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私が新入社員だった40年前、いやそのずっと前から、割と最近まで営々と続いてきた会社や役所の慣例みたいなものがあります。

4月に一斉に新入社員が入ると、外からかかってくる電話をその新入社員達が真っ先にとって、説明をしたり、担当へつなぐとのが当たり前の仕事になっていました。

新人に電話を取らせるのは、

1)まだ仕事が少ないので一番手が空いている
2)社外や社内の関係者の名前を覚えることでその後の仕事に役立つ
3)学生時代とは違うビジネス言葉の使い方や礼儀作法を実践で学ぶ
4)外部の人と話をすることで会社の業務内容や外部の意見などに詳しくなる
5)引っ込み思案な人でも積極性が養われる

など、多くのメリットがありました。

しかし、1990年代後半頃から、業務の連絡には電子メールが普及してきて、電話で話しをするという機会が相当減ってきています。

また企業も業務の効率化を進め、社員の生産性を上げていくために、できるだけ電話でのやりとりを減らしていくようになり、「問い合わせはフォームから」とか「メールでお問い合わせください」のようなスタイルが定着しています。

中には業務集中時間と称して「何時から何時までは電話禁止」とかを内外に対して打ち出し、外線を断っている会社もあったぐらいです(今でも続いているのか不明)。

ただ、主な取引相手や消費者が子供や高齢者、IT弱者の場合は、まだ電話や手紙がメインの通信手段というケースもあり、そうした顧客を第一に考えないといけない企業は電話や手紙をすぐに切り捨てられません。そういう人達向けにはすでに自動応答サービスが主流となっていて、それでも解決しない場合のみ人につながるという設定になっています。

それもあと10年も経てば、電話での問い合わせはAI(人工知能)がおこない、生身の人が対応することはなくなっていくと思われます。

いずれにしても、コストも手間もかかる電話応対は、生産性向上、作業の効率化という点では無用の長物で、緊急事態というような場合を除き、徐々に削減されていくことは間違いないでしょう。

個人的には電話というのは相手の都合を全く無視して、忙しいときでも手が離せないときでもいきなり割り込んでくるもので、家族が危篤とか、直ちに停止しなければ被害が出ると言った緊急連絡以外は、なくなってもよいと思っています。

平日の昼間に自宅にいると、それは毎日毎日様々なところからセールスの電話がかかってきます。今時そうしたセールス手法が効果的だとは思わないのですが、それしか方法を思いつかない商売人が多いと言うことなのでしょう。

ネットをあまり使わない高齢者ユーザーが多いテレビショッピングも、コスト面から考えれば、人手や設備費のかかるコールセンターよりも、ネット上でオーダーしてもらえれば、コストが大きく下げられますので、今後ネット通販会社と価格競争となった場合は、価格を下げるためにそうせざるを得なくなってくるでしょう。

私は新入社員の頃はもちろん、長くサービス業の営業職でしたので、電話が鳴るとすぐに出て対応するというのが長らく習性となっていました。今は営業職ではないので電話を取ることはほとんどありませんが。

そうした習性はやはり新入社員の時に、最初はおっかなびっくりで、時には応対のまずさで先輩に叱られ、言葉遣いの誤りを訂正され、身をもって覚えていったものです。

一般企業や役所では、4月から5月頃に電話をすると、いかにも「新入社員です」という人が電話に出て、質問や取り次ぎを頼んでもなかなか要領を得なかったり、話しがしどろもどろになってしまうことがよくあります。それが会社や役所の中で、毎年、季節の風物詩みたいになっていて、一種微笑ましいとさえ思っていました。

ところが、上記のように、最近では取引先へ電話をすることも滅多になく、ということは、新入社員は研修では多少学ぶものの、実地では電話応対についてほとんど経験することもなく過ごしてきているはずです。

先輩や上司も、電話のやりとりについて、経験させておいて、間違いを指摘して叱ると、パワハラだと言われかねない社会情勢ということもあります。

それがよいことなのか、やむを得ないことなのか、わかりませんが、いわゆるコミュニケーション障害というか、人と直接話をするのが苦手な人を多く作り出している気がします。

メールやSNSなら活発に発言が出来る人も、人の目を見てちゃんと挨拶が出来ない、ふらっといなくなったと思ったら誰にも告げず勝手に帰宅していた、お客様と同席してもボーとしたままでなにも発言しないといった人が次々と出来上がっていきます。

ちょっと方向性は違いますが、優秀な官僚が集まるお役所でも同様に電話対応の是非が問われているようです。

新人の「電話対応業務」削減は効率化か怠慢か?財務省内で侃々諤々の議論(産経ニュース)
「問い合わせでなくて、文句や苦情といった内容のものも多い。忍耐力はつくが人材を育てる観点では電話対応業務を従来通り続けることには疑問もある」そう話すのは、40代の女性職員。
(中略)
一方、こうした電話対応業務を「新人が勉強する絶好の機会」と評価する声も少なくない。

つまり電話応対という仕事が、新人教育として効果的であるという意見と、もうそれは時代遅れで、働き方改革を進めていく上で弊害だと言う意見に分かれます。

私の意見としては、どちらがどうだという決めつけはできません。例えば、サービス業のようなところでは、電話でもメールでも顧客対応は極めて大事なので、そうしたことをしっかり身体で覚えていくことが必要と感じます。

しかし、BtoB(取引相手が企業同士)の仕事や、顧客対応以外の例えば製造やシステム開発のような仕事であれば、今後電話で処理することはほとんどなく、あえてそれの習得に時間を割くこともないかなと思ったりします。ただその場合でも本人のためにはそうした経験を積むことで、将来様々な場面で生きることになるとは思いますが。

さて、企業の生産性向上や効率化と、個人のコミュニケーション能力向上と対人関係の訓練、この先、このふたつの将来を考えると、どう考え、行動するのが一番よいのでしょうかね。


【関連リンク】
1216 新卒学生の就職先選定の条件
1113 ありきたりだが新入社員へ贈る言葉
700 なにもかも懐かしい新入社員の頃
636 昨今の新入社員は終身雇用制を支持している




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