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今までも繰り返し書いてきていることですが、非正規雇用の割合が全就労者の4割を超えてきたことで、相変わらずマスコミ等の論調では「非正規≒派遣」「若者の非正規が増えている」と言った誤った情報や、なにか悪意さえ感じる意図的な操作、偏向報道がよく見られます。

そうした誤った情報の元で、「派遣が非正規就労増加の元凶」とか「派遣会社が搾取」とか、「高齢者の搾取で若者が正社員になれない」とか「学校卒業しても正社員になれない」といったような、知識を持たない人が歓喜?して記事を読んでくれる刺激的な打ち出し方をしたがります。

まず、非正規社員というのは、一般的にはパートアルバイト、契約社員、派遣社員、嘱託などのことを言いますが、その割合は下記グラフの通りです。


 出典は総務省「労働力調査」

見てわかるとおり、非正規社員(就労)で多いのはパート(48%)、アルバイト(21%)、契約・嘱託(21%)で、これらだけで非正規の90%を占めています。派遣社員は非正規の中ではわずかに6%しかなく非正規の1割にも満ちません。したがって派遣労働が非正規就労を代表するかのような表現は、キャッチーで刺激的ではありますがまったく現実を見てなく、正しくはありません。

パート、アルバイト、契約、嘱託という雇用形態は、雇う側(企業など)との直接雇用が基本です。つまり非正規問題は派遣会社がどうとかという問題ではなく、雇う企業と雇われる人との関係性における問題なのです。

いくら派遣会社を糾弾して、派遣社員の半分を正社員同等にしたとしても非正規全体の3%の改善にしかつながりません。それなら同じ労力を使って、パートやアルバイト、契約社員、嘱託の直接契約のわずか10%を正社員同等にするだけで全体の9%の改善となり、明らかに効果は高くなります。

「しかし派遣は最近急速に増えているから」という間違った情報もよく聞きます。



派遣が増えたのは規制緩和が進んだ2000年代初頭から中盤までで、ここ5年間を見ると11万人(10%増)の増加です。最近非正規で増えているのは、圧倒的にパートで、5年間で126万人(15%増)の増加、契約・嘱託も88万人の増加(27%増)で、派遣と比べると何倍もの人数が増えているのがわかります。非正規の派遣が増えていることを憂慮するのなら、その10倍、非正規のパートや契約・嘱託が増えていることを憂慮すべきです。

次に非正規社員の年齢別推移を見ます。世間でよく言われる「若者の非正規化が増えている!」について検証してみます。



グラフを見ると、若者と言える肌色(24歳以下)と赤(25~34歳)の折れ線グラフは、2000年頃までは急速に増えてきていましたが、この10年間(2004年~2014年)を見ると、横ばいか、やや下がっている傾向にあります。

つまり「若者の非正規社員は横ばいか減ってきている!」というのが正解。ならば若者の最近の貧困化を非正規だからという論評も当たらず、正社員であっても貧困なのであれば、それは物価や、賃金の問題ということになりそうです。

2004年以降も非正規社員数が増え続けている35歳以上(若者と言うにはちょっと無理がある)であれば、「非正規が増えて貧困化が進んでいる!」というのならばまだわかります。

この年代は以前なら結婚して子育て中という夫婦が多かったのですが、晩婚化や結婚しない人の増加など(逆に言うと非正規で収入が少なく結婚できない・しない)という状況がみられ深刻です。

特にこの年代を非正規で過ごすと、その後の中高年になっても正社員になれる可能性は低く、ちまたよく言われている「下流老人」(生活保護水準以下の収入しかない高齢者)へと向かう可能性が高いのです。

同じく非正規社員の年齢別を積み上げグラフにした推移(下記グラフ)をみるとよくわかりますが、若者層15~34歳は微減、中年層35~54歳は微増、55歳以上は急増と3つに分類されます。



統計は自分の都合がよいところだけをうまく使うことで、自己主張を裏付けることによく利用されたりします。「非正規が増えている」というのは事実ですが、それも中身をよく見ることが重要です。

例えば非正規が増える要因として、専業主婦(夫)だった人が、主たる世帯主の収入が増えないことで、家計の補助としてパートやアルバイト勤めに出れば当然非正規の人数が増えます。

また60歳以上の高齢者雇用が企業に義務化されたことで、今まで60歳で定年となり仕事をしなかった人が、60歳以降も嘱託として引き続き勤務するケースがここ数年で一気に増えました。これも非正規を大きく増やす要因と考えられます。

今までは働かなくても親の仕送りだけで過ごせた学生も、最近の学費の高騰と親の収入減少で、アルバイトをして学費や生活費を稼ぎながら学校へ通う人が増えています。それも非正規を増やす一因となっているでしょう。

これらの非正規の上昇は、一家の主たる収入元である世帯主が非正規になるのとは違い、直接「非正規=貧困化」という構図では考えられません。

非正規と貧困化とをひもづけをするならば、生産人口である世帯主の非正規化がどうなっているか、その収入はどう変化したか、そして非正規として多い、パート、アルバイト、契約社員、嘱託の賃金や制度について考えないと非正規問題は解決しないのではないでしょうか。

これらのことから、最初に書いた「非正規≒派遣」「若者の非正規が増えている」というのが根も葉もない戯れ言だということは多くの人に知っておいてもらいたいことです。そのような報道や記事、コラムを見ると、それを書いた人やメディアは意図的であるかどうかはともかく「平気で嘘をつく人(メディア)」と認識しておく必要があります。

2008年暮れに「年越し派遣村」と称して、多くの派遣社員ではないホームレスの人を集めた自称社会運動家がマスメディアに名乗りを上げましたが、彼は自分で盛り上げた「派遣≒悪」のブームが去ったとみるや、さっさと身を引いて、今は新たな流行となってきた「下流老人」をターゲットとした「反貧困」をテーマとしたプロジェクトで話題を作り、多くのメディアに露出しています。

さすがに人のふんどしでうまく相撲を取る名人、流行に敏感で、売名行為にめざとい人です。いずれ時が来れば売れた名前を利用して政治家になるのでしょう。尊敬や共感はできませんが、その身軽で薄っぺらなな生き方にはいつも感心しています。


【関連リンク】
890 非正規問題の真実
804 高齢就業者と非正規雇用
717 非正規から正規雇用への転換策
707 ハローワークは非正規職員のおかげで回っている
697 非正規雇用拡大の元凶が人材派遣だって?




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