁護士で、自分がそのシリアルキラーに狙われていることがわかった主人公も、その殺人鬼の正体を暴こうと反撃に出ます。
ストーリーは警視庁の女性刑事と、自分自身がサイコパスだと理解している悪徳弁護士の二人の視点で進んでいきます。
日本でも時々サイコパスと思える犯人が起こすシリアルキラー事件がありますが、この小説では殺して脳みそを持ち去るというかなり残虐で突飛な犯行だけに、警察の力を持ってすれば犯人の目的などは容易に調べが付きそうです。しかし殺人鬼と先に対決することになったのは、、、
サイコパス対警察という図式のストーリーは数多くありますが、もうひとつ、サイコパスの弁護士(と友人のサイコパスの医者)が絡んでいるのがユニークで面白いサイコサスペンスでした。
★★☆
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4月後半の読書 それをお金で買いますか、メインテーマは殺人、漱石先生ぞな、もし、何もかも憂鬱な夜に
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3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長
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おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)
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それをお金で買いますか 市場主義の限界(早川書房) マイケル・サンデル
原題は「What Money Can't Buy: The Moral Limits of Markets」で直訳すれば「お金で買えないもの:市場の道徳的限界」となります。日本語タイトルはややあおり気味ですが売れそうなうまいやりかたです。
過去に「ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業」(2010年早川書房)を読みましたが、理解はできるが、結局どうすりゃいいの?と、私なんかは古い日本人の典型で、すぐにハッキリした回答を求めてしまいますが、そうした明確な方向や判断は示されず、「自分で考えなさい」という話なのでモヤモヤが残ったまま早々に頭の中から消し去るようになってしまいます。
現代の市場経済で、「それは道徳的にどうなの?」「法律違反ではないけど汚らわしい」というような問題点をいくつも例に出して、賛否双方の言い分を解説してくれます。
日本でも遊園地の人気アトラクションやいつも行列が絶えない人気レストランで優先的に案内されるファストパスが堂々と高額で売られています。また注目裁判の傍聴券を得るために金で雇われて並ぶのはOKで、人気コンサートのチケットを転売目的で購入して欲しい人に高額で転売する(ダフ行為)のはダメというのはどうして?すべてお金で目的を達することに変わりはないはずです。
余命数ヶ月という重病人の生命保険(死亡保険)を買い取り、生きている間に現金を手に入れられるようにする生命保険の売買(米国では普通にある)では、生命保険を購入した投資家は人の死が自分の大きな利益になるというのは是か非か?
薬物中毒やアルコール中毒の女性が出産すると高い確率で障害をもった赤ちゃんが生まれて大きな社会負担につながることから、そうした女性にかなりの一時金が支払われる代わりに避妊手術を受けるというサービスは是か非か?
