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介護退職 (祥伝社文庫) 楡周平

Cの福音」のようなダークヒーローものから、どこにでもいるサラリーマンが直面する社会の問題を描いた「ラストワンマイル」や「プラチナタウン」のようなビジネスマンものまで幅広くこなす著者ですが、この作品もタイトルをみればすべてがわかってしまう「親の介護」と「それにともなう会社との関係」を描いた現代サラリーマン悲哀物語で、2011年に単行本、2014年9月に文庫化された作品です。

主人公は50を少し回ったばかりの大手家電メーカー管理職で、アメリカへの本格進出を図るべく忙しい毎日をおくるサラリーマン。家には妻と息子の三人家族、自宅マンションのローンがあり、どこにでもある都会の風景です。

そして私立中学校を目指す頭のいい子供、子供の教育に熱心な専業主婦の妻、自分は超大手有優良企業に勤務し、年収は1千万円超えという、公私とも順風満帆な、普通の人にとってはめちゃ羨ましい限りの暮らしぶりです。

しかしその主人公には、秋田の実家でひとり暮しをしている母親がいて、その母親が雪かきの最中に転んで骨折をしたという知らせが飛び込んできます。父親はずっと以前に病気で亡くしています。

この母親の怪我から始まり、主人公とその家族に、様々な試練が訪れることになりますが、考えてみると地方に年老いた親を残して都会で暮らすすべての人にとって他人事ではないストーリーです。

少し前に「仕事と介護の両立という難題」という記事を書きましたが、まさにこの主人公は職場で「介護のため休みたい」とは言えない「隠れ介護」の立場に立たされます。

この主人公の妻は、母親の介護と子供の受験のストレスで倒れてしまい、主人公が母親の介護をするしかなくなります。そして、介護のため会社を休みがちになった主人公に対し、上司が言い放ちます。

「会社は無尽講のような相互扶助を目的とする組織じゃない。与えられた職務を果たすことができないとなれば、誰かにその役割を移さなければならないものだ。そして何より優先されるのは個人じゃない。組織、ひいては会社の利益だ」

「仕事も介護も、どちらも大変だ。一つでも全力を尽くさなければ全うできないものを、君一人でやっていくのは不可能だ。そして仕事には引き継ぐ人間がいるが、介護、ましてや面倒を見るのが親ともなればそうはいかない。このまま無理をして今度は君が倒れたんじゃ、お母さんの面倒は誰が見る。家族はどうなる。状況をよく考えることだ。」

母親と、その介護ストレスで倒れた妻の二人の介護のため、しばしば会社を遅刻したり早退する主人公に対し、上司の正論たる警告がサラリーマンにとってはズシリと重く響くことでしょう。


沈黙の画布 (新潮文庫) 篠田 節子

2007年から2008年にかけて日経新聞夕刊で連載されていた小説で、2009年に「薄暮」として単行本、その後改題されて2012年に文庫化されています。

著者は大学を卒業後、八王子市役所に10数年間勤めていたという作家としては地味で変わり種の方ですが、デビュー後は新人賞など順調に賞を重ね、1997年には「女たちのジハード」で直木賞を得ていますので、元々文才のある優れた方なのでしょう。

主人公は大手の出版社で元々美術雑誌を担当していた中年男性で、廃刊になったために別の編集部へ異動しますが、美術への関心は薄れず、かつて新潟で創作をしていたという無名作家の作品集を手掛けることになります。

絵画の世界は素人には理解できない複雑怪奇な世界で、子弟制度や日展審査の腐敗、売買に関わる闇の世界、著作権など様々な利権や慣習がはびこっています。

そうした中で、絵画で食っていける人の数は、おそらく芸能や音楽で食っていける人よりもずっと少ないはずで、バブルの時でもなければ、大きなスポンサーがついていたり、実家がとても裕福であるとか、特殊な才能以外に恵まれた環境でなければなりません。そういうことから今後日本で藤田嗣治や横山大観、東山魁夷、平山郁夫と言った世界で認められる大画家はもう出てこないのかも知れません。

この作風からすると、旅とうんちく話しがやたらと多い宮本輝氏の作品を読んでいるような感覚を受けます。著者の作品は「絹の変容」「弥勒」など4冊ほど読んでいますが、これは日経新聞の連載と言うこともあって、主要読者の男性中高年者向けに少し地味な味付けにしているのかなという感じを受けます。


