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空飛ぶタイヤ (上)(下) 池井戸潤
2002年に神奈川県で起きた三菱自動車工業(三菱ふそう)製のトラックのタイヤが走行中に外れ、それが親子を直撃した死亡事故がテーマになっています。事故が起きた当時はそのトラックを使用していた運送会社の整備不良と報道されたのを私は記憶していますが、その後メーカー(三菱)が車輪を固定するハブの耐久性に問題があることを知りつつ、多額の損失を避けるためリコールの届け出をおこなわず、事故が起きるたびに「整備不良」として使用者に責任をなすりつけ、国交省へもそのように報告をしていた「三菱自動車によるリコール隠し」だったことが明らかになっていきます。
 
小説の主人公は事故を起こした零細な運送会社の社長で、調べていくうちに事故の責任が自動車メーカー側にあるのではと思いますが、被害者から責め立てられ、警察からは家宅捜査を受け、大口の取引先からは取引停止を宣告され、しかも事故の原因となった証拠品の返還要求をしても、メーカーからは無視をされ、社業が追い詰められていきます。
 
そして他にも同様な事故が起きていることを突き止めていくのですが、傲慢な大企業(グループ)は責任を認めず、零細企業いじめが続き、いよいよ倒産の危機に瀕していきます。メーカー(三菱自動車工業)は2000年にもバスやトラックの不具合のクレーム隠しを指摘されていて、当時大きな問題となり、社長も交代し反省をしたはずなのですが、結局は組織の論理で同じことを繰り返します。
 
この小説は2009年にテレビドラマ化されましたが、さすがに巨大な広告スポンサーでもある三菱グループを敵に回すことは地上波のテレビ局にはできるはずもなく、制作と放送は視聴者課金のWOWWOWで、視聴者も限られるため大きな反響はありませんでした。ドラマのDVDがあるようなので、今度見てみたいと思います。
 
小説では神奈川県警が業務上過失致死を視野に入れ、メーカーに対して家宅捜査、上層部を逮捕し、危機にあった運送会社には責任がなかったことがわかり、救われるところで終わります。
 
現実の裁判の行方は、三菱自動車の元部長ら2人が業務上過失致死傷の罪で起訴され、一、二審で有罪判決を受け、現在まだ上告中です。つい最近2010年3月9日には最高裁で道路運送車両法違反(虚偽報告)で元会長、常務など3名の有罪が確定しました。
 
上記のタイヤのハブ不良以外にも同様に組織ぐるみで隠蔽していたクラッチ系統の欠陥が原因で、2002年に山口県で起きた死亡事故では、河添克彦元社長や宇佐美元副社長ら4人が業務上過失致死罪で、すでに執行猶予付き有罪判決が確定していますが、このように悪あがき的に罪を認めず、反省がないところがいかにも旧態依然の財閥系大企業で、小説なのでデフォルメされたり、人物の特定はできないようになっているでしょうが、あることないことを書かれてしまい、この先もずっと悪役として残ってしまうことになりました。三菱の関係者は子供や孫にはとても読ませられないでしょうね。
 
 
人間の器量  福田和也
ほぼ私と同世代の福田和也氏執筆になる新書ですが、先に売れそうな本のタイトルが決めてから、自分の価値観だけで特別な知識をひけらかすように書いたとしか思えない本です。ほとんど聞いたこともない、著者が偉いと信じている古い人の話しがいくつも出てきますが、書いてある内容を読む限り器量と呼ぶにはお粗末すぎて、そういうテーマで取り上げる値打ちがあるとは思えません。
 
どうも学者様によくある独特の狭い視野だけで書いた偉人伝とでも言うべきもので、多くの人の共感は得られないでしょう。と思いながら、それってもしかして私だけ?と、他の人の感想が気になってAmazonの書評を見てみると、やっぱり厳しい意見が書かれていました。タイトルに釣られて中身も見ずに買ってしまった私がバカでした。しかもそれを黙って許すことができない器量の小さな私です。
 
 
風の呪殺陣  隆慶一郎
時代の寵児織田信長に翻弄され、仲間や家族を殺され、信長殺害の謀略を密かに立てる僧侶や武士などに焦点をあてた信長を中心に置く戦国時代物語です。この信長という人物は見る側によって、姦雄にも英雄にも天才にも極悪非道にもなります。それだけ影響力が大きかったということなのでしょう。
 
あと1571年の信長による比叡山延暦寺の焼き討ちと大殺戮については結構詳しく書かれていますので、これから比叡山や延暦寺へ行く方は、事前に読んでおくと、風光明媚でいい眺めだと言うだけでなく、440年前の不幸な出来事や比叡山で修行する僧侶達のことが少しわかって役立つかもしれません。
 
あの優雅な比叡山で3000名とも言われる僧侶(中には学僧や僧兵も)や子供を含む民間人が皆殺しにされ、首を切り取られ、長い間誰も山に入れずにそのままに放置されていたと言う話しを読むと、霊山という意味でもまた違って見えてきます。
 
ただ問題はこの本が出版されたのが今から18年前で、一般の書店にはまず置いてないことでしょうか。
 
 
高城賢吾シリーズの4作目です。作家は自分がその業界にいて詳しい、同じ小説家や出版社の編集者などを登場人物やテーマにして物語を作ることがよくありますが、今回は売れっ子のミステリー作家の失踪捜索がメインの話しになっています。同時に相棒の女性刑事が偶然被害にあった火災爆発事故とが複雑に絡み合った内容になっています。
 
なにも考えないで気軽に読む分にはたいへん面白いのですが、あまりに偶然やタイミングよくというのが多く「ありえねぇ」というリアリティのなさは、この著者のいつもの特徴で、ちょっと最近ワンパターン化して飽きてきた感があります。この作家は多作なので、私も書店に並ぶとすぐ買ってしまい、読み過ぎなのかもしれません。
 
もしかするとこの筆者は、この小説に出てくる失踪してしまうミステリー作家と同様、本当に書きたいものが書けずに日々悶々とし、編集者や読者から売れそうな作品ばかりを期待されることに、ヘキヘキしているのかも知れません。専業作家も芸能人と同様で、超大物以外は世間から忘れ去られるとただの人になってしまいますから、自分の好き勝手ができないのもわかります。でも願わくば1年に1冊でいいから会心と言える小説を書いてもらいたいものです。
 
なんでもこの著者の前の刑事シリーズ小説「刑事・鳴沢了」が、フジテレビ系列でテレビドラマ化(放送時期未定)されることが決まり、主演の鳴沢了には坂口憲二とか。う~ん、ちょっと軽すぎて、できれば大沢たかおか佐藤浩市のほうがいいのだけども、、、
 




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