などなど、面白い実例がいっぱい出てきます。
確かに市場経済で考えさせられる様々な問題提起ですが、それぞれに考え方がみな立場や人種、宗教観、年齢、所得水準などで違ってくることが多く、「これ!」という回答はなさそうです。
それにしてもこうした道徳問題を得意とする著者に、道徳などゴミくず同然の著者の国のトップ(大統領)に対してどういう感想を持っているのか聞きたいものです。
★★☆
◇著者別読書感想(マイケル・サンデル)
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メインテーマは殺人(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ
原題は「The Word Is Murder」で直訳すると「言葉は殺人」で、「The Word」には言葉以外に発言や命令、知らせなど様々な意味がありますが、日本語訳に付けられた「メインテーマ」という意味はなさそうです。
この作品は「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズの第1作目となり、すでに続編が4作出ています。
「カササギ殺人事件」が大変面白かったので、今回は多大な期待をして読みましたが、その期待を裏切らない面白い推理小説でした。
一人称で語る主人公は本著の作家ホロヴィッツで、探偵ホームズに対してちょっと的外れな相棒のワトソン役です。その探偵ホームズ役は、刑事だった頃にあることがきっかけで辞めざるを得なかった中年男ホーソーンで、ホームズと同様に鋭い観察力の持ち主です。
その探偵役の男は警察を辞めた後も、警察上層部からその特筆すべき才能を惜しまれ、難しい事件が起きると警察顧問として協力を求められ、今回の謎多き殺人事件で声がかかり、さらにその捜査から解決までを小説にしてお互い利益を得ようと、当時多くの警察ドラマの脚本を手がけていた主人公の作家に声をかけることになります。
事件は、あるひとり住まいの裕福な老婦人が、葬儀屋を訪れるところから始まり、その葬儀屋で自分の葬儀の依頼を細かく指示したあと、その夜に自宅で何者かに絞殺されてしまいます。警察は単なる物取り強盗と判断しますが、、、、
「カササギ殺人事件」と比べると至極真っ当な探偵ミステリー小説ということになりますが、事件を追う二人の関係が名声と金で結ばれユニークで面白く、その後の続編も読みたくなりました。
★★★
◇著者別読書感想(アンソニー・ホロヴィッツ)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
漱石先生ぞな、もし(文春文庫) 半藤一利
「日本のいちばん長い日」や「レイテ沖海戦」など太平洋戦争の戦記物小説が多い作家さんですが、その他のエッセイやノンフィクションなども多くあります。
タイトルに使われている夏目漱石は、著者の妻が漱石の孫という関係があり、著者の義理の祖父ということになります。それゆえ、義理の祖父のことや残した作品についてのことをいろいろ調べて書こうと思ったそうです。
漱石が残した小説や手紙、俳句などから、その時代や思想などがよくわかってそれと小説が書かれた時期を合わせると「なるほど」と思えることもありそうです。
漱石が生きた時代は、日清戦争や日英同盟、日露戦争などが起き、日本が富国強兵に力を入れ、まだ文学にはそれほど影響はなかったものの、軍部が政治にも影響を及ぼしつつある時代です。
このエッセイ集では「坊っちゃん」「吾輩は猫である」「草枕」「二百十日」「三四郎」など有名な小説に関するうんちくが取り上げられています。
また「漱石」という雅号の由来や、作家の友人や門下生などの話なども面白く読めました。
ただ、夏目漱石の小説をほとんど読んでない人には、理解できないことが多く、私も漱石の小説の多くは何十年も前の中高生の頃に読んだきりで、もうすっかり記憶になく、意味がよくわからないというものも多かったです。
★★☆
◇著者別読書感想(半藤一利)
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何もかも憂鬱な夜に(集英社文庫) 中村文則
犯罪容疑者は逮捕されるとまずは警察の留置所に留置され、その後裁判で結審するまでは裁判所に近い拘置所で拘置され、裁判で実刑が決まれば刑務所へ送られることになります。3段階があるのは知りませんでした。
この小説の主人公は、親に捨てられ施設で育ち、現在はこの中間の拘置所で刑務官として勤務する男性です。