東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫) リリー・フランキー

 
2006年の著書ですが、本屋大賞にも選ばれ、ドラマや映画にもなり、大ヒットしたことはよく覚えています。天の邪鬼ですが、そうした読む前にあまりにも有名になった本はその時には読みたくないのです。しばらく経って忘れられてきたことにこそっと読むようにしています。

読み進めると、先日読んだ島田洋七著「佐賀のがばいばあちゃん 」と雰囲気が似ているなぁって思わなくもありません。有名人の貧乏な子供時代と、破天荒な祖母や母親、父親などを面白おかしく描くことで、小説としての人情噺の出来上がりってヤツです。

著者は1963年生まれということは私よりも6年あとで、子供の頃の描写では、流行や子供の遊びなど、かなり違っているはずなのに、結構似ていたりして驚きです。

調べてみてわかったのは、子供の遊びが大きく変化したのは1983年に発売されたファミコンが出てきて以降からなんですね。1983年以降に小学生だったという人は、1971年以降の生まれで、現在なら40歳前後の人達にあたります。それまでの小学生の遊びは似たり寄ったりで1970年前後生まれかどうかで分かれるようです。

さて内容は炭坑の街、筑豊での祖母との生活や小倉での母との生活、出ていって滅多に帰ってこない父親との話しなど、子供時代の話しが半分。後の半分は、大分の高校を卒業し、東京へ出て美大に入ってから癌と闘病する母親を東京に呼び、苦心しながらも生活の基盤を作っていく姿などが描かれています。

タイトルにもなっている東京タワーは後半にならないと出てこず、このタイトルはどうなのよ、と思わなくもないですが、主人公のひとりでもある母親が、病棟からジッと眺める東京タワーを象徴的に使いたかったのだろうなぁと。

今では高校と大学で学んできたデザインやイラスト以外にも、音楽家や俳優などでも活躍し、そのいずれもが高い評価を受けているマルチタレントの著者ですが、30歳ぐらいまでの長い極貧生活とちゃらんぽらんな性格は、それでもちゃんと生きていけて、しかもチャンスをものにして才能が開花するんだと元気をもらうことができます。

どこまでが真実で、どこからが創作かは本人しかわかりませんが、小説として出した以上、それなりに脚色はしてあるはずで、そのまますべてを信じることはできないものの、まったくすべてを創作された小説にはない生々しさや、主人公の身勝手さや葛藤などが前面に出ていて、読む人を圧倒します。なるほど多くの人に支持されるいい作品だと思います。


わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) カズオ・イシグロ

著者は1954年生まれ長崎県出身の日系イギリス人作家で、5歳の時に父親の仕事の関係で渡英し、そのまま英国に帰化した方で、三作目の「日の名残り」(1989年)は英国で最高の文学賞ブッカー賞を受賞しています。

 
この作品は著者の6番目の長編小説で2005年に発表、2006年に日本語訳版が発刊されています。また2010年には映画化され、日本でも2011年に公開されています。

小説の前半は英国独特の全寮制学校と思えるようなところで、学んでいる生徒達の日々の生活が綴られています。思春期の少年少女達の日々の生活ですから、面白いと言えば面白く、淡々として平易と言えば平易な文章が続きます。

しかし、中盤あたりまでくると、どうもこの少年少女達は、世間から隔離された、親のいない特別な少年少女だということが段々とわかってきます。

詳しくはネタバレになるので書けませんが、決してSFやホラー、ミステリーとも違う、なんというかテーマは重いのですが、純文学に近いものと言っていいでしょう。

主人公はキャシーという女性で、病人の介護をしている現在から、一気に過去の全寮制の生活へと飛びます。

そこでは教師とのふれあい、同級生や先輩との友情や恋愛など、繊細で壊れそうなどこにでもいる心が不安定な少年少女達で、前半だけを読むと青春ドラマかと思ってしまいそうです。

タイトルの「わたしをは離さないで(Never Let Me Go)」は、主人公がまだ少女の頃に寄宿舎で手に入れたカセットテープに入っていたお気に入りの曲のことで、それをひとりで聞いて無邪気に踊っている姿を、ジッと見つめていた教師が、なぜか涙を流しているのを見てしまいます。

本来なら深夜に音楽を聴いていて怒られると思っていたのに、涙を流していたということが、強く印象に残り、やがてはそのカセットは盗まれてなくなってしまいますが、大人になってから、中古品の店で見つけます。

その教師もやがては学校からいなくなり、そして主人公達がなぜ集められて生かされているのか、誰のために生きているのか、自分達は誰の子供なのかなど、やがて明らかになっていきます。


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