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発表が今年5月でしたので、ちょっと遅まきながら、毎年楽しませてくれる内閣府の「高齢社会白書(平成28年度版)」の話題をかいつまんで少しだけ。

毎年同じ質問で定点観測している項目と、その時々で聞いている質問があります。

まずは定点観測している高齢者人口など「高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向」の概要を上げておきます。

出典:内閣府 高齢化の状況
(クリックで拡大)
総人口は、2015年10月1日現在、1億2,711万人、65歳以上の高齢者人口は3,392万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は26.7%となっています。

一方、生産年齢人口(15~64歳)は、1995年に8,716万人でピークを迎え、その後減少に転じ、2013年には7,901万人と1981年以来32年ぶりに8,000万人を下回りました。

労働者数が減ってきているのに、それほど社会で騒がれていないのは、経済が相変わらず低調であることと、定年延長や雇用延長で、今まで引退していたはずの多くの高齢者が非正規として働いていることも影響しているのでしょう。

65歳以上の高齢者人口と15~64歳人口の比率をみてみると、1950年には1人の高齢者に対して12.1人の現役世代がいたのに対して、2015年には高齢者1人に対して現役世代2.3人になっています。もの凄い社会の変化を実感できる数値です。

65歳以上の一人暮らし高齢者の増加は男女ともに顕著であり、1980年には男性約19万人、女性約69万人、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%でしたが、2010年には男性約139万人、女性約341万人、高齢者人口に占める割合は男性11.1%、女性20.3%となっています。男性高齢者の1割、女性高齢者の2割が1人住まいなのですね。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

次に、今年度版に加わった「国際比較調査に見る日本の高齢者の意識」について触れておきます。こちらの調査は5年置きにおこなっているそうです。

1)50 代までに行った老後の経済生活の備えについて、「特に何もしていない」と回答する高齢者の割合は、日本は42.7%に対し、アメリカ20.9%、ドイツ26.1%、スウェーデン25.4%です。

一見すると「老後の備えをしなくても日本は退職金や年金など制度や社会保障が充実しているから」ともとれますが、日本より社会保障制度が充実しているスウェーデンでも7割以上の人が経済的な備えをしているのに、日本人は脳天気過ぎます。

ひとつには若い頃から「老後の備えをしよう」という教育がまったくなされていないことが原因で、先のことは知らない、今が楽しければいい、老後のことは自己責任、いざとなれば生活保護に頼ればっていう刹那的な現状があるのでしょう。

その証拠に、「貯蓄や資産が老後の備えとして足りない」と考える高齢者の割合(「やや足りない」と「まったく足りない」の計)は、日本が57.0%と最も多く、アメリカ24.9%、スウェーデン18.9%、ドイツ18.0%と大きく差があり、「なにもしてこなかった」から「足りない」という当然の結果が出ています。

2)「収入を伴う仕事をしたい(続けたい)」とする高齢者の割合は、日本が44.9%と最も多く、次いでアメリカ39.4%、スウェーデン36.6%、ドイツ22.7%となっています。

高齢になっても働きたい働き蜂の面目躍如!と言いたいところですが、収入の伴う仕事をしたい主な理由としては、日本とアメリカは「収入が欲しいから」、ドイツとスウェーデンは「仕事が面白いから」と、老後の備えが心細い切実感が漂ってきます。

3)友人・知人との交流について「相談事があったとき、相談したり、相談されたりする」と回答した割合は、ドイツ48.3%、スウェーデン31.2%、アメリカ28.3%に対して日本は18.6%と一番低く、「病気の時に助け合う」と回答する割合は、ドイツ31.9%、アメリカ27.0%、スウェーデン16.9%、日本5.9%とこちらも低くなっています。

つまり日本の高齢者の知人との交流は極めて限定的、かつ病気になっても家族や公的機関に頼ることはあっても友人や知人には頼まないという傾向が他の国より見て取れそうです。

確かに一般的に高齢になると面倒くさくなって社交性は失われてきますが、各国の若い人に同じ質問をして、高齢者特有のことなのか、それとも国民性みたいなものなのかは不明です。

オレオレ詐欺やうまい投資話、高価な羽毛布団やリフォーム詐欺など、高齢者をターゲットにした詐欺事件が頻発していますが、これはひとえに「高齢者はお金を持っている」&「高齢者は騙しやすい」の2つが詐欺犯にとって狙いやすい要因です。

そして「高齢者が騙されやすい」のは、「人に相談したり、親切な人を疑ったりしない」ことによるものでしょう。

4)総合的にみて、「現在の生活に満足しているか」尋ねたところ、現在の生活に満足している高齢者の割合(「満足している」と「まあ満足している」の計)と回答する割合は、スウェーデンが97.1%、アメリカが95.2%、ドイツが91.9%といずれも9割を超えていて、日本は88.3%とやや低くなっていますが、それでもザックリ9割の高齢者が概ね満足しているという結果です。

スウェーデンはさすが高齢者にも優しい社会保障先進国ですが、貧富の格差が大きいと言われているアメリカでも高齢者の95%が満足しているというのには驚きます。

堤未果さんの「ルポ 貧困大国アメリカ」なんかを読むと、アメリカの社会保障制度は無茶苦茶でたいへんなことになっているという感じですが、果たしてどっちが真実なのかわからなくなってきます。


【関連リンク】
967 平成27年度高齢社会白書を読む
780 あらためて高齢社会白書を概観してみる
733 高齢者の地方移住はこれからも進むか
706 高齢化社会の行方
574 仕事を引退する時、貯蓄はいくら必要か

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