親と親の愛情を知らず世捨て人のような感情を持ちながら働いている主人公ですが、中学校卒業まで暮らした児童養護施設の施設長の暖かなサポートや、今までまるで縁がなかった音楽や書物などの芸術を教えてもらい、生きていく意味を教えてもらった恩が忘れられません。
そして自分と同じように親に捨てられ、その反動で殺人事件を起こし、遺族やマスコミから「死刑は当然」と決めつけられ、第1審の判決でも死刑を言い渡された収容者のかたくなな心を解きほどいていくようになります。
日本の死刑制度について、死刑を実施する刑務官の厳しさ、死刑の判決が世論などで左右される問題点などの社会問題を鋭く突いています。
一方では、1948年に起きた「一家四人殺傷事件」で死刑が確定したものの、1983年に無罪が確定した免田栄氏や、この小説は2012年出版なので、まだその時点では無罪が決まっていませんでしたが、1966年に起きた一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌氏の再審が実り、2023年に無実が確定し48年間の拘留から解放されたケースなど、えん罪で死刑や長期拘留となる場合があります。
無実で死刑が言い渡されるのは、これ以上ない非道なことですが、過去にはえん罪事件は数多く発生しています。
★★★
◇著者別読書感想(中村文則)
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4月前半の読書 43回の殺意、汝の名、ジーヴズの事件簿才智縦横の巻、シクラメンと見えない密室、ゴースト
3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長
3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる
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ハヤカワ・ミステリー 創元推理文庫 新潮文庫 講談社文庫 角川文庫 集英社文庫 岩波文庫 |
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1834
43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の真相(新潮文庫) 石井光太
2012年に出版されたノンフィクション「遺体:震災、津波の果てに」を原作とした西田敏行が主演した映画「遺体 明日への十日間」が2013年に公開され、本もよく売れていた印象があります。
本著は、2015年に川崎市の多摩川で起きた川崎中1男子生徒殺害事件をルポしたノンフィクションです。タイトルの「43回」とは、殺された中3の少年が友人だった3人にカッターナイフで切りつけられた数を表しています。
当時は同じ川崎市に住んでいることもあり、新聞で読んだぐらいでしたが、その時の印象としては、「不登校で家に寄りつかなかった不良少年が、仲間だった年上の不良少年達を怒らせてリンチを受け殺されてしまった」「川崎市では珍しくない家庭的に恵まれないフィリピン人とのハーフの不良少年たちが仲間割れしての犯行」というものでした。
しかしこのノンフィクションを読むと、話は単純ではなく、もっと複雑な家庭状況や、不良仲間同士の関係性、主犯とされた加害少年の異常な性格や飲酒癖などが掘り下げられています。
ただ残念なことに、主な取材先は離婚後遠く離れた場所で暮らしていた被害者の父親がメインで、被害者少年と一緒に暮らしていた母親や兄妹には話がまったく聞けていなく、本文中にエクスキューズされていましたが一方的な内容の偏りはあります。
また同級生や事件には関わっていない知人の不良少年などにはインタビューができていますが、まだ精神的に幼い未成年のためか、話に信憑性や正確性に乏しい印象があります。中には話が聞きたいなら金を出せという少年もいたようです。
裁判の結果、主犯の少年は9年以上13年以下という判決が出ましたので、2015年から収監されていたため、従犯の二人はもう社会に復帰していて、主犯だった少年も早ければすでに、いずれにしても間もなく社会に復帰してくる頃と思われます。
被害者遺族の気持ちは計り知れないですが、まだまだ長い加害者達のこれからの人生がどういうものになっていくのか、気になるところです。
★★☆
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汝の名(中公文庫) 明野照葉
本著は2003年に単行本、2007年に文庫化、2020年に新装文庫化され、これを原作として2022年にテレビドラマ化されています。
内容は有吉佐和子著「悪女について」や、貫井徳郎著「新月譚」などを見るまでもなく小説やドラマでテーマとなることが多い、女性主人公が肉体や才能を最大限に生かしてのし上がっていくというものです。
働かない同棲男に見切りをつけ、名前を変えて肉体や才能を使って勝ち組エリートを目指していきますが、他の小説と違うのは、主人公が姉妹と称して同居している見かけも思考も対照的な二人いるという点です。
ひとりは美貌と抜群のスタイルで、それで得たスポンサーの協力でタレント派遣会社の経営者です。
もうひとりの主人公は地味で目立たない勤務していた製薬会社を辞め、もうひとりの主人公(タレント派遣会社社長)の高級マンションに同居し家事全般を担っています。
ひとりの主人公が元製薬会社にいたということで、これは薬物犯罪ものだなぁとすぐ想像はつきましたが、その通りの展開です。
仲が良かった二人の関係が、あるエリート男性の出現で崩れていくというのは現実でもよくありそうです。特に女性同士でルームシェアをしている場合、この小説と同様、二人の関係はいとも簡単に崩れていくことは大いにありそうです。
女性の心理描写が多く、高齢のオッサンが読んでも「そんなものか」ぐらいにしか感じませんが、極端な発想の裏表をネチネチ見せられ続けると、面白いと言うより煩わしく思ってしまうのは昭和の人間だからでしょう。
★★☆
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ジーヴズの事件簿 才智縦横の巻(文春文庫) P・G・ウッドハウス
今回の作品は1920年代頃に英国で出版されたものの中から抜粋し、2005年に日本語版として出版した単行本「P・G・ウッドハウス選集 ジーヴズの事件簿」(原題:The Casebook of Jeeves)を、2011年に文庫化する時に、1巻を2巻に分冊したうちの1巻です。
連作短篇集で、時代背景は著者が生きていた時代、20世紀初頭のロンドンで、才智優れたジーヴズという名の執事と、主人たるバーティという名の軽薄な独身貴族青年とのあいだで起きる軽快なユーモア小説です。
収録作品は、「ジーヴズの初仕事」、「ジーヴズの春」、「ロヴィルの怪事件」、「ジーヴズとグロソップ一家」、「ジーヴズと駆け出し俳優」、「同志ビンゴ」、「バーティ君の変心」の7篇です。
分冊されたもう片方は、「ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻」ですが、もう読みたいとは思わないかなというのが感想です。
短篇のユーモア小説ではブラックユーモアのサキ著の短篇集が好きですが、こちらは笑えないつまらない子供向けの漫画でも読むような感じで私には合いませんでした。
★☆☆
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シクラメンと、見えない密室(光文社文庫) 柄刀一
連作短篇集で、収録作品は「傷とアネモネ」、「遠隔殺人とハシバミの葉」、「シクラメンと、見えない密室」、「クリスマス・ローズの返礼」、「オークの枝に、誰かいる」、「おとぎり草と、背後の闇」、「夾竹桃の遺言」の7篇です。
いずれもカフェのママさんとその娘の二人が、相談に訪れた客や、遭遇した事件、事故などで、推理を駆使して難解な事件を解決していくというもので、連作短篇と言うこともあり、内容は軽く、サクッと読むのに適しています。
タイトルからもわかるように、花や樹木の植物をキーとして、その花言葉や由来、伝説などを駆使し、殺人事件や、自殺未遂の謎など、ミステリーを解いていくという変化球のストーリーがなかなか楽しいです。
草木を使った薬学に詳しく、古い知識に詳しく、まるで何百年も前から生き続けているような西洋風の魔女というものが、現代の日本に蘇れば、案外、普通のカフェで店主(ママさん)をやっていたりするという想像も面白い発想です。
★★☆
◇著者別読書感想(柄刀一)
∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟ ∟
ゴースト(朝日文庫) 中島京子
著者は1964年生まれ、2003年に「FUTON」で作家デビューされ、2010年には「小さいおうち」で直木賞を受賞されています。
各短篇は各個別の小説で、いずれもゴースト(幽霊)がモチーフとなっていますが、中にはゴーストライターのような幽霊とは言い難いものまで含まれています。
一番良かったのは「ミシンの履歴」で、戦前から酷使されてきたミシンが主人公で、その時々の女性達がそのひとつのミシンをよりどころに生活していく姿が目に浮かんできます。
というのも、私がまだ幼かった頃には、足踏みミシンが2台自宅にあって、父親も母親もそれを自在に使えたことや、そのミシンで衣服を縫ってもらったりしたことをかすかに覚えています。
あの無骨ながらも凜々しく思った蛇の目だったかシンガーだったか忘れましたが、足踏みミシンが、あの当時の女性が内職をして生活の糧を得る方法だった時代を思い出しました。
★★☆
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3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長
3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる
2月後半の読書 女ともだち、始まりはジ・エンド、もう過去はいらない、ユタと不思議な仲間たち
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1832
サイコパス(文春新書) 中野信子
私には元財務官僚で弁護士、同じようにテレビのコメンテーターとしても活躍している山口真由氏と見分けがつかないことが時々あります。頭の良いインテリ女性は似てくるものか、それとも単に私がボケてきているのかも。
私もそうですが、一般的にサイコパスというと、小説や映画で有名な「羊たちの沈黙」などに出ていたハンニバル・レクターのような「知能レベルが高く凶悪犯罪を良心の呵責もなく平然とやってのける人」というイメージを持ちますが、この著作を読むと決してそうとばかりは言えなさそうです。
例えば、詳細な検査もしてない状態で現代の人を名指しで「この人はサイコパシー(精神病質)」と決めつけることはできないでしょうけど、過去の偉人と言われる人でも、その日常的なふるまいや、対人関係、異性関係、言動、周囲の人の話しなどから、ある程度はサイコパシーが特定できるようです。
事例としては快楽のために単独で連続殺人事件を起こしたような人や、事件は起こしていなくても突出したプレゼン能力や人を魅了する対人コミュニケーション能力などで、多くの他人を引きつける魅力がある人などです(他にも諸々条件があります)。
つまりサイコパスと言っても、イコール凶悪犯罪者という意味ではなく、人類が進化してきた中である一定の必要とされる能力の持ち主、つまり危険を顧みず見知らぬ場所へ進んで冒険し、先頭に立って敵と戦い、多くの仲間をまとめ上げたりする極めて特殊な役割がありました。
ただ同時に反社会的で、スリルを求め、自分を攻撃する(自分の利益を阻害する)相手には容赦がなく、被害を受けた他人の心を思いやることができないという性質も持ち合わせています。また現代の裁判で犯罪が起きた理由をすべて他人のせいにするのも特徴です。
本著ではサイコパスと思われるのは日本で言えば織田信長、中国の毛沢東、オーストリアのマリア・テレサ、アメリカのJ・F・ケネディやスティーブ・ジョブズなどが挙げられています。
その他、実名には上がっていませんが、サイコパスが多く含まれる職業として、最高経営者(ワンマン経営者)や政治家、弁護士、外科医、トレーダーなどです。逆に言えばそのような職業にはサイコパスが向いているとも言えそうです。
世界各国の精神科医や脳科学者などがサイコパスの特徴や見分け方、治療方法について研究をしていますが、日本ではあまり聞いたことがなく、どちらかと言えば欧米人特有の問題という意識がありました。
サイコパス性のある人の発生率はやはり欧米に多いようですが、アジア圏はそれよりは少ないながら人口の1%ほどにはサイコパシーとみられる病質があることがわかっているそうです。
弁説爽やかで人たらし、人間としての魅力はあるけれど、自己利益のためには手段を選ばず、他人の痛みや苦悩は理解できず関心がないなど、サイコパスの条件をいくつか挙げていくと、「あぁ、あの人、、、」と誰でも数人が思い当たるでしょう。それだけ身近に感じられるようになったのが本書です。
★★☆
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高慢と偏見(上)(下)(ちくま文庫) ジェイン・オースティン
著者が生きた時代は英国で産業革命(石炭を利用したエネルギー革命)が発生した時代とほぼ同じですが、まだその恩恵は高価な産業機械などに限られていて、貴族でも移動は自動車などはまだなく、乗馬や馬車という時代です。
時代は違いますが谷崎潤一郎の「細雪」の英国ヴァージョンっていう感じで、細雪は4姉妹、こちらは5姉妹の恋愛物語とも言えます。
本著は著者が20~21歳の頃、1796年から1797年に書かれたもので、その時は出版を断られましたが、その後手直しをして1813年(38歳頃)に出版されたものです。とても20歳の女性が書いたと思えないほどの熟練さが感じられる物語です。
過去に3度、1940年、2004年、2005年に映画化され、1995年にBBCでドラマ化、日本では2012年に宝塚でミュージカル化、そして2009年には望月玲子によってコミック化もされています。
タイトルは原題が「Pride and Prejudice」で、ほぼ直訳です。
その「高慢」は、働かないことが美徳である裕福な貴族達の振る舞いを指し、そうした貴族と付き合う中で生じた主人公女性の貴族に対する偏見のふたつをうまく取り上げています。
最初はタイトルから難しそうな小説かな?と勝手に想像していましたが、全然そう言うことはなく、どこにでもよくいそうな噂話や痴話話などが大好きな女性達が中心で、当時の未婚女性達はお金持ちでできれば身分の高い男性に見初められることが最大の目的で(今もあまり変わりないけど)、舞踏会やお茶会などには着飾っていそいそ出掛けていく風景が目に浮かびます。
若い女性からみた英国の貴族社会と、紆余曲折を乗り越えてハッピーエンドに向かっていくという、当時の女性達にはたまらない魅力ある小説だったと思います。
ただ著者自身は一生結婚することがなかった人生でした。
★★★
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少女(双葉文庫) 湊かなえ
2016年には三島有紀子監督、本田翼、山本美月、真剣佑などの出演で映画が公開されています。
主人公の二人の女子高生が、転校生から友人が自殺をしてその死体を見たという話から、自分も知っている人が亡くなるところを見てみたいという欲求が強くなります。
ひとりは学校から補講として命じられた高級老人ホームの手伝いへ、ひとりはボランティアで話聞かせをするため病院へ行き小児科の入院患者と接するようになります。
いろんなところでそれぞれにつながっていて、内容的にリアリティにはまったく欠けますが、話としては面白く、よくできた物語として読むことになります。
外から見ていると、いつもつるんでいて自主性が乏しそうにみえる若い女性が、主人公達のように、ひとりで様々な行動を自主的に起こすというのが最近の人?っていうのはなにかモヤモヤします。
いずれにしても最近の女子高生のことなんかさっぱり理解不能なオヤジには、どこか違う時代と世界の話みたいで、読んでいて気恥ずかしささえ感じました。
★★☆
◇著者別読書感想(湊かなえ)
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寝ぼけ署長(新潮文庫) 山本周五郎
収録作品は、1946年から1947年に小説雑誌に連載された「中央銀行三十万円紛失事件」、「海南氏恐喝事件」、「一粒の真珠」、「新生座事件」、「眼の中の砂」、「夜毎十二時」、「毛骨屋(けぼねや)親分」、「十目十指」、「我が歌終る」、「最後の挨拶」の10篇です。
地方の警察署署長として赴任してきた、いつも寝ぼけ眼で、仕事のないときには机でうたた寝をしていることから周囲からは「寝ぼけ署長」と呼ばれています。
主人公はその警察署長ですが、語り手はその署長の秘書?なのか同じ警察官舎に住んでいるワトソン役とも言える人物です。
様々な事件や問題が持ち込まれますが、犯罪者に対しても人情味ある解決策をとる場合もあれば、権力を笠に着た悪人に対しては、根回しをした上で脅しのような圧力をかけます。見かけの寝ぼけ署長とは違い、事件が起きるとなかなか爽快な内容です。
こうした見かけ上は「デキる人」と比べて平凡かそれ以下な雰囲気でも、事件を見事に解決するという意外性を見せてくれるのは、「刑事コロンボ」など以外にもよく使われる手ですが、この時代(1946~1947年)だと同じ1946年に登場した横溝正史著の金田一耕助シリーズ第1作目「本陣殺人事件」と同時です。
内容は、お金の単位に「銭」や、貧民長屋などが出てきて、時代を感じますが、発想が面白く楽しく読めます。
★★☆
◇著者別読書感想(山本周五郎)
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